説明

部品供給装置の保持ヘッド構造

【課題】部品導入時の吸引力と部品送出時の送出力を効果的に利かせることができる部品供給装置の保持ヘッド構造の提供。
【解決手段】保持ヘッド19の保持凹部21に、導入開放部22と送出開放部47と保持壁44と底面46が設けられ、部品1を目的箇所へ送出する送出手段48が保持ヘッド19に設けられ、部品1を保持凹部21内へ導入する磁石55を、該磁石55の吸引力が部品1の重心点Gと底面46の間に作用する箇所Sに配置して、部品1を受け止める保持壁44に対する部品1の吸引力と部品1が着座する底面46に対する部品1の吸引力を発生させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、進退動作をする供給ロッドの先端に部品の保持凹部が形成されている部品供給装置の保持ヘッド構造に関している。
【背景技術】
【0002】
特許第2824739号公報には、プロジェクションナットを収容する保持凹部が供給ロッドの先端部に形成され、この保持凹部の底部に、ナット送出用の複数の空気噴射口とナット保持用の複数の磁石が配置され、供給ロッドが目的箇所である電極ガイドピンまで進出した時点で空気噴射を行って、ナットを前記ガイドピンに係止させることが記載されている。
【0003】
また、特許第4277929号公報には、プロジェクションボルトを保持する保持凹部が供給ロッドの先端部に形成され、この保持凹部の底部に、ボルト送出用の空気噴射口が設けられ、ボルト先端部が目的箇所である受入孔に挿入された時点で空気噴射を行って、ボルトを受入孔の奥まで差し込むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2824739号公報
【特許文献2】特許第4277929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載されている技術は、ボルトやナットを目的箇所の近傍に到達させてから空気噴射で送出するものであるが、部品を供給ロッドの保持凹部に導入する際の導入安定性や、送出時の送出力軽減などに関する技術的配慮については何も言及されていない。
【0006】
本発明は、上記技術的配慮を尽くすために提供されたもので、部品導入時の吸引力と部品送出時の送出力を効果的に利かせることができる部品供給装置の保持ヘッド構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、進退動作をする供給ロッドの先端に部品の保持凹部が形成された保持ヘッドが設けられ、前記保持凹部に部品を部品供給通路から該保持凹部に進入させる導入開放部と該保持凹部から部品を目的箇所へ送出する送出開放部が形成されているとともに、前記保持凹部に部品を包囲する保持壁と部品が着座し前記部品供給通路に連なっている底面が設けられ、部品を前記保持凹部から前記送出開放部を経て目的箇所へ送出する送出手段が前記保持ヘッドに設けられ、部品を前記導入開放部から前記保持凹部内へ導入する磁石を、該磁石の吸引力が部品の重心点と前記底面の間に作用する箇所に配置して、部品を受け止める前記保持壁に対する部品の吸引力と部品が着座する前記底面に対する部品の吸引力を発生させるように構成したことを特徴とする部品供給装置の保持ヘッド構造である。
【発明の効果】
【0008】
部品を前記導入開放部から前記保持凹部内へ導入する磁石を、該磁石の吸引力が部品の重心点と前記底面の間に作用する箇所に配置して、部品を受け止める前記保持壁に対する部品の吸引力と部品が着座する前記底面に対する部品の吸引力を発生させるように構成したものである。
【0009】
上記構成によって、部品が保持凹部へ導入されるときには、磁石の吸引力が部品の重心点と保持凹部の底面との間に作用するので、吸引力は重心点から前記底面側、すなわち部品の重心点よりも低い位置に作用する。これによって、部品が底面を滑動しながら進入する際の姿勢が、前記底面に沿った安定したものとなる。
【0010】
このような安定した部品導入によって、保持凹部の保持壁に受け止められて保持凹部の所定の位置に部品が停止するので、送出手段の送出力が部品の正しい箇所に作用する。したがって、部品導入が正確に達成され、部品送出も正確に実行されて、動作信頼性の高い保持ヘッド構造がえられる。送出手段の送出力が部品の正しい位置に作用することによって、部品が送出されるときの姿勢が異常に傾いたりすることがなく、目的箇所に対して正しく供給される。あるいは、部品が保持凹部に導入される過渡期に、部品が底面から浮上した状態で進入する場合、部品は保持壁で受け止められてから直ちに底面に着座し、保持凹部の正常な位置に保持される。
【0011】
磁石の吸引磁力は、部品を保持凹部の奥へ引き込む方向の力、すなわち部品を受け止める前記保持壁に対する部品の吸引力と、部品を底面の方へ引きつける力、すなわち部品が着座する前記底面に対する部品の吸引力を発生している。このような力を受けて停止している状態から、送出手段によって部品が少しでも磁石から離れると、上記2方向の吸引力は急激に低下する。したがって、送出移動の初期には大きな送出力が必要であっても、すなわち送出移動の初期には大きな送出抵抗があっても、一旦、部品が移動すると、送出力は大幅に少なくてよいこととなる。
【0012】
このような急激な吸引磁力の低下は、磁石の吸引磁力が磁石と部品との間の距離の二乗に反比例するために得られるのであり、このような反比例の現象を保持凹部から部品が送出される際に応用することによって、部品が円滑に送出されて正確な部品供給が達成される。例えば、送出手段の動作が空気噴射によって行われる場合には、送出初期の過渡期に部品に傾きなどが発生しやすいのであるが、上記吸引磁力が急激に低下するので、部品を傾斜させる要素が部品移送の直後には実質的に消滅し、部品姿勢が異常に悪化することが防止できる。
【0013】
例えば、1つの磁石が、部品の停止前端部よりも進入方向で見て前方で、しかも底面よりも下側の位置に配置されている場合には、磁石と部品との離隔距離を長く設定できるので、送出初期の移動量が僅かであっても、大幅な吸引磁力の低下が確保できる。上記離隔距離が短くて送出初期の移動量が上記の移動量と同じである場合には、吸引磁力の低下は上記のように大幅低下とはならない。これは、前述のように、吸引磁力は磁石と被吸引物との間の距離の二乗に反比例するからである。このような現象によって、上述のような部品姿勢の異常な悪化の防止がなされるのである。
【0014】
本願発明は、上述のような構造の発明であるが、以下に記載する実施例から明らかなように、部品の送出過程などを特定した方法発明として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】部品供給装置全体の側面図である。
【図2】図1の(2)−(2)断面図である。
【図3】図2を上から見た平面図である。
【図4】部品供給装置の取り付け事例を示す側面図である。
【図5】保持ヘッドを示す斜視図、平面図、断面図である。
【図6】部品の保持状態を示す断面図である。
【図7】他の保持ヘッドを示す断面図である。
【図8】他の保持ヘッドを示す断面図である。
【図9】部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の部品供給装置の保持ヘッド構造を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図7は、本発明の実施例1を示す。
【0018】
最初に、供給される部品について説明する。
【0019】
図9は、供給される部品の斜視図であり、同図(A)は鉄製のプロジェクションナットであり、符号1で示されている。所定の厚さを有する本体部2は正方形の形状とされ、その中心部にねじ孔3が開けられている。本体部2の片側の四隅に溶着用突起4が形成されている。本体部2の上側が上端面5であり、下側が下端面6である。各部の寸法は、本体部2の一辺が12mm、本体部2の厚さが7mm、ねじ孔3の内径が6mmである。本実施例では、図9(A)に示したナット1を供給の対象として説明する。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0020】
また、図9(A)に示したナット以外に、図9(B)に示すような鉄製のナット1を供給の対象とすることもできる。これは、本体部2が円形で下側に円形のフランジ11が形成されている。図示していないが、フランジ11の下面に3つの溶着用突起が120度間隔で形成してある。このような円形ナット1以外に、孔の開いたディスタンスピースのような形状の部品を供給の対象とすることも可能である。
【0021】
つぎに、部品供給装置について説明する。
【0022】
部品供給装置全体は、符号100で示されている。静止部材7は、装置の機枠や壁板などで構成されている。後述するが、この静止部材7を電気抵抗溶接機のアーム部材やXガン、Cガンタイプの溶接機のアーム部材に置き換えることができる。この静止部材7に昇降手段である昇降エアシリンダ8が固定され、そのピストンロッド9が鉛直方向に進退するように配置してある。
【0023】
ピストンロッド9の下端に基部材10が固定されている。この基部材10は、分厚い長方形のステンレス鋼のような部材で構成されており、水平方向の姿勢で配置してある。基部材10の下面にナット1を導いてくる通路部材13が取り付けてある。この通路部材13は、通路が断面矩形とされた金属製の管部材であり、例えばステンレス鋼製であり、基部材10の下面に溶接またはボルト付けで取り付けられている。この通路部材13に柔軟性のある合成樹脂でできた供給ホース14が接続され、その他端はパーツフィーダ(図示していない)に接続されている。
【0024】
基部材10の下面には、通路部材13の隣に並べた状態でブラケット15が固定されている。この固定は、一点鎖線で示したボルト付けやあるいは溶接で行われている。ブラケット15は、分厚くて細長いステンレス鋼のような部材で構成してあり、基部材10から突き出た箇所を屈曲させて駆動手段取付け部材16が形成されている。したがって、ブラケット15は基部材10から突き出た箇所が傾斜した姿勢とされ、その傾斜角度は水平面に対して45度である。この角度は、後述のように通路部材13の出口開口23との位置合わせを考慮して、例えば25度〜60度の範囲で設定される。
【0025】
上記のようにして、基部材10に固定したブラケット15の駆動手段取付け部材16に供給ロッド18を進退させる駆動手段、すなわちエアシリンダ17が取り付けられ、供給ロッド18にナット保持用の保持ヘッド19が設けられ、ブラケット15の隣り合った箇所の基部材10に保持ヘッド19にナット1を到達させる通路部材13が取り付けられている。
【0026】
前記駆動手段取付け部材16に駆動手段であるエアシリンダ17の端部が結合してある。このエアシリンダ17のピストンロッド18が供給ロッドの機能を果たしており、供給ロッドも符号18で示されている。供給ロッド18の先端に保持ヘッド19が取り付けてある。
【0027】
なお、上記実施例では、ブラケット15と通路部材13が共に基部材10の下面に結合してあるが、これらを共に基部材10の上面に結合してもよい。あるいは、ブラケット15と通路部材13が基部材10を仲介にして並んだ状態とし、一方を基部材10の上面に固定し、他方を基部材10の下面に固定することも可能である。
【0028】
つぎに、保持ヘッドの概略について説明する。
【0029】
保持ヘッド19は、図1のように横から見ると逆「く」の字型であり、平面的に見ると図3に示すように、ナット1の四角い形状に合致した四角い保持凹部21が形成されている。この保持凹部19には、片側に開放した導入開放部22が設けられ、保持ヘッド19が最も後退した状態で通路部材13の出口開口23が前記導入開放部22に合致して、ナット1が保持凹部21に進入できるようになっている。導入開放部22はナット1を入りやすくするために、図5(B)(C)などに示すように、外側に向かって拡開している。
【0030】
このように、導入開放部22と出口開口23を合致させるために、前記駆動手段取付け部材16の傾斜角度や基部材10からの突出長さが選定されている。同時に、図3に示すように、通路部材13が基部材10から突出している長さやその先端側に形成した湾曲部24の湾曲形状が選定されている。このように、駆動手段取付け部材16の傾斜角度、寸法、基部材10からの突出長さなどを選定して、通路部材13の出口開口23と保持凹部21の導入開放部22が正確に合致するのである。駆動手段取付け部材16の傾斜角度や基部材10からの突出長さの選定によって、保持ヘッド19の移動軌跡が適正に設定されて、出口開口23と導入開放部22が正確に合致する。
【0031】
なお、理解しやすくするために、図3においては基部材10、昇降エアシリンダ8、エアシリンダ17などは2点鎖線で示されている。
【0032】
ナット1が供給される目的箇所としては種々な箇所がある。ここでは、電気抵抗溶接の電極のガイドピンである。エアシリンダなどの駆動手段で進退する可動電極25の中心部にガイドピン26が組み込まれ、ここにナット1が供給される。可動電極26と同軸位置に固定電極27が配置してあり、その上に鋼板部品28が載置してある。
【0033】
つぎに、部品供給装置の動作を説明する。
【0034】
図1は、エアシリンダ17のピストンロッド18が最も後退し、昇降エアシリンダ8のピストンロッド9は最も進出した状態である。この状態においては、前述のように、通路部材13の出口開口23と保持凹部21の導入開放部22が合致しており、通路部材13を通過してきたナット1が保持凹部21に進入する。
【0035】
ここで、エアシリンダ17の動作で保持ヘッド19が進出してねじ孔3がガイドピン26と同軸になった箇所で保持ヘッドの進出が停止する。ついで、昇降エアシリンダ8が縮小動作をすることにより、ナット1がガイドピン26に保持される。この保持については後述する。その後、昇降エアシリンダ8とエアシリンダ17が逆の動作をして元の位置に復帰する。
【0036】
このようにナット1が可動電極25のガイドピン26に保持されて可動電極25が下降し、ナット1の溶着用突起4が鋼板部品28に加圧され、ついで溶接電流が通電されて溶接が完了する。
【0037】
つぎに、部品供給装置の他の取り付け事例を説明する。
【0038】
図1〜図3の事例では、部品供給装置100が静止部材7に取り付けられている場合であるが、図4では部品供給装置100が他の部材に取り付けられている事例である。
【0039】
図4(A)は、ロボット装置30によって移動するXガンタイプの溶接装置31を示している。
【0040】
図4(A)に示すように、X型溶接機32は、下アーム部材33と上アーム部材34が軸35で結合され、下アーム部材33に対して上アーム部材34が揺動するようになっている。
【0041】
両アーム部材33、34の後端部に突片36、37が設けられ、その間にエアシリンダ38が取り付けてある。このエアシリンダ38が出力すると、上アーム部材34が軸35を中心にして揺動する。上アーム部材34の先端部と下アーム部材33の先端部にそれぞれ前述の可動電極25と固定電極27が取り付けられている。
【0042】
ロボット装置30は6軸タイプのような一般的なものであり、下側のアーム部材33に結合してある。このロボット装置30の動作で、鋼板部品の形状に合わせてX型溶接機32が上下、左右、回転などの方向に移動する。前述の部品供給装置100の上アーム部材34に対する取付けは、昇降エアシリンダ8を上アーム部材34の横側面に固定するか、上アーム部材34の下側面に固定することによってなされる。なお、図示していないが、C型溶接機の場合であっても、部品供給装置100の配置はX型と同様である。
【0043】
一方、図4(B)に示した事例は、定置式溶接機40の場合であり、下アーム部材33と上アーム部材34が設けられ、ここへの部品供給装置100の取り付けは、上記X型溶接機の場合と同じである。
【0044】
つぎに、保持ヘッドの詳細について説明する。
【0045】
保持ヘッド19は、図5に示すように、各部の加工や組立の事情で上部材41と下部材42を結合して構成されている。上部材41、下部材42はブロック状のステンレス鋼製部材に機械加工を施して製作されたもので、上部材41には保持凹部21が形成されている。この保持凹部21は、3面が保持壁43、44、45で包囲され、ナット1が着座する底面46を備えた収容空間であり、ナット1が進入してくる前述の導入開放部22が保持凹部21の横側に開放した形状となっている。前記底面46は、水平方向に配置してある。底面46は、部品供給通路である通路部材13に連なっている。また、導入開放部22の奥側の保持壁44が進入してきたナット1のストッパ面となっている。
【0046】
また、ナット1を目的箇所へ送出する送出開放部47が保持凹部21の上部に形成されている。したがって、ナット1は保持凹部21の横側から導入開放部22を通って進入し、上方に開放した送出開放部47を通って目的箇所へ送り出される。
【0047】
底面46には、4個の空気噴射口48が開けられ、各空気噴射口48からの噴流がナット1の上端面5または下端面6の4箇所に吹き付けられるようになっている。この吹きつけ箇所は複数であり、ナット1が傾いたりしないように空気噴射口48の位置が選定されている。つまり、噴射空気の動圧がナット1の上端面5または下端面6に均一に作用するようになっている。ここでは、上端面5または下端面6の四隅に近い箇所を狙って空気噴射がなされる。
【0048】
4つの空気噴射口48から均一に空気噴射を行わせるために、下部材42に空気通路が形成してある。図5(D)や(E)に示すように、下部材42に開けた空気通路が分配室50に開口しており、この分配室50から4方に延びる分配通路51が形成されている。分配室50は円形で保持凹部21の底面46の中心部に一致する箇所に形成されている。また、分配通路51の先端部は空気噴射口48に合致する位置に形成されている。
【0049】
空気噴射口48と分配通路51の先端部の位置関係が上記のように設定されているので、上部材41と下部材42を図5(A)に示すように重ね合わせて、両者を溶接あるいはボルト付けなどで一体化すると、噴射空気は空気通路49から分配室50を通って空気噴射口48から噴射される。なお、空気通路49に空気ホース52が接続してある。
【0050】
前記空気ホース52は、保持ヘッド19の進退に応じて伸縮させるために、図3に示すように、伸縮コイルの形状とされ、エアシリンダ17に留め具53で止め付けられ、他端は空気切換弁(図示していない)に接続されている。
【0051】
ナット1を保持凹部21から送出する送出手段として、上記のように空気噴射の方式を説明したが、これに換えて後述のような押出し部材を用いることも可能である。
【0052】
つぎに、導入用の磁石について説明する。
【0053】
ナット1を前記導入開放部22から前記保持凹部21内へ導入する磁石55を、該磁石55の吸引力がナット1の重心点Gと前記底面46の間に作用する箇所Sに配置して、ナット1を受け止める前記保持壁44に対するナット1の吸引力と、ナット1が着座する前記底面46に対するナット1の吸引力を発生させるように構成されている。
【0054】
1つの磁石55が、ナット1の停止前端部よりも進入方向で見て前方で、しかも底面46よりも下側の位置に配置されている。つまり、磁石55は図5や図6(A)から明らかなように、保持凹部21の保持壁44よりも前方で底面47よりも下方に配置してある。磁石の配置位置を選定することによって、吸引磁力Fの作用点Sをナット1の重心点Gよりも下側に設定する。重心点Gよりも下側というのは、重心点Gと底面46の間の区域を意味している。そして、図5から明らかなように、平面的に見ると、1つの磁石55が通路部材13や保持凹部21のナット導入中心線上に配置されている。
【0055】
上記吸引磁力Fは力F1とF2に分解される。力F1は、ナット1を保持凹部21の奥へ引き込む方向の力、すなわちナット1を受け止める前記保持壁44に対するナット1の吸引力として作用する。また、力F2は、ナット1を底面46の方へ引きつける力、すなわちナット1が着座する前記底面46に対するナット1の吸引力として作用する。
【0056】
つぎに、電極のガイドピンについて説明する。
【0057】
ナット1が供給される電極のガイドピン26の向きは、図1、図6のように下向きとされている場合や、図4(A)のロボット装置30によって上下、左右、斜め方向などあらゆる方向を向く場合がある。このような場合に備えて、ガイドピン26にナット1を保持する保持手段が採用されている。この保持手段としては、磁石を利用したもの、空気吸引力を利用したものなど種々なタイプのものが採用できる。ここでは、図示していないが、図6(B)や(C)に示すガイドピン26内に、永久磁石が埋設されている。
【0058】
図6(D)に示す電極は、ガイドピン26に進退機能が付与されたものである。同図は紙面の都合で横向きに図示されているが、実際には、同図の右側が上方である。可動電極25は中空形状とされ、その内部に摺動自在な状態で収容管56が挿入してある。この収容管56内にガイドピン26が摺動自在な状態で挿入されている。ガイドピン26は、大径で収容管56に収容されている摺動部57と、小径で電極端面から突き出ている係合部58によって構成され、その内部に永久磁石60が埋設してある。ナット1への吸引磁力を大きく作用させるために、ガイドピン26全体を非磁性材料であるステンレス鋼などで製作することが望ましい。
【0059】
摺動部57と収容管56の間に圧縮コイルばね61が挿入され、その張力は摺動部57と係合部58の境界部に形成されている段部が収容管56の内端面に衝合することによって受け止められている。可動電極25の端部にエアシリンダ62が固定され、そのピストンロッド63が収容管56に結合されている。動作アーム64が可動電極25に結合され、進退駆動手段(図示していない)によって、可動電極25が進退するようになっている。
【0060】
つぎに、空気噴射口からの噴射動作について説明する。
【0061】
前述のように、保持凹部21にナット1を磁石55で保持した保持ヘッド19が進出して、ねじ孔3がガイドピン26と同軸になった位置で保持ヘッド19の進出が停止する。それから昇降エアシリンダ8の動作でピストンロッド9が引き上げられると、基部材10も引き上げられて保持ヘッド19内のナット1のねじ孔3内へ相対的にガイドピン26が進入する。この進入長さが図6(B)に示すように、僅かな長さになったところで昇降エアシリンダ8の縮小動作を停止する。この停止後、空気噴射口48から空気が噴射される。この噴射によって、下端面6の4箇所を空気流で押し出すように動作する。
【0062】
この噴射によって、保持壁44と底面46に磁石55で吸引されているナット1は、ナット1の前端(溶着用突起4)が保持壁44を擦りながらわずかな初期移動をする。同時に、ナット1の下端面6も底面46からわずかに離隔する。このようにわずかな変位であっても、吸引磁力は磁石と被吸引物の離隔距離の二乗に反比例するので、移動初期の段階で吸引磁力は急激に低下する。この移動初期の段階では、図6(A)に示すナット1の左側は溶着用突起4が保持壁44と摺動するのに対して、右側は何も抵抗になるものがない。したがって、移動初期の段階ではナット1に左側が低くなるような傾斜がわずかに発生する。しかし、移動開始直後から急激に吸引磁力が低下するので、空気噴射の継続によってこのような傾斜はただちに消滅して傾きのない状態でガイドピン26が相対的に進入する。
【0063】
あるいは、昇降エアシリンダ8の動作でナット1の上端面5とガイドピン26の先端部の間隔が図6(C)に示すように、わずかな長さLとなった時点で昇降エアシリンダ8の縮小動作を停止し、その後、空気噴射口48から空気噴射を行う。この場合も、上記のように初期傾斜が発生しても傾斜が消滅する。
【0064】
つぎに、図6(D)に示した電極の動作を説明する。
【0065】
この例は、保持ヘッド19が進出してねじ孔3がガイドピン26と同軸になると、保持ヘッド19が停止する。この停止しているところへエアシリンダ62の進出動作でガイドピン26が突き出てきてねじ孔3内に僅かに進入し、ここでエアシリンダ62の進出動作が停止する。その後、空気噴射がなされてねじ孔3内にガイドピン26が完全に進入すると、空気噴射が停止し、今度は、永久磁石60の吸引力でナット1がガイドピン26に保持される。このようにガイドピン26に進出機能を付与することによって、前記昇降エアシリンダ8を外すことができる。
【0066】
図7は、保持ヘッドの構造形態を変えた場合を示す。
【0067】
同図(A)は、単一の保持ヘッド部材66に、保持凹部21、磁石55、空気噴射口48などを設けたもので、空気はジョイント部材67を経て空気噴射口48から噴射される。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0068】
同図(B)は、空気通路49が供給ロッド18から延びてきているものである。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の各実例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0069】
上記のように図6(D)に示した電極は、特有の構成を有するとともに特有の作用効果があるので、別の独立した発明として存在させることができる。
【0070】
上記実施例1では、ナット1の溶着用突起4が底面46に接触するナットの向きとされているが、これを逆にして上端面5が底面46に密着するようにナット導入を行ってもよい。
【0071】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記各種の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0072】
上述の供給ロッドの進退動作や空気噴射の動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行わせることが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0073】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0074】
ナット1を前記導入開放部22から前記保持凹部21内へ導入する磁石55を、該磁石55の吸引力がナット1の重心点Gと前記底面46の間に作用する箇所Sに配置して、ナット1を受け止める前記保持壁44に対するナット1の吸引力とナット1が着座する前記底面46に対するナット1の吸引力を発生させるように構成したものである。
【0075】
上記構成によって、ナット1が保持凹部21へ導入されるときには、磁石55の吸引力がナット1の重心点Gと保持凹部21の底面46との間に作用するので、吸引力は重心点Gから前記底面46側、すなわちナット1の重心点Gよりも低い位置Sに作用する。これによって、ナット1が底面46を滑動しながら進入する際の姿勢が、前記底面46に沿った安定したものとなる。
【0076】
このような安定したナット導入によって、保持凹部21の保持壁44に受け止められて保持凹部21の所定の位置にナット1が停止するので、送出手段である空気噴射の送出力がナット1の正しい箇所に作用する。したがって、ナット導入が正確に達成され、ナット送出も正確に実行されて、動作信頼性の高い保持ヘッド構造がえられる。空気噴射の動圧が部品の正しい位置に作用することによって、ナット1が送出されるときの姿勢が異常に傾いたりすることがなく、目的箇所に対して正しく供給される。あるいは、ナット1が保持凹部21に導入される過渡期に、ナット1が底面46から浮上した状態で進入する場合、ナット1は保持壁44で受け止められてから直ちに底面46に着座し、保持凹部21の正常な位置に保持される。
【0077】
磁石55の吸引磁力は、ナット1を保持凹部21の奥へ引き込む方向の力、すなわちナット1を受け止める前記保持壁44に対するナット1の吸引力と、ナット1を底面46の方へ引きつける力、すなわちナット1が着座する前記底面46に対するナット1の吸引力を発生している。このような力を受けて停止している状態から、空気噴射によってナット1が少しでも磁石55から離れると、上記2方向の吸引力は急激に低下する。したがって、送出移動の初期には大きな送出力が必要であっても、すなわち送出移動の初期には大きな送出抵抗があっても、一旦、ナット1が移動すると、送出力は大幅に少なくてよいこととなる。
【0078】
このような急激な吸引磁力の低下は、磁石55の吸引磁力が磁石55とナット1との間の距離の二乗に反比例するために得られるのであり、このような反比例の現象を保持凹部21からナット1が送出される際に応用することによって、ナット1が円滑に送出されて正確な部品供給が達成される。例えば、送出手段の動作が空気噴射によって行われる場合には、送出初期の過渡期にナット1に傾きなどが発生しやすいのであるが、上記吸引磁力が急激に低下するので、ナット1を傾斜させる要素がナット移送の直後には実質的に消滅し、ナット姿勢が異常に悪化することが防止できる。
【0079】
例えば、1つの磁石55が、ナット1の停止前端部よりも進入方向で見て前方で、しかも底面46よりも下側の位置に配置されている場合には、磁石55とナット1との離隔距離を長く設定できるので、送出初期の移動量が僅かであっても、大幅な吸引磁力の低下が確保できる。上記離隔距離が短くて送出初期の移動量が上記の移動量と同じである場合には、吸引磁力の低下は上記のように大幅低下とはならない。これは、前述のように、吸引磁力は磁石55と被吸引物1との間の距離の二乗に反比例するからである。このような現象によって、上述のようなナット姿勢の異常な悪化の防止がなされるのである。
【実施例2】
【0080】
図8は、本発明の実施例2を示す。
【0081】
この実施例2は、空気噴射による送出手段を、押出し部材に置き換えたものである。保持凹部21の底面46に開口するガイド孔68が設けられ、ここに押出し部材69が進退可能な状態で挿入してある。なお、ガイド孔68は円形の孔で、その内径はねじ孔3の内径よりも僅かに大きく設定してある。保持ヘッド部材66の下側に押出し部材69を押し出し駆動手段70が取り付けてある。この駆動手段70は進退出力をするものであればよく、エアシリンダや電磁ソレノイドなどが採用される。押出し部材69は高速で進出するものが良好で、それによる衝撃的な押し出しがナット1に付与され、ガイドピン26への移行がなされる。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例1と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0082】
本実施例の作用効果は、先の実施例1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上述のように、本発明の装置によれば、部品導入時の吸引力と部品送出時の送出力を効果的に利かせることができる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 プロジェクションナット
2 本体部
3 ねじ孔
4 溶着用突起
8 昇降エアシリンダ
10 基部材
13 通路部材
15 ブラケット
16 駆動手段取付け部材
18 供給ロッド、ピストンロッド
19 保持ヘッド
21 保持凹部
22 導入開放部
23 出口開口
24 湾曲部
25 可動電極
26 ガイドピン
30 ロボット装置
31 溶接装置
32 X型溶接機
40 定置式溶接機
44 保持壁
46 底面
47 送出開放部
48 空気噴射口
49 空気通路
55 磁石
G 重心点
S 吸引力が作用する箇所
66 保持ヘッド部材
69 押出し部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進退動作をする供給ロッドの先端に部品の保持凹部が形成された保持ヘッドが設けられ、
前記保持凹部に部品を部品供給通路から該保持凹部に進入させる導入開放部と該保持凹部から部品を目的箇所へ送出する送出開放部が形成されているとともに、前記保持凹部に部品を包囲する保持壁と部品が着座し前記部品供給通路に連なっている底面が設けられ、
部品を前記保持凹部から前記送出開放部を経て目的箇所へ送出する送出手段が前記保持ヘッドに設けられ、
部品を前記導入開放部から前記保持凹部内へ導入する磁石を、該磁石の吸引力が部品の重心点と前記底面の間に作用する箇所に配置して、部品を受け止める前記保持壁に対する部品の吸引力と部品が着座する前記底面に対する部品の吸引力を発生させるように構成したことを特徴とする部品供給装置の保持ヘッド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82052(P2013−82052A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237924(P2011−237924)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】