説明

遺伝子発現をノックダウンするため、そして固形臓器および細胞の移植を改善するためにsiRNAを使用する組成物および方法

本発明は、移植の成功率を向上するための、移植された臓器もしくは組織の細胞において発現される種々の遺伝子、および/または、宿主において発現される遺伝子を標的とするためにsiRNAを用いる、組成物および方法を記載する。本発明は、レシピエントに移植される臓器の細胞中に存在する免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子を標的とする、ターゲティングポリヌクレオチドを提供する。本発明のターゲティングポリヌクレオチドは、例えば、C3、ICAM1、VCAM−1、IFN−γ、IL−1、IL−6、IL−8、TNF−α、CD80、CD86、MHC−II、MHC−I、CD28、CTLA−4またはPV−B19の遺伝子中の配列を標的とし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/741,157号(この出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、siRNA媒介性の遺伝子発現のダウンレギュレーションを用いた、固形臓器または組織の移植における、同種移植片拒絶反応または異種移植片拒絶反応、および虚血/再潅流傷害を防止するための組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
固形臓器移植は、末期の臓器不全の処置のための唯一の有効な治療である(非特許文献1、非特許文献2)。世界中の移植プログラムはますます首尾よくなってきており、そして、このような手術は、ますます慣用的になりつつある(非特許文献3、非特許文献4)。1年の生存率という印象的な結果にもかかわらず、臓器移植は、依然として、大きな問題に直面している。免疫系が、移植された臓器の長期間の生存に対して最も大きな障壁を呈する。免疫応答を溝(bay)に維持するための強力な免疫抑制剤を用いた一生の処置なしでは、臓器移植片は、常に拒絶反応を受ける。しかし、現在の抗拒絶反応薬は、全身の免疫を非選択的に低下させ、そして、長期にわたる日和見感染および腫瘍発生の危険を増加させる。したがって、代替的な戦略が求められている。
【0004】
過去10年間にわたる分子生物学的技術の進歩は、免疫応答および虚血/再潅流傷害の両方を誘発するために必要とされるシグナルの我々の理解を向上させた。これらの新規シグナルを標的とするように設計された薬剤は、最終的には、移植された臓器の長期にわたる、薬物なしでの受容を可能にするという望みを提供する。
【0005】
移植免疫学は、同種移植片または異種移植片がドナーから摘出され、次いで、レシピエントに移植された後に生じる、包括的な事象の連続を指す。組織は、移植片および移植部位の両方において損傷を与えられる。直ちに、生化学カスケードの活性化として、炎症性反応が起こる。抗原が認識されると、一連の特異的および非特異的な細胞の応答が続いて起こる。最終的には、損傷は、組織の修復および強化により制御される;損傷が病的でない場合、移植片は生き延びる。
【0006】
組織損傷の抗原非依存性の原因(すなわち、虚血、低体温、再潅流傷害)は、移植片が採取されるときの、機械的な外傷ならびに血液供給の崩壊の結果である。
【0007】
対照的に、組織損傷の抗原依存性の原因は、免疫媒介性の損傷を伴う。マクロファージは、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターロイキン−1)を放出し、これは、炎症性の内皮応答を刺激することによって、炎症の強度を強める;これらの内皮の変化は、多数のT細胞を移植部位へと補充するのに役立つ。損傷を受けた組織は、いくつかの生化学カスケードを引き起こす炎症促進性メディエーター(例えば、ハーゲマン因子[第XII因子])を放出する。血液凝固カスケードは、フィブリンといくつかの関連の線維素ペプチドを誘導し、そして、局所的な血管浸透性を促進し、好中球およびマクロファージを引き付ける。キニンカスケードは主に、ブラジキニンを生成し、血管拡張、平滑筋収縮を促進し、血管浸透性を増大させる。
【0008】
抗体−抗原複合体(すなわち、免疫複合体)の形成は、補体系の古典的な経路を活性化する。C1qは、古典的な経路を介して免疫複合体内の抗体上にドッキングすると、活性化プロセスを引き起こし、一方で、補体因子C3は、代替的な経路の活性化のためのアクセプターとして、損傷を受けた細胞表面を認識し得る。活性化された補体は、膜攻撃複合体(例えば、C5b、C6、C7、C8、C9)および細胞結合リガンド(例えば、C4bおよびC3b)の堆積により損傷を引き起こし、補体レセプターを有する白血球を活性化する。さらに、生物活性アナフィラトキシンC5aおよびC3aの生成は、炎症性細胞の流入および活性化を引き起こす。これらの化学走性誘引物質はまた、肥満細胞の脱顆粒を開始し、いくつかのメディエーターを放出する。ヒスタミンおよび5−ヒドロキシトリプタミンは、血管浸透性を増大させる。プロスタグランジンE2は、血管拡張および血管浸透性を促進する。ロイコトリエンB4およびD2は、白血球の蓄積および血管浸透性を促進する。補体芽活性化される別の手段は、組織の虚血および再潅流によるものであり、リン脂質およびミトコンドリアのタンパク質を露出する。これらの副産物は、C1q、または、マンノース結合レクチン、または、因子C3bを結合することによって、直接補体を活性化する。
【0009】
現在、同種移植片の首尾良い移植は、免疫抑制薬の全身性の使用を必要とする。これらは、その毒性と、癌および感染症に対する感受性の増加とに起因して、深刻な病的状態を引き起こし得る。移植部位に限定された免疫抑制性分子の局所的な生成は、従来の、全身性の免疫抑制療法の必要性を減少し、したがって、引き起こされる副作用が少なくなる。これは、1型糖尿病(すぐに生命に危険があるわけではないが、膵島の同種移植片が治癒を達成し得る)のような疾患において特に顕著である。抗CD4戦略は、抗体の組み合わせが使用される場合、なおより効果的であり得る;同様の戦略もまた、異種移植片の拒絶反応を防止し得る。宿主の免疫応答を抑制することもまた、癌の危険を増大させる。移植片拒絶および対宿主性移植片病(GVHD)を回避する目的で免疫応答を抑制する試みは、感染因子(例えば、細菌、ウイルス、真菌など)と闘う身体の能力を減弱させる。
【0010】
RNA干渉(RNAi)化合物、中程度の低分子干渉性RNA(short interfering RNA)オリゴヌクレオチド(siRNA)は、同じ処置において、複数の疾患の原因となる遺伝子を標的とするために、複数のsiRNA二重鎖の組み合わせを使用するための独特の戦略を提供する。というのも、全てのsiRNA二重鎖は、同じ起源および同じ製造プロセスを用いる場合、化学的に均質であるからである(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。このようなsiRNAインヒビターは、毒性および安全性の問題が最小でありつつ、かなり良好な臨床上の有効性を有するものと期待される。遺伝的修飾は、臓器移植のための有望な治療戦略である。特定の遺伝子発現をサイレンシングするためのRNA干渉の魅力的な技術(非特許文献9、非特許文献10)に基づいて、siRNA治療は、移植を受けたレシピエントにおける虚血/再潅流傷害ならびに臓器の拒絶反応の防止における、魅力的かつ強力なアプローチを体現し得る。
【非特許文献1】Subtirelu MM et al.Acute renal failure in a pediatric kidney allograft recipient treated with intravenous immunoglobulin for parvovirus B19 induced pure red cell aplasia.Pediatr Transplant.2005 Dec;9(6):801−4.
【非特許文献2】Sampietro R,et al.Extension of the adult hepatic allograft pool using split liver transplantation.Acta Gastroenterol Belg.2005 Jul−Sep;68(3):369−75.
【非特許文献3】Chalermskulrat W,et al.Combined donor−specific transfusion and anti−CD154 therapy achieves airway allograft tolerance.Thorax.2005 Oct 27;[Epub ahead of print].
【非特許文献4】Oliveira JG,et al.Humoral immune response after kidney transplantation is enhanced by acute rejection and urological obstruction and is down−regulated by mycophenolate mofetil treatment.Transpl Int.2005 Nov;18(11):1286−91.
【非特許文献5】McManus,M.T.and P.A.Sharp(2002)Gene silencing in mammals by small interfering RNAs.Nature Review,Genetics.3(10):737−747.
【非特許文献6】Lu,P.Y.et al.(2003)siRNA−mediated antitumorigenesis for drug target validation and therapeutics.Current Opinion in Molecular Therapeutics.5(3):225−234.
【非特許文献7】Lu,P.Y.et al(2002)Tumor inhibition by RNAi−mediated VEGF and VEGFR2 down regulation in xenograft models.Cancer Gene Therapy.10(Supplement))S4.
【非特許文献8】Kim,B.et al.(2004)Inhibition of ocular angiogenesis by siRNA targeting vascular endothelial growth factor−pathway genes;therapeutic strategy for herpetic stromal keratitis.Am.J.Pathol.165(6):2177−85.
【非特許文献9】Lu,P.Y.and M.Woodle(2005)Delivering siRNA in vivo For functional genomics can novel therapeutics.In RNA Interference Technology.Cambridge University Press.P 303−317.
【非特許文献10】Lu,P.Y.et al.(2005)Modulation of angiogenesis with siRNA inhibitors for novel therapeutics.TRENDS in Molecular Medicine.11(3),104−13.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、レシピエントに移植される臓器の細胞中に存在する免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子を標的とする、ターゲティングポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドのための標的は、表1〜15に列挙される免疫調節遺伝子および免疫エフェクター遺伝子の配列から誘導され得る(以下を参照のこと)。例えば、ターゲティングポリヌクレオチドは、C3、ICAM1、VCAM−1、IFN−γ、IL−1、IL−6、IL−8、TNF−α、CD80、CD86、MHC−II、MHC−I、CD28、CTLA−4またはPV−B19の遺伝子中の配列を標的とし得る。ターゲティングポリヌクレオチドは、表1〜15に列挙される配列の1以上を標的とするsiRNA二重鎖を含み得る。ターゲティングポリヌクレオチドは、一本鎖の直鎖状ポリヌクレオチド、二本鎖の直鎖状ポリヌクレオチド、またはヘアピンポリヌクレオチドであり得る。
【0012】
本発明はまた、臓器をレシピエントに移植する前に、臓器と本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含有する組成物とを接触させることによって、移植された臓器の拒絶反応を抑制する方法を提供する。この方法は、移植前の保管の間に、臓器または臓器の細胞における標的の免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の発現をダウンレギュレートまたは阻害するのに有効であり得る。一実施形態において、臓器は、本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含有する組成物を灌流させられる。別の実施形態において、臓器は、本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含有する組成物中に漬けられるか、または浸される。組成物はまた、臓器のレシピエントに投与され得る。本発明のいくつかの実施形態において、臓器は、レシピエント自身の臓器であり得る。上記臓器のレシピエントはヒトであり得る。本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含有する組成物に接触される臓器、組織および細胞としては、腎臓、肝臓、肺、膵臓、心臓、小腸、角膜、上皮細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、および移植時に臓器中に存在するパッセンジャー白血球が挙げられる。
【0013】
本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含有する組成物はまた、キャリアを含有し得、このキャリアとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:潅流液、Hyper Osmolar Citrate溶液、PolyTranポリマー溶液、TargeTranナノ粒子溶液、またはUniversity of Wisconsin溶液。組成物はまた、低分子薬物、モノクローナル抗体薬物、および他の免疫調節因子を含有し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、複数の本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含み得る。組成物は、複数の遺伝子配列を標的とし得る複数の本発明のターゲティングポリヌクレオチドを含み得る。一実施形態において、ターゲティングポリヌクレオチドは、C3遺伝子配列、TNF−α遺伝子配列およびIL−8遺伝子配列を標的とするカクテルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される場合、「オリゴヌクレオチド」およびこれに基づく類似用語は、直前の段落に記載されるように、天然に存在するヌクレオチド、ならびに、合成または修飾ヌクレオチドから構成されるポリマーに関する。オリゴヌクレオチドは、10以上のヌクレオチド長、または15以上のヌクレオチド長、または16以上のヌクレオチド長、または17以上のヌクレオチド長、または18以上のヌクレオチド長、または19以上のヌクレオチド長、または20以上のヌクレオチド長、または21以上のヌクレオチド長、または22以上のヌクレオチド長、または23以上のヌクレオチド長、または24以上のヌクレオチド長、または25以上のヌクレオチド長、または26以上のヌクレオチド長、または27以上のヌクレオチド長、または28以上のヌクレオチド長、または29以上のヌクレオチド長、または30以上のヌクレオチド長、または35以上のヌクレオチド長、または40以上のヌクレオチド長、または45以上のヌクレオチド長、または、約50までのヌクレオチド長であり得る。siRNAであるオリゴヌクレオチドは、15ヌクレオチドと30ヌクレオチドとの間の任意の数のヌクレオチドを有し得る。多くの実施形態において、siRNAは、21ヌクレオチドと25ヌクレオチドとの間の任意の数のヌクレオチドを有し得る。
【0015】
多くの実施形態において、siRNAは、2つの平滑末端を有しても、2つの突出末端を有しても、1つの平滑末端と1つの突出末端を有しても、1つのオーバーハングを有する末端を有してもよい。このオーバーハングヌクレオチドは、1〜4以上の範囲であり得る。
【0016】
(RNA干渉(RNAi))
本発明によれば、免疫調節遺伝子標的または免疫エフェクター遺伝子標的の遺伝子発現は、RNA干渉により減弱される。免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の発現生成物は、この免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の標的配列の少なくとも一セグメントに対して相補的である、特異的な二本鎖siRNAヌクレオチド配列により標的とされ、この二本鎖siRNAヌクレオチド配列は、15ヌクレオチドと30ヌクレオチドとの間の任意に数のヌクレオチドを含むか、または、多くの場合、21ヌクレオチドと25ヌクレオチドとの間の任意の数のヌクレオチドまたはそれ以上の数のヌクレオチドを含む。標的は、コード配列中の5’非翻訳(UT)領域、または、3’UT領域中に存在し得る。例えば、PCT出願公開WO00/44895、WO99/32619、WO01/75164、WO01/92513、WO01/29058、WO01/89304、WO02/16620およびWO02/29858(この各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0017】
本発明の方法によれば、免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の発現、および、これによる、有害な免疫学的反応に起因した虚血/再潅流傷害または臓器移植の拒絶反応は、siRNAを用いて抑制される。本発明によるターゲティングポリヌクレオチドは、siRNAオリゴヌクレオチドを含む。このようなsiRNAはまた、意図される配列と同一であるかまたはこれに類似するヌクレオチド配列の化学合成によって調製され得る。例えば、Tuschl、Zamore、Lehmann、BartelおよびSharp(1999)、Genes & Dev.13:3191−3197(その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。あるいは、ターゲティングsiRNAは、例えば、細胞を含まない系(例えば、Drosophila抽出物であるが、これに限定されない)において免疫調節リボポリヌクレオチド配列または免疫エフェクターリボポリヌクレオチド配列を消化することによって、または、組換え二本鎖cRNAの転写によって、ターゲティングポリヌクレオチド配列を用いて得られ得る。
【0018】
効率的なサイレンシングは、一般に、同じ長さの16〜30ntのセンス鎖および16〜30ntのアンチセンス鎖から構成されるsiRNA二重鎖を用いて観察される。多くの実施形態において、siRNA対二重鎖の各鎖は、さらに、3’末端に2ntのオーバーハングを有する。この2ntの3’オーバーハングの配列は、siRNAの標的認識特異性に対して、わずかではあるが、さらなる助力となる。一実施形態において、3’オーバーハング内のヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。代替的な実施形態において、3’オーバーハング内のヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。3’デオキシリボヌクレオチドの使用は、細胞内安定性の増大をもたらす。
【0019】
本発明の組換え発現ベクターは、細胞内に導入されると、プロセシングを受けて、臓器内の免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子を標的とするsiRNA配列を含むRNAを提供する。このようなベクターは、発現を可能にする様式で、免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子に隣接する、作動可能に連結された調節配列を含む発現ベクター内にクローニングされたDNA分子であり得る。このベクターから、標的RNAに対してアンチセンスであるRNA分子が、第一のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3’側にあるプロモーター配列)により転写され、そして、RNA標的に対してセンス鎖であるRNA分子が、第二のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5’側にあるプロモーター配列)により転写される。これらのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、次いで、インビボでハイブリダイズして、免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の配列を標的とするsiRNA構築物を生成する。あるいは、siRNA構築物のセンス鎖およびアンチセンス鎖を作製するために、2つの構築物が利用され得る。さらに、クローニングされたDNAは、二次構造を有する転写体をコードし得、ここで、単一の転写体が、標的遺伝子からのセンス配列および相補的なアンチセンス配列の両方を有する。この実施形態の一例において、ヘアピンRNAi生成物は、標的遺伝子の全体または一部分に類似する。別の例において、ヘアピンRNAi生成物はsiRNAである。免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の配列に隣接する調節配列は、同一であっても異なっていてもよく、その結果、これらの発現は、独立して調節されても、時間的もしくは空間的な様式で調節されてもよい。
【0020】
特定の実施形態において、siRNAは、免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子の配列を、例えば、低分子核RNA(snRNA)U6またはヒトRNase P RNA H1に由来するRNA pol III転写ユニットを含むベクター内にクローニングすることによって、細胞内で転写される。ベクターシステムの一例は、GeneSuppressorTMRNA Interferenceキット(Imgenex Corp.)である。U6プロモーターおよびH1プロモーターは、Pol IIIプロモーターのIII型クラスのメンバーである。U6様プロモーターの+1ヌクレオチドは、常にグアノシンであり、一方で、H1プロモーターの+1ヌクレオチドはアデノシンである。これらのプロモーターについての終止シグナルは、5つの連続するチミジンにより規定される。転写体は、代表的に、二番目のウリジンの後に切断される。この位置での切断は、発現されるsiRNAにおける3’UUオーバーハングを生じ、これは、合成siRNAの3’オーバーハングに類似する。400ヌクレオチド長未満の任意の配列が、これらのプロモーターにより転写され得、それゆえ、これらは、理論上、例えば、約50ヌクレオチドRNAのステムループ転写体における、およそ21ヌクレオチドのsiRNAの発現に適している。RNAiの特徴およびsiRNAの効率に影響を及ぼす要因の特徴が研究されている(例えば、Elbashir、LendeckelおよびTuschl(2001).Genes & Dev.15:188−200を参照のこと)。
【0021】
ターゲティングポリヌクレオチドは、一般に、300ヌクレオチド長以下であり、そして、移植臓器の細胞中、または、移植臓器に付随するパッセンジャー細胞(一度ドナーから摘出され、そして、移植臓器がレシピエントの被験体内に導入されたときに、免疫調節性または免疫エフェクター性の応答に関与する)中に存在する遺伝子配列を標的とする第一のヌクレオチド配列を含む。ポリヌクレオチドにおいて、あらゆるT(チミジン)またはあらゆるU(ウリジン)は、必要に応じてもう一方で置換され得る。さらに、ポリヌクレオチドにおいて、第一のヌクレオチド配列は、a)その長さが15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドまたはそれ以上の任意の数である配列、またはb)a)に与えられる配列の相補鎖から構成される。このようなポリヌクレオチドは、本明細補において、直鎖状ポリヌクレオチドと命名され得る。一本鎖ポリヌクレオチドは、しばしば、二本鎖siRNAのうちの一方の鎖である。
【0022】
関連する局面において、上記ポリヌクレオチドはさらに、ループ配列により第一のヌクレオチド配列から間隔を空けられた第二のヌクレオチド配列を含み、その結果、第二のヌクレオチド配列は、
a)第一のヌクレオチド配列と実質的に同じ長さを有し、そして
b)第一のヌクレオチド配列に対し実質的に相補的である。
【0023】
この、ヘアピンポリヌクレオチドと命名された後者の構造において、第一のヌクレオチド配列は、第二のヌクレオチド配列とハイブリダイズしてヘアピンを形成し、このヘアピンの相補配列が、ループ配列により連結される。ヘアピンポリヌクレオチドは、細胞内で消化されて、二本鎖siRNAを形成する。
【0024】
多くの実施形態において、直鎖状ポリヌクレオチドの標的およびヘアピンポリヌクレオチドの標的は、移植臓器の細胞中、または、移植臓器に付随するパッセンジャー細胞中に存在する遺伝子配列であり、そして、第一のヌクレオチド配列は、以下のいずれかである:
a)本明細書に添付される表1〜15に与えられる配列から選択される配列を標的とするターゲティング配列;
b)項目a)に与えられる配列よりも長く、表1〜15から選択される配列を標的とするターゲティング配列;
c)少なくとも15ヌクレオチド長であり、最大でも選択される配列より1塩基短い、連続塩基配列から構成される、項目a)またはb)に与えられる配列のフラグメント;
d)a)〜c)に与えられる配列と、最大5ヌクレオチド異なるターゲティング配列;または
e)a)〜d)に与えられる任意の配列の相補体。
【0025】
直鎖状ポリヌクレオチドまたはヘアピンポリヌクレオチドの種々の実施形態において、第一のヌクレオチド配列の長さは、21ヌクレオチド〜25ヌクレオチドの任意の数である。
【0026】
多くの実施形態において、直鎖状ポリヌクレオチドまたはヘアピンポリヌクレオチドは、表1〜15から選択される配列を標的とするターゲティング配列から構成され、そして、必要に応じて、その選択される配列の3’に結合したジヌクレオチドのオーバーハングを含む。直鎖状ポリヌクレオチドまたはヘアピンポリヌクレオチドのなおさらなる実施形態において、第一のヌクレオチド配列の3’末端にあるジヌクレオチド配列は、TT、TU、UTまたはUUであり、そして、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、または、その両方を含む。種々のさらなる実施形態において、直鎖状ポリヌクレオチドまたはヘアピンポリヌクレオチドは、DNAであっても、RNAであっても、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの両方から構成されてもよい。
【0027】
特定のヒト遺伝子に特異的なsiRNAオリゴの例示的な配列を、以下の表1a〜15bに列挙する。これらの表は、列挙される全遺伝子について、オーバーハングをもつ21マーと、平滑末端をもつ25マーとの両方を含む。移植ドナーである他の哺乳動物の遺伝子に対して特異的である可能性のあるsiRNAオリゴの配列は、対応するヒト遺伝子を参照して、だが、これらの動物の遺伝子配列を心に留めて設計されるべきである。
【0028】
表1:
C3遺伝子におけるsiRNAの標的配列:
C3遺伝子:Homo sapiens補体成分3(C3)、
アクセッション番号:NM_000064、遺伝子ID:4557384、
以下の遺伝子配列を標的とする25のsiRNA候補を選択した:
【0029】
【表1a】

【0030】
【表1b】

表2:
ICAM1遺伝子におけるsiRNAの標的配列:
ICAM1遺伝子:Homo sapiens細胞間接着分子1(CD54)、ヒトライノウイルスレセプター(ICAM1)、
アクセッション番号:NM_000201、遺伝子ID:4557877、
以下の遺伝子配列を標的とする19のsiRNA候補を選択した:
【0031】
【表2a】

【0032】
【表2b】

表3:
VCAM1遺伝子におけるsiRNAの標的配列:
VCAM1遺伝子:Homo sapiens血管細胞接着分子1(VCAM1)、転写改変体2、mRNA。
アクセッション番号 NM_080682。GI:18201908;転写改変体1、mRNA。アクセッション番号 NM_001078、GI:18201907;ヒト血管細胞接着分子1 mRNA、完全cds
gi|179885|gb|M30257.1|HUMCAM1V[179885]、ヒト血管細胞接着分子1 mRNA、完全cds、
gi|340193|gb|M60335.1|
HUMVCAM1[340193]、ヒト血管細胞接着分子−1(VCAM1)遺伝子、完全CDS、
gi|340195|gb|M73255.1|
HUMVCAM1A[340195]、血管細胞接着分子1(VCAM−1)についてのヒトmRNA、
gi|37648|emb|X53051.1|HSVCAM1[37648]
以下の遺伝子配列を標的とする25のsiRNA候補を選択した:
【0033】
【表3a】

【0034】
【表3b】

表4:
ヒトIFN−γを標的とするsiRNA配列(アクセッション番号NM_000619):
【0035】
【表4a】

【0036】
【表4b】

表5:
ヒトIL−1を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_033292):
【0037】
【表5a】

【0038】
【表5b】

表6:
ヒトIL−6を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号NM_000600):
【0039】
【表6a】

【0040】
【表6b】

表7:
ヒトIL−8を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_000584):
【0041】
【表7a】

【0042】
【表7b】

表8:
ヒトTNF−αを標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_004862):
【0043】
【表8a】

【0044】
【表8b】

表9:
ヒトCD80を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_005191):
【0045】
【表9a】

【0046】
【表9b】

表10:
ヒトCD86を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_175862):
【0047】
【表10a】

【0048】
【表10b】

表11:
ヒトMHC−IIを標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_002119):
【0049】
【表11a】

【0050】
【表11b】

表12:
ヒトMHC−Iを標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_005516)
【0051】
【表12a】

【0052】
【表12b】

表13:
ヒトCD28を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:NM_006139):
【0053】
【表13a】

【0054】
【表13b】

表14:
ヒトCTLA4を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:AF414120):
【0055】
【表14a】

【0056】
【表14b】

表15:
ヒトパルボウイルスB19を標的とするsiRNA配列(アクセッション番号:AY903437):
【0057】
【表15a】

【0058】
【表15b】


【0059】
一実施形態において、平滑末端をもつ25塩基対のsiRNA二重鎖は、インビトロおよびインビボの両方において、両方の3’末端にオーバーハングをもつ19塩基対のsiRNA二重鎖よりも強力な遺伝子ノックダウン効率を示す。
【0060】
さらなる局面において、本発明は、上記の第一の直鎖状ポリヌクレオチド鎖および第二のポリヌクレオチド鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを提供し、第二のポリヌクレオチド鎖は、第一の鎖の少なくとも第一のヌクレオチド配列に対して相補的であり、第一のポリヌクレオチド鎖にハイブリダイズして二本鎖siRNA組成物を形成する。
【0061】
(処方物)
種々のキャリアは、siRNAを含有する処方物または薬学的組成物を調製するのに役立つ。いくつかの実施形態において、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、例えば、市販の試薬または技術(例えば、OligofectamineTM、LipofectAmineTM試薬、LipofectAmine 2000TM(Invitrogen))を用いることによる、リポソーム媒介性のトランスフェクションによって、ならびに、エレクトロポレーションおよび類似の技術によって、培養物中、または、移植を待つ臓器の細胞中に送達される。
【0062】
siRNAを含有する薬学的組成物は、siRNAの安定性を保護するか、siRNAの寿命を延長するか、siRNAの機能を助長するか、または、特定の組織/細胞へとsiRNAを標的化する、さらなる成分を含む。これらとしては、以下が挙げられる:種々の生分解性ポリマー、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)、カチオン性コポリペプチド(例えば、ヒスチジン−リジン(HK)ポリペプチド、例えば、Mixsonらに対するPCT公開WO 01/47496、Biomerieuxに対するWO 02/096941およびMassachusetts Institute of Technologyに対するWO 99/42091を参照のこと;PEG化カチオン性ポリペプチドおよびリガンドを組み込んだポリマーなど)、正電荷ポリペプチド、PolyTran溶液(HKポリマーおよび多糖類(例えば、天然の多糖類、スクレログルカン(scleroglucan)としても知られる)の生理食塩水溶液または水溶液)、TargeTran(ターゲティングリガンドを含む結合体化されたRGD−PEG−PEIポリマーから構成されるナノ粒子の生理食塩水または水性懸濁液)、界面活性剤(Infasurf;Forest Laboratories,Inc.;ONY Inc.)およびカチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)。Infasurf(登録商標)(カルファクタント)は、気管内点滴注入において使用するための、仔ウシの肺から単離した天然の肺サーファクタントである;これは、リン脂質、中性脂質および疎水性サーファクタントが会合したプロテインBおよびプロテインCを含む。
【0063】
このポリマーは、単一の寸法または複数の寸法のいずれかであり得、そしてまた、20ミクロン未満、20ミクロンと100ミクロンとの間、または100ミクロンを上回る直系を有するマイクロ粒子またはナノ粒子であり得る。上記ポリマーは、特定の組織または細胞のレセプターまたは分子に特異的なリガンド分子を有し得、したがって、siRNAの標的化された送達のために使用され得る。siRNAポリヌクレオチドはまた、カチオン性リポソームベースのキャリア(例えば、DOTAP、DOTAP/コレステロール(Qbiogene,Inc.))および他の型の脂質水溶液によって送達される。さらに、低濃度(5〜10%)のグルコース水溶液およびInfasurfは、siRNAの気道送達のための有効なキャリアである(Li B.J.ら、2005,Nature Medicine,11,944−951)。
【0064】
さらに、キャリアとしては、Hyper Osmolar Citrate溶液(560mOsm/kgの塩酸メグルミン溶液、560mOsm/kgのメグルミンイオキサグレート、および600mOsm/kgのナトリウムイオキサグレートなど)が挙げられ得る。University of Wisconsin溶液は、心臓、腎臓、肺および肝臓の保存を増強および延長する能力を有する。University of Wisconsin溶液は、膵島を単離する予定のヒトドナー膵臓の冷蔵保存および運搬に広く受け入れられる。
【0065】
組成物はさらに、ポリマー性キャリアを含み得る。ポリマー性キャリアは、RNA分子に結合するカチオン性ポリマーを含み得る。カチオン性ポリマーは、例えば、ヒスチジン残基およびリジン残基を含むアミノ酸コポリマーであり得る。ポリマーは、分枝ポリマーを含み得る。
【0066】
組成物は、標的化された合成ベクターを含み得る。合成ベクターは、カチオン性ポリマー、親水性ポリマーおよびターゲティングリガンドを含み得る。ポリマーはポリエチレンイミンを含み得、親水性ポリマーはポリエチレングリコールまたはポリアセタールを含み得、そして、ターゲティングリガンドは、RGD配列を含むペプチドを含み得る。
【0067】
siRNA/キャリアは、非特異的な様式の保存溶液もしくは灌流媒体のいずれかで、または、標的化された送達系の全身循環により、処方され得る。
【0068】
(固形腫瘍および細胞の移植の改善)
本発明は、RNA干渉(siRNA)を導入することで、標的遺伝子の発現をサイレンシングまたはダウンレギュレートすることによって、固形臓器移植における同種移植片拒絶反応および虚血/再潅流傷害を防止するための方法を提供する。本発明の方法において、siRNAは、臓器保存溶液の形態で、すなわち、ドナーからの摘出後、かつ、レシピエントへと運搬される間に、移植が意図される臓器に対して適用される。移植される臓器、組織および/または細胞のドナーまたはレシピエントは、哺乳動物であり得、これには、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ブタ、イヌ、ウシおよびウマが含まれるがこれらに限定されない。移植が予定される臓器は、1つのsiRNAオリゴヌクレオチド、または、複数のsiRNAオリゴヌクレオチドをカクテルとして含む臓器保存溶液によって維持される。siRNAは、ドナーの臓器および細胞に容易にかつ選択的に到達し得、有害である可能性のある副作用の減少を容易にする。
【0069】
現在の実務において、ドナーの臓器は、細片を洗浄して除き、そして、運搬の間の損傷を少なくするために、静止状態または再循環系において、低体温条件(ヒトについては、37℃未満(例えば、4℃))または正常体温条件(ヒトについては、37℃)において、特別に処方された溶液(臓器保存溶液)において、洗浄(flushing)および保存に供される。本発明の方法は、臓器保存の間のドナーの臓器および細胞のsiRNAトランスフェクションを包含する。これは、魅力的な方法である。というのも、移植される予定の臓器に対してエキソビボで適用されたsiRNAは、臓器のレシピエントに全身投与されず、そして、この処置は、炎症部位に対して特異的に送達され得るからである。この方法は、全身性の有害な作用なしに、移植片の不全を防止するために有用であり得る。
【0070】
siRNAトランスフェクション処方物は、固形のドナー臓器をインサイチュおよび/またはエキソビボで洗浄するため、そして、静止状態または機械式潅流による臓器保存のために使用される。処方された溶液は、固形臓器内への局所注射のため、そして、siRNA処方物中に固形臓器を浸すことによってこの固形臓器全体を漬けるための両方に有用である。
【0071】
siRNA剤は、移植された臓器(組織)および細胞の処置のためのトランスフェクションキャリアを用いてか、または用いずに、単一または複数の遺伝子を標的とする、単一または複数のいずれかの二重鎖として使用され得る。トランスフェクション剤としては、合成ポリマー、リポソームおよび糖類などが挙げられるがこれらに限定されない。siRNA剤はまた、低分子インヒビターおよびモノクローナル抗体インヒビター、免疫も銃れーターおよび他の型のオリゴヌクレオチドのような他の薬剤と共に使用され得る。移植用の臓器にsiRNA/キャリア溶液を注射することおよび移植用の臓器をsiRNA/キャリア溶液に浸すことは、組織の損傷と宿主の拒絶反応を最小にし、それ故、臓器の機能および生存の観点での移植される臓器の成功と、同時の病的状態の最小化を高める。
【0072】
また、本発明において、種々の臓器および細胞が、移植プロセスの間に、siRNA/キャリア処方物により処置され得る。あらゆる固形臓器移植は、本質的に、ドナーの外科的準備を必要とし、これは、身体、または、移植に使用される特定の臓器の洗浄性の灌流を含み得る。灌流は、1種以上の流体で行われ得る。臓器は、レシピエントへの運搬の間の保存のために摘出され、そして、臓器が、レシピエントへと外科的に移植される。本発明の方法において有用な臓器としては、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、膵島、小腸、肺、角膜、四肢および皮膚、ならびに、これらの臓器の各々に対応する培養細胞が挙げられるがこれらに限定されない。一つの例である、肝細胞株は、単離された肝細胞の移植のための普遍的なドナーとして開発され始めており、これは、代謝性肝疾患の処置のための正常位での肝移植よりも侵襲性の少ない方法である。CD28/B7またはCD40/CD40Lのような経路を介する同時刺激は、このような移植の成功のための主要な問題である(2)。したがって、CD28またはCD40経路の両方をサイレンシングするためにsiRNA/キャリア処方物を用いることは、移植の成功率を改善するための良好な戦略である。
【0073】
腎臓移植の失敗についての別の例は、固形臓器移植後のパルボウイルスB19(PV−B19)感染であり、これは、赤芽球ろう(PRCA)を引き起こし得る。免疫抑制された移植レシピエントにおけるPV−B19感染は、有意な病的状態を伴う(1)。PV−B19または任意の他のウイルスの感染および複製を阻害するためにsiRNAを用いることは、移植の初期段階の間に、ドナーの臓器および移植レシピエントの両方を処置することによって、腎臓移植を改善するための補助治療である。
【0074】
この局面の別の局面において、本発明は、1以上のsiRNA二重鎖を含有する組成物を提供し、この組成物において、siRNAは、同種移植片または異種移植片の拒絶反応または虚血/再潅流傷害に関与するいくつかの遺伝子を同時に標的とし得る。複数のsiRNA二重鎖の組み合わせは、同種移植片の拒絶反応または虚血/再潅流傷害の阻害により有効であり得る。
【0075】
免疫調節プロセスは、本発明の方法を用いたsiRNAサイレンシングのための過多の分子標的を提供する:例えば、(1)活性化に関連するリンパ球上の分子;(2)MHCクラスIIのようなリンパ球を刺激する抗原提示細胞(APC)上の分子および同時刺激性の分子;(3)可溶性分子シグナル(例えば、TNF−α、IFN−β、IL−1、IL−6、IL−8のようなサイトカイン);(4)血管細胞接着分子−1、細胞間接着分子−1のような、リンパ球の血管外遊出およびホーミングに関連する分子;ならびに(5)免疫のエフェクター分子(例えば、補体因子C3であるがこれに限定されない)。さらなる候補標的遺伝子としては、細胞間接着分子−1、主要組織適合遺伝子複合体クラスI、主要組織適合遺伝子複合体クラスII、IFN−γ、CD80、CD86、CD40およびCD40Lが挙げられる。
【0076】
本発明はまた、siRNAオリゴカクテル(siRNA−OC)を本発明の方法に有用な治療剤、または、癌および炎症の処置のためのより強力な抗血管新生効率を達成するための治療剤として使用するための方法および組成物を提供する。このsiRNAオリゴカクテルは、少なくとも3つのmRNA標的を標的とする、少なくとも3つの二重鎖を含む。siRNAオリゴカクテルは、表1〜15に列挙されるsiRNA配列のいずれかを含み得る。一実施形態において、siRNAオリゴカクテルは、補体C3、MHC−IIおよびIFNγに対して特異的なsiRNAを含む。本発明は、2つの重要な局面に基づく:第一に、siRNA二重鎖は、非常に強力な遺伝子発現インヒビターであり、そして、各siRNA分子は、同じ化学特性をもつ短い二本鎖RNAオリゴ(21〜23nt、または24〜25nt、または26〜29nt)から作製される;第二に、同種移植片または異種移植片の拒絶反応および虚血/再潅流傷害は、部分的に、内因性遺伝子の過剰発現に関連する。したがって、複数の遺伝子を標的とするsiRNA−OCを用いることは、siRNA二重鎖の化学的均一性と、複数の疾患または損傷を引き起こす遺伝子のダウンレギュレーションからの相乗作用とに起因して、有益な治療的アプローチを体現する。本発明は、siRNA−OCは、少なくとも3つの遺伝子を標的とするsiRNA二重鎖の組み合わせであり、種々の割合で、種々の物理的形状であり、そして、同時に同じ経路を介して、または、異なる経路および時間を介して疾患組織へと適用されるものと規定する。
【0077】
siRNAにより媒介されるサイレンシングは、1つのこのような遺伝子を標的とする単一のsiRNA、または、同じ遺伝子内のいくつかの標的配列を標的とするか、もしくは、この段落において同定されるもののような異なるカテゴリーに由来する種々の遺伝子を標的とする複数のsiRNAの組み合わせのいずれかを用いて適用され得る。例えば、複数のsiRNA二重鎖を含む組成物は、各々が、同じまたは異なる割合で存在し得る。したがって、3つのsiRNA混合物において、二重鎖I、二重鎖IIおよび二重鎖IIIは、非限定的な例として、各々が、総siRNA剤の各々の33.3%(w/w)で存在し得るか、それぞれ、20%、45%および35%で存在し得るかのいずれかである。
【0078】
そうでないと規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例示的な方法および材料が以下に記載されるが、本明細書に記載される方法および材料に類似するかまたはこれらと等価な方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用され得る。本明細書において言及されるあらゆる刊行物および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が支配する。多数の文献が本明細書において引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが、当該分野の一般的な知識の一部を形成するという容認を構成するものではない。本明細書および特許請求の範囲の全体にわたり、用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」のようなバリエーションは、述べられる整数の包摂、または、整数群を意味すると理解されるが、任意の他の整数または整数群を除外するものとは理解されない。材料、方法および実施例は、例示に過ぎず、限定するものと意図されない。
【実施例】
【0079】
(実施例1:インビトロにおけるsiRNA媒介性のC3発現のノックダウン)
RNA干渉は、その配列の小さな独特のセグメントにしたがって、遺伝子発現をブロックする。この生来のプロセスは、特定の遺伝子の転写を減らすために利用され得る。転写において、ドナー由来の補体C3が、虚血/再潅流傷害(I/RI)において迅速にアップレギュレートされ、組織の損傷に寄与することが確立されている。補体C3は、種々の形態の傷害および免疫調節の局所的なメディエーターとして記載され、そして、同種異系免疫の調節においても十分に補助し得る、移植による虚血/再潅流傷害後の遺伝子ノックダウンについての有効な標的である。この研究は、ドナーの臓器においてC3遺伝子の発現をノックダウンするためにsiRNAを利用することを試みた。
【0080】
ラット腎臓上皮細胞株を、10μg/ml IL−1および0.1μg/ml IL−6で刺激して、C3遺伝子の発現をアップレギュレートした。刺激から72時間後、これらの細胞を、C3特異的siRNAのパネルのうち1つでトランスフェクトした。
【0081】
【表16】


【0082】
48時間後、C3の発現を、リアルタイムPCRにより決定した。結果は、C3の発現が、刺激後に、トランスフェクトしていない細胞においてアップレギュレートされたことを示した(図1)。siRNAで処理した細胞は、siRNAで処理していないコントロール細胞と比較して、C3の発現の60%までの減少を示した。これらの実験は、siRNAの潜在的なオフターゲット作用(off−target effect)である、IFNγのアップレギュレーションを非特異的に誘導しなかった、パネルからの最も効率的なC3 siRNAを同定した(図1において、C3−3 siRNAとラベルした)。
【0083】
先の実験において得た候補のC3 siRNAを、上記のようにC3を発現するように刺激したラット腎臓上皮細胞中にトランスフェクトした。このC3特異的なsiRNAの濃度の範囲は、リアルタイムPCRにより測定したとき、有意な(P<0.05)C3 mRNAのノックダウンをもたらした(図2)。この実験は、インビボ試験について同定されたC3 siRNA配列の技術的な実現可能性および有効性を実証する。
【0084】
(実施例2:インビボにおけるsiRNA媒介性のC3発現のノックダウン)
先の実施例において決定した最も効率的なC3 siRNAを、次いで、インビボsiRNAトランスフェクションを容易にする、合成ポリカチオン性ナノ粒子内にパッケージングした。このナノ粒子は、PolyTranから構成され、このPolyTranは、分枝ヒスチジン(H)およびリジン(K)ポリマーのファミリーで、インビトロ、インビボおよびエキソビボでのsiRNAの移送に有効である。これらのコア配列は以下の通りである:R−KR−KR−KR、ここで、R=[HHHKHHHKHHHKHHH]2KH4NH4である。インビボ実験について、最初に、以下の分枝HKポリマーを、同種移植片細胞内へとsiRNAを送達する効率について調べた:H3K4b。この分枝ポリマーは、R分枝が異なることを除いて、上記のものと同じコアおよび構造を有する:R=KHHHKHHHKHHHKHHHK。このポリマーは、異なる核酸形態についてのそのインビトロまたはインビボでの効率に基づいて選択した。分枝HKポリマーを、水溶液中に溶解し、次いで、列挙した質量比でsiRNA水溶液と混合し、直径150〜200nmの平均サイズのナノ粒子を形成した。HKP−siRNA水溶液は、沈殿物の目立った凝集もなく、半透明であった。これらの溶液は、少なくとも3ヶ月間、4℃に保存可能である。
【0085】
このナノ粒子を、Hyper Osmolar Citrate灌流液に加え、そして、ドナーのラット腎臓に投与した。4時間の低温虚血の後、この腎臓を、同系の宿主へと移植した。2日後、この腎臓を摘出し、そして、リアルタイムPCRによりC3遺伝子の発現を決定した。移植していない非処理の腎臓をネガティブコントロールとして用い(図3においてNKCとラベルした)、一方、灌流し、移植したが、siRNAで処理していない腎臓を、ポジティブコントロールとして用いた(図3においてISCHとラベルした)。siRNA処理した腎臓におけるレベルを、移植していない非処理の腎臓におけるmRNAレベルに対して正規化した。結果を図3に示す。
【0086】
結果は、C3−siRNAが、移植後のC3遺伝子発現を、非処理の移植物と比較して62.56%(P<0.05、n=4)低下させ、これは、正常な腎臓において検出されるレベルより低かったことを示す。FITC標識スクランブルsiRNAコントロールに対して比較すると、C3遺伝子の発現は、73.34%減少した(P<0.05、n=4)。FITC標識スクランブルsiRNAコントロールは、非処理の腎臓を上回るC3遺伝子発現のアップレギュレーションを示し、これは、オフターゲット作用を示唆するものであった。組織学は、移植前にC3 si RNAで処理した腎臓における虚血/再潅流傷害(I/RI)からの異化抑制(sparing)を示した(図4)が、FITC標識スクランブルsiRNAを用いた、灌流した細胞および組織の直接蛍光顕微鏡法は、組織における検出可能なsiRNAを含まなかった。
【0087】
まとめると、C3遺伝子発現のsiRNAによる阻害は、コントロールと比較して、局所的なC3の活性を効率的に減少した。ナノ粒子の戦略は、効率的なsiRNA送達の問題を克服するようである。ここで、従来の免疫抑制または寛容導入に対する補助療法として、特異的なsiRNAのアレイを開発して、ドナー臓器における炎症促進性遺伝子の発現を減少させることが可能であるようである。
【0088】
(実施例3:ファージディスプレイによる、移植された腎臓において濃縮されたペプチド配列の決定)
siRNA含有ナノ粒子に臓器標的特異性を与えるために、目的の臓器において濃縮されるペプチドを、ファージディスプレイにより同定し得る。この方法を用いて、上記の腎臓移植のラットモデルにおいて、候補の標的ペプチドを同定した。ドナーの腎臓を、Hyper Osmolar Citrateで灌流し、そして、同系宿主への移植前に、4℃にて4時間保存した。48時間後、レシピエントに麻酔をかけ、そして、調製したシステイン拘束した7マーのファージライブラリー(New England Biolabs)を尾静脈から注射した。5分後、移植した腎臓を摘出し、そして、「インビボ生体パニング(biopanning)」の最初のラウンドにおいて、この腎臓からファージを抽出した。この抽出したファージを、E.coli細菌において増殖させ、その後、別の腎臓移植レシピエントに注射した。この生体パニングを、合計3ラウンド繰り返した。各ラウンド後、ファージのサンプルを採って、移植した腎臓中に存在する数を見積もった。各増殖の後、ファージが単離され得、そして、発現されたライブラリーペプチドのDNA配列が決定され得るように、ファージのサンプルを、寒天プレート上の細菌コロニー内で増大させた。図5(下パネル)は、コントロールのターゲティングストレプトアビジン(R3vsStrep)と比較したときの、生体パニングの各ラウンド後に移植した腎臓から回収したファージ(ランダムファージ)の数の増大を示す。腎臓において濃縮された、同定されたペプチド配列の例は、C−LPSPKRT−C、C−LPSPKKT−C、C−PTSVPKT−Cである。3ラウンドの生体パニングの後、移植された腎臓においてファージが濃縮され、そして、このファージは、レシピエントの他の臓器においてもかなり少ない数が見られる(図5、下パネル)。この候補ペプチドは、移植された臓器に対するsiRNAターゲティングに特異性を与えるために、TrageTranナノ粒子内へと組み込まれ得る。
【0089】
(文献)
1.Subtirelu MM et al.Acute renal failure in a pediatric kidney allograft recipient treated with intravenous immunoglobulin for parvovirus B19 induced pure red cell aplasia.Pediatr Transplant.2005 Dec;9(6):801−4
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【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、ラット腎臓細胞におけるC3 mRNAの相対的な発現を示す棒グラフである。これらの細胞を、IL−1およびIL−6で刺激して、C3発現を増加させた。3つの候補C3 siRNA配列(C3−1、C3−2、C3−3)、または、FITC標識スクランブルsiRNAを、種々の濃度にてこの細胞にトランスフェクトした。細胞の一方のセットは、LipofectamineありかつsiRNAなしで処理し(+lipofectamine)、一方、もう一方のセットは、C3を生成するよう刺激し、そして、LipofectamineもsiRNAもなしで処理した(−lipofectamine)。トランスフェクションから48時間後に、細胞におけるC3 mRNAレベルをリアルタイムPCRにより測定した。点線は、非刺激の細胞のC3発現を示す。この実験は、siRNAによる遺伝子ノックダウンの実現可能性および有効性を示した。C3−3 siRNAを候補として選択し、さらなる実験において使用した。
【図2】図2は、IL−1およびIL−6で刺激してC3発現を増加させたラット腎臓細胞におけるC3 mRNAの相対的な発現を示す棒グラフである。これらの細胞もまた、種々の濃度のC3−3候補配列でトランスフェクトした。刺激から48時間後のC3 mRNA発現についてのリアルタイムPCRは、このsiRNA配列は、siRNAなしで処理した刺激細胞と比較して、C3発現の減少をもたらすことを示した。測定は、非刺激の細胞におけるC3 mRNA発現(点線)に対して正規化した。
【図3】図3は、移植したラット腎臓におけるC3 mRNAレベルの相対的な発現を示す棒グラフである。腎臓を、移植前に、処理しなかったか、あるいは、種々の量の、スクランブルsiRNA、またはC3特異的なsiRNAを含むナノ粒子で処理した。各データ点は、4つの別々の腎臓からのデータを含み、そして、各PCR反応を、3連で行った。これらの実験条件におけるC3 mRNAレベルを、正常な移植していない腎臓(NKC、正常腎臓コントロール)、およびsiRNAで処理していない移植した腎臓(ISCH、虚血性コントロール)におけるC3 mRNAレベルと比較した。この図面は、C3 mRNAレベルが、正常な移植していない腎臓、およびC3特異的なsiRNAで処理していない移植した腎臓におけるC3 mRNAレベルと比較して、移植前にC3特異的なsiRNAで処理した腎臓においてより低いことを示す。C3特異的なsiRNAを、種々の割合のPolyTranでパッケージングし、図1において以下のようにラベルした:C3、1:4.5でPolyTran中に存在する10μgのC3 siRNA;C3 naked、PolyTranなしで、10μgのC3 siRNA;C3 3:1、1:3でPolyTran中に存在する10μgのC3 siRNA;C3 1.5:1、1:1.5でPolyTran中に存在する10μgのC3 siRNA。siRNAの特異性についての要件を調べるために、2セットの腎臓を、移植前に、スクランブルsiRNAで処理した:FITC、10μgのFITC標識スクランブルsiRNA;SCRAM CON、10μgの非標識スクランブルsiRNA。
【図4】図4は、移植したラット腎臓の組織学的解析を示す2つのパネルのセットである。上側のパネルは、移植から48時間後の非処理腎臓を示す。組織病理学は、急性の尿細管壊死(ATN)の兆候である、広範囲に及ぶ尿細管の減衰と尿細管の拡大とを示す。この特定の病理学は、移植後の移植された組織の初期の機能不全(non−function)に関連する。下パネルは、移植から48時間後の、C3 siRNA(PolyTranと1:4.5の比で存在)で前処理した腎臓を示す。この腎臓の組織病理学は、より少ない量のATNを示す。
【図5】図5は、siRNA含有ナノ粒子を特定の臓器へと標的化させるために使用され得る短いペプチドを同定するように機能する実験の結果を表す、2つの棒グラフを示す。ファージディスプレイを用いて、移植された腎臓において濃縮される候補ペプチドを同定した。図5の上パネルは、1つの実験についての代表的なデータを示し、3ラウンドのファージライブラリーの注射、回収および増大の後に、腎臓から回収したファージの濃度(組織1グラムあたりのプラーク形成単位で表示)が増加している。コントロール実験においては、ストレプトアビジン(R3vsStrep)をファージ結合のための標的として用いた。図5の下パネルは、レシピエントの移植した腎臓(Tx腎臓)、正常腎臓(N腎臓)、膵臓、心臓および肺における3ラウンドの生体パニングの後に回収したファージの数を示す。このデータは、他の臓器から回収したファージの数と比較して、移植された腎臓内へのファージのホーミングにおける選択性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体に移植される臓器の細胞中に存在する免疫調節遺伝子または免疫エフェクター遺伝子を標的とする、ターゲティングポリヌクレオチド。
【請求項2】
一本鎖の直鎖状ポリヌクレオチド、二本鎖の直鎖状ポリヌクレオチド、または、ヘアピンポリヌクレオチドである、請求項1に記載のターゲティングポリヌクレオチド。
【請求項3】
表1〜15に開示される配列から選択される配列を標的とする第一のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のターゲティングポリヌクレオチド。
【請求項4】
移植された臓器の、該臓器のレシピエントによる拒絶反応を抑制する方法であって、該方法は、該臓器を該レシピエントに移植する前に、該臓器を、請求項1に記載のターゲティングポリヌクレオチドを含有する組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記組成物が、請求項2に記載のターゲティングポリヌクレオチドを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、請求項3に記載のターゲティングポリヌクレオチドを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記接触させる工程が、前記臓器に前記組成物を灌流させる工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させる工程が、前記臓器を前記組成物中に漬けるか、または、浸す工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、複数の請求項1に記載のターゲティングポリヌクレオチドを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させる工程が、被験体への移植前の臓器保管の間に、前記免疫調節標的遺伝子または免疫エフェクター標的遺伝子をダウンレギュレートするのに有効である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドが、前記臓器の細胞内の前記標的遺伝子の発現を阻害する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記臓器がドナーの臓器である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記臓器が腎臓である、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記臓器が肝臓である、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記移植される臓器が肺である、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記臓器が膵臓である、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記臓器が心臓である、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記臓器が小腸である、請求項4に記載の方法。
【請求項19】
前記臓器が角膜である、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記臓器が、上皮細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞(心臓)、および移植時に該臓器中に存在するパッセンジャー白血球からなる群より選択される細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項21】
前記レシピエントがヒトである、請求項4に記載の方法。
【請求項22】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表1に列挙される配列から選択されるC3(補体C3)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表2に列挙される配列から選択されるICAM1(細胞間接着分子−1)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表3に列挙される配列から選択されるVCAM−1(血管細胞接着分子−1)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表4に列挙される配列から選択されるIFN−γ(インターフェロンガンマ)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項26】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表5に列挙される配列から選択されるIL−1(インターロイキン−1)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項27】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表6に列挙される配列から選択されるIL−6(インターロイキン−6)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項28】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表7に列挙される配列から選択されるIL−8(インターロイキン−8)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項29】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表8に列挙される配列から選択されるTNF−α(腫瘍壊死因子−アルファ)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項30】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表9に列挙される配列から選択されるCD80配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項31】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表10に列挙される配列から選択されるCD86配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項32】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表11に列挙される配列から選択されるMHC−II(主要組織適合遺伝子複合体クラスII)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項33】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表12に列挙される配列から選択されるMHC−I(主要組織適合遺伝子複合体クラスI)配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項34】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表13に列挙される配列から選択されるCD28配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項35】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表14に列挙される配列から選択されるCTLA−4配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項36】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、表15に列挙される配列から選択されるPV−B19配列を標的とする、請求項6に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物がさらに灌流液を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物がさらにPolyTranポリマー溶液を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物がさらにTargeTranナノ粒子溶液を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項40】
前記灌流液が、Hyper Osmolar Citrate溶液またはUniversity of Wisconsin溶液である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、1以上の遺伝子配列に対する1以上のsiRNA二重鎖を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項42】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、低分子薬物、モノクローナル抗体薬物、または他の免疫調節因子と組み合わせて使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が複数のターゲティングポリヌクレオチドを含み、該ポリヌクレオチドが、複数の遺伝子配列を標的とする、請求項4に記載の方法。
【請求項44】
前記ターゲティングポリヌクレオチドが、C3遺伝子配列、TNF−α遺伝子配列およびIL−8遺伝子配列を標的とするカクテルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物がさらに前記臓器のレシピエントに投与される、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−518008(P2009−518008A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543476(P2008−543476)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045933
【国際公開番号】WO2007/064846
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507338530)イントラディグム コーポレイション (2)
【出願人】(508160347)ユニバーシティー オブ リーズ (1)
【Fターム(参考)】