説明

配合物

配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体、ならびに薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、担体または賦形剤を含み、4から6のpHを有する、安定な水性薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤組成物、特に、アテローム性動脈硬化の治療に有用な酸化LDLに結合する抗体の、安定で水性の薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化(Atherosclerosis)は、喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、低密度リポタンパク質(LDL)およびトリグリセリドの上昇した血漿、フィブリノゲン過剰血症、ならびに高血糖症を含む生物化学的危険因子を提示する被験者において選択的に進行する、多因性疾患である。アテローム性動脈硬化は、巨大および中程度のサイズである動脈の最も内側の層(内膜)の肥厚の原因となる慢性疾患である。それにより血流が低下し、虚血がもたらされ、罹患血管により供給される器官における組織破壊がもたらされるかもしれない。アテローム性動脈硬化症は、ヒトにおいて何十年にわたって進行し、冠状動脈および脳虚血、血栓塞栓性疾患、ならびに心筋および脳梗塞のような合併症に至る。
【0003】
アテローム性動脈硬化は、急性心筋梗塞、脳卒中、および末梢動脈疾患を含む心臓血管疾患の主因である。心臓血管疾患は、先進国における病的状態および死亡の最大の原因であり、新興国においても進行しており、冠状動脈アテローム性動脈硬化症は主たる潜在的な病状である。アテローム性動脈硬化症の現在の治療は、病状の進行および合併症を予防するために完全に有効というわけではない。
【0004】
前記疾患は、血管の細胞外マトリックスにおける、リポタンパク質、主としてLDLの蓄積から始まる。これらのLDL粒子は凝集し、酸化的に修飾される。酸化LDLは毒性であり、血管傷害を引き起こす。アテローム性動脈硬化症は、多くの点において、炎症および線維症を含む傷害に対する応答を示す。
【0005】
高レベルの血漿コレステロール、特に高レベルのLDLは、一般にアテローム性動脈硬化症を進行させるものとして認識され、一方高レベルの高密度リポタンパク質(HDL)は、アテローム性動脈硬化症の進行を阻害する。結果としてHDLは、善玉コレステロール(good cholesterol)と呼ばれ、一方LDLは悪玉コレステロール(bad cholesterol)と呼ばれてきた。単純化していえば、LDLはコレステロールを組織に運搬し、一方HDLは組織からコレステロールを吸収し、それを分解する肝臓へ運搬する。LDLを減少させ、HDLを増大させる治療戦略が、アテローム性動脈硬化症を治療するために開発されている。
【0006】
ApoB-100は、ヒト血清におけるコレステロールの主な担体であるLDLのタンパク質成分である。LDLの酸化は、アテローム粒(atherogenic particle)への変換における必須のステップであり、酸化修飾により、最も早期の可視的なアテローム性動脈硬化症である脂肪線条の最初の形成を進行させる。
【0007】
酸化LDLに結合する、放射性ラベル形状の抗体もまた、実験動物におけるアテローム性動脈硬化症の放射能免疫検出に使用することができる(Tsimikas et al, 2000)。125I標識抗MDAリジンエピトープ抗体を使用して、マウスおよびウサギにおけるプラーク(plaque)を検出し、注射した抗体が大動脈におけるプラークに局在して発見された。
【0008】
ヒトApoB-100に由来する酸化ペプチドに対するn-CoDeR(登録商標)と呼ばれる組換え抗体断片ライブラリーから、ヒト抗体が開発されている(WO 02/080954)。これらの組換え抗体、ならびに他の酸化LDLエピトープに対する抗体が、顕著にプラーク形成を阻害し、モデル動物においてアテローム性動脈硬化症の進行を防止することが示された(Schiopu et al, 2004; WO 2004/030607; US 6,716,410)。
【0009】
その後、WO 2004/030607に開示された酸化ApoB-100、特にIEI-E3、LDO-D4、KTT-B8および2-D03に結合する抗体が、治療の数週間後、大動脈に前もって存在し確立されたアテローム性動脈硬化プラーク(アテローム斑)の退化を活発に誘導することが示された(WO 2007/025781)。そのような抗体は、負荷されるプラークを結果として減少させ、病気の進行を元に戻す、進行したアテローム性動脈硬化の治療、ならびにアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患の治療のために提案されてきた。そして、モノクローナル抗体治療で酸化LDLを標的とすることは、西側世界における死の主因のいくつかに対する、より魅力的な治療様式となっている。
【0010】
すでに存在するプラークの退化を誘導するために最も有効な、WO 2007/025781における抗体は、抗体2D03であった。抗体2D03のVHおよびVL配列は、WO 2004/030607の図3に与えられ、抗体2D03のCDR配列は、WO 2007/025781の表2に列挙されている。当業者に公知であるように、適切な配合物により、薬剤分散および保存を簡略化し、それにより医薬産業および患者の両方の費用を軽減する(Lucas et al (2004) Pharmaceutical Technology, July 2004 Issue, pp: 69-72)。治療用途に適する抗体2D03を含む、適切な医薬配合物に対する必要が当該分野に存在する。
【0011】
過去数年間において、生物工学の進歩によって、組換えDNA技術を使用して、医薬応用のために、抗体のような種々のタンパク質を作製することが可能となった。タンパク質は、伝統的な有機および無機薬剤よりも大きく、より複雑であるため(すなわち、複雑な三次元構造に加えて複数の官能基を有する)、そのようなタンパク質の安定な配合物は、t区別な問題点を提示する。抗体のようなタンパク質が生物学的に活性でありつづけるためには、配合物はタンパク質の少なくともコア配列の構造的統合(conformational integrity)を保持すると同時に、タンパク質の官能基を分解から保護しなければならない。タンパク質の分解経路は、化学的不安定性(すなわち、新しい化学的構成要素をもたらす、結合形成または切断によるタンパク質の修飾に関わるいずれかの過程)、または物理的不安定性(すなわち、タンパク質の高次の構造における変化)に関わる可能性がある。化学的不安定性は、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ除去(beta elimination)またはジスルフィド交換の結果である可能性がある。物理的不安定性は、例えば、変性、凝集、沈殿、または吸着の結果である可能性がある。3つの最も一般的なタンパク質分解経路は、タンパク質凝集、脱アミド化、および酸化である(Cleland et al (1993) Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4): 307-377)。
【0012】
複数の配合物が、抗体組成物の安定性を向上させることが知られている。例えば、US 6,171,586には、ポリオール、ならびに抗体を安定化させるように働く界面活性剤を含み、塩化ナトリウムを含まない配合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 02/080954
【特許文献2】WO 2004/030607
【特許文献3】US 6,716,410
【特許文献4】WO 2007/025781
【特許文献5】US 6,171,586
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Tsimikas et al, 2000
【非特許文献2】Schiopu et al, 2004
【非特許文献3】Lucas et al (2004) Pharmaceutical Technology, July 2004 Issue, pp: 69-72
【非特許文献4】Cleland et al (1993) Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4): 307-377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
驚くべきことに、かつ予想外なことに、出願人は、抗体2D03が、既知のn-CoDeR(登録商標)製造抗体製品とは異なる溶解度特性を示すことを発見した。典型的には、150mM NaClを含むpH 7から7.5の10-20mMのリン酸バッファーが、n-CoDeR(登録商標)抗体製品の安定な配合物をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0016】
n-CoDeR(登録商標)の枠組みの他の抗体とは対照的に、出願人は、2D03が6.0より高いpHで凝集することを発見した。4より低いpHは、患者に対する経皮または皮下投与用の組成物に適さないために、出願人は、保存に有用な期間の安定性を有し、患者に対する経皮または皮下投与に適する、抗体2D03を含む組成物のための、狭いpH範囲を同定した
【0017】
さらに、(100 mM NaCl同等物より低い)低い伝導性を有する溶液中で実行する場合、2D03の限外濾過による濃度またはバッファー交換により、凝集が生成する。最初の研究により、pH5.5にpHを維持し、150 mM NaClが含まれる場合、抗体2D03製品を少なくとも160 mg/mlに濃縮することができることが示された。
【0018】
最初の試験において、ポリソルベート20、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸およびマンニトールのような標準添加物の添加により2D03の安定性を増大させる試みは、十分効果的ではなかった。
【0019】
従って、本発明の第一の態様により、抗体2D03、および薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、または賦形剤を含み、4から6のpHを有する水性薬剤組成物が提供される。
【0020】
2D03は、酸化LDLに対する完全長ヒトモノクローナルIgG1抗体である。抗体2D03の重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列が図1に与えられ、それぞれ配列番号1および配列番号2が割り当てられている。抗体2D03の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列が図2に与えられ、それぞれ配列番号3および配列番号4が割り当てられている。
【0021】
従って、本発明のこの態様により、配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体、ならびに薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、担体または賦形剤を含み、4から6のpHを有する水性薬剤組成物が提供される。
【0022】
前記薬剤組成物における抗体を、抗体作製のための当業者に公知の技術を使用して調製してよい。組換え抗体を製造するための例示的な方法が、以下により詳細に記載される。
【0023】
「薬剤組成物」の語は当業者に公知であり、活性成分(すなわち抗体2D03)の生物学的活性が有効であるような形態にあり、かつ組成物を投与するであろう患者に誘導久那負荷成分を含まない、調製物を指す。薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、または賦形剤は、合理的に患者に投与し、使用される活性成分の有効投与量を提供することができるものであり、当業者に公知である。
【0024】
抗体を含む薬剤組成物の安定性を向上させる複数の方法が存在し、そのうちのいくつかは、以下の実施例2および3に詳述される。例えば、抗体含有薬剤組成物の安定性を、その純度を評価すること、例えばサイズ除去クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)、カチオン交換クロマトグラフィー、および/またはSDS-PAGEにより、測定してよい。さらに、またはあるいは、抗体含有薬剤組成物の安定性を、目視または410nmにおける光分散により評価するその外見により測定してよい。さらに付加的に、または、抗体含有薬剤組成物の安定性を、抗体2D03の活性を参照すること、および典型的には、抗体2D03の抗原結合活性(例えば、MDA-ApoB100に対する結合能)を参照すること測定してよい。そして、「安定な」有薬剤組成物により、(特定の時間の間、特定の条件下で)保存されていない抗体に比較して、そのように規定される保存の後にMDA-ApoB100に対する結合能の少なくとも50%を抗体が維持していることを、出願人は意図している。より好ましくは、MDA-ApoB100に対する結合能の少なくとも60%、または少なくとも70%、80%、90% または95%を維持する。さらにより好ましくは、叙述される時間の間かつ以下に示す条件下で規定されるように保存された後、MDA-ApoB100に対する結合能の少なくとも99%または100%を維持する。
【0025】
「安定な有薬剤組成物」により、出願人は、叙述される時間の間かつ以下に示す条件下で規定されるように保存された後の抗体調製物の純度が、完全単量体抗体の少なくとも90%、より好ましくは完全単量体抗体の95%以上、さらには完全単量体抗体の96% または97%または98%または99%以上であることを意図することを含む。好ましくは、保存後の抗体調製物の純度を、添付の実施例に記載されるように、サイズ除去クロマトグラフィーを使用して、決定および/または測定する。
【0026】
本明細書において、本発明のこの態様の薬剤組成物は、安定な薬剤組成物である。典型的には、前記組成物は、約2°Cから約8°Cの保存温度で、少なくとも4週間安定である。有利には、前記薬剤組成物は、約2°Cから約8°Cの保存温度で、少なくとも8週間安定である。さらに好ましくは、前記薬剤組成物は、約2°Cから約8°Cの保存温度で、少なくとも14週間安定である。さらにより好ましくは、前記薬剤組成物は、約2°Cから約8°Cの保存温度で、少なくとも12ヶ月、好都合には少なくとも1.5年、さらに有利には少なくとも3年間安定である。より有利には、前記薬剤組成物は、少なくとも4年間または5年間安定である。典型的には、前記薬剤組成物は、組成物の凍結および溶解後も安定である。
【0027】
適切には、前記薬剤組成物は、約24°C(例えば、25°C)の保存温度で、少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも8週間、あるいはそれ以上安定である。添付の実施例に記載されるように、本発明の薬剤組成物は、25°Cで6ヶ月安定であってよい。
【0028】
本発明の実施態様において、前記薬剤組成物は、4.1または4.2または4.3または4.4または4.5または4.6または4.7または4.8または4.9の最低pH、ならびに6.0の最高pHを有する。
【0029】
他の実施態様において、前記薬剤組成物は、5.9または5.8または5.7または5.6または5.5または5.4または5.3または5.2または5.1の最高pH、ならびに4の最低pHを有する。
【0030】
さらに他の実施態様において、前記薬剤組成物は、5.9または5.8または5.7または5.6または5.5または5.4または5.3または5.2または5.1の最高pH、ならびに4.5の最低pHを有する。
【0031】
ある実施態様において、前記薬剤組成物は、4.9から5.1のpH、特に5.0のpHを有する。
【0032】
別の実施態様において、前記薬剤組成物は、5から6のpH、例えば5.0から5.9のpH、5から5.8のpH、5から5.7のpH、5.0から5.6のpHを有する。より特異的な実施態様において、前記薬剤組成物は、5.4から5.6のpH、より特異的には約5.5のpHを有する。
【0033】
予想されるように、所望のpHを維持するために、薬剤組成物はバッファーを含む。本明細書において、「バッファー」とは、その酸-塩基結合成分の作用により、pHにおける変化に対抗する、緩衝溶液を指す。本発明のバッファーは、約4から6の範囲のpH;好ましくは約4.5から5.8の範囲のpH;より好ましくは約4.8から5.6の範囲のpH;最も好ましくは5.0と5.6の間のpHを有する。この範囲におけるpHを制御するバッファーの例は、酢酸(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸、クエン酸、および他の有機酸バッファーを含む。好ましくは、バッファーはリン酸バッファーではなく、特に凍結溶解に安定な配合物が望ましい。
【0034】
バッファー濃度は、例えば、バッファーおよび配合物の所望の等張性に応じて、約1 mMから約50 mM、適するものとして約5 mMから約40 mM、好ましくは約10 mMから約30 mMである可能性がある。
【0035】
好ましい実施態様において、薬剤組成物は酢酸バッファーを含む。典型的には、酢酸は5 mMから30 mMで、より好ましくは10 mMから30 mMで存在する。より特異的な実施態様において、酢酸は約20 mM存在する。
【0036】
ある実施態様において、薬剤組成物は、塩化ナトリウムをさらに含む。塩化ナトリウムは、約50 mMから約200 mM、適するものとして約100 mMから約200 mM、好ましくは約150 mM存在してよい。
【0037】
塩化ナトリウムに加えて、または塩化ナトリウムに換えて、薬剤組成物は、他の塩および/またはアミノ酸をさらに含んでよい。
【0038】
典型的には、抗体は、薬剤組成物中に、10 mg/mlから200 mg/ml、例えば25 mg/mlから150 mg/mlの濃度で存在する。特定の実施態様において、抗体は、薬剤組成物中に、25±10 mg/ml、120±20 mg/ml、または約150±10 mg/ml存在する。例えば、抗体は、薬剤組成物中に、10 mg/mlまたは20 mg/mlまたは30 mg/mlまたは40 mg/mlまたは50 mg/mlまたは60 mg/mlまたは70 mg/mlまたは80 mg/mlまたは90 mg/mlまたは100 mg/mlまたは110 mg/mlまたは120 mg/mlまたは130 mg/mlまたは140 mg/mlまたは150 mg/mlまたは160 mg/mlの濃度で存在してよい。好ましくは、抗体は、薬剤組成物中に、160mg/mlより少ない、例えば100 mg/mlより少ない、または50 mg/mlより少ない、または25 mg/mlより少ない濃度で存在する。
【0039】
本発明の好ましい実施態様により、1 mlあたり、
15 mgから160 mgの上述の抗体2D03
8.77 mgの塩化ナトリウム
2.35 mgの酢酸ナトリウム三水和物
0.16 μlの酢酸
pH 5.5となるような(すなわち、最終pH 5.5の)水酸化ナトリウム
1 mlとなるような(すなわち、最終容量1 mlの)水
を含む、安定な水性薬剤組成物が提供される。
【0040】
抗体は、25±10 mg/ml、120±20 mg/ml、または約150±10 mg/mlの濃度で存在してよい。
【0041】
さらなる好ましい実施態様において、本発明は、95%以上の純度であり、
25 mg/mlの請求項1に記載の抗体
20 mMの酢酸ナトリウム
150 mMの塩化ナトリウム
pH 5.5となるような(すなわち、最終pH 5.5の)水酸化ナトリウム
を含む、安定な水性薬剤組成物が提供される。
【0042】
薬剤組成物はまた、保存剤を含むことが予想される。「保存剤」は、例えば、配合物中に含めることができ、配合物中で微生物の活動を本質的に減少させ多用途配合物の製造を容易にすることができる化合物である。潜在的な保存剤の例は、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩化物の混合物)、ならびに塩化ベンゼトニウムを含む。他のタイプの保存剤は、フェノールのような芳香族アルコール、ブチルおよびベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン、カテコール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、ならびにm-クレゾールを含む。好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。しかし、実施例3において、配合物が無菌であることが示され、微生物および菌類の汚染がないために、保存剤が必要でなくてもよいことが理解される。
【0043】
ある実施態様において、薬剤組成物はまたポリオールも含んでよいことが理解される。「ポリオール」は、複数の水酸基を有する基質であり、(還元および非還元糖のような)糖、糖アルコール、および糖酸を含む。典型的なポリオールは、約600 kDより小さい(例えば約120 kDから約400 kDの)分子量を有する。「還元糖」は、金属イオンを還元することができ、タンパク質のリジンおよび他のアミノ基に反応して共有結合することができるヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」は、還元糖のこれらの特性を有さないものである。還元糖の例は、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトースおよびグルコースである。非還元糖は、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、およびラフィノースを含む。キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトールおよびグリセロールが、糖アルコールの例である。ある環境において、スクロースおよびトレハロースのような非還元糖が好ましいポリオールである。
【0044】
ある実施態様において、薬剤組成物はまた、その多くが当業者に公知である界面活性剤も含むことがさらに予想される。例示的な界面活性剤は、ポロキサマー(例えばポロキサマー188)を含む。添加される界面活性剤の量は、抗体の凝集を低下させる、および/または配合物における微粒子の形成を最小化するようなものであってよい。例えば、界面活性剤は、約0.001%から約0.2%、好ましくは約0.01%から約0.1%の量で配合物中に存在してよい。
【0045】
ある実施態様において、組成物は、ポリオールおよび/または界面活性剤を含まない。
【0046】
本発明の実施態様において、薬剤組成物は、ポリソルベート20、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸およびマンニトールより選択される添加剤を含まない。
【0047】
一実施態様において、本発明は、抗体が95%以上の純度(例えば、96%または97%または98%または99%またはそれ以上、例えば100%)である薬剤組成物を提供する。
【0048】
患者にin vivoで投与するために使用される薬剤組成物は、好ましくは無菌状態である。これは、例えば0.22 μm無菌フィルターを通した濾過により、容易に実行される。
【0049】
薬剤組成物を、皮下または静脈投与用に配合してよい。ある実施態様において、特に静脈投与用に配合される場合、薬剤組成物は等張性であることが好ましい。「等張性」により、出願人は、目的の配合物がヒトの血液と同一の浸透圧を本質的に有することを意図する。等張配合物は、一般的に、約250 mOmから350 mOmの浸透圧を有する。例えば、蒸気圧または氷凍結型浸透圧計を使用して、等張性を測定することができる。
【0050】
ある実施態様において、抗体を含む薬剤組成物は、前もって凍結乾燥にかけられていない。
【0051】
配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体のような、抗体を作製する方法は、当業者によく知られている。
【0052】
簡単には、抗体2D03の組換え製造のために、それをコードするポリヌクレオチド(図1)が、発現のための複製可能なベクターに挿入される。多くの適切な発現ベクターが利用可能である。ベクター成分は一般的に、シグナル配列、複製開始点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列を含む。
【0053】
グリコシル化抗体を発現するための適切な宿主細胞が、多細胞生物に由来する。植物または昆虫細胞は適切な宿主細胞であるかもしれないが、宿主細胞は脊椎動物細胞であることが好ましく、組織培養における脊椎動物細胞の増殖は、ルーチンな手順(routine procedure)となってきている。有用な哺乳動物宿主細胞の例は、COS-7、CV1、VERO-76、HEK293、BHK、CHO、TM4、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、MMT、TRI、MRC5、NSOおよびFS4である。
【0054】
宿主細胞を、プロモーターを誘導する、感染株を選択する、あるいは抗体配列をコードする遺伝子を増幅するために適するように改変し、抗体製造のための発現ベクターに感染させ、慣用的な栄養培地中で培養する。抗体製造のために使用する宿主細胞を、必要に応じてホルモンおよび/または増殖因子、塩、バッファー、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素、ならびにグルコースなどのエネルギー源で補完してよい、種々の既知で市販されている培地中で培養してよい。他のいずれかの補完物もまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれてよい。温度、pHなどのような培養条件もまた、当業者に公知である。
【0055】
組換え技術を使用する場合、抗体を、細胞内のペリプラズム空間(periplasmic space)中に生産することができ、あるいは培地中に直接分泌させることもできる。抗体を細胞内で生産する場合、最初のステップで、粒子状の残骸、宿主細胞または溶解細胞のいずれかを、例えば遠心または濾過により除去する。抗体を培地中に分泌させる場合、そのような発現システムからの上清を、一般的に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon超遠心ユニットを使用して、濃縮する。PMSFのようなプロテアーゼインヒビターが、タンパク質分解を阻害する先のステップのいずれかに含まれてよく、外来の汚染物の増殖を防ぐために抗生物質が含まれてよい。
【0056】
細胞より調製される抗体組成物を、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのタンパク質Aの適切度は、抗体に存在するいずれかの免疫グロブリンFcの種類およびアイソタイプに依存する。タンパク質Aを使用して、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al, (1983) J. Immunol. Meth. 62: 1-13)。アフィニティリガンドが結合するマトリックスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。調節ポアガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンビニル)ベンゼンのような、力学的に安定なマトリックスにより、アガロースで実行することができるものよりも流速を速くし、処理時間を短くすることができる。タンパク質精製のための他の有用な技術は、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈澱、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンセファロセット(Sepharoset)(登録商標)上でのクロマトグラフィー、(ポリアスパラギン酸カラムのような)アニオンまたはカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマト分画、SDS-PAGE、および硫安沈殿を含む。
【0057】
好ましくは、配合される抗体2D03は、本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均一である(すなわち、タンパク質に汚染されていない)。「本質的に純粋な」抗体配合物により、組成物中のタンパク質の総重量に対して、少なくとも90重量%の抗体を含む組成物、好ましくは少なくとも95重量%の抗体を含む組成物を出願人は意図する。「本質的に均一な」抗体配合物は、組成物中の総タンパク質重量に対して、少なくとも99重量%の抗体を含む組成物を意味する。
【0058】
本発明の第二の態様により、本発明の第一の態様に規定される、安定な水性薬剤配合物を含む無菌容器を含む製造品が提供される。製造品は、1回使用の使い捨てシリンジ、瓶またはバイアルなどであってよい。前記容器を、ガラスまたはプラスチックのような種々の材料より形成してよい。例示的な容器は、3 mlから20 mlの1回使用ガラスバイアルである。あるいは、容器は3 mlから100 mlのガラスバイアルであってよい。容器は、組成物を保持し、ならびに任意に、容器上の、または容器に関連するラベルが使用方法を表示してよい。製造品は、さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用のための指示書を含む包装内容物を含む、商用および使用者の立場から望ましい他の物品を含んでよい。
【0059】
プラーク(atherotic plaque)の予防、および退縮の誘導の両方に対する能力を有する。従って、本発明の第三の態様により、患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する、および/または予防する、および/または軽減する、および/または駆除する方法を提供し、前記方法は、投与の必要がある患者に対して、本発明の第一の態様に関して上述したように定義される、治療上有効量の薬剤組成物を投与する工程を含む。
【0060】
本発明の文脈において、「治療上有効量の」抗体とは、アテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患の予防または治療において有効な量を指す。
【0061】
本発明は、患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する、および/または予防する、および/または軽減する、および/または駆除するための、本発明の第一の態様に関して上述したように定義される薬剤組成物の製造における2D03、すなわち配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体の使用を含む。
【0062】
本発明はまた、患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する、および/または予防する、および/または軽減する、および/または駆除するための、本発明の第一の態様に関して上述したように定義される薬剤組成物も含む。
【0063】
一実施態様において、薬剤組成物中の抗体は、患者におけるアテローム性動脈硬化のプラークの形成を減少させる、すなわち、アテローム性動脈硬化の進行を遅らせ、好ましくは新たなテローム性動脈硬化のプラークの形成を減少または予防する。
【0064】
別の実施態様において、薬剤組成物中の抗体は、患者においてすでに存在するアテローム性動脈硬化のプラークの退縮を誘導する。
【0065】
「アテローム性動脈硬化のプラークの退縮」により、アテローム性動脈硬化のプラークのサイズ、および/または量、および/または程度を減少させることを出願人は意図する。典型的には、アテローム性動脈硬化のプラークの退縮は、プラークに覆われた内部動脈表面の領域における減少に至る。それゆえ出願人は、「アテローム性動脈硬化のプラークの退縮」により、個体において負荷されるプラーク全体の減少、ならびに個々のアテローム性動脈硬化のプラークのいくつか、または全ての現象を含む。アテローム性動脈硬化のプラークの退縮はまた、血流の増大に貢献する、血管腔の増大(すなわち、動脈血管の有効な横断(cross-section)の増大)にも至る。
【0066】
個体におけるアテローム性動脈硬化のプラークのサイズ、および/または量、および/または程度を測定する方法は、当業者に公知であり、血管造影法、血管超音波検査、コンピューター断層撮影法、および磁気共鳴映像法を含む。
【0067】
出願人は、「サイズ、および/または量、および/または程度を減少させる」により、約1%から25%の減少、例えば約1%または2%または3%または4%または5%の減少、あるいは約6%または7 %または8%または9%または10%の大きな減少、あるいは10%から25%の減少を含む。25%から50%、または50%から75%、あるいはそれ以上の大きな減少がより好ましい。
【0068】
プラークに覆われた内部動脈表面の領域における減少により、出願人は、約1%または2%または3%または4%または5%の減少のような、約1から25%の減少、あるいは約6%または7 %または8%または9%または10%の大きな減少、あるいは10%から25%の減少を含む。25%から50%、または50%から75%、あるいはそれ以上の大きな減少がより好ましい。
【0069】
動脈血管の有効な横断の増大により、出願人は、約1%または2%または3%または4%または5%の増大のような、約1から25%の増大、あるいは約6%または7 %または8%または9%または10%の大きな増大、あるいは10%から25%の増大を含む。25%から50%、または50%から75%、あるいは75%から100%の大きな減少がより好ましい。最も好ましくは、動脈血管の有効な横断は、2倍または3倍または4倍または5倍または10倍、あるいはそれ以上増大する。明らかに、動脈血管の有効な横断の増大は、治療前のアテローム性動脈硬化症に起因する動脈阻害のレベルに依存する。
【0070】
退縮させるアテローム斑は、典型的には個体の大動脈におけるものであり、しかしまた、大腿骨動脈、頚動脈、および冠状動脈のような患者の他の動脈部位にも発見されてよい。
【0071】
典型的には、治療する患者は、ヒト、家畜および農牧動物、および動物園用、愛玩またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラクダなどを含む動物である。好ましくは患者はヒトである。
【0072】
典型的には、患者は、アテローム性動脈硬化を有するヒトである。薬剤組成物中に存在する抗体は、治療前のアテローム斑の退縮に至るため(WO 2007/025781)、薬剤組成物は、進行した、または重篤なアテローム性動脈硬化、ならびにアテローム性動脈硬化に関連する進行した、または重篤な心臓血管疾患を有する患者の治療に特に有用であると予想される。
【0073】
患者は、アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を有する、または有する危険にある、ヒト患者であってよい。「アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患」の語は、アテローム性動脈硬化の結果である点でアテローム性動脈硬化に医学的に連結する疾患を指すものを含む。言及してよいアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患は、冠状動脈疾患、心筋梗塞、および脳卒中をふくむ。
【0074】
薬剤組成物中の抗体は、アテローム斑の形成を減少し、かつ治療前に存在するアテローム斑を退縮させるため、薬剤組成物は、アテローム斑の存在により心臓血管疾患を進行させる危険がある患者における、アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患の危険を減少させるために有用であると予想される。アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患の危険がある患者は、心臓血管疾患または機能不全を引き起こす、または悪化させる可能性が高い血中コレステロールレベルを有する患者である。
【0075】
患者は、(肥満、喫煙、高血圧、糖尿病、早期冠状動脈性心臓病を含む)複数の危険因子のために、冠状動脈性心臓病を進行させる危険がある患者、非常に高いコレステロールおよび/またはトリグリセリドの血漿濃度により特徴づけられる家族性条件を有する患者、(甲状腺機能低下、ネフローゼ症候群、肝疾患、またはアルコール依存症のような)基礎疾患の二次的なものではない脂質異常症を有する患者、LDL-コレステロールが上昇した患者、あるいは規制食低脂血症治療介入(dietary hypolipidemic intervention)(相補的治療)下にある患者であってよい。
【0076】
本発明のこの実施態様において、本発明は、個体におけるアテローム斑のサイズ、および/または量、および/または程度を測定する前工程を含んでよい。これを、負荷されるアテローム斑を減少させる治療の必要に個体があるかを評定する、あるいはそのような治療の効率を評定するためにベースラインを与える、あるいはその両方の目的のために実行してよい。減少させる必要がある、負荷されるアテローム斑は、負荷されるプラーク全体のサイズ、および/または程度によるものであってよいことが予想される。さらに、またはその代わりに、これを、例えばプラークがどの程度不安定化といった、プラークの性質によるものである可能性がある。
【0077】
任意に、そして典型的には、本発明はまた、治療に先立つベースラインとの比較において治療の効率を評定するために、薬剤組成物を投与した後の患者におけるアテローム斑のサイズ、および/または量、および/または程度を測定する後工程を含んでよい。
【0078】
特定の患者が、治療の恩恵を受けると予想される患者であるか否かを、医師が決定してよい。
【0079】
スタチン(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA (HMG-CoA)レダクターゼのインヒビター)が、血漿コレステロール含量を減少させることにより、(そして、未解明のさらなるメカニズムによって)急性心血管系イベントを防止する際に有効であることが証明されている。上述の免疫治療と組み合わせたスタチンの投与は、アテローム斑の退縮を補完する、治療の有用な手段であってよい。
【0080】
従って、本発明の第四の態様により、成分:本発明の第一の態様の点で上述のように規定される、薬剤組成物または凍結乾燥組成物、ならびにスタチンを含む、パーツのキットが提供される。適切かつ好ましいスタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシムバスタチンより選択される。典型的には、スタチンは、経口投与用に配合される。
【0081】
成分は、それぞれ他のものと組み合わせた投与に適した形態で提供される。「組み合わせた」により、出願人は、成分が患者への同時または組み合わせ投与に適していてよいことを意味することを含む。しかし、成分は典型的には、異なる経路で投与されるため、「組み合わせた」により、出願人はまた、同一の治療レジーム内における連続投与または分離投与を意味することを含む。
【0082】
キットはさらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用のための指示書を含む包装内容物を含む、商用および使用者の立場から望ましい他の物品を含んでよい。好ましくは、キット中の2つの成分は、相乗効果を有するように選択される。
【0083】
本発明の第五の態様は、アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する、および/または予防する、および/または軽減する、および/または駆除する方法を提供し、前記方法は、個体に対して、本発明の第一の態様に関して上述したように定義される薬剤組成物およびスタチンを投与する工程を含む。
【0084】
本発明は、アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する、および/または予防する、および/または軽減する、および/または駆除する際に使用するための、本発明の第一の態様に関して上述したように定義される薬剤組成物およびスタチンに関して上記のように規定される薬剤組成物を含む。
【0085】
好ましくは、前記2つの投与レジームは、相乗効果を有するように選択される。
【0086】
適切かつ好ましいスタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシムバスタチンを含む。
【0087】
本明細書で参照される全ての文献が、その全体が参照として本明細書に取り込まれる。特に、抗体2D03に関するWO 2004/030607およびWO 2007/025781の開示全体が、その全体を参照として本明細書に取り込まれる。
【0088】
本明細書における選考文献のリストまたは議論は、文献が当該分野における記述の一部であり、一般的な共通知識であると認識されるものとして受け取られる必要はない。
【0089】
本発明は、以下の実施例および図を参照して、より詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】2D03重鎖(配列番号1)および軽鎖(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【図2a】図1に示すポリヌクレオチドによりコードされる、2D03重鎖(配列番号3)および軽鎖(配列番号4)のアミノ酸配列を示す。CDRに下線が引かれている。
【図2b】図1に示すポリヌクレオチドによりコードされる、2D03重鎖(配列番号3)および軽鎖(配列番号4)のアミノ酸配列を示す。CDRに下線が引かれている。
【発明を実施するための形態】
【0091】
実施例1:安定性におけるpHの効果
精製方法の開発の間、出願人は、以前のn-CoDeR(登録商標)製品に比較して、異なる安定特性を抗体2D03が示すことを発見した。典型的には、150mM NaClを含むpH 7-7.5の10-20mMのリン酸バッファーが、n-CoDeR(登録商標)抗体製品の安定な配合物をもたらす。しかし、抗体2D03は、この配合物中で安定ではなかった。従って、出願人は、抗体2D03の安定性に対するpHおよび塩濃度の効果を評定した。
【0092】
概説すると、
2D03抗体製品は、6.0より高いpHで凝集するが、これより低いpHでは凝集しない。
(milliSiemens中において)100 mM NaCl同等物より低い、低い伝導性を有する溶液中で実行する場合、2D03の限外濾過による濃度またはバッファー交換により、凝集が生成するが、これより高い伝導性の濃度では凝集しない。
【0093】
最初の実験により、抗体2D03製品は、pH 5.5にpHが維持され、150 mM NaClが含まれる場合、少なくとも160 mg/mlに濃縮することができることが示された。
【0094】
実施例2:安定性試験
要約
この実験の目的は、100 mg/mlよりも高い濃度にある抗体2D03の安定な配合物を同定することであった。100 mg/mlから150 mg/mlの間の抗体濃度およびpH 5.5を有する6つの異なる配合物の安定性を、5°Cおよび24°C(加速試験)でインキュベートした後調査した。
【0095】
背景
実施例1において、出願人は、以前のn-CoDeR(登録商標)抗体製品に比較して、異なる安定特性を抗体2D03が示すことを発見した。概説すると、製品は、6.0より高いpHで凝集し、低い伝導性を有する溶液中で実行する場合、限外濾過による濃度またはバッファー交換により、凝集が生成する。これらの発見に基づき、以下の配合物安定性試験を、pH 5.5であり、全ての配合物中に150 mM NaClを有する配合物に限定した。
【0096】
高濃度n-CoDeR(登録商標)製品配合物を伴う以前の出願人による試験に基づき、ポリソルベート20が、これがn-CoDeR(登録商標)の安定性を向上させることが示されているため、ほとんどの試験配合物に含まれた。Golovanov et al (2004) J. Am. Chem. Soc., 126: 8933-8939に報告された発見に基づいて、アルギニンおよびグルタミン酸が、一つの配合物に賦形剤として含まれた。抗体配合物の安定性を向上させることが示されているため、マンニトールが一つの配合物に含まれた。一般的に、適切な緩衝範囲を有する適切な生物学的バッファーであるために、ヒスチジンが試験された。
【0097】
解析方法
以下の方法を使用して、異なる配合物中における抗体2D03の安定性を評価した。各解析(濃度、外見、抗原結合能、浸透圧および質的評価)を、5°Cおよび24°Cの両方で0、4、8、14および18週間保存後、配合物IからVIのそれぞれにおいて実行した。
【0098】
サイズ除去クロマトグラフィーによる純度
抗体の純度を、TOSOH BioscienceからのTSKゲル3000SWXLカラムを使用して、HPLCにより定性的に決定した。これは、その分子量により分子を分離し、かつ10から500 kDaの間で最も有効な解像度を有するサイズ除去カラムである。0.4 M塩化ナトリウムを含み、pH7.2である、5 mMリン酸カルシウムの移動相を、流量1 ml/分で使用した。UV検出を280 nmで実行し、モノマーピークの領域を、総ピーク領域のパーセントとして算出した。手動セットパラメーターに従って、積分(Integration)を自動実行した。
【0099】
A280によるタンパク質濃度
タンパク質含量の決定は、280 nmにおける芳香族領域のタンパク質の紫外線吸収に基づくものである。280 nmにおける吸収は、ランバート-ビア法(Lambert-Beers law)によるタンパク質濃度に直接比例する。吸収を、Ultrospec110 pro分光光度計を使用して決定した。サンプルを10 mMリン酸ナトリウムバッファー、0.15 M NaCl, pH 7.4中に希釈し、0.05-1.0 AUを得た。
タンパク質濃度を、
A = ε b c
で算出した。式中、Aは吸収であり、εは吸光定数であり(この場合1.62)、cはmg/mlにおける濃度であり、かつbはセンチメートルにおけるキュベットの経路長である。
【0100】
カチオン交換クロマトグラフィー
抗体の定性的評価を、タンパク質の全体の変化の間における際に基づき分子を分離する、カチオン交換クロマトグラフィーを使用して実行した。ProPac(登録商標)弱カチオン交換クロマトグラフィーを使用した。このカラムは、pI = 3-10およびMW > 10 000を有するタンパク質および糖タンパク質を、高解像度でかつ高効率で分離するように特に設計されている。10 mM酢酸ナトリウム、pH 5.0 (移動相A)、および10 mM酢酸ナトリウム、1 M NaCl、pH 5.0 (移動相B)を、流速1 ml/分で使用した。10分間の0-75%の直線的に勾配した移動相Bを適用した。280 nmにおける吸光により、検出を実行した。
【0101】
410 nmにおける光分散
沈殿を見積もるために、Ultrospec 110 pro分光光度計を使用して、410 nmにおいて光分散を測定した。較正のために、脱イオン水を使用した。
【0102】
SDS-PAGE
SDS-PAGE Phast system(登録商標)を、製造者のマニュアルに従って使用した。タンパク質(Phastgel Gradient 8-25)を、クーマシー染色(Comassie staining)により検出した。サンプルロード濃度(sample load concentration)は約0.5 mg/mlであり、ウェルあたり3μLから4μLをロードした。Fermentas PageRuler Prestained Protein Ladderを、各ゲルの最初のウェルにロードした。
【0103】
抗原結合
マイクロタイタープレート(Microtiter plate)を、MDA-ApoB100で一晩、コーティングした。洗浄後、室温で1時間、0.45%魚ゼラチン(fish gelatin)でプレートをブロッキングした。標準2D03滴定および試験サンプルを、コートしブロッキングしたマイクロタイタープレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、P214ウサギ抗ヒトIg-HRP結合物(P214 rabbit-anti-Human Ig-HRP conjugate)を添加し、室温でさらに1時間プレートをインキュベートした。OPD-基質(o-フェニレンジアミン二塩酸)で結合を可視化し、1M HClで停止させた。2つの波長、490 nm (λtest) および650 nm (λref)で、Versamax reader上で吸光を読み取った。特異的抗体濃度の算出を実行するSOFTmax Pro 4.0ソフトウェアにより、データを収集した。(A280により測定される)総タンパク質解析より受け取る値により割られる、このELISA法により受け取られる特異的濃度として、抗体結合を算出した。
【0104】
浸透圧
Micro-Osmometer Typ 13/13 DRを使用して、定量的浸透圧を確定した。較正点は、0および300 mOsm/kg H2Oである。サンプルをMilli-Q H2Oで希釈し、必要であれば較正周期に近似させた。
【0105】
純度
配合物の純度を、安定性試験時間の最後に測定し、それは95%より小さかった。
【0106】
結果
配合物I
抗体2D03 136 mg/ml
酢酸ナトリウム 20 mM
NaCl 150 mM
pH 5.5
【0107】
結果
5°Cにおける安定性:14週間安定、18週間で安定性喪失。
24°Cにおける安定性:8週間安定、14週間で安定性喪失。
【0108】
配合物II
抗体2D03 136 mg/ml
酢酸ナトリウム 20 mM
NaCl 150 mM
ポリソルベート20 0.1 % (1.1 mg/ml)
pH 5.5
【0109】
結果
5°Cにおける安定性:4週間安定、8週間で安定性喪失。
24°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
【0110】
配合物III
抗体2D03 136 mg/ml
酢酸ナトリウム 20 mM
NaCl 150 mM
ポリソルベート20 0.1 % (1.1 mg/ml)
マンニトール 50 mM
pH 5.5
【0111】
結果
5°Cにおける安定性:8週間安定、14週間で安定性喪失。
24°Cにおける安定性:8週間安定、14週間で安定性喪失。
【0112】
配合物IV
抗体2D03 136 mg/ml
酢酸ナトリウム 20 mM
NaCl 150 mM
His-HCl 50 mM
ポリソルベート20 0.1 % (1.1 mg/ml)
pH 5.5
【0113】
結果
5°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
24°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
【0114】
配合物V
抗体2D03 136 mg/ml
酢酸ナトリウム 20 mM
NaCl 150 mM
アルギニン 50 mM
グルタミン酸 50 mM
ポリソルベート20 0.1 % (1.1 mg/ml)
pH 5.5
【0115】
結果
5°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
24°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
【0116】
配合物VI
抗体2D03 151 mg/ml
酢酸ナトリウム 20 mM
NaCl 150 mM
His-HCl 50 mM
ポリソルベート20 0.1 % (1.1 mg/ml)
pH 5.5
【0117】
結果
5°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
24°Cにおける安定性:0週間安定、4週間で安定性喪失。
【0118】
結論
配合物Iは、5°Cで少なくとも14週間安定であり、24°Cにおける加速実験(accelerated study)において少なくとも8週間安定であり、最も安定な配合物と同定された。目視および410 nmにおける光散乱により確定された沈殿の存在により、この配合物は、5°Cで18週間、24°Cで14週間までに不安定であるとみなされた。
【0119】
IからVIの配合物それぞれに対して、純度、濃度、特性または活性において、時間が経っても、配合物のいずれにおいても、上述の方法のいずれかによっても顕著な差異は検出されなかった。全ての配合物の不安定性を、目視および410 nmにおける光散乱により区別される沈殿により、決定した。
【0120】
実施例3:濃縮2D03溶液の配合物
概説
バルク溶液(A280により決定される24.3 mg/mlのタンパク質濃度に基づく、1534.6 mlの容量における37.3 g)における抗体2D03を、Pelliconフィルター(フィード圧(feed pressure):1.4-2.1 bar;保持圧(retentate pressure):0-0.7 bar)を使用する濾過により、120±20 mg/mlの最終濃度(実際の濃度133 mg/ml)に室温で濃縮した。濃縮後、生成物を無菌0.22 μmフィルターで濾過し、無菌PETGボトル中に+2°Cから+8°Cで保存した。
【0121】
濃縮抗体溶液を、外見、タンパク質濃度、pH、エンドトキシン、純度、等電点電気泳動法、生物負荷および抗原結合について、以下に記載される、公知のQC手順を使用して評定した。
【0122】
外見
サンプル溶液を、粒子、清澄さ、および色について、視覚的に調査した。粒子の試験のために、サンプルを黒および白のバックグラウンドの前で試験した。清澄さの決定のために、1 mlのサンプルをガラスチューブに移し、欧州薬局方(European Pharmacopoeia) 2.2.1に従って、参照溶液と比較して、黒色バックグラウンドに対して乳白光を試験した。清澄さが、水と同じである場合、またはその乳白光が、参照懸濁液Iよりも目立たない場合、サンプルを「清澄である」とみなした。サンプルがこれらの基準を満たさない場合、乳白光のレベルは、サンプルよりもより乳白光を発する、例えば<IIまたは <IIIである第一参照懸濁物より低いと報告された。サンプルの色を調査し、白色バックグラウンドに対して水と比較した。サンプルが水のように無色である場合、「無色」と報告される。そうでなければ、わずかな着色が記載される。
【0123】
受容可能な基準は、実際に粒子が存在しないことであった。乳白光および着色が報告された。
【0124】
A280によるタンパク質濃度
Shimandzu UV-1601分光光度計を使用したこと以外は、実施例2に記載されたようにタンパク質濃度を決定した。
【0125】
受容可能な基準は、タンパク質濃度が120±20 mg/mlであることだった。
【0126】
pH測定
pHメーター、連結pH電極、Radiometer-Copenhagen pHM-210を、Radiometer Analyticalからの標準バッファー溶液を使用して測定範囲に較正した。サンプルのpHをその後測定した。
【0127】
受容可能な基準は、pH 5.5±0.5であることだった。
【0128】
動態LALによるエンドトキシン
BioWhittakerからのKinetic-QCL(登録商標)キットを、グラム陰性微生物エンドトキシンを検出するための、定量動態アッセイとして使用した。アッセイは、リムルス変形細胞溶解物(limulus amebocyte lysate (LAL))におけるプロ酵素をエンドトキシンが活性化し、その後pニトロアニリン(pNitroaniline (pNA))の切断を触媒し、黄色を生成する、酵素反応に基づく。
【0129】
エンドトキシンのサンプルおよび標準滴定物をリムルス変形細胞溶解物(LAL)試薬水中に、エンドトキシンが存在しないガラスチューブを使用して希釈した。100μlの希釈液を、ピロゲンフリー(pyrogen free)の96穴プレートに移した。各サンプル希釈液を、既知の量のエンドトキシンでスパイク(spiked)した。プレートを、Versamaxマイクロプレートリーダー中、37°Cで10分間プレインキュベートした。LAL/基質を、LAL試薬水中に希釈した。インキュベーション後、100μlのLAL/基質溶液を、各ウェルに添加した。読み取りをすぐに開始し、2.5分ごとに40回の読み取りでモニターした。反応を、 37°Cで実行した。吸光を、405 nmで読み取った。黄色い着色が現れるために必要な時間は、存在するエンドトキシンの量に反比例する。計算を実行するSOFTmax Pro 4.0ソフトウェアによって、データを収集する。エンドトキシンの量を、IU/ mlとして規定される国際単位で表現する。スパイクしたエンドトキシンの50%から150%のリカバリーを与える、最も低いサンプル希釈液が受容可能である。
【0130】
受容可能な基準は、エンドトキシンが4.0 IU/ml以下であることだった。
【0131】
純度(HPLC-SEC)
Beckman System Goldシステムを使用して、抗体の純度を、TSK3000カラム (TosoHaas)を使用するHPLCにより定量化した。これは、その分子量により分子を分離し、かつ10から500 kDaの間で最も高い解像度を有するサイズ除去カラムである。0.4 M塩化ナトリウムを含み、pH7.2である、5 mMリン酸カルシウムの移動相を、流量1 ml/分で使用した。注入量は20μlであった。UV検出を280 nmで実行した。手動セットパラメーターおよびソフトウェア32 Karatバージョン5.0を使用して、積分表面領域(integrated surface area)を自動計算した。
【0132】
受容可能な基準は、90領域%以上であることだった。メインピークおよび0.5領域%以上のピークに対する保持時間および領域%が報告された。
【0133】
純度(SDS-PAGE)
サンプルの純度を、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により評定した。タンパク質を含むサンプルを、メルカプトエタノールを含む、および含まない、トリス-グリシン-SDS-ブロモフェノールブルーバッファー中、95°Cで5分間加熱した。サンプルおよび分子量ブロードレンジ(molecular weight Broad Range) (BioRad)スタンダードを、Novexからのプレキャストゲル、4-20%にロードした。Novex X-cell IIミニセル装置を使用して、トリス-グリシン-SDS-ブロモフェノールブルーバッファー中、125Vで120分間、ゲルを電気泳動した。GELCODE Blue染色による染色で、タンパク質を可視化した。染色したゲルをBioRad GS-710比重計でスキャンし、相対純度を算出した。Quantity-Oneソフトウェア (BioRad)を使用して、結果を評価した。
【0134】
受容可能な基準は、参照に比較して、総タンパク質の10%より多くのものに相当する、付加的なバンドが存在しないことだった。
【0135】
等電点電気泳動法
IsoGel(登録商標)を、pH範囲3から10で使用して、Multiphor II電気泳動ユニット上で等電点電気泳動を実行した。陰極溶液は0.5 M酢酸であり、陽極溶液は1 M水酸化ナトリウムであった。IEFキャリブレーションキットブロードpI (IEF Calibration kit Broad pI) (Amersham Biosciences)を、マーカーとして使用した。サンプルを、ゲルに適用する前に、1%グリシンに対する透析により、脱塩した。温度を10°Cにセットし、サンプルを1500 Vおよび150 mAでプレ電気泳動(pre-focus)した。プレ電気泳動後、電力は25 Wまで上昇し、電気泳動を約60分間実行した。クーマシー染色によりタンパク質を検出し、ゲルをGS-710比重計(BioRad)でスキャンした。Quantity Oneソフトウェアにより、マーカータンパク質の移動距離およびそのpI値から生成する較正曲線を使用して、サンプルのpI値を算出した。
【0136】
この方法を2D03抗体に最適化し、ロードするタンパク質の適量が、陽極から5 cmの距離において25μgであることを出願人は発見した。これらの発見を使用して、サンプルを3回アッセイした。pI値およびバンドの数を、pI (min) - pI (max) およびバンドの数として報告される結果で決定した。
【0137】
受容可能な基準は、参照値に比較可能であることだった。
【0138】
生物負荷(Bioburden)
サンプリング後24時間以内に、生成物を、微生物を検出するために、Tryptone Soyaアガープレート上、32.5±2.5°Cで、真菌を検出するために、Sabouraud Dextroseアガープレート上、22.5±2.5°Cでインキュベートした。3日後、Tryptone Soyaアガープレートを検査し、コロニーをカウントし、5日後、Sabouraud Dextroseアガープレートを検査した。
【0139】
受容可能な基準は、微生物または真菌が増殖しないことだった。
【0140】
抗原結合
実施例2に記載されているように、抗原結合を決定した。
【0141】
受容可能な基準は、参照値の50%以上であることだった。
【0142】
結果
2D03濃縮溶液を、(mlあたり)以下のように配合した。
133 mgの抗体2D03;
8.77 mgの塩化ナトリウム;
2.35 mg酢酸ナトリウム三水和物;
0.16 μlの酢酸;
pH 5.5となるような(すなわち、最終pH 5.5の)水酸化ナトリウム;および
1 mlとなるような(すなわち、最終容量1 mlの)水。
【0143】
2回の試験の後、2D03濃縮溶液は、上記試験全てに対する受容可能な基準を満たした。
【0144】
実施例4:2D03調製物の長期安定性試験
長期安定性試験を実行し、臨床における使用に必要とされるのに対して十分な半減期を抗体調製物が有することが示された。
【0145】
20 mM酢酸ナトリウム、150 mM塩化ナトリウム中、pH 5.5において25 mg/mlの2D03抗体を含む抗体調製物を、+5°Cで12ヶ月間保存した。調製物の純度は、95%より高かった。
【0146】
【表1】

【0147】
これらの結果は、2D03抗体が、+5°Cで12ヶ月間この配合物中で十分安定であり、臨床において使用できることを示す。
【0148】
実施例5:2D03調製物の長期安定性試験
抗体調製物、実施例4の一つのように、+25°Cで6ヶ月間保存した。
【0149】
【表2】

【0150】
これらの結果は、2D03抗体が、+25°Cで6ヶ月間この配合物中で十分安定であり、臨床において使用できることを示す。
[配列表]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する治療上有効量の抗体、ならびに薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、担体または賦形剤を含み、4から6のpHを有する水性薬剤組成物。
【請求項2】
4.5以上のpHを有する請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
4.9以上のpHを有する請求項2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
4.9から5.1のpHを有する請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
約5のpHを有する請求項4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
5から6のpHを有する請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
5から5.9のpHを有する請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
5.4から5.6のpHを有する請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
約5.5のpHを有する請求項8に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
抗体が95%以上の純度、例えば、96%または97%または98%または99%またはそれ以上の純度、あるいは100%の純度で提供される、請求項1から9のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
抗体が10 mg/mlから200 mg/mlの濃度で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
抗体が25 mg/mlから150 mg/mlの濃度で存在する、請求項11に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
抗体が25±10 mg/ml存在する、請求項11に記載の薬剤組成物。
【請求項14】
抗体が120±20 mg/ml存在する、請求項11に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
抗体が約150±10 mg/ml存在する、請求項11に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
酢酸バッファーを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項17】
酢酸が、5 mMから30 mM存在する、請求項16に記載の薬剤組成物。
【請求項18】
酢酸が、10 mMから30 mM存在する、請求項17に記載の薬剤組成物。
【請求項19】
酢酸が、約20 mM存在する、請求項18に記載の薬剤組成物。
【請求項20】
塩化ナトリウムを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項21】
塩化ナトリウムが100 mMから200 mM、好ましくは約150 mM存在する、請求項20に記載の薬剤組成物。
【請求項22】
1 mlあたり、
15 mgから160 mgの請求項1で規定される抗体;
8.77 mgの塩化ナトリウム;
2.35 mgの酢酸ナトリウム三水和物;
0.16 μlの酢酸;
pH 5.5となるような水酸化ナトリウム;および
1 mlとなるような水
を含む、薬剤組成物。
【請求項23】
抗体が、25±10 mg/ml、120±20 mg/ml、または150±10 mg/mlの濃度で存在する、請求項22に記載の薬剤組成物。
【請求項24】
25 mg/mlの請求項1で規定される抗体;
20 mMの酢酸ナトリウム;
150 mMの塩化ナトリウム;および
pH 5.5となるような水酸化ナトリウム
を含む、薬剤組成物。
【請求項25】
保存剤をさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項26】
保存剤がベンジルアルコールである、請求項25に記載の薬剤組成物。
【請求項27】
皮下または静脈投与用に配合される、請求項1から26のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項28】
2°Cから8°Cの温度で、少なくとも14週間安定である、請求項1から27のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項29】
2°Cから8°Cの温度で、少なくとも12ヶ月間安定である、請求項1から28のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項30】
2°Cから8°Cの温度で、少なくとも1.5年間、または少なくとも3年間安定である、請求項1から29のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項31】
約24°Cの温度で、少なくとも8週間安定である、請求項1から30のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項32】
凍結および溶解後に安定である、請求項1から31のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項33】
抗体を前もって凍結乾燥しない、請求項1から32のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか一項に規定される安定な水性薬剤配合物を保持する無菌容器を含む製造品。
【請求項35】
使い捨てシリンジである、請求項34に記載の製造品。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に規定される安定な薬剤組成物、およびスタチンを含む、パーツのキット。
【請求項37】
スタチンが経口投与用に配合される、請求項36に記載のパーツのキット。
【請求項38】
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシムバスタチンより選択される、請求項36または37に記載のパーツのキット。
【請求項39】
患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する方法であって、投与の必要がある患者に対して、請求項1から33のいずれか一項に記載の薬剤組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項40】
抗体によって、患者におけるアテローム斑の形成を減少させる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
抗体によって、患者においてすでに存在するアテローム斑の退縮を誘導する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療するための、請求項1から33のいずれか一項に記載の薬剤組成物の製造における、配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体の使用。
【請求項43】
患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患の治療において使用するための、請求項1から34のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項44】
患者が、アテローム性動脈硬化を有するヒト患者である、請求項39から43のいずれか一項に記載の方法、使用または薬剤組成物。
【請求項45】
患者が、アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を有する、または有する危険にあるヒト患者である、請求項39から43のいずれか一項に記載の方法、使用または薬剤組成物。
【請求項46】
アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患が、冠状動脈疾患、心筋梗塞、および脳卒中より選択される、請求項39から43のいずれか一項に記載の方法、使用または薬剤組成物。
【請求項47】
アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する方法であって、請求項1から33のいずれか一項に記載の薬剤組成物およびスタチンを個体に投与する工程を含む方法。
【請求項48】
アテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する際に、組み合わせて使用するための、請求項1から30のいずれか一項に記載の薬剤組成物およびスタチン。
【請求項49】
添付される記述、図および/または描画を参照して、本明細書に実質的に記述される、薬剤組成物。
【請求項50】
添付される記述、図および/または描画を参照して、本明細書に実質的に記述される、製造品。
【請求項51】
添付される記述、図および/または描画を参照して、本明細書に実質的に記述される、患者におけるアテローム性動脈硬化、またはアテローム性動脈硬化に関連する心臓血管疾患を治療する方法。
【請求項52】
添付される記述、図および/または描画を参照して、本明細書に実質的に記述される、薬剤組成物。
【請求項53】
添付される記述、図および/または描画を参照して、本明細書に実質的に記述される薬剤組成物の製造における、配列番号3の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2011−507922(P2011−507922A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540067(P2010−540067)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/011043
【国際公開番号】WO2009/083225
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(506209743)バイオインヴェント インターナショナル アーベー (9)
【Fターム(参考)】