説明

配線基板の製造方法

【課題】簡単な製造プロセスで配線を形成し、信頼性の高い配線基板を提供する。
【解決手段】本発明にかかる配線基板100の製造方法は、(a)界面活性剤を含む界面活性剤層16を、基板上の第1の領域28および第2の領域29に設ける工程と、(b)前記第2の領域に設けられた前記界面活性剤層の一部を除去する工程と、(c)触媒を含む溶液に前記基板を浸漬することによって、前記第1の領域に触媒層32を設ける工程と、(d)前記触媒層上に金属を析出させることによって第1の金属層36を設ける工程と、(e)前記第2の領域に残存した前記界面活性剤層26を除去する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板に配線を形成する方法として、サブトラクティブ法やアディティブ法が知られている。サブトラクティブ法では、フレキシブル基板の全面に金属層を形成し、金属層上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストをバリヤとして金属層をエッチングする。アディティブ法では、フレキシブル基板上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストからの開口部にめっき処理によって金属層を析出させる。
【0003】
これらの方法によれば、フォトレジストを最終的に除去する点、さらにサブトラクティブ法では金属層の一部を除去する点において、資源及び材料の消費が課題となっていた。また、フォトレジストの形成及び除去工程が必要となるので、製造工程数が多いことが課題となっていた。さらに、配線の寸法精度がフォトレジストの解像度に依存するため、より高精度の配線を形成するには限界があった。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡単な製造プロセスで配線を形成し、信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、
(a)界面活性剤を含む界面活性剤層を、基板上の第1の領域および第2の領域に設ける工程と、
(b)前記第2の領域に設けられた前記界面活性剤層の一部を除去する工程と、
(c)触媒を含む溶液に前記基板を浸漬することによって、前記第1の領域に触媒層を設ける工程と、
(d)前記触媒層上に金属を析出させることによって第1の金属層を設ける工程と、
(e)前記第2の領域に残存した前記界面活性剤層を除去する工程と、
を含む。
【0006】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(e)の後に、
(f)前記第1の領域に金属を析出させることによって第2の金属層を設ける工程を、さらに含むことができる。
【0007】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(b)は、
前記第2の領域に真空紫外放射を照射し、前記界面活性剤層を分解することにより、前記界面活性剤層の一部を除去することができる。
【0008】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(e)は、
前記第2の領域に真空紫外放射を照射し、前記界面活性剤層を分解することにより、前記第2の領域に残存した界面活性剤層を除去することができる。
【0009】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(e)では、
前記第1の金属層をマスクとして用いることにより、前記第2の領域(第1の領域以外の領域)に真空紫外放射を照射することができる。
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(c)において、前記触媒を含む溶液は、さらに他の界面活性剤を含むことができる。
【0011】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記界面活性剤層に含まれる前記界面活性剤のイオン価の符号は、前記他の界面活性剤のイオン価の符号と異なることができる。
【0012】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記界面活性剤層に含まれる前記界面活性剤は、カチオン系界面活性剤であり、
前記他の界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であり、
前記触媒は、パラジウムを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
1.配線基板の製造方法
図1〜図11は、本実施の形態にかかる配線基板100(図11参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用して配線基板を製造する。
【0015】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、図1に示すように絶縁基板であってもよい。基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。あるいは、基板10は、光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。
【0016】
次に、基板10を洗浄する。基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、図1に示すようにウエット洗浄でもよい。ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水12(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜300分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、基板10の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、基板10の液中表面電位が負電位であれば、基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0017】
(2)次に、図2に示すように、基板10を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14は、第1の界面活性剤を含む。第1の界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤を含む。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、第1の界面活性剤として、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。一方、基板10の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0018】
界面活性剤溶液14としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)の溶液や、アルキルアンモニウム系の溶液(例えば、セチルトリメチルアンンモニウムクロリド等)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0019】
次に、界面活性剤溶液から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、60℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図3に示すように、界面活性剤層16を基板10に設けることができる。界面活性剤層16は、基板10上の第1の領域28および第2の領域29に設けられる。第1の領域28は、後述する工程で配線が形成される領域である。
【0020】
このとき、第1の界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0021】
(3)次に、第2の領域29に設けられた界面活性剤層16の一部を除去する。本実施の形態では、図4に示すように、第2の領域29の界面活性剤層16の一部を光分解することにより、除去する。
【0022】
ここで除去される「第2の領域29に設けられた界面活性剤層16の一部」とは、図5に示すように、第2の領域29に設けられた界面活性剤層16の上部であってもよい。また、界面活性剤層16は、第2の領域29の全面において除去される部分と除去されない部分を有することが望ましい。言い換えれば、第2の領域29の全面において界面活性剤層16は、低分解の状態であることが望ましい。
【0023】
第2の領域29に照射する光20としては、例えば真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いることができる。光20の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。これにより、第2の領域29の界面活性剤層16を光分解させることができる。光20は、第2の領域29の全面に照射される。これにより、第2の領域29の界面活性剤層16を光分解することができる。
【0024】
また、この波長帯域の光20を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0025】
光20の照射は、具体的には、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下もしくは1000Pa以下の真空状態において、30秒〜3分間行うことができる。光20の照射時間および強度は、第2の領域29に設けられた界面活性剤層の全部が分解されないように適宜調整される。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光20の波長は、界面活性剤層16を光分解することができるものであれば、特に限定されない。
【0026】
光20は、マスク22(例えばフォトマスク)を介して基板10に照射される。詳しくは、光源18と基板10の間にマスク22を配置し、光20をマスク22の遮光部24(例えばクロムなどの金属パターン部)以外の領域に透過させる。遮光部24は、第1の領域28に形成される。マスク22は、基板10に接して配置されていてもよい。また、窒素雰囲気中で光照射処理を行えば、光20が減衰しにくいので好ましい。
【0027】
こうして、図5に示すように、第2の領域29の界面活性剤層16の一部が除去されることにより、界面活性剤層26を形成することができる。
【0028】
(4)次に、図6に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0029】
このように作製された触媒溶液30に基板10を浸漬すると、図7に示すように、第1の領域28に触媒層32が形成される。また、第2の領域第29にも界面活性剤層26が形成されているため、触媒層34が形成される。
【0030】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電界めっき液に混入するのを防止することができる。
【0031】
触媒層32が形成されるメカニズムについて、以下のように想定することができる。ここでは、界面活性剤層26がカチオン系界面活性剤を含む場合について説明する。
【0032】
まず、触媒溶液30に含まれる触媒のパラジウムは、液中においてコロイド状態になっており、負電位を示す。一方、第1の領域28の界面活性剤層26は、触媒のパラジウムと比較して正電位を示す。したがって、第1の領域28の界面活性剤層26は、この電位差により、触媒溶液中でパラジウムを引き寄せることができ、引き寄せたパラジウムを界面活性剤層26が持つ結合子により捕らえる。第2の領域29では界面活性剤層26の一部が除去されているため、第1の領域28と比較して負電位側になり、触媒を引き寄せる効果は劣り、触媒との結合子の量も少ない状態にある。したがって、パラジウムは、電位差から第2の領域29よりも第1の領域28に引き寄せられやすく、かつ第1の領域28の界面活性剤層26が結合子を多数有するためパラジウムを吸着しやすく、その結果、第1の領域28の界面活性剤層26上に触媒層32が形成される。
【0033】
このとき、第2の領域29も完全に分解されてはいないため、触媒よりは正電位を有し、かつ結合子もある程度残るため、触媒溶液の触媒濃度等の条件によっては、触媒層34が形成されることがあるが、後に第2の領域29の界面活性剤層26が除去される際に、除去可能な量の触媒層に止めることができる。
【0034】
(5)次に、図8に示すように、触媒層32上に第1の金属層36を析出させる。具体的には、基板10を無電解めっき液に浸漬させることによって、触媒層32上に第1の金属層36を析出させることができる。第1の金属層36としてニッケル層を析出させる場合を説明すると、無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、基板10をこのような無電解めっき液(温度65〜80℃)に10秒〜1分程度浸漬することによって、20nm〜50nmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。あるいは、無電解めっき液として、塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることもできる。例えば、基板10をこのような無電解めっき液(温度55〜75℃)に30秒〜10分程度浸漬することによって、20nm〜50nmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。ここでは、第1の領域のパターンサイズや面積に応じて、無電解めっき液の温度や浸漬時間を適切に調整することにより、第1の領域28にのみ第1の金属層36を形成し、かつ第2の領域29に第1の金属層36を形成しないようにすることができる。なお、第1の金属層36の材料は触媒によってめっき反応が起こる材料であれば特に限定されず、例えば白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などからも形成することができる。こうして、基板10上の第1の領域28に第1の金属層36を形成することができる。
【0035】
(6)次に、第2の領域29に残存した界面活性剤層26を除去する。本実施の形態では、図9に示すように、第2の領域29の界面活性剤層26を光分解することにより、除去する。
【0036】
第2の領域29に照射する光20としては、上述した真空紫外線を用いることができる。これにより、第2の領域29の界面活性剤層26を光分解させることができる。光20は、基板10上の全面に照射される。これにより、第2の領域29の界面活性剤層16を光分解することができる。基板10上の第1の金属層36がマスクとして機能するため、第1の金属層36の形成されていない第2の領域29にのみ光20は透過する。
【0037】
光20の照射は、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、60秒〜5分間行うことができる。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光20の波長は、界面活性剤層16を光分解することができるものであれば、特に限定されない。
【0038】
こうして、図10に示すように、第2の領域29に残存している界面活性剤層26を除去することができる。
【0039】
(7)次に、図11に示すように、第1の金属層36上に第2の金属層37を析出させる。具体的には、基板10を無電解めっき液に再度浸漬させることによって、第2の金属層37を析出させることができる。第2の金属層37の析出方法、材質および無電解めっき液の成分としては、第1の金属層36と同様のものを用いることができる。
【0040】
第2の金属層37を析出させた後、超純水によるリンス洗浄を行い、自然乾燥および圧縮空気を吹きかけることによって水滴を除去してもよい。
【0041】
以上の工程により、配線基板100を形成することができる。本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法では、第2の領域29に設けられた界面活性剤層16の一部を除去する際、第2の領域29の界面活性剤層16の一部を残存させるため、界面活性剤層16の過分解を防止することができる。即ち、第2の領域29に設けられた第1の界面活性剤層16の全部を分解してしまうと、第1の領域28に設けられた界面活性剤層16まで分解してしまう場合がある。この分解によって、形成された配線基板の配線パターンが所望のパターンと異なってしまうことがある。
【0042】
そこで、第2の領域29に設けられた第1の界面活性剤層16の一部のみを分解することにより、第1の領域28に設けられた第1の界面活性剤層16を分解することを防止することができ、所望の形状(マスク22の遮光部24の形状)により近い形状の触媒層32を形成することができる。従って、配線パターンの形状を精度良く形成することができ、配線基板の信頼性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法では、第2の領域29の界面活性剤層26を残存させた状態で、第1の金属層36を析出させた後に、第2の領域29の界面活性剤層26を完全に除去した上で、再度第2の金属層37を析出させる。これにより、十分な厚みを有する金属層(配線)を形成することができるため配線の電気抵抗を低減することができ、信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0044】
また、本実施の形態にかかる配線基板100の製造方法では、第1の金属層36をマスクとして第2の領域29の界面活性剤層26を除去している。これにより、工程数を減少させることができ、簡単な製造プロセスで信頼性の高い配線基板を製造することができる。
【0045】
2.配線基板および電子デバイス
図12は、第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法によって製造される配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す。電子デバイス1000は、配線基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0046】
配線基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。配線基板100は、上述した製造方法によって製造される。図9に示す例では、配線基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、配線基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0047】
3.変形例
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、変形が可能である。たとえば、上述した触媒溶液30がさらに界面活性剤を含んでもよい。他の界面活性剤としては、たとえば、界面活性剤層16に含まれる界面活性剤のイオン価の符号と異なるイオン価の符号を有する界面活性剤を用いることができる。具体的には、界面活性剤層16に含まれる界面活性剤がカチオン系界面活性剤である場合には、他の界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であることが好ましい。一方、界面活性剤層16に含まれる界面活性剤がアニオン系界面活性剤である場合には、他の界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であることが好ましい。
【0048】
カチオン系界面活性剤としては、上述したものを用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、たとえばドデシル硫酸ナトリウム等のアルキルサルフェート系界面活性剤を用いることができる。
【0049】
たとえば、以下の手順によりアニオン系界面活性剤および触媒を含む触媒溶液30を作製することができる。
【0050】
純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。次に、上述した塩化パラジウム溶液をさらに水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。次に、水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。次に、ドデシル硫酸ナトリウムを塩化パラジウム溶液に添加し、ドデシル硫酸ナトリウムの濃度を0.3〜10mmol/lとする。
【0051】
このように、触媒溶液30が界面活性剤を含むことによって、界面活性剤層16の一部が除去された第2の領域29と、界面活性剤層16の全てが残っている第1の領域28との間で選択性を高め、より確実に第1の領域のみに触媒層32を形成することができる。
【0052】
この選択的に吸着されるメカニズムについて次のように想定している。アニオン系界面活性剤が第1の領域28の界面活性剤層と第2の領域29の界面活性剤層のそれぞれに吸着して液中表面電位を変化させる作用と、触媒の表面に吸着して液中表面電位を変化させる作用の相乗効果として選択性が発現すると考えている。触媒であるパラジウムのコロイド状態、アニオン系界面活性剤の種類による液中表面電位を変化させる量やそれ自体の添加濃度、基板上のカチオン性界面活性剤の非分解部と低分解部のそれぞれの液中表面電位が要因となっていると考えている。
【0053】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図2】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図3】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図4】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図5】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図6】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図7】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図8】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図9】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図10】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図11】第1の実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図12】第1の実施の形態にかかる配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【符号の説明】
【0055】
10 基板、12 オゾン水、14 界面活性剤溶液、16、26 界面活性剤層、18 光源、20 光、22 マスク、24 遮光部、30 触媒溶液、32 触媒層、36 第1の金属層、37 第2の金属層、28 第1の領域、29 第2の領域、90 集積回路チップ、92 他の基板、100 配線基板、1000 電子デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)界面活性剤を含む界面活性剤層を、基板上の第1の領域および第2の領域に設ける工程と、
(b)前記第2の領域に設けられた前記界面活性剤層の一部を除去する工程と、
(c)触媒を含む溶液に前記基板を浸漬することによって、前記第1の領域に触媒層を設ける工程と、
(d)前記触媒層上に金属を析出させることによって第1の金属層を設ける工程と、
(e)前記第2の領域に残存した前記界面活性剤層を除去する工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(e)の後に、
(f)前記第1の領域に金属を析出させることによって第2の金属層を設ける工程を、さらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記工程(b)は、
前記第2の領域に真空紫外放射を照射し、前記界面活性剤層を分解することにより、前記界面活性剤層の一部を除去する、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記工程(e)は、
前記第2の領域に真空紫外放射を照射し、前記界面活性剤層を分解することにより、前記第2の領域に残存した界面活性剤層を除去する、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記工程(e)では、
前記第1の金属層をマスクとして用いることにより、前記第1の領域以外の領域に真空紫外放射を照射する、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記工程(c)において、前記触媒を含む溶液は、さらに他の界面活性剤を含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記界面活性剤層に含まれる前記界面活性剤のイオン価の符号は、前記他の界面活性剤のイオン価の符号と異なる、配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記界面活性剤層に含まれる前記界面活性剤は、カチオン系界面活性剤であり、
前記他の界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であり、
前記触媒は、パラジウムを含む、配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記工程(b)において除去される前記界面活性剤層の一部は、前記界面活性剤層の上部である、配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−103394(P2007−103394A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287185(P2005−287185)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】