説明

避雷装置

【課題】 限流素子の故障により発生したアークでもって上部端子電極が溶解・ガス化することを抑制する。
【解決手段】 非直線性の電流電圧特性を有する限流素子11を一対の端子電極12,13間に挟み込んで限流素子11および端子電極12,13を同軸上に配列させて絶縁外被体15で被覆した避雷装置であって、電線側端子となる一方の端子電極12と限流素子11との間に、重金属製のスペーサ18を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は避雷装置に関し、詳しくは、雷サージ等による異常電圧の発生時、送配電線の周辺機器を雷サージ等から保護する避雷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高圧や特別高圧の送配電線およびその付近への落雷による雷サージや、開閉器、遮断器などの入り切りによる開閉サージに起因して異常電圧が発生した際に送配電線の周辺設備をサージから保護するため、送配電線の電線側と接地側との間に避雷装置を取り付けている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この避雷装置は、図5に示すように、サージ電圧に対しては低抵抗、送配電線の通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有するZnO等からなる限流素子1を内蔵した構造を具備する。また、電線側端子である金属製の上部端子電極2と接地側端子である金属製の下部端子電極3との間に複数個の限流素子1を同軸上に配列させて電気的かつ機械的に接続し、その周囲に複数本の絶縁ロッド4を配置してそれら絶縁ロッド4の両端を上部端子電極2および下部端子電極3に固定し、上部端子電極2、下部端子電極3および限流素子1の外周面に、弾性を有するポリマーやEPDM等の絶縁外被体5を被着した構造を有する。
【0004】
この避雷装置では、通常、限流素子1が高抵抗となっており電線側と接地側を絶縁しているが、サージ等による異常電圧が発生すると、限流素子1が低抵抗となってこれを瞬時に大地に逃がし、その異常電圧が消滅すれば、限流素子1が高抵抗となって大地に流れる電流を遮断する。この弁作用により、送配電線の周辺設備を雷サージや開閉サージ等の異常電圧から保護するようにしている。
【特許文献1】特開平7−263116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した避雷装置では、装置の軽量化を図るため、上部端子電極2および下部端子電極3にアルミニウム等の軽金属材料を使用することが多い。この種の避雷装置において、電線側端子である上部端子電極2を覆う絶縁カバー6を取り付けた場合、避雷装置の性能を超える直撃雷などの過大な雷サージにより異常電圧が発生して限流素子1が故障すると、内部に発生する短絡電流によるアークは、限流素子1の電線側端子である上部端子電極2の付近が起点となって発生する。
【0006】
このとき、上部端子電極2がアルミニウム等の軽金属材料で形成されていると、限流素子1の故障により発生したアークでもって上部端子電極2が溶解・ガス化してその上部端子電極2に取り付けられた絶縁ロッド4の固定部分が破損する。一方、限流素子1の故障により発生したアークの熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇する。ここで、前述したように上部端子電極2と絶縁ロッド4との固定部分が破損すると、内部圧力の急激な上昇により避雷装置が爆発的に破壊されてその破片が周囲へ飛散することがある。
【0007】
なお、上部端子電極2を覆う絶縁カバー6が取り付けられていない場合には、避雷装置の内部で発生したアークは、外部に露呈している金具に移行して避雷装置の外側を閃絡するため、避雷装置の爆発および破片の飛散が発生し難い。
【0008】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、限流素子の故障により発生したアークでもって上部端子電極が溶解・ガス化することを抑制し得る避雷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、非直線性の電流電圧特性を有する限流素子を一対の端子電極間に挟み込んで限流素子および端子電極を同軸上に配列させて絶縁外被体で被覆した避雷装置であって、電線側端子となる一方の端子電極と限流素子との間に、重金属製のスペーサを介在させたことを特徴とする。なお、本発明は、電線側端子となる一方の端子電極を覆う絶縁性カバーが取り付けられた構造の避雷装置に適用可能である。
【0010】
本発明では、電線側端子となる一方の端子電極と限流素子との間に、重金属製のスペーサを介在させたことにより、限流素子の故障時に発生する短絡電流によるアークの起点は、電線側端子である一方の端子電極と限流素子との間に位置するスペーサとなる。従って、アークにより一方の端子電極が溶解・ガス化する代わりにスペーサが犠牲となって溶解・ガス化することになる。この時、そのスペーサが重金属材料からなるため、スペーサの溶損を小さくすることができて前述の端子電極まで溶損することを抑制でき、避雷装置の爆発および破片の飛散を未然に防止できる。
【0011】
本発明における重金属製のスペーサは、6mm以上の厚みを有することが望ましく、また、限流素子と実質的に同一径であることが望ましい。これは、限流素子の故障時に発生する短絡電流によるアークでスペーサが溶解・ガス化しても一方の端子電極の溶損を回避し得るスペーサの大きさを規定したものである。スペーサが6mmより小さい厚みか、あるいは、限流素子より小径であると、アークによりスペーサが溶解・ガス化すると共に一方の端子電極まで溶損する可能性がある。なお、スペーサが限流素子よりも大径であると、避雷装置が大型化するために好ましくない。ここで、「限流素子と実質的に同一径である」とは、スペーサの直径が限流素子の直径と同一である場合だけでなく、スペーサの直径が限流素子の直径よりも1mm〜2mmの大小を許容することを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電線側端子となる一方の端子電極と限流素子との間に、重金属製のスペーサを介在させたことにより、限流素子の故障時に発生する短絡電流によるアークにより一方の端子電極が溶解・ガス化する代わりにスペーサが犠牲となって溶解・ガス化することになる。この時、そのスペーサが重金属材料からなるため、スペーサの溶損を小さくすることができて前述の端子電極まで溶損することを抑制でき、避雷装置の爆発および破片の飛散を未然に防止できる。その結果、安全性および信頼性の向上が図れ、長寿命の避雷装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る避雷装置の実施形態を以下に詳述する。図1は、絶縁ブラケット17に接地側端子である下部端子電極13をボルト止めにより固定して避雷装置を起立保持した状態を例示する。なお、本発明は、避雷装置を他の取り付け状態で設置した場合についても適用可能である。
【0014】
この実施形態における避雷装置は、図1〜図4に示すように、サージ電圧に対しては低抵抗、送配電線の通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有するZnO等からなる限流素子11を内蔵した構造を具備する。
【0015】
避雷装置は、電線側端子となるアルミニウム等の軽金属製の上部端子電極12と接地側端子となるアルミニウム等の軽金属製の下部端子電極13との間に前述の限流素子11を電気的かつ機械的に接続し、これら複数個の限流素子11を上部端子電極12と下部端子電極13との間に挟み込んでそれらを同軸上に配列させ、その周囲に複数本のFRP製絶縁ロッド14を配置してそれら絶縁ロッド14の両端を上部端子電極12および下部端子電極13に固定する。
【0016】
なお、前述の上部端子電極12および下部端子電極13をアルミニウム等の軽金属製とすることにより、避雷装置の軽量化を図っている。この避雷装置では、電線側端子である上部端子電極12を覆う絶縁カバー16を取り付けている。
【0017】
それら上部端子電極12、下部端子電極13および限流素子11の外周面に、耐候性、絶縁性および耐トラッキング性に優れたシリコーン、EVAやEPゴム等の高分子材料からなる絶縁外被体15を被着する。この絶縁外被体15は、限流素子11の側面に直接的に成形する方法やチューブ状に成形したものを熱収縮や挿入により被着させる方法などにより形成される。
【0018】
なお、複数個の限流素子11同士の接合状態を良好にするため、上部端子電極12と限流素子11との間、および下部端子電極13と限流素子11との間には、皿ばね等のばね性部材20,21およびOリング等のパッキン22,23を介在させている。また、上部端子電極12と限流素子11との接触面積、および下部端子電極13と限流素子11との接触面積を確保するため、上部端子電極12と限流素子11との間、および下部端子電極13と限流素子11との間には、スペーサ18,19をそれぞれ介在させている。
なお、ばね性部材20,21に皿ばねを使用した場合、絶縁外被体15の直接成形で、上部端子電極12とスペーサ18との間、下部端子電極13とスペーサ19との間に、絶縁外被体15の材料が侵入し、皿ばねによる導通を阻害するおそれがあるため、パッキン22,23を介在させることにより、絶縁外被体15の成形時にその材料の侵入を阻止している。
【0019】
特に、この上部端子電極12と限流素子11との間に介在させたスペーサ18は、限流素子11の故障時に発生する短絡電流によるアークの起点となることから、上部端子電極12の溶損を防止するため、鉄、ステンレス、銅、黄銅などの重金属製としている。
【0020】
FRP製絶縁ロッド14の上部端子電極12および下部端子電極13への固定は、加締め、接着あるいはねじ止め等の適宜の手段を用いる。両端に位置する上部端子電極12および下部端子電極13の固定は、FRP製絶縁ロッド14を用いる以外に、ループ状のFRP部材を両端の上部端子電極12および下部端子電極13に引掛けて固定する方法や、上部端子電極12および下部端子電極13および限流素子11の側面に未硬化または半硬化のFRPシートを巻き付けて硬化させる方法がある。
【0021】
この避雷装置では、通常、限流素子11が高抵抗となっており電線側と接地側を絶縁しているが、サージ等による異常電圧が発生すると、限流素子11が低抵抗となってこれを瞬時に大地に逃がし、その異常電圧が消滅すれば、限流素子11が高抵抗となって大地に流れる電流を遮断する。この弁作用により、送配電線の周辺設備を雷サージや開閉サージ等の異常電圧から保護している。
【0022】
電線側端子である上部端子電極12を覆う絶縁カバー16を取り付けた避雷装置では、避雷装置の性能を超える直撃雷などの異常電圧が発生すると、避雷装置の限流素子11が故障して上部端子電極12と下部端子電極13との間で内部アークが発生する。この避雷装置では、電線側端子となる上部端子電極12と限流素子11との間に、重金属製のスペーサ18を介在させたことにより、限流素子11の故障時に発生する短絡電流によるアークの起点は、電線側端子である上部端子電極12と限流素子11との間に位置するスペーサ18となる。
【0023】
従って、アークにより上部端子電極12が溶解・ガス化する代わりにスペーサ18が犠牲となって溶解・ガス化することになる。ここで、スペーサ18がアルミニウム等の軽金属製であると、スペーサ18の溶損が大きく、上部端子電極12まで溶損して避雷装置の爆発および破片の飛散を引き起こす可能性があるが、この実施形態の避雷装置では、そのスペーサ18が重金属材料からなるため、スペーサ18の溶損を小さくすることができて上部端子電極12まで溶損することを抑制でき、避雷装置の爆発および破片の飛散を未然に防止できる。
【0024】
前述のスペーサ18は、6mm以上の厚みで、かつ、限流素子11と同一径を有する。このようにスペーサ18の大きさを規定することにより、限流素子11の故障時に発生する短絡電流によるアークでスペーサ18が溶解・ガス化しても上部端子電極12が溶損することを確実に抑制することができる。なお、スペーサ18が6mmより小さい厚みか、あるいは、限流素子11より小径であると、アークによりスペーサ18が溶解・ガス化すると共に上部端子電極12まで溶損する可能性がある。また、スペーサ18が限流素子11よりも大径であると、避雷装置が大型化するために好ましくない。なお、スペーサ18の直径は、限流素子11の直径よりも1mm〜2mmの大小があってもよい。
【0025】
なお、上部端子電極12を覆う絶縁カバー16が取り付けられていない場合には、避雷装置の内部で発生したアークは、外部に露呈している金具に移行して避雷装置の外側を閃絡するため、避雷装置の爆発および破片の飛散が発生し難い。
【0026】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る避雷装置の実施形態で、絶縁ブラケットに取り付けた状態を示す部分断面を含む正面図である。
【図2】図1の避雷装置の内部要素を示す部分断面を含む正面図である。
【図3】図1の避雷装置の全体構成を示す部分断面を含む正面図である。
【図4】図1の避雷装置で、図3のA−A線に沿う横断面図である。
【図5】避雷装置の従来例を示す部分断面を含む正面図である。
【符号の説明】
【0028】
11 限流素子
12 端子電極(上部端子電極)
13 端子電極(下部端子電極)
15 絶縁外被体
16 絶縁性カバー
18 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非直線性の電流電圧特性を有する限流素子を一対の端子電極間に挟み込んで前記限流素子および端子電極を同軸上に配列させて絶縁外被体で被覆した避雷装置であって、電線側端子となる一方の端子電極と限流素子との間に、重金属製のスペーサを介在させたことを特徴とする避雷装置。
【請求項2】
前記重金属製のスペーサは、6mm以上の厚みを有する請求項1に記載の避雷装置。
【請求項3】
前記重金属製のスペーサは、限流素子と実質的に同一径で、かつ、6mm以上の厚みを有する請求項1に記載の避雷装置。
【請求項4】
前記電線側端子となる一方の端子電極を覆う絶縁性カバーが取り付けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の避雷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−16237(P2010−16237A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175768(P2008−175768)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000123354)音羽電機工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】