説明

配線基板の製造方法

【課題】配線導体の幅が30μm、配線導体同士の間隔が40μm未満の薄型高密度配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】銅箔7付き絶縁層1を準備し、次に絶縁層1に貫通孔3を形成し、次に第一のめっき金属層4を貫通孔3内およびその周囲ならびに配線導体9の形成位置に貫通孔3を完全に充填しない厚みに選択的に被着させ、次に貫通孔3内と周囲の第一のめっき金属層4上とに貫通導体6とランド8を形成するための第二のめっき金属層5を、貫通孔3を完全に充填する厚みに被着させ、次に第一のめっき金属層4から露出する銅箔7を除去して貫通孔3内に第一および第二のめっき金属層4、5から成る貫通導体6と、絶縁層1の両面に銅箔7および第一および第二のめっき金属層4、5から成るランド8と、銅箔7及び第一のめっき金属層4から成る配線導体9とを残す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄型の配線基板として、例えば厚みが40〜300μm程度の薄い絶縁層に直径が30〜100μm程度のテーパ状の複数の貫通孔を設け、これらの貫通孔内をめっき金属層で充填して貫通導体を形成するとともに絶縁層の上下面に貫通導体と同じめっき金属層から成る配線導体を形成した配線基板が知られている。このような配線基板は、例えば厚みが40〜300μm程度の絶縁層にレーザ加工により直径が30〜100μm程度のテーパ状の貫通孔を複数形成するとともに、無電解めっき法により貫通孔内壁および絶縁層の上下面に0.1〜1μm程度の薄い無電解めっき層を被着させた後、この無電解めっき層上に電解めっき法により貫通孔内が完全に充填されるまでめっき金属層を析出させ、最後に絶縁層上のめっき金属層を配線導体に対応するパターンに選択的にエッチングする方法が好適に用いられる。
【0003】
しかしながら、このような方法では貫通孔内を十分に充填するだけのめっき金属層を形成しようとすると、絶縁層の上下面にも例えば厚みが40μm程度の厚いめっき金属層が形成されてしまう。このように絶縁層の上下面に形成されるめっき金属層の厚みが40μm程度と厚いと、このめっき金属層を所定のパターンに選択的にエッチングすることにより形成される配線導体の幅は50μm程度、配線導体同士の間隔においては60μm程度が限界となり、それ以上に細い幅および狭い間隔の配線導体を形成することは困難である。したがって、このような従来の製造方法においては、例えば配線導体の幅が30μm以下、および配線導体同士の間隔が40μm未満の高密度配線を有する薄型の配線基板を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−43752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、両面に銅箔が張着された薄い絶縁層に設けられた貫通孔内を、めっき導体で充填するとともに、絶縁層の上下面に銅箔とめっき金属層とから成る配線導体を備えた配線基板において、例えば配線導体の幅が30μm以下、および配線導体同士の間隔が40μm未満の高密度配線を有する薄型の配線基板の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製造方法は、絶縁層の両面に銅箔が張着された銅箔付き絶縁層を準備する工程と、銅箔付き絶縁層に貫通孔を形成する工程と、貫通孔内を充填する貫通導体および貫通導体に接続するランドならびに絶縁層上を延在する配線導体を形成するための第一のめっき金属層を、貫通孔内およびその周囲ならびに配線導体の形成位置に貫通孔を完全に充填しない厚みに選択的に被着させる工程と、貫通孔内およびその周囲の第一のめっき金属層上に貫通導体およびランドを形成するための第二のめっき金属層を貫通孔を完全に充填する厚みに選択的に被着させる工程と、第一のめっき金属層から露出する銅箔をエッチング除去して貫通孔内に第一および第二のめっき金属層から成る貫通導体と、絶縁層の両面に銅箔および第一および第二のめっき金属層から成るランドと、銅箔および第一のめっき金属層から成る配線導体とを残す工程とを行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線基板の製造方法によれば、貫通孔を有する絶縁層の貫通孔内およびその周囲ならびに配線導体の形成位置に、貫通孔を完全に充填しない厚みに選択的に第一のめっき金属層を形成した後、貫通孔内およびその周囲のみの第一のめっき金属層上に第2のめっき金属層を形成して貫通孔内を充填することから、絶縁層の上下面での配線導体の厚みを銅箔および第一のめっき金属層から成る例えば20μm以下の薄いものとすることができ、配線導体の幅が30μm以下、および配線導体同士の間隔が40μm未満の微細な配線導体を高密度で形成することができ、それにより高密度配線で薄型の配線基板が製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の製造方法により製造される配線基板の例を示す概略断面図である。
【図2】図2(a)〜(h)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を説明するための工程毎の要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の製造方法により製造される配線基板の例を図1を基に説明する。図1に示すように、本発明の製造方法により製造される配線基板20は、例えばコア用の絶縁層1の上下面にビルドアップ用の絶縁層2が積層されている。コア用の絶縁層1には、複数の貫通孔3が形成されており、この貫通孔3の内部には第一のめっき金属層4および第二のめっき金属層5から成る貫通導体6が充填されている。また絶縁層1の上下面には、銅箔7を下地とした第一のめっき金属層4と第二のめっき金属層5とから成るランド8、および銅箔7を下地とした第一のめっき金属層4から成るコア用の配線導体9が被着されている。
【0010】
絶縁層2には、ランド8や配線導体9を底面とする複数のビアホール10が形成されており、ビアホール10の内部および絶縁層2の表面には第三のめっき金属層11から成るビルドアップ用の配線導体12が被着されている。それによりコア用のランド8および配線導体9とビルドアップ用の配線導体12とが電気的に接続されている。さらに、絶縁層2および配線導体12の表面には配線導体12の一部を電子部品や回路基板との接続に用いられる接続パッドとして露出させる開口部13aを有するソルダーレジスト層13が被着されている。
【0011】
次に、図2(a)〜(h)を基に本発明の製造方法における実施形態の一例を説明する。なお、図2において図1と同様の箇所には同様の符号を付して説明する。まず、図2(a)に示すように、上面および下面に銅箔7が張着された絶縁層1を準備する。絶縁層1は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料から成る。絶縁層1の厚みは40〜300μm程度である。このような絶縁層1は、ガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化させたプリプレグの両面に厚みが3〜5μm程度の銅箔7を張りつけたものを熱硬化させることにより得られる。
【0012】
次に、図2(b)に示すように、銅箔7が張着された絶縁層1に貫通孔3を形成する。貫通孔3は、例えばレーザ加工により形成される。レーザ加工では、貫通孔3におけるレーザの入射側の開口径が出射側の開口径よりも大きくなる。貫通孔3の開口径は、レーザの入射側で80〜100μm程度、出射側で30〜80μm程度である。したがって、貫通孔3はテーパ形状となる。貫通孔3がこのようにテーパ形状であると、貫通孔3の内部をめっき金属層で良好に充填することが容易となる。なお、貫通孔3を形成した後には、デスミア処理をすることが好ましい。その後、貫通孔3内壁および銅箔7の表面に厚みが0.1〜1μm程度の薄い無電解めっき層(不図示)を被着させる。無電解めっき層は、後述する第一のめっき金属層4の下地金属として機能し、例えば、無電解銅めっき層が好適に用いられる。
【0013】
次に、図2(c)に示すように、貫通孔3内およびその周囲ならびに配線導体9を形成する位置を露出させる開口部を有する第一のめっきレジスト14を銅箔7の上下面に形成する。
【0014】
次に、図2(d)に示すように、第一のめっきレジスト14から露出する貫通孔3内およびその周囲ならびに配線導体9を形成する位置の銅箔7表面に電解めっき法により第一のめっき金属層4を、貫通孔3内を完全に充填しない厚みに析出させる。このとき、配線導体9を形成する位置には第一のめっき金属層4が銅箔の厚みと合わせて、例えば20μm程度の厚みに形成される。なお、第一のめっき金属層4としては、電解銅めっき層が好適に用いられる。この場合、第一のめっき金属層4は、貫通孔3を完全に充填しない厚みに析出させるので、配線導体9を形成する位置に被着される第一のめっき金属層4の厚みを銅箔の厚みと合わせて例えば20μm程度の十分に薄いものとすることができる。
【0015】
次に、図2(e)に示すように、貫通孔3内およびその周囲のみの第一のめっき金属層4を露出させるように第一のめっきレジスト14および配線導体9となる第一のめっき金属層4上に第二のめっきレジスト15を被覆する。
【0016】
次に、図2(f)に示すように、第二のめっきレジスト15から露出した第一のめっき金属層4上に、電解めっき法により第二のめっき金属層5を貫通孔3内を完全に充填するように被着させる。このとき、貫通孔3内には第一のめっき金属層4及び第二のめっき金属層5から成る貫通導体6が形成されるとともに、貫通導体6の上およびその周辺には銅箔7および第1のめっき導体層4および第二のめっき導体層5から成るランド8用の金属層が形成される。また、配線導体9を形成する位置の第一のめっき金属層4は、第二のめっきレジスト15により被覆されているので第二のめっき金属層5は被着されずに薄いままで残る。なお、第二のめっき金属層5としては、電解銅めっき層が好適に用いられる。第二のめっき金属層5の厚みは、貫通孔3内を十分に充填するために必要な範囲であればよいが、銅箔7と第一のめっき金属層4とを合わせた厚みが25〜35μm程度であることが好ましい。
【0017】
次に、図2(g)に示すように、ランド8用の金属層をエッチングにより所定の厚みに削っていく。このとき、ランド8の厚みは20〜30μm程度とすることが好ましい。ランド8が20μm未満の厚みになるまでエッチングを行うと、その上にビルドアップ用の絶縁層2を積層する際にランド8上を被覆する絶縁層2が厚くなり、絶縁層2のビアホール10内にビルドアップ用の配線導体12を形成する際に接続信頼性において低下を招くことになり、逆に30μmを超える厚みが残る程度のエッチングを行うと、ランド8とその周囲との段差が大きくなるため絶縁層2の厚みが薄くなり絶縁信頼性が低下する危険がある。
【0018】
最後に、図2(h)に示すように、両めっきレジスト14、15を除去するとともに、第一のめっき金属層4から露出する銅箔7をエッチング除去する。これによって、貫通孔3内が第一および第二のめっき金属層4、5で充填されている貫通導体6と、絶縁層1の上下面に銅箔7を下地とした第一および第二のめっき金属層4、5から成るランド8と、銅箔7を下地とした第一のめっき金属層4から成る配線導体9が形成される。その後、周知のビルドアップ技術を用いてビルドアップ用の絶縁層2および配線導体12ならびにソルダーレジスト層13を形成することにより図1に示した配線基板20が完成する。本例の場合、絶縁層1上下面の銅箔7を下地として第一のめっき金属層4で形成された配線導体9は、厚みが20μm以下の薄いものであり、配線導体9の幅が30μm以下、および配線導体9同士の間隔が40μm未満の微細な配線導体9を高密度で形成することができ、それにより高密度配線で薄型の配線基板を製造可能である。さらに、本例の場合、第一のめっき金属層4から成る配線導体9の下地金属として絶縁層1の上下面に被着された銅箔7を用いることから、第一のめっき金属層4から成る配線導体9を絶縁層1の上下面に銅箔7を介して極めて強固に接合させることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 絶縁層
3 貫通孔
4 第一のめっき導体
5 第二のめっき導体
6 貫通導体
7 銅箔
8 ランド
9 配線導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の両面に銅箔が張着された銅箔付き絶縁層を準備する工程と、前記銅箔付き絶縁層に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔内を充填する貫通導体および該貫通導体に接続するランドならびに前記絶縁層上を延在する配線導体を形成するための第一のめっき金属層を前記貫通孔内およびその周囲ならびに前記配線導体の形成位置に前記貫通孔を完全に充填しない厚みに選択的に被着させる工程と、前記貫通孔内およびその周囲の前記第一のめっき金属層上に前記貫通導体および前記ランドを形成するための第二のめっき金属層を前記貫通孔を完全に充填する厚みに選択的に被着させる工程と、前記第一のめっき金属層から露出する前記銅箔をエッチング除去して前記貫通孔内に前記第一および第二のめっき金属層から成る貫通導体と、前記絶縁層の両面に前記銅箔および前記第一および第二のめっき金属層から成るランドと、前記銅箔および前記第一のめっき金属層から成る配線導体とを残す工程とを行なうことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−160559(P2012−160559A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18875(P2011−18875)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】