説明

還元剤を排気ガス流に導入する方法

還元剤を排気ガス流(16)に導入する方法が開示される。方法は、第1の添加イベントの実行を命令することと、第1の添加イベントの実行命令に応じて、還元剤を取り出し装置(32)に供給することと、還元剤を取り出し装置(32)から排気ガス流(16)に投入することと、還元剤を取り出し装置(32)から還元剤源(30)に向けて押し出すこととを含んでもよく、充分な還元剤が、ポンプ装置(28)および流体路(34)内に残り、ポンプ装置(28)を満たされた状態に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、還元剤添加システムを含む排気システムに関する。特に、本開示は、還元剤添加システムを浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的触媒還元(SCR)システムは、化石燃料駆動式システムから窒素酸化物(NOx)を除去する方法を提供する。SCR中に、触媒は、尿素などの還元剤とNOxとの間の反応を促進して、水および窒素ガスを生成し、それによって、排気ガスからNOxを除去する。通常、還元剤は、SCR触媒の上流で排気ガスと混合される。
【0003】
還元剤添加システムを使用して、尿素などの還元剤を排気ガス流に導入することができる。例えば、尿素は水と混合され、タンクに貯蔵される。動力システムが作動し、排気ガスを発生させると、尿素混合物がタンクからポンプで汲み上げられ、ノズルを介して排気ガス流に間欠的に散布される。
【0004】
尿素添加システムの課題は、尿素混合物が凍結する周囲温度が比較的高い(すなわち、約−11℃)ことに関係する。尿素が凍結すると、尿素は添加システム内で膨張し、噴射装置ノズルなどの複雑な部品に損傷を与えることがある。さらに、高い温度にさらされた場合に、尿素は分解して、添加用部品を詰まらせる恐れがある析出物を形成することがある。
【0005】
Gerlachによる(特許文献1)は、尿素添加システムを浄化する方法を開示している。(特許文献1)は、エンジンが停止され、凍結する恐れがある場合、加圧空気を使用して、調量弁および試剤ポンプから尿素を除去する。
【0006】
(特許文献1)に開示された方法は、添加システムでの尿素凍結という問題には対処し得る、エンジンが動作している間の高温での尿素分解という問題に対処できない可能性がある。例えば、ノズルに残った尿素が、噴射の合間に分解して、析出物を形成する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0163238号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、既存技術の欠点の1つまたは複数を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本開示は、還元剤を排気ガス流に導入する方法に関する。方法は、第1の添加イベントの実行を命令することと、第1の添加イベントの実行命令に応じて、還元剤を取り出し装置に供給することと、還元剤を取り出し装置から排気ガス流に投入し、還元剤を取り出し装置から還元剤源に向けて押し出すことを含むことができ、十分な還元剤がポンプ装置および流体路内に残って、ポンプ装置を満たされた状態に保つ。
【0010】
別の態様によれば、本開示はまた、添加システムを浄化する方法に関する。方法は、還元剤をポンプ装置から第1の流体路を介して取り出し装置に供給することと、還元剤を取り出し装置から排気ガス流に散布することと、還元剤を取り出し装置から第1の流体路に沿ってポンプ装置の方に押し出すことと、取り出し装置からの還元剤が、第1の流体路に沿った、第1の長さ未満の第2の長さになったときに、還元剤を第1の流路に沿って押し出すのを中止することを含むことができ、ポンプ装置から取り出し装置までの第1の流体路の長さは第1の長さである。
【0011】
別の態様によれば、本開示は、還元剤添加システムに関する。還元剤添加システムは、ポンプ装置を満たされた状態に保つのに十分な還元剤をポンプ装置内に維持しながら、加圧ガス源からの加圧ガスを用いて、還元剤を取り出し装置から第1の流体路に沿ってポンプ装置の方に排除するように構成された制御システムを有することができる。制御システムは、取り出し装置が還元剤をエンジンの排気ガス流に間欠的に投入する合間に、還元剤を排除することができる。
【0012】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面には、本明細書とともに、開示したシステムの原理を説明する助けとなる開示の例示的な実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】開示した例示的な動力システムの第1の概略図である。
【図2】動力システムの第2の概略図である。
【図3】図1の添加システムの開示した例示的な取り出し装置の概略図である。
【図4】図3の取り出し装置の開示した例示的なノズルの断面図である。
【図5】開示した例示的な添加方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2を参照すると、例示的な動力システム10が開示されている。動力システム10は、エンジン12および排気システム14を含む。エンジン12は、燃料システム、空気システム、冷却システム、周辺機器、駆動系部品、ターボチャージャなどの図示していない特徴部を含む。エンジン12は、(内燃、タービン、ガス、ディーゼル、ガス燃料、天然ガス、プロパンなどの)任意のタイプのエンジンとすることができ、任意の数量かつ任意の構成(「V」型、直列、星型など)のシリンダを有する任意の容量とすることができる。エンジン12を使用して、機関車用途、公道用トラックまたは車両、オフハイウェイトラックまたは機械、土工機械、発電機、航空宇宙用途、船舶用途、ポンプ、静止機械、あるいは他のエンジン駆動式用途を含む任意の機械または他の装置を駆動することができる。
【0015】
排気システム14は、エンジン12の排気ガス流16からの望ましくない排出物を低減するように設計された1つまたは複数の排気ガス後処理装置を含む。排気ガス後処理装置には、それらに限定するものではないが、再生装置、熱源、酸化触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、ディーゼル粒子フィルタ(DPF)、選択的接触還元触媒(SCR)、NOx吸蔵触媒(LNT)、マフラ、またはエンジン12から出た排気ガス流16を処理するために必要な他の装置を含む、様々な排出物処理技術が含まれ得る。
【0016】
図示した実施形態では、排気システム14は、酸化触媒システム18、混合器アセンブリ20、およびSCRアセンブリ22を含む。酸化触媒システム18は、様々な形で構成することができ、排気ガスに含有される炭化水素、一酸化炭素、および/または窒素酸化物を収集、吸収、吸着、および/または変換するのに有用な触媒材料を含むことができる。そのような触媒材料には、例えば、アルミニウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、バリウム、セリウム、および/またはアルカリ金属、アルカリ性土類金属、希土類金属、あるいはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0017】
SCRアセンブリ22は、バナジウムおよびチタンタイプ、プラチナタイプ、またはゼオライトタイプのSCR触媒などの任意の適切なSCR触媒を含むことができ、これらの金属の1つまたは複数を含み、NOxを低減する助けとなるように構成されたハニカム基板または他の構造体を含むことができる。混合器アセンブリ20は、還元剤が排気ガス流16に導入された後で、かつその混合物をSCRアセンブリ22に導入する前に、還元剤を排気ガス流16と混合するように構成されている。混合器アセンブリ20は、混合物の分解を促進し、かつ/または排気ガスおよび還元剤が十分に混ざるための十分な時間を提供する構造体を含む。構造体には、オリフィス、偏向器、旋回器、バッフル、または混合を促進する他の任意の適切な構造体が含まれ得る。
【0018】
添加システム24は、排気システム14に接続されて、還元剤を排気ガス流16に供給する。添加システム24は、添加装置を保持するキャビネットなどのハウジング26内に部分的に、または完全に配置することができる。添加システム24は、ポンプ装置28、還元剤源30、および取り出し装置32を含むことができる。
【0019】
還元剤源30は、例えば、還元剤溶液を貯蔵する低圧タンクとすることができる。還元剤源30は、ハウジング26から離れて配置されてよいし、またはハウジング26上、もしくはハウジング26内に統合されてもよい。還元剤は、例えば、尿素水溶液、またはSCRで還元剤として使用するのに適した他の流体とすることができる。
【0020】
第1の流体路34は、還元剤源30を取り出し装置32に流体的に接続する。第1の流体路34は、取り出し装置32からポンプ装置28までの流路長さである長さL1を有する。
【0021】
ポンプ装置28は、排気ガス流16に導入するために、還元剤を還元剤源30から第1の流体路34を介して取り出し装置32に移送するように置かれ、構成されている。ポンプ装置28は、還元剤を還元剤源30から取り出し装置32に送達できる任意の適切な装置とすることができる。例えば、ポンプ装置28は、例えば、膜ポンプなどの流量調節ポンプとすることができる。ポンプ装置28は、例えば、電気モータによってなど、エンジン12から独立して駆動されてよいし、またはエンジン12によって駆動されてもよい。
【0022】
添加システム24は、バイパス路38を含むことができる。バイパス路38は、ポンプ装置28と取り出し装置32との間の位置で、還元剤源30を第1の流体路34に流体的に接続する。第1の弁40が、バイパス路38に接続されている。第1の弁40は、バイパス路38を通る流れを選択的に可能にするか、または遮断することができる任意の適切な弁とすることができる。図示した実施形態では、第1の弁40は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な、空気駆動式スプリング付勢制御弁である。第1の弁40は、第1の位置で、バイパス路38を通る流れを選択的に可能にし、第2の位置で、バイパス路38を通る流れを選択的に遮断する。
【0023】
添加システム24は、加圧ガス源42、圧力レギュレータ44、第2の弁46、および第3の弁48を含む。第2の流体路50は、加圧ガス源42を取り出し装置32に流体的に接続し、第3の流体路52は、加圧ガス源42を第1の弁40の制御ポート54に流体的に接続する。
【0024】
加圧ガス源42は、ハウジング26から離れて配置されてよいし、またはハウジング26上、またはハウジング26内に統合されてもよい。加圧ガス源42は、ポンプおよび/または空気などの加圧ガスを収容する加圧容器を含むことができる。加圧ガスは、還元剤の噴霧化を改善するために、取り出し装置32で還元剤と混合することができる。
【0025】
圧力レギュレータ44は、第2の流体路50内のガス圧を機械的に調整するように配置されている。圧力レギュレータ44は、圧力損失後、適切な圧力が取り出し装置32で維持されて、還元剤の噴射を補助するように、加圧ガス源42の近くで適切な圧力を維持することができる。
【0026】
第2の弁46は、加圧ガス源42を第2の流体路50を介して取り出し装置32に選択的に流体接続するように配置されている。第2の弁46は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な、例えば、ソレノイド駆動式で、スプリングで付勢された制御弁などの任意の適切な弁とすることができる。第2の弁46は、第1の位置で、第2の流路50を通る流れを選択的に可能にし、第2の位置で、第2の流路50を通る流れを選択的に遮断する。
【0027】
第3の弁48は、加圧ガス源42を第3の流体路52を介して第1の弁40の制御ポート54に選択的に流体接続するように配置されている。第3の弁48は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な、例えば、3つのポートを備えた、ソレノイド駆動式で、スプリングで付勢された方向制御弁などの任意の適切な弁とすることができる。第3の弁48は、第1の位置で、制御ポート54を大気に流体的に接続し、第2の位置で、加圧ガス源42を制御ポート54に流体的に接続する。したがって、図示した実施形態では、第3の弁48が第1の位置にある場合、制御ポート54および第3の流体路52にある任意の加圧ガスは大気に排出されて、第1の弁40が開くのを可能にする。第3の弁48が第2の位置にある場合、加圧ガス源からの加圧ガスは、第1の弁40を強制的に閉じさせる空気制御信号として働く。別の実施形態では、第3の弁48は削除され、第1の弁は別の供給源から駆動することができる。例えば、第1の弁40は、ソレノイドで駆動することができる。
【0028】
取り出し装置32は、還元剤を排気ガス流16に導入できる任意の適切な装置とすることができる。図3を参照すると、取り出し装置32は、第1の流路60、第2の流路62、およびノズル64を含む。第1の流路60は、第2の流体路50に流体的につながり、加圧ガスがノズル64に入るのを可能にする。第2の流路62は、第1の流体路34に流体的につながり、還元剤溶液がノズル64に入るのを可能にする。ノズル64は、混合器アセンブリ20に隣接して配置されるか、または少なくとも一部が混合器アセンブリ20内に配置される。したがって、ノズル64の一部は排気ガス流16にさらされる。
【0029】
図4を参照すると、ノズル64は、第1の流路60に流体的につながる第1のノズル路66と、第2の流路62に流体的につながる第2のノズル路68とを含む。第1のノズル路66および第2のノズル路68は、チャンバ70によって流体的に接続されている。したがって、第1のノズル路66からの加圧ガスと、第2のノズル路68からの加圧還元剤溶液とはチャンバ70で合流する。
【0030】
チャンバ70は、複数のオリフィス74を介して混合器アセンブリ20に流体的に接続された1つまたは複数の噴射路72を含む。オリフィス74は、流れを圧力拘束する比較的小さい面積を有することができる。チャンバ70内の混合された加圧ガスおよび加圧還元剤は、圧力拘束に打ち勝つ十分な圧力(圧力差)を有することができる。したがって、加圧ガスおよび加圧還元剤はオリフィス74を通り、混合器アセンブリ20内に霧散することができる。
【0031】
図1および図2を参照すると、動力システム10はまた、ガス圧センサ76および制御システム78を含む。制御システム78は、エンジン12、排気システム14、および添加システム24の様々な部分を制御および観測する1つまたは複数のコントローラ80を含む。コントローラ80は、例えば、エンジン制御ユニット(ECU)などの、機械プロセスを自動化する当技術分野で公知の任意のタイプのプログラム可能ロジックコントローラとすることができる。制御システム78は、エンジン12、排気システム14、および添加システム24を制御および観測する単一のコントローラ、または複数のコントローラを有することができる。例えば、コントローラ80は、電線82を介してポンプ装置28の動作、電線84を介して第2の弁46の動作、および電線86を介して第3の弁48の動作を制御することができる。
【0032】
コントローラ80はまた、電線(図示せず)を介して動力システム10の他の構成要素、例えば、エンジン12、オペレータステーション(図示せず)、および排気システム14などに接続することができる。例えば、コントローラ80は、排気システム14内に配置された温度センサおよび排出物センサ(例えば、NOxセンサ)に電気的に接続することができる。コントローラ80は、例えば、SCRアセンブリ22の下流などの1つまたは複数の位置で排気ガス流中のNOxの量を観測することができる。排出物センサは、信号をコントローラ80に送ることができ、コントローラは、(i)添加システムが還元剤を排気ガス流16に噴射する添加イベントを開始し、(ii)添加を中止するか、または(iii)間欠的添加イベントの持続時間もしくは頻度を変える(例えば、各噴射の期間または噴射間隔を変える)ように添加システム24を制御することができる。
【0033】
さらに、コントローラ80はまた、排気ガス温度を示す、温度センサからの信号を受け取ることができる。コントローラ80は、排気システム14内の温度が、例えば、約180℃以上であり、選択的触媒還元が起こり得るしきい値温度を超えた場合に、添加イベントを開始することができる。排気ガス温度がしきい値温度を超えると、排気システムに配置された温度センサは、コントローラ80に信号を送る。
【0034】
ガス圧センサ76は、第2の流体路50内に配置され、電線88を介してコントローラ80に電気的に接続されている。ガス圧センサ76は、第2の流体路50内のガス圧を示す信号をコントローラ80に入力として供給する。ガス圧センサ76からの信号が、添加システム24の適切な動作に適さないガス圧を示す場合、コントローラ80は、電線86を介して、第1の位置から第2の位置に移動するように第2の弁46を制御し、それによって、第2の流体路50を通る加圧ガスの流れを遮断する。第2の弁46を第1の位置に移動させることで、加圧ガス源42は、第1の弁40の制御ポート45からも切り離される。したがって、第1の弁40は第2の位置に移動して、第1の流体路内の流体が還元剤源30に戻るのを可能にする。
【0035】
添加システム24はまた、必要に応じて、第1の流体路34内で、還元剤源30とポンプ装置28との間に配置された第1の逆止弁90と、第1の流体路34内で、ポンプ装置28とバイパス路38との間に配置された第2の逆止弁92とを含むことができる。
【0036】
産業上の利用性
開示した添加システムは、機関車または発電機などの排気ガス排出物を低減するために、流体を排気システムに送達する任意のシステムで使用することができる。開示した添加システムを使用して、機関車用途、公道用トラックまたは車両、オフハイウェイトラックまたは機械、土工機械、発電機、航空宇宙用途、船舶用途、ポンプ、静止機械、あるいは他のエンジン駆動式用途を含む、排気システムを有する任意の機械内の選択的触媒還元に影響を及ぼすことができる。
【0037】
図1〜3に示すように、取り出し装置32は、排気ガス流16に隣接している。エンジンが、特に、非アイドリング状態で動作している場合、排気ガス流16からの熱は、高温領域Hを生じさせる。高温領域Hは、エンジン動作中に、温度が所定のしきい値温度を超えることがある領域を示す。しきい値温度は、尿素が結晶化または分解し、析出物を形成する温度である。図1および図2では、図示するために、高温領域Hは、排気システム14、取り出し装置32、および第1の流体路34の一部を囲んで示されている。しかし、高温領域Hは、図に示したよりも大きい、または小さい範囲を囲んでもよい。例えば、高温領域Hは、取り出し装置32の一部だけを囲んでもよい。
【0038】
コントローラ80は、SCRを促進するために、還元剤を排気ガス流16に間欠的に噴射する(すなわち、間欠的添加イベント)ように添加システム24を制御する。噴射の頻度は、それらに限定するものではないが、エンジンの動作状態、排気ガスの温度、SCRアセンブリのNOxを低減する効率、還元剤の濃度、および他の因子などの様々な因子に応じて変えることができる。間欠的添加イベントの合間において、高温領域に(例えば、ノズルに)残った任意の還元剤が分解して析出物を形成することがある。析出物の形成を低減する、またはなくすために、添加システム24は、間欠的添加イベントの合間に還元剤を高温領域から排除する。
【0039】
図5は、添加システム24を操作する方法を提示している。エンジン12が回転して排気ガスを発生させており、ポンプ装置28が満たされて、還元剤を取り出し装置32に送達する準備ができたときに、示したステップが実行される。多くのポンプ装置は空気をうまく吐出しないので、ポンプ装置を満たすとは、ポンプ装置を所望の作動流体(例えば、還元剤)で満たして、ポンプ装置から空気を排出することを意味する。満たされていないポンプ装置は、作動流体を効果的に汲み上げることができず、一方、満たされたポンプ装置は、必要な場合に、作動流体を送出することができる。
【0040】
ステップ300で、制御システム78は、添加イベントの実行を命令する。例えば、コントローラ80は、排気ガス温度と、排気ガス流16中のNOxとを示す信号を受け取り、SCRプロセスで還元剤が必要とされていると判断する。それに応じて、制御システム78は、1回の添加イベントを実行するか、または複数の間欠的添加イベントを特定の頻度で実行するように添加システム24を制御する。例えば、制御システム78は、ポンプ装置28を作動させ、1つまたは複数の弁を駆動する。
【0041】
ステップ310で、添加システム24は、還元剤を排気ガス流16に噴射する第1の添加イベントを実行する。図1を参照すると、添加イベント中に、ポンプ装置28が作動され、第1の弁40が第1の位置に配置されて、バイパス路38を通る流れを遮断し、第2の弁46が第1の位置に配置されて、加圧ガス流が第2の流体路50を通るのを可能にし、第3の弁48が第2の位置に配置されて、加圧ガス源42を第1の弁40の制御ポート54に流体的に接続する。
【0042】
ポンプ装置28は、還元剤源30から還元剤を引き込み、圧力下で還元剤を第1の流体路34を介して取り出し装置32に移送する。さらに、加圧ガス源42は、加圧ガスを第2の流体路50を介して取り出し装置32に移送する。図3に示すように、加圧ガスおよび加圧還元剤は、それぞれ第1の流路60および第2の流路62を介して取り出し装置32に流入し、ノズル64に向かって流れる。図4に示すように、加圧ガスおよび加圧還元剤は、それぞれ第1のノズル路66および第2のノズル路68を介して流れ、チャンバ70で混合する。チャンバ70内のガスおよび還元剤の圧力は、オリフィス74の圧力拘束を超えることができ、還元剤および空気の混合物がオリフィス74を介して排気システム14内に霧散する。
【0043】
ステップ315で、高温領域から還元剤を排除する。図示した実施形態では、還元剤は、取り出し装置と、第1の流体路34(すなわち、供給管)の一部とから排除される。他の実施形態では、還元剤は、取り出し装置またはその一部から排除されさえすればよい。図2を参照すると、高温領域浄化イベント中に、ポンプ装置28は停止し、第1の弁40は第1の位置に配置されて、還元剤源30をバイパス路38を介して第1の流体路34に流体的に接続し、第2の弁46は、第1の位置に配置されて、加圧ガス流が第2の流体路50を通るのを可能にし、第3の弁48は第1の位置に配置されて、第1の弁40の制御ポート54を第3の流体路52を介して大気に流体的に接続する。
【0044】
加圧ガス源42は、加圧ガスを第2の流体路50を介して取り出し装置32に移送する。図3に示すように、加圧ガスは、第1の流路60を介して取り出し装置32に流入し、ノズル64に向かって流れる。図4に示すように、加圧ガスはさらに、第1のノズル路66を介してチャンバ70に流れ込む。ポンプ装置28は、この時点で動作していないので、第2のノズル路68は、オリフィス74の圧力拘束よりも流れに対する抵抗が低くなっている。したがって、加圧空気は第2のノズル路68に流れ込み、第2の流路62を介して取り出し装置32から流れ出る。この場合に、加圧ガス流は、残った還元剤を取り出し装置32の外に押し出す。
【0045】
還元剤および加圧空気の混合物は、第1の流体路34を通って還元剤源30の方に長さL2だけ戻ることを強いられる。長さL2は、ポンプ装置28の前(すなわち、L2はL1よりも短い)であるが、取り出し装置32と、取り出し装置32に近接した第1の流体路34とに残っていた還元剤が、高温領域Hの外に出るほど十分に遠い、第1の流体路34に沿った距離に相当する。それにより、還元剤は、添加時の還元剤の流れの方向とは反対の方向に、取り出し装置32から排除される。
【0046】
ポンプ装置28に近い方の第1の流体路34内の還元剤は、バイパス路38が、止まったポンプ装置28を通るよりも流れ抵抗が小さいように構成されているため、バイパス路38に沿って押される。
【0047】
ポンプ装置が浄化される前であるが、残っている還元剤および加圧ガスの混合物が高温領域Hから離れるまで排除された時点で、浄化ステップ315が中止される。浄化ステップ315を中止するトリガは、所定の時間間隔に基づくか、ポンプが浄化されないことを保証する加圧ガスの圧力制御に基づくか、コントローラ80による次の添加イベントの開始要求に基づくか、または還元剤源に戻された還元剤の量などの何らかの他の要因に基づくことができる。
【0048】
排除を中止するために、第2の弁46は、加圧ガスが第2の流体路50を通って取り出し装置32に流れる第1の位置に残る。同時に、第3の弁48は第2の位置に配置される。結果として、第1の弁40は、第1の位置から第2の位置に変わり、バイパス路38を通る流体流れを遮断する。第1の弁40は閉じられ、第2の逆止弁92は流体流れがポンプ装置28を通るのを妨げるので、流体のさらなる排除が防止され、加圧ガス源42によって取り出し装置32に送達された加圧ガスは、噴射路72を出て混合器アセンブリ20に至る。あるいは、排除を中止するために、第2の弁46を第2の位置に配置して、取り出し装置32への加圧ガスの流れを止めることができる。
【0049】
ステップ314で、添加システム24は、還元剤を排気ガス流16に噴射する次の添加イベントを実行する。次の添加イベントであるステップ314は、第1の添加イベントであるステップ310と動作上同じであるが、添加イベントの持続時間は異なってもよい。
【0050】
エンジンが(非アイドリング動作状態などの)動作中であり、SCRが望ましい間、添加システム24は、添加イベントの後に高温領域から還元剤を排除するパターンを繰り返す。この方法では、添加イベントの合間の期間中に、システム内の還元剤が、分解および析出物の形成をもたらすことがある高温にさらされることはない。さらに、システムの浄化により、ポンプ装置28から還元剤が排除されることはない。したがって、ポンプ装置28は満たされたままであり、引き続き、要求に応じて、還元剤を取り出し装置32に素速く供給することができる。間欠的浄化イベントはまた、システム全体が浄化されて還元剤源30に戻される場合よりも圧縮ガスの消費が少ない。
【0051】
図5の方法は、2つの添加イベントの合間ごとの浄化イベントについて説明しているが、当業者ならば、複数の連続する添加イベントの後など、より低い頻度で浄化イベントを行うことができると分かるであろう。
【0052】
開示した添加システムに対して様々な修正および変形を行うことができることが同業者には明らかであろう。開示した方法および装置の仕様および実施を検討することで、他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。仕様および実施を単なる例示とみなすことが意図され、真の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤をエンジン(12)の排気ガス流(16)に導入する方法であって、
第1の添加イベントの実行を命令することと、
第1の添加イベントの実行命令に応じて、還元剤を取り出し装置(32)に供給することであって、ポンプ装置(28)が、還元剤を還元剤源(30)から流体路(34)を介して取り出し装置(32)の方に移送することと、
還元剤を取り出し装置(32)から排気ガス流(16)に投入することと、
還元剤を取り出し装置(32)から還元剤源(30)に向けて押し出すことであって、十分な還元剤がポンプ装置(28)内に残って、ポンプ装置(28)を満たされた状態に保つ、
を含む方法。
【請求項2】
第2の添加イベントの実行を命令することと、
第2の添加イベントの実行命令に応じて、還元剤を取り出し装置(32)に供給することと、
還元剤を取り出し装置(32)から排気ガス流(16)に投入することをさらに含み、還元剤を取り出し装置(32)から還元剤源(30)に向けて押し出すことは、エンジン(12)が非アイドリング状態で動いている場合、第1の添加イベントと第2の添加イベントとの合間に行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポンプ装置(28)から取り出し装置(32)までの流体路(34)の長さは第1の長さであり、取り出し装置(32)からの還元剤が流体路(34)に沿った第2の長さである場合、還元剤を取り出し装置(32)から還元剤源(30)に向けて押し出すのを中止することをさらに含み、第2の長さは第1の長さよりも短い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元剤を取り出し装置(32)から押し出すことは、ポンプ装置(28)を停止させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
排気ガス流(16)は、取り出し装置(32)に近接する高温領域を生じさせ、第2の長さは、高温領域の外にある、流体路(34)に沿った位置に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
還元剤を取り出し装置(32)から流体路(34)に沿って還元剤源(30)の方に押し出すことは、還元剤を取り出し装置(32)から排気ガス流(16)に投入する間欠的なステップの合間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
還元剤を取り出し装置から還元剤源に向けて押し出すことは、加圧ガスを取り出し装置に移送すことをさらに含み、加圧ガスが、取り出し装置内に残った還元剤と混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エンジン(12)用の還元剤添加システム(24)であって、
還元剤源(30)と、
還元剤源(30)に流体的に接続されたポンプ装置(28)と、
第1の流体路(34)によってポンプ装置(28)に流体的に接続され、還元剤をエンジン(12)の排気ガス流(16)に投入するように構成された取り出し装置(32)と、
第2の流体路(50)によって取り出し装置(32)に流体的に接続される加圧ガス源(42)と、
取り出し装置(32)が還元剤をエンジン(12)の排気ガス流(16)に間欠的に投入する合間に、ポンプ装置(28)を満たされた状態に保つのに十分な還元剤をポンプ装置(28)内に維持しながら、加圧ガス源(42)からの加圧ガスを用いて、還元剤を取り出し装置(32)から第1の流体路(34)に沿ってポンプ装置(28)の方に排除するように構成された制御システム(78)と、
を含む還元剤添加システム(24)。
【請求項9】
排気ガス流(16)は、取り出し装置(32)に近接する高温領域を生じさせ、制御システム(78)は、取り出し装置(32)が還元剤を間欠的に投入する合間に、還元剤を高温領域から排除するように構成される、請求項8に記載の還元剤添加システム。
【請求項10】
還元剤源(30)を第1の流体路(34)に接続するバイパス路(38)と、還元剤を第1の流体路(34)から還元剤源(30)に選択的に送るように構成された第1の弁(40)とをさらに含む、請求項8に記載の還元剤添加システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515906(P2013−515906A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546064(P2012−546064)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060866
【国際公開番号】WO2011/079026
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】