説明

配線基板および配線基板の製造方法

【課題】 高い耐熱性を有する薄型の配線基板を提供する。
【解決手段】 基材(10)と、前記基材上に設けられ、配線層(12)が埋め込まれた絶縁層(13)と、前記絶縁層上に設けられた表面保護膜(14)とを具備する配線基板である。前記絶縁層および表面保護膜の少なくとも一方は、ポリイミド前駆体を硬化させてなるとともにフィラーを含有するポリイミド樹脂膜を含み、前記フィラーは、50℃以下で前記ポリイミド前駆体の溶液に難溶であり、一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーおよび/または樹脂コートした無機フィラー、一次粒子の平均径が0.05〜100μmの有機フィラーのいずれかからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線基板においては、片面に回路形成した銅貼板、もしくは両面に回路形成を行ない、スルーホールにて必要な回路の導通をとった銅貼板に、予め所望の部分を窓空けしたポリイミドカバーレイフィルムを接着剤により貼りつける方法、あるいは、ポリイミド前駆体樹脂組成物を所望の部分にのみ塗布し加熱硬化させたポリイミド硬化物でカバーコートを行なう方法によって、絶縁保護膜が形成される(例えば、特許文献1参照)。こうして形成された回路基板を貼り合わせることにより、回路基板の多層化も行なうことができる。
【0003】
カバーレイフィルムを貼り付けた場合には、接着剤層が存在することにより基板が厚くなること、接着剤により耐熱性が劣化するなどといった欠点がある。また、カバーレイフィルムの打ち抜き・裁断等、事前加工が必要になるため加工コストが高価になる。
【0004】
ポリイミド前駆体を塗布し加熱硬化させてなるポリイミド硬化物によるカバーコートを片面もしくは両面に行なう場合には、ポリイミド前駆体をイミド化するために300℃以上の熱処理が必要であり、酸化防止のために不活性ガス雰囲気もしくは真空下層の脱酸素状態での加熱処理が不可欠である(例えば、特許文献2参照)。そのため、高温加熱、ガス置換、脱気等の処理を含めてなる熱処理時間が長いという欠点がみられる。このポリイミド前駆体を塗布し加熱硬化させてなるポリイミド硬化物によるパッシベーション膜形成を行なう場合も同様に、長い熱処理時間が必要とされる。
【特許文献1】特許第2591599号公報
【特許文献2】特許第2501940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い耐熱性を有する薄型の配線基板、およびかかる配線基板を低コストで簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる配線基板は、基材と、
前記基材上に設けられ、配線層が埋め込まれた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた表面保護膜とを具備し、
前記絶縁層および表面保護膜の少なくとも一方は、ポリイミド前駆体を硬化させてなるとともにフィラーを含有するポリイミド樹脂膜を含み、前記フィラーは、50℃以下で前記ポリイミド前駆体の溶液に難溶であり、一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーおよび/または樹脂コートした無機フィラー、一次粒子の平均径が0.05〜100μmの有機フィラーのいずれかからなることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様にかかる配線基板の製造方法は、
基材上に、50〜3000poiseの粘度を有するポリイミド前駆体組成物をスクリーン印刷法により塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を、大気中または不活性ガス雰囲気中、60〜300℃の温度範囲で加熱、または60〜250℃の温度範囲で加熱後100〜250℃の温度範囲で真空加熱して、ポリイミド樹脂膜を形成する工程とを具備する配線基板の製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体組成物は、
下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリアミド酸からなるポリイミド前駆体と、
【化3】

【0008】
(上記一般式(1)中、Φはそれぞれ同一でも異なっていても良く、4価の有機基を示す。Ψはそれぞれ同一でも異なっていても良く、2価の有機基を示す。nは正の整数を示す。)
前記ポリイミド前駆体に対して3wt%以上の割合で配合された熱硬化促進剤と、
前記ポリイミド前駆体に対して3wt%以上の割合で配合されたフィラーとを含有し、
前記熱硬化促進剤は、下記の(A1)〜(A3)から選ばれる有機化合物からなり、
(A1)水溶液中の酸解離指数pKa(酸解離定数Kaの逆数の対数)が0〜8の範囲にある置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物
(A2)アミノ酸化合物またはN−アシルアミノ酸化合物
(A3)下記一般式(2)で表わされるヒドロキシ化合物
【化4】

【0009】
(上記一般式(2)中、Ar1およびAr2はそれぞれ同一でも異なっていても良く、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を示す。Zはそれぞれ同一でも異なっていても良く、カルボキシ基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、置換もしくは非置換のアミノ基または置換もしくは非置換のアミノアルキル基を示す。Xはそれぞれ同一でも異なっていても良く、二価のオキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルアミノ基、カルボニルオキシ基、置換もしくは非置換のアミノ基、アルキル基、ポリフルオロアルキル基または単結合を示す。aは0〜3の整数を示し、bは1〜5の整数、cは0〜5の整数を示す。なお、bとcとの和は2以上である。)
前記フィラーは、一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーおよび/または樹脂コートした無機フィラー、一次粒子の平均径が0.05〜100μmの有機フィラーのいずれかからなり、50℃以下でポリイミド前駆体の溶液に難溶であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、高い耐熱性を有する薄型の配線基板、およびかかる配線基板を低コストで簡便に製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態にかかる配線基板の構成を表わす断面図である。図示する配線基板10は、片面板フレキシブル回路基板であり、ベース絶縁基材11上に絶縁層13が設けられ、この絶縁層13には例えば銅箔からなる配線層12が形成されている。さらに、これらの上には表面保護膜14が設けられる。絶縁層13および表面保護膜14の少なくとも一方は、特定のポリイミド樹脂膜からなる。
【0013】
本発明の実施形態にかかる配線基板は、図2に示すように両面板フレキシブル配線基板とすることもできる。図示する配線基板15においては、ベース絶縁基材11の両面に銅箔16と銅メッキ17との積層構造からなる配線層12、絶縁層13、および表面保護膜14が設けられている。こうした配線基板の場合も、前述の片面板フレキシブル配線基板と同様、絶縁層13および表面保護膜14の少なくとも一方は、特定のポリイミド樹脂膜からなる。
【0014】
特定のポリイミド樹脂膜は、ポリイミド前駆体組成物をスクリーン印刷法により形成することができ、まず、用いられる組成物について以下に詳細に説明する。
【0015】
ポリイミド前駆体組成物には、前記一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリアミド酸からなるポリイミド前駆体が含有される。
【0016】
前記一般式(1)におけるΦは、四価の有機基であり、具体的には炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基、並びに脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基が直接または架橋基により相互に連結された多環式化合物基からなる群より選択された四価の有機基である。
【0017】
前記一般式(1)にΦとして導入される四価の有機基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ペリレン、ビフェニル、テルフェニル、クァテルフェニル、キンクフェニル、セキシフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルブタン、ジフェニルペンタン、ジフェニルジフルオロメタン、ジフェニルテトラフルオロエタン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルオクタフルオロブタン、ジフェニルデカフルオロペンタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、ジフェニルジメチルシラン、ジフェニルテトラメチルジシロキサン、ビス(フェニルメチル)ベンゼン、ビス(フェニルエチル)ベンゼン、ビス(フェニルプロピル)ベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ビス(フェニルチオ)ベンゼン、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ビス(フェノキシフェニル)メタン、ビス(フェノキシフェニル)エタン、ビス(フェノキシフェニル)プロパン、ビス(フェノキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(フェノキシフェニル)テトラフルオロエタン、ビス(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェノキシフェニル)エーテル、ビス(フェノキシフェニル)スルフィド、ビス(フェノキシフェニル)スルホン、ビス(フェニルプロピルフェニル)エーテル、ビス(フェニルヘキサフルオロプロピルフェニル)エーテル、ビス(フェニルプロピルフェニル)スルホン、ビス(フェニルヘキサフルオロプロピルフェニル)スルホン、ビス(フェノキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(フェノキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジアルキルパーメチルポリシロキサン、エチレン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロヘキシル、ジシクロヘキシルケトン、ジシクロヘキシルエーテル、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルエタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジシクロヘキシルジフルオロメタン、ジシクロヘキシルテトラフルオロエタン、ジシクロヘキシルヘキサフルオロプロパン、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールなどの化合物から水素基を4個引き抜いた四価の有機基が例示される。
【0018】
上述したような四価の有機基は、アルキル基、ハロゲン基、ポリフルオロアルキル基、ニトロ基、あるいはシアノ基などの特性基により置換されていてもよい。なお、耐熱性、耐環境安定性などの面から、Φとしては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、ビフェニル、テルフェニル、クァテルフェニル、キンクフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、ジフェニルテトラメチルジシロキサン、ビス(フェニルプロピル)ベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ジフェノキシビフェニル、ビス(フェノキシフェニル)プロパン、ビス(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェノキシフェニル)エーテルおよびビス(フェノキシフェニル)スルホンなどの化合物から水素基を4個引き抜いた四価の有機基が特に好ましい。
【0019】
前記一般式(1)におけるΨは、二価の有機基であり、具体的には炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基、並びに脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基が直接または架橋基により相互に連結された多環式化合物基からなる群より選択された二価の有機基である。
【0020】
前記一般式(1)にΨとして導入される二価の有機基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ペリレン、ビフェニル、テルフェニル、クァテルフェニル、キンクフェニル、セキシフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルブタン、ジフェニルペンタン、ジフェニルジフルオロメタン、ジフェニルテトラフルオロエタン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルオクタフルオロブタン、ジフェニルデカフルオロペンタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、ジフェニルジメチルシラン、ジフェニルテトラメチルジシロキサン、ビス(フェニルメチル)ベンゼン、ビス(フェニルエチル)ベンゼン、ビス(フェニルプロピル)ベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ビス(フェニルチオ)ベンゼン、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ジフェノキシビフェニル、ビス(フェノキシフェニル)メタン、ビス(フェノキシフェニル)エタン、ビス(フェノキシフェニル)プロパン、ビス(フェノキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(フェノキシフェニル)テトラフルオロエタン、ビス(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェノキシフェニル)エーテル、ビス(フェノキシフェニル)スルフィド、ビス(フェノキシフェニル)スルホン、ビス(フェニルプロピルフェニル)エーテル、ビス(フェニルヘキサフルオロプロピルフェニル)エーテル、ビス(フェニルプロピルフェニル)スルホン、ビス(フェニルヘキサフルオロプロピルフェニル)スルホン、ビス(フェノキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(フェノキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジアルキルパーメチルポリシロキサン、エチレン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロヘキシル、ジシクロヘキシルケトン、ジシクロヘキシルエーテル、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルエタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジシクロヘキシルジフルオロメタン、ジシクロヘキシルテトラフルオロエタン、ジシクロヘキシルヘキサフルオロプロパン、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールなどの化合物から水素基を2個引き抜いた二価の有機基が例示される。
【0021】
上述したような二価の有機基は、アルキル基、ハロゲン基、ポリフルオロアルキル基、ニトロ基、あるいはシアノ基などの特性基により置換されていてもよい。なお、耐熱性、耐環境安定性などの面から、Ψとしては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、ビフェニル、テルフェニル、クァテルフェニル、キンクフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、ジフェニルテトラメチルジシロキサン、ビス(フェニルプロピル)ベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ジフェノキシビフェニル、ビス(フェノキシフェニル)プロパン、ビス(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェノキシフェニル)エーテルおよびビス(フェノキシフェニル)スルホンなどの化合物から水素基を2個引き抜いた二価の有機基が特に好ましい。
【0022】
前記一般式(1)で表わされるポリイミド前駆体(ポリアミド酸)は、例えば、下記一般式(3)で表わされるテトラカルボン酸二無水物成分と、下記一般式(4)で表わされるジアミン化合物成分とを有機溶媒中で反応させることによって合成することができる。
【化5】

【0023】
(上記一般式(3)中、φは、置換もしくは非置換の、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基、並びに、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基が直接または架橋基により相互に連結された化合物基からなる群より選ばれた4価の有機基を示す。)
【化6】

【0024】
(上記一般式(4)中、Ψは、置換もしくは非置換の、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基、並びに、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基が直接または架橋基により相互に連結された化合物基からなる群より選ばれた2価の有機基を示す。)
前記一般式(3)におけるΦは、四価の有機基であり、具体的には炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基、並びに脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基が直接または架橋基により相互に連結された多環式化合物基からなる群より選択された四価の有機基である。
【0025】
前記一般式(3)にΦとして導入される四価の有機基としては、前記一般式(1)にΦとして示された四価の有機基が挙げられ、前記一般式(4)にΨとして導入される二価の有機基としては、前記一般式(1)にΨとして示された二価の有機基が挙げられる。
【0026】
前記一般式(3)で表わされるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3−フルオロピロメリト酸二無水物、3,6−ジフルオロピロメリト酸二無水物、3−(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3"',4,4"'−クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3"",4,4""−キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、ジフルオロメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2−テトラフルオロ−1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシ−4,4’−ビス(3−フルオロフタル酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(5−フルオロフタル酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(6−フルオロフタル酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス[3−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、オキシ−4,4’−ビス[5−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、オキシ−4,4’−ビス[6−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、オキシ−4,4’−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、オキシ−4,4’−ビス[3,6−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、オキシ−4,4’−ビス[5,6−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、オキシ−4,4’−ビス[3,5,6−トリス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(3−フルオロフタル酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(5−フルオロフタル酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(6−フルオロフタル酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[3−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[5−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[6−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[3,6−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[5,6−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、スルホニル−4,4’−ビス[3,5,6−トリス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(3−フルオロフタル酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(5−フルオロフタル酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(6−フルオロフタル酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[3−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[5−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[6−(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[3,6−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[5,6−ビス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス[3,5,6−トリス(トリフルオロメチル)フタル酸]二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物およびビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物は、全酸無水物成分のうち0.8モル当量以上の割合で用いられることが好ましく、0.9モル当量以上用いられることがより好ましい。テトラカルボン酸二無水物の配合量が少なすぎる場合には、得られるポリイミド樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
【0028】
前記一般式(4)で表わされるジアミン化合物としては、例えば、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3”−ジアミノテルフェニル、4,4”−ジアミノテルフェニル、3,3"'−ジアミノクァテルフェニル、4,4"'−ジアミノクァテルフェニル、オキシ−3,3’−ジアニリン、オキシ−4,4’−ジアニリン、チオ−3,3’−ジアニリン、チオ−4,4’−ジアニリン、スルホニル−3,3’−ジアニリン、スルホニル−4,4’−ジアニリン、メチレン−3,3’−ジアニリン、メチレン−4,4’−ジアニリン、1,2−エチレン−3,3’−ジアニリン、1,2−エチレン−4,4’−ジアニリン、2,2−プロピリデン−3,3’−ジアニリン、2,2−プロピリデン−4,4’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−3,3’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ジアニリン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−プロピレン−3,3’−ジアニリン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−プロピレン−4,4’−ジアニリン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,3−ビス[2−(3−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス[2−(3−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル]ベンゼン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、5−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−ヘキサフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−ヘキサフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノ−5,5’−ジフルオロビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジフルオロビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジフルオロビフェニル、3,3’−ジアミノ−2,2’,4,4’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル、オキシ−5,5’−ビス(3−フルオロアニリン)、オキシ−4,4’−ビス(2−フルオロアニリン)、オキシ−4,4’−ビス(3−フルオロアニリン)、スルホニル−5,5’−ビス(3−フルオロアニリン)、スルホニル−4,4’−ビス(2−フルオロアニリン)、スルホニル−4,4’−ビス(3−フルオロアニリン)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−5−フルオロベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−フルオロフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−フルオロフェノキシ)−5−フルオロベンゼン、5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン、2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、オキシ−5,5’−ビス[3−(トリフルオロメチル)アニリン]、オキシ−4,4’−ビス[2−(トリフルオロメチル)アニリン]、オキシ−4,4’−ビス[3−(トリフルオロメチル)アニリン]、スルホニル−5,5’−ビス[3−(トリフルオロメチル)アニリン]、スルホニル−4,4’−ビス[2−(トリフルオロメチル)アニリン]、スルホニル−4,4’−ビス[3−(トリフルオロメチル)アニリン]、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−5−(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3−ビス[3−アミノ−5−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン、1,3−ビス[3−アミノ−5−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−5−(トリフルオロメチル)ベンゼン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−5,5’−ジアミノビフェニル、ビス(3−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メチレンジアミン、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(3−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,2−ビス(3−アミノシクロヘキシル)エタン、1,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)エタン、2,2−ビス(3−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−アミノシクロヘキシル)エーテル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)エーテル、ビス(3−アミノシクロヘキシル)スルホン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、1,8−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピラジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンおよび1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンなどが挙げられる。これらのジアミン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
ジアミン化合物は、全アミン化合物成分のうち0.8モル当量以上の割合で用いられることが好ましく、0.9モル当量以上用いられることがより好ましい。ジアミン化合物の配合量が少なすぎる場合には、得られるポリイミド樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
【0030】
これらのジアミン化合物とともに、下記一般式(5)で表わされるジアミン化合物、すなわちビス(アミノアルキル)パーアルキルポリシロキサン化合物を併用してもよい。
【化7】

【0031】
(前記一般式(5)中、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基を示し、qおよびrは1〜10の整数であり、pは正の整数である。)
前記一般式(5)で表わされるビス(アミノアルキル)パーフルオロポリシロキサン化合物としては、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(2−アミノエチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(5−アミノペンチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(6−アミノヘキシル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(7−アミノヘプチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(8−アミノオクチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(10−アミノデシル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,7−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,11−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン、1,15−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11,13,13,15,15−ヘキサデカメチルオクタシロキサン、1,19−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11,13,13,15,15,17,17,19,19−エイコサメチルデカシロキサンなどが挙げられる。
【0032】
前記一般式(5)で表わされるビス(アミノアルキル)パーアルキルポリシロキサン化合物は、ポリイミド樹脂の例えばガラス基板やシリコン基板などの半導体基板上への密着性および接着性を向上させる効果を有する。これらの化合物は、全ジアミン成分のうち0.02〜0.1モル当量混合して使用することが好ましい。前記一般式(5)で表わされる化合物が過度に配合されると、ポリイミド樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
【0033】
さらに、ポリアミド酸の重合度を制御するために、ジカルボン酸無水物またはモノアミン化合物を、末端処理剤として用いることができる。使用し得るジカルボン酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、プロピルマレイン酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジブロモマレイン酸無水物、フルオロマレイン酸無水物、ジフルオロマレイン酸無水物、(トリフルオロメチル)マレイン酸無水物、ビス(トリフルオロメチル)マレイン酸無水物、シクロブタンジカルボン酸無水物、シクロペンタンジカルボン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、フタル酸無水物、メチルフタル酸無水物、エチルフタル酸無水物、ジメチルフタル酸無水物、フルオロフタル酸無水物、ジフルオロフタル酸無水物、クロロフタル酸無水物、ジクロロフタル酸無水物、ブロモフタル酸無水物、ジブロモフタル酸無水物、ニトロフタル酸無水物、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3−フェノキシフタル酸無水物、4−フェノキシフタル酸無水物、3−(フェニルスルホニル)フタル酸無水物、4−(フェニルスルホニル)無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、3,4−ピリジンジカルボン酸無水物などが挙げられ、用いることができるモノアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロチルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、1−(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、ビニルアミン、アリルアミン、グリシン、アラニン、アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、イソバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、グルタミン、グルタミン酸、トリプトファン、アミノクロトン酸、アミノアセトニトリル、アミノプロピオニトリル、アミノクロトノニトリル、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、アミノアダマンタン、アミノベンゾシクロブタン、アミノカプロラクタム、アニリン、クロロアニリン、ジクロロアニリン、ブロモアニリン、ジブロモアニリン、フルオロアニリン、ジフルオロアニリン、ニトロアニリン、ジニトロアニリン、トルイジン、キシリジン、エチルアニリン、アニシジン、フェネチジン、アミノアセトアニリド、アミノアセトフェノン、アミノ安息香酸、アミノベンズアルデヒド、アミノベンゾニトリル、アミノフタロニトリル、アミノベンゾトリフルオリド、アミノスチレン、アミノスチルベン、アミノアゾベンゼン、アミノジフェニルエーテル、アミノジフェニルスルホン、アミノベンズアミド、アミノベンゼンスルホンアミド、アミノフェニルマレイミド、アミノフェニルフタルイミド、アミノビフェニル、アミノテルフェニル、アミノナフタレン、アミノアクリジン、アミノアントラキノン、アミノフルオレン、アミノフルオレノン、アミノピロリジン、アミノピペラジン、アミノピペリジン、アミノホモピペリジン、アミノモルホリン、アミノベンゾジオキソール、アミノベンゾジオキサン、アミノピリジン、アミノピリダジン、アミノピリミジン、アミノピラジン、アミノキノリン、アミノシンノリン、アミノフタラジン、アミノキナゾリン、アミノキノキサリン、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノピラゾール、アミノトリアゾール、アミノオキサゾール、アミノイソオキサゾール、アミノチアゾール、アミノイソチアゾール、アミノインドール、アミノベンゾイミダゾール、アミノインダゾール、アミノベンゾオキサゾール、アミノベンゾチアゾール、ベンジルアミン、フェネチルアミン、フェニルプロピリアミン、フェニルブチルアミン、ベンズヒドリルアミン、アミノエチル−1,3−ジオキソラン、アミノエチルピロリジン、アミノエチルピペラジン、アミノエチルピペリジン、アミノエチルモルホリン,アミノプロピルイミダゾールおよびアミノプロピルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0034】
上述したようなジカルボン酸無水物およびモノアミン化合物の配合量は、用途、粘度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、テトラカルボン酸二無水物またはジアミン化合物に対して0.02〜0.4モル当量程度とすることが好ましい。
【0035】
前述の一般式(1)で表わされるポリアミド酸を合成する方法は特に限定されないが、不活性ガス雰囲気の下、有機極性溶媒中で無水の条件下に重合させる方法が好ましい。この反応時に用いられる有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−アセチル−ε−カプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、(2−アセトキシエチル)(2−メトキシエチル)エーテル、(2−アセトキシエチル)(2−エトキシエチル)エーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ピロリン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、フェノール、クレゾール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニルアセトンなどが例示され、これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてよい。反応温度は通常−20〜100℃、好ましくは−5〜30℃である。反応圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。反応時間はテトラカルボン酸二無水物の種類、反応溶媒の種類により異なり、通常1〜24時間で十分である。
【0036】
こうして得られるポリアミド酸は、0.5wt%−N−メチル−2−ピロリドン溶液のインヒーレント粘度が0.3(dL/g)以上であることが好ましい。この理由は、ポリアミック酸のインヒーレント粘度が低すぎる、すなわちポリアミド酸の重合度が低すぎる場合には、耐熱性の十分なポリイミド樹脂を得ることができなくなるおそれがあるからである。
【0037】
前記一般式(1)で表わされるポリイミド前駆体(ポリアミド酸)としては、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物および9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸二無水物と、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3”−ジアミノテルフェニル、4,4”−ジアミノテルフェニル、オキシ−3,3’−ジアニリン、オキシ−3,4’−ジアニリン、オキシ−4,4’−ジアニリン、スルホニル−3,3’−ジアニリン、スルホニル−4,4’−ジアニリン、メチレン−3,3’−ジアニリン、メチレン−4,4’−ジアニリン、2,2−プロピリデン−3,3’−ジアニリン、2,2−プロピリデン−4,4’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−3,3’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−5,5’−ジ(2−トルイジン)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(2−アミノフェノール)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス[2−(3−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス[2−(3−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、オキシ−5,5’−ビス[3−(トリフルオロメチル)アニリン]、1,8−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどのジアミン化合物を有機溶媒中で反応させて合成したポリアミド酸が望ましく、その中でも特に、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物および9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸二無水物と、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、オキシ−3,3’−ジアニリン、オキシ−3,4’−ジアニリン、オキシ−4,4’−ジアニリン、スルホニル−3,3’−ジアニリン、スルホニル−4,4’−ジアニリン、メチレン−3,3’−ジアニリン、メチレン−4,4’−ジアニリン、2,2−プロピリデン−3,3’−ジアニリン、2,2−プロピリデン−4,4’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−3,3’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ジアニリン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−5,5’−ジ(2−トルイジン)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(2−アミノフェノール)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、オキシ−5,5’−ビス[3−(トリフルオロメチル)アニリン]、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどのジアミン化合物を有機溶媒中で反応させて合成したポリアミド酸が望ましい。
【0038】
上述したようなポリイミド前駆体を硬化させるために、(A1)、(A2),(A3)のいずれかの熱硬化促進剤がポリイミド前駆体組成物に配合される。使用され得る熱硬化促進剤について、以下に詳細に説明する。(A1)水溶液中の酸解離指数pKa(酸解離定数Kaの逆数の対数)が0〜8の範囲にある置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物からなる熱硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ジピリジル、ジキノリル、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、フェナントロリン、フェナジン、トリアジン、テトラジン、プテリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどの非置換含窒素複素環基を有する化合物が挙げられる。これらの複素環基は、以下に示す各種特性基で置換されて置換含窒素複素環基を構成していてもよい。
【0039】
前記含窒素複素環基に導入される特性基としては、例えば、ジ置換アミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジキシリルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ベンジルメチルアミノ基など)、モノ置換アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert.-ブチルアミノ基、アニリノ基、アニシジノ基、フェネチジノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、ピリジルアミノ基、チアゾリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ベンジリデンアミノ基など)、環状アミノ基(ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1−ピロリル基、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、1−トリアゾリル基など)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、シンナモイルアミノ基、ピリジンカルボニルアミノ基、トリフルオロアセチルアミノ基など)、スルホニルアミノ基(メシルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ピリジルスルホニルアミノ基、トシルアミノ基、タウリルアミノ基、トリフルオロメチルスルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、メチルスルファモイルアミノ基、スルファニルアミノ基、アセチルスルファニルアミノ基など)、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基、セミカルバジド基、カルバジド基、ジ置換ヒドラジノ基(ジメチルヒドラジノ基、ジフェニルヒドラジノ基、メチルフェニルヒドラジノ基など)、モノ置換ヒドラジノ基(メチルヒドラジノ基、フェニルヒドラジノ基、ピリジルヒドラジノ基、ベンジリデンヒドラジノ基など)、ヒドラジノ基、アミジノ基、ヒドロキシ基、オキシム基(ヒドロキシイミノメチル基、メトキシイミノメチル基、エトキシイミノメチル基、ヒドロキシイミノエチル基、ヒドロキシイミノプロピル基など)、アルコキシアルキル基(ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基など)、シアノ基、シアナト基、チオシアナト基、ニトロ基、ニトロソ基、オキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、アセトキシ基など)、チオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基など)、メルカプト基、ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)、カルボキシル基およびその塩、オキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基など)、アミノカルボニル基(カルバモイル基、メチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、ピリジルカルバモイル基、カルバゾイル基、アロファノイル基、オキサモイル基、スクシンアモイル基など)、チオカルボキシル基およびその塩、ジチオカルボキシル基およびその塩、チオカルボニル基(メトキシチオカルボニル基、メチルチオカルボニル基、メチルチオチオカルボニル基など)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ベンゾイル基、シンナモイル基、ピリジンカルボニル基、チアゾールカルボニル基、トリフルオロアセチル基など)、チオアシル基(チオホルミル基、チオアセチル基、チオベンゾイル基、ピリジンチオカルボニル基など)、スルフィン酸基およびその塩、スルホン酸基およびその塩、スルフィニル基(メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基など)、スルホニル基(メシル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ピリジルスルホニル基、トシル基、タウリル基、トリフルオロメチルスルホニル基、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、スルファニリル基、アセチルスルファニリル基など)、オキシスルホニル基(メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、フェノキシスルホニル基、アセトアミノフェノキシスルホニル基、ピリジルオキシスルホニル基など)、チオスルホニル基(メチルチオスルホニル基、エチルチオスルホニル基、フェニルチオスルホニル基、アセトアミノフェニルチオスルホニル基、ピリジルチオスルホニル基など)、アミノスルホニル基(スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、アセトアミノフェニルスルファモイル基、ピリジルスルファモイル基など)、アンモニオ基(トリメチルアンモニオ基、エチルジメチルアンモニオ基、ジメチルフェニルアンモニオ基、ピリジニオ基、キノリニオ基など)、アゾ基(フェニルアゾ基、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基など)、アゾキシ基、ハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基など)、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基など)、複素環基、有機ケイ素基(シリル基、ジシラニル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など)などを挙げることができ、導入される置換基としては、ヒドロキシ基、オキシ基、オキシム基、アミノカルボニル基、アルコキシアルキル基、ジ置換アミノ基、モノ置換アミノ基、環状アミノ基、アシルアミノ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、チオ基が特に望ましい。
【0040】
(A2)アミノ酸化合物またはN−アシルアミノ酸化合物からなる熱硬化促進剤としては、例えば、グリシン、サルコシン、ジメチルグリシン、ベタイン、アラニン、β−アラニン、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−オキソ酪酸、バリン、β−アミノイソ吉草酸、γ−アミノイソ吉草酸、ノルバリン、β−アミノ吉草酸、γ−アミノ吉草酸、δ−アミノ吉草酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、α−メチルセリン、イソセリン、α−メチルイソセリン、シクロセリン、トレオニン、o−メチルトレオニン、アロトレオニン、o−メチルアロトレオニン、ロセオニン、トランス−3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、シス−3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、ε−アミンカプロン酸、ω−アミノドデカン酸、β−ヒドロキシバリン、β−ヒドロキシイソロイシン、α−ヒドロキシ−β−アミノイソ吉草酸、ε−ジアゾ−δ−オキソノルロイシン、α−アミノ−ε−ヒドロキシアミノカプロン酸、システイン、シスチン、S−メチルシステイン、S−メチルシステインスルホキシド、システイン酸、ホモシステイン、ホモシスチン、メチオニン、ペニシラミン、タウリン、α,β−ジアミノプロピオン酸、オルニチン、リシン、アルギニン、カナリン、カナバニン、δ−ヒドロキシリシン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソアスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、イソグルタミン、α−メチルグルタミン酸、β−ヒドロキシグルタミン酸、γ−ヒドロキシグルタミン酸、α−アミノアジピン酸、シトルリン、シスタチオニン、フェニルアラニン、α−メチルフェニルアラニン、o−クロロフェニルアラニン、m−クロロフェニルアラニン、p−クロロフェニルアラニン、o−フルオロフェニルアラニン、m−フルオロフェニルアラニン、p−フルオロフェニルアラニン、β−(2−ピリジル)アラニン、チロシン、ジクロロチロシン、ジブロモチオシン、ジヨードチロシン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、α−メチル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、アニリノ酢酸、2−ピリジルグリシン、トリプトファン、ヒスチジン、1−メチルヒスチジン、2−チオールヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸化合物が挙げられる。これらのアミノ酸化合物におけるアミノ基を以下のような置換基で置換して、N−アシルアミノ酸化合物を構成してもよい。
【0041】
この場合、導入され得る置換基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ピコリノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、キノリンカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、ピリミジンカルボニル基、ピラジンカルボニル基、イミダゾールカルボニル基、ベンゾイミダゾールカルボニル基、チアゾールカルボニル基、ベンゾチアゾールカルボニル基、オキサゾールカルボニル基、ベンゾオキサゾールカルボニル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピメロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、マレオイル基、フマロイル基、シトラコノイル基、メサコノイル基、メソキサリル基、オキサルアセチル基、カンホロイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、オキサロ基、メトキサリル基、エトキサリル基、グリオキシロイル基、ピルボイル基、アセトアセチル基、メソキサロ基、オキサルアセト基、システイニル基、ホモシステイニル基、トリプトフィル基、アラニル基、β−アラニル基、アルギニル基、シスタチオニル基、シスチル基、グリシル基、ヒスチジル基、ホモセリル基、イソロイシル基、ランチオニル基、ロイシル基、リシル基、メチオニル基、ノルロイシル基、ノルバリル基、オルニチル基、プロリル基、サルコシル基、セリル基、トレオニル基、チロニル基、チロシル基、バリル基などのアシル基が挙げられる。
【0042】
(A3)前記一般式(2)で表わされるヒドロキシ化合物からなる熱硬化促進剤としては、例えば、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、テトラリン、アズレン、ビフェニレン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ピセン、ペリレン、ベンゾピレン、ルビセン、コロネン、オバレン、インデン、ペンタレン、ヘプタレン、インダセン、フェナレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、ナフタセン、プレイアデン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、ビフェニル、テルフェニル、クァテルフェニル、キンクフェニル、セキシフェニルなどの芳香族炭化水素基を、カルボキシ基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、置換もしくは非置換のアミノ基または置換もしくは非置換のアミノアルキル基の中から少なくとも2種類の特性基で置換した置換芳香族炭化水素基が例示される。
【0043】
上述した熱硬化促進剤は、いずれも200℃程度以下でポリアミド酸の硬化を促進する低温硬化促進剤である。これらの低温硬化促進剤は、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0044】
気化点(沸点、昇華点、分解点)の低さ、硬化促進効果およびポリアミド酸溶液への溶解性などの面から、熱硬化促進剤としては、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、フェナントロリン、フェナジン、2,2’−ジピリジル、2,4’−ジピリジル、4,4’−ジピリジル、2,2’−ジキノリル、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−メチルベンズイミダゾール、1−エチルベンズイミダゾール、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、ピコリン酸アミド、ニコチン酸アミド、イソニコチン酸アミド、ヒドロキシニコチン酸、ピコリン酸エステル、ニコチン酸エステル、イソニコチン酸エステル、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、ピコリンアルデヒド、ニコチンアルデヒド、イソニコチンアルデヒド、3−ニトロピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−(ヒドロキシメチル)ピリジン、3−(ヒドロキシメチル)ピリジン、4−(ヒドロキシメチル)ピリジン、2−(ヒドロキシエチル)ピリジン、3−(ヒドロキシエチル)ピリジン、4−(ヒドロキシエチル)ピリジン、ピコリンアルドキシム、ニコチンアルドキシム、イソニコチンアルドキシム、ヒダントイン、ヒスチジン、ウラシル、バルビツール酸、ジアルル酸、シトシン、アニリノ酢酸、2−ピリジルグリシン、トリプトファン、プロリン、N−アセチルグリシン、馬尿酸、N−ピコリノイルグリシン、N−ニコチノイルグリシン、N−イソニコチノイルグリシン、N−アセチルアラニン、N−ベンゾイルアラニン、N−ピコリノイルアラニン、N−ニコチノイルアラニン、N−イソニコチノイルアラニン、α−(アセチルアミノ)酪酸、α−(ベンゾイルアミノ)酪酸、α−(ピコリノイルアミノ)酪酸、α−(ニコチノイルアミノ)酪酸、α−(イソニコチノイルアミノ)酪酸、N−アセチルバリン、N−ベンゾイルバリン、N−ピコリノイルバリン、N−ニコチノイルバリン、N−イソニコチノイルバリン、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2−(ヒドロキシフェニル)酢酸、3−(ヒドロキシフェニル)酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)イソバレル酸、2−フェノールスルホン酸、3−フェノールスルホン酸、4−フェノールスルホン酸、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒドなどの使用が特に好ましい。
【0045】
これらの熱硬化促進剤は、ポリイミド前駆体に対して3wt%以上の割合で配合される。熱硬化促進剤の割合が3wt%未満では、少なすぎるためポリアミド酸のイミド化が不十分となり、良好なポリイミド樹脂が得られない。熱硬化促進剤の配合量は、最大でもポリアミド前駆体の100wt%とすることが好ましい。熱硬化促進剤の配合量が多すぎる場合には、ポリイミド前駆体組成物の貯蔵安定性が低下したり、加熱硬化後に残留する熱硬化促進剤の量が多くなって諸特性に悪影響を及ぼすおそれがある。熱硬化促進剤の配合量は、好ましくはポリイミド前駆体に対して5〜50wt%である。
【0046】
本発明の実施形態において用いられるポリイミド前駆体組成物には、特定のフィラーが配合されなければならない。
フィラーは、50℃以下でポリイミド前駆体の溶液に難溶であることが要求される。難溶とは、ポリイミド前駆体の溶液に対するフィラーの溶解度が0.1%以下であることをさす。不溶、すなわち、ポリイミド前駆体の溶液に対するフィラーの溶解度が0.01%以下であることがより好ましい。
【0047】
さらにフィラーは、一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーおよび/または樹脂コートした無機フィラー、一次粒子の平均径が0.05〜100μmの有機フィラーのいずれかからなることが必要である。一次粒子とは、結晶的に単一と考えられる単位粒子をさす。その平均径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)等によって得られるイメージ写真から目視計測することができる。あるいは、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計測等により機械計測してもよい。
【0048】
絶縁性無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、タルク、石英粉、炭酸カルシウム、および酸化マグネシウムなどが挙げられる。こうした絶縁性無機フィラーは、例えば、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、またはトリアジン樹脂などの樹脂でコートして用いることができる。絶縁特性、環境安定性、消泡性などの特性が優れていることから、これらの無機フィラーのなかでもシリカ(アエロジル、球状シリカなど)やアルミナのフィラーが特に好ましく用いられる。ただし、一次粒子の平均径は0.001μm〜1μmに規定される。0.001μm未満の場合には、増粘効果が大きくワニスの粘度が高くなりすぎてハンドリングが困難となる。一方、1μmを越えると、消泡性やチキソトロピー性が低下する。
【0049】
有機フィラーとしては、例えば、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、およびトリアジン樹脂などが挙げられる。耐熱性や耐溶剤性の点から、これらの有機フィラーのなかでも、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。ただし、一次粒子の平均径は0.05μm〜100μmに規定される。0.05μm未満の場合には、フィラーが溶剤に溶解しやすくなり、フィラー分散系を保持することが困難となる。一方、100μmを越えると、消泡性やチキソトロピー性、それに均一分散性などが低下する。
【0050】
無機フィラーおよび有機フィラーのいずれも、消泡性やチキソトロピー性を持たせるために、50℃以下でポリイミド前駆体の溶液に不溶/難溶であることが必要である。なお、通常、ポリイミド前駆体組成物が変性して粘度等の上昇が起こらないように、保管やスクリーン印刷時の温度は50℃以下で行うのが望ましいことから、温度は50℃以下に規定した。
【0051】
上述したようなフィラーをポリイミド前駆体樹脂組成物に分散することによって、チキソトロピー性、消泡性が飛躍的に改善され、スクリーン印刷による印刷特性が向上する。その結果、微細なポリイミドパターン膜を形成することが可能になる。また、これらのフィラーは熱硬化膜に残留するので、ポリイミド膜の耐熱性、密着性、さらには硬度などを向上させることできる。
【0052】
フィラーは、単独で用いても2種以上混合して用いてもよいが、配合量はポリイミド前駆体に対して3wt%以上に規定される。フィラーの配合量が少なすぎる場合にはチキソトロピー性、消泡性などが不十分となって印刷特性が低下し、微細なポリイミドパターン膜を形成することができなくなる。得られるポリイミドパターン膜の絶縁性や誘電特性の低下を引き起こさないために、フィラーの配合量は、最大でもポリイミド前駆体に対して50wt%とすることが望まれる。フィラーの配合量は、より好ましくはポリイミド前駆体に対して5〜20wt%である。
【0053】
スクリーン印刷時のチキソトロピー性および消泡性などを考慮すると、フィラーとしては一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーが望ましく、特に、アルミナ、シリカ、酸化チタン、あるいは酸化亜鉛からなる0.005〜0.1μmの絶縁性無機フィラーが望ましい。
【0054】
ポリイミド前駆体組成物は、上述したような成分を所定の溶媒に溶解して調製することができる。使用し得る溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、(2−アセトキシエチル)(2−メトキシエチル)エーテル、(2−アセトキシエチル)(2−エトキシエチル)エーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ピロリン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、フェノール、クレゾール、シクロヘキサノン、アセトニルアセトンなどが例示され、これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてよい。
【0055】
本発明の実施形態において使用されるポリイミド前駆体組成物には、カルボン酸無水物やDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)といった脱水剤は必要とされず、むしろ脱水剤を加えてはいけない。こうした脱水剤が配合されると、ポリイミド前駆体組成物が短時間でゲル化してしまい、貯蔵安定性が著しく低下してしまう。
【0056】
ポリイミド前駆体組成物を調製する際の攪拌方法は特に限定されず、スパーテルなどを用いた手動攪拌法、メカニカルスターラー、ミックスローター、あるいは遊星式攪拌装置などによる機械攪拌法などを採用することができる。
【0057】
上述したような方法によって得られるポリイミド前駆体組成物の粘度は、50〜3000poiseの範囲内に規定される。ポリイミド前駆体組成物の粘度が低すぎる場合は、スクリーン印刷時の形状安定性が不十分でパターンが変形しやすくなり、粘度が高すぎる場合には、スクリーン印刷のスキージング時の塗り性が低下して塗り斑等が出やすくなりやすいためである。ポリイミド前駆体組成物の粘度は、100〜2000poiseがより好ましい。
【0058】
また、かかるポリイミド前駆体組成物は、E型(コーン/プレート法)あるいはB型(シリンダ法)の回転粘度計を用いた測定(25℃以下)で、定常ずり速度が20sec-1のとき、および0.5sec-1のときに示される見掛け粘度の差が大きいため、顕著なチキソトロピー性を示す。チキソトロピー性を表わす値として、チキソトロピー性係数[η0.5/η20](定常ずり速度が0.5sec-1における見掛け粘度[η0.5]を、定常ずり速度が20sec-1における見掛け粘度[η20]で除した値とする)があり、この値が1.5以上であることが良好なスクリーン印刷特性のために好ましい。
【0059】
チキソトロピー性を有するポリイミド前駆体組成物は、焼成後膜厚として0.1〜100μmのレリーフパターンを形成することが可能である。使用するベースポリマーの重合度、粘度、濃度、フィラーの添加量、固形分濃度の設定によって、使用する版形状と所望の膜厚に対する適切な粘度特性を広範囲に調整することができる。
【0060】
ポリイミド前駆体組成物の好ましい粘度特性の範囲は、0.5sec-1における見掛け粘度[η0.5]がおおよそ50poise〜25000poiseであり、20sec-1における見掛け粘度[η20]がおおよそ10poise〜5000poise以下である。粘度が低すぎる場合([η0.5]が50poise以下または[η20]が10poise以下)には、スクリーン印刷時の形状安定性が不十分でパターンが変形しやすくなり、粘度が高すぎる場合([η0.5]が25000poise以上または[η20]が5000poise以上)には、スクリーン印刷のスキージング時の塗り性が低下して塗り斑やピンホール等が出やすくなりやすいためである。
【0061】
この粘度特性範囲のペーストの選択により、薄膜から厚膜まで、適切なスクリーン印刷条件下で、実用性に優れた版パターン開口部への充填性と、形成されたレリーフパターンの形状保持性が得られる。
【0062】
本発明の実施形態にかかる配線基板の製造方法において、ポリイミド前駆体組成物の塗布にはスクリーン印刷法が用いられる。スクリーン印刷して熱硬化するだけで、ポリイミドレリーフ膜を形成することができ、従来ポリイミド膜を塗布して製膜し、熱硬化後に湿式または乾式により加工していた工程を大幅に簡略化することができ、製造コストを大幅に軽減することができる。
【0063】
図3乃至図7を参照して、スクリーン印刷法について説明する。
【0064】
先ず、周知のスクリーン印刷装置を用いて図3に示すように、ベース絶縁基材11上にメッシュスクリーンマスク20を位置決めして装着する。この位置決めは、例えば画像認識を行なうことによって行なうことができる。メッシュスクリーンマスク20には、電極部の形成位置に予め開口部が形成されている。
【0065】
メッシュ版としては、例えば40〜600メッシュのメッシュ版が使用することができる。ポリイミドレリーフ膜の膜厚を10μm以上に厚くしたい場合には、250メッシュ未満のメッシュ版を用い、200μm径以下のホールなどの高解像のパターン膜を形成する場合には、250メッシュ以上のメッシュ版などを用いる。
【0066】
次いで、図4に示すように、メッシュスクリーンマスク20にポリイミド前駆体組成物21を装填し、図5に示すようにスキージ22を印刷方向に移動させる。印刷条件等は、印刷スキージ速度0.1〜50mm/sec,スキージ角度50〜90°、スキージ硬度50〜100の範囲であることが望ましい。また、スキージの材質としては、各種ポリマー系のものやメタル系のものなどがあるが、ポリイミド樹脂前駆体組成物で使用する溶媒が溶解性の高い極性溶媒であることから、使用するスキージの材質としては、メタルまたはシリコンゴムなどが望ましい。
【0067】
こうして、メッシュスクリーンマスク20を介して、ポリイミド前駆体組成物21をベース絶縁基材11上に印刷する。
【0068】
スクリーン印刷時に使用されるマスクとしては、ポリマー系またはメタルのメッシュスクリーンマスク、およびメタルマスクが一般的である。ポリイミド樹脂前駆体組成物で使用する溶媒が溶解性の高い極性溶媒であることから、メタルメッシュスクリーンマスクまたはメタルマスクが望ましい。ところで、スクリーン印刷法では、マスク上でスキージを走査させることにより印刷を行なう方法であるため、印圧がマスクを介して基板の回路形成面に印加されてしまう。よって、回路形成面が非常に微弱である場合には、この印圧印加により回路形成面にダメージを受けることが懸念される。
【0069】
このダメージに対しては、メッシユ版の方がメタル版に対して有利であることが知られている。しかるに、本発明者がメッシユ版およびメタル版の双方のマスクを用いて基板に対しポリイミド前駆体組成物のスクリーン印刷を行なったところ、マスクの種類によるダメージの影響は見られなかった。よって、基板に対しポリイミド前駆体組成物をスクリーン印刷する際、マスクの種類はメッシユマスクおよびメタルマスクの双方の使用が可能である。ポリイミド樹脂前駆体組成物で使用する溶媒が溶解性の高い極性溶媒であることから、使用するマスクの材質としては、ステンレスなどのメタルメッシュマスクまたはメタルマスクが望ましい。
【0070】
上述したように、スクリーン印刷工程を実施することにより、基板上の電極部の形成位置を除きポリイミド前駆体組成物が印刷される。この際、スクリーン印刷法では、基板上における樹脂膜の配設位置にポリイミド前駆体組成物を一括的に配設できるため、効率良くまた低コストでポリイミド前駆体組成物の配設を行なうことができる。
【0071】
また、スクリーン印刷法では、印刷するポリイミド前駆体組成物の膜厚をマスクの厚さにより容易にコントロールすることができ、印刷されるポリイミド前駆体組成物の膜厚を基板の全面において容易に均一化することができる。よって、20〜50μmと比較的厚い寸法を要するポリイミド前駆体組成物膜であっても、スクリーン印刷法を用いることにより容易に所定の膜厚を実現することができる。
【0072】
しかも、スクリーン印刷法は、従来用いられていたスピンコート法のようにウェーハを回転させる必要がないため、スピンコート法に比べて設備コストの低減を図ることができ、成膜に要するコストを低減することができる。さらに、スクリーン印刷法は、ポッティング法のように、ポリイミド前駆体組成物がウェーハの全面に行き渡らないということもなく、よって濡れ不足が発生するようなこともない。
【0073】
このようにスクリーン印刷法を用いることによって、50〜100μmの微細な加工も可能であり、位置合わせを正確にできる。しかも、高価な金型やフォトマスクが必要なく、安価なスクリーンマスクおよび印刷機を用いて配線基板を製造することができる。
【0074】
スクリーン印刷工程が終了すると、図6に示すようにマスクをベース絶縁基材11上から取り外すと共に、消泡または樹脂膜のレベリングのための静置工程が実施される。この時間は使用するマスクの種類などに依存するが、概ね5〜60分程度である。この後、加熱することによって、ポリイミド前駆体組成物膜がポリイミドレリーフ膜23に変化する。
【0075】
加熱は、例えば大気中または不活性ガス雰囲気中、60〜300℃の温度範囲で行なうことができる。あるいは、同様の雰囲気中、60〜250℃の温度範囲で加熱後100〜250℃で真空加熱してもよい。低温ベークのためにベーク時の変形が起こりにくく、屈曲性や密着性などの特性に優れたポリイミド膜パターンが得られる。
【0076】
加熱方法としては、ホットプレートによる加熱、オーブンによる加熱、真空乾燥器による加熱などを採用することができる。加熱時間は、使用するポリアミド酸や熱硬化促進剤の種類、加熱温度、さらには膜厚などによって異なるが、5分〜3時間で十分である。この熱処理によって塗膜中に残存する溶媒成分が揮発し、またポリアミド酸のイミド化によるイミド構造への変化が起こる。さらに蒸発、昇華、分解などにより熱硬化促進剤が揮発して、図7に示すようなポリイミド組成物膜24が形成される。
【0077】
このように、本発明の実施形態にかかる方法によれば、簡便なプロセスで安価に配線基板を製造することができる。しかも、得られる配線基板には、接着層が存在しないため、薄型化/軽量化が可能であり、耐熱性も高められる。
【0078】
ここで、図8乃至図13を参照して、従来のPEP法を用いた場合について説明する。
PEP法では、まず、図8に示すように、プリント基板31上にポリイミドワニスを塗布し、乾燥してポリアミド酸膜32を形成する。これを300℃以上の高温でベークして、図9に示すようなポリイミド膜33を形成した後、レジスト膜34を図10に示すように堆積する。
【0079】
高温ベークによりポリイミドのベタ膜を形成するため、加熱硬化時に基板が変形(カール等)しやすい。また、高温ベーク時の基板とポリイミド膜との熱膨張係数の差によって、膜剥離や膜接着強度が低下するおそれがあり、銅配線などの熱酸化も生じやすい。
【0080】
さらに、UV露光機などを用いて常法によりレジスト膜34に露光を施し、例えばアルカリ現像液で現像して、図11に示すようにレジストパターン35を得る。その後、必要に応じて、リンスおよび乾燥を行なってもよい。レジストパターン35をマスクとして用いて、ポリイミド膜33をヒドラゾンエッチング液などによりエッチィングして、図12に示すようにポリイミド膜パターン36を形成する。このとき、ポリイミド膜や配線層の劣化が生じるおそれがある。レジスト剥離液により、レジストパターン35を剥離した後、リンスおよび乾燥を行なって、図13に示すようにポリイミド膜パターンが完成する。
【0081】
PEP法の場合には、製造プロセスが煩雑で、製造コストが高価であるのに加えて、高温ベークやエッチングに起因したポリイミド膜や配線層の劣化が起こりやすい。
本発明の実施形態にかかる方法を用いることによって、従来の製造プロセスの問題は全て回避することが可能となった、しかも得られる配線基板は、薄型で軽量であり、耐熱性も優れている。
【0082】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、以下に示す手法により、数種類のポリイミド前駆体組成物を調製した。
宇部興産社製ポリアミド酸ワニス「U−ワニス−A」20gに、熱硬化促進剤「4−ヒドロキシピリジン」1gと、日本アエロジル社製シリカフィラー「AEROSIL200」0.5gを混合・攪拌して、ポリイミド前駆体組成物(PI−1)を得た。ここで用いたポリアミド酸ワニスは、4gのポリイミド前駆体を溶媒としてのN−メチル−2−ピロリジノン16gに溶解してなるものである。熱硬化促進剤は、(A1)に相当し、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して25wt%程度である。また、フィラーの一次粒子の平均径は、0.012μm程度であり、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して12.5wt%程度である。
【0083】
得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ1050poiseおよび260poiseであった。チキソトロピー係数は4.0であり、良好なチキソトロピー性が認められた。
【0084】
インダストリーサミットテクノロジー社製ポリアミド酸ワニス「スカイボンド703」10gに、熱硬化促進剤「4−ヒドロキシピリジン」1gと、日本アエロジル社製シリカフィラー「AEROSIL200」0.5gを混合・攪拌して、ポリイミド前駆体組成物(PI−2)を得た。ここで用いたポリアミド酸ワニスは、5gのポリイミド前駆体を溶媒としてのN−メチル−2−ピロリジノン5gに溶解してなるものである。熱硬化促進剤は、(A1)に相当し、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して20wt%程度である。また、フィラーの一次粒子の平均径は、0.012μm程度であり、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して10wt%程度である。
【0085】
得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ1240poiseおよび250poiseであった。チキソトロピー係数は5.0であり、良好なチキソトロピー性が認められた。
【0086】
東レ社製「セミコファインSP−483」20gに、熱硬化促進剤「4−ヒドロキシピリジン」1gと、日本アエロジル社製シリカフィラー「AEROSIL200」0.5gを混合・攪拌して、ポリイミド前駆体組成物(PI−3)を得た。ここで用いたポリアミド酸ワニスは、4gのポリイミド前駆体を溶媒としてのN−メチル−2−ピロリジノン16gに溶解してなるものである。熱硬化促進剤は、(A1)に相当し、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して25wt%程度である。また、フィラーの一次粒子の平均径は、0.012μm程度であり、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して12.5wt%程度である。
【0087】
得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ1060poiseおよび250poiseであった。チキソトロピー係数は4.2であり、良好なチキソトロピー性が認められた。
【0088】
宇部興産社製ポリアミド酸ワニス「U−ワニス−A」20gに、熱硬化促進剤「ベンズイミダゾール」1gと、日本アエロジル社製シリカフィラー「AEROSIL200」0.5gを混合・攪拌して、ポリイミド前駆体組成物(PI−4)を得た。ここで用いたポリアミド酸ワニスは、4gのポリイミド前駆体を溶媒としてのN−メチル−2−ピロリジノン16gに溶解してなるものである。熱硬化促進剤は、(A1)に相当し、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して25wt%程度である。また、フィラーの一次粒子の平均径は、0.012μm程度であり、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して12.5wt%程度である。
【0089】
得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ1060poiseおよび260poiseであった。チキソトロピー係数は4.1であり、良好なチキソトロピー性が認められた。
【0090】
インダストリーサミットテクノロジー社製ポリアミド酸ワニス「スカイボンド703」10gに、熱硬化促進剤「馬尿酸」1gと、日本アエロジル社製アルミナフィラー「酸化アルミニウムC」0.5gを混合・攪拌して、ポリイミド前駆体組成物(PI−5)を得た。ここで用いたポリアミド酸ワニスは、5gのポリイミド前駆体を溶媒としてのN−メチル−2−ピロリジノン5gに溶解してなるものである。熱硬化促進剤は、(A2)に相当し、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して20wt%程度である。また、フィラーの一次粒子の平均径は、0.013μm程度であり、その配合量は、ポリイミド前駆体に対して10wt%程度である。
【0091】
得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ980poiseおよび250poiseであった。チキソトロピー係数は3.9であり、良好なチキソトロピー性が認められた。
【0092】
フィラーを配合しない以外は前述の組成物(PI−1)と同様の処方により、ポリイミド前駆体組成物(RP−1)を調製した。得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ101poiseおよび92poiseであった。チキソトロピー係数は1.1であり、チキソトロピー性はほとんど認められなかった。
【0093】
フィラーを配合しない以外は前述の組成物(PI−2)と同様の処方により、ポリイミド前駆体組成物(RP−2)を調製した。得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ103poiseおよび94poiseであった。チキソトロピー係数は1.1であり、チキソトロピー性はほとんど認められなかった。
【0094】
フィラーを配合しない以外は前述の組成物(PI−3)と同様の処方により、ポリイミド前駆体組成物(RP−3)を調製した。得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ182poiseおよび160poiseであった。チキソトロピー係数は1.14であり、とチキソトロピー性はほとんど認められなかった。
【0095】
フィラーを配合しない以外は前述の組成物(PI−4)と同様の処方により、ポリイミド前駆体組成物(RP−4)を調製した。得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ104poiseおよび95poiseであった。チキソトロピー係数は1.1であり、チキソトロピー性はほとんど認められなかった。
【0096】
フィラーを配合しない以外は前述の組成物(PI−5)と同様の処方により、ポリイミド前駆体組成物(RP−5)を調製した。得られた前駆体組成物の見掛け粘度(測定温度25℃)を、E型回転粘度計で測定したところ、0.5sec-1および20sec-1において、それぞれ104poiseおよび98poiseであった。チキソトロピー係数は1.09であり、チキソトロピー性はほとんど認められなかった。
【0097】
上述のポリイミド前駆体組成物を用いて、スクリーン印刷性を評価した。
【0098】
(実施例1)
テスト用印刷スクリーンマスク(ステンレス製200メッシュ)を用いて、銅張りフレキシブルプリント基材の上に、ポリイミド前駆体組成物(PI−1)のスクリーン印刷を10ショット行なった。室温で30分間レベリングを行ない、プログラムオーブンにより、80℃で30分間、昇温20分間、200℃で1時間、放冷の熱硬化プロセスにより、ポリイミド組成物パターン膜を形成した。
【0099】
得られたポリイミド組成物パターン膜のパターン形状を、目視および光学顕微鏡により評価した。評価は、パターンの「ニジミまたはタレ不良(パターン幅方向にペーストが広がり、隣のパターンと接続したブリッジ状態の不良)」、「かすれ不良(印刷パターンの所定の大きさより小さく印刷されたもの、パターンの欠けの不良)」、「ボイドまたは欠け」、および「ローリング性(スキージの移動時にペーストがスクリーン上でスキージの進行方向側の前面で、ほぼ円柱状態で回転流動するときの回転状態の不良)」について行なった。その結果、いずれの不良も認められず、印刷性は良好であった。
【0100】
また、ポリイミド組成物膜パターンの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、フィラーが均一に分散されていることが確認された。
【0101】
(実施例2〜10)
ポリイミド前駆体組成物(PI−2)、(PI−3)、(PI−4)、(PI−5)を用いた以外は、前述の実施例1と同様にポリイミド膜パターンを形成して印刷試験を行なった。テストの結果、いずれの組成物を用いた場合も不良は何ら認められず、印刷性は良好であった。いずれの組成物を用いた場合も、ポリイミド膜パターンにはフィラーが均一に分散されていた。
前述の実施例1〜5で作製したポリイミド組成物硬化膜の密着性を、ゴバン目試験により評価した。その結果、いずれも膜剥がれは認められず、密着性は良好であった。
【0102】
(比較例1〜5)
ポリイミド前駆体組成物(RP−1)、(RP−2)、(RP−3)、(RP−4)、(RP−5)を用いた以外は、前述の実施例1と同様の印刷試験を行なった。テストの結果、チキソトロピー性不足による大きなニジミや消泡性不足によるボイドの発生が多数見うけられ、印刷性は不良であった。
こうした組成物を用いて、スクリーン印刷によりプリント配線板を製造したところで、良好な電気的特性や耐久性が得られないことは容易に推測される。
【0103】
(実施例6)
さらに、ポリイミド前駆体組成物を用いてプリント配線板を作製し、評価した。
無接着剤銅張積層板として、JIS−C5016に準拠した回路加工を施したプリント配線基板(FPC)を用意した。この上に、ポリイミド前駆体組成物(PI−1)のスクリーン印刷を行なった。スクリーン印刷は、三谷電子工業(株)社製の#200のステンレスメッシュマスクを用いて、シリコンゴム製スキージを装着した(株)ミノグループ社製スペアマチック印刷機により10ショット行なった。室温で30分間レベリングを行ない、プログラムオーブンにより、80℃で30分間、昇温20分間、200℃で1時間、放冷の熱硬化プロセスにより、ポリイミド組成物表面保護膜(平均膜厚:16μm)を形成してプリント配線板(FPC)を作製した。
【0104】
FPCはカールが実質的にないものであり、JIS−C5016による線間絶縁抵抗は6×10(15)であった。保護皮膜とFPCとの密着性は、ゴバン目試験により膜剥がれがなく、強固に密着していた。
【0105】
得られたプリント配線板の特性評価を行なったところ、電気的な不良などは認められず、良好な特性を示した。また、プレッシャークッカーテストによっても、膜剥がれなどの不良は認められず、優れた耐久性を示した。
【0106】
(実施例7〜10)
ポリイミド前駆体組成物(PI−2)、(PI−3)、(PI−4)、(PI−5)を用いた以外は前述の実施例6と同様な手法によりプリント配線板を作製した。得られたプリント配線板の特性評価を行なったところ、いずれも不良は認められず、良好な特性を示した。また、プレッシャークッカーテストによっても、膜剥がれなどの不良は認められず、優れた耐久性を示した。
【0107】
実施例のプリント配線板においては、ポリイミド組成物表面保護膜と基板との間に接着層が存在しないので、接着剤起因の不純物等の混入が避けられる。これに起因して、薄膜軽量化も可能といった利点も得られ、接着層による耐熱性の低下は生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の構成を表わす断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る配線基板の構成を表わす断面図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる配線基板の製造方法の工程を表わす断面図。
【図4】図3に続く工程を表わす断面図。
【図5】図4に続く工程を表わす断面図。
【図6】図5に続く工程を表わす断面図。
【図7】図6に続く工程を表わす断面図。
【図8】PEP法による配線基板の製造方法の工程を表わす断面図。
【図9】図8に続く工程を表わす断面図。
【図10】図9に続く工程を表わす断面図。
【図11】図10に続く工程を表わす断面図。
【図12】図11に続く工程を表わす断面図。
【図13】図12に続く工程を表わす断面図。
【符号の説明】
【0109】
10…片面板フレキシブル配線基板; 11…ベース絶縁基材; 12…配線層
13…絶縁層 14…表面保護膜; 15…両面板フレキシブル配線基板
16…銅箔; 17…銅メッキ; 20…スクリーンマスク
21…印刷用ポリイミドワニス; 22…スキージ; 23…ポリアミド酸パターン膜
24…ポリイミドパターン膜; 31…プリント基板; 32…ポリアミド酸膜
33…ポリイミド膜; 34…レジスト膜; 35…レジストパターン
36…ポリイミド膜パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、配線層が埋め込まれた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた表面保護膜とを具備し、
前記絶縁層および表面保護膜の少なくとも一方は、ポリイミド前駆体を硬化させてなるとともにフィラーを含有するポリイミド樹脂膜を含み、前記フィラーは、50℃以下で前記ポリイミド前駆体の溶液に難溶であり、一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーおよび/または樹脂コートした無機フィラー、一次粒子の平均径が0.05〜100μmの有機フィラーのいずれかからなることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
基材上に、50〜3000poiseの粘度を有するポリイミド前駆体組成物をスクリーン印刷法により塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を、大気中または不活性ガス雰囲気中、60〜300℃の温度範囲で加熱、または60〜250℃の温度範囲で加熱後100〜250℃の温度範囲で真空加熱して、ポリイミド樹脂膜を形成する工程とを具備する配線基板の製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体組成物は、
下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリアミド酸からなるポリイミド前駆体と、
【化1】

(上記一般式(1)中、Φはそれぞれ同一でも異なっていても良く、4価の有機基を示す。Ψはそれぞれ同一でも異なっていても良く、2価の有機基を示す。nは正の整数を示す。)
前記ポリイミド前駆体に対して3wt%以上の割合で配合された熱硬化促進剤と、
前記ポリイミド前駆体に対して3wt%以上の割合で配合されたフィラーとを含有し、
前記熱硬化促進剤は、下記の(A1)〜(A3)から選ばれる有機化合物からなり、
(A1)水溶液中の酸解離指数pKa(酸解離定数Kaの逆数の対数)が0〜8の範囲にある置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物
(A2)アミノ酸化合物またはN−アシルアミノ酸化合物
(A3)下記一般式(2)で表わされるヒドロキシ化合物
【化2】

(上記一般式(2)中、Ar1およびAr2はそれぞれ同一でも異なっていても良く、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を示す。Zはそれぞれ同一でも異なっていても良く、カルボキシ基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、置換もしくは非置換のアミノ基または置換もしくは非置換のアミノアルキル基を示す。Xはそれぞれ同一でも異なっていても良く、二価のオキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルアミノ基、カルボニルオキシ基、置換もしくは非置換のアミノ基、アルキル基、ポリフルオロアルキル基または単結合を示す。aは0〜3の整数を示し、bは1〜5の整数、cは0〜5の整数を示す。なお、bとcとの和は2以上である。)
前記フィラーは、一次粒子の平均径が0.001〜1μmの絶縁性無機フィラーおよび/または樹脂コートした無機フィラー、一次粒子の平均径が0.05〜100μmの有機フィラーのいずれかからなり、50℃以下でポリイミド前駆体の溶液に難溶であることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−86196(P2006−86196A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266950(P2004−266950)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】