説明

配線パターンの形成方法および配線基板の製造方法

【課題】配線パターンを微細かつ高精度に形成することを可能にする配線パターンの形成方法およびこれを用いた配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】層間絶縁層12を形成する工程と、前記層間絶縁層12に下層の配線パターン10が内底面に露出するビア穴12aを形成する工程と、前記層間絶縁層12の表面と前記ビア穴12aの内面にめっきシード層18を形成する工程と、前記めっきシード層18の表面をレジスト30によって被覆する工程と、レーザ加工により、前記レジスト30に配線溝30aを形成する工程と、前記めっきシード層18をめっき給電層として電解めっきを施し前記ビア穴12aおよび前記配線溝30aに導体32を被着させる工程と、前記レジスト30と前記めっきシード層18とを除去し、前記層間絶縁層12上に配線パターン32aを形成する工程とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線パターンの形成方法および配線基板の製造方法に関し、より詳細には、配線パターンを微細に高精度に形成することができる配線パターンの形成方法および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線形成方法に利用されるダマシン法は、層間絶縁層に溝を形成し、この溝内に配線となる導体材を充填し、層間絶縁層の表面の余分の導体材を研磨により除去して配線を形成するといった方法である。
図5は、ダマシン法を利用して配線パターンを形成する従来方法を示す。すなわち、下層の配線パターン10が形成された面上に層間絶縁層12を形成し(図5(a))、レーザ加工により層間絶縁層12に下層の配線パターン10にまで通じるビア穴14を形成し(図5(b))、レーザ加工によって配線溝16を形成する(図5(c))。
【0003】
次いで、ビア穴14、配線溝16および層間絶縁層12の表面にめっきシード層18を形成し(図5(d))、めっきシード層18をめっき給電層とする電解めっきによりビア穴14、配線溝16にめっき20を充填し(図5(e))、最後に層間絶縁層12の表面の不要なめっきを研磨して除去することにより、層間絶縁層12の表面に配線パターン20aを形成し、下層の配線パターン10と上層の配線パターン20aとをビア20bを介して電気的に接続する。このように、ビア20bと配線パターン20aとを形成する方法を繰り返すことによって、多層に配線パターンを形成することができる。
【特許文献1】特開2006−49804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のダマシン法を利用して配線パターンを形成する方法においては、図5(b)、(c)に示すように、レーザ加工によってビア穴14を形成し配線溝16を形成する。しかしながら、レーザ加工によって絶縁膜に溝加工を施す際には、たとえば溝の内側面を垂直に起立した面に加工することが難しいといった問題があり、とくに、配線溝16を形成する場合は、溝を配線の厚さに一致する深さに形成することが難しいという問題がある。溝の深さは、レーザ光のパワーや集光度、レーザ光の照射時間を制御することによって調節することができるが、配線パターンのパターン幅には広狭があるし、使用する層間絶縁層の素材の特性はまちまちであるために、溝の深さが一定になるように制御することは技術的に困難である。
【0005】
なお、配線パターンを形成する方法には、感光性レジストを配線パターンにしたがって露光および現像して配線パターンを形成する溝(配線溝)を形成し、溝内にめっきを盛り上げて形成する方法がある。しかしながら、感光性レジストを露光および現像して配線パターンを形成する方法は、解像度の問題や、レジストの厚さに対するアスペクト比を大きくとれないといった問題から配線パターンの微細化が阻害されるという問題がある。
【0006】
本発明は、配線パターンの形成方法および配線基板の製造方法において、配線パターンをより微細かつ高精度に形成することを可能にする配線パターンの形成方法およびこれを用いた配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、配線パターンの形成方法として、層間絶縁層を形成する工程と、前記層間絶縁層に下層の配線パターンが内底面に露出するビア穴を形成する工程と、前記層間絶縁層の表面と前記ビア穴の内面にめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層の表面をレジストによって被覆する工程と、レーザ加工により、前記レジストに配線溝を形成する工程と、前記めっきシード層をめっき給電層として電解めっきを施し前記ビア穴および前記配線溝に導体を被着させる工程と、前記レジストと前記めっきシード層とを除去し、前記層間絶縁層上に配線パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0008】
また、前記レジストとして、フィラーを含有しない樹脂材を使用することにより、レーザ加工により容易にレジストに配線溝を形成することができ、高精度に配線パターンを形成することができる。
また、前記レーザ加工を、エキシマレーザを使用して行うことにより、レジストに高精度に配線溝を形成することができ、配線パターンを微細にかつ高精度に形成することができる。
また、前記めっきシード層としては、無電解銅めっきによって形成することが、めっき給電層として好適に使用することができ、またレーザ光のストッパ層として利用できる点から有効である。
【0009】
また、配線基板の製造方法として、層間絶縁層を形成する工程と、前記層間絶縁層に下層の配線パターンが内底面に露出するビア穴を形成する工程と、前記層間絶縁層の表面と前記ビア穴の内面にめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層が形成された前記層間絶縁層の表面をレジストによって被覆する工程と、レーザ加工により、前記レジストに配線溝を形成する工程と、前記めっきシード層をめっき給電層として電解めっきを施し前記ビア穴および前記配線溝に導体を被着させる工程と、前記レジストと前記めっきシード層とを除去し、前記層間絶縁層上に配線パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る配線パターンの形成方法によれば、レジストをレーザ加工して配線溝を形成することによって、高精度に配線パターンを形成することが可能となる。また、本発明に係る配線基板の製造方法によれば、微細な配線パターンを高精度に形成した配線基板として得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る配線パターンの形成方法の実施の形態について、図1、2にしたがって説明する。なお、図3に本実施形態での配線パターンの製造工程をフロー図によって示した。
まず、図1(a)は、下層の配線パターン10が形成された絶縁層11の上に層間絶縁層12を形成した状態を示す。層間絶縁層12は絶縁層として製品に残る層であり、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型の樹脂によって形成する。熱膨張係数の調節あるいは絶縁層の補強用にシリカ等の無機フィラーを混入した樹脂材を使用して層間絶縁層12とすることもできる。層間絶縁層12は、ワーク(基板)の表面に層間絶縁層12となるエポキシ樹脂等の接着性を備えた半硬化の樹脂フィルムをラミネートし、熱硬化させることによって形成することができる。層間絶縁層12の厚さは適宜設定可能である。本実施形態では30〜50μm程度の厚さの層間絶縁層12を想定している。
【0012】
図1(b)は、レーザ加工により層間絶縁層12にビア穴12aを形成した状態を示す(ビア穴形成工程)。ビア穴12aは下層の配線パターン10と上層の配線パターンとを接続するビア位置に合わせてレーザ光を照射し、ビア穴12aの底面に配線パターン10が露出するように開口させて形成する。ビア穴12aの加工にはCO2レーザを用いる。ビア穴12aは配線パターンほど高精度の微細加工が必要ないことと、フィラー等を含む層間絶縁層12を加工するためである。ビア穴12aを形成した後、必要に応じてデスミア処理を施し、ビア穴12aに残留するスミアを除去する。デスミア処理は、たとえば過マンガン酸塩溶液を用いたウエット処理によって行うことができる。
【0013】
次に、層間絶縁層12の表面およびビア穴12aの内面にめっきシード層18を形成する(図1(c))。めっきシード層18は銅等の金属の無電解めっきあるいはスパッタリングによって形成することができる。めっきシード層18は後工程で電解めっきを施す際にめっき給電層となるものである。
なお、めっきシード層18は、後工程においてレジストをレーザ加工する際にレーザ光のストッパ層として作用する。無電解銅めっきあるいは銅スパッタリングによって形成しためっきシード層18は、レーザ光のストッパ作用として好適に作用するが、レーザ光のストッパ作用をより確実にする方法として、めっきシード層にさらにニッケルめっき等の他の金属層を積層形成してもよい。
【0014】
次に、ワークの表面をレジスト30によって被覆する(図1(d))。レジスト30はドライフィルムをワークの表面にラミネートする方法、あるいはレジスト材をワークの表面にコーティングする方法によって形成することができる。
本実施形態においてレジスト30を使用するのは、レーザ加工(レーザアブレーション)によって簡単に加工することができ、剥離液によって簡単に除去できるからである。いいかえれば、レーザ加工後に、めっきシード層18から選択的に除去できる絶縁材であればレジスト30として適宜絶縁材を使用することができる。本実施形態においては、レジスト30に対しては露光および現像処理を施さない。したがってレジスト30は感光性を備える必要はない。
【0015】
レジスト30は、レーザ加工が容易であること、後工程で簡単に剥離液により除去できることが求められるから、シリカ等の無機フィラーを含まない樹脂材が好適に使用できる。また、レジスト30には、めっきシード層18との密着性が良いものが好適である。本実施形態では、レジスト30として感光性、解像性が求められないから、密着性のより良好な樹脂材を選択することが可能である。
【0016】
図2(a)は、レジスト30にレーザ加工(レーザアブレーション)を施して配線溝30aを形成した状態を示す(配線溝形成工程)。レーザ加工により、配線溝30aの底面にめっきシード層18が露出する。レジスト30をレーザアブレーションするレーザとしてはエキシマレーザ(波長308nm)が使用できる。エキシマレーザ光をレジスト材に照射すると、レジスト材を構成する高分子鎖の化学結合が切断され、レジスト材のレーザ光が照射された部位のみが除去される。レジスト30に形成すべき配線パターンにしたがってレーザ光を照射するには、配線パターンに合わせて光を透過させるパターンが形成されたマスクをワークの上方に配置し、マスク上でレーザ光をスキャンさせる方法によればよい。配線パターンをきわめて微細なパターンに形成する場合は、マスクとワークとの間に、パターンを縮小照射させる光学系(レンズ)を配置し、線幅およびピッチ間隔を縮小させてレーザ光を照射する方法が有効である。
【0017】
本実施形態の配線パターンの形成方法では、レジスト30の下層にあらかじめめっきシード層18が形成されているから、レジスト30をレーザアブレーションした際にめっきシード層18がレーザ光のストッパ層として作用し、レーザ光が層間絶縁層12に透過することが阻止され、レジスト30のみが除去される。これによって、配線溝30aの内底面は層間絶縁層12の表面に被覆されためっきシード層18の高さ位置によって規定される。
【0018】
次に、めっきシード層18をめっき給電層とする銅等の金属の電解めっきにより、ビア穴12aと配線溝30aに導体32を充填する(図2(b))。このめっき工程では、ビア穴12aにめっきが充填されるようにめっき条件を設定し、配線溝30aではレジスト30の厚さを超えないようにめっきを盛り上げる。配線溝30a内のめっきの厚さは、めっき条件を制御することによって設定することができる。
【0019】
図2(c)は、次に、剥離液によりレジスト30を除去(膨潤剥離)した状態を示す。レジスト30を除去することによって、レジスト30に被覆されていためっきシード層18の部位が外部に露出する。
図2(d)は、最後に、めっきシード゛層18でワークの外面に露出している部位をエッチングにより除去した状態を示す。めっきシード層18の厚さは導体32の厚さよりもはるかに薄いから、銅のエッチング液を用いてエッチングする方法により、導体32をレジスト等によってマスクすることなく、めっきシード層18の露出している部分のみを選択的に除去することができる。
【0020】
こうして、図2(d)に示すように、層間絶縁層12の表面に配線パターン32aが形成され、配線パターン32aと下層の配線パターン10とが、ビア穴12aに充填された導体32からなるビア32bを介して電気的に接続された形態に形成される。
【0021】
配線パターン32aは、レジスト30にレーザアブレーションによって形成した配線溝30aに導体32が充填されて形成されるから、配線パターン32aの形成精度はレジスト30をレーザアブレーションして形成した配線溝30aの精度を反映する。本実施形態では、永久絶縁層として残る層間絶縁層12にレーザ加工を施すかわりに、レーザ加工がしやすいレジスト30にレーザアブレーションを施すことによって、より容易にかつ高精度に配線溝30aを形成することができ、微細な配線パターンであっても確実に形成することが可能になる。レーザ加工によることでレジスト30に形成される配線溝30aの側面は略垂直に起立して形成され、配線パターン32aの断面形状が矩形状の良好な形状になる。
【0022】
また、本実施形態の配線パターンの形成方法では、めっきシード層18によって層間絶縁層12の表面とビア穴12aの内面を被覆した後にレジスト30にレーザ加工を施すから、めっきシード層18がストッパ層として作用して層間絶縁層12にレーザ光の影響が及ばないようにすることができ、レジスト30に対して選択的にレーザ光が作用して、レーザアブレーションによる加工条件や配線パターンの疎密によって配線パターンの厚さがばらつくといった問題を解消することができる。
本実施形態の配線パターンの形成方法によれば、配線パターンの線幅およびパターン間隔を3〜5μm程度とすることが可能である。これによって、感光性レジストを用いて露光および現像する方法と比較して1/2程度まで高密度化することができる。
【0023】
図4は、上述した配線パターンの形成方法を利用して多層に配線パターンを形成する方法を示す。
図4(a)は、配線パターン32aが形成されたワークの表面に次層の層間絶縁層13を形成した状態である。層間絶縁層13は下層に形成した層間絶縁層12と同様に絶縁層として製品に残る層であり、エポキシ等の熱硬化型の樹脂によって形成する。
図4(b)は、次に、レーザ加工により層間絶縁層13に、下層の配線パターン32aが底面に露出するビア穴13aを形成し、層間絶縁層13の表面とビア穴13aの内面をめっきシード層18aによって被覆した状態を示す。
【0024】
次いで、ワークの表面をレジスト31により被覆し、レジスト31にレーザアブレーションを施して配線溝31aを形成する(図4(c))。
図4(d)は、めっきシード層18aをめっき給電層として電解銅めっきを施し、ビア穴13aと配線溝31aに導体33を充填した状態を示す。
図4(e)は、レジスト31を除去した後、めっきシード層18aでワークの表面に露出する部分をエッチングにより除去し、層間絶縁層13の表面に配線パターン33aを形成した状態を示す。配線パターン33aはビア33bを介して下層の配線パターン32aと電気的に接続し、配線パターン32aはビア32bを介してさらに下層の配線パターン10に接続する。
【0025】
このように配線基板の製造工程において、層間絶縁層を積層し、ビアを介して下層の配線パターンに電気的に接続して配線パターンを形成する工程(ビルドアップ工程)を繰り返すことによって、多層に配線パターンを形成した配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】配線パターンの形成工程における配線形成部分の断面図である。
【図2】配線パターンの形成工程における配線形成部分の断面図である。
【図3】配線パターンの形成工程を示すフロー図である。
【図4】配線パターンを多層に形成する工程での配線部分の断面図である。
【図5】従来の配線パターンの形成工程における配線形成部分の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 配線パターン
11 絶縁層
12、13 層間絶縁層
12a、13a ビア穴
16 配線溝
18、18a めっきシード層
30、31 レジスト
30a、31a 配線溝
32,33 導体
32a、33a 配線パターン
32b、33b ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間絶縁層を形成する工程と、
前記層間絶縁層に下層の配線パターンが内底面に露出するビア穴を形成する工程と、
前記層間絶縁層の表面と前記ビア穴の内面にめっきシード層を形成する工程と、
前記めっきシード層の表面をレジストによって被覆する工程と、
レーザ加工により、前記レジストに配線溝を形成する工程と、
前記めっきシード層をめっき給電層として電解めっきを施し前記ビア穴および前記配線溝に導体を被着させる工程と、
前記レジストと前記めっきシード層とを除去し、前記層間絶縁層上に配線パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする配線パターンの形成方法。
【請求項2】
前記レジストとして、フィラーを含有しない樹脂材を使用することを特徴とする請求項1記載の配線パターンの形成方法。
【請求項3】
前記レーザ加工を、エキシマレーザを使用して行うことを特徴とする請求項1記載の配線パターンの形成方法。
【請求項4】
前記めっきシード層を、無電解銅めっきによって形成することを特徴とする請求項1記載の配線パターンの形成方法。
【請求項5】
層間絶縁層を形成する工程と、
前記層間絶縁層に下層の配線パターンが内底面に露出するビア穴を形成する工程と、
前記層間絶縁層の表面と前記ビア穴の内面にめっきシード層を形成する工程と、
前記めっきシード層が形成された前記層間絶縁層の表面をレジストによって被覆する工程と、
レーザ加工により、前記レジストに配線溝を形成する工程と、
前記めっきシード層をめっき給電層として電解めっきを施し前記ビア穴および前記配線溝に導体を被着させる工程と、
前記レジストと前記めっきシード層とを除去し、前記層間絶縁層上に配線パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−117437(P2009−117437A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285781(P2007−285781)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】