説明

配管系の振動抑制装置及び配管系の振動抑制方法

【課題】作動油や冷却水等の流体を送給しながら、配管系の固有振動数を変化させて配管の共振を回避することが可能な配管系の振動抑制装置及び振動抑制方法を提供する。
【解決手段】配管系の振動抑制装置2は、支柱4の側方に配置された支持体6と、支持体6に係合するネジ部材12と、を備えている。支持体6は、支柱4に直交する方向に沿って形成されたネジ穴を有している。ネジ穴は、支持体6を貫通するように形成されている。ネジ部材12は、支持体6のネジ穴に螺合して、回動することによって支柱4に当接自在である。ネジ部材12を締め込むことによって、支柱4にネジ部材12を押圧させて、配管系の固有振動数を変化させる。これにより、配管1の共振を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物上に立設された支柱及び当該支柱に固定されるとともに振動源に接続された配管を有する配管系の振動を抑制する振動抑制装置及び振動抑制方法であり、特に、配管の共振を回避するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスエンジンやディーゼルエンジンに接続された配管で共振が発生すると、配管が損傷してしまうおそれがある。このため、図8に示すように、定期点検時等に配管1を支持する支柱4にサポート材60を追設して、配管系の固有振動数を変化させて配管1が共振することを防止している。
また、特許文献1には、配管と当該配管を重機に固定する固定体との間に皿バネを介在させて振動を低減させる減衰装置が開示されている。この減衰装置は、配管を一対の皿バネで挟持することにより配管の振動を減衰して、重機本体への振動の伝達を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−80178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、配管を支持する支柱にサポート材を追設する方法では、サポート材を取り付ける際に、配管内を流れる作動油や冷却水等の流体の送給を停止する必要があるため、エンジンを停止しなければならない。エンジンの停止は工場の稼働率に影響をおよぼすため、共振が生じても直ちにエンジンを停止することは困難である。したがって、次回の定期点検等にサポート材を取り付けることとなり、共振が発生しても直ちに対策を実施することができないという問題点があった。
また、特許文献1に記載された方法では、配管の固有振動数を変化させているわけではなく、配管の振動を低減しているだけなので、共振の発生を完全に防止できないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、作動油や冷却水等の流体を送給しながら、配管系の固有振動数を変化させて配管の共振を回避することが可能な配管系の振動抑制装置及び振動抑制方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決する本発明に係る配管系の振動抑制装置は、一端が構造物に固定されて当該構造物上に立設された支柱と、当該支柱に固定されるとともに振動源に接続された配管と、を有する配管系の振動を抑制する配管系の振動抑制装置であって、
前記支柱の一端と前記配管との間の前記支柱の側方を押圧する押圧部材と、
前記構造物に固定され、前記押圧部材を前記支柱の立設方向の任意の高さ位置に支持可能な支持手段と、を備え、
前記押圧部材を前記支柱に押圧させて、前記配管系の振動を抑制することを特徴とする。
【0007】
上記配管系の振動抑制装置によれば、支柱に押圧部材を押圧させることにより、支柱の振動を抑制するともに、配管系の固有振動数を変化させることができる。したがって、配管の共振を確実に回避することができる。
さらに、支持手段を備えているため、支柱の任意の高さ位置を押圧部材で押圧することができる。これによって、例えば、異なる固有振動数を有する複数の振動源に配管が接続されている場合であっても、各振動源の固有振動数と重ならないように配管系の固有振動数を調整することができる。
【0008】
また、前記支持手段は、前記押圧部材を支持する支持体と、前記支柱の立設方向に沿って前記支持体を任意の高さ位置に移動させる支持体移動機構と、を備えてもよい。
【0009】
このように、支持手段は、支持体移動機構を備えているため、作業員が支持体を移動させる手間を省くことができる。これにより、配管内に高温流体が送給されていて人が近づけない場合でも、押圧部材を支持する支持体を任意の高さ位置に移動させることができる。
【0010】
また、前記配管系の振動を計測するセンサと、
前記センサによる計測結果に応じて前記支持体移動機構を制御し、前記支持体を前記立設方向へ移動させる制御装置と、を備えてもよい。
【0011】
このように、センサで配管系の振動を計測することにより、配管系の振動の抑制程度を確認することができる。そして、センサの計測結果に応じて制御装置で支持体移動機構を制御して支持体、即ち押圧部材を配管が共振しない位置へ移動させることができる。これにより、振動を効果的に抑制し、且つ配管の共振を回避できる位置に押圧部材を自動で移動させることができる。
【0012】
また、前記制御装置は、前記センサによる計測結果に応じて前記押圧部材が前記支柱を押圧する力を制御してもよい。
【0013】
このように、押圧部材が支柱を押圧する力を制御装置で制御することができるので、押圧部材を強く押圧させると、押圧部材が当接している部位は、完全に固定された状態となり、当該部位から構造物までの支柱はほとんど振動しなくなる。一方、押圧部材を弱く押圧させると、押圧部材が当接している部位は、多少振動可能なので、当該部位から構造物までの支柱は多少振動することとなる。したがって、押圧部材が支柱を押圧する力を増減させることにより、配管系の固有振動数を変化させることができる。すなわち、配管系の固有振動数の変化を微調整することができる。
【0014】
また、前記押圧部材は、前記支持体に形成されたネジ穴に螺合することで一端が前記支柱に当接自在に構成されているネジ部材であり、
前記ネジ部材を所定の方向に回動することによって、前記ネジ部材が前記支柱の側方を押圧してもよい。
【0015】
このように、押圧部材はネジ部材であるため、ネジ部材を回動することによって当該ネジ部材を支柱に押圧させることができる。また、ネジ部材を回動する力を調整することにより、ネジ部材が支柱を押圧する力を調整することができる。
【0016】
また、前記ネジ部材の軸方向の移動を拘束して、前記ネジ部材が前記支柱の側方を押圧した状態を保持する拘束部材を有してもよい。
【0017】
このように、拘束部材を有しているため、ネジ部材が緩むことを防止し、ネジ部材が前記支柱の側方を押圧した状態を保持することができる。
【0018】
また、前記振動源はエンジンであり、前記配管を介して前記エンジンに流体を供給してもよい。
【0019】
このように、振動源はエンジンなので、エンジンを駆動源として利用する船舶、プラント等の配管に適用することができる。また、配管内に作動油や冷却水等の流体を送給させながら、配管の共振を回避することができる。
【0020】
また、本発明に係る配管系の振動抑制方法は、構造物に固定されて当該構造物上に立設された支柱の下端と当該支柱に固定されるとともに振動源に接続された配管との間の前記支柱の側方を押圧する押圧部材と、前記構造物に固定され、前記押圧部材を前記支柱の立設方向の任意の高さ位置に支持可能な支持手段と、を備える振動抑制装置を用いて前記支柱及び前記配管から構成された配管系の振動を抑制する配管系の振動抑制方法であって、
前記支持手段によって前記押圧部材を所定の高さ位置に配置し、
前記支柱の下端と前記配管との間の前記支柱の側方に前記押圧部材を押圧して、前記配管内に流体を送給させながら前記配管系の振動を抑制することを特徴とする。
【0021】
上記共振回避方法によれば、配管内に流体を送給させながら、支柱に押圧部材を押圧させることにより、配管系の固有振動数を変化させることができる。これによって、例えば、配管の接続されているエンジンを稼働させた状態で、配管の共振を回避することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、作動油や冷却水等の流体を送給しながら、配管系の固有振動数を変化させて配管の共振を回避することが可能な配管系の振動抑制装置及び振動抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係る振動抑制装置で配管系の固有振動数を変化させている状態を示すである。
【図2】支持体の他の移動方法を示す図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る振動抑制装置で配管系の固有振動数を変化させている状態を示すである。
【図4】振動抑制装置を用いた振動抑制のフローを示す図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る振動抑制装置で配管系の固有振動数を変化させている状態を示すである。
【図6】振動抑制装置を用いた振動抑制のフローを示す図である。
【図7】振動抑制装置を用いた振動抑制の他のフローを示す図である。
【図8】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1は、本発明の第一実施形態に係る振動抑制装置で配管系の固有振動数を変化させている状態を示すである。
図1に示すように、配管1の振動抑制装置2は、支柱4の側方に配置された支持体6と、支持体6に係合するネジ部材12と、支持体6を支柱4に沿って移動させる支持体移動機構22と、を備えている。
【0026】
支柱4の下端は構造物10に固定されて、支柱4は構造物10上に立設されている。また、支柱4の上端側端部には配管1が接続されている。
【0027】
支持体6は、支柱4に直交する方向に沿って形成されたネジ穴(図示しない)を有している。ネジ穴は、支持体6を貫通するように形成されている。
ネジ部材12は、支持体6のネジ穴に螺合して、回動することによって支柱4に当接自在である。本実施形態では、ネジ部材12として一般的なボルトを用いた。
ネジ部材12の支柱4側先端には、フレッティングが発生しないように、弾性ゴム8が取り付けられている。なお、弾性ゴムに限定されるものではなく、テフロン(登録商標、イーアイデュポンドゥヌムールアンドカンパニー社製)やパッキンでもよい。
ネジ部材12を締め込むことによって、ネジ部材12を支柱4に押圧させて、支柱4及び配管1から構成される配管系の固有振動数を変化させる。これにより、配管1の共振を回避することができる。
【0028】
ネジ部材12を所定の押圧力以上で押圧すると支柱4を破損してしまうおそれがある。一方、ネジ部材12が支柱4から離れてしまうと配管系の固有振動数を変化させることができない。このため、ネジ部材12が回動しないように、Wナット14、14にてネジ部材12を支持体6に固定する。Wナット14、14を支持体6の両側にそれぞれ設けて、ネジ部材12の回動を防止する。
【0029】
なお、本実施形態では、ネジ部材12の回動防止のためにWナット14、14を用いた場合について説明したが、これに限定されるものでは無く、例えば、ナット14及びワッシャー(図示しない)にてネジ部材12を固定してもよい。要は、ネジ部材12の回動を防止するものであればよい。
【0030】
支持体移動機構22の下端部は構造物10に固定され、上端部は支持体6に接続されている。本実施形態においては、支持体移動機構22としてジャッキを用いた。ジャッキを伸縮させることにより、支持体6を上下方向に移動させる。これによって、支柱4を押圧する位置を変化させることができる。
【0031】
上述したように、本実施形態に係る振動抑制装置2によれば、配管1が共振している際に、ネジ部材12を支柱4に押圧させることにより、配管系の固有振動数を変化させることができる。これによって、配管1の共振を回避することができる。
また、作動油や冷却水等の流体が配管1内を流れている状態でも、ネジ部材12を支柱4に押圧させることができる。これによって、例えば、配管1の接続されているガスエンジンやディーゼルエンジン等を稼働させた状態で、配管1の共振を回避することができる。
そして、支持体移動機構22を備えているため、ネジ部材12の当接位置を変更することで、配管系の固有振動数を調整することができる。例えば、異なる固有振動数を有する複数のガスエンジンに配管1が接続されている場合であっても、これらの固有振動数と重ならないように配管系の固有振動数を調整することができる。
さらに、支持体移動機構22を備えているため、作業員がネジ部材12を移動させる手間を省くことができる。したがって、配管1内に高温流体が送給されていて人が近づけない場合でも、ネジ部材12を所望の高さ位置に移動させることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、支持体移動機構22としてジャッキを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば図2に示すように、構造物10に固定された架台24と、モータ付ワイヤー巻き取り機25と、ローラー26と、一端が支持体6に接続され、他端がモータ付ワイヤー巻き取り機25に接続されたワイヤー27とを備えた支持体移動機構23を用いて、モータ付ワイヤー巻き取り機25でワイヤー27を繰り出すことにより、支持体6を降下させ、ワイヤー27を巻き取ることにより、支持体6を上昇させてもよい。
【0033】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0034】
図3は、本発明の第二実施形態に係る振動抑制装置30で配管系の固有振動数を変化させている状態を示すである。
図3に示すように、配管1の振動抑制装置30は、支持体6と、ネジ部材12と、支持体移動機構22と、支持体6の振動数と振幅または応答を計測する振動センサ32と、支持体移動機構22を制御する制御装置34と、を備えている。
ネジ部材12を支柱4に押圧した状態で支持体6の振動数と振幅または応答を振動センサ32で計測することにより、配管1の振動数と振幅または応答を計測することができる。振動数と振幅または応答の計測は、支持体6の高さ位置を変更するごとに、毎回計測する。振動数と振幅または応答の計測結果は、支持体6の高さ位置と紐付けられて、制御装置34の記憶部(図示しない)に格納される。
制御装置34は、複数回計測した計測結果のなかから、振幅または応答が最も小さい値を選択して、当該値に対応する支持体6の高さ位置(以下、最小応答位置という)を特定し、最小応答位置を押圧位置として決定する。その後、支持体移動機構22を上下方向に移動させて、支持体6、即ちネジ部材12を押圧位置まで移動させる。
制御装置34は、上述した振幅または応答が最も小さい値を選択してから支持体6を押圧位置まで移動させるまでの一連の動作を自動的に実施する。
【0035】
上述した構成からなる振動抑制装置30を用いた振動抑制のフローについて以下で説明する。
【0036】
図4は、振動抑制装置30を用いた振動抑制のフローを示す図である。
図4に示すように、まず、支柱4の側方の構造物10上に振動抑制装置30を設置する(ステップS10)。そして、支持体6の応答が最も低い位置となるように、支持体移動機構22の伸縮量を調整する。続いて、ネジ部材12を締め付けてネジ部材12を支柱4に押圧させる。
【0037】
次に、振動センサ32で配管1の振動数と振幅または応答を計測する(ステップS12)。計測された値は制御装置34の記憶部に格納される。
【0038】
次に、支持体移動機構22を所定の長さだけ伸長させて、支持体6を支柱4の高さ方向、すなわち上方向へ移動させる(ステップS14)。
【0039】
次に、配管1の振動数を支柱4の全長にわたって予め設定された所定回数以上、計測したか否かを判定する(ステップS16)。
配管1の振動数の計測回数が所定回数未満の場合、再び、配管1の振動数を計測する(ステップS12)。そして、配管1の振動数を支柱4の全長にわたって高さ位置を変更しながら計測することを繰り返す。本実施形態の場合においては、支柱4の下端側から上端側へ向かってネジ部材12を移動させながら配管1の振動数と振幅または応答を計測する。なお、本実施形態では、支柱4の全長にわたってネジ部材12を押圧させて振動数を計測する場合について説明したが、経験等によって振動数を効果的に低減させることができる支柱4の区間がわかっている場合には、当該区間内のみで振動数を計測してもよい。
【0040】
そして、配管1の振動数の計測回数が所定回数以上の場合、制御装置34は、複数回計測した計測結果のなかから、振幅または応答が最も小さい値を選択して、最小応答位置を特定し(ステップS18)、最小応答位置を押圧位置として決定する(ステップS20)。
【0041】
次に、制御装置34は、支持体移動機構22を上下方向に移動させて、ネジ部材12を押圧位置まで移動させる。(ステップS22)。
【0042】
その後、ネジ部材12を締め付けてネジ部材12を支柱4に押圧して、配管系の固定振動数を変化させることにより、配管1の共振を回避する。
【0043】
上述したように、本実施形態に係る振動抑制装置30によれば、振動センサ32及び制御装置34を更に備えているため、振動センサ32の計測結果に基づいて最も振動を抑制できる高さ位置にネジ部材12を自動で移動させることができる。また、振動を抑制することにより、配管系の固有振動数を変化させることができる。したがって、配管1の共振を回避することができる。なお、本実施形態においても、第一実施形態で説明した効果を得ることができる。
【0044】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図5は、本発明の第三実施形態に係る振動抑制装置40で配管系の固有振動数を変化させている状態を示すである。
図5に示すように、配管1の振動抑制装置40は、支持体6と、ネジ部材12と、支持体移動機構22と、振動センサ32と、ネジ移動装置42と、支持体移動機構22及びネジ移動装置42を制御する制御装置54と、を備えている。
【0045】
ネジ移動装置42は、モータ46と、当該モータ46の出力軸とネジ部材12とを連結する連結材48と、を有している。モータ46とネジ部材12とは連結材48にて連結されているため、モータ46を回転させると、ネジ部材12も同じ方向へ回動する。例えば、モータ46を右回転させると、ネジ部材12が支柱4へ向かって移動する。一方、モータ46を左回転させると、ネジ部材12が支柱4から離れる方向へ移動する。これにより、ネジ部材12を支柱4に当接させたり、支柱4から離間させたりすることができる。
【0046】
ネジ部材12の支柱4側の先端に取り付けられている圧力センサ52で計測された値をネジ部材12の押圧力とする。なお、本実施形態では、ネジ部材12の押圧力を圧力センサ52で計測したが、これに限定されるものではなく、例えば、モータ46のトルクを検出してもよい。
同一高さ位置で、ネジ部材12を支柱4に押し付ける力の大きさを変化させて、ネジ部材12の押圧力を複数回計測する。押圧力を計測するとともに、振動センサ32によって振動数と振幅または応答を計測する。振動数と振幅または応答の計測結果は、押圧力の計測結果に紐付けられて、制御装置54の記憶部に格納される。
本実施形態では、ネジ部材12を支柱に押し付ける力の大きさを3種類設定し、それぞれについて振動数と振幅または応答を計測した。具体的には、ネジ部材12を支柱4に弱く押圧させた場合(以下、弱押圧力の場合という)、ネジ部材12を支柱4に強く押圧させた場合(以下、強押圧力の場合という)、及び弱押圧力と強押圧力との中間の場合(以下、中押圧力の場合という)のそれぞれについて振動数を計測した。
【0047】
制御装置54は、3回計測した計測結果のなかから、振幅または応答が最も小さい値を選択して、当該値に対応するネジ部材12の押圧力(以下、最小応答押圧力という)を特定し、最小応答圧力をネジ部材12の所定押圧力として決定する。
その後、制御装置54は、ネジ移動装置42のモータ46を回転させてネジ部材12を支柱4に押圧させて、ネジ部材12の押圧力が所定押圧力に達したらモータ46の回転を停止する。
制御装置54は、上述した振幅または応答が最も小さい値を選択してからモータ46の回転を停止するまでの一連の動作を自動的に実施する。
【0048】
上述した構成からなる振動抑制装置40を用いた振動抑制のフローについて以下で説明する。
【0049】
図6は、振動抑制装置40を用いた振動抑制のフローを示す図である。
図6に示すように、まず、第二実施形態と同様に、ステップS10からステップS22までを実施して、ネジ部材12を最小応答位置へ移動させる。
【0050】
次に、ネジ移動装置42のモータ46を回転させてネジ部材12を支柱4に押圧させる(ステップS32)。続いて、配管1の振動数を計測する(ステップS12)。計測された値は制御装置54の記憶部に格納される。
【0051】
次に、最小応答位置において、押圧力を変化させて所定回数の3回以上、振動数と振幅または応答を計測したか否かを判定する(ステップS34)。
押圧力を変化させて振動数を計測した回数が3回未満の場合、押圧力を変えてステップS12を実施する。例えば、弱押圧力の場合の振動数と振幅または応答(1回)しか計測していない場合は、再びステップ12にて、中押圧力の場合における振動数と振幅または応答を計測する。また、弱押圧力及び中押圧力の場合における振動数と振幅または応答(2回)しか計測していない場合は、再びステップ12にて、強押圧力の場合における振動数と振幅または応答を計測する。
【0052】
一方、最小応答位置において、押圧力を変化させて振動数と振幅または応答を計測した回数が3回以上の場合、制御装置54は、配管1の振幅または応答の値が最も小さい値を選択して、最小応答押圧力を特定し(ステップS36)、最小応答押圧力を所定押圧力として決定する(ステップS38)。
【0053】
次に、制御装置54は、ネジ部材12の押圧力が所定押圧力となるようにネジ移動装置42を調整する(ステップS40)。
【0054】
上述したように、本実施形態に係る振動抑制装置40によれば、圧力センサ52及び制御装置54を更に備えているため、圧力センサ52の計測結果に基づいて最も振動を抑制できる所定押圧力でネジ部材12を支柱4に押圧させることができる。また、振動を抑制することにより、配管系の固有振動数を変化させることができる。したがって、配管1の共振を回避することができる。なお、本実施形態においても、第一及び第二実施形態で説明した効果を得ることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ステップS10からステップS40までを実施する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、経験等によって振動数を効果的に低減させることができる支柱4の押圧力がわかっている場合には、ステップS10からステップS22までを実施した後、その押圧力で支柱4を押圧してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、ステップS10からステップS40までを実施する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、経験等によって振動数を効果的に低減させることができる支柱4の区間がわかっている場合には、図7に示すように、ステップS10を実施した後、ステップS22を実施し、その後、ステップS32からステップS40までを実施してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 配管
2 振動抑制装置
4 支柱
6 支持体
8 弾性ゴム
10 構造物
12 ネジ部材
14 ナット
22 支持体移動機構
23 支持体移動機構
24 架台
25 モータ付ワイヤー巻き取り機
26 ローラー
27 ワイヤー
30 振動抑制装置
32 振動センサ
34 制御装置
40 振動抑制装置
42 ネジ移動装置
46 モータ
48 連結材
52 圧力センサ
54 制御装置
60 サポート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が構造物に固定されて当該構造物上に立設された支柱と、当該支柱に固定されるとともに振動源に接続された配管と、を有する配管系の振動を抑制する配管系の振動抑制装置であって、
前記支柱の一端と前記配管との間の前記支柱の側方を押圧する押圧部材と、
前記構造物に固定され、前記押圧部材を前記支柱の立設方向の任意の高さ位置に支持可能な支持手段と、を備え、
前記押圧部材を前記支柱に押圧させて、前記配管系の振動を抑制することを特徴とする配管系の振動抑制装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記押圧部材を支持する支持体と、前記支柱の立設方向に沿って前記支持体を任意の高さ位置に移動させる支持体移動機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の配管系の振動抑制装置。
【請求項3】
前記配管系の振動を計測するセンサと、
前記センサによる計測結果に応じて前記支持体移動機構を制御し、前記支持体を前記立設方向へ移動させる制御装置と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の配管系の振動抑制装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記センサによる計測結果に応じて前記押圧部材が前記支柱を押圧する力を制御することを特徴とする請求項3に記載の配管系の振動抑制装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記支持体に形成されたネジ穴に螺合することで一端が前記支柱に当接自在に構成されているネジ部材であり、
前記ネジ部材を所定の方向に回動することによって、前記ネジ部材が前記支柱の側方を押圧することを特徴とする請求項2〜4のうち何れか一項に記載の配管系の振動抑制装置。
【請求項6】
前記ネジ部材の軸方向の移動を拘束して、前記ネジ部材が前記支柱の側方を押圧した状態を保持する拘束部材を有することを特徴とする請求項5に記載の配管系の振動抑制装置。
【請求項7】
前記振動源はエンジンであり、前記配管を介して前記エンジンに流体を供給することを特徴とする請求項1〜6のうち何れか一項に記載の配管系の振動抑制装置。
【請求項8】
構造物に固定されて当該構造物上に立設された支柱の下端と当該支柱に固定されるとともに振動源に接続された配管との間の前記支柱の側方を押圧する押圧部材と、前記構造物に固定され、前記押圧部材を前記支柱の立設方向の任意の高さ位置に支持可能な支持手段と、を備える振動抑制装置を用いて前記支柱及び前記配管から構成された配管系の振動を抑制する配管系の振動抑制方法であって、
前記支持手段によって前記押圧部材を所定の高さ位置に配置し、
前記支柱の下端と前記配管との間の前記支柱の側方に前記押圧部材を押圧して、前記配管内に流体を送給させながら前記配管系の振動を抑制することを特徴とする配管系の振動抑制方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92170(P2013−92170A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232943(P2011−232943)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】