説明

配線・配管材支持具

【課題】壁面への取付け、取外し及び再取付け作業を簡単かつ楽に効率良く行なうとともに、螺子が僅かに緩んだ状態において外力が作用したときにおいても壁面から外れるのを防止し、また、螺子が挿通される固定部の強度を大きくする。
【解決手段】弾性的に保護ダクトの布設方向と直交する方向に撓み変形可能に形成され、保護ダクトを支持する本体部11の両端部に、螺子の頭部が内外に通過可能な頭部通過空間16を形成し、螺子を介して壁面に固定される固定部21に、螺子挿通孔23と頭部通過空間16とに連通し、螺子が壁面に緩く螺着されている状態で、螺子の軸部が相対的に保護ダクトの布設方向と直交する方向に平行移動可能な軸部移動空間27を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル、信号線、電力線等の配線材や、電線管、流体管、配線・配管材の保護ダクト等の配管材を建物の内外壁、仕切壁、柱、桟等の壁面に沿って支持するために前記壁面に固定される配線・配管材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の配線材や配管材を前記壁面に沿って支持するために、サドル等の支持具を配線材や配管材の周方向外面に沿ってあてがい、螺子を固定部の挿通孔に挿通し、壁面に螺着して固定していた。ところで、壁面に沿って支持されている配線材や配管材は、電線が断線することがあり、また、給水管が古くなって交換、更新が必要となるときがある。或いは、配管材としての保護ダクトの内部に収容されているケーブルや電線管を増設したり内部を点検することが必要となることもある。このようなときは、配線材や配管材を支持している支持具を一旦壁面から取り外す必要があり、その際、螺子は固定部の挿通孔に挿通されているため、これを壁面及び挿通孔から完全に抜き取ってから支持具を取り外していた。そして、配線材や配管材を交換、増設し、或いは保護ダクトの内部を点検した後は、再び、支持具を配線材や配管材にあてがい、支持具の固定部の挿通孔に螺子を挿通し、壁面に螺着して支持具を固定し、配線材、配管材を壁面に支持していた。
【0003】
しかし、この支持具を壁面に螺着するための螺子は一般に比較的長いものが使用されており、ドライバ等の工具を多数回回さないと固定部の挿通孔から完全に取り外すことはできず、しかも、支持具は通常、配線・配管材の布設路に所定間隔をおいて多数固定されているから、支持具を取り外すには大変面倒で手間のかかる作業を要した。更に、螺子を取り外した後は、それを一時的に小物箱等に保管し、再度支持具を取付けるときに、それを保管箱等から取り出さねばならなかった。また、再度の取付けの際には、一度に、一方の手で配線・配管材と支持具とを把持しつつ他方の手で工具を持って螺子を螺着しなければならず、しかも、これらの作業は手袋をはめて行なわれるために螺子を取り扱いにくいことが加わって、円滑に作業できず、作業性は良くなかった。更には、再度比較的長い螺子を別の箇所に最初から締付けなければならないから、多大な手間と時間を要した。加えて、先の螺子孔が壁面上に残存するから、それが露出して外観の低下を招いていた。
【0004】
そこで、このような不具合に鑑み、例えば、特開2004−340314に掲載された配管支持片が提案されている。この配管支持片は、壁面に新しく配管材を固定するに際して使用されるものであるが、配管の交換、更新等を行なう際にも適用可能である。前記配管支持片は、図13に示すように、配管材に管径方向に跨るように湾曲形成された配管支持部82と、配管支持部82の両端からそれぞれ管径方向外向きに延在して建築物の壁面Wなどに固定される左右の固定部83,83とを備えて成り、建築物の壁面Wに螺着された螺子を収容するための螺子挿通孔84を左右の固定部83,83にそれぞれ形成し、螺子71の軸部73が通過可能で螺子挿通孔84と外部とを連通する切欠き部85を、左右の固定部83,83の同じ側の側辺86に開口して形成している。これにより、建物の壁面Wなどで配管支持片81をスライドさせるだけで、壁面Wに中途まで螺着されている螺子71に配管支持片81を装着することができる。したがって、螺子71を壁面Wから取り外すことなく中途まで螺着した状態で、配管支持片81を壁面Wに装着できるとともに、壁面Wからの配管支持片81の取り外しと壁面Wへの再取付けを行なうことも可能であり、配管材の交換、更新等の作業を行なうことも可能である。したがって、これらの作業において、一方の手で配管材を持ち、他方の手で配管支持片81を螺子71に案内してから螺子止めすることができ、配管材の支持固定施工及び配管の交換施工を効率よく実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−340314公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記公報に掲載された配管支持片81は、螺子71の軸部73が通過可能で螺子挿通孔84と外部とを連通する切欠き部85が左右の固定部83,83の同じ側の側辺86に開口している、即ちいずれも同一の、配管材の長手方向に開口している。このため、配管材が何らかの外力により長手方向に引張られるとこれを押圧固定している配管支持片81も同方向に引張られることになる。ここで、配管材が上下方向に布設される場合には、配管支持片81は、その切欠き部85の開口が下向きとなる状態で、壁面Wに中途まで螺着されている螺子71に外嵌される。このため、螺子71の固定が緩んだときに、配管材に下方に引張る外力が加わり、同時に配管支持片81も同方向に引張られたとしても、その配管支持片81は螺子挿通孔84の上縁部が螺子71の軸部73に当接して支持されるので、壁面Wに沿って螺子71から抜脱し、落下することはない。しかし、螺子71の固定が緩んだときに、何らかの作用で配管材に逆の上方に引張る外力が加わったときには、配管支持片81は切欠き部85の開口を通して螺子71の軸部73から押上げ方向に移動し、螺子71から離脱して壁面Wから外れてしまうことがある。即ち、この配管支持片81は外力等が作用する方向によっては螺子71及び壁面Wから外れてしまうことがある。なお、この離脱を防止すべく、切欠き部85を望む位置には隆起部87が設けられてはいるが、螺子71の緩みの程度、配管材の引張力の程度などによっては離脱することがあり、確実に防止できるものではない。
【0007】
また、前記公報に掲載された配管支持片81は、配管材が上下方向に布設される場合、固定施工時において、予め壁面Wに螺着されている螺子71に対する装着方向性を間違えないよう注意しながら配管支持片81を装着しなければならない。即ち、配管支持片81は、その切欠き部85の開口が下向きとなる状態で、壁面Wに中途まで螺着されている螺子71に外嵌されるのであるが、誤って装着方向を間違えて、切欠き部85の開口が逆の上向きとなる状態で螺子71に外嵌された場合は、螺子71が緩んだときに自重で螺子71から外れ、落下してしまう。そこで、再度螺子71を緩めて配線支持片81を装着し直さなければならず、面倒である。
【0008】
加えて、前記配管支持片81の固定部83は、その側辺86に開口する切欠き部85が形成されているので、この周辺部における剛性及び強度が小さく、切欠き部85の中心線を軸に折れ曲がったり、切欠き部85の開口端部等で折れ曲がるなどの変形を生じ易い。
【0009】
そこで、本発明は、壁面への配線・配管材の固定や配線・配管材の交換、増設、点検等を行なう際に、取付け、取外し及び再取付け作業を簡単かつ楽に効率良く行なうことができるとともに、螺子が僅かに緩んだ状態において配線・配管材が引張られるなどの外力が作用したときにおいても常に壁面から外れることがなく、また、螺子が挿通される固定部の強度を大きくすることができる配線・配管材支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の配線・配管材支持具は、配線・配管材をその周方向外面に沿って支持する本体部と、前記本体部の端部に設けられ、螺子を介して壁面に固定される固定部とを備え、前記本体部は、弾性的に前記配線・配管材の布設方向と直交する方向に撓み変形可能に形成され、前記固定部は、前記螺子の軸部が挿通する螺子挿通孔と、前記螺子の頭部が壁面に向けて押圧する押圧面とを有している。そして、前記本体部と前記固定部との隣接箇所に、前記螺子の頭部が内外に通過可能な頭部通過空間が形成されている。また、前記固定部に、前記螺子挿通孔と前記頭部通過空間とに連通し、前記螺子が前記壁面に緩く螺着されている状態で、前記螺子の軸部が相対的に前記配線・配管材の布設方向と直交する方向に平行移動可能な軸部移動空間が形成されている。
【0011】
これにより、支持具の本体部と固定部との隣接箇所に頭部通過空間が形成され、固定部に軸部移動空間が形成されているので、支持具は、螺子が壁面に螺着されている状態で、弾性的に撓み変形可能な本体部の端部を押し広げつつ、その螺子に取付けて壁面に固定することができ、また、逆に、その螺子から離脱させて壁面から取り外すことができる。
【0012】
ここで、固定部は、本体部の両端部或いは一方の端部に設けられている。
また、螺子が壁面に緩く螺着されているとは、少なくとも支持具の固定部を壁面と螺子の頭部との隙間から取り外すことができ、また、その隙間内に挿入できる程度に中途まで螺着されていることを意味する。
頭部通過空間は内外に即ち支持具の内部と外部との間で螺子の頭部が通過可能となっている。
この頭部通過空間が形成されている、本体部と固定部との隣接箇所は、本体部と固定部とが隣合っている部分の周辺をも含めたこの部分全体を意味し、頭部通過空間は本体部のみに設けられ、または固定部のみに設けられ、或いはその双方に跨って形成される態様を採り得る。
螺子の軸部が相対的に平行移動可能であるとは、螺子は壁面に螺着されていて壁面と平行する方向には移動しないのであるが、支持具は壁面に取付け、取り外しができ、壁面と平行する方向に移動可能であり、そのような支持具との関係において、螺子は支持具に対して相対的にその軸部移動空間内を平行移動可能となっている意である。
なお、配線・配管材について、壁面に固定されるベース部材とこれに着脱自在に取付けられるカバー部材との2部材で構成され、内部に電線管等を保護する保護ダクトについても、支持具でカバー部材を壁面に押圧し、支持することから、本発明で適用する配線・配管材に含まれる。
【0013】
請求項2の配線・配管材支持具は、請求項1の固定部が、本体部の両端部に一対設けられたもので、配線・配管材を両側から支持するいわゆる両サドル等を挙げることができる。
【0014】
請求項3の配線・配管材支持具は、請求項1の固定部が、本体部の一端部に設けられたもので、配線・配管材を片側のみで支持するいわゆる片サドル等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の配線・配管材支持具は、螺子が壁面に螺着されている状態で、本体部の端部を押し広げつつ、その螺子から離脱させ、また、その螺子に取付けることができるから、壁面に布設した後に配線・配管材の交換、更新が必要となったときなどにおいては、螺子を壁面から完全に取り外してしまうことなく、螺子から離脱させて壁面から取り外し、配線・配管材を交換後、再度螺子に取付けて壁面に固定できる。したがって、壁面に螺着されている螺子を僅かに緩めるだけで支持具を壁面から取り外すことができ、また、壁面に螺着されている螺子に支持具を装着してから螺子を本締めすることによって再取付けすることができる。また、この本締めの際には、螺子は既に壁面に中途まで螺着されているから、少し螺着するだけでよい。このため、これらの一連の作業を簡単かつ楽にしかも短時間に効率良く行なうことができる。これについては、配線・配管材を新規に壁面に沿って布設するときにも、先に螺子を壁面に螺着してから支持具を取付けることにより、同様の効果を得ることができる。また、螺子を壁面から取り外すことなく支持具の着脱を行なうことができるので、作業時に螺子を紛失することがなく、螺子を小物箱等に一時保管する必要もない。更に、再度の取付けによって、従来のような、前の螺子孔が壁面に残存して外観を低下させてしまう不具合を生じることもない。
【0016】
また、支持具の固定部の軸部移動空間は配線・配管材の布設方向と直交する方向に形成されている、つまりは、支持具の固定部の移動可能方向と配線・配管材の引張方向とが相違するから、壁面への螺子の締付けが僅かに緩んだときに、配線・配管材を布設方向に引張る外力が加わることによって支持具自体にもその方向の力が作用しても、常に、支持具が螺子から抜脱するのを防止でき、安定して壁面に固定できる。
【0017】
更に、支持具の本体部の頭部通過空間と固定部の螺子挿通孔と軸部移動空間とが連通形成されていることにより固定部は切欠のない枠状に形成されているので、構造上剛性、強度が大きく、変形したり破損したりするのを防止できる。
【0018】
請求項2の配線・配管材支持具は、固定部が、本体部の両端部に一対設けられているから、特に、配線・配管材を両側から安定して支持できる。また、この支持具は、本体部の両端部をその弾性力に抗して互いに反対の側方に押し広げることによって螺子から離脱するところ、そのような反対方向の外力が同時に作用することはほとんど考えられないので、仮に螺子が緩んだとしても、意図しない外力によって支持具が不用意に螺子から抜脱してしまうのを防止できる。
【0019】
請求項3の配線・配管材支持具は、固定部が、本体部の一端部に設けられているから、特に、螺子は1箇所に螺着するだけで支持具を壁面に固定でき、作業が簡略化する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の配線・配管材支持具を示す斜視図である。
【図2】図1の支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は底面図、(e)は(c)のA−A切断線による断面図である。
【図3】第1実施形態で使用される保護ダクトを示す斜視図である。
【図4】図3の保護ダクトの分解正面図である。
【図5】図1の支持具を壁面から取り外す方法を示す正面図である。
【図6】図1の支持具を壁面に再取付けする方法を示す正面図である。
【図7】図6の別の再取付けの方法を示す正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の配線・配管材支持具を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態の配線・配管材支持具を示す斜視図である。
【図10】図9の支持具を取付ける状態を示す正面図である。
【図11】図1の支持具の変形例を示す要部平面図である。
【図12】図1の支持具の別の変形例を示す要部斜視図である。
【図13】従来の配線・配管材支持具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〈第1実施形態〉
まず、本発明の第1実施形態の配線・配管材支持具を図1乃至図7に基づいて説明する。なお、本第1実施形態においては、前記支持具は螺子を取付ける固定部を左右に一対設けたいわゆる両サドルを例示し、また、配線・配管材は、冷媒管を保護する保護ダクトを例示する。ここで、図1及び図2は第1実施形態の支持具を示し、図3及び図4は前記支持具によって支持される保護ダクトを示す。
【0022】
図1乃至図4において、支持具1は、配線・配管材としての保護ダクト61をその周方向外面に沿って支持する本体部11と、本体部11の両端部に設けられ、螺子71を介して壁面Wに固定される一対の固定部21,21とを備えて成る。支持具1は、本体部11が保護ダクト61の外形状に対応させて略コ字板状に形成されており、合成樹脂により一体に形成することができる。保護ダクト61はベース部材62とカバー部材63との2部材で構成され、本実施形態においては、壁面Wに沿って上下方向に取付けられるものを示す。ここで、支持具1は、一般には、配線・配管材を建物の内外壁、仕切壁、柱、桟等の壁面Wに沿って固定するために前記壁面Wに取付けられるのであるが、配線・配管材として保護ダクト61を適用した場合は、保護ダクト61はベース部材62が螺子74を介して壁面Wに固定されるため、第1実施形態においては主に保護ダクト61のカバー部材63を上方から押さえて支持するものとして使用される。即ち、保護ダクト61のカバー部材63は通常、ベース部材62に係合手段によって着脱自在に取付けられているのみであるから、保護ダクト61が壁面Wに沿って上下方向に布設されている場合には、その自重によって次第に下方にずれてきて上部で隙間ができ、保護ダクト61の内部が露出することがあり、特に暑い夏季においてその現象が生じ易い。そこで、それを防止するためにカバー部材63の上方から支持具1を取付けてカバー部材63を支持するのである。他には、保護ダクト61相互の連結位置に取付けてその部分を覆い、外観の低下を防止し、また、保護ダクト61が壁面Wに水平方向に布設されている場合に、保護ダクト61に取付けてその荷重を支える補強部材として使用される。なお、螺子71としては、タッピンねじ等を使用することができる。
【0023】
以下、支持具1の各構成部材を詳細に説明する。
まず、本体部11は、図1及び図2において、コ字板状の中央部分に水平方向に形成された上壁部12と、この上壁部12における左右の側端部の屈曲部11aからそれぞれ垂直下方に延設された一対の側壁部13,13とを有して成る。幅方向の両側縁部には全長に至って折曲形成されて内方に僅かに突出するフランジ14が一体に設けられており、このフランジ14の先端部は保護ダクト61の外壁に当接するものとなっている。上壁部12は保護ダクト61のカバー部材63の形状に対応して僅かに上方に湾曲形成されている。左右一対の側壁部13,13はそれぞれ本体部11の上壁部12との屈曲部11aを基点として弾性的に保護ダクト61の長手方向即ち布設方向と直交する方向に撓み変形可能となっており、その下端部15を内方に押圧しまたは外方に引張ることにより、或いは上壁部12の中央部を押圧したりすることにより、下端部15は左右に拡開し或いは縮閉するものとなっている。
【0024】
更に、本体部11の両端部である側壁部13の下端部15には、本発明の特徴である頭部通過空間16が形成されている。頭部通過空間16は側壁部13の下端部15にコ字状に切欠され、下方に開口するものとなっている。頭部通過空間16は壁面Wに螺着される螺子71の頭部72が側壁部13と直交する方向つまりは保護ダクト61の布設方向と直交する方向に貫通して内外に通過し得る大きさに形成されている。この頭部通過空間16は、固定部21を螺子71に対して移動させて螺子71に着脱させる際に、螺子71の頭部72が本体部11の側壁部13と干渉してその移動が阻止されるのを回避するために設けられたものである。
【0025】
次に、固定部21は、本体部11の左右の側壁部13,13の下端部15,15に一体に設けられ、本体部11の側壁部13と直交し、つまりは保護ダクト61の長手方向と直交し、下面22が壁面Wに沿って当接するものとなっている。固定部21の略中央には、螺子71の軸部73が上下方向に挿通する螺子挿通孔23が設けられている。固定部21の上面24には螺子71の頭部72の外径より僅かに大きい内径であって一部に切欠を有する円形状の凹面部25が形成されており、その底面は螺子71の頭部72の下面が固定部21を壁面Wに向けて押圧する押圧面26となっている。凹面部25は上面24に僅かな深さを有して凹設されており、内周壁25aが螺子71の頭部72の周縁部と当接することにより、何らかの外力や振動等によって螺子71の頭部72が頭部通過空間16側に相対的に移動するのを阻止している。ここで、螺子71は、壁面Wに締付けられているので、基本的には、その頭部72が頭部通過空間16側に移動することはないのであり、また、仮に螺子71の締付けが僅かに緩んで、固定部21が回動しながら移動しようとしても、その下面22の内部側端部である本体部11との隣接部28が壁面Wに押圧され、その摩擦力により回動、移動が阻止されるのであるが、より確実に螺子71が相対的に固定部21の螺子挿通孔23から軸部移動空間27を経て頭部通過空間16に移動するのを防止するために設けたものである。なお、この凹面部25は請求項の螺子移動防止部に相当する。
【0026】
更に、固定部21には、螺子挿通孔23と本体部11の頭部通過空間16との間に、本発明の特徴である軸部移動空間27が形成されている。この軸部移動空間27は螺子挿通孔23と前記本体部11の頭部通過空間16とに連通しており、本体部11から固定部21にかけては、頭部通過空間16、軸部移動空間27、螺子挿通孔23の順に並ぶ配置となっている。これにより、螺子71を緩めた状態でこれらの間を螺子71の軸部73が垂直状態のまま平行移動できるようになっており、即ち、保護ダクト61の布設方向と直交する方向に平行移動できるようになっている。なお、本体部11の下端部15と固定部21との隣接部28においてその幅方向の両側部には、本体部11の下端部15と固定部21との間に補強リブ29が架設されており、隣接部28における強度を高めている。
【0027】
次に、支持具1によって支持される保護ダクト61は、内部に冷媒管Pを収容して保護するものであり、図3及び図4に示すように、長手方向に沿って断面形状が一定の矩形枠状に形成されており、壁面Wに固定可能なベース部材62とこのベース部材62に弾性的に嵌着されるカバー部材63との2分割体を組付けて成る。前記ベース部材62は上方に開口する略コ字板状の一定断面に形成されており、底部の基板64の左右両側に立設する側壁65,65の上端部に後述する前記カバー部材63のフランジ68と嵌合する嵌合溝66が形成されている。カバー部材63はベース部材62の上部開口を覆う覆蓋部67が上方に緩やかに湾曲する蓋状に形成されており、幅方向の左右両端部に水平方向に屈曲して前記ベース部材62の嵌合溝66内に嵌合するフランジ68が一体に設けられている。前記ベース部材62は成形時に左右の両側壁65,65の上部が僅かに外側に反った状態で成形されており、上方からカバー部材63を強制的に押込むことにより、両側壁65,65の上部が内部側に撓んで嵌合溝66へのカバー部材63のフランジ68の嵌入を可能としている。これにより、カバー部材63はベース部材62に弾性的に着脱自在に組付けられ、安定した直状の保護ダクト61が得られる。
【0028】
この保護ダクト61は、以下のようにして壁面Wに沿って布設される。即ち、冷媒管Pが配設されている状態で、まず、ベース部材62を冷媒管Pと壁面Wとの間隙に通し、その状態でベース部材62の基板64に設けた図示しないねじ孔に螺子74を挿通して壁面Wに螺着する。次いで、ベース部材62の上方開口側からカバー部材63を押込むことにより、カバー部材63のフランジ68を弾性的にベース部材62の嵌合溝66に嵌合させる。これにより、前記カバー部材63は着脱自在にベース部材62に取着される。なお、先にベース部材62を壁面Wに取付けた後、冷媒管Pをベース部材62内に挿入してもよい。
【0029】
次に、上記のように構成された第1実施形態の支持具1を使用して保護ダクト61を新規に壁面Wに沿って支持する方法を説明する。ここでは、保護ダクト61を上下方向に布設する場合を示すが、保護ダクト61を水平方向或いは斜め方向に布設する場合も基本的には同様の操作で支持することができる。
まず、保護ダクト61のベース部材62を螺子74を使用して壁面Wに固定する。次に、ベース部材62の上方開口にカバー部材63を配置し、ベース部材62の上方開口側からカバー部材63を押込むことにより、カバー部材63のフランジ68を弾性的にベース部材62の嵌合溝66に嵌合させて、カバー部材63を取付ける。これにより、保護ダクト61は壁面Wに沿って取付けられる。次に、保護ダクト61の中間部や保護ダクト61相互の連結部に支持具1を取付ける。それには、保護ダクト61の上方から支持具1をあてがった後、支持具1の固定部21の螺子挿通孔23に螺子71を挿通し、ドライバ等の工具を使用して壁面Wに螺着し、固定すればよい。このとき、先端部に磁性を帯びたドライバを使用すると作業し易い。これにより、保護ダクト61のカバー部材63は支持具1によって押圧、保持され、自重で下方にずれるのが防止され、また、支持具1が連結部に取付けられた場合は、その部分の目隠しともなる。
【0030】
次に、上記のようにして支持具1によって壁面Wに支持された保護ダクト61において内部の冷媒管Pを交換または増設し或いは保護ダクト61内を点検する必要が生じたときの支持具1の取り外し及び再取付けの方法を図5乃至図7に基づいて説明する。
一旦、壁面Wに固定され、保護ダクト61の外周面に沿ってこれを支持してから後日になって、保護ダクト61内の古くなった冷媒管Pの交換を要することとなったときや増設を要するときは、保護ダクト61を支持している支持具1を取り外す必要がある。そこで、まず、図5(a)に示すように、左右一対の固定部21,21に螺着されている螺子71を緩め、頭部72の下面を固定部21の上面24より上方に位置させる。これにより、支持具1の固定部21は壁面Wに沿って移動可能な状態となるので、次に、図5(b)に示すように、本体部11の一対の側壁部13,13の下端部15,15を把持して左右に引張って押し広げ、一対の固定部21,21を互いに反対側の外方に移動させて離間させるとともに、保護ダクト61の側壁65から離間させる。このとき、固定部21には、軸部移動空間27が形成されているので、螺子71の軸部73は垂直の姿勢を保ったまま固定部21に対して軸部移動空間27内を相対的に平行移動する。また、本体部11の側壁部13には、頭部通過空間16が形成されているので、螺子71の頭部72は本体部11の側壁部13と干渉することなく頭部通過空間16内を通過する。そして、螺子71の頭部72が本体部11の側壁部13の内部側にほぼ入り込むと、固定部21の上面24は壁面Wと平行する方向において螺子71の頭部72から離間し、支持具1は螺子71が壁面Wに螺着された状態で上方に取り外すことが可能な状態となる。そこで、図5(c)に示すように、支持具1をそのまま上方に移動させて取り外す。
【0031】
支持具1を保護ダクト61から取り外したら、保護ダクト61のベース部材62の側壁65,65を両側から押さえて弾性的に上端開口の間隔を狭めることによって嵌合溝66とカバー部材63のフランジ68との係合を解除し、カバー部材63を取り外す。続いて、内部の冷媒管Pを交換し、或いは増設する。なお、この状態で保護ダクト61内の配管状態等を点検することもできる。次に、冷媒管Pの交換或いは増設が完了したら、上記と逆の手順で、保護ダクト61のベース部材62の開口に上方からカバー部材63をそのまま強制的に押さえ付けてフランジ68をベース部材62の嵌合溝66に係合させて取付ける。
【0032】
次に、保護ダクト61内の冷媒管Pの交換、増設等が終了したら、一旦取り外した支持具1を再度壁面Wに固定する。それには、まず、図6(a)に示すように、支持具1を取り外したときの、螺子71が壁面Wに中途まで緩めた状態で螺着されている状態において、支持具1を保護ダクト61上に降下させつつ側壁部13の弾性力に抗して左右一対の下端部15を左右に引張って相互を離間させる。次いで、図6(b)に示すように、支持具1の本体部11のフランジ14の先端部が保護ダクト61の外壁と当接し、固定部21の上面24が螺子71の頭部72の下面より下方に位置し、螺子71の頭部72が本体部11の側壁部13の下端部15の内部側に位置する拡開状態となったら、左右への引張りを解除する。すると、図6(c)に示すように、両側壁部13,13は元の垂直状態に弾性復帰する。このとき、螺子71は、支持具1の本体部11の側壁部13に頭部通過空間16が形成されているので、支持具1の側壁部13が螺子71の頭部72と干渉して側壁部13の弾性復帰が阻止されるのが防止される。そして、螺子71の頭部72は相対的に頭部通過空間16内を通過し、固定部21の上面24上を保護ダクト61の布設方向と直交する方向に移動する。同時に、螺子71の軸部73は相対的に軸部移動空間27内を案内されて移動し、螺子挿通孔23の周壁面Wと当接する。螺子71はこの螺子挿通孔23に到達した時点で移動を停止する。この状態において、保護ダクト61のカバー部材63は支持具1によって仮支持される。なお、この仮支持の状態において、カバー部材63の位置がずれていた場合は、このカバー部材63を長手方向に引張って位置を調整することもできる。次に、ドライバ等の工具を用いて螺子71の頭部72が固定部21の凹面部25内に嵌入し収容されて押圧面26を押圧するに至るまで螺子71を締付ける。これにより、支持具1は壁面Wの所定位置に固定され、壁面Wへの再取付けが完了し、保護ダクト61は支持具1によって押圧、支持される。
【0033】
ここで、上記の支持具1の再取付けにおいては、本体部11の下端部15を左右に押し広げて相互を離間させ、螺子71の頭部72が本体部11の側壁部13の内側に達したら、引張り状態を解除して両側壁部13,13を元の垂直状態に弾性復帰させているが、単に支持具1の上壁部12のほぼ中央を上方から押さえ付け、その後押さえを解除することにより、支持具1を簡単に中途まで螺着されている螺子71に装着することもできる。即ち、螺子71が壁面Wから所定距離だけ離間して螺着されている状態において、側壁部13が垂直状態にある支持具1をそのまま上方から保護ダクト61に向けて降下させていくと、固定部21の下面22が螺子71の頭部72と当接し、それ以上の降下が阻止される。その段階で、更に、図7に示すように、強制的に上壁部12に力を加えて支持具1を押し下げていくと、上方に緩やかに湾曲している支持具1の上壁部12は緩やかに湾曲している中央部が押さえられることによって直線状の平坦面に近づく。つまり、押さえられた力に対応して中央部が沈むことによる傾斜角度分だけ側壁部13は上壁部12との屈曲部11aを支点として外方に回動し傾斜することとなる。それにより、支持具1の左右一対の固定部21,21は、相互が離間し、その下面22が螺子71の頭部72を押さえ付けながらその頭部72上を両外方に摺動し、やがて、螺子71の頭部72が本体部11の側壁部13の内部側に達した時点で、螺子71の頭部72から離脱して壁面W上に落下し当接する。そこで、支持具1の上壁部12の中央部への押圧を解除すれば、支持具1の側壁部13はその弾性力によって自ずと元の垂直状態に復帰する。
【0034】
これにより、支持具1の本体部11の下端部15を手で左右に押し広げることなく、単に上壁部12の中央を押さえ付けた後、その押さえを解除するのみの簡単な操作で、支持具1の固定部21は自然と螺子71の頭部72の下方に入り込み、螺子71は頭部通過空間16及び軸部移動空間27を介して固定部21の螺子挿通孔23内に挿入され、支持具1は保護ダクト61のカバー部材63を仮支持する状態となる。その後は、螺子71を本締めして壁面Wに螺着すればよい。
【0035】
なお、前述の新規に支持具1を壁面Wに固定して保護ダクト61を支持する場合においても、保護ダクト61内の冷媒管Pの交換、増設等のために支持具1を一旦取り外した後に再取付けする場合と同様に、予め壁面Wに螺子71を中途位置まで螺着しておき、以下、再取付けの場合と同様の要領で支持具1を壁面Wに固定することもできる。即ち、前述のように、支持具1を保護ダクト61に外嵌してから固定部21の螺子挿通孔23内に螺子71を挿通して壁面Wに螺着する手順で固定するのではなく、まず、保護ダクト61の連結部などの所定箇所において一対の固定部21,21の螺子挿通孔23,23と同ピッチの止着予定位置の目印を壁面W上に付し、この位置に螺子71を中途まで壁面Wに螺着しておく。次に、この状態で、保護ダクト61の上方から支持具1を降下させつつ左右一対の固定部21,21を押し広げた後、螺子71が本体部11の側壁部13の内部側に位置するようになったら、引張りによる拡開を解除して本体部11の側壁部13を弾性復帰させ、頭部通過空間16及び軸部移動空間27を介して螺子71を固定部21の螺子挿通孔23内に位置させる。或いは、支持具1を降下させてその両固定部21,21が左右一対の螺子71,71の頭部72,72に当接したら、更に強制的に支持具1の本体部11の上壁部12を押さえ付け、螺子71が本体部11の側壁部13の内部側に位置するようになったら、押さえを停止することによって本体部11の側壁部13を弾性復帰させ、頭部通過空間16及び軸部移動空間27を介して螺子71を固定部21の螺子挿通孔23内に位置させる。以下、螺子71の本締めを行なう。
【0036】
次に、本実施形態の支持具1の作用を説明する。
本実施形態の支持具1は、螺子71を壁面Wから取り外してしまうことなく、緩めた状態で、本体部11の一対の側壁部13,13の下端部15,15間を離間し拡開させて壁面Wから取り外すことができるので、壁面Wから螺子71を緩めた後は、螺子71に手を触れることなく単に支持具1を把持してこれを取り外すことができる。また、再度の取付けにおいても、壁面Wに螺着されている螺子71に支持具1を仮保持できるため、螺子71の本締めにおいて支持具1を保持している必要がない。つまり、これらの作業において、支持具1は壁面Wに螺着されている螺子71によって仮保持されるから、一度に多くの部材を把持しなくてもよく、作業性が良い。また、保護ダクト61のカバー部材63は支持具1によって仮支持した状態において、長手方向に引張ってその取付位置を調整することもできる。そして、螺子71の本締めにおいても、既に螺子71は中途まで壁面Wに螺着されているので、残りの部分を螺着するだけでよい。これらのことにより、支持具1の取付け及び取り外しを簡単かつ楽に効率良く短時間で行なうことができる。そして、これに伴い、保護ダクト61内の冷媒管Pの交換、増設及び点検も簡単かつ楽に行なうことができる。また、螺子71を壁面Wから取り外すことなく支持具1の着脱を行なうことができるので、作業時に螺子71を紛失することがなく、螺子71を保管、管理する必要もない。更に、従来、支持具を再取付けするときに発生した、前の螺子孔が壁面Wに残存して外観を低下させる不具合も生じることがない。
【0037】
また、新規に保護ダクト61を壁面Wに沿って布設し、支持具1を壁面Wに固定して保護ダクト61を支持する施工を行なうときにも、保護ダクト61を壁面Wに沿って布設した状態において、予め支持具1の固定部21の螺子挿通孔23に対応する止着予定位置に螺子71を壁面Wに中途まで螺着しておいてから、前述の支持具1の再取付けの場合と同要領で、本体部11の側壁部13の下端部15を互いに離間させて、或いは単に本体部11を上方から押さえ付けて、螺子71の頭部72が本体部11の側壁部13の内部側に達したら、頭部通過空間16及び軸部移動空間27を介して、螺子71を固定部21の螺子挿通孔23に導き、螺子71の本締め作業を行なうことができる。したがって、予め螺子71が壁面Wに螺着されているから、これに支持具1を仮保持させておくことができ、同様に、壁面Wへの支持具1の固定作業が楽になる。また、螺子71の壁面Wへの螺着作業を支持具1が存在しない広いスペースで行なうことができる。
【0038】
更に、支持具1の固定部21の軸部移動空間27は螺子71が保護ダクト61の布設方向と直交する方向に相対的に移動するものとなっている。このため、螺子71が少し緩んだ状態において、壁面Wに上下方向に布設されている保護ダクト61のカバー部材63が上方または下方に引張られたりすることによって、このカバー部材63を押圧、支持している支持具1にも同方向にずらそうとする力が作用したり、その他の外力が任意の方向から作用したとしても、支持具1は螺子71から壁面Wに沿う方向に移動し、更には外れてしまうことはない。即ち、従来の公報においては、螺子71が少し緩んだ状態において、外力が加わったときに、その作用する方向によっては、切欠き部の開口を通して螺子71から外れてしまうことがあるところ、本実施形態の支持具1は、軸部移動空間27が保護ダクト61の布設方向と直交し、通常の外力の作用方向とは異なる方向に形成されているから、螺子71からの抜脱が防止される。しかも、両固定部21は互いに反対方向に離間し、保護ダクト61の側壁65から離間するように移動することによってはじめて螺子71及び壁面Wから外れるのであるが、保護ダクト61に加わる外力が支持具1に作用するときに、固定部21を互いに反対方向に離間させ、保護ダクト61の側壁65から離間させる外力が加わることはない。このようなことから、支持具1は取付け、取り外し以外において、螺子71から抜脱するのが防止され、安定して壁面Wに固定される。また、従来公報のように、支持具を固定する都度、切欠き部の開口方向に注意を払う必要もない。
【0039】
加えて、支持具1の側壁部13の頭部通過空間16及び固定部21の軸部移動空間27を含んだこの部分全体が切欠のない枠状に形成されているので、構造上剛性、強度が大きく、固定部21周辺部分が変形したり破損したりするのが防止される。
【0040】
なお、支持具1は、上記のように、配線・配管材として保護ダクト61に取付けている場合には、カバー部材63を上方から押圧、支持して自重や外力によって下方にずれ落ちるのを防止できる。また、支持具1が保護ダクト61相互の連結部に取付けられた場合は、その部分の目隠しとなり、外観が向上する。更に、保護ダクト61が壁面Wに沿って水平方向に布設されている場合などにおいては、下方から保護ダクト61の荷重を支持する補強材としても機能する。
加えて、上記実施形態では、支持具1の再取付けは、保護ダクト61内の冷媒管Pの交換、増設等の場合に行なわれるが、保護ダクト61等の配線・配管材自体を交換等する場合にも同様に行なわれる。
ここで、この第1実施形態は、請求項1及び請求項2の態様に相当するものである。
【0041】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態の配線・配管材支持具を図8に基づいて説明する。なお、第2実施形態においては、前記支持具は螺子を取付ける固定部が左右いずれか一方のみに設けられたいわゆる片サドルであり、配線・配管材としては、電線管を例示する。ここで、図8は第2実施形態の配線・配管材支持具を示す斜視図である。
【0042】
図8において、支持具41は、配線・配管材としての電線管69をその周方向外面に沿って支持する本体部42と、本体部42の一方の端部43に設けられ、螺子71を介して壁面Wに固定される固定部21とを備えて成る。支持具41は、本体部42が電線管69の外形状に対応させて略円弧状に形成されている。この第2実施形態の支持具41は片サドルであり、片持ち構造となっているから、全体の剛性は割合大きくしてあり、ステンレスなどの金属材や合成樹脂材等により一体に形成されている。
【0043】
前記本体部42は、剛性は割合大きいものの、両端部を把持して互いに反対方向に強く引張って押し広げることにより、弾性的に円弧の曲率半径が変化し、両端部の間隔は拡大することが可能となっており、弾性的に電線管69の布設方向と直交する方向に撓み変形可能となっている。また、本体部42の固定部21側の端部43には、第1実施形態と同様の頭部通過空間44が形成されている。即ち、頭部通過空間44は本体部42の端部43にコ字状に切欠され、下方に開口するものとなっている。頭部通過空間44は螺子71の頭部72が電線管69の布設方向と直交する方向に貫通して内外に通過し得る大きさに形成されている。
【0044】
前記固定部21は、電線管69の長手方向と直交し、下面22が図示しない壁面に沿って当接するものとなっている。固定部21の略中央には、螺子71の軸部73が上下方向に挿通する螺子挿通孔23が設けられている。固定部21の上面24は前記螺子71の頭部72が壁面Wに向けて押圧する押圧面26となっている。更に、固定部21には、螺子挿通孔23と本体部42の頭部通過空間44との間に、第1実施形態と同様の軸部移動空間27が形成されている。なお、螺子71が不用意に螺子挿通孔23から軸部移動空間27を経て頭部通過空間44に移動するのをより確実に防止するために、必要に応じて、図8に示すように、上面24の頭部通過空間44寄りの部分に上方に隆起するリブ30等を設けてもよい。この場合、前記リブ30は請求項の螺子移動防止部に相当する。
【0045】
このように構成された第2実施形態の支持具41は、基本的には、第1実施形態の支持具1と同様にして、電線管69の新規の布設において支持具41を固定することができ、また、電線管69を仮支持させておいてこれを長手方向に引張ってその配設位置を調整することができる。そして、この支持具41は、布設後の電線管69の交換においては壁面に螺子71を螺着した状態で支持具41の取り外し及び再取付けを行なうことができ、第1実施形態の支持具1と同様に作用する。
【0046】
但し、第1実施形態の支持具1が本体部11の両端部に固定部21が設けられているのに対して、本体部42の一方の端部43のみに固定部21が設けられている点で相違するから、第1実施形態の支持具1と比較して、螺子71の螺着作業が簡略化する。なお、第2実施形態の支持具41は、本体部42の一方の端部43のみに固定部21が設けられた片持ち構造となっており、全体的な剛性も割合大きいので、固定部21の拡開には相当大きな引張力を必要とする。また、本体部42の頂部を押さえ付けるのみによって固定部21を移動させるのは困難であり、無理に押圧すれば、本体部42の他方の端部45が電線管69を押さえ付けて傷付けることにもなりかねないので、注意を要する。
【0047】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態の配線・配管材支持具を図9及び図10に基づいて説明する。なお、第3実施形態は、第2実施形態の支持具41と同様にいわゆる片サドルであるが、配線・配管材はほぼ全周を環状に抱持される構造となっている。配線・配管材として、第2実施形態と同様の電線管を例示する。ここで、図9は第3実施形態の配線・配管材支持具を示し、図2は支持具を壁面に固定するときの状態を示す。
【0048】
図9及び図10において、支持具51は、電線管69をその周方向外面に沿ってほぼ全周に至って環状に抱持する本体部52と、本体部52の両端部に互いに重合可能に設けられ、一体に貫通する螺子71を介して壁面Wに重合状態で固定される上下一対の下側固定部31と上側固定部32とからなる固定部とを備えて成る。下側固定部31及び上側固定部32は上下に重合したときに螺子71が一体に貫通する螺子挿通孔23をそれぞれ有している。支持具51は、単体状態では、本体部52が湾曲面に形成されており、電線管69の支持時に、両端部相互を連結すると、略円管状に形成され、電線管69をそのほぼ全周に至って環状に抱持するものとなっている。支持具51は合成樹脂等により一体に形成することができる。なお、上側固定部32は、請求項の壁面との非当接側の固定部に相当する。
【0049】
図9における支持具51は電線管69を支持する状態を示し、本体部52の一方の端部53は壁面Wと当接する平面に形成され、それより他方の端部54に至るまでの部分は電線管69の布設方向と直交する方向に弾性的に湾曲するようになっている。また、下側固定部31は本体部52の一方の端部53から同一平面状に延設されており、上側固定部32は本体部52の他方の端部54から約90度屈曲して延設されている。更に、本体部52における上側固定部32側の端部54には、前記各実施形態と同様の頭部通過空間55が形成されている。そして、上側固定部32の上面24には凹面部25が形成されており、その底面は螺子71の頭部72が上側固定部32を下側固定部31及び壁面Wに向けて押圧する押圧面26となっている。更に、上側固定部32には、螺子挿通孔23と本体部52の頭部通過空間55との間に、前記各実施形態と同様の軸部移動空間27が形成されている。
【0050】
このように構成された第3実施形態の支持具51は、基本的には、前記各実施形態の支持具と同様にして、電線管69の新規の布設において支持具51を固定することができ、また、電線管69を仮支持させておいてこれを長手方向に引張ってその配設位置を調整することができる。そして、この支持具51は、布設後の電線管69の交換においては、壁面Wに螺子71を螺着した状態で支持具51の取り外し及び再取付けを行なうことができ、前記各実施形態の支持具と同様に作用する。
但し、この支持具51は、本体部52の両端部に固定部が設けられてはいるものの、螺子71は両端部が重合した1箇所のみに取付けられるから、第1実施形態と比較して螺子71の螺着作業が簡略化する。
【0051】
また、特に、この第3実施形態の支持具51は、電線管69を新規に布設するに際し、下側固定部31の螺子挿通孔23に螺子71を挿通し、この螺子71を壁面Wに螺着することにより、壁面Wに仮保持される。ここで、支持具51を使用して電線管69を壁面Wに固定するに際しては、支持具51、電線管69、螺子71及び工具を把持し、取り扱わなければならないが、両手を使ってこれら全ての部材を一度に把持して固定することは面倒な作業となる。なお、磁性を帯びたドライバを用いたとしても、支持具51、電線管69及び工具を一度に保持しなければならない。しかし、この第3実施形態の支持具51は、上述のように、壁面Wに仮保持されるので、これらの各部材を一度に把持して作業するのではなく、作業を分割して行なうことができ、全体として作業を円滑にかつ確実に行なうことができる。即ち、まず、支持具51の下側固定部31の螺子挿通孔23に螺子71を挿通した後、支持具51から手を離した状態で工具を使用して螺子71を壁面Wに中途位置まで螺着する。次いで、電線管69を支持具51内に載置するとともに、図10に示すように、支持具51の上側固定部32を弾性的に外方に少し引張りつつ下側固定部31側に近接させる。続いて、前記引張りを解除して上側固定部32を弾性復帰させ、壁面Wに中途位置まで螺着されている螺子71を相対的に頭部通過空間55内に通し、軸部移動空間27内を移動させた後、螺子挿通孔23内に螺子71を収容する。これにより、電線管69は支持具51に仮保持される。そこで、螺子71を本締めすることにより、支持具51を強固に壁面Wに固定して電線管69の取付けが完了する。その結果、電線管69を固定する作業の間、両手で一度に多くの部材、工具を把持し、取り扱う面倒な作業から解放される。
【0052】
〈変形例〉
上記各実施形態の支持具においては、螺子71の頭部72が通過する頭部通過空間は、本体部の端部に貫通して形成しているが、他に、本体部の端部と固定部との双方に跨って形成してもよく、或いは、固定部において本体部の端部寄りの部分に上下方向に貫通して形成してもよいなど、広く本体部と固定部との隣接箇所に形成することができる。これを第1実施形態の変形例として具体的に示すと、まず、前者の場合、頭部通過空間は、上記第1実施形態においては、本体部11の側壁部13の下端部15に形成しているが、図11に示すように、一部を固定部21において本体部11の側壁部13寄りの部分にも形成し、本体部11の下端部15と固定部21とに跨って頭部通過空間17として形成することもできる。この場合は、螺子71の頭部72は相対的に固定部21の螺子挿通孔23から移動させてこの頭部通過空間17から下方または斜め下方に通過させて支持具1から離脱させることができる。即ち、軸部移動空間27が短縮され、螺子71を相対的に固定部21の螺子挿通孔23から本体部11の下端部15まで移動させることなく、その途中において下方または斜め下方に離脱させることができる。また、その逆の取着時には、下方または斜め下方から螺子71を前記頭部通過空間17に挿入し、相対的に軸部移動空間27内を移動させて螺子挿通孔23内に収容することができる。これにより、螺子71の移動量が少なくても頭部72の頭部通過空間16内への挿脱が可能となるから、支持具1の本体部11の両下端部15,15間を拡開する際の引張り量を小さくでき、支持具1の螺子71への着脱が楽になる。
【0053】
なお、上記第1〜第3実施形態及びこの変形例のように、頭部通過空間が本体部にまたは本体部と固定部とに跨って形成されている場合には、支持された配線・配管材の外面が頭部通過空間を閉塞するので、仮に螺子71が緩んだ状態にあって、螺子71の頭部72が頭部通過空間を通過しようとしても、配線・配管材の外面に当接して通過しにくく、支持具は外れにくい。つまり、頭部通過空間において螺子71の頭部72を通過させるには、支持具の本体部を配線・配管材の外面から離間するように撓ませる必要があるのであり、したがって、配線・配管材に外力が加わったとしても、これにより支持具が外れることはなく支持状態を維持することができる。
【0054】
次に、後者の場合、図12に示すように、頭部通過空間は固定部21のみに頭部通過空間18として設けることができる。この場合は、相対的な螺子71の移動量は更に短かくなり、僅かに移動させることにより、支持具1からの螺子71の離脱が可能となる。そして、本体部11の下端部15には頭部通過空間16が形成されず、平坦な閉塞面となっているから、この部分の強度が増すとともに、外部からの雨水、塵埃等が頭部通過空間16から内部に侵入し、配線・配管材との間に堆積するのを防止できる。但し、固定部21に頭部通過空間18を設けた分、本体部11の下端部15からの固定部21の側方への突出量は大きくなり、螺子挿通孔23の位置が本体部11の端部から側方に遠ざかり、本体部11の下端部15の壁面Wへの押圧力が少し小さくなる点に留意する必要がある。なお、この場合において、本体部11の下端部15からの固定部21の側方への突出長さを幾分でも短縮するために、図示しないが、本体部11の下端部15の固定部21側の側壁面に螺子71の頭部72の周縁部の入り込みを許容する逃がし凹面を形成してもよい。
【0055】
〈その他〉
ところで、上記第1、第3実施形態においては、固定部に螺着されている螺子71が仮りに緩んだときに軸部移動空間27を移動し、更には頭部通過空間から外れるのをより確実に防止するために固定部21の上面24に螺子移動防止部としての凹面部25を形成しているが、螺子移動防止部はこの形状に限られるものではなく、要するところ、螺子71の軸部73は軸部移動空間27側を除いて周囲を螺子挿通孔23の周壁によって壁面Wと平行する方向の移動は阻止されるため、支持具1の着脱を行なう作業時以外において、螺子71の軸部73が軸部移動空間27側に移動するのを阻止できればよく、各種形状に形成できる。例えば、図8に示した第2実施形態の支持具41のように、固定部の上面24においては凹面部25を形成することなく平坦面とし、頭部通過空間44側の部分のみに、螺子71の頭部72の周縁部と当接してその頭部72の移動を阻止する一対のリブ30,30と同様の突起部を設けてもよい。なお、第1実施形態の支持具1は、本体部11の両端部に固定部21が設けられているところ、本体部11の両端部を互いに反対方向に引張る外力が作用することは考えにくく、本来、第1実施形態の支持具1は螺子71から外れ難い構造となっているから、螺子移動防止部を全く設けないものとすることも可能である。
【0056】
また、上記各実施形態の頭部通過空間は、本体部11の端部をコ字状に切欠して形成しているが、この形状に限定されるものではなく、要するところ、螺子71の頭部72が通過可能であればよく、例えば、頭部72の中央断面形状に沿った形状とし、通過開口面積を最小にすれば、この部分の強度を多少大きくすることができる。
【0057】
更に、上記各実施形態においては、螺子71は固定部21の上面24から頭部72が上方に突出するタッピンねじ等を使用しているが、各種の螺子を使用でき、例えば、固定部21の上面24から頭部72が上方に突出しない皿ネジを使用することもできる。皿ネジを使用した場合には、螺子71の頭部72との引掛かりを防ぐことができる。なお、第1、第3実施形態において、螺子71の頭部72は固定部21における螺子移動防止部としての凹面部25内に嵌入されるから、上面24からの突出量は小さいものではある。
【0058】
そして、本発明は、第1実施形態の両サドル、第2、第3実施形態の片サドルに適用したものを例示しているが、これに限られるものではなく、配線・配管材を壁面Wに沿って支持する各種支持具に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1、41、51 支持具
11、42、52 本体部
15 下端部
16、17、18、44、55 頭部通過空間
21 固定部
23 螺子挿通孔
25 凹面部
26 押圧面
27 軸部移動空間
28 隣接部
30 リブ
32 上側固定部
61 保護ダクト
71 螺子
72 頭部
73 軸部
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線・配管材をその周方向外面に沿って支持する本体部と、
前記本体部の端部に設けられ、螺子を介して壁面に固定される固定部と
を備え、
前記本体部は、弾性的に前記配線・配管材の布設方向と直交する方向に撓み変形可能に形成され、
前記固定部は、前記螺子の軸部が挿通する螺子挿通孔と、前記螺子の頭部が前記壁面に向けて押圧する押圧面とを有し、
前記本体部と前記固定部との隣接箇所に、前記螺子の頭部が内外に通過可能な頭部通過空間が形成され、
前記固定部に、前記螺子挿通孔と前記頭部通過空間とに連通し、前記螺子が前記壁面に緩く螺着されている状態で、前記螺子の軸部が相対的に前記配線・配管材の布設方向と直交する方向に平行移動可能な軸部移動空間が形成されたことを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
前記固定部は、前記本体部の両端部に一対設けられたことを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。
【請求項3】
前記固定部は、前記本体部の一端部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−94800(P2011−94800A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270246(P2010−270246)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2007−200573(P2007−200573)の分割
【原出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】