説明

部材接合構造

【課題】被接合部材間の接合強度を向上させる。
【解決手段】部材接合構造10では、それぞれFRPにより形成されたロッカ14及びフロアパネル18を接合させる際に、ロッカ14の中立軸A1とフロアパネル18の中立軸A2とを一致させている。従って、例えば、フロアパネル18の中央部に対して乗員の荷重F1が垂直に作用した場合でも、接着剤20の端部に作用する曲げモーメントM1,M2を小さくすることができる。これにより、接着剤20の端部に生じる応力を小さくできるので、ロッカ14及びフロアパネル18間の接着強度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一被接合部材及び第二被接合部材を接合させる部材接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の部材接合構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の例では、ブラケット本体を構成する第1平板部材と第2平板部材とが重合した状態で接合されており、ブラケット本体の断面2次モーメントの中立軸が第1平板部材と第2平板部材との重合面上に設定されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の例では、フロントピラーにフロントルーフレールブレースが接合されると共に、ピラーアウタにヒンジブレースが接合されたフロントピラー構造において、フロントピラーの断面の中立軸が上下方向になだらかに連続されている。
【0005】
さらに、特許文献3に記載の例では、一対の金属プレートの互いの突起を接合して構成された中空パネルにおいて、突起同士の接合によって生じる歪の中心が両金属プレートの断面の中立軸に一致されている。
【特許文献1】特開平10−236236号公報
【特許文献2】特開平10−167113号公報
【特許文献3】特開2003−283151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記各特許文献に記載の例では、複数の被接合部材により構成された構造体の剛性や強度等を確保できるものの、被接合部材間の接合強度を向上させるためには改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、被接合部材間の接合強度を向上させることができる部材接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の部材接合構造は、第一被接合部材の中立軸と第二被接合部材の中立軸とを一致させた状態で、前記第一被接合部材及び前記第二被接合部材を接合させたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の部材接合構造によれば、第一被接合部材及び第二被接合部材を接合させる際に、第一被接合部材の中立軸と第二被接合部材の中立軸とを一致させている。従って、例えば、第一被接合部材及び第二被接合部材の一方における接合部から離間した位置に接合部の接合方向と平行な方向に荷重が作用した場合でも、接合部の端部に作用する曲げモーメントを小さくすることができる。これにより、接合部の端部に生じる応力を小さくできるので、被接合部材間の接合強度を向上させることができる。
【0010】
なお、請求項2に記載の部材接合構造のように、第一被接合部材及び第二被接合部材がそれぞれFRPにより形成されたロッカ及びフロアパネルとされ、ロッカの端部とフロアパネルの端部とが互いに重ね合わされた状態で接着剤により接合されていると好適である。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したように、本発明によれば、被接合部材間の接合強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の部材接合構造を車両の車体に適用した例について説明する。
【0013】
図1には、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10が適用された車両の車体12が正面断面図にて示されており、図2には、図1に示される車体12の要部が拡大されて示されている。なお、これらの図において示される矢印UP、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0014】
これらの図に示されるように、この車両の車体12では、車両幅方向外側に一対のロッカ14が配置されている。また、車両幅方向中央部には、センタートンネル部材16が配置されており、この一対のロッカ14とセンタートンネル部材16との間には、フロアパネル18がそれぞれ配置されている。このロッカ14、センタートンネル部材16、フロアパネル18は、いずれもCFRPにより形成されている。
【0015】
ロッカ14には、車両幅方向内側に向けてフランジ状の端部14Aが形成されており、センタートンネル部材16には、同様に、車両幅方向外側に向けてフランジ状の端部16Aが形成されている。
【0016】
そして、この車体12では、図2に示されるように、ロッカ14の中立軸A1とフロアパネル18の中立軸A2とを一致させた状態で、ロッカ14の端部14Aとフロアパネル18の車両幅方向外側の端部18Aとが互いに重ね合わされた状態で接着剤20により接着されている。
【0017】
また、拡大図にて図示していないが、この車体12では、上記と同様に、センタートンネル部材16の中立軸とフロアパネル18の中立軸とを一致させた状態で、センタートンネル部材16の端部16Aとフロアパネル18の車両幅方向内側の端部18Bとが互いに重ね合わされた状態で接着剤22により接着されている(図1参照)。
【0018】
なお、ここでいう中立軸とは、部材断面の図心(中心点)を断面の法線方向に連続的に繋ぎ合わせた軸のことである。
【0019】
また、中立軸が一致するとは、例えば、図4(A)〜図4(D)に示される例を参考に説明すれば、第一被接合部材A及び第二被接合部材Bの各断面を法線方向から見たときに第一被接合部材Aの中立軸a1と第一被接合部材Aの中立軸a2とが互いに重なる状態のことである。なお、図4(A)〜図4(D)における符合Cは、第一被接合部材A及び第二被接合部材Bを接着する接着剤である。
【0020】
そして、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10によれば、以下の特有な効果を奏する。
【0021】
すなわち、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10が適用された車両の車体12において、図1に示されるように、フロアパネル18の中央部に対して乗員の荷重F1が垂直に作用した場合には、図3に示されるように、例えば、ロッカ14とフロアパネル18に変形が生じる。
【0022】
また、このときには、図2に示されるように、フロアパネル18の端部18Aに対し車両幅方向内側に引っ張り荷重F2が作用し、ロッカ14の端部14Aには車両幅方向外側に反力として荷重F3が作用する。そして、これにより、接着剤20の端部に剥離方向に曲げモーメントM1,M2が発生する。
【0023】
ここで、仮にロッカ14とフロアパネル18が金属により形成された場合には、ロッカ14とフロアパネル18が塑性変形するので、接着剤20の端部に生じる曲げモーメントM1,M2による応力は小さくなる。
【0024】
一方、ロッカ14とフロアパネル18がいずれもCFRPにより形成された場合には、CFRPは曲げ剛性が金属に比して大きいので、ロッカ14とフロアパネル18が塑性変形せず、接着剤20の端部に生じる曲げモーメントM1,M2による応力が大きくなり接着剤20が破壊しやすくなる。
【0025】
ところが、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10では、それぞれCFRPにより形成されたロッカ14及びフロアパネル18を接合させる際に、ロッカ14の中立軸A1とフロアパネル18の中立軸A2とを一致させている。
【0026】
従って、例えば、フロアパネル18の中央部に対して乗員の荷重F1が垂直に作用した場合でも、接着剤20の端部に作用する曲げモーメントM1,M2を小さくすることができる。これにより、接着剤20の端部に生じる応力を小さくできるので、ロッカ14及びフロアパネル18間の接着強度を向上させることができる。
【0027】
ここで、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10と、比較例に係る部材接合構造110とを比較し、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10が奏する効果をより明確にする。
【0028】
図5には、比較例に係る部材接合構造110が適用された車両の車体112が拡大されて示されている。この比較例に係る車両の車体112では、ロッカ114及びフロアパネル118の接着部の曲げ剛性を大きくするために、ロッカ114及びフロアパネル118における接着剤120の近傍に当板124,126が配置されている。
【0029】
しかしながら、この比較例に係る車両の車体112では、ロッカ114及びフロアパネル118における接着剤120の近傍に当板124,126が配置されたことにより、当板124を含むロッカ114の中立軸A1’と当板126を含むフロアパネル118の中立軸A2’とが互いに離間される(一致しなくなる)。
【0030】
従って、例えば、フロアパネル118の中央部に対して乗員の荷重が垂直に作用した場合には、接着剤120の端部に生じる曲げモーメントM1,M2による応力が大きくなるので、ロッカ114及びフロアパネル118間の接着強度が低下する虞がある。
【0031】
これに対し、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10によれば、ロッカ14の中立軸A1とフロアパネル18の中立軸A2とを一致させているので、例えば、フロアパネル18の中央部に対して乗員の荷重F1が垂直に作用した場合でも、接着剤20の端部に作用する曲げモーメントM1,M2を小さくすることができ、ロッカ14及びフロアパネル18間の接着強度を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10によれば、センタートンネル部材16の中立軸とフロアパネル18の中立軸とについても互いに一致させているので、例えば、フロアパネル18の中央部に対して乗員の荷重F1が垂直に作用した場合でも、接着剤22の端部に作用する曲げモーメントを小さくすることができ、センタートンネル部材16及びフロアパネル18間の接着強度を向上させることができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、ロッカ14の端部14Aとフロアパネル18の端部18Aとが接着剤20により接着されていたが、その他にも、これらが例えば溶着等により接着されていても良い。
【0035】
同様に、センタートンネル部材16の端部16Aとフロアパネル18の端部18Bとについても例えば溶着等により接着されていても良い。
【0036】
また、上記実施形態では、本発明の一実施形態に係る部材接合構造10が、ロッカ14の端部14Aとフロアパネル18の端部18Aとの接着、及び、センタートンネル部材16の端部16Aとフロアパネル18の端部18Bとの接着に適用されていたが、その他の構造部材の接合に適用されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る部材接合構造が適用された車両の車体を示す正面断面図である。
【図2】図1に示される車体の要部拡大図である。
【図3】図2に示されるフロアパネルに荷重が作用したときのロッカとフロアパネルの変形状態を示す説明図である。
【図4】本発明における中立軸を説明する図である。
【図5】比較例に係る部材接合構造が適用された車両の車体を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 部材接合構造
14 ロッカ(第一被接合部材)
18 フロアパネル(第二被接合部材)
A1,A2 中立軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一被接合部材の中立軸と第二被接合部材の中立軸とを一致させた状態で、前記第一被接合部材及び前記第二被接合部材を接合させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項2】
前記第一被接合部材及び前記第二被接合部材は、それぞれFRPにより形成されたロッカ及びフロアパネルとされ、
前記ロッカの端部と前記フロアパネルの端部とを互いに重ね合わせた状態で接着剤により接合させた、
ことを特徴とする請求項1に記載の部材接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−204051(P2009−204051A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45816(P2008−45816)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】