説明

配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置

【課題】配線パターンの露出面を覆うすずめっき層を形成する際、すずの針状結晶の析出、及び成長を抑制する。
【解決手段】絶縁基材上に銅層から成る配線パターンが形成され、配線パターン上に配線パターンを部分的に覆う絶縁体から成る保護層が形成された配線基板を、めっき液に浸漬して、配線パターンの露出面を覆うすずめっき層を形成する配線基板のめっき形成方法であって、配線基板をめっき液に浸漬する浸漬処理の途中で、配線基板をめっき液から引き上げて浸漬処理を中断する中断処理を1回以上行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置に関し、特に、配線基板上に無電解めっき層を形成する配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁基材の表面に銅層から成る配線パターンが形成された配線基板においては、配線パターンの一部表面にはソルダーレジスト等の保護層が形成され、保護層に覆われていない配線パターンの露出面には、すずめっき層が形成されている。
【0003】
すずめっき層は、半田濡れ性がよいので、配線基板上に半導体チップ等のチップ状部品を実装するときの接合材として用いることができる。また、無電解すずめっき層は、配線パターンの酸化(さび)を防止する機能も果たす。
【0004】
すずめっき層は、無電解めっき法により形成される。すなわち、配線パターン上に配線パターンを部分的に覆うソルダーレジスト等から成る保護層が形成された配線基板を、めっき液に浸漬することにより、無電解ですずめっき層を形成する(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
【0005】
なお、すずめっき層を接合材として用いる場合には、半導体チップの外部電極(パッド)との接合性を考慮し、ある一定の厚さ、例えば0.4μm以上の厚さが必要となる。すずめっき層の厚さは浸漬時間に比例するが、従来は、すずめっき層が所望の厚さに至るまで、配線基板をめっき液に連続して浸漬することとしていた。
【0006】
【特許文献1】特開平6−342969
【特許文献2】特開2001−144145
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、配線パターンを部分的に覆うソルダーレジスト等から成る保護層が形成された配線基板をめっき液に浸漬すると、配線パターンと保護層との界面にめっき液が侵入し、進入箇所に局部電池が形成されることがある。そして、局部電池の影響により、すずの針状結晶が析出・成長し、配線パターンのリード間が短絡することがある。
【0008】
本発明は、配線パターンの露出面を覆うすずめっき層を形成する際に、すずの針状結晶の析出、及び成長を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する第1の発明は、絶縁基材上に銅層から成る配線パターンが形成され、前記配線パターン上に該配線パターンを部分的に覆う絶縁体から成る保護層が形成された配線基板を、めっき液に浸漬して、前記配線パターンの露出面を覆うすずめっき層を形成する配線基板のめっき形成方法であって、前記配線基板を前記めっき液に浸漬する浸漬処理の途中で、前記配線基板を前記めっき液から引き上げて前記浸漬処理を中断する中断処理を1回以上行う。
【0010】
なお、第1の発明においては、前記銅層が、前記絶縁基材上に形成されたニッケル合金層を下地として形成されている構成としてもよい。
【0011】
また、前記配線基板を前記めっき液に最初に浸漬してから、最初に引き上げるまでの1回の浸漬処理で形成する前記無電解めっき層の厚さを0.32μm以下としてもよいし、前記配線基板を前記めっき液に最初に浸漬してから、最初に引き上げるまでの1回の浸漬処理の処理時間を60秒以下としても良い。
【0012】
さらに、前記配線基板を前記めっき液から引き上げた後、再び浸漬するまでの1回の中断時間を15秒以上180秒以下としても良い。
【0013】
前記課題を解決する第2の発明は、絶縁基材上に銅層から成る配線パターンが形成され、前記配線パターン上に該配線パターンを部分的に覆う絶縁体から成る保護層が形成された配線基板に、前記配線パターンの露出面を覆う無電解めっき層を形成するための配線基板のめっき装置であって、めっき液を蓄えるめっき槽と、前記配線基板を前記めっき槽に搬入するための搬入ローラと、前記配線基板を前記めっき槽から搬出させるための搬出ローラと、前記搬入ローラから搬入される前記配線基板をめっき液中に搬送させ、めっき液中から前記搬出ローラへ搬出するための複数個の液中ローラと、前記液中ローラ間に設けられ、前記配線基板をめっき液から引き上げるための引き上げローラと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置によれば、配線パターンの露出面を覆うすずめっき層を形成する際に、すずの針状結晶の析出、及び成長を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、図面を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置で用いる配線基板の断面図であり、(a)は無電解すずめっき層を形成する前の配線板の断面図を示し、(b)は図1(a)のA−A’線から見た配線板の断面図を示す。図2は、本発明の一実施形態にかかるめっき形成方法の説明図であり、めっき処理の時間と、無電解すずめっき層の厚さとの関係を示すグラフ図である。また、図3は、本発明の一実施形態にかかる無電解すずめっき装置の断面図である。
【0016】
(1)配線基板のめっき形成方法
まず、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法の説明に先立ち、めっき対象物として用いられる配線基板PWDの構造について、図1を用いて説明する。
【0017】
(1−1)配線基板の構造
図1(a)は、無電解すずめっき層6を形成する前の配線基板PWDの断面図である。
図1(a)に示すとおり、配線基板PWDは、ポリイミドフィルム等から成る絶縁基材1と、絶縁基材1上に形成される銅層から成る配線パターン2と、配線パターン2上を部分的に覆うソルダーレジスト等から成る保護層5と、から構成される。
【0018】
なお、配線パターン2の露出面は、後述のめっき形成方法により、図1(a)の破線で示すように無電解すずめっき層6で覆われる予定である。
【0019】
ここで、上述の配線パターン2については、近年、配線基板PWDの小型化、高密度化に伴い、その微細化が進んでいる。特に、液晶ディスプレイの駆動用IC(ドライバIC)等で用いられるCOF(Chip On Film)と呼ばれる実装形態の半導体装置に用いる配線基板PWDでは、液晶ディスプレイの高精細化に伴い、配線パターン2の間隔や、配線パターン2のリード間の間隔CSが非常に狭くなってきている。例えば、COF用の配線基板の場合、配線パターン2のリード間の間隔CSは20μm程度である。
【0020】
このような微細な配線パターン2を有する配線基板PWDは、例えば、以下のように製造される。まず、ポリイミドフィルム等から成る絶縁基材1の表面全面に、スパッタリングや無電解めっき法を用いてニッケル合金層3を形成した後、ニッケル合金層3上に、配線パターン2を形成するためのめっきレジストを形成する。続いて、ニッケル合金層3を陰電極として電気銅めっきを行い、めっきレジストに覆われていないニッケル合金層3の露出面上に、銅めっきを析出させて銅層4を形成する。その後、めっきレジストと、めっきレジストに覆われているニッケル合金層3の不要部分とを除去して、配線パターン2の形成を完了する。その後、配線パターン2上のあらかじめ定められた領域にソルダーレジストから成る保護層5を形成する。
【0021】
したがって、配線パターン2は、図1(a)に示すとおり、絶縁基材1上に形成されたニッケル合金層3と、ニッケル合金層を下地として形成された銅層4とから構成されている。
ただし、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法は、配線パターン2が、ニッケル合金層3を介さず、銅層4のみから成る場合であっても適応可能である。
【0022】
また、上記に示す配線基板PWDの製造方法は、あくまで一例であって、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法は、他の製造方法により製造された配線基板PWDに対しても適応可能である。
【0023】
なお、配線基板PWDは、無電解すずめっき層6を形成する前に、洗浄、脱脂、触媒(核)の付与といった前処理を行うことが好ましい。
【0024】
(1−2)めっき形成方法
続いて、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法について、図2を用いて説明する。図2は、めっきの処理時間(横軸)と、無電解すずめっき層の厚さ(縦軸)との関係を示している。図2において、時刻t0、t2、t4とは、配線基板PWDの一部が無電解めっき液に最初に接触した時刻、すなわち浸漬処理の開始時刻をいう。また、時刻t1、t3、t5とは、配線基板PWDの全体が無電解めっき液から完全に引き上げられた時刻、すなわち中断処理の開始時刻をいう。
【0025】
まず、時刻t0に、配線基板PWDを無電解めっき液に浸漬して、浸漬処理を開始する。 浸漬処理の開始後は、配線パターン2の露出面へ無電解すずめっき層6の析出が始まり、その後、浸漬時間に比例して無電解すずめっき層6の厚さが増加していく。なお、めっきの析出速度は、無電解めっき液の組成によって変化する。
【0026】
一方、浸漬処理が開始されると、銅層4と保護層5との界面、及びニッケル合金層3と保護層5との界面に無電解めっき液が進入し、進入箇所に局部電池が形成される。
そして、そのまま浸漬処理を継続すると、局部電池の効果が増大してすずの針状結晶が析出・成長し、また、銅層4やニッケル合金層3がえぐれるという問題が発生する。
【0027】
したがって、無電解すずめっき層6の初期めっき層が厚さh1になった時刻t1において、配線基板PWDを無電解めっき液から引き上げて浸漬処理を中断する。時刻t0から時刻t1までの浸漬時間T1は、針状結晶の析出成長が無視し得る時間を目安に定めることが好ましい。
例えば、初期めっき層の厚さh1は、0.32μm以下であることが好ましく、0.30μm以下とすることがより望ましい。また、初期めっき層を析出させるまでの浸漬時間T1は60秒以下とすることが好ましい。ただし、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法は、必ずしも上記の条件に制限されない。
【0028】
局部電池の効果は、中断処理を継続することにより弱めることができる。したがって、配線基板PWDを無電解めっき液から引き上げたまま、時刻t2まで中断処理を継続する。
時刻t1から時刻t2までの中断時間S1は、局部電池の効果を低減する所要時間を目安に定めることが好ましく、例えば、中断時間S1は15秒から180秒程度確保することが好ましい。ただし、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法は、必ずしも上記の条件に制限されない。
【0029】
その後、局部電池の効果が十分に低減した時刻t2に、配線基板PWDを無電解めっき液に再び浸漬して、浸漬処理を再開する。
【0030】
浸漬処理の再開後は、再び局所電池の効果が増加してくる。特に、銅層4、及びニッケル合金層3の露出面の全面が初期めっき層で覆われていない場合には、局部電池の効果が増大しやすい。したがって、以後、浸漬処理と中断処理を繰り返し、無電解すずめっき層6が所望の厚さに到達したらめっき処理を完了する。
【0031】
本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法では、時刻t2に浸漬処理を再開した後、時刻t3に浸漬処理を中断し、時刻t4に浸漬処理を再開し、時刻t5に浸漬処理を中断してめっき処理を完了している。なお、時刻t3においては無電解すずめっき層6が厚さh2に到達し、時刻t5においては無電解すずめっき層6が厚さh3に到達している。
【0032】
ここで、時刻t2から時刻t3までの浸漬時間T2、及び時刻t4から時刻t5までの浸漬時間T3は、針状結晶の析出成長が無視し得る時間を目安に定める。浸漬時間T1、T2、T3は、それぞれ同じであっても、又は異なっていても構わない。
また、時刻t3から時刻t4までの中断時間S2も、局部電池の効果を低減する所要時間を目安に定める。中断時間S1、S2も、それぞれ同じであっても、異なっていても構わない。
【0033】
また、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法では、3回の浸漬処理と、2回の中断処理とを交互に繰り返すものとしているが、中断処理は1回であっても、又は3回以上であっても構わない。
【0034】
(2)配線基板のめっき装置
続いて、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき装置10について、図3を用いて説明する。
【0035】
(2−1)めっき装置10の構成
本発明の一実施形態にかかるめっき装置10は、テープ状の配線基板PWDをリールツーリール法(reel−to−reel process)で製造するものである。なお、リールツーリール法とは、リール(図示しない)に巻き取られたテープ状の配線基板PWDを引き出して、所定の速度で移動させながら無電解めっき液に浸漬し、めっき処理を行うものである。
【0036】
図3に示すとおり、めっき装置10は、めっき槽11と、搬入ローラ12と、搬出ローラ13と、液中ローラ14a、14b、及び14cと、引き上げローラ15a、及び15bと、を備える。
【0037】
めっき槽11は、喫水線16aまで無電解めっき液16を蓄える。
【0038】
搬入ローラ12は、無電解めっき液16の喫水線16aよりも上方位置に設けられ、配線基板PWDを、めっき槽11の内部へ搬送速度Vで搬入するよう回転する。
【0039】
搬出ローラ13も、無電解めっき液16の喫水線16aよりも上方位置に設けられ、配線基板PWDを、めっき槽11の外部へ搬送速度Vで搬出するよう回転する。
【0040】
液中ローラ14a、14b、及び14cは、無電解めっき液16の喫水線16aより下方位置(すなわち無電解めっき液16中)であって、搬入ローラ12と搬出ローラ13との間の配線基板PWDの経路上に設けられる。
【0041】
引き上げローラ15a、及び14bは、無電解めっき液16の喫水線16aより上方位置に設けられる。そして、引き上げローラ15aは、液中ローラ14aと14bとの間、引き上げローラ15bは、液中ローラ14bと14cとの間であって配線基板PWDの経路上に設けられる。
【0042】
(2−2)めっき装置10の動作
続いて、めっき装置10の各構成部品の動作について、図2、及び図3を用いて説明する。
【0043】
(1)めっき槽11は、喫水線16aまで無電解めっき液16を溜める。(2)その後、搬入ローラ12は、配線基板PWDを、めっき槽11内部へ、搬送速度Vで搬入する。(3)液中ローラ14aは、時刻t0に、配線基板PWDを搬送位置P0で無電解めっき液16に浸漬して浸漬処理を開始する。(4)引き上げローラ15aは、浸漬時間T1経過後の時刻t1に、配線基板PWDを搬送位置P1で無電解めっき液16から引き上げて浸漬処理を中断する。(5)液中ローラ14bは、中断時間S1経過後の時刻t2に、配線基板PWDを搬送位置P2で無電解めっき液16に再び浸漬して浸漬処理を再開する。(6)引き上げローラ15bは、浸漬時間T2が経過後の時刻t3に、配線基板PWDを搬送位置P3で無電解めっき液16から引き上げて浸漬処理を中断する。(7)液中ローラ14cは、中断時間S2が経過後の時刻t4に、配線基板PWDを搬送位置P4で無電解めっき液16に再び浸漬して浸漬処理を再開する。(8)搬出ローラ13は、浸漬時間T3が経過後の時刻t5に、配線基板PWDを搬送位置P5で無電解めっき液16から引き上げて、めっき槽11の外部へ搬送速度Vで搬出する。
【0044】
このように、めっき装置10は、配線基板PWDを、無電解めっき液16の喫水線16aの下方に設けられた液中ローラと、無電解めっき液16の喫水線16aの上方に設けられた引き上げローラとを交互に通してジグザグに搬送することにより、浸漬処理の途中で、浸漬処理を中断する中断処理を行う。
【0045】
(2−3)各ローラの位置
続いて、上述した液中ローラ、及び引き上げローラの各位置を説明する。
【0046】
各ローラの位置は、(1)浸漬時間T(時刻t0から時刻t1までの浸漬時間T1、時刻t2から時刻t3までの浸漬時間T2、時刻t4から時刻t5までの浸漬時間T3)と、(2)中断時間(時刻t1から時刻t2までの中断時間S1、時刻t3から時刻t4までの中断時間S2)と、(3)配線基板PWDの搬送速度Vと、によって定まる。
【0047】
例えば、液中ローラ14aの位置は、搬送位置P0から搬送位置P1までの配線基板PWDの搬送距離が、浸漬時間T1×搬送速度Vになるように定めれば良い。浸漬時間T1は、針状結晶の析出成長が無視し得る時間を目安に定めることが好ましい。
例えば、無電解すずめっき層6の初期めっき層の厚さh1は、0.32μm以下であることが好ましく、0.30μm以下とすることがより望ましい。また、初期めっき層を析出させるまでの浸漬時間T1は60秒以下とすることが好ましい。ただし、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法は、必ずしも上記の条件に制限されない。
【0048】
その他、液中ローラ14b、14cの位置についても、液中ローラ14aと同様の考え方で定めればよい。すなわち、浸漬時間T2、T3についても、浸漬時間T1の場合と同様に、針状結晶の析出成長が無視し得る時間を目安に定める。浸漬時間T1、T2、T3は、それぞれ同じであっても、又は異なっていても構わない。
【0049】
引き上げローラ15aの位置は、搬送位置P1から搬送位置P2までの配線基板PWDの搬送距離が、中断時間S1×搬送速度Vになるように定めれば良い。中断時間S1は、局部電池の効果を低減する所要時間を目安に定めることが好ましい。例えば、中断時間S1は15秒から180秒程度確保することが好ましい。ただし、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法は、必ずしも上記の条件に制限されない。
【0050】
引き上げローラ15bの位置についても、引き上げローラ15aと同様の考え方で定めればよい。すなわち、中断時間S2についても、中断時間S1の場合と同様に、針状結晶の析出成長が無視し得る時間を目安に定める。中断時間S1、S2は、それぞれ同じであっても、又は異なっていても構わない。
【0051】
以上、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置10によれば、配線パターン2の露出面に無電解すずめっき層6を形成する際、すずの針状結晶の析出、及び成長を抑制することができる。
【0052】
また、すずの針状結晶が析出した場合、その後の工程、例えば、半導体チップを実装する工程等で針状結晶が折れて、実装する装置の内部が折れた針状結晶で汚染される。これに対し、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置10によれば、針状結晶の析出、成長を抑制でき、折れた針状結晶による汚染を低減することができる。
【0053】
また、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置10では、COFと呼ばれる実装形態の半導体装置で用いる配線基板PWDを例に挙げて説明したが、これに限らず、配線パターン2の間隔CSが広い配線基板においても有効である。
例えば、配線パターンのリード間の間隔が十分に広くとも、すずの針状結晶が析出していると、配線基板を用いて製造した半導体装置を動作させている間に、マイグレーション、すなわち、針状結晶が成長して、配線パターンの短絡が発生することがある。
これに対し、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置10によれば、すずの針状結晶の析出、及び成長が抑制されているので、マイグレーションによる配線パターンの短絡を防ぐことができる。
【0054】
また、本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置10では、配線パターン2の露出面を覆う無電解すずめっき層6を形成する際、ニッケル合金層3、及び銅層4のえぐれを防止することができる。これにより、配線基板PWDに曲げ応力が加わった場合の破断を抑制することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、図4を用いて実施例と比較例とを説明する。
【0056】
図4は、本実施例にかかる初期すずめっき層の厚さh1と、針状結晶の発生本数との関係を説明するグラフ図である。なお、初期めっき層の厚さh1とは、時刻t0から時刻t1までの、初回の浸漬処理により形成する無電解すずめっき層6の厚さをいう。
【0057】
(実施例1〜5)
実施例1〜5では、初期めっき層の厚さh1を0.32μm以下として、配線パターン2の露出面に無電解すずめっき層6を形成した。具体的には、実施例1から実施例5の初期めっき層の厚さh1を、それぞれ0.1μm、0.15μm、0.22μm、0.27μm、0.32μmとした。
【0058】
無電解すずめっき層6の形成後、各実施例に対し、すずの針状結晶の発生本数を測定した。測定は、配線基板PWDの形成後、1日、3日、7日、14日、30日、60日、90日の経過時に行った。
【0059】
その結果、図4に示すとおり、実施例1〜5において、針状結晶の発生は皆無であることが確認できた。すなわち、配線パターン2の露出面を覆う無電解すずめっき層6を形成する際、無電解すずめっき層6の厚さを0.32μm以下にすることで、すずの針状結晶の析出、及び成長を抑制できることが確認できた。
【0060】
(比較例1〜6)
一方、比較例1〜6では、初期めっき層の厚さh1を、0.33μm以上、0.43μm以下として無電解すずめっき層6を形成した。具体的には、比較例1から比較例6の初期めっき層の厚さh1を、それぞれ0.33μm、0.35μm、0.38μm、0.41μm、0.42μm、0.42μmとした。
【0061】
無電解すずめっき層6の形成後、それぞれの比較例に対し、すずの針状結晶の発生本数を測定した。測定は、配線基板PWDの形成後、1日、3日、7日、14日、30日、60日、90日の各経過時に行った。
【0062】
その結果、図4に示すとおり、比較例1〜6において、針状結晶の発生が認められた。
特に、初期めっき層の厚さh1が0.35μm以上、0.43μm以下の比較例(比較例2〜6)において、すずの針状結晶が多く発生することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板のめっき形成方法、及びめっき装置で用いる配線基板の断面図であり、(a)は無電解すずめっき層を形成する前の配線板の断面図を示し、(b)は図1(a)のA−A’線から見た配線板の断面図を示す。
【図2】本発明の一実施形態にかかるめっき形成方法の説明図であり、めっき時間とすずめっき層の厚さとの関係を示すグラフ図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる無電解すずめっき装置の断面図である。
【図4】本実施例にかかる初期すずめっき層の厚さと、針状結晶の発生本数との関係を説明するグラフ図である。
【符号の説明】
【0064】
1 絶縁基材
2 配線パターン
3 ニッケル合金層
4 銅層
5 保護層
6 無電解すずめっき層
10 めっき装置
11 めっき槽
12 搬入ローラ
13 搬出ローラ
14a 液中ローラ
14b 液中ローラ
14c 液中ローラ
15a 引き上げローラ
15b 引き上げローラ
16 無電解めっき液
PWD 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材上に銅層から成る配線パターンが形成され、前記配線パターン上に該配線パターンを部分的に覆う絶縁体から成る保護層が形成された配線基板を、めっき液に浸漬して、前記配線パターンの露出面を覆うすずめっき層を形成する配線基板のめっき形成方法であって、
前記配線基板を前記めっき液に浸漬する浸漬処理の途中で、前記配線基板を前記めっき液から引き上げて前記浸漬処理を中断する中断処理を1回以上行う
ことを特徴とする配線基板のめっき形成方法。
【請求項2】
前記銅層が、前記絶縁基材上に形成されたニッケル合金層を下地として形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板のめっき形成方法。
【請求項3】
前記配線基板を前記めっき液に最初に浸漬してから、最初に引き上げるまでの1回目の浸漬処理で形成する前記無電解めっき層の厚さを0.32μm以下にする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板のめっき形成方法。
【請求項4】
前記配線基板を前記めっき液に最初に浸漬してから、最初に引き上げるまでの1回目の浸漬処理の処理時間を60秒以下にする
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の配線基板のめっき形成方法。
【請求項5】
前記配線基板を前記めっき液から引き上げた後、再び浸漬するまでの1回の中断時間を15秒以上180秒以下にする
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配線基板のめっき形成方法。
【請求項6】
絶縁基材上に銅層から成る配線パターンが形成され、前記配線パターン上に該配線パターンを部分的に覆う絶縁体から成る保護層が形成された配線基板に、前記配線パターンの露出面を覆う無電解めっき層を形成するための配線基板のめっき装置であって、
めっき液を蓄えるめっき槽と、
前記配線基板を前記めっき槽に搬入するための搬入ローラと、
前記配線基板を前記めっき槽から搬出させるための搬出ローラと、
前記搬入ローラから搬入される前記配線基板をめっき液中に搬送させ、めっき液中から前記搬出ローラへ搬出するための複数個の液中ローラと、
前記液中ローラ間に設けられ、前記配線基板をめっき液から引き上げるための引き上げローラと、
を備えることを特徴とする配線基板のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−281309(P2007−281309A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108086(P2006−108086)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】