説明

部品搭載装置及び基板マーク認識方法

【課題】親基板上の全子基板の基板マークを複数軸の作業ヘッドが迅速に認識することができる部品搭載装置を提供する。
【解決手段】先ず基準作業ヘッドが親基板上の全ての子基板の子基板マークを認識し認識結果を保存する(ステップS1〜S5)。それが終了したら基準以外の作業ヘッドが親基板上の最外側の2点の子基板マークのみを認識して(ステップS101〜S104)、基準作業ヘッドによる最外側の2点の子基板マークの認識結果と比較して補正値を設定し、その補正値に基づいて、残る子基板の全ての認識を演算によって行う(ステップ106〜S109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数軸の作業ヘッドを有する部品搭載装置に関し、さらに詳しくは、親基板上の全子基板の基板マークを複数軸の作業ヘッドが迅速に認識することができる部品搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、基板供給装置、ディスペンサ、部品搭載装置、リフロー炉、基板収納装置等で構築される基板ユニット製造ラインが知られている。このような基板ユニット製造ラインの中でも、プリント基板上にIC、抵抗、コンデンサなど多数の電子部品を自動搭載する部品搭載装置は、精密な作業を行う装置としてよく知られている。
【0003】
この部品搭載装置は、平面をたてよこ2次元にわたって自在に移動可能に支持された複数軸の作業ヘッドを備え、この作業ヘッドに上下に昇降自在で且つ360度方向に回転が可能な搭載ヘッドを備えている。
【0004】
搭載ヘッドは、前段装置のディスペンサにより接着剤又は半田が塗布された後搬入されてくるプリント基板(以下単に、基板と言う)の所定位置に所定の電子部品(以下単に、部品と言う)を迅速に搭載する。
【0005】
基板に部品を搭載するときは、その搭載処理に先立って部品搭載装置側で基板の位置を正しく認識する必要がある。この基板位置の認識には、通常、基板の2隅に印刷等で標記されている基板マーク(基準マーク、フィデュシャルマークともいう)をカメラで認識し、カメラ視野とのズレ量を算出し、そのズレ量に基づいて部品搭載位置を補正しながら、部品を基板上に搭載する。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2005−039076号公報(要約、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、部品の製造技術が向上し、部品の設計寸法が微細化されてきているため、部品サイズで小さいものでは0.5mm×1mmのものがあり、また、サイズが例えば20mm角と大きな場合でも、その部品チップから出ている多数のリード線相互間の間隔は百ミクロン単位となっていて極めて微細である。
【0007】
また、基板そのものも小型化されている。特に、携帯用電子機器には小型のフレキシブル基板が用いられる場合が多い。フレキシブル基板は、その名の通り屈曲性に富んだ柔軟な基板であり、そのままでは部品搭載装置で部品の搭載処理を行うことは出来ない。
【0008】
したがって、従来同様の大型基板(親基板という)もしくは大型基板と同様サイズの治具(これも通常、親基板と呼んでいる)にフレキシブル基板(子基板という)を粘着テープ等で手作業で貼り付けて、その屈曲性と柔軟性を抑え、その親基板を部品搭載装置に搬入して、子基板上に部品を搭載するようにしている。
【0009】
ところで、通常の親基板と子基板の関係では、子基板は将来切り離す連設部で親基板と一体化されているので、部品搭載装置側としては、親基板の基板マークさえ認識すれば、子基板ごとの配置位置は正確にわかるので、子基板ごとにその基板マークを認識する必要はない。
【0010】
ところが、フレキシブル子基板と親基板の関係では、ぺらぺらの薄膜状のフレキシブル子基板を粘着テープなどで親基板上に貼っているのであるから、親基板とフレキシブル子基板の位置関係が一定しない。つまり、フレキシブル子基板の位置の精度が極めて悪い。したがって、各フレキシブル子基板ごとに、基板マークを認識しなければならない。
【0011】
ところが、親基板上には、多い場合では40枚ものフレキシブル子基板が貼り付けられる。他方、ワン・バイ・ワン型の多軸の部品搭載装置では、一般に2軸又は4軸の作業ヘッドを装備している場合がある。
【0012】
例えば、フロントとリアの2軸の作業ヘッドを有する部品搭載装置であると、子基板が40枚であるとすると基板マークは基板1枚につき最低でも2個のマークが標記されているから、1つの作業ヘッドで親基板1枚につき全部で80個の基板マークを認識する必要がある。
【0013】
また、フロントとリアの作業ヘッドでは、X及びY軸方向の基準点や移動量が微妙に異なるから、フロントの作業ヘッドで認識したデータを、そのままリアの作業ヘッドの認識データに変換することができない。フロントとリアの両方の作業ヘッドで、それぞれ基板マークを認識する必要がある。
【0014】
そして、フロント側の作業ヘッドが基板マークを認識しているときは、リア側の作業ヘッドは、フロント側の作業ヘッドと作業領域が干渉するので、フロント側の作業ヘッドの基板マーク認識の終了まで待機してから、基板マークの認識を開始することになる。
【0015】
すなわち、フロントとリアの2軸の作業ヘッドでも、80×2=160回分の基板マーク認識処理の時間が必要である。これが4軸の作業ヘッドの場合であれば、実に、80×4=320回分の基板マーク認識処理の時間が必要になってくる。いずれの場合であっても、作業能率の低下が避けられない。
【0016】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、親基板上の全子基板の基板マークを複数軸の作業ヘッドが迅速に認識することができる部品搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
先ず、第1の発明の部品搭載装置は、複数軸の作業ヘッドにより電子部品を回路基板に搭載する部品搭載装置において、基板認識用カメラにて親基板上にある複数の子基板の全ての基板マークの画像を取り込む基準軸の作業ヘッドと、該基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた上記基板マークの画像の中心と上記基板認識用カメラの視野の中心とのズレ量をそれぞれ演算する演算手段と、該演算手段により演算された全てのズレ量を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された上記ズレ量に基づいて当該基板マークの論理位置を、並行移動、拡大・縮小、回転を組み合わせた図形変換により補正する補正手段と、上記複数の子基板の全ての上記基板マークうちの上記親基板上における最外側の2点の基板マークの画像を基板認識用カメラにて取り込む上記基準軸以外の作業ヘッドと、該基準軸以外の作業ヘッドにより取り込まれた上記2点の基板マークの画像と上記基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた上記2点の基板マークの画像とのズレ量を算出する算出手段と、を備え、上記基準軸以外の作業ヘッドは、上記算出手段により算出されれたズレ量と上記記憶手段に記憶されたズレ量とに基づいて残る全子基板の上記基板マークの位置を演算により認識するように構成される。
【0018】
次に、第2の発明の基板マーク認識方法は、複数軸の作業ヘッドにより電子部品を回路基板に搭載する部品搭載装置における基板マークの認識方法であって、基準軸の作業ヘッドの基板認識用カメラにて親基板上にある複数の子基板の全ての基板マークの画像を取り込み、該基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた上記基板マークの画像の中心と上記基板認識用カメラの視野の中心とのズレ量をそれぞれ演算し、該演算された全てのズレ量を記憶し、該記憶された上記ズレ量に基づいて当該基板マークの論理位置を、並行移動、拡大・縮小、回転を組み合わせた図形変換により補正し、上記基準軸以外の作業ヘッドにより上記複数の子基板の全ての上記基板マークうちの上記親基板上における最外側の2点の基板マークの画像を基板認識用カメラにて取り込み、該基準軸以外の作業ヘッドにより取り込まれた上記2点の基板マークの画像と上記基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた上記2点の基板マークの画像とのズレ量を算出し、上記基準軸以外の作業ヘッドは、上記算出されれたズレ量と上記記憶されたズレ量とに基づいて残る全子基板の上記基板マークの位置を演算により認識するように構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基準軸の作業ヘッドが全子基板の基板マークを認識すれば、残る基準軸以外の作業ヘッドは親基板の最外側にある二点の基板マークを認識するだけで後は演算により全ての子基板の基板マークを認識するので、子基板の基板マークの認識処理の時間が格段に短縮されて作業能率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(a) は、実施例1における部品搭載装置の外観斜視図であり、同図(b) は、その上下の保護カバーを取り除いて内部の構成を模式的に示す斜視図である。
同図(a),(b) に示すように、部品搭載装置1は、天井カバー上の前後に、それぞれCRTディスプレイからなるモニタ装置2と、同じく天井カバー上の左右に、それぞれ稼動状態を報知する警報ランプ3を備えている。また、上部保護カバー4の前部と後部の面には操作入力用表示装置5が配設されている。
【0022】
下部の基台6の上には、中央に固定と可動の1対の平行する基板案内レール7が同図(b) に示す基板8の搬送方向(X軸方向、図の斜め右下から斜め左上方向)に水平に延在して配設される。
【0023】
これらの基板案内レール7の下部に接して図には見えないループ状の搬送ベルト(コンベアベルト)が走行可能に配設されている。搬送ベルトは、装置内に新たな基板(本例では親基板)8を搬入し、子基板に部品搭載中は停止させ、部品搭載終了後はライン下流に搬出する。
【0024】
基台6の前後には、それぞれ部品供給ステージ9が形成されている(同図(a) では図の右斜め上方向になる後部の部品供給ステージ9は陰になって見えない。また、同図(b) では、後部の部品供給ステージ9は図示を省略している)。
【0025】
部品供給ステージ9には、テープ式部品供給装置10が、50個〜70個と多数配置される。テープ式部品供給装置10には、その後端部に、部品を収容したテープを捲着したテープリール11が着脱自在に装着されている。
【0026】
また、基台6の上方には本体フレームの左右(X軸方向)に分かれて本体フレームに固定された天釣り型の二本のY軸レール12とこれら二本のY軸レール12に差し渡されてそれぞれ摺動自在に支持される二本のX軸レール13が配置されている。
【0027】
X軸レール13にはそれぞれ1台の作業ヘッド14(フロント側作業ヘッド14f又はリア側作業ヘッド14r)がX軸レール13に沿ってX軸方向に摺動自在に懸架され、これらの各作業ヘッド14には2個の搭載ヘッド15が配設されている。
【0028】
搭載ヘッド15の先端には、それぞれ吸着ノズル16が着脱自在に装着されている。また、作業ヘッド14は、2個の搭載ヘッド15に隣接して配置された基板認識用カメラ17を保持している。
【0029】
上記の作業ヘッド14は、屈曲自在で内部が空洞な帯状のチェーン体19に保護・収容された複数本の不図示の信号コードを介して装置本体1の基台6内部の電装部マザーボード上に配設されている中央制御部と連結されている。
【0030】
作業ヘッド14は、これらの信号コードを介して中央制御部からは電力及び制御信号を供給され、中央制御部へは基板の位置決め用基板マークや部品の搭載位置の情報を示す画像データを送信する。
【0031】
また、基板案内レール7と部品供給ステージ9との間には、搭載ヘッド15の吸着ノズル16に吸着された部品を画像認識するための複数種類の部品認識用カメラ18が、2個の作業ヘッド14に対応して2箇所にそれぞれ配置されており、その近傍には同図では図示を省略しているが、搭載ヘッド15に対して交換自在に装着するための複数種類の吸着ノズル16を収容したノズルチェンジャーが配置されている。
【0032】
また、基台6の内部には、上述した中央制御部のほかに、特には図示しないが、基板の位置決め装置、基板を2本の基板案内レール7間に固定する基板固定機構等が備えられている。
【0033】
上記の作業ヘッド14は、上述したY軸レール12とX軸レール13とにより前後左右に自在に移動する。これらの作業ヘッド14に支持される各2個の搭載ヘッド15は、それぞれZ方向(上下方向)に昇降可能であり且つθ方向(360°方向)に回転可能である。
【0034】
これにより、搭載ヘッド15の先端に装着されている吸着ノズル16は、作業ヘッド14と搭載ヘッド15を介して、各作業領域において、前後と左右に移動自在であり、上下に昇降自在であり、且つ360°方向に回転自在である。
【0035】
作業ヘッド14の搭載ヘッド15は、テープ式部品供給装置10から供給される部品を吸着ノズル16で吸着し、部品認識用カメラ18で画像認識して位置補正した後、基板認識用カメラ17で基板8の所定の搭載位置を確認し、その所定の搭載位置に上記の部品を搭載する。
【0036】
図2は、上記のように構成される部品搭載装置1のシステム構成を示すブロック図である。同図に示すように、部品搭載装置1のシステムは、CPU20と、このCPU20にバス21で接続されたi/o(入出力)制御ユニット22及び画像処理ユニット23からなる制御部を備えている。また、CPU20にはメモリ24が接続されている。メモリ24は特には図示しないがプログラム領域とデータ領域を備えている。
【0037】
また、i/o制御ユニット22には、親基板17(図1(b) 参照)の部品搭載位置を照明するための照明装置25や搭載ヘッド15の吸着ノズル16(図1(b) 参照)に吸着されている部品26を下から照明するための照明装置27が接続されている。
【0038】
更に、i/o制御ユニット22には、それぞれのアンプ(AMP)を介して2個のX軸モータ28、2個のY軸モータ29、4個のZ軸モータ31、及び4個のθ軸モータ32が接続されている。
【0039】
X軸モータ28は、X軸レール13を介してX方向に作業ヘッド14を駆動し、Y軸モータ29は、Y軸レール12を介してY方向にX軸レールすなわち作業ヘッド14を駆動する。
【0040】
Z軸モータ31は作業ヘッド14の搭載ヘッド15を上下に駆動し、そしてθ軸モータ32は搭載ヘッド15つまり吸着ノズル16を360度回転させる。
上記の各アンプには、特には図示しないが、それぞれエンコーダが配設されており、これらのエンコーダにより各モータ(X軸モータ28、Y軸モータ29、Z軸モータ31、θ軸モータ32)の回転に応じたエンコーダ値がi/o制御ユニット22を介してCPU20に入力する。これにより、CPU20は、各搭載ヘッド15の前後、左右、上下の現在位置、及び回転角を認識することができる。
【0041】
更に、上記のi/o制御ユニット22には、バキュームユニット33が接続されている。バキュームユニット33はバキュームチューブ34を介して搭載ヘッド15の吸着ノズル16に空気的に接続されている。
【0042】
このバキュームチューブ34には空圧センサ35が配設されている。バキュームユニット33は、吸着ノズル16に対しバキュームによって部品26を吸着させ、又はバキューム解除とエアブローとバキュームブレイク(真空破壊)によって吸着を解除させる。
【0043】
このとき、空圧センサ35からバキュームチューブ34内の空気圧データが電気信号としてi/o制御ユニット22を介しCPU20に出力される。これにより、CPU20は、バキュームチューブ34内の空気圧の状態を知って、吸着ノズル16によって部品26を吸着する準備が出来ているか否かを認識することができると共に、吸着された部品26が正常に吸着されているかを認識することができる。
【0044】
更に、上記のi/o制御ユニット22には、位置決め装置、ベルト駆動モータ、基板センサ、異常表示ランプ等が、それぞれのドライバを介して接続されている。位置決め装置は、前述したように部品搭載装置1の基台6内部において基板案内レール7の下方に配置され、装置内に案内されてくる親基板8の位置決めを行う。
【0045】
ベルト駆動モータは案内レール7に一体的に配設されている搬送ベルトを循環駆動する。基板センサは親基板8の搬入と搬出を検知する。異常表示ランプ(図1(a) に示した警告ランプ3参照)は部品搭載装置1の動作異常や作業領域内の異物進入等の異常時に点灯又は点滅して異常発生を現場作業者に報知する。また、点滅又は点灯によって部品補充時期の接近したことを警告報知する。
【0046】
また、i/o制御ユニット22には、通信i/oインターフェース36、図1(a) に示した操作入力用表示装置5、記録装置37が接続されている。通信i/oインターフェース36は、例えばティーチング処理などをパーソナルコンピュータ等の他の処理装置で行う場合などに、これらの処理装置と有線又は無線で接続してCPU20との通信が可能であるようにする。
【0047】
記録装置37は、例えばHD(hard disk)、MO(Magneto Optical disk)、FD(floppy disk:フロッピー(登録商標)ディスク)、CD−ROM/RW(compact disc read only memory/read and write)、フラッシュメモリ装置等の各種の記録媒体を装着可能に構成されている。
【0048】
この記録装置37は、部品搭載装置1の部品搭載処理、その事前に行なわれる部品マスター作成処理、子基板データ編集処理、座標データ編集処理、NCプログラム編集処理、部品搭載座標ティーチング処理、部品搭載処理中における部品補充タイミングの監視処理等のプログラムや、部品ライブラリのデータ、CADからのNCデータ、部品補充の予告リスト等の各種のデータを記録して保持している。
【0049】
上記のプログラムはCPU20によりメモリ24のプログラム領域にロードされて各部の制御の処理に使用される。また、データもメモリ24のデータ領域に読み出されて、所定の処理がなされ、処理されて更新されたデータは、所定の記録媒体の所定のデータ領域に格納されて保存される。
【0050】
また、画像処理ユニット23には、作業ヘッド14に配設されて照明装置27により照明される親基板8の部品搭載位置を撮像する基板認識用カメラ17と、照明装置25と一体型の図1(b) に示した部品認識用カメラ18が接続されている。
【0051】
また、操作入力用表示装置5は、部品搭載作業の実行時には、画像処理ユニット23が作業ヘッド14側の基板認識用カメラ17で撮像した親基板8の基板マークや子基板の部品搭載位置の画像や、同じく画像処理ユニット23が本体装置側の部品認識用カメラ18で撮像した部品26の画像を表示画面に表示する。
【0052】
図3は、治具基板(以下、親基板8という)と、その親基板に貼られたフレキシブル子基板を示す図である。尚、同図には、n枚のフレキシブル子基板38(38−1、38−2、38−3、・・・、38−n−1、38−n)が親基板8に貼付されている状態を示している。
【0053】
同図に示すn枚のフレキシブル子基板38には、それぞれ対向角2箇所に子基板マーク39(39a、39b)が印刷その他の方法で標記されている。
尚、同図に示すフレキシブル子基板38には、各種形状の部品26が、いずれも同様な状態で載置されているが、親基板8に貼付されるフレキシブル子基板38は、必ずしも同一機種用の基板と限る必要はなく、それぞれ異なる機種用の基板であってもよい。
【0054】
このような構成の親基板8上のフレキシブル子基板38それぞれに、作業ヘッド14により部品26を搭載するには、部品搭載装置1の制御部(CPU20)は、フロントとリアの各作業ヘッド14ごとに、全てのフレキシブル子基板38の子基板マーク39を認識させる必要がある。
【0055】
その認識とは、2箇所の子基板マーク39の撮像画像を取得し、その画像と基板認識用カメラ17の基準位置との間に位置ずれがあれば、その位置ずれを補正して、当該フレキシブル子基板38の所望の位置が基準位置から見てどこにあるかを常に正しく認識できるようにすることである。
【0056】
ところで、前述したように、たとえフロントとリアの2台の作業ヘッド14の場合であっても、n枚のフレキシブル子基板38の子基板マーク39(39a、39b)を全て認識するためには、相当な時間を要する。しかし、本例では、その時間を以下に述べる手順で大幅に短縮することができる。
【0057】
図4(a),(b) は、n枚のフレキシブル子基板38の子基板マーク39をフロントとリアの各作業ヘッド14ごとに認識する処理のフローチャートである。尚、この処理は、CPU20と各作業ヘッド14との連携のもとに行われる。
【0058】
先ず、同図(a) において、基準作業ヘッド(通常はフロント側の作業ヘッド14f)により、子基板マーク39の認識を行う。先ず、カウンタNに「1」を設定する初期化を行う(ステップS1)。これにより、1番目のフレキシブル子基板38−1から子基板マーク39a及び39bを認識するための準備が整う。
【0059】
続いて、カウンタNの値がフレキシブル子基板(以下単に、子基板という)38の総数nを超えているかを判断する(ステップS2)。処理の最初では、超えていないので(S2がNO)、この場合は、子基板38−i(i=1、2、3、・・・、n)の1点目のマーク(子基板マーク39a)を認識する(ステップS3)。
【0060】
この認識処理は、上述したように、基板認識用カメラ17で2箇所の子基板マーク39の撮像画像を取得して位置ずれを補正する処理である。
続いて、子基板38−iの2点目のマーク(子基板マーク39b)を認識する(ステップS4)。この認識と先の1点目のマーク認識とによって、子基板38−i全体の、並行移動と回転の位置ずれが判明する。そして判明した位置ずれが補正される。
【0061】
上記に続いて、カウンタNを「1」インクリメントし(ステップS5)、ステップS2に戻って、ステップS2〜S5を繰り返す。これにより、子基板38−iに対する2点の子基板マーク39a及び39bに対する認識が順次進行する。
【0062】
そして、やがてカウンタNの値がnを超えたときは(ステップS2がYES)、n枚全ての子基板38に対する2点の子基板マーク39a及び39bの認識が終了したので、この子基板マーク認識処理を終了する。
【0063】
尚、上記の認識結果(基準作業ヘッド14fから見た場合の各子基板38−iの基板マーク39a及び39bの位置データ)は、メモリ24又は記録装置37の所定の記憶領域に格納される。
【0064】
続いて、同図(b) に示す他の作業ヘッド(本例の場合はリア側の作業ヘッド14r)による子基板マークの認識処理を説明する。
先ず、一番外側の基板マーク2点を抽出する(ステップS101)。この処理は、図3に示す親基板8上に第1番目の子基板38−1の外側の子基板マーク39aと1番最後の子基板38−nの外側の子基板マーク39bを、基板認識用カメラ17で撮像してその2個の撮像画像を取得する処理である。
【0065】
次に、その取得した1点目の子基板マーク39aについて認識を行う(S102)。この処理は、他の作業ヘッドの基準位置から見た子基板マーク39aの論理位置に対して、取得した撮像画像の中心がXY軸で並行方向にどのくらいずれているか、またXY軸に対してどのくらい回転しているか、画像の大きさはどのくらいかを認識する処理である。
【0066】
続いて、取得した2点目の子基板マーク39bについても上記と同様の認識を行う(S103)。
そして、基準作業ヘッド14fによる図4(a) に示す処理が終了しているかを調べる(ステップS104)。もし、図4(a) に示す処理が終了していないときは(S104がNO)、処理が終了するまで待機する。
【0067】
そして、図4(a) に示す処理が終了したことが判明したときは(S104がYES)、演算による全ての子基板マーク39の認識を行う。
この演算による認識では、先ず、カウンタNに「1」を設定する初期化を行う(ステップS105)。これにより、1番目の子基板38−1から子基板マーク39a及び39bを演算により認識するための準備が整う。
【0068】
続いて、カウンタNの値が子基板38の総数nを超えているかを判断する(ステップS106)。処理の最初では、超えていないので(S106がNO)、この場合は、子基板38−i(i=1、2、3、・・・、n)の1点目のマーク(子基板マーク39a)について演算を行う(ステップS107)。
【0069】
この処理では、先ず、ステップS102及びS103における一番外側の2点の子基板マークの認識結果と、同図(a) に示す基準作業ヘッド14fによる同じく一番外側の2点の子基板マークの認識結果とにより、基準作業ヘッド14fの認識結果に対する他の作業ヘッド(この場合はリア側作業ヘッド14r)の認識結果との偏差を算出する。
【0070】
この偏差の算出では、XY軸に対する並行方向のずれとθ方向のずれ(回転量)のほかに、それぞれの基板認識用カメラ17の焦点深度の違いからくる基準作業ヘッド14fと他の作業ヘッド14rの認識画像の大きさ違い(拡大又は縮小の程度)も算出される。
【0071】
この第1番目の子基板38−1の基板マーク39aと第n番目の子基板38−nの基板マーク39bとによる基準作業ヘッド14fの認識結果と他の作業ヘッド14rの認識結果との偏差の算出値は、第1番目の子基板38−1の基板マーク39b以下第n番目の子基板38−nの基板マーク39aまで、残りの子基板全ての基板マークに対する演算に用いられる。
【0072】
すなわち、上記のステップS107をはじめ、S108、S109、及びS106における繰り返しにより、メモリ24又は記録装置37の所定の記憶領域に格納されている基準作業ヘッド14fから見た場合の各子基板38−iの基板マーク39a及び39bの位置データが順次読み出され、上記偏差の算出値による補正の演算が行われる。
【0073】
この演算には、例えばアフィン変換などが使用される。例えばCG(コンピュータグラフィック)では、図形の変形は平行移動、拡大・縮小、回転を基本としているが、アフィン変換は、この3種類の変形を組み合わせた図形変換のことである。
【0074】
上記に続いて、ステップS109におけるカウンタNの「1」インクリメントと、ステップS106における処理進行の判断が繰りかえされ、最終の子基板38−nの子基板マーク39bまでの認識が演算に順次進行して認識処理が終了する。
【0075】
このように、本例では、最初に基準作業ヘッドによって全ての子基板の基板マークを実際に認識するだけで、残りの作業ヘッドは、最外側の2点の基板マークを読み取って他の作業ヘッドと基準作業ヘッドとの偏差を知って、残り全ての子基板の基板マークを演算により正しく認識することができる。
【0076】
尚、上記実施の形態では、基準作業ヘッド14fの認識結果と他の作業ヘッド14rの認識結果との偏差の算出に、親基板8上の子基板38の最外側の2点の子基板マーク39a及び39bの撮像画像を取得するようにしているが、これに限ることなく、例えば、親基板8の対向角の2箇所に親基板マークを設けて、この2点の親基板マークによって両作業ヘッドの認識偏差を求めるようにしてもよい。
【0077】
図5は、そのような親基板8の対向角の2箇所に親基板マーク41a及び41bを設けた例を示す図である。この場合は、基準ヘッド14fは、図4(a) において、先ず親基板8の2箇所の親基板マーク41a及び41bの画像認識を行ってから、ステップS1以下の処理を行うようにする。
【0078】
また、他の作業ヘッドにおいては、図4(b) において、ステップS101で親基板8の2箇所の親基板マーク41a及び41bの画像を取得し、ステップS102で親基板マーク41aの認識を行い、ステップS103で親基板マーク41bの認識を行ったのち、ステップS104以下の処理を行うようにする。
【0079】
また、上記実施の形態では、2軸の作業ヘッド(14fと14r)を備えた部品搭載装置を例にとって説明したが、4軸の作業ヘッド(フロント側2台、リア側2台)を備えた部品搭載装置にも適用できる。この場合は、例えばフロント側の1台の作業ヘッドを基準ヘッドとし、残るフロント側1台とリア側2台の作業ヘッドを他の作業ヘッドとして、全ての子基板マークを認識するようにするとよい。
【0080】
また、1台の部品搭載装置での基板マーク認識処理としてではなく、複数台の部品搭載装置間における基板マーク認識処理にも適用できる。
図6は、1本の基板ユニット生産ラインに複数(同図の例では3台)の部品搭載装置が連設されている例を示す図である。これは、基板に搭載する部品の種類が極めて多いときや、多量の基板ユニットを短期間に生産するときなどに、使用される生産ラインの構成を示している。
【0081】
この場合は、矢印aで示す基板搬送方向最上流の部品搭載装置1の1台の作業ヘッドを基準作業ヘッドとし、下流の部品搭載装置1を含む残りの作業ヘッドを全て他の作業ヘッドとして、全ての子基板マークを認識するようにすると、極めて作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(a) は実施例1における部品搭載装置の外観斜視図、(b) はその上下の保護カバーを取り除いて内部の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施例1における部品搭載装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1における部品搭載装置で使用される治具基板(親基板)とその親基板に貼られたフレキシブル子基板を示す図である。
【図4】(a),(b) はn枚のフレキシブル子基板の子基板マークをフロントとリアの各作業ヘッドごとに認識する処理のフローチャートである。
【図5】最外側の子基板の2点の子基板マークに代えて親基板の対向角の2箇所に親基板マークを設けた例を示す図である。
【図6】1本の基板ユニット生産ラインに複数の部品搭載装置が連設されている例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 部品搭載装置
2 モニタ装置
3 警報ランプ
4 上部保護カバー
5 操作入力用表示装置
6 基台
7 基板案内レール
8 親基板
9 供給ステージ
10 テープ式部品供給装置
11 テープリール
12 Y軸レール
13 X軸レール
14 作業ヘッド
15 搭載ヘッド
16 吸着ノズル
17 基板認識用カメラ
18 部品認識用カメラ
19 チェーン体
20 CPU
21 バス
22 i/o制御ユニット
23 画像処理ユニット
24 メモリ
25 照明装置
26 部品
27 照明装置
28 X軸モータ
29 Y軸モータ
31 Zモータ
32 θ軸モータ
33 バキュームユニット
34 バキュームチューブ
35 空圧センサ
36 通信i/oインターフェース
37 記録装置
38 フレキシブル子基板
39(39a、39b) 子基板マーク
41 親基板マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数軸の作業ヘッドにより電子部品を回路基板に搭載する部品搭載装置において、
基板認識用カメラにて親基板上にある複数の子基板の全ての基板マークの画像を取り込む基準軸の作業ヘッドと、
該基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた前記基板マークの画像の中心と前記基板認識用カメラの視野の中心とのズレ量をそれぞれ演算する演算手段と、
該演算手段により演算された全てのズレ量を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記ズレ量に基づいて当該基板マークの論理位置を、並行移動、拡大・縮小、回転を組み合わせた図形変換により補正する補正手段と、
前記複数の子基板の全ての前記基板マークうちの前記親基板上における最外側の2点の基板マークの画像を基板認識用カメラにて取り込む前記基準軸以外の作業ヘッドと、
該基準軸以外の作業ヘッドにより取り込まれた前記2点の基板マークの画像と前記基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた前記2点の基板マークの画像とのズレ量を算出する算出手段と、
を備え、
前記基準軸以外の作業ヘッドは、前記算出手段により算出されれたズレ量と前記記憶手段に記憶されたズレ量とに基づいて残る全子基板の前記基板マークの位置を演算により認識することを特徴とする部品搭載装置。
【請求項2】
複数軸の作業ヘッドにより電子部品を回路基板に搭載する部品搭載装置における基板マークの認識方法であって、
基準軸の作業ヘッドの基板認識用カメラにて親基板上にある複数の子基板の全ての基板マークの画像を取り込み、
該基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた前記基板マークの画像の中心と前記基板認識用カメラの視野の中心とのズレ量をそれぞれ演算し、
該演算された全てのズレ量を記憶し、
該記憶された前記ズレ量に基づいて当該基板マークの論理位置を、並行移動、拡大・縮小、回転を組み合わせた図形変換により補正し、
前記基準軸以外の作業ヘッドにより前記複数の子基板の全ての前記基板マークうちの前記親基板上における最外側の2点の基板マークの画像を基板認識用カメラにて取り込み、
該基準軸以外の作業ヘッドにより取り込まれた前記2点の基板マークの画像と前記基準軸の作業ヘッドにより取り込まれた前記2点の基板マークの画像とのズレ量を算出し、
前記基準軸以外の作業ヘッドは、前記算出されたズレ量と前記記憶されたズレ量とに基づいて残る全子基板の前記基板マークの位置を演算により認識する
ことを特徴とする基板マーク認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242756(P2007−242756A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60658(P2006−60658)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000178022)山形カシオ株式会社 (65)
【Fターム(参考)】