説明

配線回路基板の製造方法

【課題】ロール搬送での蛇行を防止することができ、かつ、光透過性保護フィルムを積層しても、感光性ソルダレジスト層との間に気泡が混入することを防止することができる、配線回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】長尺基材1の表面に、アディティブ法によって導体パターンを形成した後、長尺基材1の幅よりも狭い幅の幅狭補強シート7を、長尺基材1の裏面に設ける。長尺基材1の表面に、導体パターンを被覆する感光性ソルダレジスト層10を形成した後、感光性ソルダレジスト層10の表面に、光透過性保護フィルム11を積層する。光透過性保護フィルム11を介して感光性ソルダレジスト層10を露光し、光透過性保護フィルム11を剥離後、感光性ソルダレジスト層10を、現像後、加熱により硬化させ、幅狭補強シート7を剥離して、フレキシブル配線回路基板を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法、詳しくは、長尺基材をロール搬送しながら製造する配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板の生産効率を向上させるべく、長尺基材をロール搬送しながら、その長尺基材の表面に、導体パターンなどを形成するロール・トゥ・ロール法が知られている。
また、電子部品の軽薄短小化に伴なって、配線回路基板も薄型化する傾向にあるが、薄い長尺基材をロール搬送すると、折れやしわを生ずるため、これを防止すべく、薄型の銅張積層板の表面に、キャリアフィルムを貼り合わせることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、感光性ソルダレジストを、ロールコータによって塗工する方法において、レジスト表面への異物の付着を防止するために、レジスト層を乾燥してレジスト層内の溶媒成分を揮発させた後、該レジスト層表面に光透過性の保護フィルムをラミネートし、該保護フィルムの上にソルダレジストパターンを設けて露光した後、保護フィルムを除去し、現像することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−132628号公報
【特許文献2】特開2004−79844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、導体パターンの微細化に伴なって、電解めっきにより導体パターンを形成するアディティブ法が普及している。しかし、電解めっきにより導体パターンを形成すると、電解めっきでは、一般に、長尺基材の幅方向両端部が幅方向中央部よりも電流密度が高くなるために、電解めっきの析出が促進され、長尺基材の幅方向両端部の導体パターンの厚みが、幅方向中央部の導体パターンの厚みよりも、厚くなる傾向にある。
【0005】
このような長尺基材の表面に、導体パターンを被覆するように、感光性ソルダレジストをロールコータによって塗工すると、長尺基材の幅方向両端部に形成される厚みの厚い導体パターンと、ロールコータとが接触して、ロール搬送に蛇行を生じるという不具合がある。
また、感光性ソルダレジストの表面に、保護フィルムを積層するときには、上下1対のニップロールによって、長尺基材と保護フィルムとを挟持して、加圧しつつ搬送するが、長尺基材の幅方向両端部の導体パターンの厚みが、幅方向中央部の導体パターンの厚みよりも厚いと、その幅方向両端部近傍において加圧が不均一になり、感光性ソルダレジストと保護フィルムとの間に気泡が混入する。すると、その後の露光時において、光が散乱するため、現像時にピンホールを生じるという不具合がある。
【0006】
本発明の目的は、ロール搬送での蛇行を防止することができ、かつ、光透過性保護フィルムを積層しても、感光性ソルダレジスト層との間に気泡が混入することを防止することができる、配線回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の配線回路基板の製造方法は、長尺基材の表面に、電解めっきにより導体パターンを形成する工程と、前記長尺基材における前記導体パターンが形成されている表面と反対側の裏面に、前記長尺基材の幅よりも狭い幅の補強シートを設ける工程と、前記長尺基材の表面に、前記導体パターンを被覆するように、感光性ソルダレジスト層を形成する工程とを備えていることを特徴としている。
【0008】
この方法によれば、導体パターンが、電解めっきにより、長尺基材の幅方向中央部の厚みよりも、幅方向両端部の厚みが厚く形成されていても、補強シートが、長尺基材の幅よりも狭い幅で設けられているので、長尺基材は、幅方向両端部において撓むことができる。そのため、長尺基材の表面に感光性ソルダレジスト層を形成するときには、感光性ソルダレジストの塗工手段から離間するように、長尺基材の幅方向両端部を撓ませて、厚みが厚く形成されている導体パターンを、感光性ソルダレジストの塗工手段と接触しないようにすることができる。その結果、長尺基材を、ロール搬送しつつその表面に感光性ソルダレジスト層を塗工しても、確実な搬送を確保することができる。
【0009】
また、本発明の配線回路基板の製造方法では、前記感光性ソルダレジスト層の表面に、光透過性保護フィルムを積層する工程と、前記光透過性保護フィルムを介して前記感光性ソルダレジスト層を露光する工程とを備えていることが好適である。
感光性ソルダレジスト層の表面に、光透過性保護フィルムを積層した後、その光透過性保護フィルムを介して感光性ソルダレジスト層を露光すれば、たとえ、感光性ソルダレジスト層の表面にタック性があっても、その感光性ソルダレジスト層の表面に、貼着を防止しつつ長尺基材を重ねて巻回することができながら、光透過性保護フィルムを介して、感光性ソルダレジスト層を露光することができる。
【0010】
しかも、光透過性保護フィルムを積層するときには、たとえ、導体パターンにおいて、長尺基材の幅方向中央部の厚みよりも、幅方向両端部の厚みが厚く形成されていても、光透過性保護フィルムの積層手段から離間するように、長尺基材の幅方向両端部を撓ませることにより、光透過性保護フィルムを均一な圧力で積層することができる。その結果、感光性ソルダレジスト層と光透過性保護フィルムとの間に気泡が混入することを防止することができ、その後の露光時において、光の散乱を抑制して、現像時にピンホールが生じることを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、長尺基材を、ロール搬送しつつその表面に感光性ソルダレジスト層を塗工しても、確実な搬送を確保することができる。また、感光性ソルダレジスト層の表面に、光透過性保護フィルムを積層しても、感光性ソルダレジスト層との間に気泡が混入することを防止することができ、現像時にピンホールが生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態を示す製造工程図、図2は、その一実施形態を実施するための製造装置の概略構成図である。
図2において、この製造装置は、ロール・トゥ・ロール法により、配線回路基板を製造するために用いられ、互いに間隔を隔てて配置される巻出ロール21および巻取ロール22を備えている。
【0013】
ロール・トゥ・ロール法では、例えば、後述する各工程ごとに、巻出ロール21にロール状に巻回された長尺基材1を、巻取ロール22に向けて巻き出し、巻取ロール22で巻き取るようにロール搬送しており、このロール搬送の途中において、以下に述べる図1に示す各工程を順次実施している。なお、長尺基材1を巻き取った巻取ロール22は、次の工程において、そのまま巻出ロール21として用いることができる。
【0014】
以下、この製造装置を用いて、ロール・トゥ・ロール法により、配線回路基板として、フレキシブル配線回路基板を製造する方法を、図1を参照して説明する。
この方法では、まず、図1(a)に示すように、長尺基材1を用意する。長尺基材1は、フレキシブル配線回路基板のベース絶縁層を構成するものであって、そのようなベース絶縁層に用いられるものであれば、特に制限されないが、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂シート(樹脂フィルム)が用いられ、好ましくは、ポリイミドシートが用いられる。
【0015】
長尺基材1の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜30μmである。このような厚みの長尺基材1を用いれば、フレキシブル配線回路基板の薄型化を図ることができる。また、長尺基材1は、その幅が、例えば、100〜500mm、好ましくは、150〜350mmで、その長さが、例えば、10〜1500m、好ましくは、100〜300mのテープ状の長尺シートとして、巻出ロール21に巻回された状態で用意される。
【0016】
次いで、この方法では、アディティブ法によって導体パターン3を微細に形成するために、図1(b)示すように、長尺基材1の全面に、金属薄膜2を形成する。金属薄膜2の形成は、特に制限されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などが用いられる。好ましくは、スパッタリング法が用いられる。また、金属薄膜2を形成するための金属は、クロムや銅などが好ましく用いられる。
【0017】
より具体的には、例えば、長尺基材1の全面に、クロム薄膜と銅薄膜とをスパッタリング法によって、順次形成する。また、このような金属薄膜2は、クロム薄膜の厚みが、例えば、5〜50nm、銅薄膜の厚みが、例えば、50〜500nmとなるように設定する。なお、この金属薄膜2を形成する工程においては、通常、長尺基材1に大きな負荷が作用しないため、次に述べる幅広補強シート5の貼着は不要である。
【0018】
次いで、この方法では、図1(c)に示すように、金属薄膜2の上に、導体パターン3の反転パターンでめっきレジスト4を形成する。めっきレジスト4は、例えば、金属薄膜2の上に、感光性ドライフィルムレジストを貼着し、あるいは、液状レジストを塗布および乾燥し、その後に、露光および現像する公知のパターンニング方法により、導体パターン3の反転パターンとして形成する。
【0019】
なお、このめっきレジスト4を形成する工程、および、次に述べる導体パターン3を形成する工程では、長尺基材1に幅広補強シート5を設けておくことが好適である。
幅広補強シート5は、長尺基材1におけるめっきレジスト4が形成される表面と反対側の裏面に、貼着する。幅広補強シート5は、例えば、上記と同様の樹脂シート(樹脂フィルム)を、粘着剤を介して貼着することにより、設けることができる。また、例えば、上記と同様の感光性ドライフィルムレジストを貼着し、あるいは、液状レジストを塗布および乾燥することにより(ただし、露光および現像はしない。)、設けることもできる。
【0020】
この幅広補強シート5の厚みは、例えば、20〜200μm、好ましくは、50〜150μmであり、その幅が、長尺基材1の幅以上であることが好適である。
その後、この方法では、図1(d)に示すように、金属薄膜2におけるめっきレジスト4から露出する部分に、電解めっきにより導体パターン3を形成する。導体パターン3を形成するための導体は、電解めっきできれば、特に制限されず、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などが用いられ、好ましくは、銅が用いられる。また、導体パターン3は、後述する幅方向中央部の厚みが、例えば、5〜20μm、好ましくは、8〜12μmであり、複数の配線6が長尺基材1の長手方向に沿って互いに間隔を隔てて並列配置される微細な配線回路パターンとして形成する。なお、各配線6の幅は、例えば、5〜50μmで、各配線6間の間隔は、例えば、5〜50μmに設定される。
【0021】
このような導体パターン3は、より具体的には、めっきレジスト4の形成後に、長尺基材1を、巻出ロール21と巻取ロール22との間において、めっき浴(図示せず。)に連続的に通過させながら、電解めっき、好ましくは、銅めっきすることにより、形成する。
この電解めっきでは、長尺基材1の幅方向(長尺基材1の長手方向に直交する方向)両端部の電流密度が、幅方向中央部の電流密度よりも高くなるため、幅方向両端部において電解めっきの析出が促進される。そのため、長尺基材1の幅方向両端部の導体パターン3の配線6の厚みが、幅方向中央部の導体パターン3の配線6の厚みよりも、幅方向外方へ向かうに従って、厚くなる。より具体的には、例えば、幅方向中央部における導体パターン3の配線6の厚みを100%とすると、幅方向両端部における導体パターン3の配線6の厚みが、105〜150%となる。
【0022】
そして、図1(e)に示すように、めっきレジスト4を、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法または剥離によって除去した後、図1(f)に示すように、導体パターン3から露出する金属薄膜2を、同じく、化学エッチング(ウェットエッチング)など公知のエッチング法により除去する。
次いで、この方法では、上記した幅広補強シート5が設けられている場合には、それを剥離した後、図1(g)に示すように、長尺基材1における導体パターン3が形成されている表面と反対側の裏面に、長尺基材1の幅よりも狭い幅の本発明の補強シートとしての幅狭補強シート7を設ける。
【0023】
幅狭補強シート7は、例えば、上記と同様の樹脂シート(樹脂フィルム)、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、その幅が、例えば、90〜498mm、好ましくは、145〜345mmのものが用いられる。また、幅狭補強シート7の幅は、長尺基材1の幅を100%として、例えば、90.0〜99.6%、さらには、96.7〜98.6%であることが好適である。
【0024】
また、幅狭補強シート7の厚みは、例えば、20〜200μm、好ましくは、50〜150μmである。
また、幅狭補強シート7を設けるには、例えば、公知の粘着剤を介して、長尺基材1の裏面に、幅狭補強シート7を貼着する。この貼着においては、幅狭補強シート7が、厚みの厚い配線6が形成されている長尺基材1の幅方向両端部と重ならないようにして、長尺基材1の幅方向両端部にマージン部分8が形成されるように、幅狭補強シート7を長尺基材1に貼着する。各マージン部分8の幅は、より具体的には、1〜10mm、さらには、2〜5mmに設定することが好適である。これによって、幅狭補強シート7は、その幅方向両端縁が、長尺基材1の幅方向両端縁に対して、1〜10mm内側、さらには、2〜5mm内側となるように、長尺基材1に設けられる。
【0025】
次いで、この方法では、図1(h)に示すように、長尺基材1の表面に、導体パターン3を被覆するように、ソルダレジスト層9を所定のパターンで形成する。
図3は、ソルダレジスト層9を形成するための製造工程図、図4は、図3(a)から図3(b)までの工程に用いられる、図2に示す製造装置の具体的な概略構成図である。
以下、図3および図4を参照して、長尺基材1の表面に、導体パターン3を被覆するように、ソルダレジスト層9を形成する工程を詳細に説明する。
【0026】
図4において、この製造装置は、巻出部23、塗工部24、乾燥部25および保護フィルム積層部26を、長尺基材1の搬送方向(以下、特に言及しない限り、「搬送方向」は、「長尺基材1の搬送方向」をいう。)において順次備えている。
巻出部23には、巻出ロール21が設置されている。
塗工部24は、巻出部23に対して搬送方向下流側に配置され、ロールコータ27が設置されている。ロールコータ27は、長尺基材1の搬送経路を挟んで、互いに長尺基材1を通過させるための間隔を隔てて対向配置されるコータヘッドロール28およびバックアップロール29と、コータヘッドロール28およびバックアップロール29に対して搬送方向上流側に配置され、感光性ソルダレジストのワニスを供給するための供給ブレード30とを備えている。
【0027】
なお、コータヘッドロール28とバックアップロール29との間隔は、例えば、50〜400μm、好ましくは、90〜300μmに設定されている。
このロールコータ27では、供給ブレード30の案内によって、感光性ソルダレジストのワニスを、コータヘッドロール28とバックアップロール29との間を通過する長尺基材1の表面に供給して、その供給されたワニスを、コータヘッドロール28およびバックアップロール29によって、長尺基材1の表面に所定厚みで、長尺基材1を搬送しつつ、連続的に塗工する。
【0028】
乾燥部25は、塗工部24に対して搬送方向下流側に配置され、熱風循環式の乾燥通路から構成され、炉内には、適宜、搬送ロール32が設けられている。
保護フィルム積層部26は、乾燥部25に対して搬送方向下流側に配置され、保護フィルム巻出ロール33と、1対のニップロール34とを備え、巻取ロール22が設置されている。
【0029】
保護フィルム巻出ロール33と巻取ロール22とは、間隔を隔てて対向配置されており、それらの間に、1対のニップロール34が、保護フィルム巻出ロール33から巻取ロール22へと向かう光透過性保護フィルム11の搬送方向と直交する方向において対向配置されている。
保護フィルム積層部26では、保護フィルム巻出ロール33に光透過性保護フィルム11がロール状に巻回されており、その光透過性保護フィルム11が巻取ロール22に向けて巻き出される。一方、1対のニップロール34は、光透過性保護フィルム11の搬送途中に配置され、乾燥部25を通過した長尺基材1が供給されている。そのため、保護フィルム巻出ロール33から巻き出された光透過性保護フィルム11は、搬送途中の1対のニップロール34において、長尺基材1に積層された感光性ソルダレジスト11の表面に積層される。そして、巻取ロール22では、光透過性保護フィルム11が積層された長尺基材1が巻き取られる。
【0030】
なお、この製造装置では、巻出部23と塗工部24との間、乾燥部25と保護フィルム積層部26との間において、長尺基材1の搬送経路に、適宜、搬送途中の長尺基材1に張力を付与するためのテンションロール31が設置されている。
そして、この方法では、巻出部23に設置されている巻出ロール21から巻き出された長尺基材1に、塗工部24のロールコータ27によって、図3(a)に示すように、まず、感光性ソルダレジストのワニスを塗工して、感光性ソルダレジスト層10を形成する。
【0031】
感光性ソルダレジストとしては、特に制限されないが、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリウレタン、エポキシなどからなる公知の感光性樹脂が用いられ、これを有機溶剤に溶解して、ワニスとして処方する。
そして、ワニスは、供給ブレード30の案内によって、バックアップロール29によって支持しつつ搬送される長尺基材1の表面と、コータヘッドロール28との間に供給される。このとき、長尺基材1の表面には、導体パターン3の各配線6が、電解めっきにより、長尺基材1の幅方向中央部の厚みよりも、幅方向両端部の厚みが厚く形成されているが、幅狭補強シート7が、幅方向両端部にマージン部分8が形成されるように、長尺基材1の幅よりも狭い幅で設けられているので、その長尺基材1は、幅方向両端部において撓むことができる。そのため、ワニスの塗工時には、塗工されるワニスからの押圧力により、長尺基材1の幅方向両端部が、コータヘッドロール28から離間して逃げるように撓むので、厚みが厚く形成されている幅方向両端部の配線6が、コータヘッドロール28と接触することを回避することができる。そのため、ロール搬送される長尺基材1が、これらの接触により蛇行することを防止することができる。その結果、長尺基材1を、ロール搬送しつつその表面に感光性ソルダレジスト層10を塗工しても、確実な搬送を確保することができる。
【0032】
次いで、この方法では、感光性ソルダレジスト層10が塗工された長尺基材1を、乾燥部25に搬送して、乾燥部25において、60〜120℃程度で乾燥する。この乾燥により、感光性ソルダレジスト層10は、その表面にタック性(粘着性)が残存する程度に、皮膜として保形される。乾燥後の感光性ソルダレジスト層10の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜50μm、さらに好ましくは、8〜20μmに設定される。
【0033】
その後、乾燥された感光性ソルダレジスト層10を、保護フィルム積層部26に搬送して、図3(b)に示すように、感光性ソルダレジスト層10の表面に、光透過性保護フィルム11を積層する。
光透過性保護フィルム11は、感光性ソルダレジスト層10を露光するための光を透過するフィルムであれば、特に制限されないが、例えば、波長100〜800nm、好ましくは、350〜450nmの光を80%以上透過するものが好適であり、特に、i線(365nm)、h線(405nm)およびg線(436nm)に対する透過性が高いものが好適である。
【0034】
このような光透過性保護フィルム11としては、より具体的には、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムなどが用いられる。ポリエチレンフィルムは、可撓性が良好であり、ポリエチレンフィルムを用いれば、導体パターン3の凹凸に対する追従性よく、長尺基材1に積層することができる。そのため、光透過性保護フィルム11の積層時に、長尺基材1との間で気泡を巻き込みにくく、次の露光工程において、光の散乱を効果的に防止することができる。また、ポリエステルフィルムを用いれば、製造コストの低減を図ることができる。
【0035】
なお、光透過性保護フィルム11の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜30μmである。
そして、光透過性保護フィルム11は、1対のニップロール34において、1対のニップロール34の間を通過して巻取ロール22に向かう長尺基材1に積層された感光性ソルダレジスト層10の表面に積層され、その後、光透過性保護フィルム11が積層された長尺基材1が、巻取ロール22によって巻き取られる。
【0036】
このとき、長尺基材1の表面には、導体パターン3の各配線6が、電解めっきにより、長尺基材1の幅方向中央部の厚みよりも、幅方向両端部の厚みが厚く形成されているが、光透過性保護フィルム11の積層時には、積層される光透過性保護フィルム11からの押圧力により、長尺基材1の幅方向両端部が、光透過性保護フィルム11を支持する側のニップロール34から離間して逃げるように撓むので、長尺基材1に対して光透過性保護フィルム11を均一な圧力で積層することができる。そのため、感光性ソルダレジスト層10と光透過性保護フィルム11との間に気泡が混入することを防止することができる。その結果、その後の露光時において、光の散乱を抑制して、現像時にピンホールが生じることを防止することができる。
【0037】
次いで、この方法では、図3(c)に示すように、フォトマスク35を介して、光透過性保護フィルム11が積層された感光性ソルダレジスト層10を露光する。フォトマスク35は、光透過部分と遮光部分とが、ソルダレジスト層9を形成するための所定のパターンに対応して設けられている。露光する光の波長は、例えば、100〜800nm、好ましくは、350〜450nmであり、その露光量は、例えば、例えば、100〜800mJ/cm2である。感光性ソルダレジスト層10は、フォトマスク35を選択的に透過した後、続いて、光透過性保護フィルム11を透過した光によって露光される。
【0038】
その後、この方法では、図3(d)に示すように、光透過性保護フィルム11を剥離などによって除去した後、図3(e)に示すように、感光性ソルダレジスト層10を現像する。現像は、アルカリ水溶液などを現像液とする、浸漬法やスプレー法などの公知の現像方法が用いられる。なお、現像液のアルカリ濃度は、例えば、0.3〜5%程度で、現像温度は、例えば、20〜60℃である。
【0039】
この現像によって、感光性ソルダレジスト層10が、例えば、導体パターン3の端子部12に対応する部分が溶解する所定のパターンに現像される。
そして、図3(f)に示すように、所定のパターンに現像された感光性ソルダレジスト層10を、加熱により硬化させて、ソルダレジスト層9を形成する。ソルダレジスト層9は、導体パターン3のうち端子部12に対応する部分が開口される所定のパターンとして形成される。加熱温度は、例えば、120〜200℃程度である。また、ソルダレジスト層9の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、10〜20μmである。
【0040】
その後、図1(i)に示すように、幅狭補強シート7を剥離などにより除去することで、フレキシブル配線回路基板を得る。
なお、端子部12には、無電解めっきにより、ニッケルめっき層や金めっき層などの金属めっき層を、適宜、形成することができる。
このようにしてフレキシブル配線回路基板を製造すれば、感光性ソルダレジスト層10を塗工し、乾燥した後、その表面にタック性(粘着性)が残存していても、その感光性ソルダレジスト層10の表面には、光透過性保護フィルム11が積層されているので、巻取ロール22によって巻き取っても、感光性ソルダレジスト層10の表面が、その上に巻回される幅狭補強シート7または長尺基材1に貼着することを防止することができる。しかも、次の露光工程では、その光透過性保護フィルム11を介して、感光性ソルダレジスト層10を良好に露光することができるので、ソルダレジスト層9を精度のよいパターンで形成することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されることはない。
実施例1
上記した製造装置を用いて、ロール・トゥ・ロール法によって、以下の工程を順次実施し、フレキシブル配線回路基板を得た。
【0042】
すなわち、幅250mm、厚み25μmのポリイミドフィルムからなる長尺基材を用意し(図1(a)参照)、その全面に、厚み30nmのクロム薄膜および厚み200nmの銅薄膜からなる金属薄膜を、スパッタリング法によって順次形成した(図1(b)参照)。
次いで、金属薄膜の表面に、厚み20μmの感光性ドライフィルムレジストを貼着すると同時に、長尺基材の裏面に、幅252mm、厚み50μmの粘着剤付きのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる幅広補強シートを貼着した。その後、感光性ドライフィルムレジストを、露光および現像することにより、めっきレジストを、導体パターンの反転パターンとして形成した(図1(c)参照)。
【0043】
続いて、金属薄膜におけるめっきレジストから露出する部分に、電解銅めっきにより導体パターンを形成した(図1(d)参照)。この導体パターンは、複数の配線が長尺基材の長手方向に沿って互いに所定間隔を隔てて並列配置される微細な配線回路パターンとして形成した。各配線の幅は、25μmで、各配線間の間隔は、25μmに設定した。また、導体パターンの幅方向両端部(幅方向両端縁から内側3mm部分)の厚みは、15μmで、幅方向中央部の厚みは、10μmであった。
【0044】
その後、めっきレジストを剥離した後(図1(e)参照)、導体パターンから露出する金属薄膜を化学エッチングにより除去した(図1(f)参照)。
次いで、幅広補強シートを剥離した後、長尺基材の裏面に、幅240mm、厚み50μmの粘着剤(厚み10μm)付きポリエチレンテレフタレートフィルムを、幅狭補強シートとして貼着した。幅狭補強シートは、その幅方向両端縁が、長尺基材の幅方向両端縁に対して、5mm内側となるように貼着した(図1(g)参照)。
【0045】
その後、感光性ソルダレジストのワニスを塗工して、感光性ソルダレジスト層を形成した(図3(a)参照)。ワニスの塗工時には、塗工されるワニスからの押圧力により、長尺基材の幅方向両端部が、コータヘッドロールから離間して逃げるように撓み、厚みが厚く形成されている幅方向両端部の配線と、コータヘッドロールとの接触が回避されていることを確認した。
【0046】
次いで、感光性ソルダレジスト層が塗工された長尺基材を、80℃で乾燥した後、タック性が残存する感光性ソルダレジスト層の表面に、厚み16μmのポリエステルフィルム(光透過率約87%(波長408nm))からなる光透過性保護フィルムを積層した(図3(b)参照)。
光透過性保護フィルムの積層時には、積層される光透過性保護フィルムからの押圧力により、長尺基材の幅方向両端部が、光透過性保護フィルムを支持する側のニップロールから離間して逃げるように撓み、長尺基材に対して光透過性保護フィルムを均一な圧力で積層することができた。また、これによって、感光性ソルダレジスト層と光透過性保護フィルムとの間に気泡が混入していないことを確認した。
【0047】
その後、フォトマスクを介して、感光性ソルダレジスト層を、波長365nmの光によって露光した後(図3(c)参照)、光透過性保護フィルムを剥離し(図3(d)参照)、続いて、0.7%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、25℃で、感光性ソルダレジスト層を現像した(図3(e)参照)。
そして、150℃で60分間加熱することにより、感光性ソルダレジスト層を硬化させ、端子部に対応する部分が開口される所定のパターンとして、ソルダレジスト層を形成した(図1(h)参照)。
【0048】
その後、導体パターンにおける端子部に相当する部分に、無電解めっきにより、ニッケルめっき層および金めっき層を形成し、打ち抜きにより外形加工した後、幅狭補強シートを剥離して(図1(i)参照)、フレキシブル配線回路基板を得た。
比較例1
幅狭補強シートを設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、フレキシブル配線回路基板を得た。
【0049】
この方法では、感光性ソルダレジスト層の形成後に、長尺基材のロール搬送において、蛇行が生じた。また、感光性ソルダレジスト層と光透過性保護フィルムとの間であって、幅方向端縁から3mm内側に気泡が混入して、感光性ソルダレジスト層の現像時には、ピンホールが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態を示す製造工程図であって、(a)は、長尺基材を用意する工程、(b)は、長尺基材の全面に、金属薄膜を形成する工程、(c)は、金属薄膜の上に、導体パターンの反転パターンでめっきレジストを形成する工程、(d)は、金属薄膜におけるめっきレジストから露出する部分に、電解めっきにより導体パターンを形成する工程、(e)は、めっきレジストを除去する工程、(f)は、導体パターンから露出する金属薄膜を除去する工程、(g)は、長尺基材の裏面に、幅狭補強シートを設ける工程、(h)は、長尺基材の表面に、ソルダレジスト層を形成する工程、(i)は、幅狭補強シートを除去する工程を示す。
【図2】図1に示す配線回路基板の製造方法を実施するための製造装置の概略構成図である。
【図3】ソルダレジスト層を形成するための製造工程図であって、(a)は、感光性ソルダレジスト層を形成する工程、(b)は、感光性ソルダレジスト層の表面に、光透過性保護フィルムを積層する工程、(c)は、光透過性保護フィルムが積層された感光性ソルダレジスト層を露光する工程、(d)は、光透過性保護フィルムを除去する工程、(e)は、感光性ソルダレジスト層を現像する工程、(f)は、感光性ソルダレジスト層を、加熱により硬化する工程を示す。
【図4】図3(a)から図3(b)までの工程に用いられる、図2に示す製造装置の具体的な概略構成図である。
【符号の説明】
【0051】
1 長尺基材
3 導体パターン
7 幅狭補強シート
10 感光性ソルダレジスト層
11 光透過性保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺基材の表面に、電解めっきにより導体パターンを形成する工程と、
前記長尺基材における前記導体パターンが形成されている表面と反対側の裏面に、前記長尺基材の幅よりも狭い幅の補強シートを設ける工程と、
前記長尺基材の表面に、前記導体パターンを被覆するように、感光性ソルダレジスト層を形成する工程と
を備えていることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記感光性ソルダレジスト層の表面に、光透過性保護フィルムを積層する工程と、
前記光透過性保護フィルムを介して前記感光性ソルダレジスト層を露光する工程と
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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