説明

部品のメタライズ方法

本発明は、熱可塑性組成物を含むポリエステルである第1材料から構成される第1部分と熱可塑性組成物を含むポリアミドから構成される第2部分とを含む部品をメタライズする方法であって、メタライズシード層を適用し、部品を識別可能なエッチング液に露出し、その後、メタライズ環境に露出する方法に関する。本発明はまた、前記方法により得ることができる、メタライズされた部品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、第1材料から作製された第1部分および第2材料から作製された第2部分を含む部品を選択的にメタライズする方法に関する。本発明はまた、メタライズされた部品にも関する。
【0002】
部品は、異なる材料から作製された2種以上の構成部分を含む場合がある。このような異種材料部品(multi−material component)は、選択的または部分的にメタライズするのに適している場合がある。選択的メタライズを行うための方法としては、選択的表面調整、予備触媒処理されたポリマーの使用、レーザー活性化、リソグラフィー技法等、幾つかのものが周知である。
【0003】
より詳細には、本発明は、選択的メタライズが可能な部品の調製方法であって、メタライズシード層を前記第1部分の表面の少なくとも一部および前記第2部分の表面の少なくとも一部に適用し、そして、メタライズシード層を含む第1および第2部分の表面の前記一部を、第1材料が可溶であり、かつ第2材料が不溶な、識別可能な(discriminative)エッチング液に露出する連続的なステップを含む方法に関する。メタライズそのものを実施するためには、選択的メタライズが可能な部品を調製する前記ステップに続いて、選択的メタライズ可能な部品の第1および第2部分の表面の少なくとも前記一部をメタライズ環境(metallizing environment)に露出するステップが施される。
【0004】
このような方法のうちの1つが欧州特許出願公開第1524331A1号明細書より周知である。この方法は、第1材料から作製された第1部分および第2材料から作製された第2部分から構成される部品をメタライズすることを含む。第1材料は第1ポリマーまたは他のプラスチックであってもよく、第2材料は第2ポリマーまたはプラスチックであってもよい。他の種類の、例えばセラミックのような非導電体も第1および/または第2材料として適用してもよい。欧州特許出願公開第1524331A1号明細書の周知の方法は、特定の溶剤中における化学的溶解性またはそれに対する耐性が異なる異種(例えば、ポリマーまたはセラミック)材料を使用することに基づいている。この周知の方法は、以下の連続的なステップを含む:メタライズシード層、例えば、それに続く化学的メタライズ処理を触媒するものを部品の表面に適用し、その後、メタライズシード層を含む部品の表面を、第1部分の表面が可溶であり、かつ第2部分の表面が不溶である溶剤に露出する。それに続くステップにおいては、部品の表面がメタライズ環境に露出される(但し、部品の第2部分の表面のみがメタライズされることとなる)。少なくともこれが目的である。欧州特許出願公開第1524331A1号明細書によれば、さらなるメタライズ処理の触媒となり得るメタライズシード層を前記部品の表面またはその部品の表面の該当する部分に適用し、その後、部品全体の表面または少なくとも前記シード層を含む該当部分を、前記第1部分の表面材料が可溶であるが、前記第2部分の表面材料が不溶な、「識別可能な」溶剤に露出する。第1部分が可溶でありかつ第2部分が不溶な溶剤に当該表面を露出すると、第1部分のそのシード層を含む表面は溶剤に溶解して除去されるであろう。したがって、メタライズシード層は、使用された溶剤に不溶な(十分耐性を有する)材料から作製された、部品の第2部分の表面のみに留まることとなる。続いて、(処理が完了した)部品をメタライズ環境に露出すると、その部品のうち「識別可能な」溶剤に露出した後にメタライズシード層が残留した部分すなわち第2部分のみがメタライズされることとなる。これは、部品の第2部分に残留シード層が存在しており、第1部分には存在しないという理由による。
【0005】
異なる溶剤に対し異なる溶解度を示す多くのポリマーが欧州特許出願公開第1524331A1号明細書に列挙されている。好適なポリマーの組合せの例として、PC/ABSの組合せが記載されている。識別可能な溶剤として水酸化ナトリウム溶液が使用されており、欧州特許出願公開第1524331A1号明細書には、ABS構成部分が「ほぼ100%の選択性」でメタライズされたという結果が報告されている。メタライズが100%選択的でない場合は、メタライズによって、第1および第2材料の一方に金属が堆積するだけでなく、他方の材料にもある程度堆積が起こる結果となる。
【0006】
欧州特許出願公開第1524331A1号明細書の方法の問題点は、様々な用途においてはこのメタライズの選択性が不十分なことにある。特に、寸法を小型化や縮小する傾向にあるE&E事業においては非常に高い選択性が要求される。もし選択性が十分に高くなければ、回路が短絡する問題が発生する可能性がある。ABS/PC系の他の問題点は、この材料の組合せを用いた部品のメタライズが、依然として、メタライズステップに用いられるメタライズ環境の組成の調整に幾分影響されやすいことにある。ABS/PC系のさらなる問題点は、金属層のポリマーに対する接着力が弱いことにあり、これが部品のさらなる取扱いおよび加工時に損傷を生じさせる原因となる可能性がある。
【0007】
本発明の主な目的は、これらの問題点が解消されているかまたはその程度が低減されており、メタライズ処理における選択性がより高く、かつ/またはメタライズの選択性がメタライズ環境の組成の調整による影響をより受けにくい方法および部品を提供することにある。本発明の第2の目的は、接着力が改善された金属層で被覆された部分を含む部品を提供することにある。
【0008】
この目的は、第1材料および第2材料の一方が熱可塑性組成物を含むポリエステルであり、かつ第1材料および第2材料の他方が熱可塑性組成物を含むポリアミドである、本発明の方法により達成された。
【0009】
第1および第2材料として熱可塑性組成物を含むポリアミドと熱可塑性組成物を含むポリエステルとの前記組合せが使用される本発明による方法の効果は、メタライズ処理における選択性が向上することにある。この効果は、目視または顕微鏡観察により、第1材料上への金属堆積が低減ないし解消されている点および/または第1材料上に金属が堆積しないことがメタライズ環境の組成の調整による影響をより受けにくい点によって認めることができる。換言すれば、本発明の方法は、メタライズ環境の組成変化に対する耐性がはるかに高い。
【0010】
本明細書における熱可塑性組成物という用語は、熱可塑性ポリマーを含むかまたは熱可塑性ポリマーからなる組成物であると理解される。本明細書における熱可塑性組成物を含むポリエステルまたはポリアミドという用語は、熱可塑性ポリマーが、それぞれ熱可塑性ポリエステルを含むかもしくは熱可塑性ポリエステルからなるかまたは熱可塑性ポリアミドを含むかもしくは熱可塑性ポリアミドからなる熱可塑性組成物と理解される。
【0011】
本明細書における「エッチング液」という用語は、ポリマー材料の少なくとも一部を溶解するかまたはポリマー材料の少なくとも一部を化学的に分解するかのいずれかによって、ポリマー材料の部分構成要素の表面をエッチングすることができる溶剤もしくは溶剤の混合物および/または1種もしくはそれ以上のエッチング剤の溶剤もしくは溶剤混合物中の溶液であってもよい液体と理解される。エッチングの作用により、その部分の表面層が除去される。
【0012】
本明細書における「第1材料が(エッチング液に)可溶である」という表現は、エッチング液を用いて得ることができる効果、すなわち前記第1材料から作製された部分の表面層を、その部分をエッチング液に露出することによって除去することができる効果(この結果が、前記ポリマー材料の少なくとも一部が溶解することによって得られるかまたは化学的に分解することによって得られるかには拘わらない)があることと理解される。
【0013】
本発明による方法においては、メタライズシード層を、この目的に好適な任意の方法で適用してもよい。シード層中に用いられる金属には、好ましくは、無電解めっき法の触媒となる金属が使用される。好適には、メタライズシード層は、Pdおよび/またはSn核を堆積させることによって適用される。メタライズシード層を適用するために、コロイド溶液またはイオン性溶液を使用することによってコロイドメタライズシード層またはイオン性メタライズシード層を形成させることも好適である。好ましくは、メタライズシード層は、Pd核を含むコロイドメタライズシード層である。
【0014】
本発明による方法に使用されるエッチング液は、熱可塑性組成物を含むポリエステルおよび熱可塑性組成物を含むポリアミドを「識別可能なエッチング液」である任意のエッチング液、すなわち、これらの材料の一方が可溶であり、かつ他方の材料が不溶であるエッチング液であってもよい。
【0015】
本発明による方法に使用することができる好適なエッチング液としては、酸性溶液、アルカリ性溶液、および有機溶剤が挙げられる。
【0016】
ポリアミド材料から構成される部分の表面をエッチングするには、酸性溶液が好ましい。好適な酸性溶液は、例えば、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸の希釈水溶液である。好ましくは、酸性溶液のpHは、0〜6、より好ましくは、1〜4の範囲にある。
【0017】
ポリエステル材料から構成される部分の表面をエッチングするにはアルカリ性溶液が好ましい。好適なアルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウム、ならびにこれらの混合物の水溶液である。好ましくは、アルカリ性溶液のpHは、8〜14、より好ましくは10〜13の範囲にある。好適な市販のアルカリ性エッチング液は、エンプレート・MID・セレクト・エッチ(Enplate MID Select Etch)9020である。
【0018】
有機溶剤は、好ましくは、ポリアミド材料から構成される部分の表面またはポリエステル材料から構成される部分の表面のいずれかをエッチングするように選択してもよい。例えば、ポリアミド材料用のエッチング液としてクロロベンゼンを使用してもよく、一方、ポリエステル材料用のエッチング液としては、塩素化された脂肪族炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等)を使用してもよい。
【0019】
好ましくは、エッチング液は、アルカリ性溶液である。本発明による方法にアルカリ性溶液を使用することの利点は、メタライズの選択性がさらに向上することにある。
【0020】
ポリエステルおよびポリアミド材料を識別可能なエッチング液と組み合わせて使用する本発明の方法は、周知の方法、例えば、部分1および部分2を作製した2種の材料に対し異なる吸着性を有する吸着剤を使用するものと併用してもよいことに留意されたい。本明細書においては、このような吸着剤を識別可能な吸着剤とも称する。このような識別可能な吸着剤は、有利には、メタライズシード層を形成する際に使用される。メタライズシード層を形成するために本発明の方法による識別可能なエッチング液を識別可能な吸着剤と併用すると、互いが増強し合い、最終結果が向上する。
【0021】
部品の第2部分が金属層によって選択的に被覆されている上述の部品を調製するために、本発明による方法のステップに続いて、第1および第2部分の表面の前記一部をメタライズ環境に露出するステップが行われる。この部品のメタライズ環境への露出は、全部または一部のみ(例えば、少なくとも第1および第2部分の表面の前記一部)のいずれかをメタライズ環境に露出することによって実施してもよい。このように、次いで部品をメタライズ環境に露出すると、一部分のみがメタライズされることとなる、すなわち、金属層または金属被覆が第2部分の表面の少なくとも一部に形成される。最終的なメタライズ処理の結果、部品の第2部分のみが金属層で被覆された部品が得られる。これは、「識別可能な」エッチング液に露出した後も残留するシード層が存在する一方で、他の部分は「識別可能な」エッチング液に溶解されてメタライズシード層が存在せず未被覆のままであったことによる。
【0022】
メタライズ環境に露出するためには、メタライズシード層を有する部品をメタライズするのに好適な任意のメタライズ環境を使用してもよい。好適には、メタライズステップは、シード層上に適用された対応する被覆の金属イオンおよび還元薬剤の両方を含む溶液由来の金属被覆(例えば、CuまたはNi)を接触還元することに基づいている。
【0023】
好ましい実施形態においては、この金属層は、第2材料としてのポリエステル材料上に適用されるニッケル−リン層である。その利点は、金属層と第2材料との間の接着力がさらに向上することにある。
【0024】
より好ましい実施形態においては、この金属層は、第2材料としてのポリアミド材料上に適用される銅層である。この利点は、金属層と第2材料との間の接着力がより一層向上することにある。
【0025】
メタライズステップは、コロイドメタライズシード層または液晶シード層を組み合わせて適宜実施してもよい。
【0026】
本発明による方法においては、ポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステルを含む。
【0027】
本明細書における「熱可塑性ポリエステル」という用語は、式I:
HO−[−{−C(O)−R1−C(O)−}−{O−R2−O−}−]−H (I)
(式中、−C(O)−R1−C(O)−は、ジカルボン酸の残留構造要素を表し、−O−R2−O−は、ジオールの残留構造要素を表す)で表される、二酸およびジオールの残留構造要素から本質的になるポリマーであると理解される。
【0028】
このようなポリエステルは、当該技術分野において周知の方法を用いた二酸またはそのエステル誘導体およびジオールの重縮合によって調製してもよい。二酸またはそのエステル誘導体およびジオール以外にも、場合により、単官能および三官能アルコールおよびカルボン酸等の少量の他の成分を重縮合中に使用してもよく、その残留構造要素が熱可塑性ポリマー中に存在していてもよいが、ただし、こうしたポリエステルが溶融加工性を有したままである場合に限る。
【0029】
本発明による組成物中に使用される熱可塑性ポリエステルは、好適には、非晶質ポリエステルまたは半結晶性ポリエステル、好ましくは、融点(Tm)が少なくとも200℃の半結晶性ポリエステルである。より好ましくは、熱可塑性ポリエステルポリマーは、半結晶性半芳香族ポリエステルである。前記半結晶性半芳香族ポリエステルは、通常、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、少なくとも1種のアルキレンジオールおよび/または芳香族ジオールとから誘導されたものであり、ホモポリマーだけでなくコポリマーも含まれる。この種の半芳香族ポリエステルは式Iで表され、式中、R1は、芳香族基を表し、R2は、アルキレンまたは芳香族基を表す。好適には、半結晶性半芳香族ポリエステルは、液晶ポリエステルである。
【0030】
好適な芳香族二酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましい。好適なアルキレンジオールとしては、脂肪族ジオールおよびジオールのための(環状)脂肪族化合物の両方が挙げられる。好適な芳香族ジオールは、例えば、ヒドロキノン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオールである。エチレンジオール、プロピレンジオール、1,4−ブチレンジオール、またはブタンジオール等のアルキレンジオール、ネオペンチルジオール、およびシクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0031】
これらの半芳香族ポリエステルは、少量の、例えば、脂肪族ジカルボン酸、単官能アルコールおよび/またはカルボン酸、ならびに他の3価以上の多官能アルコールおよび/またはカルボン酸をさらに含んでいてもよい。好ましくは、これらのポリエステル中の他の成分の含有量は、ポリエステルの半結晶性が確保されるよう、ポリエステルの総重量に対し20重量%未満、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。
【0032】
より好ましくは、本発明による方法に使用される部品の半芳香族ポリエステルは、二酸、ジオール、ならびに場合により少量の単および/または三官能性成分の残留構造要素からなる半芳香族ポリエステルであり、二酸の残留構造要素は、二酸の残留構造要素の総重量に対し少なくとも90重量%が芳香族二酸から誘導されたものであり、ジオールの残留構造要素は、ジオールの残留構造要素の総重量に対し少なくとも90重量%が、C原子が2〜6個の短鎖アルキレンジオールから誘導されたものである。
【0033】
本発明による組成物中に使用してもよい好適な半芳香族熱可塑性ポリエステルポリマーは、例えば、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレート、およびポリアルキレンビスベンゾエート、ならびにその任意のコポリマーおよび混合物である。これらのポリエステルは、アルキレンジオールと、それぞれテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、および4,4’−ジフェニルジカルボン酸とから誘導することができる。
【0034】
好適には、ポリアルキレンテレフタレートは、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(または単にポリブチレンテレフタレート(PBT)と称される)等の2〜6個の炭素原子を有する脂肪族ジオールをベースとするポリ(アルキレンテレフタレート)である。
【0035】
好適なポリ(アルキレンナフタレート)としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリブチレンナフタレート(PBN)が挙げられる。好適なポリアルキレンビスベンゾエートとしては、ポリエチレンビスベンゾエート(PEBB)およびポリブチレンビスベンゾエート(PBBB)が挙げられる。好適には、これらの半芳香族熱可塑性ポリエステルポリマーは、少量の他のジカルボン酸またはジオールを含む。
【0036】
これらのポリエステルの中でも、PET、PTT、PBT、PEN、PTN、PBN、およびこれらの任意の混合物またはコポリマーが好ましい。より好ましくは、熱可塑性ポリエステルポリマーは、PETを含むか、それどころか本質的にPETからなるか、それどころか完全にPETからなる。それは、PETは、熱変形特性とエッチングおよびメタライズにおける選択性とが最適に組み合わさっているためである。
【0037】
本発明による方法においては、ポリアミド組成物は、熱可塑性ポリアミドを含む。
【0038】
本明細書における「熱可塑性ポリアミド」という用語は、二酸およびジアミンならびに/またはアミノ酸の残留構造要素から本質的になるポリマーであると理解される。
【0039】
この種のポリアミドは、二酸もしくはそのエステル誘導体およびジアミンならびに/またはアミノ酸および/もしくはそのラクタム誘導体を当該技術分野において周知の方法を用いて重縮合することによって調製してもよい。二酸またはそのエステル誘導体、ジアミン、およびアミノ酸またはそのラクタム誘導体以外にも、場合により単官能および三官能アミンおよびカルボン酸等の少量の他の成分を重縮合中に使用してもよく、その残留構造要素が熱可塑性ポリアミド中に存在していてもよいが、ただし、こうしたポリアミドが溶融加工性を有したままである場合に限る。
【0040】
ポリアミド組成物中に使用することができる好適な熱可塑性ポリアミドは、例えば、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、およびこれらの混合物である。同じく好適な熱可塑性ポリアミドは、非晶質ポリアミドまたは半結晶性ポリアミドである。
【0041】
好適な脂肪族ポリアミドは、例えば、PA−6、PA−11、PA−12、PA−4,6、PA−4,8、PA−4,10、PA−4,12、PA−6,6、PA−6,9、PA−6,10、PA−6,12、PA−10,10、PA−12,12、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6/12−コポリアミド、PA−6/11−コポリアミド、PA−6,6/11−コポリアミド、PA−6,6/12−コポリアミド、PA−6/6,10−コポリアミド、PA−6,6/6,10−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、PA−6/6,6/6,10−ターポリアミド、ならびに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンとから得られるコポリアミド、ならびに上述のポリアミドのコポリアミドである。
【0042】
好適な半芳香族ポリアミドは、例えば,PA−6,I、PA−6,I/6,6−コポリアミド、PA−6,T、PA−6,T/6−コポリアミド、PA−6,T/6,6−コポリアミド、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド(2−MPMD=2−メチルペンタメチレンジアミン)、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T(2−MOMD=2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン)、テレフタル酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、ラウリンラクタム、および3,5−ジメチル−4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸、ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸、ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸、ならびにイソホロンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸および/またはテレフタル酸および/または他の芳香族もしくは脂肪族ジカルボン酸、場合によりアルキル置換されたヘキサメチレンジアミン、ならびにアルキル置換された4,4−ジアミノジシクロヘキシルアミンから得られるコポリアミド、ならびに上述のポリアミドのコポリアミドである。
【0043】
好ましくは、熱可塑性ポリアミドは、PA−6,6、PA−4,6、PA−6,T、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,T/6,6−コポリアミド、PA−6,T/6−コポリアミド、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、ならびに上述のポリアミドの混合物およびコポリアミドからなる群から選択される。
【0044】
好ましくは、熱可塑性ポリアミドは、ガラス転移温度(Tg)が少なくとも200℃である非晶質ポリアミドまたは融点(Tm)が少なくとも200℃である半結晶性ポリアミドである。
【0045】
より好ましいTgまたはTmは、少なくとも220℃、250℃、それどころか少なくとも280℃である。熱可塑性ポリアミドのTgまたはTmがより高いことの利点は、本発明による方法によって得られる部品がSMT(表面実装技術)工程において非常に優れた挙動を示すことにある。
【0046】
より好ましくは、熱可塑性ポリアミドは、融点(Tm)が少なくとも280℃の半結晶性ポリアミドである。
【0047】
本発明による方法において使用される部品の第1および/または第2材料は、それぞれ熱可塑性ポリエステルまたは熱可塑性ポリアミド以外に他の構成成分も含んでいてもよい。このような他の構成成分は、ポリマー組成物中に使用するのに好適な任意の構成成分であってもよい。
【0048】
好適な構成成分としては、他の熱可塑性成分、フィラー(例えば、無機フィラー)および繊維状強化材(例えば、ガラス繊維)、ならびに他の添加剤が挙げられる。このような添加剤は、ポリマー組成物中に慣用されている当業者に周知の任意の添加剤を含んでいてもよい。好適な添加剤としては、顔料、加工助剤(例えば、離型剤、核剤、または結晶化促進剤)、安定剤(例えば、UV安定剤および酸化防止剤)、難燃剤、耐衝撃性改良剤、および相溶化剤が挙げられる。無機フィラーとして好適なものは、当業者に周知のあらゆる非金属性非繊維状無機フィラー、例えば、ガラスビーズ、ケイ酸アルミニウム、雲母、クレー、焼成クレー、および滑石である。
【0049】
本発明による方法における部品中に使用される第1および/または第2材料組成物は、好適には、それぞれフィラーおよび/または繊維状強化材を含むフィラー充填および/または繊維強化材料である。
【0050】
好ましい実施形態においては、第1および/または第2材料は、
a)熱可塑性ポリマーを30〜90重量%と、
b)フィラーおよび/または繊維状強化材を10〜60重量%と、
c)他の添加剤を0〜20重量%と
からなり、ここで、a)、b)、およびc)の重量%は材料の総重量に対するものであり、a)、b)、およびc)の合計は100%である。
【0051】
より好ましくは、第1および/または第2材料は、
a)熱可塑性ポリマーを40〜85重量%と、
b)フィラーおよび/または繊維状強化材を15〜55重量%と、
c)他の添加剤を0〜10重量%と
からなる。
【0052】
同じくより好ましくは、熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの重量に対し、少なくとも75重量%、よりさらに好ましくは少なくとも80重量%、さらには90重量%が、熱可塑性ポリエステルまたは熱可塑性ポリアミドから構成される。
【0053】
本発明はまた、第1材料から構成される第1部分と第2材料から構成される第2部分とを含み、第2部分がメタライズシード層を含む部品、より詳細には、メタライズシード層が金属層で被覆されている部品に関する。
【0054】
本発明による部品においては、第1および第2材料の一方は熱可塑性組成物を含むポリエステルであり、第1および第2材料の他方は熱可塑性組成物を含むポリアミドである。
【0055】
本発明による部品は、好適には、本明細書において上述した本発明による方法を用いて得ることができる部品またはその任意の好ましい実施形態である。
【0056】
以下の実施例および比較実験を用いて本発明をさらに例示する。
【0057】
[実施例I]
ポリエステル部分およびポリアミド部分を含む2−K射出成形部品を、ガラス繊維PET材料(組成:PETを64重量%、ガラス繊維を35重量%、助剤を1重量%)およびガラス繊維強化ポリアミド−4,6材料(組成:ポリアミド−4,6を69重量%、ガラス繊維を30重量%、助剤を1重量%)から調製した。Pd核を含むコロイドメタライズシード層をこの部品上に適用した後、部品を40℃の希釈ナトリウム溶液を含むアルカリ性エッチング溶液に5分間露出し、水洗し、最後に銅を含有するメタライズ環境に露出した。結果として得られた部品を目視および光学顕微鏡で検査したところ、ポリアミド部分の上に銅の金属層が見られ、PET材料上には金属はほとんど見られなかった。
【0058】
[比較実験A]
PET材料およびポリアミド−4,6材料の部分をポリカーボネート材料およびABS材料でそれぞれ置き換えたことを除いて実施例Iを繰り返した。結果として得られた部品は、ポリカーボネート材料上により多量の金属が見られた。
【0059】
[接着試験]
実施例Iおよび比較実験Aのそれぞれの部品の第2部分上の金属層の接着力を、試験要素を金属層に接着させ、試験要素上で引っ張ることによって定性的に測定した。実施例Iのポリアミド−4,6材料の場合、比較実験AのABS材料の場合よりもはるかに高い接着力を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料から構成され、第1表面を有する第1部分と、第2材料から構成され、第2表面を有する第2部分とを含む部品をメタライズするための、次の連続的なステップ:
前記第1部分の前記表面の少なくとも一部および前記第2部分の前記表面の少なくとも一部にメタライズシード層を適用するステップと、
前記メタライズシード層を含む前記第1および第2部分の前記表面の前記一部を、前記第1材料が可溶であり、かつ前記第2材料が不溶であるエッチング液に露出するステップと
を含む方法であって、
前記第1材料および第2材料の一方が熱可塑性組成物を含むポリエステルであり、前記第1材料および前記第2材料の他方が熱可塑性組成物を含むポリアミドであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記メタライズシード層が、Pd核を含む金属シードを堆積させることによって適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチング液が、アルカリ性溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2部分の前記表面の前記一部をメタライズ環境に露出し、それによって前記第2部分の前記表面の少なくとも一部に金属層を形成させるステップが次に実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタライズが、銅またはニッケルを用いて実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
熱可塑性組成物を含む前記ポリエステルが、半結晶性熱可塑性ポリエステルを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性組成物を含む前記ポリアミドが、半結晶性ポリアミドを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および/または第2材料が、フィラー充填および/または繊維強化材料である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1材料から構成される第1部分と第2材料から構成される第2部分とを含み、かつメタライズシード層を含む部品であって、前記第1材料および第2材料の一方が熱可塑性組成物を含むポリエステルであり、前記第1材料および前記第2材料の他方が熱可塑性組成物を含むポリアミドである、部品。
【請求項10】
第1材料から構成され、メタライズされていない表面を有する第1部分と、第2材料から構成され、少なくとも一部がメタライズされている表面を有する第2部分とを含む部品であって、前記第1材料および第2材料の一方が熱可塑性組成物を含むポリエステルであり、前記第1材料および前記第2材料の他方が熱可塑性組成物を含むポリアミドである、部品。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、部分的にメタライズされた部品。

【公表番号】特表2010−504438(P2010−504438A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529592(P2009−529592)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008318
【国際公開番号】WO2008/037424
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】