説明

配線基板の部品実装構造

【課題】電子部品の再利用と実装時の電子部品のずれ抑制とを両立可能な配線基板の部品実装構造を得る。
【解決手段】配線基板1上に電子部品3の電極3aを接合して電子部品3を配線基板1に固定するハンダ11を電子部品3の電極3a一つに対して複数配置できるよう、基板側電極7aを複数設けた。これにより、電子部品3を配線基板1に実装する際に溶融したハンダ11による電子部品(電極3a)への表面張力(作用力)が分散されるので、比較的少量のハンダ11で電子部品3のずれを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の表面上の基板側電極に、接合部材を介して電子部品の電極を接合した配線基板の部品実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板の表面上に表面実装部品(SMD)である電子部品を実装する際には、配線基板側に電子部品の電極とほぼ同じか、それよりも大きい面積のランド部(基板側電極)を形成し、そのランド部の面積に応じたペースト状ハンダなどの接合部材をランド部に塗布することが行なわれている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年では省資源化・省エネルギ化の観点により、環境型社会を構築するためのキーワードである3R、すなわちリデュース(廃棄物の発生抑制)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)を考慮した製品が要求されてきている。
【0004】
したがって、この3Rのため、配線基板の表面上に実装した電子部品を取り外す場合がある。
【0005】
配線基板から電子部品を取り外す際には、電子部品の周辺を直接ホットエアなどで高温雰囲気としてハンダを溶融させたり、あるいはハンダゴテなどで直接ハンダ接続部を加熱するといった方法がある。
【特許文献1】特開平4−287998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記した従来の配線基板の部品実装構造では、電子部品の不良による新品交換やハンダ付け不良によるハンダ接合部の修正などで電子部品を取り外すには問題無いが、電子部品の再利用を目的として電子部品を配線基板から取り外す際は、電子部品の電極とほぼ同じか、より大きい面積のランド部に接合部材であるハンダを塗布しているため、ハンダの溶融時間が長くなることや、配線基板から取り外した後も電子部品の電極に多量のハンダが残ることで、電子部品の再利用が困難になるといった不都合がある。
【0007】
その対策として、ランド部の面積を小さくすると、電子部品を配線基板に実装する際に、リフロー炉内の熱により溶融したハンダの表面張力(作用力)により電子部品のずれが生じ、電子部品を所定の位置あるいは姿勢に配置できなくなるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、電子部品の再利用と実装時の電子部品のずれ抑制とを両立可能な配線基板の部品実装構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、配線基板上に設けた導電部を覆うようにして保護層を設け、この保護層の一部を開口させ該開口から前記導電部を露出させて基板側電極を形成し、この基板側電極に接合部材を設けて該接合部材に電子部品の電極を接合することで前記電子部品を前記配線基板に実装する配線基板の部品実装構造において、前記電子部品の前記電極一つに対して前記基板側電極を複数設けたことを第1の特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記配線基板の部品実装構造において、複数の前記基板側電極を、前記電子部品の中心線に対して略対称となる位置に配置したことを第2の特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記配線基板の部品実装構造において、前記配線基板に、一端部が前記導電部に接続されるとともに他端部が前記配線基板の部品実装面とは反対側の面に露出する伝熱部を設けたことを第3の特徴としている
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、配線基板上の保護層から露出した導電部の基板側電極に接合部材を設けて電子部品の電極を接合する際、溶融した接合部材の電子部品(電極)への表面張力(作用力)が分散されるため、比較的少量の接合部材で電子部品のずれを抑制でき、配線基板に対して電子部品を所定の位置あるいは姿勢に配置することができる。また、このように、使用する接合部材の量を比較的少なくすることができるので、配線基板から電子部品を取り外した後も、電子部品の電極に接合部材が残りにくく、電子部品の再利用が容易となる。
【0013】
また、本発明の第2の特徴によれば、電子部品の中心線に対して略対称となる位置に配置された複数の基板側電極によって、溶融した接合部材の電子部品への表面張力(作用力)を上記中心線の両側でバランスよく受けることができるので、より確実に電子部品のずれを抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第3の特徴によれば、伝熱部の他端部を加熱するとその熱が導電部を介して接合部材に達するので、伝熱部の他端部を加熱することで接合部材を溶融して配線基板から電子部品を取り外すことができる。このように、電子部品を取り外す際に電子部品の実装面と反対側から伝熱部を加熱できるので、電子部品に直接加わる熱を抑制することができ、電子部品の損傷を防ぐことができる。また、伝熱部に付加した熱は、直接接合部材に伝達されるので、効率よく接合部材に伝達される。よって、接合部材の溶融が速やかになされ、電子部品を短時間で取り外すことができ、電子部品の再利用が極めて容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具現化した実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる配線基板の部品実装構造を示す平面図、図2は、本実施形態にかかる配線基板の部品実装構造を示す分解斜視図、図3は、本実施形態にかかる配線基板の部品実装構造を示す断面図、図4は、本実施形態にかかる電子部品を配線基板から取り外す際の状態を示す断面図である。なお、図3および図4は、図1のA−A線に沿う部分の断面を示している。
【0016】
図1ないし図4に示すように、配線基板1上には、表面実装部品(SMD)である電子部品3が実装されている。
【0017】
配線基板1は、プリント配線基板である。配線基板1は、ガラスエポキシ材などから構成される基材5上に、導電部としての導電部材7を備えている。この導電部材7は、エッチングなどで所定の回路パターンとなるように処理された銅箔などからなっている。また、該導電部材7の保護やパターン間の絶縁を目的として保護層(レジスト)9を、導電部材7を覆うように施している。
【0018】
保護層9には円形などの開口部9aが設けてあって、この開口部9aにより露出する部位の導電部材7が、基板側電極としてのランド部7aとなる。このランド部7a上の開口部9a内に、接合部材であるハンダ11が配置され、このハンダ11により電子部品3の電極3aがランド部7aに接合され、これにより電子部品3が配線基板1上に実装されたことになる。なお、図2では、ハンダ11は省略されている。ここで、図1に示すように、ハンダ11の平面視での面積(すなわちランド部7aの平面視での面積)は、電子部品3の電極3aの平面視での面積より十分小さく設定されている。
【0019】
電子部品3は、両側部にそれぞれ一つの電極3aを有し、各電極3aに対してそれぞれ一つの導電部材7が設けられている。各導電部材7は、図示しない所定の接続先に接続されるリード部7bを有している。このリード部7bは、電子部品3から離隔する方向へ伸びている(図面では、リード部7bは途中で図示が省略されている)。
【0020】
各導電部材7では、それぞれ二つのランド部7aが電子部品3の中心線L1に対して略対称となる位置に配置されている。そして、各導電部材7には、電子部品3の下側で各電極3aの間に配置されるように伝熱部13が各々設けられている。
【0021】
伝熱部13は、基材5の板厚方向に貫通する貫通孔5aを設け、この貫通孔5aの内面に設定した円筒部13aを備え、メッキなどの処理により導電性と、熱伝導性を持たせるように形成する。伝熱部13においては、円筒部13aの電子部品3側の一端部13bが、ランド部7aの近傍位置にて導電部材7に連続して設けられ、円筒部13aの他端部13cが、配線基板1において導電部材7が設けられた実装面とは反対側の面(反対面)に露出する。円筒部13aの他端部13cは、貫通孔5aから基材5の表面に沿って外側に屈曲して環状のフランジ形状を呈し、その表面(図3中で下面)は、配線基板1の表面(図3中において下面で保護層15の表面に相当)と同一面となっている。
【0022】
このような配線基板1の部品実装構造では、配線基板1へ電子部品3を実装する際には、まず、配線基板1上のランド部7aにリフローソルダリング用のペースト状ハンダが印刷される。そして、その上に電子部品3が配置され、リフローソルダリングによってランド部7aと電子部品3の各電極3aとがハンダ付けされる。このようにしてランド部7aに設けたハンダ11によって、電子部品3の電極3aが、基材5上のランド部7aを包含する導電部材7に対し、電気的に導通接続されると同時に、機械的に固定接続される。
【0023】
そして、電子部品3を、例えば再利用のため配線基板1から取り外す際には、図4に示すように、ヒータなどの熱源17を、配線基板1の電子部品3を実装している面(実装面)とは反対側の面(反対面)に露出する伝熱部13の他端部13cに接触させ、熱源17によって伝熱部13の他端部13cを加熱する。ここで、熱源17は、加熱した銅やアルミニウムなどの金属材を有し、この金属材を伝熱部13に接触させている。このとき、金属材を配線基板1の全面に接触させてもよいし、伝熱部13の他端部13cのみに接触させてもよい。
【0024】
伝熱部13の他端部13cに伝達された熱は、円筒部13aを経て一端部13bに達し、さらに導電部材7からランド部7a上のハンダ11に達して該ハンダ11を溶融させ、これにより電子部品3の電極3aがハンダ11およびランド部7aから離反可能となり、電子部品3を配線基板1から取り外すことができる。
【0025】
以上説明した本実施形態にかかる配線基板1の部品実装構造によれば、ハンダ11に電子部品3の電極3aを接合する際、溶融したハンダ11による電子部品3(電極3a)への表面張力(作用力)が分散するため、比較的少量のハンダ11で電子部品3のずれを抑制でき、配線基板1に対して電子部品3を所定の位置あるいは姿勢に配置することができる。このように、本実施形態では、電子部品3の電極3aを接合するハンダ11の少量化と実装時の電子部品3のずれ抑制とを両立可能である。そして、このように、使用する接合部材の量を比較的少なくすることができるので、配線基板1から電子部品3を取り外した後も、電子部品3の電極3aにハンダ11が残り(付着し)にくく、したがって電子部品3の再利用が容易となる。
【0026】
また、本実施形態では、ランド部7aの平面視での面積を電子部品3の電極3aの平面視での面積より十分小さく設定しているので、使用するハンダ11の量をより少なくすることができる。
【0027】
また、本実施形態では、複数のハンダ11および複数のランド部7aが電子部品3の中心線L1に対して略対称となる位置に配置されており、リフローソルダリングの際に溶融したハンダ11の電子部品3への作用力を上記中心線L1の両側でバランスよく受けることができるので、電子部品3のずれをより確実に抑制でき、配線基板1に対して電子部品3を所定の位置あるいは姿勢に配置することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、伝熱部13の他端部13cを加熱することでハンダ11を溶融して配線基板1から電子部品3を取り外すことができる。このように、電子部品3を取り外す際に電子部品3の実装面と反対側から伝熱部13を加熱できるので、電子部品3に直接加わる熱を抑制することができ、電子部品3の損傷を防ぐことができる。また、伝熱部13に付加した熱は、直接ハンダ11に伝達されるので、効率よくハンダ11に伝達される。よって、ハンダ11の溶融が速やかになされ、電子部品3を短時間で取り外すことができ、電子部品3の再利用が極めて容易となる。
【0029】
また、本実施形態によれば、伝熱部13を、配線基板1の基材5を貫通する貫通孔5aに設けているので、従来一般的に広く適用されている貫通孔の内面にめっきなどの処理で導電性を持たせるスルーホールで対応でき、したがって製造は容易であり低コストで達成できる。
【0030】
なお、本発明は、次のような別の実施形態に具現化することができる。以下の別の実施形態でも上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0031】
(1)上記実施形態においては、伝熱部13が、基材5の貫通孔5aの内面に設定した円筒部13aを備えた、いわゆるスルーホール形状となっている例を説明したが、基材の貫通孔に導電性部材を埋め込み形成し、伝熱部をいわゆるブラインドビアホール形状としてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態においては、ランド部7aの1箇所に1個の伝熱部13を設けた例を説明したが、ランド部7aの1箇所に複数個の伝熱部を設けてもよい。
【0033】
(3)上記実施形態においては、熱源17を伝熱部13の他端部13cに接触させた例を説明したが、熱源として熱風を送風するものを採用し、熱源から熱風を伝導部に向けて吹き付ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板の部品実装構造を示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる配線基板の部品実装構造を示す分解斜視図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる配線基板の部品実装構造を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態にかかる電子部品を配線基板から取り外す際の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0035】
1 配線基板
3 電子部品
3a 電極
7 導電部材(導電部)
7a ランド部(基板側電極)
9 保護層
9a 開口部
11 ハンダ(接合部材)
13 伝熱部
13b 一端部
13c 他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板上に設けた導電部を覆うようにして保護層を設け、この保護層の一部を開口させ該開口から前記導電部を露出させて基板側電極を形成し、この基板側電極に接合部材を設けて該接合部材に電子部品の電極を接合することで前記電子部品を前記配線基板に実装する配線基板の部品実装構造において、
前記電子部品の前記電極一つに対して前記基板側電極を複数設けたことを特徴とする配線基板の部品実装構造。
【請求項2】
複数の前記基板側電極を、前記電子部品の中心線に対して略対称となる位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の部品実装構造。
【請求項3】
前記配線基板に、一端部が前記導電部に接続されるとともに他端部が前記配線基板の部品実装面とは反対側の面に露出する伝熱部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の部品実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−26927(P2009−26927A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188058(P2007−188058)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】