説明

部品計数治具

【課題】小型部品の定量管理に使用可能であると共に、作業性を改善し、作業効率を向上させるようにした部品計数治具を提供する。
【解決手段】部品30が通過する大きさの貫通孔12a,14aが複数個穿設されると共に、貫通孔12a,14aに部品30が挿入されるとき、部品30の通過を阻止する第1位置と部品30の通過を許容する第2位置との間で相対変位自在に構成される第1、第2の板状部材12,14と、第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して第1位置に付勢する付勢手段(バネ)16と、作業員の操作自在に設けられ、操作されるとき、付勢手段16の付勢力に抗して第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して第2位置に移動自在な移動手段18(把持部)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は部品計数治具に関し、より具体的には小型部品を定量管理するときに使用される部品計数治具に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の小型部品を配列する治具としては、例えば下記の特許文献1に記載された技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、治具に適当な振動を与えることで部品を板状部材(配列治具)上に形成された凹部に確実に挿入するように構成している。
【0003】
特許文献1記載の技術によれば小型部品を整然と配列できるものの、必ずしも所定数量(例えば100個)ずつの計数を意図したものではない。これに対して部品の計数を目的とした部品計数治具として例えば図3に示すような構成が考えられる。
【0004】
図示の部品計数治具50は部品30が挿入される凹部52を複数備えた板状部材であり、凹部52すべてに部品30が挿入されることで、治具50上には所定数量の部品30が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−156750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図3に示した部品計数治具50では、治具50にセットされた部品30を他の容器や袋に移し替える際、治具50の上面を容器や袋に向けて反転させる必要がある。このため、反転させたときの勢いで、部品30が容器や袋から飛び出してしまうことがあった。また、治具50を反転させて部品30を容器や袋に詰める場合、一方の手で治具50を持ち、他方の手で容器や袋を、その開口部を治具50側に向けて持たなければならず、作業性の点で改善の余地があった。
【0007】
この発明の目的は上記した課題を解決し、小型部品の定量管理に使用可能であると共に、作業性を改善し、作業効率を向上させるようにした部品計数治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、請求項1に係る部品計数治具にあっては、部品が通過する大きさの貫通孔が複数個穿設されると共に、前記貫通孔に前記部品が挿入されるとき、前記部品の通過を阻止する第1位置と前記部品の通過を許容する第2位置との間で相対変位自在に構成される第1、第2の板状部材と、前記第1の板状部材を前記第2の板状部材に対して前記第1位置に付勢する付勢手段と、作業員の操作自在に設けられ、操作されるとき、前記付勢手段の付勢力に抗して前記第1の板状部材を前記第2の板状部材に対して前記第2位置に移動自在な移動手段とを備える如く構成した。
【0009】
請求項2に係る部品計数治具にあっては、前記第1、第2の板状部材は、水平面に対して傾斜して固定される如く構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る部品計数治具にあっては、部品を通過する大きさの貫通孔が複数個穿設されると共に、貫通孔に部品が挿入されるとき、部品の通過を阻止する第1位置と部品の通過を許容する第2位置との間で相対変位自在に構成される第1、第2の板状部材と、第1の板状部材を第2の板状部材に対して第1位置に付勢する付勢手段と、作業員の操作自在に設けられ、操作されるとき、付勢手段の付勢力に抗して第1の板状部材を第2の板状部材に対して第2位置に移動自在な移動手段とを備える如く構成したので、作業員は第1、第2の板状部材に部品をセットした後、操作手段を操作することにより、セットした部品を貫通孔を通過させて第1、第2の板状部材の下方に落下させることができる。従って、第1、第2の板状部材の下方に容器や袋を設置しておけば、当該部品を容易に容器や袋に収容することができ、作業効率を向上させることができる。
【0011】
また、容器や袋に部品を移し替える際、第1、第2の板状部材を容器や袋に向けて反転させる必要もないため、反転させた際の勢いで部品が容器や袋から飛び出てしまうこともなく、それによっても作業効率を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る部品計数治具にあっては、第1、第2の板状部材は、水平面に対して傾斜して固定される如く構成したので、上記した効果に加え、作業員にとっては部品を貫通孔にセットしやすくなり、よって作業効率を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施例に係る部品計数治具の斜視図である。
【図2】図1に示す付勢手段および移動手段の説明図である。
【図3】従来の部品計数治具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係る部品計数治具を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0015】
図1はこの実施例に係る部品計数治具の斜視図である。同図(a)は治具上に部品がセットされている状態、同図(b)は治具から部品を落下させた状態を示す。
【0016】
図1において符号10は部品計数治具を示す。部品計数治具10は、図1(a)および(b)に示す如く、貫通孔12a,14aが複数個穿設される第1、第2の板状部材12,14と、第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して所定位置(具体的には第1位置。これについては後述する)に付勢する付勢手段16と、付勢手段16の付勢力に抗して第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して他の所定位置(具体的には第2位置。これについては後述する)に移動自在な移動手段18とを備える。
【0017】
第1、第2の板状部材12,14は部品30が通過する大きさ、即ち、部品30の最大外形よりも大きい貫通孔12a,14aを複数(例えば100個)備える板状部材であり、第1の板状部材12と第2の板状部材14とは、一定の間隔を保持して互いに並行するように重ね合わされる。
【0018】
また、第1の板状部材12と第2の板状部材14とは貫通孔12a,14aに部品30が挿入されるとき、部品30の通過を阻止する第1位置(図1(a)参照)と部品30の通過を許容する第2位置(図1(b)参照)との間で相対変位自在に構成される。
【0019】
第1、第2の板状部材12,14は水平面に対して傾斜して固定される。具体的には、L字状の板状部材として形成される基台32の上方に伸びた端部と、第1、第2の板状部材12,14の一端とを固定して、第1、第2の板状部材12,14を水平面に対して傾斜させている。
【0020】
このように、第1、第2の板状部材12,14の上面が作業員に向かって立つように傾斜して固定するように構成されるため、作業員にとっては部品30を第1、第2の板状部材12,14の貫通孔12a,14aにセットしやすくなる。
【0021】
また、図示の如く、第2の板状部材14の下方に容器20を設置すると共に、移動手段18を操作することで、セットした部品30を容易に容器20に収容することができる。
【0022】
次に、付勢手段16、移動手段18および第1位置、第2位置について、図2を参照して説明する。
【0023】
図2は付勢手段16および移動手段18の説明図である。同図(a)(b)は付勢手段16によって第1の板状部材12が第2の板状部材14に対して第1位置に付勢されている場合、同図(c)は移動手段18を操作して第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して第2位置に移動させた場合を示す。
【0024】
付勢手段16は一端を第1の板状部材12に、他端を第2の板状部材14に固定されたバネ16からなり、バネ16の付勢力によって第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して第1位置に付勢する。
【0025】
第1位置とは、図2(a)および(b)に示す如く、第1および第2の板状部材12,14の両方を貫通する孔xが部品30の最大外形よりも小さくなる位置を意味する。具体的には、孔xが部品30の最大外形よりも小さい場合(図2(a)参照)や孔xが完全に塞がれている場合(図2(b)参照)を意味する。
【0026】
従って、第1の板状部材12が第2の板状部材14に対して第1位置、即ち、図2(a)や(b)に示す位置にある場合、部品30は第1および第2の板状部材12,14を通過することなく治具10上に保持される。
【0027】
移動手段18は第1、第2の板状部材12,14の一端に設けられた取っ手形状をした把持部からなり、作業員の操作自在に設けられる。移動手段18は、操作されるときに、付勢手段(バネ)16の付勢力に抗して第1の板状部材12を第2の板状部材14に対して第2位置に移動させる。
【0028】
第2位置とは、図2(c)に示す如く、第1および第2の板状部材12,14の両方を貫通する孔xが部品30の最大外形よりも大きくなる位置を意味する。即ち、バネ16の付勢力に抗して移動手段18を操作したとき(移動手段18を操作して第1の板状部材12を図面右方向に移動させたとき)、第1および第2の板状部材12,14の両方を貫通する孔xが部品30の最大外形よりも大きくなる場合を意味する。
【0029】
従って、第1の板状部材12が第2の板状部材14に対して第2位置にあるとき、部品30は第1および第2の板状部材12,14を通過して下方に落下する。
【0030】
次いで、この実施例に係る部品計数治具10の使用方法、即ち、治具10への部品30のセットおよびその後の容器や袋への部品30の移し替え動作について説明する。
【0031】
図1に示す如く、作業員は部品計数治具10に部品30をセットした後、当該部品30を容器や袋に移し替える場合、移動手段18を操作する。即ち、バネ16の付勢力に抗して第1、第2の板状部材12,14の一端に設けられた把持部(移動手段18)を操作する。
【0032】
その結果、第1の板状部材12が第2の板状部材14に対して第2位置、即ち、第1の板状部材12の貫通孔12aと第2の板状部材14の貫通孔14aの両方を部品30が通過し得る位置に移動する。従って、予め第2の板状部材14の下方に容器や袋を設置しておけば、板状部材12,14にセットされていた部品30はそのまま容器や袋に収容される。
【0033】
部品30が容器や袋に収容された後、作業員は把持部(移動手段18)を放し、第1、第2の板状部材12,14を再び元の位置(第1位置)に戻す。それにより、第1、第2の板状部材12,14の両方を貫通する孔xは部品30の最大外形よりも小さくさせられ、それによって作業員は引き続き部品30を第1および第2の板状部材12,14にセットできるようになる。
【0034】
この実施例に係る部品計数治具10は、上記の如く、部品30が通過する大きさの貫通孔12a,14aが複数個穿設されると共に、前記貫通孔12a,14aに前記部品30が挿入されるとき、前記部品30の通過を阻止する第1位置(図2(a)、(b))と前記部品30の通過を許容する第2位置(図2(c))との間で相対変位自在に構成される第1、第2の板状部材12,14と、前記第1の板状部材12を前記第2の板状部材14に対して前記第1位置に付勢する付勢手段(バネ)16と、作業員の操作自在に設けられ、操作されるとき、前記付勢手段16の付勢力に抗して前記第1の板状部材12を前記第2の板状部材14に対して前記第2位置に移動自在な移動手段(把持部)18とを備える如く構成したので、作業員は第1、第2の板状部材12,14に部品30をセットした後、操作手段18を操作することにより、セットした部品30を貫通孔12a,14aを通過させて第1、第2の板状部材12,14の下方に落下させることができる。従って、第1、第2の板状部材12,14の下方に容器や袋を設置しておけば、当該部品30を容易に容器や袋に収容することができ、作業効率を向上させることができる。
【0035】
また、容器や袋に部品30を移し替える際、第1、第2の板状部材12,14を容器や袋に向けて反転させる必要もないため、反転させた際の勢いで部品30が容器や袋から飛び出てしまうこともなく、それによっても作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、第1、第2の板状部材12,14は、水平面に対して傾斜して固定される如く構成したので、上記した効果に加え、作業員にとっては部品30を貫通孔12a,14aにセットしやすくなり、よって作業能率を一層向上させることができる。
【0037】
尚、実施例では、第1の板状部材12に設けられる孔12aの数と第2の板状部材14に設けられる孔14aの数を一致させたが、孔の数は必ずしも一致させる必要はない。
【0038】
また、第1および第2の板状部材12,14に設けられる孔12a,14aはいずれも部品30の最大外形を貫通し得るだけの大きさを必要とするが、部品30の最大外形を貫通し得る大きさであれば、その大きさは第1の板状部材12と第2の板状部材14とで同じである必要はない。
【0039】
また、移動手段18は第1、第2の板状部材12,14の一端に設けられた取っ手形状をした把持部として構成したが、バネ16の付勢力に抗して第1および第2の板状部材12,14を相対変位自在に摺動できるものであれば良く、移動手段18の形状や取付位置についても図示の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
10 部品整列治具、12 第1の板状部材、12a (第1の板状部材の)貫通孔、14 第2の板状部材、14a (第2の板状部材の)貫通孔、16 バネ(付勢手段)、18 把持部(移動手段)、20 容器、30 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が通過する大きさの貫通孔が複数個穿設されると共に、前記貫通孔に前記部品が挿入されるとき、前記部品の通過を阻止する第1位置と前記部品の通過を許容する第2位置との間で相対変位自在に構成される第1、第2の板状部材と、前記第1の板状部材を前記第2の板状部材に対して前記第1位置に付勢する付勢手段と、作業員の操作自在に設けられ、操作されるとき、前記付勢手段の付勢力に抗して前記第1の板状部材を前記第2の板状部材に対して前記第2位置に移動自在な移動手段とを備えることを特徴とする部品計数治具。
【請求項2】
前記第1、第2の板状部材は、水平面に対して傾斜して固定されることを特徴とする請求項1記載の部品計数治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18627(P2013−18627A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154484(P2011−154484)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(507369936)ホンダ太陽株式会社 (17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】