説明

配線回路基板およびその製造方法

【課題】金属支持層を備える配線回路基板において、導体パターンの良否を精度よく検査することができる配線回路基板の製造方法、および、配線回路基板を提供すること。
【解決手段】
金属支持層2と、金属支持層2の上に形成されるベース絶縁層3と、ベース絶縁層3の上に形成される導体パターン4とを備える回路付サスペンション基板1の製造方法において、ベース絶縁層3の表面を粗化した後、波長435〜500nmの入射光31を発光する光源ユニット22と、カメラユニット23とを備える検査装置21を用いて、入射光31を、その光軸に対して0°超過30°以下の角度θを形成するように傾斜する傾斜光を含むように、回路付サスペンション基板1に照射しながら、カメラユニット23で導体パターン4を撮影し、その良否を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法、および、その方法を用いた配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路付サスペンション基板などの配線回路基板は、金属支持層、金属支持層の上に形成される絶縁層、および、絶縁層の上に形成される導体パターンを備えている。このような配線回路基板では、導体パターンに不良があると、接続信頼性が低下するため、導体パターンの良否を検査している。
【0003】
そのような検査には、検査光を導体パターンに入射させ、導体パターンから反射する検査光を検知することにより、導体パターンの良否を判定するAOI(光学式自動外観検査)装置が用いられている。
【0004】
例えば、絶縁膜と、絶縁膜の上に形成される配線パターンとを有する薄膜多層基板に、レーザー光を集光レンズによって絞りながら照射し、反射光を検出することにより、配線パターンの欠陥などを判別する薄膜多層基板製造方法が開示されている(下記、特許文献1参照。)。
【0005】
この方法では、配線パターンと絶縁膜との反射率の差が大きくなるように、450nm以下の波長を有するレーザー光を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−94594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、絶縁膜の下に金属支持層が設けられた配線回路基板を、上記した特許文献1に記載の方法を用いて検査する場合には、入射光の一部が、絶縁膜を透過して金属支持層の表面で反射し、その金属支持層における反射光が、絶縁膜における反射光と一緒に検出される場合がある。すなわち、金属支持層における反射光の影響により、絶縁膜における反射光の強度が強く検出される場合がある。
【0008】
このような場合には、配線パターンと絶縁膜との反射率の差が大きな特定波長のレーザー光を用いたとしても、配線パターンと絶縁膜とのコントラストが低下するという不具合がある。
【0009】
配線パターンと絶縁膜とのコントラストが低下すると、配線パターンと絶縁膜との境界が不鮮明になり、導体パターンの良否を精度よく検査することが困難になる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、金属支持層を備える配線回路基板において、導体パターンの良否を精度よく検査することができる配線回路基板の製造方法、および、配線回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明の配線回路基板の製造方法は、金属支持層を準備する工程と、前記金属支持層の上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の表面を粗化する工程と、前記絶縁層の上に導体パターンを形成する工程と、前記絶縁層および前記導体パターンに入射する入射光を発光する発光部と、前記入射光が反射された反射光を受光する受光部とを備える検査装置を用いて、前記導体パターンの良否を検査する工程とを備え、前記入射光は、波長が435〜500nmであり、その光軸に対して0°超過30°以下の角度を形成するように傾斜する傾斜光を含んでいることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の配線回路基板の製造方法では、算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.15〜1μmとなるように、前記絶縁層の表面を粗化することが好適である。
【0013】
また、本発明の配線回路基板の製造方法では、前記絶縁層に対する前記入射光の透過率が、30%以下であることが好適である。
【0014】
また、本発明の配線回路基板は、金属支持層と、前記金属支持層の上に形成される絶縁層と、前記絶縁層の上に形成される導体パターンとを備え、前記絶縁層は、表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が、0.15〜1μmであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配線回路基板の製造方法で得られた配線回路基板によれば、絶縁層の表面が粗化されている。また、配線回路基板を検査する検査装置からの入射光は、波長435〜500nmに調整されている。
【0016】
そのため、検査装置の発光部から発光された入射光のうち、絶縁層に入射した入射光は、絶縁層の表面で乱反射される。また、入射光は、絶縁層を透過しにくい波長(435〜500nm)に調整されているため、入射光が絶縁層を透過して金属支持層の表面に到達することを抑制することができる。さらに、入射光の一部が、絶縁層を透過して金属支持層の表面で反射されたとしても、その反射光も、絶縁層の表面で乱反射される。
【0017】
これにより、絶縁層および金属支持層の表面で反射された反射光は、絶縁層の表面での乱反射によって散乱され、受光部に受光されにくくなる。一方、導体パターンの表面で反射された反射光は、散乱されることなく、受光部に受光される。
【0018】
そのため、導体パターンの表面で反射された反射光が受光部において強く検出されるのに対して、絶縁層および金属支持層の表面で反射された反射光は、受光部において、より弱く検出される。
【0019】
その結果、導体パターンと絶縁層との間において、コントラストを向上させることができ、金属支持層を備える配線回路基板であっても、導体パターンの良否を精度よく検査することができる。
【0020】
しかも、入射光は、その光軸に対して0°超過30°以下の角度を形成するように傾斜する傾斜光を含んでいる。
【0021】
そのため、傾斜光を導体パターンの側面で反射させることができ、より精度よく導体パターンの良否を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態としての回路付サスペンション基板の断面図である。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板の製造工程を示す工程図であり、(a)は、金属支持層を準備する工程、(b)は、ベース絶縁層を形成する工程、(c)は、ベース絶縁層の表面を粗化する工程、(d)は、導体パターンを形成する工程、(e)は、カバー絶縁層を形成する工程を示す。
【図3】導体パターンの良否を検査する工程を説明するための説明図であって、検査装置の概略構成図を示す。
【図4】導体パターンの良否を検査する工程を説明するための説明図であって、検査されている導体パターンを示す要部拡大図である。
【図5】実施例における導体パターンの検査画像を示す。
【図6】比較例1における導体パターンの検査画像を示す。
【図7】比較例2における導体パターンの検査画像を示す。
【図8】比較例3における導体パターンの検査画像を示す。
【図9】比較例4における導体パターンの検査画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態としての回路付サスペンション基板の断面図である。なお、図1において、紙面左右方向を、回路付サスペンション基板の幅方向とし、紙面上下方向を、回路付サスペンション基板の厚み方向とし、紙厚方向を、回路付サスペンション基板の長手方向とする。
【0024】
回路付サスペンション基板1は、図1に示すように、金属支持層2と、絶縁層の一例としてのベース絶縁層3と、導体パターン4と、カバー絶縁層5とを備えている。
【0025】
金属支持層2は、シート形状に形成されている。
【0026】
ベース絶縁層3は、金属支持層2の上において、導体パターン4が形成される部分に所定の形状で形成されている。
【0027】
導体パターン4は、ベース絶縁層3の上において、所定のパターンで形成されている。具体的には、幅方向に沿って互いに間隔を隔てて並列配置される複数(4つ)の配線6と、各配線6の長手方向一端部にそれぞれ設けられる各ヘッド側端子(図示せず)と、各配線6の長手方向他端部にそれぞれ設けられる各外部側端子(図示せず)とを備えている。
【0028】
カバー絶縁層5は、ベース絶縁層3の上において、各配線6を被覆し、各ヘッド側端子(図示せず)および各外部側端子(図示せず)を露出するように、所定の形状で形成されている。
【0029】
図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の製造工程を示す工程図である。なお、図2は、1つの回路付サスペンション基板1について示しているが、この実施形態では、回路付サスペンション基板1は、個別に製造されるのではなく、複数の回路付サスペンション基板1が同時に製造される。
【0030】
詳しくは、長尺な金属支持層2に、互いに間隔を隔てて並列配置されるように、複数の回路付サスペンション基板1がパターニングされることにより、複数の回路付サスペンション基板1を一体的に有する回路付サスペンション基板集合シート11が製造される。そして、例えば、回路付サスペンション基板1を実装するときには、回路付サスペンション基板集合シート11から、回路付サスペンション基板1を個別に取り外して実装する。
【0031】
回路付サスペンション基板1を製造するには、図2(a)に示すように、まず、金属支持層2を準備する。
【0032】
金属支持層2は、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などの金属材料、好ましくは、ステンレスから形成されている。
【0033】
金属支持層2の厚みは、例えば、10〜50μm、好ましくは、15〜35μmである。
【0034】
次いで、回路付サスペンション基板1を製造するには、図2(b)に示すように、金属支持層2の表面にベース絶縁層3を形成する。
【0035】
ベース絶縁層3は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂から形成する。好ましくは、ベース絶縁層3は、熱寸法安定性などの観点から、ポリイミドから形成する。
【0036】
ベース絶縁層3を形成するには、金属支持層2の表面に、例えば、感光性の合成樹脂の溶液を塗布し、乾燥後、ベース絶縁層3が形成されるパターンで露光および現像し、必要により加熱硬化させる。
【0037】
また、ベース絶縁層3は、例えば、合成樹脂を上記したパターンのフィルムに予め形成して、そのフィルムを、金属支持層2の表面に、公知の接着剤層を介して貼着することにより形成することもできる。
【0038】
ベース絶縁層3の厚みは、例えば、3〜20μm、好ましくは、3〜10μmである。
【0039】
ベース絶縁層3の透過率は、波長500nm以下において、30%以下であり、波長550nm以上において、30%以上である。
【0040】
ベース絶縁層3の波長435〜500nmの光に対する反射率(入射角5°)は、例えば、20%以下、好ましくは、15%以下である。
【0041】
次いで、回路付サスペンション基板1を製造するには、図2(c)に示すように、ベース絶縁層3の表面を粗化する。
【0042】
ベース絶縁層3の表面を粗化する方法として、例えば、プラズマ処理、例えば、アルカリ性溶液を用いたケミカルエッチング処理、例えば、サンドブラスト、ウェットブラスト、ブラシ研磨、バフ研磨などの研磨処理、例えば、エンボス加工などの凹凸処理などが挙げられる。
【0043】
具体的には、レーザー顕微鏡を用いた表面観察から、算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が、例えば、0.15〜1μm、好ましくは、0.2〜0.6μmとなるように、ベース絶縁層3の表面を粗化する。
【0044】
ベース絶縁層3の算術表面粗さRaが上記範囲未満であると、後述する検査装置21からの入射光の、ベース絶縁層3の表面における反射を抑制することが困難な場合がある。また、ベース絶縁層3の算術表面粗さRaが上記範囲を超過すると、導体パターン4が歪んで形成されたり、部分的に金属支持層2が露出して、金属支持層2と導体パターン4とが短絡するおそれがあるなど、ベース絶縁層3の本来の機能を十分に得られない場合がある。
【0045】
次いで、回路付サスペンション基板1を製造するには、図2(d)に示すように、ベース絶縁層3の上に、導体パターン4を形成する。
【0046】
導体パターン4は、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料から形成される。好ましくは、導体パターン4は、光に対する反射特性の観点から、銅から形成される。
【0047】
導体パターン4を形成するには、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が用いられ、好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0048】
アディティブ法では、具体的には、まず、ベース絶縁層3を含む金属支持層2の表面に、導体種膜を、スパッタリング法などにより形成する。次いで、その導体種膜の表面に、めっきレジストを、導体パターン4の反転パターンで形成する。その後、めっきレジストから露出する、ベース絶縁層3の導体種膜の表面に、電解めっきにより、導体パターン4を形成する。その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体種膜を除去する。
【0049】
また、導体パターン4は、鏡面光沢度(入射角45度)が、例えば、400〜1200%、好ましくは、600〜1200%以上である。鏡面光沢度が上記した範囲にあれば、反射光32(後述)の強度を高めて、得られる導体パターン4の画像をより一層鮮明にすることができる。
【0050】
なお、鏡面光沢度は、JIS Z 8741−1997「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して、入射角45度にて測定することができる。このような鏡面光沢度は、通常の光沢度計によって測定することができる。
【0051】
また、導体パターン4の波長435〜500nmの光に対する反射率(入射角5°)は、例えば、20%以上、好ましくは、30%以上である。また、導体パターン4の波長550〜850nmの光に対する反射率(入射角5°)は、例えば、75%以上、好ましくは、85%以上である。反射率が上記した範囲にあれば、反射光32(後述)の強度を高めて、得られる導体パターン4の画像を鮮明にすることができる。
【0052】
さらに、導体パターン4の算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)は、例えば、0.02〜0.15μm、好ましくは、0.02〜0.1μmである。
【0053】
導体パターン4の算術平均粗さRaが上記した範囲にあれば、反射光32(後述)の強度を高めて、得られる導体パターン4の画像を鮮明にすることができる。
【0054】
導体パターン4の厚みは、例えば、3〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。また、各配線6の幅は、同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmであり、各配線6間の間隔は、同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜200μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0055】
次いで、回路付サスペンション基板1を製造するには、導体パターン4の良否を検査する。
【0056】
導体パターンの良否を検査するには、図3および図4に示すように、検査装置21を使用する。
【0057】
検査装置21は、回路付サスペンション基板1の導体パターン4の良否を検査するためのAOI装置であって、回路付サスペンション基板1への入射光31の光軸30と、回路付サスペンション基板1からの反射光32の光軸とが同軸となるように構成されており、いわゆる同軸照明による検知方式が採用されている。
【0058】
検査装置21は、発光部としての光源ユニット22と、受光部としてのカメラユニット23とを備えている。
【0059】
光源ユニット22は、回路付サスペンション基板1の表面に対して、間隔を隔てて配置されており、光源24、ハーフミラー25および光集束部材26を備えている。
【0060】
光源24は、入射光31を発光し、例えば、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、白熱灯、ハロゲン灯などを備え、好ましくは、入射光31の波長の観点から、LEDを備える。光源24は、より好ましくは、整列配置された複数のLEDを備えている。
【0061】
光源24から発光される入射光31の波長は、例えば、435〜500nm、好ましくは、435〜485nmである。入射光31の波長が上記範囲内であれば、入射光31がベース絶縁層3を透過して金属支持層2の表面に到達することを抑制することができ、金属支持層2における入射光31の反射を抑制することができる。
【0062】
ハーフミラー25は、公知のハーフミラーからなり、光源24に対して間隔を隔てて対向配置され、光源24からの入射光31を、その入射方向に対して略直交方向に反射させるように、光源24からの入射光31の光軸30に対して、約45°の角度を形成するように傾斜されている。
【0063】
光集束部材26は、例えば、光学レンズからなり、光源24とハーフミラー25との間に配置されており、光源24からの入射光31を、ハーフミラー25へ向かうに従って集束させる。
【0064】
これにより、光集束部材26によって集束された入射光31には、光集束部材26の焦点に向かうように、その光軸30に対して傾斜する傾斜光が含まれる。また、ハーフミラー25は、傾斜光を含んだ入射光31を反射するので、ハーフミラー25によって反射された入射光31にも、傾斜光が含まれる。
【0065】
光集束部材26は、入射光31を、その光軸30に対して、例えば、0°超過30°以下の角度θを形成する傾斜光を含むように、集束させる。
【0066】
入射光に傾斜光が含まれていない(すなわち、光軸30に沿う光(光軸30との角度θが0°の光)のみ)と、鮮明な画像を得ることが困難である。
【0067】
また、入射光31の光軸30と傾斜光との角度θが上記範囲を超えると、ベース絶縁層3の表面における入射光31の反射を抑制することが困難になる。
【0068】
そして、光源ユニット22は、ハーフミラー25によって反射された入射光31が、回路付サスペンション基板1の厚み方向に沿って入射されるように(入射光31の光軸30が回路付サスペンション基板1の厚み方向に沿うように)、設けられている。
【0069】
カメラユニット23は、光源ユニット22のハーフミラー25に対して、回路付サスペンション基板1と反対側に間隔を隔てて対向配置されている。カメラユニット23は、例えば、近赤外線カメラ、CCDカメラなどのカメラを備え、好ましくは、汎用性の観点から、CCDカメラを備えている。
【0070】
そして、検査装置21を用いて検査するには、検査対象となる回路付サスペンション基板1の導体パターン4に入射光31が照射されるように、回路付サスペンション基板集合シート11を搬送する。
【0071】
すると、入射光31のうち、各配線6に入射された入射光31は、各配線6の表面で反射される。各配線6の表面で反射された反射光32は、ハーフミラー25を透過してカメラユニット23に受光される。
【0072】
一方、入射光31のうち、ベース絶縁層3に入射された入射光31は、ベース絶縁層3の表面で散乱される。また、ベース絶縁層3を透過して金属支持層2の表面で反射された反射光32も、ベース絶縁層3の表面で散乱される。
【0073】
つまり、ベース絶縁層3および金属支持層2の表面で反射された反射光32は、わずかにカメラユニット23に向かって反射された分が、カメラユニット23に受光される。
【0074】
これにより、回路付サスペンション基板1の導体パターン4をカメラユニット23で撮影すると、各配線6の表面で反射された反射光32が明るく撮影されるのに対して、ベース絶縁層3および金属支持層2の表面で反射された反射光32は、より暗く撮影される。
【0075】
そして、カメラユニット23で撮影された画像において、導体パターン4の欠陥部分および/または短絡部分が検出された場合には、導体パターン4の形状が不良であると判定し、導体パターン4の欠陥部分および短絡部分が検出されない場合には、導体パターン4の形状が正常であると判定する。
【0076】
次いで、回路付サスペンション基板1を製造するには、図2(e)に示すように、ベース絶縁層3の上に、導体パターン4を被覆するように、カバー絶縁層5を形成する。
【0077】
カバー絶縁層5を形成する絶縁材料としては、上記したベース絶縁層3を形成する絶縁材料と同様の絶縁材料が用いられ、好ましくは、光に対する透過特性などの観点から、ポリイミドが用いられる。
【0078】
カバー絶縁層5は、ベース絶縁層3の表面に、配線6を被覆し、かつ、端子部を露出するパターンで形成されている。カバー絶縁層5の厚みは、例えば、1〜30μm、好ましくは、2〜20μmである。
【0079】
このようにして、回路付サスペンション基板1を得る。
【0080】
この回路付サスペンション基板1の製造方法によって製造された回路付サスペンション基板1によれば、図3および図4に示すように、ベース絶縁層3の表面が粗化されている。また、回路付サスペンション基板1を検査する検査装置21からの入射光31は、波長435〜500nmに調整されている。
【0081】
そのため、入射光31のうち、ベース絶縁層3に入射した入射光31は、ベース絶縁層3の表面で乱反射される。また、入射光31は、ベース絶縁層3を透過しにくい波長(435〜500nm)に調整されているため、入射光31がベース絶縁層3を透過して金属支持層2の表面に到達することを抑制することができる。さらに、入射光31の一部が、ベース絶縁層3を透過して金属支持層2の表面で反射されたとしても、その反射光32も、ベース絶縁層3の表面で乱反射される。
【0082】
これにより、ベース絶縁層3および金属支持層2の表面で反射された反射光32は、ベース絶縁層3の表面での乱反射によって散乱され、カメラユニット23に受光されにくくなる。一方、導体パターン4の表面で反射された反射光32は、散乱されることなく、カメラユニット23に受光される。
【0083】
そのため、導体パターン4の表面で反射された反射光32がカメラユニット23において明るく撮影されるのに対して、ベース絶縁層3および金属支持層2の表面で反射された反射光32は、カメラユニット23において、より暗く撮影される。
【0084】
その結果、導体パターン4とベース絶縁層3との間において、コントラストを向上させることができ、金属支持層2を備える回路付サスペンション基板1であっても、導体パターン4の良否を精度よく検査することができる。
【0085】
しかも、入射光31は、その光軸30に対して0°超過30°以下の角度θを形成するように傾斜する傾斜光を含んでいる。
【0086】
そのため、傾斜光を導体パターン4の側面で反射させることができ、より精度よく導体パターン4の良否を検査することができる。
【0087】
また、この回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.15〜1μmとなるように、ベース絶縁層3の表面を粗化する。
【0088】
そのため、ベース絶縁層3に入射された入射光31や、金属支持層2に反射された反射光32を効率よく散乱させることができ、導体パターン4とベース絶縁層3との間において、コントラストをより向上させることができる。
【0089】
また、この回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、ベース絶縁層3に対する入射光31の透過率が、30%以下である。
【0090】
そのため、入射光31がベース絶縁層3を透過して金属支持層2の表面に到達することをより抑制することができる。
【0091】
なお、上記した実施形態では、導体パターン4を形成する前に、ベース絶縁層3を粗化したが、導体パターン4を形成した後に、導体パターン4が形成されている部分以外のベース絶縁層3を粗化することもできる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されることはない。
【0093】
実施例
まず、厚み25μmのステンレスからなる金属支持層を用意し(図2(a)参照)、次いで、金属支持層の表面に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを塗布し、乾燥後、露光および現像し、さらに加熱硬化することにより、厚み5μmのポリイミドからなるベース絶縁層を、上記したパターンで形成した(図2(b)参照)。
【0094】
ベース絶縁層の透過率は、波長450nmにおいて、14%であり、波長620nmにおいて、45%であった。
【0095】
次いで、ベース絶縁層の表面をサンドブラストによって粗化処理した(図2(c)参照)。処理後のベース絶縁層の算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)は、0.3μmであった。
【0096】
次いで、金属支持層を含むベース絶縁層の表面に、導体薄膜として厚み0.03μmのクロム薄膜と厚み0.07μmの銅薄膜とを、クロムスパッタリングと銅スパッタリングとによって順次形成した。続いて、導体パターンと反転パターンのめっきレジストを、導体薄膜の表面に形成し、その後、めっきレジストから露出する導体薄膜の表面に、厚み10μmの導体パターンを、電解銅めっきにより形成した。次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の導体薄膜を、化学エッチングにより除去した(図2(d)参照)。
【0097】
導体パターンの鏡面光沢度は、800%であった。
【0098】
また、導体パターンの反射率(入射角5°)は、波長450nmにおいて、45%であり、波長620nmにおいて、90%であった。
【0099】
また、導体パターンの算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)は、0.06μmであった。
【0100】
次いで、上記した検査装置を用いて、波長450nmの入射光を、その光軸に対して0°超過30°以下の角度を形成する傾斜光を含むように集光させながら、導体パターンおよびベース絶縁層に照射し、その反射光をCCDカメラによって受光して検査画像を得た(図5参照)。得られた検査画像を解析することにより、導体パターンの良否を検査した。また、得られた検査画像の画質を評価した。結果を下記表1に示す。
【0101】
次いで、導体パターンを含むベース絶縁層の表面に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを塗布し、乾燥後、露光および現像し、さらに加熱硬化することにより、厚み5μmのポリイミドからなるカバー絶縁層を、配線を被覆し、ヘッド側端子および外部側端子を露出するパターンで形成した(図2(e)参照)。
【0102】
これにより、回路付サスペンション基板を得た。
【0103】
比較例1
ベース絶縁層を粗化処理しなかった以外は、実施例1と同様にして、導体パターンの良否を検査し、回路付サスペンション基板を得た。得られた検査画像(図6参照)の画質を下記表1に示す。
【0104】
比較例2
入射光の波長を620nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、導体パターンの良否を検査し、回路付サスペンション基板を得た。得られた検査画像(図7参照)の画質を下記表1に示す。
【0105】
比較例3
入射光を、傾斜光を含まないように(すなわち、光軸に沿う光のみ)照射した以外は、実施例1と同様にして、導体パターンの良否を検査し、回路付サスペンション基板を得た。得られた検査画像(図8参照)の画質を下記表1に示す。
【0106】
比較例4
入射光を、その光軸に対して0°超過50°以下の角度を形成する傾斜光を含むように集光させながら照射した以外は、実施例1と同様にして、導体パターンの良否を検査し、回路付サスペンション基板を得た。得られた検査画像(図9参照)の画質を下記表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
<画質の評価基準>
実施例および各比較例で得られた検査画像(図5〜図9参照)を観察し、導体パターンおよび欠陥部が鮮明に撮影されているか評価した。
○:導体パターンまたは欠陥部が鮮明であった。
△:導体パターンまたは欠陥部がやや不鮮明であった。
×:導体パターンまたは欠陥部がぼやけて判別しにくかった。
【0109】
実施例で得られた検査画像(図5参照)では、導体パターンとベース絶縁層とのコントラストを向上させることができ、導体パターンおよび欠陥部を鮮明に撮影することができた。
【0110】
比較例1、2、4で得られた検査画像(図6、図7、図9参照)では、画像全体が白ぼけて、導体パターンとベース絶縁層とのコントラストを得ることが困難であり、導体パターンを鮮明に撮影することが困難であった。
【0111】
また、比較例3で得られた検査画像(図8参照)では、導体パターンとベース絶縁層とのコントラストは得られたものの、欠陥部を鮮明に撮影することが困難であった。
【符号の説明】
【0112】
1 回路付サスペンション基板
2 金属支持層
3 ベース絶縁層
4 導体パターン
21 検査装置
22 光源ユニット
23 カメラユニット
30 光軸
31 入射光
32 反射光
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層を準備する工程と、
前記金属支持層の上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面を粗化する工程と、
前記絶縁層の上に導体パターンを形成する工程と、
前記絶縁層および前記導体パターンに入射する入射光を発光する発光部と、前記入射光が反射された反射光を受光する受光部とを備える検査装置を用いて、前記導体パターンの良否を検査する工程と
を備え、
前記入射光は、波長が435〜500nmであり、その光軸に対して0°超過30°以下の角度を形成するように傾斜する傾斜光を含んでいることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.15〜1μmとなるように、前記絶縁層の表面を粗化することを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層に対する前記入射光の透過率が、30%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項4】
金属支持層と、
前記金属支持層の上に形成される絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成される導体パターンと
を備え、
前記絶縁層は、表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が、0.15〜1μmであることを特徴とする、配線回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59756(P2012−59756A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198788(P2010−198788)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】