説明

配管架設構造及び配管の架台部における防食方法

【課題】配管の架台部において、より完全な防食を達成でき、また配管の架設後も、外部から配管と架台部との接触部を非破壊で検査することを可能にする。
【解決手段】配管架設構造1は亜鉛より貴な金属製の配管とこれを支持する架台を備えている。配管2と架台4との間に、低摩擦部材7が、架台4に配置固定されているとともに、配管2と低摩擦部材7との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材3aが、配管2と直接に接するように、かつ低摩擦部材7と摺動可能なように配されており、低摩擦部材7は、防食部材3aが熱伸縮したときに、防食部材3aが低摩擦部材7に対して摺動するに足る低摩擦係数を有している。低摩擦部材7と架台4との間には、亜鉛又は亜鉛合金からなる第二の防食部材3bが、架台4に配置固定されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管架設構造及び配管の架台部における防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内又は屋外の各種金属製配管は、所定の間隔毎に配設された架台で支持固定されている。この架台と配管の間隙には、塵埃又は水等が蓄積し易く(毛管凝縮)、乾燥しにくいことから腐食が進行し易い。更に雰囲気又は搬送流体の温度変化による配管自身の熱伸縮に起因する律動が避けられず、配管と架台との接触部に生じた腐食生成物は剥離と再生を繰り返し、配管や塗膜の減肉速度を促進する。
【0003】
そこで、この配管の架台に接する部位を防食する方法として、例えば、特許文献1には、配管の架台と接する部位に、耐食性樹脂及びステンレスシートから構成される防食材を巻き付け、接着剤とステンレスバンドで固定し防食する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−315993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の防食方法では、配管自身の熱伸縮による律動の程度によっては、防食材等がずれたり外れたりする場合があり、完全な防食が達成できているとは言えなかった。また、当該防食方法では、配管の架台との接する部分を防食材で覆い、該防食材を接着剤とステンレスバンドで固定しているため、架台と配管との接触部位を検査するためには、接着剤で固定されている防食部材を取り外す必要がある。また、防食部材を接着剤とステンレスバンドで固定するため、接着剤の乾燥に時間がかかり、施工時間を要するという問題もある。更に、この防食方法は、犠牲防食効果ではなく、被覆防食効果で防錆しているため、配管自身の熱伸縮や初期の施工不良により配管と防食部材との間に隙間が生じると、隙間部分の腐食が特に進行し易い。
【0006】
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る配管架設構造及び配管の架台部における防食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、亜鉛より貴な金属製の配管とこれを支持する架台を備えた配管架設構造において、
該配管と該架台との間に、低摩擦部材が、該架台に配置固定されているとともに、
該配管と該低摩擦部材との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材が、該配管と直接に接するように、かつ該低摩擦部材と摺動可能なように配されており、
該低摩擦部材は、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該低摩擦部材に対して摺動するに足る低摩擦係数を有していることを特徴とする配管架設構造を提供するものである。
【0008】
本発明は、亜鉛より貴な金属製の配管とこれを支持する架台を備えた配管架設構造において、
該配管と該架台との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材が、該配管と直接に接するように配されており、
該防食部材における、該架台との対向面に、低摩擦層が設けられており、
該低摩擦層は、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該架台に対して摺動可能とするものであることを特徴とする配管架設構造を提供するものである。
【0009】
また本発明は、亜鉛よりも貴な金属製の配管とこれを支持する架台の間に、低摩擦部材を該架台に配置固定するとともに、該低摩擦部材を配置固定する前に又は配置固定した後に該配管と該低摩擦部材との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材を、該配管と直接に接するように、かつ該低摩擦部材と摺動可能なように配する配管の架台部における防食方法であって、
該低摩擦部材として、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該低摩擦部材に対して摺動するに足る低摩擦係数を有するものを用いたことを特徴とする配管の架台部における防食方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、亜鉛よりも貴な金属製の配管とこれを支持する架台の間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材を、該配管と直接に接するように配するとともに、
該防食部材を配する前に又は配した後に、該防食部材における、該架台との対向面に、低摩擦層を設ける配管の架台部における防食方法であって、
該低摩擦層として、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該架台に対して摺動可能とするものを用いたことを特徴とする配管の架台部における防食方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配管架設構造は、配管と架台との間に、低摩擦部材が介在されているとともに、該配管と該低摩擦部材との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材が、該低摩擦部材と摺動可能なように配されているため、配管の熱伸縮による律動によっても、防食材等がずれたり外れたりすることがなく、極めて効果的な防食を達成し得る。また、配管と架台との間に、前記防食部材と前記低摩擦部材を介在させるという非常に簡潔な構成であるため、架台と配管との接触部が、防食材を取り外すことなく外部から観察することができ、配管の架設後の検査が容易に行える。しかも従来行われているような、配管の周囲を防食部材で覆うという防食方法に比べて、施工時間の短縮化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の配管架設構造を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)には、本発明の配管架設構造の第1実施形態の断面図が示されている。図1(b)は、図1(a)に示す配管架設構造の平面図であり、図1(c)は図1(a)に示す配管架設構造の側面図である。
【0013】
本実施形態の配管架設構造1aは、図1(a)ないし図1(c)に示すように、断面が円形の配管2とこれを支持する架台4とを備えている。配管2は金属製でありその内部には、液体や気体等の各種流体が流される。配管2の外面には、金属の露出を防止するために塗装等によって保護層が形成されていてもよい。
【0014】
架台4は金属製であり、その縦断面が略Iビーム状の形状をしており、板状の基台部4a、該基台部4aの幅方向中央部に立設された支持部4b及び該支持部4bの先端から水平方向に張り出した板状の架台部4cを具備している。上述した配管2は、架台部4cの上面に配置される。架台部4cは、その幅が配管2の直径よりも大きくなっている。架台部4cは、配管2の最外部よりも左右に延出した部位を有している。この延出部位に、固定具としてのU字状の押さえ部材5(後述する)の端部が挿入される一対の貫通穴(図示せず)が設けられている。
【0015】
配管2は、下向きに開放されたU字状の金属製押さえ部材5によって、上方からクランプされて、架台部4cの上面に固定されている。配管2は、所定の間隔ごとに架台4に固定されている。押さえ部材5の両端部は、架台部4cに設けられた貫通穴(図示せず)に挿入され、架台部4cの下面側においてナット51によってネジ止めされている。
【0016】
しかして本実施形態の配管架設構造1aは、配管2と架台部4cの上面との間に、配管2側から防食部材3a(後述する)と低摩擦部材7とがこの順番で介在配置されている点に特徴の一つを有している。低摩擦部材7は、架台部4cの上面に固定されている。低摩擦部材7としては、防食部材3aが熱伸縮したときに、防食部材3aが低摩擦部材7に対して摺動するに足る低摩擦係数を有しているものが用いられる。具体的には、図2に示すように、外気温の変化に起因して配管2の熱伸縮による律動が起こる場合に、配管2と防食部材3aとの接触部位ではなく、防食部材3aと低摩擦部材7との接触面で摺動が起こるような低摩擦部材7を用いる。例えば、JIS−K−7125に準拠した測定法で、低摩擦部材7の防食部材3aに対する動摩擦係数(μ)が0.3以下、防食部材3aに対する静摩擦係数が0.4以下であるものが好適である。また、防食部材3aと低摩擦部材7との接触面での摺動を起り易くするために、防食部材3aと低摩擦部材7との間に、グリースや潤滑油等を塗布してもよい。
【0017】
このような低摩擦部材7としては、例えばポリ四フッ化エチレン、ポリアセタール、ポリアミド、高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0018】
図1(b)に示すように、低摩擦部材7は平面視において矩形をしている。その厚みに特に制限はないが、一般に0.2〜20mmに設定することで、配管2の熱伸縮に起因して生じる応力が低摩擦部材7に加わっても座屈することが効果的に防止される。
【0019】
低摩擦部材7の幅に関しては、同図に示すように、上述した固定具としての押さえ部材5によって、配管2のみならず低摩擦部材7も架台4に固定することを目的として低摩擦部材7の幅を配管2の外径よりも大きくしている。
【0020】
低摩擦部材7の長さに関しては、配管2の重量による面圧を低下させ、低摩擦部材7や防食部材3aの減耗量を削減するという観点から、架台4における架台部4cの長さと同等であるか、又はこれを超える長さであることが好ましい。
【0021】
上述したように、図1(a)及び図1(c)に示すように、配管2と低摩擦部材7との間には、防食部材3aが介在配置されている。防食部材3aは、配管2と直接に接するように、かつ低摩擦部材7と摺動可能なように配されている。ここで、「直接に接する」とは、配管2と防食部材3aとが、配管2の外面に両者間に何らの介在物も存在しない状態で接していることを言う。配管2の外面とは、該配管2を構成する金属が露出している場合には、その露出面を言い、該金属の表面に塗料、めっきが施工されているときは、その施工面のことを言う。また、防食部材3aは、防食部材3aと低摩擦部材7との接触面での摺動を起こり易くするため、防食部材3aの低摩擦部材に対向する側の面の表面粗さをRa≦1μmとすることが好ましい。
【0022】
防食部材3aは、亜鉛又は亜鉛合金から構成されている。亜鉛としては、例えば純度99.9質量%以上の純亜鉛が用いられる。亜鉛合金としては、例えばアルミニウムを0.1〜0.5質量%、マグネシウム0.05〜0.5を質量%含む合金が好適に用いられる。これらの金属を含む亜鉛合金を用いると、アルミニウムあるいはマグネシウムが亜鉛を均一に溶解することを助け、防食部材3aが均一に溶解する。また陽極電位や有効電気量が向上する。
【0023】
防食部材3aとしては、亜鉛又は亜鉛合金板のみから構成される一層構造のものでもよいし、あるいは本出願人が製造販売するZAP-SUS等のように、亜鉛又は亜鉛合金板からなる層とステンレスからなる層との複合構造のものであってもよい。複合構造のものを用いる場合、亜鉛又は亜鉛合金からなる層を配管2側に配する必要がある。
【0024】
防食部材3aは平面視において矩形をしており、箔と呼ばれる厚さ0.05mm程度の薄型材料から、厚さ20mm程度の剛直な板状材料までを包含する。配管2に大きな熱伸縮が生じる場合や海の近傍のような腐食環境が厳しい場合には、防食部材3aの厚さが1mm以上であることが熱伸縮による防食部材3aの座屈の防止や長寿命化の観点から好ましい。
【0025】
防食部材3aの幅に関しては、図1(a)に示すように、配管2の外径と同等であるか、又はそれよりも若干小さくなっている。防食部材3aの幅をこのような大きさとすることで、防食部材3aが熱伸縮したときに、防食部材3aが低摩擦部材7に対して摺動可能となっている。したがって、低摩擦部材7及び第二の防食部材3b(後述する)と異なり、防食部材3aの左右両側縁部には、U字状の押さえ具5が貫通するための穴が設けられていない。
【0026】
防食部材3aの長さに関しては、架台4における架台部4cの長さと同等であるか、又はこれを超える長さであることが好ましい。この理由は、配管架設構造の適用対象が、錆を有する既設配管が多く、少なくとも錆を有する範囲は防食する必要があり、また配管2と架台4の架台部4cとの接触部の近傍は、腐食環境が厳しいため、配管2を効果的に防食するためには、少なくとも架台部4cの長さと同等であることが必要であるためである。
【0027】
図1(a)及び図1(c)に示すように、低摩擦部材7と架台4との間には、第二の防食部材3bが、架台4に配置固定されている。第二の防食部材3bは、先に説明した防食部材3aと同様に、亜鉛又は亜鉛合金から構成されている。第二の防食部材3bの材質については、防食部材3aの材質に関して上述した説明が適宜適用される。
【0028】
第二の防食部材3bは、先に説明した防食部材3aと同様に平面視において矩形をしており、箔と呼ばれる厚さ0.05mm程度の薄型材料から、厚さ20mm程度の剛直な板状材料までを包含する。第二の防食部材3bの幅に関しては、上述した固定具としての押さえ部材5によって、架台4に固定することを目的として、配管2の直径よりも大きくなっており、架台4における架台部4cの幅と同等であるか、又はそれよりも若干小さくなっている。
【0029】
防食部材3bの長さに関しては、架台4における架台部4cの長さと同等であるか、又はこれを超える長さであることが架台4の表面全体が防食可能であるという観点から好ましい。
【0030】
以上の構成を有する配管架設構造1aは、配管2と架台4との間に、低摩擦部材7を配置固定するとともに、配管2と低摩擦部材7との間に、さらに、亜鉛又は亜鉛合金からなる防食部材3aを、配管2と直接に接するように、かつ低摩擦部材7と摺動可能なように配するものである。配管2と防食部材3aとは、配管2の重み及びU字状の押さえ部材5による締め付け力により生じる塑性変形により圧接されることで、両者間の移動が抑制される。この状態下に配管2の熱伸縮による律動が起こると、防食部材3aの塑性変形に起因して、図2に示すように防食部材3aは配管2とともに熱伸縮移動し、摺動は、配管2と防食部材3aとの接触部位ではなく、防食部材3aと低摩擦部材7との接触面において起こる。このため配管の架台における従来の防食方法である特許文献1に記載の方法とは異なり、防食材等がずれたり外れたりすることがなく、極めて効果的な防食を達成し得る。ここで、配管架設構造1aの適用対象が、既設の配管の場合、配管が腐食しており、配管の外周面に凹凸が存在しているため、配管2と防食部材3a間の移動が更に抑制されている。一方、配管架設構造1aを、新設の配管に施工する場合には、配管2を表面粗化処理や、導電性接着剤あるいは導電性粘着剤をに塗布することにより、配管2と防食部材3a間の移動を更に抑制することが好ましい。これらの処理を、既設配管に対して行うことで、配管2と防食部材3a間の移動の抑制に一層有効となる。また、配管2と架台4との間に、防食部材3aと低摩擦部材7とを介在させるという構成を採用することによって、仮に配管2が濡れた環境に曝されても、配管2に接触した防食部材3aが犠牲防食効果により優先的に腐食して腐食生成物を形成するので、配管2の腐食が効果的に防止される。また、この腐食生成物は、配管2の表面に付着して、配管2と雰囲気とを遮断し、配管2の防食を更に防止する(被覆防食作用)だけでなく、インヒビター効果によっても配管2を防食する。しかも配管2は、その周囲の全域が防食部材で覆われていないので、防食部材を取り外すことなしに配管2と架台4との接触部位を直接観察できる。このことは、配管2の保守性の向上に大きく寄与する。また、第二の防食部材3bを、低摩擦部材7と架台4の架台部4cとの間に配置固定しているので、架台部4cの上面が確実に防食される。更に、防食部材を取り外すことなしに配管2と架台4との接触部位を検査可能とした状態のまま、より広い範囲を防食できる。
【0031】
上述の防食効果を顕著に発現させるためには、配管2は、防食部材3a及び第二の防食部材3bに含まれる金属である亜鉛よりも貴な金属で構成されている。具体的には、鋼材、ステンレスなどから構成されていることが好ましい。また、架台4に関しては、少なくとも架台部4cが、配管2と同様に、亜鉛より貴な金属で構成されていることが好ましい。押さえ部材5に関しては、これを亜鉛と同等又は亜鉛よりも貴である金属から構成することが、配管2の防食の観点から好ましい。そのような金属としては例えばアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛めっきされた鋼等が挙げられる。アルミニウム合金としては例えば、A1050等が挙げられる。
【0032】
以上の構成を有する配管架設構造1aの施工方法について以下に説明する。亜鉛より貴な配管2と、これを支持する架台4、並びに配管2、低摩擦部材7及び第二の防食部材3bを固定するためのU字状押さえ部材5を用意する。配管架設構造1aを、新設の配管に施工する場合、配管2を表面粗化処理したり、導電性接着剤あるいは導電性粘着剤を塗布したりしておくことが好ましい。これとは別に架台4の架台部4cの上面と同程度の大きさに加工した低摩擦部材7及び第二の防食部材3bと、長さが架台4の架台部4cの上面と同程度であり、幅を配管2の外形と同程度に加工した防食部材3aを用意する。低摩擦部材7、第二の防食部材3b及び架台4には、図1(a)ないし図1(c)に示すように、幅方向両側縁部に、U字状の押さえ部材5の端部5が貫通するための貫通穴を設けておく。次に、図1(a)及び図1(c)に示すように、配管2と直接に接するように防食部材3aを配するとともに、防食部材3aを配する前に又は配した後に低摩擦部材7及び第二の防食部材3bをU字状の押さえ部材5で配管2とともに固定する。
【0033】
次に、本発明の第二、第三実施形態及び第四実施形態の配管架設構造について、図3ないし図8に基づいて説明する。第二、第三及び第四実施形態については、先に説明した第一実施形態と異なる点について説明し、特に説明しない点は、第一実施形態と同様であり、第一実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図3ないし図8において、図1及び図2と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0034】
第二実施形態の配管架設構造1bは、図3(a)ないし図3(c)に示すように、低摩擦部材7及び第二の防食部材3bの幅方向両側縁部が、一対のコ字状の固定具6a,6aによって架台4に固定されている。U字状の押さえ部材5は、配管2だけを固定している。固定具6aは、図3(c)に示すように、細長い矩形の金属板をコ字状に折り曲げ加工したものであり、下向きに開放されたコ字状固定具6aの開口部が、低摩擦部材7の上面並びに低摩擦部材7、第二の防食部材3b及び架台4の前後端面に当接するように配されている。固定具6aは、亜鉛と同等又は亜鉛よりも貴である金属から構成されている。このような金属の例は先に述べたとおりである。特にアルミニウム又はアルミニウム合金は曲げ加工性や防食性に優れるので、好ましい材料である。アルミニウム合金としては、先に述べたものを用いることができる。
【0035】
本実施形態における低摩擦部材7及び第二の防食部材3bは、第一実施形態と異なり、その幅が配管2の外径と同程度になっている。また第一実施形態と異なり、低摩擦部材7及び第二の防食部材3bの左右両側縁部には、U字状の押さえ具5が貫通するための穴が設けられていない。尚、図4に示すように、本実施形態も、第一実施形態と同様に、外気温の変化に起因して配管2の熱伸縮による律動が起こる場合に、配管2と防食部材3aとの接触部位ではなく、防食部材3aと低摩擦部材7との接触面で摺動が起こる。また、配管の架設場所が常時湿潤した雰囲気でなければ、押さえ部材5の材料としてステンレス等も使用できる。
【0036】
以上の構成を有する配管架設構造1bは、先に説明した第一実施形態と同様の効果を奏するものである。これに加えて、本実施形態の配管架設構造1bは、一対のコ字状の固定具6a,6aで、該固定具6aの開口部が防食部材3a及び架台4を当接するように固定しているので、固定具6aの防食性が更に向上する。
【0037】
第三実施形態の配管架設構造1cは、図5(a)ないし図5(c)に示すように、板状の低摩擦部材7ではなく、液体、粘性体又は粉体状の低摩擦層17を用いている点が第一及び第二の実施形態と異なる。このような低摩擦層を構成する液体又は粘性体状のものとしては、グリースやオイルが挙げられ、粉体状のものとしては、グラファイトや二硫化モリブデンが挙げられる。この低摩擦層17は、防食部材3aの下面と同程度の範囲に塗布される。また、低摩擦層の厚みは、通常0.05〜1mmである。
【0038】
図5(a)ないし図5(c)に示すように、低摩擦層17と架台との間には、亜鉛又は亜鉛合金からなる第二の防食部材3bが、架台4に配置固定されている本実施形態における第二の防食部材3bは、第一実施形態と同様に、その幅が架台4の架台部4cと同程度になっており、また第二の防食部材3bの左右両側縁部には、U字状の押さえ具5が貫通するための穴が設けられている。また、図6に示すように、外気温の変化に起因して配管2の熱伸縮による律動が起こると、配管2と防食部材3aとの接触部位ではなく、防食部材3aと低摩擦層17との接触面で摺動が起こる
【0039】
第四実施形態の配管架設構造1dは、図7(a)ないし図7(c)に示すように、防食部材3aと低摩擦層17とは一体的に形成されている点が第三実施形態と異なる。即ち、防食部材3aの架台4の架台部4c側に対向する側の面に、低摩擦層が形成されている。この低摩擦層17は、配管2が熱伸縮したときに、該低防食部材3aが架台4に対して摺動可能とするものである。このような低摩擦層17としては、例えば、フッ素系の塗膜やコーティングが挙げられる。
【0040】
図7(a)ないし図7(c)に示すように、低摩擦層17と架台との間には、亜鉛又は亜鉛合金からなる第二の防食部材3bが、架台4に配置固定されている。この第二の防食部材3bにおける低摩擦層17との対向面には、第二の低摩擦層18が更に設けられている。第二の低摩擦層18としては、低摩擦層17と同様のものが挙げられる。
【0041】
また、第二の防食部材3bは、第一実施形態と同様に、その幅が架台4の架台部4cと同程度になっており、また第二の防食部材3bの左右両側縁部には、U字状の押さえ具5が貫通するための穴が設けられている。
【0042】
図8に示すように、本実施形態では、第一、第二及び第三実施形態とは異なり、外気温の変化に起因して配管2の熱伸縮による律動が起こる場合に、防食部材3aの架台4に対向する面に形成された低摩擦層17と第二の防食部材3bの上面に設けられた第二の低摩擦層18との接触面で摺動が起こる。
【0043】
以上の構成を有する第三実施形態の配管架設構造1c及び第四実施形態の配管架設構造1dは、先に説明した第一実施形態と同様の効果を奏するものである。
【0044】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0045】
前記の実施形態においては、架台4は、その縦断面が略Iビーム状の形状であったが架台4の構造はこれに限られず、当該技術分野において通常用いられている架台、例えばH型鋼材、溝形鋼材、板状の溶接構造等を適宜用いることができる。また、配管2の架台4への固定は、U字状の押さえ部材5を用いて行ったが、これに限られず、様々な形状の押さえ部材を用いてもよい。また、第二の防食部材3bの架台への固定もまた、第一、第三及び第四実施形態の押さえ部材5や第二実施形態の固定具6aだけでなく、ペースト状防食材や粘着剤つきテープ接着剤等によって固定してもよく、ステンレスバンドやアルミバンド等のバンド、亜鉛テープ、アルミニウムテープ、ステンレステープ等の金属製のテープや、PPバンド、結束バンド(インシュロック)等の樹脂製のバンドにより、第二の防食部材3b及び架台4の架台部4cを一緒に巻き付け、第二の防食部材3bを架台部4cに固定してもよい。
さらに、前記の実施形態においては、低摩擦部材7と架台4との間に、第二の防食部材3bを介在させたが、防食部材3bを介在させずに、低摩擦部材7と架台4を直接に接するように配してもよい。この場合、U字状の押さえ部材5を用いずに、接着材や両面テープ等によって固定してもよい。この場合、低摩擦部材7の架台4と接する側の面を特殊なエッチング処理等することにより、接着可能としたポリ4フッ化エチレン板等が適応できる。
【0046】
また、第二実施形態においては、コ字状の固定具6a,6aにて、低摩擦部材7及び第二の防食部材3bを架台4の架台部4cに固定したが、ステンレスバンドやアルミバンド等のバンド、亜鉛テープ、アルミニウムテープ、ステンレステープ等の金属製のテープや、PPバンド、結束バンド(インシュロック)等の樹脂製のバンドにより、低摩擦部材7、第二の防食部材3b及び架台4の架台部4cを一緒に巻き付け、低摩擦部材7及び第二の防食部材3bを架台部4cに固定してもよい。
【0047】
また、第四実施形態においては、第二の防食部材3bにおける低摩擦層17との対向面には、第二の低摩擦層18が設けられていたが、第二の低摩擦層18は設けなくてもよい。この場合、防食部材3aの架台4に対向する面に形成された低摩擦層17と第二の防食部材3bの上面との接触面で摺動が起こる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0049】
図1(a)ないし(c)に示す配管架設構造1aを製作した。配管2として、外周面をサンドブラスト処理をした長さ100mmの25AのSGP管を用いた。これを支持する架台4として、塗装等の防錆処理をしていない黒皮のままの長さ100mm、幅40mmのCチャンネルを用いた。配管2を固定するためのU字状の押さえ部材5として25A用Uボルトを用いた。防食部材3aとして、長さ40mm、幅25mm及び厚み2mmの純亜鉛板を用いた。防食部材3bとして、長さ40mm、幅70mm及び厚み2mmの純亜鉛板を用いた。低摩擦部材7として、長さ80mm、幅70mm及び厚み0.5mmのポリ四フッ化エチレン板(淀川ヒューテック(株)製)を用いた。尚、前記Uボルトは、1200N・cmのトルクで締結した。また、ポリ四フッ化エチレン板の上面には、ワセリンを塗布した。この配管架設構造1aについて複合サイクル腐食試験を行った。
サイクル試験では、2時間、35℃の環境下で塩水噴霧環境下に曝露後、4時間、60℃乾燥環境に置き、その後、50℃の湿潤環境に4時間置くことを繰り返した。この繰り返しを30回行った後、配管2をU字状の押さえ部材5で固定したまま架台4から5mmずらし、更に前記の手順を20回繰り返した。この後、配管2を架台4から取り外し、防食部材3aと配管2との接触部位を目視検査したところ、当該部位に発錆は認められなかった。また、5mmのずれは、防食部材3aとポリ四フッ化エチレン板との間で生じた。更に、防食部材3bと架台4の架台部との接触面にも発錆は認められなかった。比較として防食部材3a、3b及び3c並びに低摩擦部材7を用いずに製作した配管架設構造について同様の腐食試験を行ったところ、配管2と架台4との接触部位に発錆が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1(a)は本発明の配管架設構造の第一実施形態を示す断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す配管架設構造の平面図であり、図1(c)は図1(a)に示す配管架設構造の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す配管架設構造において、配管が熱伸縮した後の様子を示す側面図である。
【図3】図3(a)は本発明の配管架設構造の第二実施形態を示す断面図であり、図3(b)は図3(a)に示す配管架設構造の平面図であり、図3(c)は図3(a)に示す配管架設構造の側面図である。
【図4】図4は、図3に示す配管架設構造において、配管が熱伸縮した後の様子を示す側面図である。
【図5】図5(a)は本発明の配管架設構造の第三実施形態を示す断面図であり、図5(b)は図5(a)に示す配管架設構造の平面図であり、図5(c)は図5(a)に示す配管架設構造の側面図である。
【図6】図6は、図5に示す配管架設構造において、配管が熱伸縮した後の様子を示す側面図である。
【図7】図7(a)は本発明の配管架設構造の第四実施形態を示す断面図であり、図7(b)は図7(a)に示す配管架設構造の平面図であり、図7(c)は図7(a)に示す配管架設構造の側面図である。
【図8】図8は、図7に示す配管架設構造において、配管が熱伸縮した後の様子を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 配管架設構造
2 配管
3a 防食部材
3b 第二の防食部材
4 架台
4a 基台部
4b 支持部
4c 架台部
5 押さえ部材
51 ナット
6a 固定具
7 低摩擦部材
17 低摩擦層
18 第二の低摩擦層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛より貴な金属製の配管とこれを支持する架台を備えた配管架設構造において、
該配管と該架台との間に、低摩擦部材が、該架台に配置固定されているとともに、
該配管と該低摩擦部材との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材が、該配管と直接に接するように、かつ該低摩擦部材と摺動可能なように配されており、
該低摩擦部材は、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該低摩擦部材に対して摺動するに足る低摩擦係数を有していることを特徴とする配管架設構造。
【請求項2】
前記低摩擦部材と前記架台との間に、亜鉛又は亜鉛合金からなる第二の防食部材が、該架台に配置固定されている請求項1記載の配管架設構造。
【請求項3】
亜鉛より貴な金属製の配管とこれを支持する架台を備えた配管架設構造において、
該配管と該架台との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材が、該配管と直接に接するように配されており、
該防食部材における、該架台との対向面に、低摩擦層が設けられており、
該低摩擦層は、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該架台に対して摺動可能とするものであることを特徴とする配管架設構造。
【請求項4】
前記低摩擦層と前記架台との間に、亜鉛又は亜鉛合金からなる第二の防食部材が、該架台に配置固定されており、
該第二の防食部材における該低摩擦層との対向面に、第二の低摩擦層を更に設けた請求項3記載の配管架設構造。
【請求項5】
亜鉛よりも貴な金属製の配管とこれを支持する架台の間に、低摩擦部材を該架台に配置固定するとともに、該低摩擦部材を配置固定する前に又は配置固定した後に該配管と該低摩擦部材との間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材を、該配管と直接に接するように、かつ該低摩擦部材と摺動可能なように配する配管の架台部における防食方法であって、
該低摩擦部材として、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該低摩擦部材に対して摺動するに足る低摩擦係数を有するものを用いたことを特徴とする配管の架台部における防食方法。
【請求項6】
亜鉛よりも貴な金属製の配管とこれを支持する架台の間に、亜鉛又は亜鉛合金板からなる防食部材を、該配管と直接に接するように配するとともに、
該防食部材を配する前に又は配した後に、該防食部材における、該架台との対向面に、低摩擦層を設ける配管の架台部における防食方法であって、
該低摩擦層として、該配管が熱伸縮したときに、該防食部材が該架台に対して摺動可能とするものを用いたことを特徴とする配管の架台部における防食方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65838(P2010−65838A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235750(P2008−235750)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】