説明

配管溶接部の予防保全方法

【課題】カメラの損傷を回避することができる配管溶接部の予防保全方法を提供する。
【解決手段】連結された第1走行体29及び第2走行体28を有する配管内アクセス装置27は、第1走行体29の駆動輪41及び第2走行体28の駆動輪35の回転によって、配管25内を移動する。噴射ノズル30及びCCDカメラ31が第1走行体29に設けられたシリンダ装置34に取り付けられる。第1走行体29が配管25の溶接部26に到達したとき、配管内アクセス装置27の移動が停止され、噴射ノズル30がシリンダ装置34の外側に向って移動し、CCDカメラ31がシリンダ装置34内に収納される。溶接部26の外面が高周波誘導加熱装置55によって加熱され、噴射ノズル30から噴射された冷却水によって溶接部26の内面が冷却される。これによって、溶接部26付近の内面に圧縮残留応力が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管溶接部の予防保全方法に係り、特に沸騰水型原子炉の再循環系配管の溶接部内面に圧縮残留応力を付与するのに好適な配管溶接部の予防保全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント、例えば、沸騰水型原子力プラント(BWRプラントという)では、原子炉に接続されている再循環配管等の配管に対して、超音波探傷装置等を用いた検査が定期的に行われる。この検査によって、配管にき裂が発見された場合には、配管のき裂が存在している部分を切断して取り除き、新しい配管と交換する補修作業が行われる。新しい配管は溶接にて接合される。新しい配管を接合した後、配管の溶接部の内面付近に引張り残留応力が生じる。この引張り残留応力が一因となり、交換された配管の溶接部の内面に応力腐食割れ(以下、SCCという)が発生する可能性がある。
【0003】
原子力発電プラントでは、稼動率向上の観点から構造材料の応力腐食割れ(以下、SCCという。)の発生を抑制することが重要な課題となっている。原子力発電プラントでは、炉心を内蔵する原子炉圧力容器に接続される再循環系配管等の配管系に、オーステナイト系ステンレス鋼配管(以下、配管と呼ぶ)が用いられる。配管系は、配管を周方向の溶接にて接合することによって構成される。の周溶接部を示す。配管の周溶接は、外側から溶接を行うため、配管内面にひずみが蓄積し、溶接完了時には配管内面に引張残留応力が生じる。この引張残留応力が一因となり、配管内面にSCCが発生することがある。
【0004】
原子力発電プラントの構造部材における応力腐食割れの発生を抑制するために、腐食環境に曝される構造部材の引張残留応力を低減する例が、特公昭53−38246号公報に記載されている。この引張残留応力低減方法では、プラントの配管系を組立てた後に、配管系を構成する配管の内部に冷却水を流すとともに配管の外部を加熱し、配管の内面と配管の外面間に温度差を発生させている。そして、内面を引張降伏させ外面を圧縮降伏させて、SCCを防止している。
【0005】
特開2008−19597号公報に記載された配管残留応力改善方法では、配管の溶接部近傍の外面に高周波加熱コイルを取り付けて配管の外面を加熱し、配管の開口部から配管内に挿入した冷却水噴射手段の噴射ノズルから水を噴射して配管の内面を冷却している。
【0006】
特開2008−249578号公報は配管溶接部の予防保全方法を記載している。この予防保全方法では、配管切断時の開口部より自走式の配管内アクセス装置を配管内に挿入し、その配管に交換した新たな配管を溶接にて接続した後、その溶接部の内面付近に配管内アクセス装置により圧縮残留応力を付与する。
【0007】
特開2008−14447号公報は、配管内作業装置を記載している。この配管内作業装置は、高圧水を噴射するウォータジェットピーニング用の噴射ノズル、及び監視用のカメラを有しており、沸騰水型原子炉のライザー管等の配管内を移動する。
【0008】
特開2005−240179号公報は、高周波加熱残留応力改善方法を記載している。この高周波加熱残留応力改善方法は、沸騰水型原子炉の原子炉ノズルの引張残留応力を圧縮残留応力に改善するために、原子炉ノズルの外面を加熱し、原子炉圧力容器内でサーマルスリーブと原子炉ノズルの間に形成される環状領域に対向させて配置した噴射ノズルから冷却水を噴出する。このようにして、原子炉ノズルの外面を加熱して原子炉ノズルの内面を冷却し、原子炉ノズルの内面に圧縮残留応力を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭53−38246号公報
【特許文献2】特開2008−19597号公報
【特許文献3】特開2008−249578号公報
【特許文献4】特開2008−14447号公報
【特許文献5】特開2005−240179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特公昭53−38246号公報では、プラントの配管系を構成する配管内への冷却水の供給を、原子力プラントに設けられて炉心に冷却水を供給する再循環ポンプを駆動することによって行っている。再循環ポンプを駆動する場合には、再循環ポンプにより原子炉圧力容器内の冷却水に大きなポンプ圧が発生するため、原子炉の定期検査のために取り外している蓋を、一旦、原子炉圧力容器に装着して原子炉圧力容器を仮閉鎖する必要がある。原子炉圧力容器に接続された配管系に対して残留応力改善処理作業を行っている間は、定期検査の期間中において、原子炉圧力容器内の炉内構造物等に対する保守点検が実施できなくなり、定期検査に要する期間を長くしなければならない。
【0011】
特開2008−19597号公報及び特開2008−14447号公報に記載された予防保全方法では、予防保全対象物(例えば、配管)内に冷却水を供給するホースを挿入し、ホースに設けられた噴射ノズル等から冷却水をその配管の内面に噴射している。特開2005−240179号公報に記載された予防保全方法では、予防保全対象物が配管ではなく原子炉圧力容器に設けられた原子炉ノズルであるが、冷却水を供給するホースに噴射ノズルを取り付け、噴射ノズルからサーマルスリーブと原子炉ノズルの間に形成された環状領域に冷却水を供給している。
【0012】
これらの公開公報が示唆するように、冷却水供給手段を配管内に挿入して、外面が加熱された配管の内面に冷却水を供給すれば、上記の再循環ポンプの駆動により冷却水を供給する必要がないので、定期検査期間の長期化を避けることができる。
【0013】
配管の、圧縮残留応力を付与する該当箇所の内面を冷却するために、配管内を通してその該当箇所まで、冷却水供給手段を移動させるには、特開2008−14447号公報または特開2008−249578号公報に記載された配管内を移動する配管内アクセス装置の適用が考えられる。冷却水を供給するホースに接続されて冷却水を噴射する噴射ノズルを設け、さらに、監視用のテレビカメラを搭載した配管内アクセス装置を、配管内に挿入して圧縮残留応力を付与する該当箇所まで配管内を移動させる。これにより、加熱装置で外面を加熱した配管の該当する内面を、噴射ノズルから噴射する冷却水によって冷却することができる。
【0014】
配管内アクセス装置に搭載されたテレビカメラは、配管内を撮影し、配管内の映像をモニタに出力する。モニタに配管内の映像が表示されるため、配管内アクセス装置の配管内の移動を円滑に行うことができる。しかしながら、配管の外面の加熱には、高周波誘導加熱装置が用いられる。配管内アクセス装置が、配管内の、圧縮残留応力を付与する該当箇所まで到達して、高周波誘導加熱装置による配管外面の加熱が開始されたとき、高周波誘導加熱装置で発生する高周波の影響により、配管内アクセス装置に搭載されたテレビカメラが機能的に障害を生じる可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、カメラの損傷を回避することができる配管溶接部の予防保全方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、移動体、この移動体に出し入れ可能に取り付けられたカメラ、及びその移動体に出し入れ可能に取り付けられた、冷却液供給装置に接続された噴射ノズルを備えた配管内アクセス装置を開口部から配管内に挿入し、
配管内に挿入した配管内アクセス装置を、カメラが前記移動体から外側に出ている状態で配管内を移動させ、
配管内アクセス装置が配管の溶接部に到達したとき、カメラを移動体内に収納させ、
カメラが移動体内に収納された状態で、配管の溶接部の外面を高周波加熱装置で加熱し、溶接部の内面を噴射ノズルから噴射される冷却液によって冷却することにある。
【0017】
配管の溶接部の外面を高周波加熱装置で加熱されるとき、カメラが移動体内に収納されるので、溶接部の外面の加熱時に高周波加熱装置で発生する高周波が、移動体によって遮られ、配管内アクセス装置に設けられたカメラが高周波によって損傷するのを避けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配管加熱時に発生する高周波による、配管内アクセス装置に設けられたカメラの損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の配管溶接部の予防保全方法を示す説明図である
【図2】図1のII−II断面図である
【図3】実施例1の配管溶接部の予防保全方法に用いられる配管内アクセス装置の配管内の移動状態を示す説明図である
【図4】図1に示す配管内アクセス装置のシリンダ装置の縦断面図である。
【図5】実施例1の配管溶接部の予防保全方法が適用される沸騰水型原子力プラントの概略構成図である。
【図6】図5に示すジェットポンプ付近の詳細構成図である。
【図7】図1に示す配管内アクセス装置を残留応力改善作業対象のライザー管への挿入作業を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の配管溶接部の予防保全方法を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
本発明の好適な一実施例である実施例1の配管溶接部の予防保全方法を、図1〜図4及び図7を用いて説明する。
【0021】
まず、本実施例が適用される沸騰水型発電プラント(BWRプラント)の原子炉付近の構成の概略を、図5及び図6を用いて説明する。BWRプラントの原子炉1は、原子炉圧力容器(以下、RPVという)2、及びRPV2内に配置されている炉心3、炉心シュラウド4、気水分離器5及び蒸気乾燥器6を備えている。炉心3は、炉心シュラウド4によって取り囲まれ、複数の燃料集合体が装荷されている。気水分離器5は、炉心3の上方に配置されて炉心シュラウド4に設置される。蒸気乾燥器6は、気水分離器5の上方に配置されている。複数のジェットポンプ7が、RPV2と炉心シュラウド4の間に形成されるダウンカマ8内に配置されている。主蒸気配管18及び給水配管19がRPV2に接続されている。
【0022】
BWRプラントは、2系統の再循環系9を備えている。各再循環系9は、再循環系配管10に再循環ポンプ11及びバルブ12A,12Bを設置している。バルブ12Aは再循環ポンプ11の上流に配置され、バルブ12Bは再循環ポンプ11の下流に配置される。再循環系配管10は、上流側の端部がRPV2に設けられたノズル56に接続され、ダウンカマ8の底部に連絡される。再循環系配管10の下流側の端部は、RPV2内においてジェットポンプ7のノズル7Aに連絡される。図6には概略的な構造しか示されていないが、再循環系配管10は、RPV2の外側に配置されたリングヘッダー管(図示せず)に接続される。リングヘッダー管に接続された複数のライザー管15が、RPV2に設けられたノズル13に接続されてRPV2内に達し、RPV2内で上方に伸びる。ライザー管15は、RPV2内で接続管16に接続される。接続管16は、ダウンカマ8内で隣り合って配置されている2本のジェットポンプ7の各ノズル7Aに接続されており、ライザー15に取り外し可能に取り付けられる。
【0023】
ダウンカマ8の底部の冷却水(冷却材)は、再循環ポンプ11の駆動によって再循環系配管10内に流入し、再循環ポンプ11によって昇圧されてリングヘッダー管内に流入する。リングヘッダー管内に達した冷却水は、各ライザー管15内に配分され、それぞれのライザー管15内を通って該当する接続管16内に導かれる。接続管16からノズル7A内に達した冷却水は、ジェットポンプ7の本体内に噴出される。この噴出流の作用によって、ダウンカマ8内でノズル7Aの周囲に存在する冷却水は、ジェットポンプ7内に吸引され、ジェットポンプ7から吐出されて下部プレナム14内に達する。この冷却水は、炉心3内に供給されて燃料集合体内に存在する各燃料物質の核分裂により発生する熱で加熱され、一部が蒸気になる。炉心から排出された蒸気を含む冷却水は、気水分離器5内に導かれる。気水分離器5は、冷却水に含まれている蒸気を分離する。分離された蒸気は、蒸気乾燥器6に導かれ、湿分がさらに分離される。
【0024】
湿分が分離された蒸気は、主蒸気配管18によってタービン(図示せず)に供給される。タービンは、蒸気によって回転され、連結されている発電機(図示せず)を回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水になる。この凝縮水は、給水として、給水配管19を通ってRPV2内に戻される。
【0025】
本実施例の予防保全方法で用いられる自走式の配管内アクセス装置(移動体)27を、図1、図2及び図4を用いて説明する。配管内アクセス装置27は、第1走行体(移動体エレメント)29、第2走行体(移動体エレメント)28、噴射ノズル30及びCCDカメラ31を備えている。第1走行体29と第2走行体28はユニバーサルジョイント33で連結されている。配管内アクセス装置27は予防保全装置である。
【0026】
第1走行体29は、シリンダ装置34、駆動輪41、保持部材43A,43B及び保持部材移動装置44を有する。駆動輪41は第1走行体29に設けられた第1モータ(図示せず)によって駆動される。駆動輪41は一対のリンク部材(支持部材)42A,42Bに回転可能に取り付けられる。リンク部材42Aは、第1走行体29の軸方向(前後方向)に移動可能な保持部材43Aに取り付けられる。リンク部材42Bは、第1走行体29の軸方向に移動可能な保持部材43Bに取り付けられる。保持部材43A,43Bは、第1走行体29に設けられる保持部材移動装置44に取り付けられる。リンク部材42A,42B、保持部材43A,43B及び保持部材移動装置44が、車輪押圧装置を構成する。
【0027】
駆動輪41は、図2に示すように、第1走行体29の周囲に120°間隔で3個設けられる。リンク部材42A,42Bもそれぞれの駆動輪41に取り付けられている。3本のリンク部材42Aが1個の保持部材43Aに取り付けられ、3本のリンク部材42Bが1個の保持部材43Bに取り付けられる。
【0028】
保持部材移動装置44は、例えば、保持部材43A,43Bと噛み合うネジ部材及びネジ部材を回転させる第3モータを含んでいる。そのネジ部材は、保持部材43Aと噛み合う部分及び保持部材43Bと噛み合う部分に互いに逆方向になるネジが形成されている。複数のピン孔45が第1走行体29の後面に形成される。
【0029】
シリンダ装置34が第1走行体29の前面に設けられる。シリンダ装置34は、筺体58、シリンダ部材46、ピストン47,50及び支持ロッド60,61を有する(図4参照)。内部に空間を有する筺体58が第1走行体29の前面に取り付けられる。シリンダ室48,51を形成したシリンダ部材46が、筺体58のその空間内に配置され、筺体58内に取り付けられた抑え部材59によって筺体58内に保持される。ピストン47がシリンダ室48内に配置され、ピストン47に連結された支持ロッド60が筺体58を貫通して筺体58の前方に伸びている。第1圧縮コイルばね(図示せず)が、支持ロッド60を取り囲んでシリンダ室48内に配置される。ピストン50がシリンダ室51内に配置され、ピストン50に連結された支持ロッド61が筺体58を貫通して筺体58の前方に伸びている。第2圧縮コイルばね(図示せず)が、支持ロッド61を取り囲んでシリンダ室51内に配置される。
【0030】
第1移動装置が、ピストン50、シリンダ室51、支持ロッド61及び第2圧縮コイルばねを有する。第2移動装置が、ピストン47、シリンダ室48、支持ロッド60及び第1圧縮コイルばねを有する。
【0031】
噴射ノズル30が支持ロッド60の先端部に取り付けられ、CCDカメラ31が支持ロッド61の先端部に設けられる。噴射ノズル30は、図2に示すように、第1走行体29の中心軸の位置に配置される。
【0032】
第2走行体28は、駆動輪35及び第2モータ(図示せず)を有している。駆動輪35は第2モータによって駆動される。駆動輪35は一対のリンク部材(支持部材)36A,36Bに回転可能に取り付けられる。リンク部材36Aは、第2走行体28の軸方向(前後方向)に移動可能な保持部材37Aに取り付けられる。リンク部材36Bは、第2走行体28の軸方向に移動可能な保持部材37Bに取り付けられる。保持部材37A,37Bは、第2走行体28に設けられる保持部材移動装置38に取り付けられる。保持部材移動装置38は、例えば、保持部材37A,37Bと噛み合うネジ部材及びネジ部材を回転させる第4モータを含んでいる。そのネジ部材は、保持部材36Aと噛み合う部分及び保持部材36Bと噛み合う部分に互いに逆方向になるネジが形成されている。第1走行体29に形成された各ピン孔45に挿入される複数の固定ピン39が、エアシリンダ40に設けられる。リンク部材36A,36B、保持部材37A,37B及び保持部材移動装置38が、他の車輪押圧装置を構成する。
【0033】
駆動輪35も、駆動輪41と同様に、第2走行体28の周囲に120°間隔で3個設けられる。リンク部材36A,36Bもそれぞれの駆動輪35に取り付けられている。3本のリンク部材36Aが1個の保持部材37Aに取り付けられ、3本のリンク部材36Bが1個の保持部材37Bに取り付けられる。
【0034】
空気供給ホース49,52、冷却水供給ホース53、情報伝送線54及び電源ケーブル(図示せず)を内蔵する多目的ケーブル32が、第2走行体28に取り付けられる。電源ケーブルは、第1、第2、第3及び第4モータ、及びCCDカメラにそれぞれ接続される。空気供給ホース49,52、冷却水供給ホース53、情報伝送線54は、ユニバーサルジョイント33に沿って第1走行体29まで導かれ、シリンダ装置34の抑え部材59に取り付けられる(図4参照)。空気供給ホース49がシリンダ室48に連絡され、空気供給ホース52がシリンダ室51に連絡される。冷却水供給ホース53は、ピストン47に接続され、支持ロッド60内に形成された冷却水通路(図示せず)に連絡される。この冷却水通路は噴射ノズル30に接続される。情報伝送線54は、ピストン50及び支持ロッド61内を通ってCCDカメラ31に接続される。1本の電源ケーブルも、ピストン50及び支持ロッド61内を通ってCCDカメラ31に接続される。
【0035】
高圧水ポンプ22、空気供給装置23及び制御装置24が、運転床上に設置される(図7参照)。高圧水ポンプ22が冷却水供給ホース53に接続され、空気供給装置23が空気供給ホース49,52に接続される。冷却液供給装置が、高圧水ポンプ22、冷却水供給ホース53、及び支持ロッド60内に形成された冷却水通路を含んでいる。情報伝送線54が、制御装置24が設けられた操作盤(図示せず)に備え付けられた表示装置(図示せず)に接続される。制御装置24は、高圧水ポンプ22及び空気供給装置23の起動、停止の制御、及び電源ケーブルを通して第1、第2、第3及び第4モータに供給される電流のON,OFF制御を行う。
【0036】
上記したBWRプラントにおけるライザー管15を対象にして配管内アクセス装置27を用いて実施される本実施例の予防保全方法を詳細に説明する。
【0037】
1つの運転サイクルに対するBWRプラントの運転が終了したとき、BWRプラントが停止され、定期検査が実施される。本実施例の予防保全方法は、この定期検査の期間中に行われる。RPV2の炉心3内に装荷された燃料集合体のうち寿命に達した燃料集合体は、RPV2から取り出す必要がある。このため、RPV2の上蓋がRPV2から取り外され、炉心3の上方に配置された蒸気乾燥器6及び気水分離器5が、取り外され、天井クレーン(図示せず)を用いてRPV2の外に搬出される(図7参照)。このとき、RPV2の真上に位置する原子炉ウェル57に、冷却水が充填されている。気水分離器5の搬出後、燃料交換機21を用いた炉心3内の燃料集合体の交換が行われる。燃料交換機21は、原子炉ウェル57を跨いでおり、原子炉ウェル57を取り囲む運転床の上を移動する。
【0038】
本実施例の予防保全方法は、インレットミキサ20を取り外した後に行われる。ジェットポンプ7を構成するノズル7A及びスロート、及び接続管16は、一体化され、インレットミキサ20を構成する。スロートの下端部は、ジェットポンプ7のディフューザの上端部に嵌め合わされている。接続管16をライザー管15から取り外すことによって、インレットミキサ20をジェットポンプ7のディフューザから取り外すことができる。取り外されたインレットミキサ20は、天井クレーンを用いてRPV2の外に搬出される。
【0039】
配管内アクセス装置27がワイヤにより燃料交換機21に吊り下げられ、燃料交換機21を用いて配管内アクセス装置27を、原子炉ウェル57及びRPV2内を下降させ、ライザー管15の上端の開口部を通してライザー管15内に挿入する。配管内アクセス装置27では、保持部材移動装置44により保持部材43Aと保持部材43Bとの間の間隔が拡げられているので、3個の駆動輪41が第1走行体29の中心軸側に寄っており、第1走行体29の中心軸と、駆動輪41のライザー管15の内面に接する部分との距離がライザー管15の半径よりも小さくなっている。また、保持部材移動装置38により保持部材37Aと保持部材37Bとの間の間隔も拡げられているので、3個の駆動輪35が第2走行体28の中心軸側に寄っており、第2走行体28の中心軸と、駆動輪35のライザー管15の内面に接する部分との距離がライザー管15の半径よりも小さくなっている。このため、配管内アクセス装置27をライザー管15内に容易に挿入することができる。
【0040】
配管内アクセス装置27がライザー管15内に挿入された後、第3モータを駆動して保持部材移動装置44のネジ部材を逆回転させることによって、保持部材43Aと保持部材43Bとの間の間隔が狭くなり、3個の駆動輪41がライザー管15の内面に押し付けられる。第4モータを駆動して保持部材移動装置38のネジ部材を逆回転させることによって、保持部材37Aと保持部材37Bとの間の間隔が狭くなり、3個の駆動輪35がライザー管15の内面に押し付けられる。このようにして、第1走行体29及び第2走行体28がライザー管15の内面に保持される。
【0041】
第1モータを駆動して3個の駆動輪41を回転させ、第2モータを駆動して3個の駆動輪35を回転させる。これらの駆動輪の回転により、第1走行体29及び第2走行体28が第1走行体29を先頭にしてライザー管15内を下降する。第1走行体29及び第2走行体28が下降しているライザー管15内の様子が、CCDカメラ31によって撮影される。ライザー管15内の映像が情報伝送線54を介して操作盤の表示装置に表示される。配管内アクセス装置27がライザー管15等の配管25内を移動しているとき、噴射ノズル31はシリンダ装置34内に収納され、CCDカメラ31はシリンダ装置34の前方、すなわち、第1走行体29の前方に位置している。
【0042】
CCDカメラ31の移動は、以下のようにして行われる。オペレータが操作盤に入力した空気供給装置駆動指令が制御装置24に伝えられ、制御装置24は空気供給装置23に駆動制御信号を出力する。これにより、空気供給装置23が駆動される。オペレータが空気供給ホース52に設けられた空気供給弁(図示せず)を開くことにより、空気供給装置23から吐出された空気が、空気供給ホース52を通ってシリンダ室51に供給される。この空気の圧力によって、ピストン50が第2圧縮コイルばねを圧縮して抑え部材59から遠ざかるように移動し、支持ロッド61がシリンダ室51から押し出され、CCDカメラ31がシリンダ装置34の筺体58よりも前方に移動する。このとき、空気供給ホース52の分岐部に取り付けられた空気排気弁(図示せず)は全閉状態になっている。CCDカメラ31の所定量の前方への移動が行われたとき、オペレータは空気供給ホース52に設けられた空気供給弁を全閉にし、空気供給装置23からシリンダ室51への空気の供給を停止する。これにより、シリンダ室51内の圧力が一定に保たれ、CCDカメラ31のシリンダ装置34から前方への移動が停止される。CCDカメラ31がシリンダ装置34から離れた位置に存在するので、ライザー管15内の状態を広い視野で撮影することができる。
【0043】
ライザー管15は、RPV2内で、垂直管部から水平管部に曲っている。オペレータは表示装置に表示された映像を見ることにより配管内アクセス装置27が曲り管部に到達した(図3参照)ことを認識することができる。そして、オペレータは、空気供給ホース52に設けられた空気供給弁を全閉にし、空気供給ホース52の分岐部に取り付けられた空気排気弁を開けてシリンダ室51内の空気を外部に排気する。シリンダ室51内の空気圧が低下するため、ピストン50が第2圧縮コイルばねによって押されて抑え部材51に向かって移動し、CCDカメラ31が筺体58の先端部で筺体58内の位置まで後退する。CCDカメラ31が筺体58の先端部の位置に位置するので、CCDカメラ31が曲り管部の内面に接触することがなく、第1走行体29が曲り管部を容易に通過することができる。
【0044】
配管内アクセス装置27が曲り管部を通過したとき、オペレータは、空気供給ホース52の分岐部に取り付けられた空気排気弁を全閉にし、空気供給ホース52に設けられた空気供給弁を開く。空気供給装置23から吐出された空気が、再び、シリンダ室51に供給される。ピストン50が、第2圧縮コイルばねを圧縮して、CCDカメラ31を所定位置まで前方へ移動させる。曲り管部を通過した配管内アクセス装置27は、ライザー管15の水平管部内を移動する。応力改善個所が、例えば、この水平管部である配管25における溶接部26付近であるとする。
【0045】
表示装置に表示されたライザー管15内の映像を見て配管内アクセス装置27の先端が、応力改善個所である溶接部26付近に到達したことを確認したオペレータは、操作盤から制御装置24に制御指令を出力し、制御装置24により第1及び第2モータの駆動を停止させる。これにより、駆動輪41および35の回転が停止し、配管内アクセス装置27の移動が停止される。さらに、オペレータは、空気供給ホース49の分岐部に取り付けられた空気排気弁(図示せず)が閉じられた状態で、空気供給ホース49に設けられた空気供給弁(図示せず)を開く。空気供給装置23から吐出された空気が空気供給ホース49を通してシリンダ室48に供給される。この空気の圧力により、ピストン47が第1圧縮コイルばねを圧縮して筺体58の先端部に向って移動する。このピストン47の動きにより、支持ロッド60が筺体58から押し出され、噴射ノズル30がシリンダ装置54、すなわち、筺体58の前方に向って移動する。この移動により、噴射ノズル30が、ライザー管15の水平管部である配管25の、応力改善個所である溶接部26の内面の位置に到達する(図1参照)。噴射ノズル30が溶接部26の内面の位置に到達したことは、オペレータが、CCDカメラ31によって撮影されて表示装置に表示された映像を見ることによって確認できる。噴射ノズル30が溶接部26の内面の位置に到達に到達したとき、オペレータは空気供給ホース49に設けられた空気供給弁を全閉にする。噴射ノズル30の前方への移動が停止され、噴射ノズル30が溶接部26の内面に対向する状態が保持される。
【0046】
その後、オペレータは、空気供給ホース52に設けられた空気供給弁を全閉にし、空気供給ホース52の分岐部に取り付けられた空気排気弁を開けてシリンダ室51内の空気を外部に排気する。シリンダ室51内の第2圧縮コイルばねの作用により、ピストン50が押さえ部材59に向って移動し、CCDカメラ31がシリンダ装置34の筺体58内に収納される。
【0047】
噴射ノズル30に冷却水を供給する前に、保持部材43Aと保持部材43Bとの間の間隔が狭くなるように保持部材移動装置44のネジ部材を回転させ、保持部材37Aと保持部材37Bとの間の間隔が狭くなるように保持部材移動装置38のネジ部材を回転させる。これにより、3個の駆動輪41及び3個の駆動輪35が、配管25の内面により強固に押し付けられ、噴射ノズル30から冷却水が噴射されたときの反動による配管内アクセス装置27の移動が阻止される。
【0048】
溶接部26の外面及び溶接部付近の配管25の外面を取り囲んで、高周波誘導加熱装置55を設置する。高周波誘導加熱装置55に電流が供給され、高周波誘導加熱装置55で発生する高周波により、溶接部26及び溶接部26付近の配管26のそれぞれの外面を加熱する。高周波誘導加熱装置55により外面が加熱されている状態で、噴射ノズル30から冷却水を噴射して溶接部26の内面及び溶接部付近の配管25の内面を噴射された冷却水により冷却する。噴射ノズル30への冷却水の供給は、以下のようにして行われる。
【0049】
オペレータが操作盤に入力した高圧水ポンプ駆動指令が制御装置24に伝えられ、制御装置24は高圧水ポンプ22に駆動制御信号を出力する。これにより、高圧水ポンプ22が駆動される。高圧水ポンプ22から吐出された冷却水が、冷却水供給ホース53及び支持ロッド60内に形成された冷却水通路を通って噴射ノズル30に供給される。噴射ノズル30から四方八方に冷却水が噴射され、この冷却水が溶接部26の内面及び溶接部付近の配管25の内面に当たる。噴射ノズル30が第1走行体29の中心軸の位置に配置されているので、噴射ノズル30が配管25の中心軸に配置される。このため、溶接部26の内面及び溶接部26付近の配管25の内面に、周方向において、均一に冷却水を噴射することができる。
【0050】
噴射ノズル30から噴射された冷却水は、ライザー管15の水平管部から、RPV2の外側に配置されたリングヘッダー管内に流入し、さらに、再循環系配管10内を流れ落ち、再循環系配管10に接続されたドレン配管(図示せず)から回収される。
【0051】
溶接部26の内面及び溶接部26付近の配管25の内面を圧縮降伏させるような温度差がそれらの外面と内面の間で生じるように、高周波誘導加熱装置55による外面の加熱量、及び噴射ノズル30から噴射される冷却水量が調節される。それらの内外面の加熱及び冷却を所定時間行ってそれらの内面が圧縮降伏したとき、高周波誘導加熱装置55への電流の供給を停止し、高圧水ポンプ22を停止する。これにより、それらの外面の加熱及びそれらの内面の冷却が停止される。溶接部26及び溶接部26付近の配管25の温度が低温まで低下したとき、圧縮降伏された溶接部26の内面及び溶接部26付近の配管25の内面に圧縮残留応力が付与されている。圧縮残留応力が付与された溶接部26の内面及び溶接部26付近の配管25の内面におけるSCCの発生を抑制することができる。
【0052】
溶接部26付近の応力改善作業が終了した後、高周波誘導加熱装置55が配管25から取り外される。オペレータは、空気供給ホース49の分岐部に取り付けられた空気排気弁を開く。シリンダ室48内の空気が空気供給ホース49の分岐部に取り付けられた空気排気弁から排出され、シリンダ室48内の圧力が低下する。第1圧縮コイルばねの作用によりピストン47が押さえ部材59に向って移動する。噴射ノズル30が筺体58内に収納される。
【0053】
空気供給ホース52の分岐部に取り付けられた空気排気弁を全閉にし、空気供給ホース52に設けられた空気供給弁を開く。空気供給装置23から吐出された空気が、再び、シリンダ室51に供給される。ピストン50が、第2圧縮コイルばねを圧縮して、CCDカメラ31を所定位置まで前方に移動させる。
【0054】
保持部材移動装置44及び保持部材移動装置38をそれぞれ回転させ、3個の駆動輪41及び3個の駆動輪35の配管25の内面への押付け力を、第1走行体29及び第2走行体28が移動できる程度に緩和する。応力改善個所がライザー管15の溶接部26だけである場合には、駆動輪41及び35を駆動することによって、配管内アクセス装置27が、水平管部から前述の垂直管部へと移動され、ライザー管15の上端の開口部に到達する。ここで、燃料交換機から吊り下げられたワイヤが第2走行体28に取り付けられる。その後、保持部材移動装置44及び保持部材移動装置38がそれぞれ回転され、3個の駆動輪41及び3個の駆動輪35がライザー管15の内面から離される。そのワイヤが燃料交換機に巻き取られることによって、配管内アクセス装置27が、RPV2内及び原子炉ウェル57内を上昇し、燃料交換機21上に引き上げられる。以上により、本実施例の配管溶接部の予防保全方法が終了する。
【0055】
応力改善個所が溶接部26以外にライザー管15に存在する場合には、3個の駆動輪41及び3個の駆動輪35の配管25の内面への押付け力が、第1走行体29及び第2走行体28が移動できる程度に緩和された後、第1及び第2モータの駆動により駆動輪41及び35を回転させ、配管内アクセス装置27を次の応力改善個所である他の溶接部に向ってライザー管15内を移動させる。配管内アクセス装置27が次の応力改善個所である他の溶接部に到達したとき、前述したように、その溶接部の外面が加熱されてその溶接部の内面が冷却される。このため、他の溶接部及びこの溶接部付近のライザー管の内面に圧縮残留応力が付与される。
【0056】
本実施例では、CCDカメラ31で撮影された配管内の映像を表示装置で監視することができるので、配管内アクセス装置27を、配管、例えば、ライザー管15内を容易に応力改善個所である溶接部まで移動させることができる。本実施例では、高周波誘導加熱装置55による配管25の外面を加熱するとき、シリンダ装置34内のピストン50の移動によってCCDカメラ31を筺体58内に収納することができる。このため、高周波誘導加熱装置55で発生する高周波が筺体58によって遮られ、その高周波によるCCDカメラ31の損傷を回避することができる。
【0057】
応力改善個所である溶接部付近の配管の外面を加熱する前に、溶接部の内面をCCDカメラ31で撮影し、圧縮残留応力を付与した後の溶接部の内面をCCDカメラ31で撮影することによって、圧縮残留応力付与前後のその溶接部の内面の目視検査が可能になる。
【0058】
駆動輪35及び41が配管の内面に押し付けられるので、配管内アクセス装置27は、配管の曲り管部を容易に通過することができる。
【0059】
配管内アクセス装置27が曲り管部を通過するとき、噴射ノズル30、噴射ノズル30が取り付けられた支持ロッド60、CCDカメラ31及びCCDカメラ31が取り付けられた支持ロッド61が筺体58内に収納されるので、噴射ノズル30及びCCDカメラ31が曲り管部の内面と干渉することが避けられ、配管内アクセス装置27が曲り管部を容易に通過することができる。
【0060】
噴射ノズル30から冷却水を溶接部26等の内面に向って噴射させるとき、噴射ノズル30が第1走行体29より前方に位置しているので、第1走行体29の駆動輪41を、溶接部26等の外面が加熱される位置から離すことができ、溶接部26等の加熱による駆動輪41の温度上昇を抑制することができる。このため、駆動輪41,35を樹脂で作成することができる。
【0061】
配管内アクセス装置27を用いることによって、ライザー管15だけでなくリングヘッダー管及び再循環系配管10に存在する溶接部及びこの溶接部付近の配管部の内面に対して圧縮残留応力を付与することができる。さらには、BWRウラントの残留熱除去系の配管、原子炉浄化系の配管、非常用炉心冷却系の配管等の溶接部及びこの溶接部付近の配管部の内面に対して圧縮残留応力を付与することができる。原子力プラントである加圧水型原子力プラントの原子炉に接続される一次系配管の溶接部及びこの溶接部付近の配管部の内面に対しても圧縮残留応力を付与することができる。また、本実施例は、重水炉プラントの配管に対しても適用することができる。
【0062】
本実施例は、原子力プラントだけでなく、火力プラント及び化学プラントの配管系に対しても適用することができる。
【0063】
配管内アクセス装置27は、配管に形成された開口部、配管に設置された弁等を取り外すことによって配管端部に形成された開口部を通して配管内に挿入しても良い。
【実施例2】
【0064】
本発明の他の実施例である実施例2の配管溶接部の予防保全方法を、図8を用いて説明する。
【0065】
本実施例の予防保全方法に用いられる配管内アクセス装置を、図8を用いて説明する。この配管内アクセス装置27Aは、実施例1で用いられる配管内アクセス装置27において第2走行体28を第2走行体28Aに替えた構成を有する。配管内アクセス装置27Aの他の構成は配管内アクセス装置27と同じである。第2走行体28Aは、遠心ポンプの羽根車(図示せず)及びこの羽根車を回転させる第5モータ(図示せず)を有する。第2走行体28Aは、内部に、吸込口及び吐出口を有する冷却水流路を形成しており、遠心ポンプの羽根車がその冷却水通路内に設けられている。吸込口が第2走行体28Aの後部に形成され、吐出口が第2走行体28Aの前部に形成される。その吐出口は第1走行体29の後部を取り囲んで形成されている。第2走行体28Aは、実施例1で用いられる配管内アクセス装置27の第2走行体28と同様に、駆動輪35、第2モータ、一対のリンク部材36A,36B、保持部材37A,37B、保持部材移動装置38及び第4モータを有する。
【0066】
配管内アクセス装置27Aは、配管内アクセス装置27と同様に、配管内を移動し、応力改善個所である、配管25の溶接部26に到達する。この溶接部26及び溶接部付近の配管25の外面が高周波誘導加熱装置55によって加熱される。第2走行体28Aに設けられた第5モータが駆動されて遠心ポンプの羽根車が回転される。配管25内に存在する冷却水が、羽根車の回転によって吸込口から吸引され、第2走行体28A内の冷却水流路に流入する。この冷却水通路に流入した冷却水は回転している羽根車によって昇圧され、吐出口から流出する。第1走行体29と配管25の内面の間を流れる際に、溶接部26の内面及び溶接部付近の配管25の内面を冷却する。このため、実施例1と同様に、溶接部26の内面及び溶接部付近の配管25の内面が圧縮降伏される。
【0067】
溶接部26等の外面を加熱し、溶接部26等の内面を冷却している間、実施例1と同様に3個の駆動輪41及び3個の駆動輪35が配管25の内面に強固に押し付けられる。このため、吐出口から冷却水が吐出されている間、吐出される冷却水の反力による配管内アクセス装置27の移動が防止できる。吸込口に流入する前で配管25内を流れている冷却水の流速がVであり、吐出口から吐出される冷却水の流速はVである(V≪V)。
【0068】
本実施例においても、実施例1と同様に、溶接部26の内面及び溶接部付近の配管25の内面に圧縮残留応力が付与される。
【0069】
図8には図示されていないが、配管内アクセス装置27Aの第1走行体29には、配管内アクセス装置27の第1走行体29と同様に、ピストン50及び支持ロッド61を有するシリンダ装置34、及び支持ロッド61の先端部に取り付けられたCCDカメラ31を有する。配管内アクセス装置27Aは、遠心ポンプの羽根車を有するので、配管内アクセス装置27の第1走行体29に設けられた噴射ノズル31、ピストン47及び支持ロッド60を有していなく、シリンダ装置34内にシリンダ室48が形成されていない。
【0070】
本実施例は、実施例1で生じる効果のうち、ピストン47、支持ロッド60及びシリンダ室48によって生じる効果を除いた他の効果を得ることができる。
【0071】
本実施例も、実施例1と同様に、原子力プラント、火力プラント及び化学プラントの配管に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…原子炉、2…原子炉圧力容器、7…ジェットポンプ、7A…ノズル、10…再循環系配管、15…ライザー管、16…接続管、20…インレットミキサ、21…燃料交換機、22…高圧水ポンプ、23…空気供給装置、24…制御装置、25…配管、26…溶接部、27,27A…配管内アクセス装置、28…第2走行体、29…第3走行体、30…噴射ノズル、31…CCDカメラ、32…多目的ケーブル、34…シリンダ装置、35,41…駆動輪、36A,36B,42A,42B…リンク部材、37A,37B,43A,43B…保持部材、38,44…保持部材移動装置、46…シリンダ部材、47,50…ピストン、48,51…シリンダ室、55…高周波誘導加熱装置、58…筺体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体、前記移動体に出し入れ可能に取り付けられたカメラ、及び前記移動体に出し入れ可能に取り付けられた、冷却液供給装置に接続された噴射ノズルを備えた配管内アクセス装置を開口部から配管内に挿入し、
前記配管内に挿入した前記配管内アクセス装置を、前記カメラが前記移動体から外側に出ている状態で前記配管内を移動させ、
前記配管内アクセス装置が前記配管の溶接部に到達したとき、前記カメラを前記移動体内に収納させ、
前記カメラが前記移動体内に収納された状態で、前記配管の前記溶接部の外面を高周波加熱装置で加熱し、前記溶接部の内面を前記噴射ノズルから噴射される前記冷却液によって冷却することを特徴とする配管溶接部の予防保全方法。
【請求項2】
前記噴射ノズルを前記移動体から前記移動体の前方に移動させ、前記噴射ノズルからの前記冷却液の噴射が、前記噴射ノズルが前記移動体の前方に飛び出している状態で行われる請求項1に記載の配管溶接部の予防保全方法。
【請求項3】
前記噴射ノズルの前記移動体内への収納及び前記噴射ノズルの前記移動体の前方への移動が、前記移動体に設けられた第1移動装置により行われる請求項2に記載の配管溶接部の予防保全方法。
【請求項4】
前記配管内アクセス装置が前記配管内を移動しているとき、前記移動体に設けられた車輪が前記移動体に設けられた車輪押圧装置によって前記配管の内面に押し付けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配管溶接部の予防保全方法。
【請求項5】
第1移動体、前記第1移動体に連結され、冷却液の吸引口及び前記冷却液の吐出口を有する冷却液通路が内部に形成され、前記冷却液通路内に設置されたポンプ羽根車及び前記ポンプ羽根車を回転させるモータを有する第2移動体、前記第1移動体に出し入れ可能に取り付けられたカメラ、及び前記第1移動体に出し入れ可能に取り付けられた、冷却液供給装置に接続された噴射ノズルを備えた配管内アクセス装置を開口部から配管内に挿入し、
前記配管内に挿入した前記配管内アクセス装置を、前記カメラが前記移動体から外側に出ている状態で前記配管内を移動させ、
前記配管内アクセス装置が前記配管の溶接部に到達したとき、前記カメラを前記移動体内に収納させ、
前記カメラが前記移動体内に収納された状態で、前記配管の前記溶接部の外面を高周波加熱装置で加熱し、前記溶接部の内面を前記ポンプ羽根車の回転によって前記配管内の前記冷却液を前記吸引口から前記冷却液通路内に吸引し、前記溶接部の内面を、前記吐出口から吐出される前記冷却液によって冷却することを特徴とする配管溶接部の予防保全方法。
【請求項6】
前記カメラの前記移動体内への収納が、前記移動体に設けられた第2移動装置により行われる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の配管溶接部の予防保全方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91199(P2012−91199A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240216(P2010−240216)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】