説明

配線回路基板

【課題】信頼性の高い導体パターンが形成された配線回路基板を提供すること。
【解決手段】JIS G0551により規定される粒度番号が10.1〜13.0の金属箔からなる金属支持層2の上に、絶縁層3を形成し、その絶縁層3の上に、ピッチIPが30μm以下に設定されている複数のインナリード7を含む導体パターン4を形成し、その後、導体パターン4の形状の良否を反射型光学センサ24により検査する。その後、被覆層11および開口部16を形成することにより、TABテープキャリア1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板、詳しくは、TAB用テープキャリアなどに用いられる配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
TAB用テープキャリアなどの配線回路基板では、銅箔などの金属支持層を、補強層として有している。このような配線回路基板は、まず、金属支持層の上に、絶縁層を形成し、その絶縁層の上に導体パターンを形成し、その後、金属支持層を、補強が必要な部分を残してエッチング除去することにより、製造されている(例えば、特許文献1、図2参照。)。
【0003】
そして、上記の製造においては、通常、金属支持層を除去する前に、導体パターンの形状の良否を、光学的に検査するようにしており、より具体的には、例えば、図7に示すように、導体パターン41を含む絶縁層32の表面に光(実線矢印で示す。)を照射して、導体パターン41で反射した光を検知することにより、その形状の良否を判定している。
また、例えば、このような配線回路基板において、金属支持層の表面光沢度を150〜500%に設定することにより、導体パターンの検査において、その金属支持層からの反射光を拡散させて、検査の誤判定を低減することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−340617号公報
【特許文献2】特開2005−333028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した検査においては、金属支持層33からの反射光(図7において、鎖線矢印で示す。)が、検査の誤判定を招く場合があり、検査精度の向上を図るには、このような誤判定を防止する必要がある。
しかるに、特許文献2に記載の配線回路基板では、このような誤判定を防止しているが、近年における導体パターンのファインピッチ化に伴って、良否判定の検査精度の向上がより一層要求されているところ、上記特許文献2に記載の配線回路基板では、かかる要求に十分に対応することが困難な場合がある。
【0005】
本発明の目的は、信頼性の高い導体パターンが形成された配線回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の配線回路基板は、JIS G0551により規定される粒度番号が10.1〜13.0の金属箔からなる金属支持層と、前記金属支持層の上に形成された絶縁層と、前記絶縁層の上に形成された導体パターンとを備えていることを特徴としている。
また、本発明の配線回路基板は、前記導体パターンは、複数の配線を備え、前記配線の幅と、互いに隣接する各前記配線間の間隔との合計の長さが、30μm以下の部分を含んでいることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線回路基板では、金属支持層の金属箔の、JIS G0551により規定される粒度番号が10.1〜13.0に設定されているので、導体パターンの形状の良否を光学的に検査するときには、その金属支持層からの反射光を拡散させることができる。そのため、検査の誤判定を低減して、検査精度の向上を図ることができる。その結果、信頼性の高い導体パターンが形成された配線回路基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態としてのTAB用テープキャリアを示す部分平面図、図2は、図1に示すTAB用テープキャリアの部分拡大平面図、図3は、図1に示すTAB用テープキャリアの部分背面図、図4および図5は、図1に示すTAB用テープキャリアを製造するための製造工程図の、図2におけるA−A’線断面である。
このTAB用テープキャリア1は、例えば、図5(j)に示すように、長手方向に連続して延びるテープ状の金属支持層2と、その金属支持層2の上に形成された絶縁層3と、その絶縁層3の上に形成された導体パターン4とを備えている。
【0009】
また、このTAB用テープキャリア1では、図1に示すように、絶縁層3に、金属支持層2の長手方向(TAB用テープキャリア1の長手方向と同じ。以下、単に長手方向という場合がある。)において互いに所定間隔を隔てて、導体パターン形成部5が複数設けられている。
各導体パターン形成部5は、図2に示すように、平面視略矩形状をなし、その中央部には、図示しない電子部品を実装するための平面視略矩形状の実装部10が設けられている。
【0010】
導体パターン4は、各導体パターン形成部5において、実装部10の長手方向両側に形成されている。すなわち、この導体パターン4は、互いに所定間隔を隔てて配置される複数の配線6からなり、各配線6は、インナリード7、アウタリード8および中継リード9を連続して一体的に備えている。
各インナリード7は、実装部10内に臨み、長手方向に沿って延び、互いに所定間隔を隔ててTAB用テープキャリア1の幅方向において並列するように配置されている。
【0011】
各インナリード7のピッチ(すなわち、1つのインナリード7の幅と、互いに隣接する各インナリード7間の幅(間隔)との合計の長さ)IPが、30μm以下、好ましくは、25μm以下で、通常、20μm以上に設定されている。このように、各インナリード7のピッチIPを、30μm以下に設定することにより、高密度配線を実現することができる。
【0012】
また、各インナリード7の幅は、7〜15μm、好ましくは、8〜11μm、互いに隣接する各インナリード7間の幅(間隔)は、10〜23μm、好ましくは、10〜15μmに設定されている。
各アウタリード8は、各導体パターン形成部5における長手方向両端部において、長手方向に沿って延び、互いに所定間隔を隔てて幅方向において並列するように配置されている。
【0013】
各アウタリード8のピッチ(すなわち、1つのアウタリード8の幅と、互いに隣接する各アウタリード8間の幅(間隔)との合計の長さ)OPは、各インナリード7のピッチIPに対して、例えば、100〜1000%程度に設定されている。すなわち、各アウタリード8のピッチOPは、各インナリード7のピッチIPに対して、広幅に設定されているか、あるいは、同幅に設定されている。
【0014】
各中継リード9は、各インナリード7と各アウタリード8とが連続するように、各インナリード7と各アウタリード8とを中継しており、例えば、ピッチの狭い各インナリード7側からピッチの広い各アウタリード8側に向かって、長手方向において、放射状に広がるように配置されている。
また、各中継リード9が配置される領域には、絶縁層3の上に、各中継リード9を被覆するように、ソルダレジストなどの被覆層11が設けられている。すなわち、被覆層11は、各パターン形成部5において、実装部10を囲むようにして、略矩形枠状に形成されており、すべての中継リード9を被覆するように設けられている。
【0015】
なお、インナリード7およびアウタリード8は、図示しないが、好ましくは、ニッケルめっき層や金めっき層によって適宜被覆されている。
また、このTAB用テープキャリア1には、金属支持層2に、図3に示すように、各導体パターン形成部5(図1参照)の裏面に対応して、実装部10が露出する背面視矩形状の開口部16が形成されている。
【0016】
また、このTAB用テープキャリア1には、このTAB用テープキャリア1を搬送するための搬送部12が形成されている。搬送部12は、図1に示すように、TAB用テープキャリア1の幅方向両側縁部において、長手方向に沿って設けられている。各搬送部12には、このTAB用テープキャリア1を搬送するために、スプロケットなどと噛み合わせるための複数の送り孔13が、それぞれ幅方向において対向するように形成されている。各送り孔13は、TAB用テープキャリア1の長手方向において、等間隔毎に、TAB用テープキャリア1を貫通する(金属支持層2および絶縁層3を貫通する)ように穿孔されている。なお、各送り孔13は、例えば、1.981×1.981mmの角孔形状に穿孔され、各送り孔13間の間隔は、例えば、4.75mmに設定されている。
【0017】
次に、このTAB用テープキャリア1の製造方法について説明する。
この方法では、まず、図4(a)に示すように、金属支持層2を用意する。
金属支持層2は、ステンレス箔、銅箔、銅合金箔などの金属箔からなる。好ましくは、ステンレス箔からなる。なお、ステンレス箔としては、AISI(米国鉄鋼協会)の規格に基づいて、例えば、SUS301、SUS304、SUS305、SUS309、SUS310、SUS316、SUS317、SUS321、SUS347などが用いられる。
【0018】
また、金属箔は、JIS G0551により規定される粒度番号が、例えば、10.1〜13.0、好ましくは、10.5〜13.0、さらに好ましくは、10.5〜12.5のものが用意される。粒度番号が上記した範囲にないと、金属箔の表面における粒子径(粒度)が過度に大きくまたは小さくなるので、後述する導体パターン4の形状の良否の検査において、誤判定が生じ易くなる。
【0019】
金属支持層2の厚さは、例えば、3〜100μm、好ましくは、5〜30μm、さらに好ましくは、8〜20μmである。金属支持層2の厚さが上記した範囲未満であれば、TABテープキャリア1の剛性が低下する場合がある。また、金属支持層2の厚さが上記した範囲を超えれば、TABテープキャリア1の折り曲げ性が低下する場合がある。
また、金属支持層2の幅は、TABテープキャリア1の目的および用途により適宜選択され、例えば、100〜1000mm、好ましくは、150〜400mmである。
【0020】
金属支持層2に用いられる金属箔の粒度番号は、JIS G0551(2005年版)「粒度番号−測定方法」に準拠して測定することができる。より具体的には、金属箔の粒度番号は、その表面の1mm2当たりの平均結晶数mを用いて表される次式により、算出されるGの値をいう。
m=8×2G
このような粒度番号の測定は、例えば、金属箔の表面を、研磨紙(#1000)で研磨し、次いで、研磨した表面を、研磨紙の研磨により生じる表面の傷が目視で確認されなくなるまでダイヤモンド研磨し、その後、電解エッチングで結晶粒を現出させる。そして、この結晶粒の平均結晶粒数mを、顕微鏡でカウントする。これにより、粒度番号を測定することができる。
【0021】
また、金属箔の粒度番号は、例えば、金属箔の製造時において、焼鈍し(アニール)工程における条件が適宜調整されることにより、上記の範囲に調整することができる。すなわち、焼鈍し工程においては、例えば、適当な温度(焼鈍し温度)に加熱した後、その温度で適当な時間、保持し、その後、冷却する。より具体的には、この焼鈍し工程において、焼鈍し温度が、例えば、900〜1100℃、好ましくは、900〜980℃、保定時間が、例えば、10〜60秒、好ましくは、35〜55秒、冷却速度が、例えば、10〜60℃/秒、冷却コストの観点から、好ましくは、20〜40℃/秒となるように設定する。また、焼鈍し工程の最終温度は、例えば、15〜30℃である。
【0022】
また、上記した焼鈍し工程では、例えば、大気などの酸素含有雰囲気下、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気下、好ましくは、不活性ガス雰囲気下で、処理する。不活性ガス雰囲気下で処理すれば、金属箔の表面における粒子径が過度に大きくなることを防止して、金属箔の粒度番号が上記した範囲に良好に調整される。
なお、金属支持層2に用いられる金属箔としては、上記した条件で焼鈍しされていない金属箔を、TABテープキャリア1の製造時において、上記した条件で改めて焼鈍しするようにしてもよい。
【0023】
また、金属支持層2に用いられる金属箔は、上記した粒度番号の範囲において、さらに、入射角45°における鏡面光沢度が、例えば、150〜500%、好ましくは、150〜450%、さらに好ましくは、150〜250%のものを用いることもできる。
鏡面光沢度は、JIS Z 8741−1997「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して、入射角45°にて測定することができる。このような鏡面光沢度は、通常の光沢度計によって測定することができる。
【0024】
なお、金属支持層2の鏡面光沢度は、例えば、金属箔の製造時の圧延工程において、圧延ロールの表面の粗度を調整することにより、上記の範囲に調整することができる。また、鏡面光沢度の高い金属箔に対しては、薬液などによる粗面化処理により、上記の範囲に調整することができる。
なお、図4および図5においては、1列のTAB用テープキャリア1について示しているが、通常は、金属支持層2の幅方向に複数列のTAB用テープキャリア1を同時に作製した後、1列ごとにスリットする。
【0025】
例えば、幅250mmの金属箔では、幅48mmのTAB用テープキャリア1を4列同時に作製する。また、幅300mmの金属箔では、幅48mmのTAB用テープキャリア1を6列、または、幅70mmのTAB用テープキャリア1を4列、同時に作製する。
次いで、図4(b)に示すように、その金属支持層2の上に絶縁層3を形成する。絶縁層3を形成する絶縁体としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が用いられ、好ましくは、ポリイミド樹脂が用いられる。
【0026】
そして、金属支持層2の上に絶縁層3を形成するには、例えば、樹脂溶液を金属支持層2の上に塗布し、乾燥後に加熱硬化させる。樹脂溶液は、上記した樹脂を、有機溶媒などに溶解して調製できる。樹脂溶液としては、例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸樹脂の溶液などが用いられる。また、樹脂の塗布は、ドクターブレード法、スピンコート法などの公知の塗布方法が用いられる。そして、適宜加熱により乾燥させた後、例えば、200〜600℃で加熱硬化させることにより、金属支持層2の上に、可撓性を有する樹脂フィルムからなる絶縁層3を形成する。
【0027】
また、絶縁層3は、例えば、感光性ポリアミック酸樹脂などの感光性樹脂の溶液を、金属支持層2の上に塗布し、露光および現像することにより、所定のパターンとして形成することもできる。
さらに、絶縁層3は、予めフィルム状に形成された樹脂フィルムを、接着剤を介して金属支持層2に貼着することにより、形成することもできる。
【0028】
このようにして形成される絶縁層3の厚さは、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは、25μm以下、通常、3μm以上である。なお、絶縁層3の厚さが、上記した範囲未満であれば、後述する導体パターン4の形状の良否の検査において、誤判定を招き易くなる場合がある。
次いで、この方法では、この絶縁層3の表面に、導体パターン7を、上記した配線回路パターンとして形成する。
【0029】
導体パターン4を形成するための導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体が用いられる。好ましくは、銅が用いられる。また、導体パターン4の形成は、特に制限されることなく、絶縁層3の表面に、導体パターン4を、例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法などの公知のパターンニング法によって形成する。導体パターン4をファインピッチで形成できる観点から、これらパターンニング法のうちでは、好ましくは、図4(c)〜図5(h)に示すように、アディティブ法が用いられる。
【0030】
すなわち、アディティブ法では、まず、図4(c)に示すように、絶縁層3の全面に、種膜14となる導体の薄膜を形成する。種膜14の形成は、例えば、真空蒸着法、好ましくは、スパッタ蒸着法が用いられる。また、種膜14となる導体は、好ましくは、クロムや銅などが用いられる。より具体的には、例えば、絶縁層3の全面に、クロム薄膜と銅薄膜とをスパッタ蒸着法によって、順次に形成する。なお、種膜14の形成においては、例えば、クロム薄膜の厚さが、100〜600Å、銅薄膜の厚さが、500〜2000Åとなるように設定する。
【0031】
次いで、この方法では、図4(d)に示すように、TAB用テープキャリア1の幅方向両側縁部において、長手方向に沿って、上記した複数の送り孔13を、金属支持層2、絶縁層3および種膜14の厚さ方向を貫通するように穿孔する。送り孔13の穿孔は、例えば、ドリル穿孔、レーザ加工、パンチング加工、エッチングなどの公知の加工方法が用いられる。好ましくは、パンチング加工が用いられる。
【0032】
そして、この方法では、図5(e)に示すように、種膜14の上に、上記した配線回路パターンの反転パターンで、めっきレジスト15を形成する。めっきレジスト15は、例えば、ドライフィルムレジストなどを用いて公知の方法により、所定のレジストパターンとして形成する。なお、このめっきレジスト15は、金属支持層2の全面にも形成する。
次いで、図5(f)に示すように、めっきレジスト15から露出する種膜14の上に、電解めっきにより、導体パターン4を上記した配線回路パターンで形成する。電解めっきは、好ましくは、電解銅めっきが用いられる。
【0033】
そして、図5(g)に示すように、めっきレジスト15を、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)などの公知のエッチング法または剥離によって除去した後、図5(h)に示すように、導体パターン4から露出する種膜14を、同じく、化学エッチング(ウェットエッチング)など公知のエッチング法により除去する。
これによって、絶縁層3の上に、導体パターン4が、上記したように、インナリード7、アウタリード8および中継リード9が連続して一体的に形成される配線6の配線回路パターンとして形成される。なお、導体パターン4の厚さは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜25μmである。
【0034】
そして、この方法では、この段階において、導体パターン4の形状の良否を光学的に検査する。この検査は、図6に示すように、導体パターン4を含む絶縁層3の上方に、発光部22および受光部23を備える反射型光学センサ24を、導体パターン4に対して対向配置して、発光部22から導体パターン4を含む絶縁層3に向けて検知光を照射し、導体パターン4で反射した反射光(検知光)を、受光部23で検知することにより、導体パターン4の形状の良否を判定する。
【0035】
この検査では、図6における鎖線矢印で示すように、発光部22から照射された検知光が、絶縁層3を透過して、金属支持層2で反射しても、金属支持層2の金属箔の粒度番号が10.1〜13.0に設定されているので、金属支持層2において、反射光(検知光)を拡散させることができる。そのため、検査の誤判定を低減して、検査精度の向上を図ることができる。
【0036】
次いで、この方法では、図5(i)に示すように、被覆層11を、各配線6の中継リード9が被覆され、かつ、実装部10を囲む矩形枠状に形成する。被覆層11は、感光性ソルダレジストなどを用いる公知の方法によって、形成する。
その後、図示しないが、各配線6における露出部分、すなわち、インナリード7およびアウタリード8を、ニッケルめっき層および金めっき層によって被覆する。ニッケルめっき層および金めっき層は、例えば、ニッケルめっきおよび金めっきにより、それぞれ形成する。
【0037】
そして、図5(j)に示すように、金属支持層2における導体パターン形成部5に対応する位置に、開口部16を形成することにより、TAB用テープキャリア1を得る。
金属支持層2に開口部16を形成するには、金属支持層2における導体パターン形成部5に重なる部分を、ウエットエッチング(化学エッチング)によって、開口する。エッチングするには、開口部16以外をエッチングレジストによって被覆した後、塩化第二鉄溶液などの公知のエッチング液を用いてエッチングした後、エッチングレジストを除去する。その後、金属支持層2の幅方向に複数列のTAB用テープキャリア1を作製している場合は、1列ごとにスリットする。
【0038】
なお、金属支持層2の幅方向に複数列のTAB用テープキャリア1を同時に作製した後、1列ごとにスリットする場合は、TAB用テープキャリア1間のスリット部の金属支持層2は、開口部16と同時に除去する。
このようにして得られるTAB用テープキャリア1では、上記したように、金属支持層2の金属箔の粒度番号が10.1〜13.0に設定されているので、導体パターン4の形状の良否が、正確かつ確実に判定される。そのため、信頼性の高い導体パターン4が形成されたTAB用テープキャリア1として提供することができる。
【0039】
しかも、このTABテープキャリア1では、導体パターン4のインナリード7のピッチIPが30μm以下に設定されているので、高密度配線を実現することができる。なお、このようにファインピッチで形成された導体パターン4の検査では、誤判定を招き易くなる場合があるが、このTABテープキャリア1では、金属支持層2の金属箔の粒度番号が10.1〜13.0に設定されているので、上記したファインピッチで導体パターン4が形成されていても、誤判定を有効に低減することができる。そのため、信頼性の高い導体パターン4が形成されたTAB用テープキャリア1として提供することができる。
【0040】
なお、上記の説明では、本発明の配線回路基板を、TAB用テープキャリアを例示して説明したが、本発明の配線回路基板は、これに限定されず、金属支持層2が補強層として設けられた各種フレキシブル配線回路基板などの他の配線回路基板にも広く適用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、以下の実施例および比較例では、幅300mmのステンレス箔を用いて、幅48mmのTAB用テープキャリアを6列同時に作製する操作を、複数回繰り返した。
実施例1
焼鈍し温度が940℃、保定時間が30秒、冷却速度が20℃/秒、最終温度が500℃付近となるように設定して、窒素雰囲気下で、ステンレス箔(SUS304、厚さ20μm、幅300mm)を処理した。これにより、JIS G0551により規定される粒度番号が11.5のステンレス箔を得た。これを金属支持層として用いた(図4(a)参照)。
【0042】
次いで、この金属支持層の上に、ポリアミック酸樹脂の溶液を塗布し、乾燥後、加熱硬化させて、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる絶縁層を形成した(図4(b)参照)。
次いで、絶縁層の表面に、スパッタ蒸着法により、厚さ300Åのクロム薄膜および厚さ2000Åの銅薄膜を順次形成することにより、種膜を形成した(図4(c)参照)。
【0043】
その後、送り孔を、金属支持層、絶縁層および種膜の厚さ方向を貫通するように、パンチング加工により穿孔した後(図4(d)参照)、めっきレジストを、種膜の表面に所定のパターンとして形成するとともに、金属支持層の全面に形成した(図5(e)参照)。
次いで、これを、電解硫酸銅めっき液中に浸漬して、めっきレジストから露出する種膜の上に、2.5A/dm2で約20分間電解銅めっきすることにより、厚さ10μmの導体パターンを形成した(図5(f)参照)。
【0044】
なお、この導体パターンは、互いに所定間隔を隔てて配置され、インナリード、アウタリードおよび中継リードが連続して一体的に形成される複数の配線のパターンとして形成された。また、インナリードは、ピッチ(1つのインナリードの幅と、互いに隣接する各インナリード間の幅との合計の長さ)が30μm、幅が10μm、アウタリードは、ピッチ(1つのアウタリードの幅と、互いに隣接する各アウタリード間の幅との合計の長さ)が100μm、幅が80μmであった。
【0045】
次いで、めっきレジストを化学エッチングによって除去した後(図5(g)参照)、導体パターンから露出する種膜を、同じく、化学エッチングにより除去した。(図5(h)参照)。
その後、自動外観検査装置(反射型光学センサ)を用いて、光反射法により、導体パターンの形状に基づく、配線間の短絡の有無を検査し(図6参照)、良品と不良品とを判定して選別した。その後、電気的な導通検査により確認検査を実施して、自動外観検査装置による誤判定がないことを確認した。
【0046】
その後、感光性ソルダレジストを、各配線の中継リードが被覆されるように、導体パターン形成部を囲むようにして形成した後(図5(i)参照)、インナリードおよびアウタリードを、ニッケルめっきおよび金めっきすることにより被覆した。
そして、金属支持層における導体パターン形成部およびスリット形成部と対応する位置以外を、エッチングレジストによって被覆した後、塩化第二鉄溶液を用いて、金属支持層をエッチングすることにより、開口部およびTAB用テープキャリア間のスリット部を形成した(図5(j)参照)。これによって、TAB用テープキャリアを得た。
【0047】
実施例2
焼鈍し温度が970℃、保定時間が40秒、冷却速度が20℃/秒、最終温度が500℃程度となるように設定して、窒素雰囲気下で、ステンレス箔(SUS304、厚さ20μm、幅300mm)を処理した。これにより、JIS G0551により規定される粒度番号が10.6のステンレス箔を得た。これを金属支持層として用いた(図4(a)参照)。以下、実施例1と同様にして、TAB用テープキャリアを得た。
【0048】
なお、このTAB用テープキャリアの、導体パターンの形状の光反射法による検査では、その後の導通検査により、誤判定がないことが確認された。
比較例1
焼鈍し温度が1000℃、保定時間が40秒、冷却速度が20℃/秒、最終温度が500℃程度となるように設定して、窒素雰囲気下で、ステンレス箔(SUS304、厚さ20μm、幅300mm)を処理した。これにより、JIS G0551により規定される粒度番号が10.0のステンレス箔を得た。これを金属支持層として用いた(図4(a)参照)。以下、実施例1と同様にして、TAB用テープキャリアを得た。
【0049】
なお、このTAB用テープキャリアの、導体パターンの形状の光反射法による検査において、良品とされたものの中に、その後の導通検査により、短絡している不良品が混在していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態としてのTAB用テープキャリアを示す部分平面図である。
【図2】図1に示すTAB用テープキャリアの部分拡大平面図である。
【図3】図1に示すTAB用テープキャリアの部分背面図である。
【図4】図1に示すTAB用テープキャリアを製造するための製造工程図の、図2におけるA−A’線断面であって、(a)は、金属支持層を用意する工程、(b)は、金属支持層の上に絶縁層を形成する工程、(c)は、絶縁層の全面に種膜を形成する工程、(d)は、送り孔を穿孔する工程を示す。
【図5】図4に続いて、図1に示すTAB用テープキャリアを製造するための製造工程図の、図2におけるA−A’線断面であって、(e)は、種膜の上にめっきレジストを形成する工程、(f)は、めっきレジストから露出する種膜に、電解めっきにより、導体パターンを形成する工程、(g)は、めっきレジストを除去する工程、(h)は、導体パターンから露出する種膜を除去する工程、(i)は、被覆層を形成する工程、(j)は、金属支持層における導体パターン形成部に対応する位置に開口部を形成する工程を示す。
【図6】図1に示すTAB用テープキャリアの製造において、導体パターンの形状の良否を光学的に検査する工程を説明するための説明図である。
【図7】従来のTAB用テープキャリアの製造において、導体パターンの形状の良否を光学的に検査する工程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 TAB用テープキャリア
2 金属支持層
3 絶縁層
4 導体パターン
6 配線
7 インナリード
8 アウタリード
9 中継リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS G0551により規定される粒度番号が10.1〜13.0の金属箔からなる金属支持層と、
前記金属支持層の上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成された導体パターンと
を備えていることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記導体パターンは、複数の配線を備え、前記配線の幅と、互いに隣接する各前記配線間の間隔との合計の長さが、30μm以下の部分を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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