説明

部品内蔵配線基板

【課題】コア基板の空洞部に内蔵される複数の部品相互間の電気的干渉を抑制し得る部品内蔵配線基板を提供する。
【解決手段】本発明は、コア基板及び配線積層部を備えた部品内蔵配線基板であり、コア基板に形成された空洞部50は平面視で5個以上の角部を有する形状であり、空洞部50内には複数の部品Cが配置され、空洞部50が形成されたコア基板の内壁面と複数の部品Cとの間隙部に樹脂充填材20が充填されている。平面視で互いに略直交するX方向/Y方向に関し、Y方向に沿った電気的経路を有する部品C(1)と、X方向に沿った電気的経路を有する部品C(2)がそれぞれ配置され、両者の間の電気的干渉を抑制可能な構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア基板に形成された空洞部内に複数の部品を配置した部品内蔵配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コア基板の両側に導体層及び絶縁層を交互に積層して配線基板を構成し、配線基板上にICチップ等を搭載したパッケージが知られている。近年、ICチップの高速化及び端子数の増加により、外部基板から配線基板を経由してICチップに電源を供給する場合、電源電圧の不安定化やノイズの影響によるICチップの誤動作が問題となる。そのため、配線基板において、電源供給のための電気的経路に沿ってノイズを除去可能なデカップリングコンデンサを配置する対策が有効である。配線基板内に配置されるデカップリングコンデンサとしては、ICチップまでの配線距離の短縮化の観点から、コア基板内に設けた空洞部内にチップコンデンサを配置する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造の配線基板において、例えば、電源配線とグランド電位との間にチップコンデンサを接続することにより、電源配線に伝播するノイズを抑制することができる。
【0003】
また、上記従来の配線基板においては、ICチップに対して複数の電源電圧を供給する構成が一般的に採用される。この場合、配線基板には、ICチップに接続される複数の電源配線のそれぞれに対して個別にデカップリングコンデンサを設ける必要がある。例えば、上記特許文献1の図1には、配線基板に設けた空洞部である凹部内に、2つのチップコンデンサを所定方向に並べて配置した構造が開示されている。かかる構造は、チップコンデンサ以外の複数の部品を空洞部内に配置した配線基板に対しても適用することができる。このような構造を有する配線基板においては、所定のサイズを有する空洞部内に複数の部品を効率的に配置することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3522571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、配線基板を経由してICチップに複数の電源電圧を供給する場合、それぞれの電源配線の相互間の電気的干渉によってノイズが伝播することに起因して、ICチップの動作に不具合を生じる恐れがある。しかし、上記従来の配線基板の構造を採用すると、空洞部内に配置された複数の部品の間を伝播するノイズの影響が大きくなることは避けられない。すなわち、配線基板の空洞部内において複数の部品が互いに近接配置されるとともに、それぞれの電気的経路が並列した状態であるため電気的干渉が生じやすく、特に高い周波数成分のノイズは複数の部品の電気的経路を介して伝播しやすいという問題がある。また、複数の部品間の距離を広げると、互いの電気的干渉を軽減することは可能であるが、この場合は配線基板に大きな空洞部を設ける必要が生じ、配線基板の小型化に支障を来す。
【0006】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、コア基板の空洞部に複数の部品を内蔵した場合であっても部品相互間の電気的干渉を抑制し、小型で信頼性の高い部品内蔵配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の部品内蔵配線基板は、空洞部が形成されたコア基板と、前記空洞部内に配置された複数の部品と、前記コア基板の一方又は両方の主面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した配線積層部と、前記空洞部を画定するコア基板の内壁面と前記複数の部品との間隙部に充填された樹脂充填材と、を備えた部品内蔵配線基板において、前記空洞部は、平面視で5個以上の角部を有する形状に形成され、前記複数の部品は、平面視で互いに略直交する第1の方向及び第2の方向に関し、前記第1の方向に沿った電気的経路を有する第1の部品と、前記第2の方向に沿った電気的経路を有する第2の部品とを含むことを特徴としている。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明の部品内蔵配線基板は、前記コア基板、前記複数の部品、前記配線積層部、前記樹脂充填層を備えた部品内蔵配線基板において、前記空洞部は、平面視で互いに略直交する第1の方向及び第2の方向の少なくとも一方に対して非対称な形状に形成され、前記複数の部品は、前記第1の方向に沿った電気的経路を有する第1の部品と、前記第2の方向に沿った電気的経路を有する第2の部品とを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の部品内蔵配線基板によれば、部品内蔵配線基板のコア基板に空洞部を形成し、その中の複数の部品のうち第1及び第2の部品をそれぞれの電気的経路が略直交するように配置し、空洞部を画定するコア基板の内壁面と各部品との間隙部に樹脂充填材を充填した構造となっている。よって、例えば、近接配置される2つの部品が互いに異なる電源配線に接続される場合であっても、両者の電気的経路を直交させることで、電気的経路が並列する場合に比べると相互の電気的干渉を十分に小さくすることができ、複数の部品相互間のノイズの伝播を防止して電気的信頼性を高めることができる。この場合、空洞部を、平面視で単純な矩形ではなく5個以上の角部を有する複雑な平面形状、あるいは第1の方向又は第2の方向に対して非対称な形状にすることで、電気的経路が直交する第1及び第2の部品の長手方向が異なったとしても、その形状に空洞部の平面形状を適合させることで効率的な配置が可能となる。
【0010】
前記第1及び第2の部品は、前記コア基板及び前記樹脂充填材よりも剛性が高い材料を用いて形成することが望ましい。この場合、同じ形状の複数の部品を並列に配置すると、特定方向に沿って剛性が低下するが、本発明の構造によれば、空洞部の平面形状も多様な方向性を有し、かつ複数の部品は互いに方向性が異なるので、特定方向に沿って剛性の低下を招くことなく部品内蔵配線基板全体の強度を高めることができる。
【0011】
前記空洞部を平面視した外形は、特に制約されないが、例えば、前記第1の方向の直線群と前記第2の方向の直線群により構成することができる。これにより、通常は平面視で長方形等の形状を有する部品の配置に適合させやすく、コア基板に空洞部を形成する際の加工を簡素化することができる。
【0012】
前記第1及び第2の部品としては、両端に形成された1対の端子電極を有する部品を用いることができる。この場合、1対の端子電極が対向する方向が電気的経路の方向に一致する。このとき、前記第1及び第2の部品の電気的接続は、特に制約されないが、例えば、それぞれの一方の端子電極を互いに異なる電源電圧の配線に接続するとともに、それぞれの他方の端子電極を近接配置させて共通の電位に接続することができる。このような接続形態においては、共通の電位に接続された端子電極同士は電気的ショートによる不具合が生じないため、互いに近接する配置にさせてもよい。
【0013】
また、前記第1及び第2の部品としては、例えば、平面視で長方形に形成されたチップ部品を用いることができる。なお、このときの1対の端子電極は長方形の2つの短辺側に形成されるので、電気的経路は長方形の2つの長辺が沿う長手方向に一致する。前記第1及び第2の部品は、例えば、コンデンサを挙げることができ、特に電源電圧に接続されるデカップリング用のチップコンデンサが典型的な例である。
【0014】
なお、前記空洞部のうち前記樹脂充填材が充填される間隙部の幅は、平面視で前記第1及び第2の部品のそれぞれの短辺の長さより短く設定することが望ましい。間隙部の幅が広すぎると、空洞部内の剛性が低い領域が拡大して配線基板の強度を低下させるし、逆に間隙部の幅が狭すぎると、部品及びコア基板との熱膨張率の差に起因する変形を吸収するのに支障を来す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品内蔵配線基板のコア基板に形成した空洞部に複数の部品を内蔵する場合、各部品の電気的経路が略直交するように配置し、その配置に適合するように空洞部の平面形状を形成したので、空洞部内で近接する部品同士の間の電気的干渉を抑制することが可能となる。これにより、各部品の電気的経路を介するノイズの伝播や電位の不安定化を有効に防止し、配線基板の電気的信頼性を高めることができる。また、空洞部の平面形状は5個以上の角部を有する形状か、あるいは略直交する2方向のいずれかに対して非対称な形状であるため、空洞部を画定するコア基板の内壁面と各部品との間を樹脂充填材で埋めたときに高い剛性を保ちやすく、配線基板全体の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の部品内蔵配線基板の概略の断面構造図である。
【図2】図1の配線基板のコア基板に形成された空洞部の内部を平面視で見た模式的な平面図の例を示す図である。
【図3】図1の半導体チップと2個のチップコンデンサとの電気的接続の部分を含む等価回路の一例を示す図である。
【図4】本実施形態との対比のため、空洞部内に2個のチップコンデンサを並列に配置したときの平面構造を比較例として示す図である。
【図5】空洞部内に2個のチップコンデンサを図2と同様に配置したときの平面構造を示す図である。
【図6】本実施形態とは接続形態が異なる変形例を示す図である。
【図7】本実施形態とは空洞部の平面形状が異なる変形例を示す図である。
【図8】空洞部内に3個のチップコンデンサを配置した変形例を示す図である。
【図9】空洞部内に2個のチップインダクタを配置する場合の図3に対応する等価回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に述べる実施形態は本発明の技術思想を適用した形態の一例であって、本発明が本実施形態の内容により限定されることはない。
【0018】
まず、本発明を具体化した部品内蔵配線基板の構造について説明する。図1は、本実施形態の部品内蔵配線基板10(以下、単に配線基板10と呼ぶ)の概略の断面構造図を示している。図1に示すように、本実施形態の配線基板10は、例えばガラス繊維を含んだエポキシ樹脂からなるコア基板11と、コア基板11の上面側のビルドアップ層12(配線積層部)と、コア基板11の下面側のビルドアップ層13(配線積層部)とを含む構造を有している。コア基板11には、中央領域を貫通する空洞部(キャビティ)50が形成され、この空洞部50の内部に2個のチップコンデンサCが埋め込まれた状態で配置されている。また、コア基板11には、外周領域を積層方向に貫通する複数のスルーホール導体21が形成され、スルーホール導体21の内部が例えばガラスエポキシ等からなる閉塞体22で埋められている。配線基板10の上部には、半導体素子である半導体チップ100が載置されている。
【0019】
ここで、図2には、図1の配線基板10のコア基板11に形成された空洞部50の内部を平面視で見た模式的な平面図の例を示している。図2の下部には、便宜上、互いに直交するX方向(第1の方向)及びY方向(第2の方向)の座標軸を示している。X方向は図1の紙面横方向に対応し、Y方向は図1の紙面垂直方向に対応する。空洞部50の内部に、第1の部品であるチップコンデンサC(1)と第2の部品であるチップコンデンサC(2)とが配置されている。図2の例においては、2個のチップコンデンサCはいずれも同形状であって、平面視で長さL及び幅W(L>W)の長方形に形成される。また、2個のチップコンデンサCは、長手方向(長さL)の両端に1対の端子電極Tを有している。それぞれの端子電極Tは、チップコンデンサCの一端側の側面から表面及び裏面の各一部にかけて形成されている。一方のチップコンデンサC(1)は長手方向がY方向に沿って配置され、他方のチップコンデンサC(2)は長手方向がX方向に沿って配置されている。以下の説明では、それぞれのチップコンデンサCの電気的経路を、1対の端子電極Tが対向する長手方向と定義する。従って、図2の例では、一方のチップコンデンサC(1)がY方向の電気的経路を有し、他方のチップコンデンサC(2)がX方向の電気的経路を有し、両者の電気的経路が互いに直交する位置関係にある。なお、かかるチップコンデンサCの配置は電気的特性に関連するものであるが、詳細については後述する。
【0020】
一方、図2の例においては、空洞部50が平面視で6本の直線で囲まれて6個の角部を含む平面形状を有している。具体的には、X方向にそれぞれ長さX1、X2、X3を有する3本の直線と、Y方向にそれぞれ長さY1、Y2、Y3を有する3本の直線と、X方向及びY方向の各直線が90度で交わる6個の角部が存在する。ここで、X1=X2+X3、Y1=Y2+Y3の関係にあることがわかる。図2からわかるように、空洞部50の平面形状は、X方向とY方向のそれぞれに対して非対称である。なお、空洞部50の平面形状は、コア基板11の内壁面11a(図1)の平面形状に合致する。また、図1に示すように、配線基板10の積層方向において、空洞部50の高さは2個のチップコンデンサCの高さと概ね等しい。空洞部50の内部において、上述の内壁面11aと2個のチップコンデンサCとの幅Gの間隙部、及び2個のチップコンデンサCに挟まれた幅Gの間隙部が樹脂充填材20で埋められている。
【0021】
なお、図2の例における寸法は特に制約されないが、具体例としては、例えば、X1=2.1mm、X2=0.9mm、X3=1.2mm、Y1=1.4mm、Y2=0.5mm、Y3=0.9mm、L=1.0mm、W=0.5mm、G=0.2mmに設定することができる。
【0022】
樹脂充填材20は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる高分子材料からなり、各チップコンデンサCをコア基板11に形成された空洞部50内に固定する役割がある。具体的には、樹脂充填材20の弾性変形により、コア基板11及び各チップコンデンサCとの熱膨張率の差に起因する変形を吸収する作用がある。なお、各チップコンデンサCは樹脂充填材20及びコア基板11よりも剛性が高く、樹脂充填材20はコア基板11よりも剛性が低い。ここで、チップコンデンサC、樹脂充填材20、コア基板11のそれぞれの剛性はヤング率を評価することにより比較することができる。ヤング率の測定方法としては、例えば、ナノインデンテーション法を用いることができる。測定装置としては、例えば、ナノインスツルメント社製の「ナノインデンターII」を用いることができる。図2の例では、空洞部50において樹脂充填材20で埋められた間隙部が共通の幅Gを有している。すなわち、一方のチップコンデンサC(1)の四辺と他方のチップコンデンサC(2)の四辺は全て幅Gの間隙部で囲まれている。本実施形態は、空洞部50内の間隙部を均一な幅Gにすることには制約されないが、樹脂充填材20による上述の変形を吸収する作用を考慮すると、間隙部の幅Gが大き過ぎても小さ過ぎても好ましくない。その場合、空洞部50の平面形状が矩形であると仮定したときは、2個のチップコンデンサCの長手方向を直交させて配置したときに間隙部の幅Gが不均一にならざるを得ないが、図2の平面形状を採用すれば間隙部の幅Gを容易に均一化することができる。
【0023】
図1に戻って、一方のビルドアップ層12は、コア基板11の上部の樹脂絶縁層14と、樹脂絶縁層14の上部の樹脂絶縁層15と、樹脂絶縁層15の上部のソルダーレジスト層16とが積層形成されてなる。樹脂絶縁層14の上面には導体層31が形成され、樹脂絶縁層15の上面には複数の端子パッド33が形成されている。樹脂絶縁層14の所定箇所には、スルーホール導体21の上端電極及びチップコンデンサCの端子電極Tの表面部を導体層31と積層方向に接続導通する複数のビア導体30が設けられている。また、樹脂絶縁層15の所定箇所には、導体層31と複数の端子パッド33を積層方向に接続導通する複数のビア導体32が設けられている。ソルダーレジスト層16は、複数箇所が開口されて複数の端子パッド33が露出し、そこに複数の半田バンプ34が形成されている。各々の半田バンプ34は、配線基板10に載置される半導体チップ100の各パッド101に接続される。
【0024】
また、他方のビルドアップ層13は、コア基板11の下部の樹脂絶縁層17と、樹脂絶縁層17の下部の樹脂絶縁層18と、樹脂絶縁層18の下部のソルダーレジスト層19とが積層形成されてなる。樹脂絶縁層17の下面には導体層41が形成され、樹脂絶縁層18の下面には複数のBGA用パッド43が形成されている。樹脂絶縁層17の所定箇所には、スルーホール導体21の下端電極及びチップコンデンサCの端子電極Tの裏面部を導体層41と積層方向に接続導通する複数のビア導体40が設けられている。また、樹脂絶縁層18の所定箇所には、導体層41と複数のBGA用パッド43を積層方向に接続導通する複数のビア導体42が設けられている。ソルダーレジスト層19は、複数箇所が開口されて複数のBGA用パッド43が露出し、そこに複数の半田ボール44が接続される。複数の半田ボール44は、外部基材(不図示)と電気的に接続可能な構造を有する。
【0025】
図3は、図1の半導体チップ100と2個のチップコンデンサCとの電気的接続の部分を含む等価回路の一例を示している。図3に示すように、半導体チップ100に対しては、外部基材から配線基板10を介して、電源電圧V1、電源電圧V2、グランド電位GNがそれぞれ供給されている。このうち、2系統の電源電圧V1、V2は、互いに異なる電圧値であってもよいが、互いに等しい電圧値であってもよい。そして、一方のチップコンデンサC(1)は電源電圧V1のデカップリングコンデンサとして用いられ、他方のチップコンデンサC(2)は電源電圧V2のデカップリングコンデンサとして用いられる。
【0026】
具体的には、チップコンデンサC(1)の1対の端子電極Tが電源電圧V1及びグランド電位GNに接続され、チップコンデンサC(2)の1対の端子電極Tが電源電圧V2及びグランド電位GNに接続される。また、電源電圧V1、V2、グランド電位GNの各々は、半導体チップ100のパッド101及び半田ボール44と電気的に接続される。この場合の電気的接続は、図1において、パッド101、半田バンプ34、端子パッド33、ビア導体32、導体層31、ビア導体30、チップコンデンサCの端子電極T、ビア導体40、導体層41、ビア導体42、BGA用パッド43、半田ボール44の順に経由してなされる。ここで、上記2系統の電源電圧V1、V2は、半導体チップ100内の異なる回路部分に供給されるので、互いの電気的干渉に起因してノイズの伝播や信号のリークが生じると、回路動作の不具合を招く恐れがある。かかる問題に対し、本実施形態では、以下に述べるように、空洞部50内におけるチップコンデンサCの配置に基づく効果により上記電気的干渉の影響を抑制している。
【0027】
以下、図4及び図5を参照して、本実施形態のチップコンデンサCの配置に基づく具体的な効果について説明する。図4は、本実施形態との対比のため、空洞部50内に2個のチップコンデンサCを並列に配置したときの平面構造を比較例として示し、図5は、空洞部50内に2個のチップコンデンサCを図2と同様に配置したときの平面構造を示している。図4及び図5には、図2と同様、X方向及びY方向の座標軸を示している。ここでは、空洞部50がX方向に沿う複数の直線とY方向に沿う複数の直線とからなる平面形状を有することを想定する。
【0028】
まず、図4においては、空洞部50の平面形状がX方向の2辺とY方向の2辺からなる矩形であり、従来から採用されている典型的な平面形状となっている。空洞部50内に配置される2個のチップコンデンサC(3)、C(4)は、いずれも長手方向がX方向に沿って配置される。そして、一方のチップコンデンサC(3)の1対の端子電極Tが電源電圧V1とグランド電位GNにそれぞれ接続され、他方のチップコンデンサC(4)の1対の端子電極Tが電源電圧V2とグランド電位GNにそれぞれ接続されている。すなわち、一方のチップコンデンサC(3)の1対の端子電極Tを結ぶ電気的経路P(3)と、他方のチップコンデンサC(4)の1対の端子電極Tを結ぶ電気的経路P(4)は、いずれもX方向に沿っている。なお、それぞれの電気的経路P(3)、P(4)の矢印の向きは電流の流れる方向を示すものとする。
【0029】
図4の平面構造によれば、それぞれの電気的経路P(3)、P(4)が近接した状態で同じ方向に並んだ配置であるため、チップコンデンサC(3)、C(4)の間の電気的干渉が大きくなる。換言すれば、同方向に並ぶ2本の電気的経路P(3)、P(4)の間で相互インダクタンスが強め合うことになり、その影響は周波数が高くなるほど顕著になっていく。そのため、チップコンデンサC(3)、C(4)をそれぞれ異なる電源電圧V1、V2のデカップリングコンデンサとして用いるとき、空洞部内50における電気的干渉(相互インダクタンス)に起因して、電源V1、V2の各配線同士のノイズの伝播や電源電圧の不安定化などを招く恐れがある。
【0030】
これに対し、図5においては、空洞部50の平面形状がX方向の3辺とY方向の3辺からなり、図2に示した平面形状となっている。空洞部50内に配置される2個のチップコンデンサC(1)、C(2)は、図2と同様、互いの長手方向が直交して配置される。そして、一方のチップコンデンサC(1)の1対の端子電極Tが電源電圧V1とグランド電位GNの間に接続され、他方のチップコンデンサC(2)の1対の端子電極Tが電源電圧V2とグランド電位GNの間に接続されている。すなわち、一方のチップコンデンサC(1)の1対の端子電極Tを結ぶ電気的経路P(1)がY方向に沿い、他方のチップコンデンサC(2)の1対の端子電極Tを結ぶ電気的経路P(2)がX方向に沿っている。
【0031】
従って、図5の平面構造によれば、それぞれの電気的経路P(1)、P(2)が近接しているが、互いに直交した配置であるため、図4と比べるとチップコンデンサC(1)、C(2)の間の電気的干渉が相対的に小さくなる。換言すれば、互いに直交する関係にある電気的経路P(1)、P(2)の間の相互インダクタンスは、周波数が高い場合であっても十分に小さくなる。従って、チップコンデンサC(1)、C(2)をそれぞれ異なる電源電圧V1、V2のデカップリングコンデンサとして用いるとき、図4とは異なり、空洞部内50における電気的干渉(相互インダクタンス)が抑制されるため、電源電圧V1、V2の各配線同士のノイズの伝播や電源電圧の不安定化などを有効に防止することができる。
【0032】
また、図5の平面構造によれば、図4の平面構造に比べて、空洞部50内の間隙部に充填された樹脂充填材20の部分による剛性の低下を抑制することができる。すなわち、図4及び図5において、空洞部50と2個のチップコンデンサCとの間隙部に埋められた樹脂充填材20の部分で剛性が低くなるが、図4の空洞部50が矩形であるのに対し、図5の空洞部50が相対的に多くの直線及び角部を有する複雑な平面形状であることから、特に積層方向に応力が加わったときに高い剛性を保つのに有利な構造を実現することができる。これにより、配線基板10の空洞部50の近辺におけるクラックや割れを防止する効果が得られる。図4及び図5における空洞部50の平面形状の相違は、上述したように、2個のチップコンデンサCの長手方向を同方向でなく直交させて配置させることに由来するものである。
【0033】
以上、本発明を適用した配線基板10の特徴的な構造を説明したが、本実施形態において示した平面構造は一例であって、以下に挙げる多様な変形例に対して本発明を適用することができる。図6は、本実施形態とは接続形態が異なる変形例を示している。図6において、空洞部50及び2個のチップコンデンサCの平面形状は図5と共通であるが、各チップコンデンサCに対する電気的接続が変更されている。具体的には、一方のチップコンデンサCの端子電極Taと他方のチップコンデンサCの端子電極Tbのそれぞれをグランド電位GNに接続している。つまり、2個のチップコンデンサCのうち共通のグランド電位GNに接続される側を互いに近接する端子電極Ta、Tbとしたものである。図5の場合とは電気的経路P(1)、P(2)が逆方向になる。端子電極Ta、Tbにそれぞれ接続される配線は、配線基板10内の所定の位置で電気的に接続される。図6の平面構造により、共通電位に接続される側の端子電極Ta、Tbがショートしたとしても動作上の問題がないため、2個のチップコンデンサCの部品間隔を短縮することができる。
【0034】
また、図7は、本実施形態とは空洞部50の平面形状が異なる変形例を示している。すなわち、図5の空洞部50が6本の直線及び6個の角部を有する平面形状であるのに対し、図7の空洞部50は8本の直線及び8個の角部を有する平面形状となっている。この場合、一方のチップコンデンサC(1)を基準に、他方のチップコンデンサC(2)の長手方向がチップコンデンサC(1)の略中心部に沿うように配置されている。図7の変形例によれば、空洞部50の平面形状の直線及び角部が増えた分だけ高い剛性を保つのに有利な構造を実現できる。
【0035】
なお、本実施形態の空洞部50は、矩形等の単純な平面形状で形成することなく、5個以上の角部を有するか、あるいはX方向及びY方向のいずれかに対し非対称な平面形状で形成することが条件である。よって、図5や図7に示した平面形状に限られることなく、多様な平面形状で形成することができる。かかる条件を満たす限り、空洞部50を構成する平面形状が、X方向/Y方向以外の方向の直線を含んでいてもよいし、部分的に曲線を含んでいてもよい。また、空洞部50を構成する平面形状の各角部に対し、面取り(R面取り、C面取り)を施してもよい。
【0036】
また、図8は、空洞部50内に3個のチップコンデンサCを配置した変形例を示している。すなわち、図5の2個のチップコンデンサC(1)、C(2)に加えて、チップコンデンサC(3)を加えたものである。図8の変形例では、チップコンデンサC(1)を挟んで両側にチップコンデンサC(2)、C(3)が対称的に配置され、それぞれの電気的経路P(2)、P(3)は同一方向に沿っている。ただし、両側のチップコンデンサC(2)、C(3)は隣接せずに距離が離れているので、互いの電気的干渉は小さくなる。この場合、隣接する2個のチップコンデンサC(1)、C(2)同士、あるいは、隣接する2個のチップコンデンサC(1)、C(3)同士は、本実施形態で述べたように電気的経路Pが互いに直交した関係にあるので、電気的干渉を抑える効果を享受することができる。なお、図8の変形例に限らず、さらにチップコンデンサCを増やした場合であっても、隣接するチップコンデンサCの電気的経路Pを直交させる限り、本発明の適用が可能である。
【0037】
さらに、空洞部50内に配置される部品は、チップコンデンサCに限られず、例えば、チップインダクタを用いてもよい。図9は、空洞部50内に2個のチップインダクタLを配置する場合の図3に対応する等価回路の一例を示している。図9においては、2系統の電源電圧V1、V2に対し、2個のチップインダクタLをチョークコイルとして用いる場合を示している。すなわち、一方のチップインダクタL(1)は電源電圧V1の配線に直列に挿入され、他方のチップインダクタL(2)は電源電圧V2の配線に直列に挿入されている。この場合の空洞部50の平面図は、図2の2個のチップコンデンサCを2個のチップインダクタLで置き換えればよい。図9の等価回路に対し本発明を適用する場合であっても、空洞部内50のチップインダクタL同士の電気的干渉を抑制する効果については同様である。
【0038】
なお、空洞部50内において、チップコンデンサCとチップインダクタLを混在させる場合であっても、同様の配置に従って本発明を適用することができる。また、空洞部50内に配置される部品は、チップコンデンサCやチップインダクタLに限られることなく、多様な部品を用いることができる。
【0039】
以上の構造を有する本実施形態の配線基板10は、空洞部50の構造を除いて周知の手法を用いて作製することができる。なお、空洞部50の形成に関しては、平面形状が矩形である場合と同様、例えば、ルータを用いて加工することができる。この場合、空洞部50の平面形状に適合するようにルータのX方向及びY方向の移動を制御することにより、複雑な平面形状を有する空洞部50を形成することができる。
【0040】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、本実施形態では、半導体チップ100を載置した配線基板10に対して本発明を適用する場合を説明したが、空洞部50に複数の部品が内蔵されていれば、半導体チップ100以外の部品を載置した配線基板10に対して本発明を適用することができる。また、本実施形態では、コア基板にガラス繊維を含んだエポキシ樹脂を用いた場合を説明したが、コア基板に金属板や感光性ガラスを用いる場合には、スルーホール導体21が形成される貫通孔と、複数の部品が内蔵される空洞部50とをエッチングによって同時に形成することもできる。その他の点についても上記実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、上記実施形態に開示した内容には限定されることなく適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…部品内蔵配線基板
11…コア基板
12、13…ビルドアップ層
14、15、17、18…樹脂絶縁層
16、19…ソルダーレジスト層
20…樹脂充填材
21…スルーホール導体
22…閉塞体
30、32、40、42…ビア導体
31、41…導体層
33…端子パッド
34…半田バンプ
43…BGA用パッド
44…半田ボール
50…空洞部
100…半導体チップ
C…チップコンデンサ
L…チップインダクタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部が形成されたコア基板と、
前記空洞部内に配置された複数の部品と、
前記コア基板の一方又は両方の主面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した配線積層部と、
前記空洞部を画定する前記コア基板の内壁面と前記複数の部品との間隙部に充填された樹脂充填材と、
を備えた部品内蔵配線基板において、
前記空洞部は、平面視で5個以上の角部を有する形状に形成され、
前記複数の部品は、平面視で互いに略直交する第1の方向及び第2の方向に関し、前記第1の方向に沿った電気的経路を有する第1の部品と、前記第2の方向に沿った電気的経路を有する第2の部品とを含む、
ことを特徴とする部品内蔵配線基板。
【請求項2】
空洞部が形成されたコア基板と、
前記空洞部内に配置された複数の部品と、
前記コア基板の一方又は両方の主面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した配線積層部と、
前記空洞部を画定する前記コア基板の内壁面と前記複数の部品との間隙部に充填された樹脂充填材と、
を備えた部品内蔵配線基板において、
前記空洞部は、平面視で互いに略直交する第1の方向及び第2の方向の少なくとも一方に対して非対称な形状に形成され、
前記複数の部品は、前記第1の方向に沿った電気的経路を有する第1の部品と、前記第2の方向に沿った電気的経路を有する第2の部品とを含む、
ことを特徴とする部品内蔵配線基板。
【請求項3】
前記第1及び第2の部品は、前記コア基板及び前記樹脂充填材よりも剛性が高い材料を用いて形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項4】
前記空洞部は、平面視した外形が前記第1の方向の直線群と前記第2の方向の直線群とにより構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項5】
前記第1の部品は、前記第1の方向の両端に形成された1対の端子電極を有し、
前記第2の部品は、前記第2の方向の両端に形成された1対の端子電極を有する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項6】
前記第1の部品の前記1対の端子電極のうちの一方の電極と、前記第2の部品の前記1対の端子電極のうち前記第1の部品と近接する一方の電極とは、共通の電位に接続されることを特徴とする請求項5に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項7】
前記第1の部品は、平面視した外形が前記第1の方向の2つの長辺と前記第2の方向の2つの短辺とを有する長方形に形成され、
前記第2の部品は、平面視した外形が前記第1の方向の2つの短辺と前記第2の方向の2つの長辺とを有する長方形に形成される、
ことを特徴とする請求項6に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項8】
前記空洞部において、平面視で前記間隙部の幅が前記第1及び第2の部品のそれぞれの短辺の長さより小さいことを特徴とする請求項7に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項9】
前記第1及び第2の部品は、コンデンサであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の部品内蔵配線基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21269(P2013−21269A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155778(P2011−155778)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】