説明

配線基板の製造方法

【課題】 効率よく配線基板を製造する方法を提供する。
【解決手段】 配線基板の製造方法は以下の工程を含む。貫通穴14を有するベース基板12と、ベース基板12の一方の面に、貫通穴14を覆うように設けられた金属層16とを含む基板10を用意する。貫通穴14の内側に、ベース基板12よりも誘電損失の高い熱硬化性樹脂30を、金属層16を覆うように設ける。マイクロ波加熱によって熱硬化性樹脂30を硬化させて、保護部材32を形成する。エッチング工程によって金属層16の一部を除去して、配線パターン40を形成する。ベース基板12から保護部材32を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスホールを有する配線基板を製造する場合、金属層を高精度にパターニングするために保護部材を利用することが知られている。このとき、保護部材を効率よく設けることができれば、配線基板の製造効率を高めることができる。また、配線基板を製造した後に保護部材を除去することで、保護部材により配線基板の信頼性を損なうことを防止することができるため、保護部材として適した材料を利用することができる。
【0003】
本発明の目的は、効率よく配線基板を製造する方法を提供することにある。
【特許文献1】特開平4−291241号公報
【特許文献2】特願平9−505227号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明に係る配線基板の製造方法は、貫通穴を有するベース基板と、前記ベース基板の一方の面に、前記貫通穴を覆うように設けられた金属層とを含む基板を用意すること、
前記貫通穴の内側に、前記ベース基板よりも誘電損失の高い熱硬化性樹脂を、前記金属層を覆うように設けること、
マイクロ波加熱によって前記熱硬化性樹脂を硬化させて、保護部材を形成すること、
エッチング工程によって前記金属層の一部を除去して、配線パターンを形成すること、及び、
前記ベース基板から前記保護部材を除去することを含む。本発明によると、マイクロ波加熱によって熱硬化性樹脂を硬化させて、保護部材を形成する。そして、熱硬化性樹脂はベース基板よりも誘電損失が高い。そのため、保護部材を効率よく形成することができ、配線基板の製造効率を高めることができる。また、保護部材は金属層をパターニングする工程の後に除去されるため、保護部材として誘電損失の高い材料を利用した場合でも配線基板の信頼性を確保することが可能になる。
(2)この配線基板の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂の誘電損失は、前記ベース基板の誘電損失の10倍以上であってもよい。
(3)この配線基板の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂の誘電損失は1以上であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0006】
図1〜図8(B)は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【0007】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、図1及び図2に示す、基板10を用意することを含む。なお、図2は、図1のII−II線断面の一部拡大図である。以下、基板10について説明する。基板10は、図1及び図2に示すように、ベース基板12を含む。ベース基板12の材料や構造は特に限定されず、既に公知となっているいずれかの基板を利用してもよい。ベース基板12は、フレキシブル基板であってもよく、リジッド基板であってもよい。あるいは、ベース基板12は、テープ基板であってもよい。ベース基板12は、積層型の基板であってもよく、あるいは、単層の基板であってもよい。また、ベース基板12の外形も特に限定されるものではない。また、ベース基板12の材料についても特に限定されるものではない。ベース基板12は、有機系又は無機系のいずれの材料で形成されていてもよく、これらの複合構造をなしていてもよい。ベース基板12として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板又はフィルムを使用してもよい。あるいは、ベース基板12としてポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板を使用してもよい。フレキシブル基板としてFPC(Flexible Printed Circuit)や、TAB(Tape Automated Bonding)技術で使用されるテープを使用してもよい。また、無機系の材料から形成されたベース基板12として、例えばセラミックス基板やガラス基板が挙げられる。有機系及び無機系の材料の複合構造として、例えばガラスエポキシ基板が挙げられる。ベース基板12は、貫通穴14を有する。貫通穴14の平面形状は特に限定されるものではないが、例えば矩形をなしていてもよい。貫通穴14を、デバイスホールと称してもよい。
【0008】
基板10は金属層16を含む。金属層16は、図1及び図2に示すように、ベース基板12の一方の面(第1の面11)に、貫通穴14を覆うように設けられてなる。金属層16は、図2に示すように、接着剤15を介してベース基板12に設けられていてもよい。あるいは、金属層16は、接着剤15を利用せず、ベース基板12に直接設けられていてもよい(図示せず)。金属層16の材料は特に限定されるものではない。例えば、金属層16として、銅箔を利用してもよい。
【0009】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、図3に示すように、基板10にレジスト層20を形成することを含んでいてもよい。このとき、レジスト層20は、金属層16上に形成する。詳しくは、レジスト層20は、金属層16におけるベース基板12と対向する面とは反対側の面上に形成する。レジスト層20は、パターニングされていてもよい。レジスト層20は、後述する配線パターン40を形成するための領域に形成してもよい。言い換えると、レジスト層20は、配線パターン40と同じ形状にパターニングされていてもよい。レジスト層20を形成する方法は特に限られるものではなく、既に公知となっているいずれかの方法を適用してもよい。例えば、基板10に全面にレジスト層を形成した後に、これをパターニングすることで、レジスト層20を形成してもよい。このとき、レジスト層は、例えば露光現像工程によってパターニングしてもよい。
【0010】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、図4に示すように、貫通穴14の内側に、ベース基板12よりも誘電損失の高い熱硬化性樹脂30を設けることを含む。熱硬化性樹脂30は、図4に示すように、ベース基板12の第1の面11とは反対側の面(第2の面13)側から設けてもよい。熱硬化性樹脂30は、金属層16を覆うように設ける。詳しくは、熱硬化性樹脂30は、金属層16における貫通穴14からの露出部を覆うように設けてもよい。熱硬化性樹脂30の材料は特に限定されるものではない。例えば、熱硬化性樹脂30として、クレゾールホルムアルデヒド樹脂を含む材料を利用してもよい。このとき、熱硬化性樹脂30として、クレゾールホルムアルデヒド樹脂にマイクロ波加熱促進剤を添加したものを利用してもよい。
【0011】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、図5(A)及び図5(B)に示すように、マイクロ波加熱によって熱硬化性樹脂30を硬化させて、保護部材32を形成することを含む。すなわち、図5(A)に示すように、熱硬化性樹脂30にマイクロ波100を照射する。これにより熱硬化性樹脂30を加熱し、熱硬化させて、図5(B)に示す保護部材32を形成する。先に述べたように、本実施の形態に係る配線基板の製造方法では、熱硬化性樹脂30は、ベース基板12よりも誘電損失が高い。ここで、誘電損失とは、誘電体に交流電場を加えたときにエネルギーが熱となり失われる量をいう。すなわち、熱硬化性樹脂30は、ベース基板12よりも、マイクロ波加熱による加熱効率が高い材料であるといえる。そのため、熱硬化性樹脂30をマイクロ波加熱することで、効率よく保護部材32を形成することができ、配線基板の製造効率を高めることができる。なお、熱硬化性樹脂30の誘電損失は、ベース基板12の誘電損失の10倍以上であってもよい。あるいは、熱硬化性樹脂30の誘電損失は1以上であってもよい。これにより、高効率で配線基板を製造することができる。例えば、熱硬化性樹脂30としてマイクロ波加熱促進剤を含む材料を利用することで、熱硬化性樹脂30の誘電損失を高めてもよい。このとき、加熱促進剤の含有量を調整することで、熱硬化性樹脂30の誘電損失を制御してもよい。なお、本実施の形態に係る配線基板の製造法は、後述するように、保護部材32を除去する工程を含む。すなわち、保護部材32は配線基板1には残らない。そのため、熱硬化性樹脂30として誘電損失の高い材料を利用しても、配線基板の信頼性を損なうことを防止することができる。そのため、熱硬化性樹脂30として、加熱効率の高い材料を選択することができる。なお、本工程では、図5(A)に示すように、マイクロ波100を、ベース基板12の第2の面13側から照射してもよい。これより、効率よくマイクロ波加熱を行うことができる。
【0012】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、図6に示すように、エッチング工程によって金属層16の一部を除去して、配線パターン40を形成することを含む。基板10にレジスト層20が形成されている場合、金属層16におけるレジスト層20からの露出部を除去することによって、配線パターン40を形成してもよい。なお、本工程は、保護部材32を形成する工程の後に行う。これにより、金属層16が貫通穴14側からエッチングされることを防止することができる。そのため、エッチング精度を高めることができ、信頼性の高い配線基板を製造することができる。
【0013】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、図7に示すように、ベース基板12から保護部材32を除去することを含む。保護部材32を除去する方法は特に限定されない。例えば、化学反応を利用して、保護部材32を除去してもよい。なお、本工程によって保護部材32が除去されることから、配線基板1には保護部材32が残らない。そのため、保護部材32(熱硬化性樹脂30)の材料の選択によって配線基板1の信頼性が低下することを防止することができる。なお、このとき、レジスト層20を除去してもよい(図7参照)。
【0014】
本実施の形態に係る配線基板の製造方法は、さらに、レジスト層50を形成する工程、及び、配線パターン40にめっき層52を形成する工程を含んでいてもよい。これにより、配線パターン40の劣化を防止することができ、かつ、配線パターンの電気的な接続信頼性を高めることができる。以上の工程によって、図8(A)及び図8(B)に示す、配線基板1を製造してもよい。ここで、図8(B)は、図8(A)のVIII−VIII線断面の一部拡大図である。なお、配線基板1を個片に切断する工程をさらに経て、個片に分割された配線基板を製造してもよい(図示せず)。
【0015】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図2】図2は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図3】図3は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図4】図4は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図6】図6は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図7】図7は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、本発明を適用した実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0017】
10…基板、 12…ベース基板、 14…貫通穴、 15…接着剤、 16…金属層、 20…レジスト層、 30…熱硬化性樹脂、 32…保護部材、 40…配線パターン、 50…レジスト層、 52…めっき層、 100…マイクロ波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を有するベース基板と、前記ベース基板の一方の面に、前記貫通穴を覆うように設けられた金属層とを含む基板を用意すること、
前記貫通穴の内側に、前記ベース基板よりも誘電損失の高い熱硬化性樹脂を、前記金属層を覆うように設けること、
マイクロ波加熱によって前記熱硬化性樹脂を硬化させて、保護部材を形成すること、
エッチング工程によって前記金属層の一部を除去して、配線パターンを形成すること、及び、
前記ベース基板から前記保護部材を除去することを含む配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂の誘電損失は、前記ベース基板の誘電損失の10倍以上である配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂の誘電損失は1以上である配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−216684(P2006−216684A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26504(P2005−26504)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】