説明

部品方向判定装置及び部品方向判定方法

【課題】四角形状の部品の方向判定に要する処理時間を短縮する。
【解決手段】方向を示す特徴点を有する四角形状の部品の方向を画像処理で判定する部品方向判定装置において、予め、部品の縦横比の標準データを記憶装置14に記憶しておき、生産中に部品を吸着ノズルに吸着したときに、その部品全体をその下方から部品認識用カメラ12の視野内に収めて撮像し、その撮像画像から該部品の外縁を認識して、部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比を算出し、これら2つの縦横比の算出値を記憶装置14に記憶された縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の算出値に対応する2方向の候補を選択し、該部品の画像のうちの選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理により部品の方向(向き)を判定する部品方向判定装置及び部品方向判定方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、部品実装機に部品を供給するフィーダの中には、供給する部品の方向が一定方向とはならないバルクフィーダやボウルフィーダがある。これらのフィーダを用いる部品実装機では、吸着ノズルに吸着した部品をその下方からカメラで撮像して、画像処理により部品の方向を判定し、判定した部品の方向が回路基板上の実装方向と異なる場合には、吸着ノズルを回動させて部品の方向を実装方向と一致させるようにしている。
【0003】
従来の部品方向判定方法は、特許文献1(特開2003−318599号公報)に記載されているように、部品の1つの角部に極性表示部を設け、該部品の4つの角部をカメラで1つずつ順番に撮像して画像処理し、その画像処理で極性表示部を認識できた角部の位置によって部品の方向を特定するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−318599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の部品方向判定方法では、部品の4つの角部をカメラで1つずつ順番に撮像して画像処理するため、撮像と画像処理をそれぞれ最大4回ずつ行わなければならず、部品方向判定処理に時間がかかって生産性が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、吸着ノズルに吸着した部品全体をカメラの視野内に収めて撮像し、その部品の画像に基づいて該部品の外縁を認識した後、該部品の画像のうちの4方向の角部を順番に画像処理し、その画像処理で極性表示部を認識できた角部の位置によって部品の方向を特定することが考えられている。
【0007】
この部品方向判定方法では、撮像回数は1回で済むものの、画像処理を最大4回行わなければならず、やはり画像処理に時間がかかるという問題がある。一般に、部品実装機では、吸着ノズルで部品を吸着した直後に部品の方向を判定する撮像・画像処理を行うため、画像処理に時間がかかると、その分、基板への部品の実装が遅れてしまい、生産性が低下する。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、部品の方向判定に要する処理時間を短縮して生産性を向上できる部品方向判定装置及び部品方向判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、方向を示す特徴点を有する四角形状の部品全体をカメラの視野内に収めて撮像して、その撮像画像を処理して該部品の方向を判定する部品方向判定装置において、予め前記部品の縦横比の標準データを記憶した記憶手段と、前記カメラで撮像した前記部品の画像に基づいて該部品の外縁を認識して該部品の縦横比を算出する縦横比算出手段と、前記縦横比算出手段で求めた前記部品の縦横比の算出値と前記記憶手段に記憶された前記標準データとを比較して該部品の方向として可能性のある2方向の候補を選択する方向候補選択手段と、前記部品の画像のうちの前記方向候補選択手段で選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して前記特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定する方向特定手段とを備えた構成としたものである。ここで、「方向を示す特徴点」は、例えば、部品の1つの角部等に設けた画像認識可能な方向表示マーク等であっても良いし、部品のうちの画像認識可能で且つ方向を特定可能な部分(例えば端子、リード、部品に付された文字・記号等)を特徴点として用いても良い。
【0010】
部品の縦横比(縦寸法と横寸法との比)が判明すれば、部品の方向として可能性のある方向の候補を2方向に絞ることができる。この点を考慮して、請求項1に係る発明では、予め、部品の縦横比の標準データを記憶手段に記憶しておき、部品全体をカメラの視野内に収めて撮像し、その画像から該部品の外縁を認識して該部品の縦横比を算出し、その縦横比の算出値を記憶手段に記憶された縦横比の標準データと比較して該部品の方向として可能性のある2方向の候補を選択し、該部品の画像のうちの選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定するものである。このようにすれば、画像処理する領域を半減できるため、部品の方向判定に要する処理時間を短縮でき、生産性を向上できる。
【0011】
但し、部品の形状が正方形(縦横比=1)の場合は、部品の方向として可能性のある方向の候補を2方向に絞ることができない。この点を考慮して、請求項2のように、縦横比算出手段で求めた部品の縦横比の算出値に基づいて該部品が正方形であると判定した場合は4方向の候補を選択し、部品の画像のうちの4方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定するようにすると良い。このようにすれば、部品の形状が正方形の場合でも、部品の方向を正確に特定することができる。
【0012】
ところで、部品の形状が長方形の場合は、部品の画像を90°異なる方向から見れば、1つの部品について、2通りの縦横比が求められる。
そこで、請求項3のように、部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比を算出し、これら2つの縦横比の算出値を記憶手段に記憶された縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の算出値に対応した2方向の候補を選択するようにしても良い。
【0013】
或は、請求項4のように、予め、記憶手段に、部品を90°異なる方向から見た2つの縦横比の標準データを記憶しておき、縦横比算出手段で求めた部品の縦横比の算出値を記憶手段に記憶された2つの縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の標準データに対応した2方向の候補を選択するようにしても良い。
【0014】
上記請求項1〜4に係る発明は、部品の方向を判定する必要のある様々な装置に適用して実施でき、例えば、供給する部品の方向が一定方向とはならないフィーダ(例えばバルクフィーダ、ボウルフィーダ等)を装着した部品実装機に適用しても良い。
【0015】
このような部品実装機に本発明を適用する場合は、請求項5のように、部品実装機の吸着ノズルに吸着した部品を下方からカメラで撮像し、方向特定手段で特定した部品の方向が回路基板上の実装方向と異なる場合に、吸着ノズルを回動させて部品の方向を実装方向と一致させるようにしても良い。このようにすれば、部品実装機に供給する部品の方向が一定方向とはならない場合でも、吸着ノズルに吸着した部品の方向を能率良く判定して該部品を回路基板に能率良く実装できる。
【0016】
尚、請求項6は、前記請求項1に記載の「部品方向判定装置」の発明と実質的に同じ技術思想を「部品方向判定方法」として記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における部品実装機の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(A)〜(D)は部品の回転角と縦横比との関係を説明する図である。
【図3】図3は実施例1の部品方向判定プログラムの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図4】図4は実施例1の部品方向判定プログラムの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【図5】図5は実施例2の部品方向判定プログラムの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図6】図6は実施例2の部品方向判定プログラムの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を部品実装機に適用して具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1を図1乃至図4に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて部品実装機全体の構成を概略的に説明する。
部品実装機の制御装置11には、吸着ノズル(図示せず)に吸着した部品全体をその下方から撮像する部品認識用カメラ12と、部品を実装する回路基板の基準位置マークや部品実装状態等を撮像する基板認識用カメラ13と、生産ジョブ(生産プログラム)、画像処理用部品データ、後述する部品方向候補データ等を記憶した記憶装置14(記憶手段)が接続されている。
【0020】
部品実装機の稼働中に、制御装置11は、吸着ノズルを保持する装着ヘッド(図示せず)をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θ方向に駆動するX軸モータ15、Y軸モータ16、Z軸モータ17及び回転モータ18の動作を制御して、テープフィーダ19、バルクフィーダ20、ボウルフィーダ等の部品供給装置から供給される部品を吸着ノズルで吸着し、当該部品をその下方から部品認識用カメラ12で撮像して、その撮像画像に基づいて吸着部品の外縁(エッジ)を検出して部品の外形形状を認識して、品種、吸着姿勢等を判定し、吸着ノズル(装着ヘッド)を回路基板上へ移動させて、当該部品を回路基板に実装する。
【0021】
この際、バルクフィーダ20やボウルフィーダでは、供給する部品の方向が一定方向とはならないため、吸着ノズルに吸着した部品全体をその下方から部品認識用カメラ12の視野内に収めて撮像して、その撮像画像を処理して該部品の方向を判定し、判定した部品の方向が回路基板上の実装方向と異なる場合には、吸着ノズルを回動させて部品の方向を実装方向と一致させる。
【0022】
以下、本実施例1の部品方向判定方法を説明する。
図2(A)〜(D)は、部品認識用カメラ12で撮像した部品の回転角と縦横比(縦寸法と横寸法との比)との関係を示している。ここで、方向判定の対象となる部品は、方向を示す特徴点21を有する四角形状の部品である。方向を示す特徴点21は、例えば、部品下面の1つの角部等に設けた画像認識可能な方向表示マーク等であっても良いし、部品のうちの画像認識可能で且つ方向を特定可能な部分(例えば端子、リード、部品下面に付された文字・記号等)を特徴点として用いても良い。
【0023】
部品の縦横比が判明すれば、部品の方向として可能性のある方向の候補を2方向に絞ることができる。これを図2の例で説明すると、部品の縦横比がa/bであれば、部品の方向として可能性のある方向は、(A)と(C)の2方向であり、部品の縦横比がb/aであれば、部品の方向として可能性のある方向は、(B)と(D)の2方向である。
【0024】
この点を考慮して、本実施例1では、生産で使用する部品のうち、方向判定が必要となる部品(以下「方向判定対象部品」という)について、予め、部品の縦横比の標準データを記憶装置14に記憶しておき、生産中に方向判定対象部品を吸着ノズルに吸着したときに、その部品全体をその下方から部品認識用カメラ12の視野内に収めて撮像し、その撮像画像から該部品の外縁を認識して、部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比を算出し、これら2つの縦横比の算出値を記憶装置14に記憶された縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の算出値に対応する2方向の候補を選択し、該部品の画像のうちの選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定するようにしている。
【0025】
以上説明した本実施例1の部品方向判定処理は、部品実装機の制御装置11によって、図3及び図4の部品方向判定プログラムに従って実行される。本プログラムは、生産中に吸着ノズルに方向判定対象部品を吸着する毎に実行される。
【0026】
本プログラムが起動されると、まずステップ101で、生産ジョブで指定された部品(吸着ノズルに吸着された方向判定対象部品)の縦横比の標準データを記憶装置14から読み込む。この後、ステップ102に進み、吸着ノズルに吸着した部品全体をその下方から部品認識用カメラ12の視野内に収めて撮像し、次のステップ103で、撮像画像から部品の外縁を認識する。
【0027】
この後、ステップ104に進み、エラーであるか否かを判定する。ここで、エラーの発生原因としては、例えば、(1) 部品の外縁の認識に失敗した場合、(2) 吸着ノズルに部品が吸着されていない場合、(3) 部品の吸着位置ずれにより撮像画像から部品の一部がはみ出している場合、(4) 部品の外縁の認識結果が四角形以外の場合等が挙げられる。このステップ104で、エラーと判定されれば、ステップ105に進み、エラー処理を実行する。このエラー処理では、例えば、部品実装機の稼働を停止させたり、エラーの表示や警報音によって作業者にエラー発生を知らせる。
【0028】
一方、上記ステップ104でエラーではないと判定されれば、ステップ106に進み、撮像画像の部品の方向と正しい方向との回転角を0°と仮定して部品の縦寸法と横寸法を計測して縦横比(0°)を算出し、次のステップ107で、撮像画像の部品の方向と正しい方向との回転角を90°と仮定して部品の縦横比(90°)を算出する。これらステップ106、107の処理により、部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比が算出される。上述したステップ103〜107の処理が特許請求の範囲でいう縦横比算出手段としての役割を果たす。
【0029】
この後、ステップ108に進み、縦横比(0°)と縦横比(90°)が「1±認識誤差」の範囲内であるか否かで、部品の形状が正方形であるか否かを判定し、正方形であると判定されれば、ステップ109に進み、生産ジョブで指定された部品の形状が正方形であるか否かを判定する。その結果、生産ジョブで指定された部品の形状が正方形ではないと判定されれば、生産ジョブで指定された部品が吸着ノズルに吸着されていないことを意味するため、ステップ105に進み、エラー処理を実行する。
【0030】
これに対し、上記ステップ109で、生産ジョブで指定された部品の形状が正方形であると判定されれば、吸着ノズルに吸着した部品の形状(正方形)が生産ジョブで指定された部品の形状(正方形)と一致すると判断して、ステップ110に進み、部品の方向の候補として、4方向を候補とし、次のステップ111で、4方向判定処理を実行する。これにより、部品の画像のうちの4方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定する。この際、特徴点21を認識できた段階で、残りの方向の候補に対応する部分の画像処理を行わないようにしても良い。
【0031】
一方、上記ステップ108で、縦横比(0°)と縦横比(90°)が「1±認識誤差」の範囲から外れていて、部品の形状が正方形ではない(つまり長方形である)と判定されれば、図4のステップ112に進み、生産ジョブで指定された部品の形状が長方形であるか否かを判定する。その結果、生産ジョブで指定された部品の形状が長方形ではないと判定されれば、生産ジョブで指定された部品が吸着ノズルに吸着されていないことを意味するため、ステップ113に進み、エラー処理を実行する。
【0032】
これに対し、上記ステップ112で、生産ジョブで指定された部品の形状が長方形であると判定されれば、吸着ノズルに吸着した部品の形状(長方形)が生産ジョブで指定された部品の形状(長方形)と一致すると判断して、ステップ114に進み、前記ステップ106で算出した回転角0°での縦横比(0°)の算出値と標準データとの差の絶対値を差(0°)として求めると共に、次のステップ115で、前記ステップ107で算出した回転角90°での縦横比(90°)の算出値と標準データとの差の絶対値を差(90°)として求める。
【0033】
差(0°)=|縦横比(0°)の算出値−標準データ|
差(90°)=|縦横比(90°)の算出値−標準データ|
【0034】
この後、ステップ116に進み、差(0°)が差(90°)より小さいか否かで、縦横比(0°)の算出値が縦横比(90°)の算出値より標準データに近いか否かを判定し、差(0°)が差(90°)より小さいと判定された場合、すなわち、縦横比(0°)の算出値が縦横比(90°)の算出値より標準データに近いと判定されれば、ステップ117に進み、差(0°)が画像認識の許容誤差より小さいか否かを判定する。その結果、差(0°)が画像認識の許容誤差以上と判定されれば、生産ジョブで指定された部品とは縦横比が異なる部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ113に進み、エラー処理を実行する。
【0035】
一方、上記ステップ117で、差(0°)が画像認識の許容誤差より小さいと判定されれば、生産ジョブで指定された縦横比の部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ118に進み、差が小さい方の縦横比(0°)の算出値に対応する2方向、つまり0°と180°の2方向を候補とする。この後、ステップ119に進み、部品の画像のうちの0°と180°の2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定する。
【0036】
また、前述したステップ116で、差(90°)が差(0°)より小さいと判定された場合、すなわち、縦横比(90°)の算出値が縦横比(0°)の算出値より標準データに近いと判定されれば、ステップ120に進み、差(90°)が画像認識の許容誤差より小さいか否かを判定する。その結果、差(90°)が画像認識の許容誤差以上と判定されれば、生産ジョブで指定された部品とは縦横比が異なる部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ113に進み、エラー処理を実行する。
【0037】
一方、上記ステップ120で、差(90°)が画像認識の許容誤差より小さいと判定されれば、生産ジョブで指定された縦横比の部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ121に進み、差が小さい方の縦横比(90°)の算出値に対応する2方向、つまり90°と270°の2方向を候補とする。この後、ステップ122に進み、部品の画像のうちの90°と270°の2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定する。
【0038】
尚、上記ステップ108〜110、112、114〜118、120、121の処理が特許請求の範囲でいう方向候補選択手段としての役割を果たし、上記ステップ119、122の処理が特許請求の範囲でいう方向特定手段としての役割を果たす。
【0039】
以上説明した本実施例1では、予め、方向判定の対象となる部品の縦横比の標準データを記憶装置14に記憶しておき、生産中に部品を吸着ノズルに吸着したときに、その部品全体をその下方から部品認識用カメラ12の視野内に収めて撮像し、その撮像画像から該部品の外縁を認識して、部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比を算出し、これら2つの縦横比の算出値を記憶装置14に記憶された縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の算出値に対応する2方向の候補を選択し、該部品の画像のうちの選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定するようにしたので、画像処理する領域を半減でき、部品の方向判定に要する処理時間を短縮できて、生産性を向上できる。しかも、認識した部品の縦横比が生産ジョブで指定された部品の縦横比に近い方を選択して2方向判定処理を行うようにしているため、部品の背景に左右される可能性が低くなり、ロバスト性に優れている。
【実施例2】
【0040】
上記実施例1では、部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比を算出し、これら2つの縦横比の算出値を記憶装置14に記憶された縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の算出値に対応する2方向の候補を選択するようにしたが、図5及び図6に示す本発明の実施例2では、予め、記憶装置14に、方向判定の対象となる部品を90°異なる方向から見た2つの縦横比の標準データを記憶しておき、認識した部品の縦横比の算出値を記憶装置14に記憶された2つの縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の標準データに対応した2方向の候補を選択するようにしている。
【0041】
本実施例2で実行する図5及び図6の部品方向判定プログラムは、前記実施例1で実行する図3及び図4の部品方向判定プログラムのステップ107の処理を省略し、ステップ114、115の処理をステップ114a、115aの処理に変更しただけであり、他の各ステップの処理は同じである。
【0042】
図5及び図6の部品方向判定プログラムでは、ステップ106で、回転角0°と仮定した縦横比(0°)を算出するだけであり、回転角90°と仮定した縦横比(90°)は算出しない。
【0043】
また、ステップ114aでは、回転角0°での縦横比(0°)の算出値と回転角0°での縦横比の標準データ(0°)との差の絶対値を差(0°)として求めると共に、次のステップ115aで、回転角0°での縦横比(0°)の算出値と回転角90°での縦横比の標準データ(90°)との差の絶対値を差(90°)として求める。
【0044】
差(0°)=|縦横比(0°)の算出値−標準データ(0°)|
差(90°)=|縦横比(0°)の算出値−標準データ(90°)|
【0045】
この後、ステップ116に進み、差(0°)が差(90°)より小さいか否かで、縦横比(0°)の算出値が標準データ(90°)より標準データ(0°)に近いか否かを判定し、差(0°)が差(90°)より小さいと判定された場合、すなわち、縦横比(0°)の算出値が標準データ(90°)より標準データ(0°)に近いと判定されれば、ステップ117に進み、差(0°)が画像認識の許容誤差より小さいか否かを判定する。その結果、差(0°)が画像認識の許容誤差以上と判定されれば、生産ジョブで指定された部品とは縦横比が異なる部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ113に進み、エラー処理を実行する。
【0046】
一方、上記ステップ117で、差(0°)が画像認識の許容誤差より小さいと判定されれば、生産ジョブで指定された縦横比の部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ118に進み、差が小さい方の縦横比の標準データ(0°)に対応する2方向、つまり、0°と180°の2方向を候補とする。この後、ステップ119に進み、部品の画像のうちの0°と180°の2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定する。
【0047】
また、前述したステップ116で、差(90°)が差(0°)より小さいと判定された場合、すなわち、縦横比(0°)の算出値が標準データ(0°)より標準データ(90°)に近いと判定されれば、ステップ120に進み、差(90°)が画像認識の許容誤差より小さいか否かを判定する。その結果、差(90°)が画像認識の許容誤差以上と判定されれば、生産ジョブで指定された部品とは縦横比が異なる部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ113に進み、エラー処理を実行する。
【0048】
一方、上記ステップ120で、差(90°)が画像認識の許容誤差より小さいと判定されれば、生産ジョブで指定された縦横比の部品が吸着ノズルに吸着されていると判断して、ステップ121に進み、差が小さい方の縦横比の標準データ(90°)に対応する2方向、つまり90°と270°の2方向を候補とする。この後、ステップ122に進み、部品の画像のうちの90°と270°の2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して特徴点21を認識できた方向によって該部品の方向を特定する。その他の事項は、前記実施例1と同じである。
【0049】
以上説明した本実施例2においても、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。 尚、上記実施例1,2では、吸着ノズルに吸着した部品全体をその下方から部品認識用カメラ12の視野内に収めて撮像して部品の方向を判定するようにしたが、バルクフィーダ等から供給される部品全体をその上方から基板認識用カメラ13等のカメラの視野内に収めて撮像して部品の方向を判定するようにしても良い。
【0050】
その他、本発明は、部品実装機に限定されず、四角形状の部品の方向を判定する機能を備えた各種の装置に適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
11…制御装置(縦横比算出手段,方向候補選択手段,方向特定手段)、12…部品認識用カメラ、13…基板認識用カメラ、14…記憶装置(記憶手段)、20…バルクフィーダ、21…部品の方向を示す特徴点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向を示す特徴点を有する四角形状の部品全体をカメラの視野内に収めて撮像して、その撮像画像を処理して該部品の方向を判定する部品方向判定装置において、
予め前記部品の縦横比の標準データを記憶した記憶手段と、
前記カメラで撮像した前記部品の画像に基づいて該部品の外縁を認識して該部品の縦横比を算出する縦横比算出手段と、
前記縦横比算出手段で求めた前記部品の縦横比の算出値を前記記憶手段に記憶された前記縦横比の標準データと比較して該部品の方向として可能性のある2方向の候補を選択する方向候補選択手段と、
前記部品の画像のうちの前記方向候補選択手段で選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して前記特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定する方向特定手段と
を備えていることを特徴とする部品方向判定装置。
【請求項2】
前記方向候補選択手段は、前記縦横比算出手段で求めた前記部品の縦横比の算出値に基づいて該部品が正方形であると判定した場合は4方向の候補を選択し、
前記方向特定手段は、前記部品の画像のうちの前記4方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して前記特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定することを特徴とする請求項1に記載の部品方向判定装置。
【請求項3】
前記縦横比算出手段は、前記部品の画像を90°異なる方向から見た2つの縦横比を算出し、
前記方向候補選択手段は、前記縦横比算出手段で求めた前記2つの縦横比の算出値を前記記憶手段に記憶された前記縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の算出値に対応した2方向の候補を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品方向判定装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記部品を90°異なる方向から見た2つの縦横比の標準データが記憶され、
前記方向候補選択手段は、前記縦横比算出手段で求めた前記部品の縦横比の算出値を前記記憶手段に記憶された前記2つの縦横比の標準データと比較して、差が小さい方の縦横比の標準データに対応した2方向の候補を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品方向判定装置。
【請求項5】
前記部品は、供給する部品の方向が一定方向とはならないフィーダにより部品実装機に供給され、
前記カメラは、前記部品実装機の吸着ノズルに吸着された前記部品を下方から撮像し、 前記部品実装機は、前記方向特定手段で特定した前記部品の方向が回路基板上の実装方向と異なる場合に前記吸着ノズルを回動させて前記部品の方向を前記実装方向と一致させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の部品方向判定装置。
【請求項6】
方向を示す特徴点を有する四角形状の部品全体をカメラの視野内に収めて撮像して、その撮像画像を処理して該部品の方向を判定する部品方向判定方法において、
予め前記部品の縦横比の標準データを記憶手段に記憶しておき、
前記カメラで撮像した前記部品の画像に基づいて該部品の外縁を認識して該部品の縦横比を算出し、その縦横比の算出値を前記記憶手段に記憶された前記縦横比の標準データと比較して該部品の方向として可能性のある2方向の候補を選択し、前記部品の画像のうちの前記方向候補選択手段で選択した2方向の候補に対応する部分をそれぞれ画像処理して前記特徴点を認識できた方向によって該部品の方向を特定することを特徴とする部品方向判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222102(P2012−222102A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85330(P2011−85330)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】