説明

部品締結構造

【課題】フロアの強度を確保しつつ被締結部品の位置決めを行うことができる部品締結構造を得る。
【解決手段】車両用部品締結構造10は、シートレール18と、フロアパネル14におけるシートレール18側に配置されたワッシャ34を含んで構成されフロアパネル14にシートレール18を締結する締結手段45と、シートレール18に設けられたシートロケートピン42と該シートロケートピン42に嵌合可能にワッシャ34に設けられたシートロケートピン孔44とを含んで構成された位置決め手段40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締結部品を締結によりフロアに取り付けるための部品締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のフロアにフランジ付きカラーを挿入し、該カラーとボルトとでシートフレームをフロアに締結する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、フロアパネルに形成したピン孔にシート基部の位置決めピンを挿入することでフロアに対するシート基部の位置決めを行う技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−107341号公報
【特許文献2】特開2006−298235号公報
【特許文献3】特開平10−967号公報
【特許文献4】特開平7−243450号公報
【特許文献5】実開平3−33757号公報
【特許文献6】特開2008−68720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂製のフロアに位置決め用の孔を形成する構成では、フロアの強度が低下することが懸念され、この点に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、フロアの強度を確保しつつ被締結部品の位置決めを行うことができる部品締結構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る部品締結構造は、被締結部品と、基部における前記被締結部品側に配置された部品側部材を含んで構成され、前記基部に前記被締結部品を締結する締結手段と、前記被締結部品に設けられた被位置決め部と、前記部品側部材に設けられ前記被位置決め部と嵌合可能な位置決め部とを含んで構成された位置決め手段と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の部品締結構造では、被締結部品がその被位置決め部を位置決め手段の位置決め部に嵌合させることで所定の位置に位置決めされた状態で、締結手段によって被締結部品が基部に締結、固定される。ここで、本部品締結構造では、締結手段を構成する部品側部材に設けた位置決め部が被位置決め部品の被位置決め部と嵌合する構成であるため、基部に位置決め部を設ける必要がない。このため、基部強度に影響を与えることなく位置決め手段を構成し、被締結部品を所定の位置に位置決めすることができる。
【0008】
このように、請求項1記載の部品締結構造では、基部の強度を確保しつつ被締結部品の位置決めを行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る部品締結構造は、請求項1記載の部品締結構造において、前記締結手段による締結前に前記基部に対し前記部品側部材を保持するための保持構造をさらに備えた。
【0010】
請求項2記載の部品締結構造では、締結手段の部品側部材は、締結荷重が付加される前に基部に対し所定の位置に保持(仮保持を含む)されている。このため、被締結部品は、その被位置決め部を部品側部材の位置決め部に嵌合させることで、締結手段による締結荷重の付加前に、基部に対する所定の位置に位置決めされる。保持構造としては、例えば、基部に固定された部品に基部側部品(の一部)を嵌合させたり、部品側部材を基部に接着したりする構造を採用することができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る部品締結構造は、請求項1又は請求項2記載の部品締結構造において、前記締結手段は、締結方向の一端側にフランジを有し、該フランジを前記基部における前記被締結部品側とは反対側の面に係合させると共に該基部を貫通したカラー部材と、前記カラー部材の他端に突き当てられ、前記フランジとの間に前記基部を挟み込む前記部品側部材と、前記被締結部品、前記カラー部材、及び前記部品側部材に締結荷重を作用させる締結具と、を含んで構成されている。
【0012】
請求項3記載の部品締結構造では、カラー部材を基部の下面側から該基部に挿入してフランジを基部下面に係合させ、カラー部材の端面に部品側部材を突き当てて該部品側部材とフランジとの間に基部を挟み込み、位置決め手段によって被締結部品を位置決めした状態で、締結手段によって締結荷重を付加する。本部品締結構造では、被締結部品からの荷重がフランジ、部品側部材を介して基部の広い範囲(面積)にて良好に支持され、締結部の信頼性が高い。
【0013】
請求項4記載の発明に係る部品締結構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の部品締結構造において、前記基部は、繊維で強化された樹脂材を含んで構成されている。
【0014】
請求項4記載の部品締結構造では、樹脂材を含む基部は、例えば孔等の位置決め部を設けることで強度が低下しやすいが、上記の通り締結手段を構成する部品側部材に位置決め部が設けられているので、繊維強化樹脂を含んで成る基部を備えた構成において、高い信頼性を保ちつつ被締結部品を所要の位置に締結することができる。
【0015】
請求項5記載の発明に係る部品締結構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の部品締結構造において、前記基部は、繊維で強化された樹脂材を含んで構成されている。
【0016】
請求項5記載の部品締結構造では、車体フロア上に、部品側部材を介して位置決めされた車両用シートのシート要素を良好に締結することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明に係る部品締結構造は、フロアの強度を確保しつつ被締結部品の位置決めを行うことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用部品締結構造を示す図であって、図5の1−1線に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用部品締結構造を示す図であって、図5の2−2線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用部品締結構造を構成するワッシャを示す図であって、(A)は平面図、(B)は図3(A)の3B−3B線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用部品締結構造が適用されたフロア構造体を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用部品締結構造が適用されたフロア構造体の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態との比較例に係る車両用部品締結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る部品締結構造が適用された車両用部品締結構造10について、図1〜図5に基づいて説明する。各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印RH、矢印IN、及び矢印OUTは、それぞれ車両用部品締結構造10が適用された自動車の前(走行)方向、上方向、右方向、車幅方向の内側及び外側を示している。
【0020】
図4には、車両用部品締結構造10が適用された車体の一部を成すフロア構造体Fの一部が斜視図にて示されており、図5には、車体フロアとしてのフロア構造体Fの一部が平面図にて示されている。これらの図に示される如く、フロア構造体Fは、車幅方向中央部で車両前後方向に延在されたトンネル12と、トンネル12に対する車幅方向両側に設けられた左右一対のフロアパネル14と、トンネル12及び各フロアパネル14の車両後端から立ち上がるルームパーティションパネル16とを含んで構成されている。
【0021】
この実施形態に係るフロア構造体Fは、トンネル12、左右のフロアパネル14、及びルームパーティションパネル16を含む各部が、樹脂材が炭素繊維にて強化された複合材としての炭素繊維強化樹脂(以下、「CFRP」という)を主要材料として構成されている。この実施形態では、フロアパネル14が本発明における基部、板状部材に相当する。
【0022】
そして、左右のフロアパネル14上には、それぞれ金属製のシートレール18が締結によって固定されている。シートレール18は、図示しない車両用シートを支持するためのものであって、本発明における被締結部品、シート要素として把握される。シートレール18は、車両前後方向に長手とされており、車幅方向に並列されて各フロアパネル14に2本ずつ(計4本)設けられている(図4では、一方のフロアパネル14に設けられたシートレール18のみ図示している)。
【0023】
以下、シートレール18のフロアパネル14への締結構造である車両用部品締結構造10について説明する。なお、各シートレール18のフロアパネル14に対する締結構造は基本的に同じであるので、以下では1本のシートレール18のフロアパネル14に対する締結構造について説明することとする。
【0024】
図5の1−1線に沿った断面図である図1、及び図5の2−2線に沿った断面図である図2に示される如く、フロアパネル14は、CFRPにて閉断面構造を成しており、車両上下方向に対向する第1壁部としての下壁20、第2壁部としての上壁22とを有する。また、フロアパネル14におけるシートレール18の締結部位には、下壁20と上壁22との上下方向の隙間を埋めるインサート体24が設けられている。この実施形態では、インサート体24は、CFRPより成り、ブロック状に形成されている。
【0025】
インサート体24は、フロアパネル14(下壁20、上壁22)に一体に形成されても良く、別体にて形成されても良い。このインサート体24によって、フロアパネル14は、シートレール18の締結部位において下壁20及び上壁22が補強(面剛性が向上)されている。なお、インサート体24は、平面視で後述するフランジ32、ワッシャ34が略全面に亘りオーバラップする範囲に設けられている。さらに、フロアパネル14は、発泡ウレタンフォーム等より成るフォームコア25が、下壁20、上壁22間におけるインサート体24の周囲に設けられて構成されている。
【0026】
また、フロアパネル14におけるシートレール18の締結部位には、下壁20、上壁22、インサート体24を貫通して設けられた貫通孔26が形成されている。車両用部品締結構造10は、フロアパネル14の貫通孔26を貫通するカラー部材としての金属製のフランジ付カラーナット28を備えている。フランジ付カラーナット28は、例えばアルミニウム(純アルミニウム又はアルミニウム合金)等にて構成されている。
【0027】
フランジ付カラーナット28は、略有底円筒状に形成されたカラー本体30と、該カラー本体30の軸線方向一端部(下端部)から径方向外側に張り出されたフランジ32とを有する。カラー本体30は、その内周にめねじ30Aが形成されており、締結手段を構成するナットの機能を果たすようになっている。フランジ32は、全体として略円板状に形成されている。
【0028】
図1及び図2に示される如く、フランジ付カラーナット28は、カラー本体30がフロアパネル14の貫通孔26に圧入されて該貫通孔26を貫通している。また、フランジ32は、下壁20の表面(下面)に接着層(接着剤)S1によって接着されている。換言すれば、フランジ32は、接着層S1を介してフロアパネル14の下面を成す下壁20に係合している。この接着層S1により車両用部品締結構造10では、めねじ30Aに後述するボルト36が螺合される際のフランジ付カラーナット28の共回り(フロアパネル14に対する相対角変位)が防止されるようになっている。また、この接着層S1により、CFRPと金属との異種材の接合部への水の侵入が防止される構成とされている。
【0029】
このようにカラー本体30がフロアパネル14に圧入されると共にフランジ32がフロアパネル14に接着された状態で、カラー本体30におけるフランジ32とは反対側の端面30Bは、上壁22の表面よりも上側(フロア構造体F側)に突出している。このカラー本体30の端面30Bは、軸線との直交面に沿った(上壁22の表面と略平行な)平坦面とされている。
【0030】
また、車両用部品締結構造10は、フロア側部材としての金属製のワッシャ34を備えている。ワッシャ34は、例えばアルミニウム(純アルミニウム又はアルミニウム合金)等にて構成されている。図3(A)及び図3(B)に示される如く、ワッシャ34は、透孔35を有する。ワッシャ34における透孔35の周囲には、下面側に開口するカラー挿入用座ぐり孔34Aが形成されており、該カラー挿入用座ぐり孔34Aの底面は、カラー本体30の端面30Bがメタルタッチ(略全面に亘り面接触)する座面34Bとされている。
【0031】
カラー挿入用座ぐり孔34Aの深さは、カラー本体30の端面30Bの上壁22に対する突出高よりも小とされており、ワッシャ34の下面34Cと上壁22との間には接着層S2が形成されている。すなわち、ワッシャ34は、ワッシャ34の下面34Cにおいて、接着層S2によってフロアパネル14の上壁22に接着保持されている。また、この接着層S2により、CFRPと金属との異種材の接合部への水の侵入が防止される構成とされている。一方、ワッシャ34の上面は、座面34Bと略平行とされたシートレール着座面34Dとされている。
【0032】
以上説明した車両用部品締結構造10では、締結手段を構成するボルト36がカラー本体30のめねじ30Aに螺合させることで、フロアパネル14にシートレール18が固定されている。具体的には、シートレール18には取付孔38が形成されており、該取付孔38及びワッシャ34の透孔35を貫通したボルト本体36Aがめねじ30Aに螺合されている。これにより、シートレール18は、ボルト36の頭部36Bとワッシャ34(フランジ付カラーナット28)との間に締め付けられて結合(締結)されている。すなわちボルト36の頭部36Bとフランジ付カラーナット28との螺合による締結荷重は、該フランジ付カラーナット28、シートレール18及びワッシャ34のそれぞれに作用している。
【0033】
この締結状態では、カラー本体30の端面30Bとワッシャ34の座面34Bとをメタルタッチさせつつフランジ32とワッシャ34の下面34Cとの間にフロアパネル14が挟み込まれており、これによりフロアパネル14に過度の締結荷重が作用しない構成とされている。この実施形態では、以上説明したフランジ付カラーナット28(カラー本体30、フランジ32)、ワッシャ34、及びボルト36が締結手段45を構成している。また、ボルト36及びカラー本体30本発明における締結具に相当する。
【0034】
そして、車両用部品締結構造10では、シートレール18は、位置決め手段40によって、締結手段45による締結固定の前に、フロアパネル14に対し位置決めされるようになっている。図5に示される如く、シートレール18は、車両前後方向の前後端近傍の2箇所でフロアパネル14に締結されるようになっており、このうち車両後端側の締結部に位置決め手段40が設定されている。車両前端側の締結部は、位置決め手段40(シートロケートピン42、シートロケートピン孔44)を有しない点を除き、車両後端側の締結部と基本的に同じ構造とされている。なお、位置決め手段40を車両前端側の締結部に配置し、車両後端側の締結部が位置決め手段40を有しない構成としても良い。
【0035】
図1に示される如く、位置決め手段40は、シートレール18に設けられ車両下向きに突出された被位置決め部としてのシートロケートピン42と、ワッシャ34に車両向きに開口するように形成されシートロケートピン42が嵌合(遊嵌)される位置決め部としてのシートロケートピン孔44とを主要部として構成されている。
【0036】
この実施形態では、シートロケートピン42及びシートロケートピン孔44は、取付孔38、透孔35に対し車両前方に配置されている。このため、位置決め手段40を構成するワッシャ34は、平面視で車幅方向に対し車両前後方向に長い長円状を成しており、該前後方向の中央に対し車両後方に若干オフセットして配置された位置に透孔35が配置され、該透孔35に対する車両前方にシートロケートピン孔44が配置されている。シートロケートピン42及びシートロケートピン孔44は、取付孔38、透孔35に対し車両後方に配置されても良い。なお、車両前端側の位置決め手段40を有しない締結部では、ワッシャ34は軸心部に透孔35が形成された平面視略縁環状に形成されている。また、この実施形態では、シートロケートピン孔44は、ワッシャ34を貫通しない底付孔とされている。このシートロケートピン孔44の底壁44Aによって、CFRPと金属との異種材の接合部への水の侵入が防止される構成とされている。さらに、このシートロケートピン孔44の底壁44Aによって、接着層S2を成す硬化前の接着剤のシートロケートピン42側(シートロケートピン孔44内)への侵入が防止される構成とされている。
【0037】
次に、車両用部品締結構造10によるフロアパネル14に対するシートレール18の締結(組立)手順を図4に基づいて説明する。上記構成の車両用部品締結構造10では、先ず、フロアパネル14にフランジ付カラーナット28及びワッシャ34を組み付ける。すなわち、フロアパネル14(下壁20、上壁22、インサート体24)に形成した貫通孔26にフランジ付カラーナット28のカラー本体30を圧入すると共に、該フランジ付カラーナット28のフランジ32と下壁20とを接着層S1を介して接着する。
【0038】
次いで、ワッシャ34のカラー挿入用座ぐり孔34Aに、カラー本体30の上壁22からの突出端を嵌入して座面34Bをカラー本体30の端面30Bにメタルタッチさせると共に、該ワッシャ34の下面34Cと上壁22とを接着層S2を介して接着する。カラー本体30の圧入及びフランジ32の接着でフロアパネル14に保持されたフランジ付カラーナット28のカラー本体30をカラー挿入用座ぐり孔34Aに挿入することで、ワッシャ34はフロアパネル14に対し水平方向への相対変位が規制される(仮保持状態とされる)。また、ワッシャ34は、ワッシャ34の下面34Cにおいて接着層S2を介して上壁22に接着されることで、フロアパネル14に対し所定の強度で保持(固定)されている。すなわち、車両用部品締結構造10におけるワッシャ34は、上記の嵌合及び接着の少なくとも一方(本発明における保持構造)によって、ボルト36による締結前にフロアパネル14に保持されている。
【0039】
次いで、シートレール18の車両後端側の締結部の近傍に配置されたシートロケートピン42が、ワッシャ34のシートロケートピン孔44に嵌合するように、該シートレール18をフロアパネル14に対しセットする。そして、シートロケートピン42がシートロケートピン孔44に嵌合された位置決め状態で、前後の締結部においてそれぞれ取付孔38、透孔35に車両上方からボルト本体36Aを挿通させ、該ボルト本体36Aをカラー本体30のめねじ30Aに螺合させる。各ボルト36が所定のトルクで締め付けられると、シートレール18は締結荷重によってワッシャ34のシートレール着座面34Dと頭部36Bとの間に適正に締結、固定される。
【0040】
以上により、図1及び図2に示される如く、シートレール18がフロアパネル14に締結固定された車両用部品締結構造10が得られる。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0042】
上記構成の車両用部品締結構造10では、シートレール18がフロアパネル14にフランジ付カラーナット28及びボルト36を用いた締結によって固定されている。
【0043】
ここで、車両用部品締結構造10では、シートレール18を位置決めするための位置決め手段40におけるフロアパネル14側部分を成すシートロケートピン孔44が、該シートレール18をフロアパネル14に締結するための締結手段45を構成するワッシャ34に設けられている。このため、車両用部品締結構造10では、CFRPより成るフロアパネル14の強度に影響を与えることなく、該フロアパネル14へのシートレール18の締結に際して、該シートレール18を適正に位置決めすることができる。
【0044】
特に、車両用部品締結構造10では、ボルト36のカラー本体30のめねじ30Aへの螺合による締結荷重の付加前に、ワッシャ34がフロアパネル14に保持されているため、シートレール18は、締結前にフロアパネル14に対し位置決めされる。すなわち、車両用部品締結構造10では、シートレール18を、単にシートレール18をフロアパネル14に締結するための締結手段45を構成するワッシャ34に対し位置決めする(フロアパネル14に対し間接(相対)的に位置決めする)だけではなく、ワッシャ34を介してフロアパネル14に対し直接(絶対)的に位置決めすることができる。
【0045】
例えば図6に示される如く、シートレール18のシートロケートピン102を挿入させるシートロケートピン孔104をCFRP製のフロアパネル14に直接的に設けた比較例に係る位置決め手段100では、締結部を構成するカラー本体30の周囲に薄肉部tが形成されてしまい、シートレール18からの入力(繰り返し荷重)による疲労耐久(試験)によってシートロケートピン孔104を起点に亀裂が生じる原因となり、該亀裂発生を防止する(締結部の信頼性を向上する)ための補強等の対策が必要になる。また、この位置決め手段100では、大型部品であるフロア構造体Fにシートロケートピン孔104を形成することとなり、取り扱い(ハンドリング)が煩雑で加工時間が長くなりやすい。特に、トンネル12が加工機械と干渉する場合は、下壁20側からの孔あけが要求され、加工時間が一層長くなる。さらに、位置決め手段100では、締結後に止水のためにシートロケートピン孔104を塞ぐシール材を埋め込む等の煩雑な作業が要求される。これらにより、位置決め手段100を採用した比較例にでは生産性が悪い。
【0046】
これに対して車両用部品締結構造10では、ワッシャ34にシートロケートピン孔44が設定されているので、フロアパネル14にシートロケートピン孔104を形成する必要がない。このため、車両用部品締結構造10では、フロアパネル14におけるカラー本体30の周囲に薄肉部tが形成されることがなく、シートレール18の疲労耐久によってフロアパネル14に亀裂が発生することが防止される。
【0047】
また、車両用部品締結構造10の位置決め手段40では、小型の金属部品であるワッシャ34にシートロケートピン孔44を形成する構成であるため、大型のフロア構造体Fにシートロケートピン孔104を形成する場合と比較して、シートロケートピン孔44の加工が容易で生産性が著しく高い。しかも、車両用部品締結構造10では、シール剤にて塞ぐべきシートロケートピン孔104が形成されないので、この観点からも生産性の向上に寄与する。
【0048】
このように、第1の実施形態に係る車両用部品締結構造10では、フロアパネル14の強度を確保しつつシートレール18の位置決め、締結を行うことができる。
【0049】
また、車両用部品締結構造10では、フランジ付カラーナット28のフランジ32とワッシャ34との間にフロアパネル14を挟み込む構成であるため、シートレール18からの荷重(特に車両上下方向の荷重)をシートレール18及びワッシャ34を介してフロアパネル14の広い範囲に伝えることができる。これにより、フロアパネル14における各シートレール18の締結部位への荷重集中が緩和され、該締結部位の信頼性が一層向上する。
【0050】
なお、上記した実施形態では、フランジ付カラーナット28がボルト36を螺合させるナットの機能を果たす例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ボルト36がカラー本体30を貫通して別部材であるナットに螺合される構成としても良い。この構成は、例えば、フランジ付カラーナット28の下面側にシートレール18とは別の部材(トンネル12の開口部間を架け渡す)トンネルブレース等)を共締めする場合に採用することができる。
【0051】
また、上記した実施形態では、シートレール18にシートロケートピン42が設けられると共にワッシャ34にシートロケートピン孔44が設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、シートレール18に被位置決め部としてのシートロケートピン孔44(透孔でも良い)を設けると共に、該シートロケートピン孔44に嵌合可能なシートロケートピン42をワッシャ34に設けた構成としても良い。
【0052】
さらに、上記した実施形態では、フロアパネル14がCFRPより成る例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロアパネル14はガラス繊維強化樹脂等にて構成されても良く、他の材料にて構成されても良い。
【0053】
またさらに、上記した実施形態では、被締結部品としてシートレール18をフロアパネル14に締結する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、スライド機構を有しない車両用シートを直接的にフロアパネル14に締結するために本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0054】
10 車両用部品締結構造
14 フロアパネル(基部、板状部材)
18 シートレール(被締結部品、シート要素)
28 フランジ付カラーナット(カラー部材)(締結具)
30 カラー本体(締結具)
32 フランジ
34 ワッシャ(部品側部材)
34A 座ぐり孔(保持構造)
36 ボルト(締結具)
40 位置決め手段
42 シートロケートピン(被位置決め部)
44 シートロケートピン孔(位置決め部)
S2 接着層(保持構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部品と、
基部における前記被締結部品側に配置された部品側部材を含んで構成され、前記基部に前記被締結部品を締結する締結手段と、
前記被締結部品に設けられた被位置決め部と、前記部品側部材に設けられ前記被位置決め部と嵌合可能な位置決め部とを含んで構成された位置決め手段と、
を備えた部品締結構造。
【請求項2】
前記締結手段による締結前に前記基部に対し前記部品側部材を保持するための保持構造をさらに備えた請求項1記載の部品締結構造。
【請求項3】
前記締結手段は、
締結方向の一端側にフランジを有し、該フランジを前記基部における前記被締結部品側とは反対側の面に係合させると共に該基部を貫通したカラー部材と、
前記カラー部材の他端に突き当てられ、前記フランジとの間に前記基部を挟み込む前記部品側部材と、
前記被締結部品、前記カラー部材、及び前記部品側部材に締結荷重を作用させる締結具と、
を含んで構成されている請求項1又は請求項2記載の部品締結構造。
【請求項4】
前記基部は、繊維で強化された樹脂材を含んで構成されている請求項1〜請求項3の何れか1項記載の部品締結構造。
【請求項5】
前記基部は車体フロアを構成する板状部材であり、
前記被締結部品は、前記車体フロア上に配置される車両用シートを構成するシート要素である請求項1〜請求項4の何れか1項記載の部品締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−208445(P2010−208445A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55683(P2009−55683)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】