説明

選局装置および選局方法

【課題】ラジオの周波数メモリが表示されたタッチパネルに対する操作によって選局を行う場合に、受信可能な放送局を簡単に選局できる「選局装置および選局方法」を提供する。
【解決手段】周波数メモリが表示されたタッチパネル20が押下された場合、押下位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲を対象として受信可能な周波数を検索する周波数検索部13と、検索された周波数を受信周波数として選局する選局部14とを設け、ユーザが所望する周波数位置をタッチしようとしたにもかかわらず、実際には前後にずれた周波数位置をタッチしてしまった場合であっても、そのタッチ位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲内で周波数検索部13により自動的に周波数の検索が行われ、受信可能な放送局の周波数が選局部14により正しく選局されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選局装置および選局方法に関し、特に、周波数メモリが表示されたタッチパネルに対する操作によって選局を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジオの受信周波数を選択(いわゆる選局)するための手段として、マニュアルチューニングおよびオートチューニングの2つが用意されている。マニュアルチューニングは、ユーザが物理的な操作子を操作しながら受信周波数を所定量ずつずらしていき、所望の放送局の周波数に受信周波数を合わせる手法である。受信可能な放送局の周波数が分かっているときに使うと便利な機能である。
【0003】
一方、オートチューニングとしては、チャンネルシークやチャンネルスキャンなどの手法が提供されている。チャンネルシークは、シークボタンの押下に応じて、現在地点において受信可能な放送局をサーチして受信する機能である。シークボタンを押下するたびに1つの放送局がサーチされるので、シークボタンを何回か押下すれば、希望の放送局を見つけることができる。放送局の周波数が分からないときに使うと便利な機能である。
【0004】
チャンネルスキャンは、スキャンボタンの押下に応じて、現在地点において受信可能な複数の放送局をサーチし、見つかった複数の放送局の情報をプリセットメモリに格納する機能である。プリセットメモリに格納された複数の放送局の情報は、複数のプリセットボタンに割り当てられる。これにより、チャンネルスキャンの実行後は、所望のプリセットボタンを押下するだけで、受信する放送局を簡単に切り替えることができる。
【0005】
なお、全周波数帯域を複数の周波数範囲(バンド)に分割し、分割された周波数範囲内でのみオートチューニング動作を行うようにした技術も存在する(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の技術では、バンド選択スイッチにより選択されたバンド内のみでオートチューニング動作を行うようになされている。また、特許文献2に記載の技術では、メモリ呼出ボタンとスキャンボタンとが同時に押されたときに、押されたメモリ呼出ボタンに対応する周波数範囲のみでオートチューニング動作を行うようになされている。
【0006】
ところで、近年では、情報の入力デバイスとして、タッチパネルを採用する電子機器が増えている。上述のラジオに設けられるHMI(Human Machine Interface)に関しても、選局を行うための入力デバイスとしてタッチパネルを採用したものが殆どである。
【0007】
タッチパネルは、操作が直感的に分かりやすくて簡単、入力装置と表示装置との一体化により装置全体の小型化が可能、従来の物理的な操作子がなくてもソフトウェア次第で多彩な操作性を実現可能といった多くの利点を有している。このように多くの利点を有することが、電子機器においてタッチパネルが採用される大きな要因となっている。
【0008】
ただし、タッチパネルにも欠点はある。例えば、タッチパネル上に表示されるGUI(Graphical User Interface)としてのソフトキーが小さい場合や、複数のソフトキーが互いに狭い間隔で並んでいる場合、あるいは、スライドバーのように任意の位置を指定できるようになされたソフトキーの場合などに、ユーザが意図する位置を指先で正しくタッチできないことがある。
【0009】
例えば、図5のように、全周波数帯域の周波数を周波数メモリ100としてタッチパネルに表示し、当該周波数メモリ100上のタッチされた位置に対応する周波数を受信周波数として選局するようにしたソフトキーが提供されている。このようなソフトキーの場合、指先の太さに比べて周波数のメモリ間隔がかなり狭いので、ユーザが希望する周波数をピンポイントで選択することが困難という問題があった。
【0010】
例えば、図5(a)のように、受信可能な放送局の周波数として100.0MHzの位置をタッチしたつもりでも、実際には、図5(b)のように99.8MHzといった前後にずれた周波数を選局してしまうということが多々生じる。この場合、もう一度タッチをやり直す必要があるが、やり直しの際も正しい周波数位置をタッチできるとは限らない。出願人が試行したところ、正しく100.0MHzの周波数位置をタッチできたのは、10回のうち2回のみであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公平2−15405号公報
【特許文献2】特開2001−53590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ラジオの周波数メモリが表示されたタッチパネルに対する操作によって選局を行う場合に、受信可能な放送局を簡単に選局できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために、本発明では、ユーザインタフェースとして周波数メモリが表示されたタッチパネルが押下された場合、その押下位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲を対象として、受信可能な周波数を検索し、検索された周波数を受信周波数として選局するようにしている。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、周波数メモリが表示されたタッチパネルに対して、受信可能な放送局の周波数としてユーザが所望する周波数の位置をタッチしようとしたにもかかわらず、実際には前後にずれた周波数位置をタッチしてしまった場合であっても、そのタッチ位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲内で自動的に周波数の検索が行われ、受信可能な放送局の周波数が正しく選局される。これにより、周波数メモリが表示されたタッチパネルに対する操作によって選局を行う場合に、何回もタッチ操作をやり直す必要がなく、受信可能な放送局を簡単に選局することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態による選局装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態によるタッチパネルの表示例を示す図である。
【図3】本実施形態による選局装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態による周波数検索部が検索を行う周波数範囲の特定に関する変形例を示す図である。
【図5】従来のタッチパネルの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による選局装置の機能構成例を示すブロック図である。図2は、本実施形態によるタッチパネルの表示例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の選局装置10は、その機能構成として、押下位置検出部11、ソフトキー情報記憶部12、周波数検索部13、選局部14および表示制御部15を備えている。また、本実施形態の選局装置10には、タッチパネル20が接続されている。
【0018】
タッチパネル20には、図2のように、GUIとして周波数メモリ100が表示されている。周波数メモリ100のタッチパネル20への表示は、ソフトキー情報記憶部12に記憶されている情報に基づいて、表示制御部15によって行われる。この周波数メモリ100は、ラジオの全周波数帯域の周波数をメモリ状に表したものであり、当該周波数メモリ100上のタッチされた位置に対応する周波数を受信周波数として指定できるようになされたソフトキーである。
【0019】
周波数メモリ100の分解能がNドットの場合(Nは1以上の整数)、Nドット毎に異なる周波数が割り当てられている。図2に示す周波数メモリ100は、FMラジオの全周波数帯域(87.5〜108MHz)をメモリ状に表示したものであり、周波数メモリ100上のタッチされた位置に応じて、0.1MHz刻みで所望の周波数を指定できるようになされている。
【0020】
選局装置10の押下位置検出部11は、タッチパネル20に対する押下操作が行われたときに、当該タッチパネル20の押下位置を検出する。ここで言う押下位置とは、指先などの指示物により押下操作が行われたときに、当該指先の幅内に含まれる一部の位置をいう。例えば、押下位置検出部11は、指先が触れている領域のうち、中心の数ドット幅(Nドット幅またはそれ以下であることが望ましい)ほどの領域を押下位置として検出する。
【0021】
ソフトキー情報記憶部12は、タッチパネル20上に表示される各種ソフトキー(周波数メモリ100を含む)に関する情報を記憶したものである。ソフトキーに関する情報とは、ソフトキーの画像、ソフトキーの位置、ソフトキーがタッチされたときに実行すべき動作あるいは特定すべき情報などを示す情報である。例えば周波数メモリ100の場合、周波数メモリ100の画像、表示位置、周波数メモリ100上のどの位置がタッチされたときにどの周波数が特定されるのかの関係を示した情報などがソフトキー情報記憶部12に記憶されている。
【0022】
周波数検索部13は、ソフトキー情報記憶部12を参照して、押下位置検出部11により検出された押下位置に対応する周波数を特定する。そして、特定した周波数を含む所定の周波数範囲を対象として、受信可能な周波数を検索する。例えば、周波数検索部13は、押下位置検出部11により検出された押下位置に対応する周波数を基準とし、当該基準の周波数より所定値低い周波数から当該基準の周波数より所定値高い周波数までを所定の周波数範囲として、受信可能な周波数を検索する。例えば、基準の周波数±0.5MHzの範囲内でサーチを行う。
【0023】
選局部14は、周波数検索部13により検索された周波数を受信周波数として選局する。ここで、選局部14は、周波数検索部13により受信可能な周波数が複数検索された場合には、当該複数の周波数のうち、押下位置検出部11により検出された押下位置に対応する周波数に最も近い周波数を受信周波数として選局する。
【0024】
例えば、図2(a)のように、ユーザが、受信可能な放送局の周波数として100.0MHzの位置をタッチしようとしたが、実際には、99.8MHzの位置をタッチしてしまったとする。この場合、周波数検索部13は、押下位置検出部11により検出される押下位置に対応する周波数(99.8MHz)を基準とし、当該基準の周波数±0.5MHzの範囲(99.3MHz〜100.3MHz)でサーチを行う。
【0025】
周波数検索部13がサーチした周波数の範囲内には、受信可能な放送局の周波数として100.0MHzが含まれている。したがって、選局部14は、周波数検索部13により検索された100.0MHzの周波数を受信周波数として選局する。また、選局部14は、選局した周波数(100.0MHz)を表示制御部15に通知する。この通知を受けて表示制御部15は、図2(b)に示すように、選局した周波数をタッチパネル20に表示させる。
【0026】
なお、選局装置10の構成において、周波数検索部13および選局部14はチューナにより構成される。また、押下位置検出部11および表示制御部15は、CPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えたマイコンにより構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによってその機能が実現される。
【0027】
図3は、上記のように構成した本実施形態による選局装置10の動作例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、例えば、選局装置10を備えたオーディオ装置の電源がオンとされたときに開始する。
【0028】
図3において、押下位置検出部11は、タッチパネル20が押下されたか否かを判定する(ステップS1)。ここで、タッチパネル20の押下が検出されない場合、処理はステップS1を繰り返す。一方、タッチパネル20の押下が検出された場合、押下位置検出部11は、その押下位置を検出する(ステップS2)。
【0029】
タッチパネル20の押下位置が押下位置検出部11により検出されると、周波数検索部13は、その押下位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲を対象として、受信可能な周波数を検索する(ステップS3)。具体的には、押下位置に対応する周波数を基準として、基準の周波数±0.5MHzの範囲内で受信可能な周波数のサーチを行う。
【0030】
選局部14は、周波数検索部13のサーチにより、受信可能な周波数が見つかったか否かを判定する(ステップS4)。ここで、受信可能な周波数が見つかっていない場合、処理はステップS1に戻る。一方、受信可能な周波数が見つかった場合、選局部14は、その見つけられた周波数を受信周波数として選局する(ステップS5)。その後、表示制御部15が、選局された周波数をタッチパネル20に表示し(ステップS6)、図3に示すフローチャートの処理を終了する。
【0031】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、周波数メモリ100が表示されたタッチパネル20が押下された場合、その押下位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲を対象として、受信可能な周波数を検索し、検索された周波数を受信周波数として選局するようにしている。
【0032】
このように構成した本実施形態によれば、周波数メモリ100が表示されたタッチパネル20に対して、受信可能な放送局の周波数としてユーザが所望する周波数位置をタッチしようとしたにもかかわらず、実際には前後にずれた周波数位置をタッチしてしまった場合であっても、そのタッチ位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲内で自動的に周波数の検索が行われ、受信可能な放送局の周波数が正しく選局される。これにより、周波数メモリ100が表示されたタッチパネル20に対する操作によって選局を行う場合に、何回もタッチ操作をやり直す必要がなく、受信可能な放送局を簡単に選局することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、周波数検索部13は、タッチパネル20の押下位置に対応する周波数を基準として、基準の周波数±0.5MHzの範囲内で受信可能な周波数のサーチを行うようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、タッチパネル20を押下した指先の幅の範囲を所定の周波数範囲として、受信可能な周波数を検索するようにしてもよい。
【0034】
図4は、周波数検索部13が検索を行う周波数範囲の特定に関する変形例を示す図である。この変形例において、押下位置検出部11は、タッチパネル20に対して指先により押下操作が行われたときに、当該指先の幅内に含まれる一部を押下位置として検出するとともに、当該指先の幅の範囲を接触位置として検出する。すなわち、押下位置検出部11は、図4において両矢印Wで示す範囲を接触位置として検出する。
【0035】
周波数検索部13は、押下位置検出部11により検出された接触位置の範囲を所定の周波数範囲として、受信可能な周波数を検索する。例えば、図2(a)と同様に、ユーザが、受信可能な放送局の周波数として100.0MHzの位置をタッチしようとしたが、実際には、99.8MHzの位置が押下位置検出部11により押下位置として検出されてしまったとする。一方、図4において両矢印Wで示す範囲として、99.1MHz〜100.5MHzの範囲が押下位置検出部11により接触位置として検出されたとする。この場合、周波数検索部13は、99.1MHz〜100.5MHzの範囲内で受信可能な周波数の検索を行う。
【0036】
また、上記実施形態では、周波数メモリ100としてFMラジオの例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、AMラジオでもよいことは言うまでもない。
【0037】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 選局装置
11 押下位置検出部
13 周波数検索部
14 選局部
20 タッチパネル
100 周波数メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザインタフェースとして周波数メモリが表示されたタッチパネルに対する押下操作が行われたときに、上記タッチパネルの押下位置を検出する押下位置検出部と、
上記押下位置検出部により検出された押下位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲を対象として、受信可能な周波数を検索する周波数検索部と、
上記周波数検索部により検索された周波数を受信周波数として選局する選局部とを備えたことを特徴とする選局装置。
【請求項2】
上記周波数検索部は、上記押下位置検出部により検出された押下位置に対応する周波数を基準とし、当該基準の周波数より所定値低い周波数から当該基準の周波数より所定値高い周波数までを上記所定の周波数範囲として、受信可能な周波数を検索することを特徴とする請求項1に記載の選局装置。
【請求項3】
上記押下位置検出部は、上記タッチパネルに対して指先などの指示物により押下操作が行われたときに、当該指示物の幅内に含まれる一部を上記押下位置として検出するとともに、当該指示物の幅の範囲を接触位置として検出するようになされ、
上記周波数検索部は、上記押下位置検出部により検出された接触位置の範囲を上記所定の周波数範囲として、受信可能な周波数を検索することを特徴とする請求項1に記載の選局装置。
【請求項4】
上記選局部は、上記周波数検索部により上記受信可能な周波数が複数検索された場合に、当該複数の周波数のうち、上記押下位置検出部により検出された押下位置に対応する周波数に最も近い周波数を受信周波数として選局することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の選局装置。
【請求項5】
ユーザインタフェースとして周波数メモリが表示されたタッチパネルに対する押下操作が行われたときに、選局装置の押下位置検出部が、上記タッチパネルの押下位置を検出する第1のステップと、
上記選局装置の周波数検索部が、上記第1のステップで検出された押下位置に対応する周波数を含む所定の周波数範囲を対象として、受信可能な周波数を検索する第2のステップと、
上記選局装置の選局部が、上記周波数検索部により検索された周波数を受信周波数として選局する第3のステップとを有することを特徴とする選局方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70150(P2013−70150A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205905(P2011−205905)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】