説明

配線基板及びこれを備えた画像形成装置

【課題】差動信号の位相調整のために別途回路等を増設することなく、低コストで容易に差動信号の位相を調整することが可能な配線基板を提供する。
【解決手段】差動信号を伝送するために一対の信号線Lが形成された配線基板1において、一対の信号線Lは、それぞれ、差動信号を出力する差動信号出力回路87の出力端に一端が接続される第1信号線L1と、出力部からの差動信号が入力される差動信号入力回路88の入力端に一端が接続される第2信号線L2と、第1信号線L1と第2信号線L2を接続するチップ抵抗89とで構成され、第1信号線L1は、第2信号線L2の他端に対し、直接に接続することなく迂回して形成され、接続部材は、第1信号線L1の迂回部分のうちのいずれかの部分と第2信号線L2の他端とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号でデータの伝送をするために、一対の信号線が形成された配線基板及び、この配線基板を備えた、プリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、信号の伝送において、基準電圧より高い場合を「1」、低い場合を「0」としてデータ列を表現するシングルエンド信号を用いる方式が普及している。しかし、シングルエンド信号は、ノイズの影響を受けやすく信号が減衰しやすい等の問題点があり、高速で正確にデータを伝送するには限界があるとされる。そこで、シングルエンド信号よりも高速なデータの伝送に適するとされる差動信号(ディファレンシャル信号)を用いる方式も普及している。例えば、差動信号方式は、DDRや、USB等における信号の伝送において採用されている。
【0003】
そして、差動信号は、同周期、逆位相の2種の信号を「+」と「−」の2本の信号線で信号を伝送する方式であり、+の信号線の電圧が−の信号線の電圧より高い場合を「1」に、低い場合を「0」に対応させる。そして、クロスポイントを基準として信号がハイレベルかローレベルかを判断するので、「+」と「−」の信号のクロスするポイントは、参照電圧(電圧の最大値と最小値の中間の電圧値)に合うように調整される。
【0004】
又、この差動信号を用いる方式では、差動信号が入力される回路等の入力部に、差動信号が位相差なく同時に到達することが理想的である。なぜなら、位相差が生ずると、「+」と「−」の2本の信号のクロスポイントがずれ、いわゆる、アイパターンが小さくなる等により、入力部が正しくデータをラッチできない場合が生じ得るためである。特に、高速にデータ伝送を行う場合に問題が大きくなる。
【0005】
そこで、差動信号の位相差を補正する構成の一例が特許文献1に記載されており、特許文献1には、差動信号出力手段と、差動信号出力手段の出力信号に対して遅延調整を行う遅延調整手段と、遅延調整手段を通った正極性および反転極性の差動出力信号の位相を比較する位相差検出手段と、位相差検出手段の検出結果に応じて遅延調整手段による信号遅延時間を制御する制御手段とを備える差動シリアル通信装置等が記載されている。(特許文献1:請求項1、図1等参照)。
【特許文献1】特開2004−208004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、差動信号の位相差は、出力部から入力部までの信号線の長さの違いが一因で生ずる。今日の配線基板の低面積化や、基板に実装する部品の高集積化により、差動信号を伝送する信号線の線路長を等しくできない場合もある。特に、信号線の線路長の差は、高周波の信号伝送において問題となる。
【0007】
ここで、特許文献1記載の発明をみると、差動信号出力回路とトランシーバICとの間の差動信号の位相差を補正することは可能であるが、差動シリアルバス(信号線)を介してトランシーバICに接続される差動信号の入出力回路とは、差動信号の位相差は考慮されていない。即ち、信号線としての差動シリアルバスの長さが等しくなければ、結果としてトランシーバICが送り出した差動信号に位相差が生じてしまうという問題があり、このことは差動シリアルバスの配線に制限を加えることになる。
【0008】
又、差動信号を出力する素子、回路の出力バッファの特性(信号の立ち上がり、立ち下がりの勾配)が異なる場合、+側と−側の信号のクロスポイントの位置が参照電圧からずれてしまい、アイパターンの面積が小さくなり、正確な信号の伝送ができない場合も生ずる。尚、特許文献1記載の発明をみると、例えば、トランシーバICの出力特性は考慮されていない。
【0009】
更に、特許文献1記載の発明において、差動信号の位相差の補正をするためには遅延調整手段、位相差検出手段等の構成を必要とし、その分、LSI等のコストが高くなるという問題がある。又、特許文献1記載の発明は、遅延調整手段、位相差検出手段等の構成を備えるという特定のLSI等にのみ適用できるものであり、一般に流通する差動信号を出力する汎用の電子部品に適用することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、差動信号の位相調整のために別途回路等を増設することなく、低コストで容易に差動信号の位相を調整することが可能な配線基板を提供することを課題とする。又、この配線基板を採用することにより、高速のデータ伝送が確実になされる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため請求項1に係る発明は、差動信号を伝送するために一対の信号線が形成された配線基板において、一対の前記信号線は、それぞれ、差動信号を出力する出力部の出力端に一端が接続される第1信号線と、出力部からの差動信号が入力される入力部の入力端に一端が接続される第2信号線と、前記第1信号線と前記第2信号線を接続する接続部材とで構成され、前記第1信号線は、前記第2信号線の他端に対し、直接に接続することなく迂回して形成され、前記接続部材は、前記第1信号線の迂回部分のうちのいずれかの部分と前記第2信号線の他端とを接続することとした。
【0012】
この構成によれば、接続部材は、第1信号線の迂回部分のいずれかの部分と第2信号線を接続するから、信号線の全長を可変させることができる。従って、信号線の線路長の全長を調整して差動信号の位相差をなくすことができる。即ち、クロスポイントが参照電圧と一致して、いわゆるアイパターンを大きく広げることができる。更に、差動信号が各出力端の特性(任意の電圧に達するまでの時間、即ち、立ち上がり、立ち下がりの勾配)の違いにも対応でき、線路長を可変させ、差動信号のクロスポイントを参照電圧と一致させて、アイパターンを広げることもできる。更に、別途回路や部品を設ける必要もなく、差動信号の位相差を調整するための構成が簡易かつ低コストであり、又、一般に流通する汎用部品を使用した場合にも対応することができ、汎用性が非常に高い。
【0013】
又、請求項2に係る発明は、請求項1記載の配線基板において、前記第1信号線の迂回部分は、前記第2信号線の他端を中心とする円弧状に形成されていることとした。
【0014】
この構成によれば、第2信号線の他端を支点として、回動させるように接続部材の位置決めを行える。又、第2信号線の他端と円弧状に形成された第1信号線を接続するから、第2信号線に開放端が形成されず、又、大きなインピーダンスの変化を避けることができる。尚、本発明は、請求項1記載の発明の好適な一例を示す。
【0015】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の配線基板において、前記第1信号線は、蛇行するミアンダパターン状に形成され、前記ミアンダパターンの曲線部分は、前記第1信号線の迂回部分として、前記第2信号線の他端を中心とした円弧と重複するように形成されていることとした。
【0016】
この構成によれば、第2信号線の他端を支点として、回動させるように接続部材の位置決めを行える。又、第2信号線の他端と円弧と重複するように形成された第1信号線を接続するから、第2信号線に開放端が形成されず、大きなインピーダンスの変化を避けることができる。尚、本発明は、請求項1又は2記載の発明の好適な一例を示す。
【0017】
又、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の配線基板において、前記出力部から前記入力部への信号線の長さを調整するため、前記第1信号線及び前記第2信号線に直接に接続されず、接続部材により一端が前記第1信号線に、他端が前記第2信号線に接続される調整信号線が設けられ、前記第1信号線の迂回部分は、前記調整信号線の一端を中心とした円弧と重複するように形成されることとした。
【0018】
この構成によれば、上述の構成に加え、更に、位相差を調整するための信号線が設けられ、この信号線を介して、信号線の線路長を変えることで、差動信号の位相差の調整も行えるので、位相差が大きい場合や、差動信号の各出力端の特性(立ち上がり、立ち下がりの勾配)の差が大きい場合にも対応することができ、位相差の調整幅を大きくすることができる。
【0019】
又、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4いずれか1項に記載の配線基板において、前記接続部材によって前記第1信号線と前記第2信号線を接続した点の近傍を終端として、一対の前記第1信号線の終端抵抗が設けられることとした。
【0020】
この構成によれば、第1信号線の終端を開放端のままとせず、差動信号の不要反射を防ぐことができるので、差動信号の波形の歪みがなくなり、さらに正確に差動信号を伝送することができる。又、第1信号線と第2信号線を接続した点の近傍を終端とするから、インピーダンス整合もとりやすい。
【0021】
又、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5いずれか1項に記載の配線基板において、前記接続部材は、チップ抵抗であることとした。
【0022】
この構成によれば、接続部材にチップ抵抗を用いるので、調達が容易であり、安価であるから、配線基板のコストを低下させることができる。
【0023】
又、請求項7に係る発明は、請求項1乃至6いずれか1項に記載の配線基板を画像形成装置が備える。
【0024】
この構成によれば、信号の伝送を高速かつ正確に行うことができる配線基板を採用するから、画像形成装置の処理速度の高速化に寄与することができる。又、例えば、形成する画像の解像度を高めることによる画像データの処理量増大にも対応することができる。
【発明の効果】
【0025】
上述したとおり、本発明によれば、入力部に入力される差動信号の位相差を解消することができ、アイパターンが広がり、安定した信号の伝送を行うことができ、又、構成も簡易で低コストの配線基板を提供することができる。又、この配線基板を採用することで、差動信号の伝送が高速かつ正確に行われる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図1〜6を参照しつつ説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0027】
まず、図1を用いて、本発明の配線基板1を制御部9に採用した電子写真方式のプリンタ2(画像形成装置に相当)の概略を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ2の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
本発明の第1の実施形態に係るプリンタ2は、主要な構成として、画像形成部3、定着装置4、シート搬送路5、操作パネル6、シート供給部7、記憶部8、制御部9等を有する。
【0029】
本実施形態に係るプリンタ2の画像形成プロセスの概略について説明すると、画像形成部3は、感光体ドラム31上に形成すべき画像のトナー像を形成、担持する。トナー像形成後、感光体ドラム31上に形成されたトナー像が、シート搬送路5により担持・搬送されるコピー用紙、OHPシート、ラベル用紙等のシート(記録媒体)上に転写される。転写後、定着装置4はシートにトナー像を定着させ、定着後、装置本体より排出される。このようにして、画像形成プロセスが実行される。
【0030】
まず、前記画像形成部3は、感光体ドラム31、帯電装置32、露光装置33、現像装置34、転写ローラ35等により構成される。
【0031】
前記感光体ドラム31は、その周面にアモルファスシリコン等の感光層を有するように形成されたドラムであり、回転自在に支持される。そして、感光体ドラム31は、メインモータM1と接続され、メインモータM1の駆動が感光体ドラム31に伝達される。これにより、感光体ドラム31は、所定の方向に回転する。
【0032】
感光体ドラム31の周囲には、感光体ドラム31を帯電させる帯電装置32と、感光体ドラム31に形成する画像の画像データに基づき、感光体ドラム31の周面を走査、露光して静電潜像を形成する露光装置33と、静電潜像に対しトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する現像装置34等が設けられる。
【0033】
トナー像の形成を行う場合、まず、帯電装置32により感光体ドラム31の表面を一様に帯電させる。この帯電装置32は、帯電ローラや帯電ブラシ等により感光体ドラム31と接触して帯電させるものでもよいし、コロナ式放電器により非接触で帯電させるものであってもよい。
【0034】
次に、露光装置33が、帯電した感光体ドラム31の周面に、画像データに基づき光を照射し、感光体ドラム31の周面に画像データに対応した静電潜像を形成する。この露光装置33は、半導体レーザやポリゴンモータ、ポリゴンミラー、fθレンズ等を備え、レーザ光により露光、走査を行うレーザユニットであっても良いし、アレイ状に並べたLEDを光源とした露光装置33であっても良い。
【0035】
感光体ドラム31に静電潜像が形成された後、トナーを収容するとともにトナーを所定の電位に帯電させる現像装置34が、トナーを静電潜像に(感光体ドラム31に)供給する。トナーは、現像装置34により帯電させられているから、感光体ドラム31の周面に静電的に付着する。このようにして、感光体ドラム31の周面上に形成された静電潜像が現像(可視像化)される。尚、プリンタ2がカラー対応とする場合には、現像装置34を使用するトナーの色に合わせて、現像装置34等を複数設ければよい。
【0036】
前記転写ローラ35は、感光体ドラム31とニップを形成するように回転可能に支持され、感光体ドラム31の回転方向において、現像装置34の下流側近傍に配される。又、転写ローラ35は、メインモータM1の駆動が伝達され、所定の方向に回転駆動する。シートに転写を行う場合、シート搬送路5は、感光体ドラム31の周面上のトナー像がシートの適切な位置に転写されるように、タイミングを合わせてシートを感光体ドラム31と転写ローラ35のニップに進入させる。その際、転写ローラ35には、トナー像の帯電する極性と逆極性の所定の電圧が印加され、その結果、感光体ドラム31からシートにトナー像が転写される。
【0037】
前記定着装置4は、シートに転写されたトナー像の定着を行う。定着装置4は、例えば、発熱体を内蔵した加熱ローラと加熱ローラ(いずれも不図示)に圧接され、ニップを形成する加圧ローラを備える。そして、加熱ローラと加圧ローラのニップに搬送されてきたシートを進入させ、トナー像を加圧、加熱し、その結果、シートの表面にトナーが定着される。定着完了後のシートは、プリンタ2内から排出され、画像形成が完了する。尚、加熱ローラと加圧ローラは、定着モータM2により回転駆動する。
【0038】
前記シート搬送路5は、画像形成の際に、シート供給部7から画像形成部3、定着装置4を経て、シートがプリンタ2内から排出されるまで、シートを搬送する。シート搬送路5には、シートを案内するガイドや、シートを搬送するための搬送ローラ対が適宜設けられる(いずれも不図示)。そして、搬送ローラ対には、搬送モータM3の駆動力が伝達され、搬送ローラ対が回転する。これにより、所定の速度でシートが、プリンタ2内で画像形成のために搬送される。
【0039】
前記操作パネル6は、複数の操作キーから成る操作部と、設定条件や装置の状態等を表示する表示部(いずれも不図示)とから構成され、例えば、プリンタ2の正面上部に設けられる。そして、使用者は、操作部から印刷条件等の設定を行う他、プリンタ2にシートのジャム(紙詰まり)やシート切れ等のエラー発生の際に表示部を確認する。即ち、操作パネル6は、使用者の入力、設定を受け付け、又、使用者に向けて情報を伝達する。
【0040】
前記シート供給部7は、シートを収納する1乃至複数のカセット、給紙ローラ(いずれも不図示)等から構成される。そして、画像形成を行う場合には、給紙ローラが回転駆動することで、シートをシート搬送路5に向けて1枚ずつ送り出す。
【0041】
前記記憶部8は、画像メモリ81、RAM82、及びROM83を備えており、画像メモリ81は、外部コンピュータ100から送信され、画像形成を行う画像データを記憶する。そして、制御部9は、画像メモリ81の画像データを読み出し、又、処理後の画像データを書き込む等、画像メモリ81にアクセスする。ROM83は、制御部9の処理プログラムや処理内容、処理用のデータ等を記憶し、ROM83から読み出されたデータ、プログラムは、RAM82に展開される。又、RAM82には、画像データを記憶させることも可能である。そして、本発明の配線基板1は、例えば、画像メモリ81やRAM82と、制御部9との間の差動信号の伝送に用いられる。
【0042】
前記制御部9は、例えば、プリンタ2内に適宜設けられる制御基板上に設けられる。そして、制御部9は、プリンタ2を制御するために、CPU91や各種LSI92を実装する。又、制御部9は、プリンタ2の各構成に対し制御信号を伝達するため、各構成と信号線により接続される。例えば、制御部9は、ROM83から読み出され、設定されたプログラムに従い、画像形成部3内の各装置やメインモータM1、定着装置4(定着モータM2)、シート搬送路5(搬送モータM3)、操作パネル6、シート供給部7等の動作を制御する。このようにして、品質の高い画像形成が行われるようにプリンタ2の動作は制御される。
【0043】
ここで、制御部9は、例えば、記憶部8と同一の基板上に設けられ、記憶部8の画像メモリ81、RAM82、ROM83ともデータのやり取りを行うため、信号線Lで接続されている。そして、本実施形態のプリンタ2では、画像データの処理速度の向上や、演算速度高速化等のため、画像データやRAM82と制御部9との間では、差動信号方式により信号の伝送を行うことができる。
【0044】
次に、図2に基づき、本発明の第1の実施形態に係る制御部9と記憶部8の詳細ついて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る制御部9と記憶部8の構成の一例を示すブロック図である。
【0045】
まず、本実施形態における記憶部8の画像メモリ81やRAM82は、高速なデータ伝送が行えるように半導体メモリの、例えば、DDR SDRAM(Double−Data−Rate SynchronousDynamic Random Access Memory)を採用することができる。(尚、DDRには、DDR1、DDR2、DDR3といった種類が存在するが、これらを総称して以下「DDR」と言う。)。以下では、画像メモリ81やRAM82がDDRである場合を例として説明する。尚、画像メモリ81やRAM82がDDRに限定されるものではなく、又、本発明がDDRに限定されるものではない。
【0046】
図2に示すように、画像メモリ81及びRAM82は、データを保持するラッチ回路や信号の入出力のためのバッファを有するメモリコントローラ84(DDRでは、複数のビットをバッファにプリフェッチし、プリフェッチ完了後にデータをバースト転送する。)や、実際にデータを記憶する手段としてのメモリセルアレイ85等を有する。そして、画像メモリ81及びRAM82にはクロック発生回路86(例えばドライバIC)が接続され、クロック発生回路86が発生するクロック(同期信号)が、画像メモリ81及びRAM82に入力される。
【0047】
ここで、DDRに入力されるクロック信号(CLK信号)は、差動信号方式が用いられる。従って、図2においては、簡略化して図示しているが、クロック発生回路86から画像メモリ81やRAM82への信号線Lは、+側と−側の一対の信号線Lで構成される。従って、クロック発生回路86は、差動信号出力回路87として機能し、画像メモリ81、RAM82は、差動信号入力回路88として機能する。
【0048】
次に、画像メモリ81及びRAM82は、信号線Lを介し、制御部9のCPU91や各種LSI92等と接続され、双方向のデータ伝送が可能である。尚、図2では、画像メモリ81及びRAM82と、CPU91及び各種LSI92との信号線Lは、簡略化して図示しているが、信号線Lは、データを並列に伝送できるように(例えば1バイト単位)、複数の信号線Lで構成される。
【0049】
ここで、CPU91等とDDR間のデータ伝送では、データのやりとりの容易化のため、信号のエッジ(立ち上がり、立ち下がり)を参照して、DDRへのデータを書き込みやDDRからのデータの読み出しを行うためのデータストローブ信号(DQS信号)が採用されている。このDQS信号は、データのリード/ライト動作時の基準動作クロックとして機能する。即ち、DQS信号のクロスポイントCPを基準として、メモリコントローラ84は、データを送信し、ラッチする。
【0050】
そして、データの送受信を行う場合、まずDQS信号は、ローレベルとなる。その後、例えば、リード動作(画像メモリ81やRAM82からCPU91等がデータを読み出す)では、DQS信号のエッジ(クロスポイントCP)は、データ信号のエッジとほぼ一致し、ライト動作では(CPU91等からのデータを画像メモリ81やRAM82に書き込む)DQS信号のエッジは、データ信号のエッジのほぼ中央に位置する。要するに、DQS信号により、リード、ライトのラッチタイミングをはかり、データの送受信が的確に行われるようにする。
【0051】
そして、DQS信号には、差動信号方式が採用されている(尚、DDR1では、DQS信号はシングルエンド信号)。従って、CPU91、各種LSI92やメモリコントローラ84は、差動信号出力回路87及び差動信号入力回路88としても機能する。
【0052】
以上のように、DDRを画像メモリ81やRAM82に採用する場合、差動信号の伝送が必要となる。そして、これらのような差動信号を伝送する信号線Lを有する配線基板1に本発明が適用される。
【0053】
次に、図3に基づき、本発明の第1の実施形態に係る差動信号の信号線Lの配線について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る差動信号の信号線Lの一例を示す配線図である。
【0054】
ここで、図3では、図3の左方から、差動信号出力回路87により出力された差動信号が伝送される。そして、図3の右方に、差動信号を受け付ける差動信号入力回路88が接続されるものとして説明する。
【0055】
尚、本実施形態のプリンタ2では、上述したように、CLK信号やDQS信号に差動信号方式が採用されるから、本実施形態において、差動信号出力回路87は、クロック発生回路86、メモリコントローラ84、CPU91等であり、差動信号入力回路88は、画像メモリ81、RAM82、メモリコントローラ84、CPU91等である。
【0056】
そして、差動信号を伝送するため、信号線Lは、差動信号出力回路87の出力端に一端が接続される第1信号線L1と、差動信号入力回路88が入力される入力端に一端が接続される第2信号線L2が、それぞれ、一方を+側、他方を−側として一対に形成される。第1信号線L1と第2信号線L2は、直接つながっておらず、第2信号線L2の差動信号入力回路88の入力端に接続されない第2信号線L2の一方の端部は、例えば、円状の開放端Aとして形成される。そして、第1信号線L1と第2信号線L2は、チップ抵抗89等により接続されることで一本の信号線Lとなる。尚、第1信号線L1と第2信号線L2を接続するための部材は、第1信号線L1と第2信号線L2を接続できればよいから、例えば、ジャンパを用いても良い。
【0057】
具体的には、第1信号線L1は、第2信号線L2の開放端Aに対し、迂回して形成される。本実施形態では、第1信号線L1の迂回部分は、第2信号線L2の開放端Aを中心とする円弧状に形成される。そして、チップ抵抗89が、第1信号線L1の円弧状の迂回部分のうちのいずれかの部分と第2信号線L2の開放端Aとを接続して、差動信号を伝送するための信号線Lが完成する。
【0058】
ここで、第1信号線L1の円弧状の迂回部分の半径rは、適宜設定することが可能であり、例えば、2cm〜1mmの間で設定することができる。例えば、チップ抵抗89は、3.2mm×1.6mm、2.0mm×1.2mm、1.6mm×0.8mm等、各種のサイズが存在し、又、ジャンパを用いる場合は、その大きさを調整すれば、適宜設定することが可能である。
【0059】
円弧状の迂回部分の半径rは、+側と−側の信号線Lの線路長の差や、差動信号の周波数、差動信号を遅延させる時間との関係を勘案して定めることができる。具体的には、電気信号が基板上を伝搬する速度は、実際には光速の約半分程度になることがある。即ち、
1.5×108m/s程度である。この速度で電気信号が伝搬するとした場合、
1ns(10-9秒)あたり、約15cm進む。
【0060】
ここで、円弧状の迂回部分(本実施形態では半円)の半径rを1cmとした場合、半円の円周の長さは、
2π×1cm÷2≒3cm
であり、この場合、3cmは、信号線Lの線路長を延長することができる。そうすると、
3cm÷15cm=0.2となり、
1ns×0.2=200ps
となるから、この場合、差動信号入力部への信号の到達時間を、200ps程度遅らせることができる。尚、これらの値は、一例に過ぎず、採用する周波数や、信号間伝搬速度、遅延させるべき時間等との兼ね合いで、円弧の半径rを決定すればよい。
【0061】
配線基板1の配線をより具体的に説明すると、第1信号線L1の迂回部分は、本実施形態では第2信号線L2の開放端Aを中心とした半円の円弧状に形成される。そして、第2信号線L2の開放端Aを支点として、チップ抵抗89を回動させるようにして、位置決めがなされる(位置決めの一例を実線で、他例を破線で図示)。この位置決めは、例えば、+側の信号線Lの線路長と−側の信号線Lの線路長が等しくなる位置でなされる。言い換えると、チップ抵抗89の固定位置を変えることで、差動信号出力回路87から差動信号入力回路88までの線路長を調整することができる。
【0062】
これにより、図3に示す配線部分に至るまでに、+側の信号と−側の線路長が異なってしまう場合でも、最終的に+側の信号と−側の信号線Lの線路長を同一となるように調整することができる。即ち、線路長が異なるために+側の信号と−側の信号に位相差があっても、+側の信号と−側の信号の差動信号入力回路88への到達時間を同時になるようにすることができる。
【0063】
又、第1信号線L1の迂回部分は、円弧状に形成されるから、チップ抵抗89の長さを円弧の半径rにあわせることで、複数の長さの異なるチップ抵抗89を用意することなく信号線Lの全長を変化させることができ、差動信号の位相差の調整が容易なものとできる。尚、第1信号線L1の迂回部分は、円弧状に限られたものではなく、複数の長さの異なるチップ抵抗89を用意する必要があるが、例えば、矩形状とすることは可能である。
【0064】
そして、一対の第1信号線L1の終端には、終端抵抗RL1が接続される。言い換えると、+側と−側で構成される一対の第1信号線L1の終端に、共通の終端抵抗RL1が接続される。これにより、第1信号線L1の終端で、信号の反射がおきることを防ぐことができる。即ち、第1信号線L1において、チップ抵抗89を伝わる信号と、第1信号線L1をそのまま進む信号とに分岐しても、第1信号線L1をそのまま進んだ信号のエネルギーを終端抵抗RL1で消費させることができる。従って、信号の反射による差動信号の波形の歪みを解消することができ、正確な差動信号の伝送を行うことができる。
【0065】
しかも、本実施形態では、それぞれの第1信号線L1の終端は、同一の終端抵抗RL1に接続され、終端抵抗RL1は、第1信号線L1の円弧状の迂回部分の終点近傍に設けられる。言い換えると、第1信号線L1とチップ抵抗89を接続した点から、第1信号線L1の差動信号の伝送方向下流側ですぐに終端抵抗RL1が接続される。このように構成することで、終端抵抗RL1が、第1信号線L1とチップ抵抗89の接続点の近くで第1信号線L1と接続されることになり、インピーダンス整合をとりやすくなる。
【0066】
又、本発明が、第1信号線L1を円弧状に形成するのは、信号線Lの線路長を可変としても、信号線に開放端が生じないようにするためである。この点に付き、図4に基づき説明する。図4は、本発明の実施形態に係る信号線Lを円弧状に形成する理由を説明するための説明図である。
【0067】
図4に示すように、第1信号線L1を直線的に配線し、この第1信号線L1の外側に第2信号線L2を直線的に設け、この第1信号線L1と第2信号線L2をチップ抵抗89等により接続しても差動信号出力回路87から差動信号入力回路88までの信号線L全体の線路長を可変とすることができる。尚、図4では、一対の第1信号線L1の終端は、共通の終端抵抗RL1に接続されている。
【0068】
このような配線を行った場合、差動信号を伝送する信号線Lを直線状に形成できるという利点はあるものの、第2信号線L2において開放端Bが形成されてしまう。この開放端Bでは、信号が全反射してしまい、伝送される信号の波形に大きな歪みが生じてしまう。更にいえば、第2信号線L2に形成された開放端Bに更に終端抵抗を設けると、今度は、信号線L全体のインピーダンス整合をとりづらくなる。これらの弊害があるため、本発明は、できるだけ開放端Bが形成されないように、第1信号線L1を円弧状に形成するのである。
【0069】
このように、本発明は、差動信号を伝送する一対の信号線Lにおいて、+側と−側の信号線Lの線路長を等しくなるように調整することができる。この調整は極めて安価であり、差動信号の位相差を調整する回路は必要がなくなる。
【0070】
例えば、クロック発生回路86からDDRに差動クロック信号を伝送するための信号線Lにおいて、本発明を適用すれば、差動クロック信号の+側と−側の、差動信号出力回路87(クロック発生回路86)から差動信号入力回路88(画像メモリ81、RAM82)への到達時間のずれ、即ち、スキュー(タイミングのずれ)の調整が行える。更に、クロック信号とデータストローブ信号や他の信号とのスキュー調整にも使用することができる。
【0071】
又、DQS信号を伝送するための信号線Lにおいては、一対の信号線Lの線路長を同一のものとでき、データストローブ信号の両極間のスキュー調整が行え、クロスポイントCPとDQS信号の参照電圧とを一致させることができる。更に、DDRでは、データ線の信号は、参照電圧を基準としてハイレベルとローレベルを判別し、かつ、メモリコントローラ84は、DQS信号を基準クロックとしてデータ線の信号の取り込みを行うが、DQS信号のクロスポイントCPが参照電圧とずれると、データ線の信号のクロックとDQS信号のクロスポイントCPの間にずれが生じてしまう。しかし、本実施形態では、差動信号の信号線Lの線路長を可変させ、クロスポイントCPの位置を調整できるから、データ線のセットアップ時間、ホールド時間の調整も行える。
【0072】
次に、本発明の第1の実施形態に係る差動信号の伝送において、差動信号出力回路87の出力バッファの出力特性(ドライブ能力)や信号線Lの特性に差がある場合にも対応できる点につき、図5に基づき説明する。
【0073】
図5は、差動信号出力回路87の+側と−側の出力特性(ドライブ能力)に差がある場合のタイミングチャートであり、(a)は+側の出力波形の一例を示し、(b)は−側の出力波形の一例を示し、(c)は+側と−側の出力波形を重ねた差動信号の波形の一例であり、(d)は、本発明の実施によりクロスポイントCPの位置を修正した波形の一例であり、(e)は、アイパターンepの大きさの差を説明するためのクロスポイントCPの拡大図である。
【0074】
まず、図5について説明すると、各図において、2点鎖線で、信号のハイレベルを示すVH、信号のローレベルを示すVL、VHとVLの中間値を示すVref(参照電圧)を示している(VH、VL、Vrefの単位はボルト)。例えば、DDR1では、VHのMAXは、Vref+0.3V程度であり、VLは、Vref−0.3V程度である。尚、DDRの種類や製品によって、特性値は異なる。
【0075】
次に、図5(a)と(b)について説明する。図5(a)に示す差動信号の+側の出力波形と、図5(b)に示す差動信号の−側の出力波形を比べると、+側の出力のドライブ性能のほうが、−側の出力よりも高くなっている(=立ち上がり、立ち下がりに要する時間が短い。)。この違いは、CPU91やLSI92等やメモリコントローラ84の出力バッファにおける2つの極性の出力特性の差や、信号線Lの特性の差や、場合により、差動信号を伝送する信号線Lに隣接して配される他の電気、電子部品の影響により表れる。尚、図5(a)、(b)では、+側の信号の立ち上がり時間t1、立ち下がり時間t2は、−側の信号の立ち上がり時間t3、立ち下がり時間t4に比べ1/2程度である。(この比較を図5(a)、(b)において破線で示す。)
【0076】
そして、図5(c)に示すように、+側の出力波形と−側の出力波形を重ねると、差動信号が形成される。しかし、+側の出力と−側の出力の特性が異なっているから、+側の出力と−側の出力のクロスポイントCPが、Vrefの位置からずれてしまう。
【0077】
しかし、本発明では、信号線Lの線路長を可変することができるから、ドライブ性能の高い+側の出力の差動信号入力回路88への到着時間を遅らせることができる。このように、差動信号入力回路88への到着時間を遅らせて、+側の出力と−側の出力のクロスポイントCPをVrefの位置に併せた図が、図5(d)である。このようにクロスポイントCPの位置を調整することで、+側の信号と−側の信号で囲まれる領域(いわゆるアイパターンep)を最大化することができる。
【0078】
この点を図5(e)を用いて説明する。まず、図5(e)の実線は、+側の出力と−側の出力のクロスポイントCPをVrefの位置に併せた場合を示す。一方、破線は、+側の出力と−側の出力のクロスポイントCPが、Vrefの位置からずれたままの状態を示す。尚、比較のため、実線、破線のクロスポイントCPの時間軸上(横軸)における位置は、一致させている。
【0079】
そして、図5(e)中における縦線の網掛け領域F1は、クロスポイントCPをVrefの位置に併せたことによって、アイパターンepの増加した領域を示す。一方、横線の網掛け領域は、クロスポイントCPをVrefの位置に併せたことによって、アイパターンepの減少した領域F2を示す。
【0080】
図5(e)から明らかなように、各領域を対比すると、クロスポイントCPを一致させた場合(縦線の網掛け部分)の方が、一致させない場合(横線の網掛け部分)アイパターンepの総面積は大きくなる。従って、アイパターンepが広がることにより、安定した信号伝送を行える。特に、高周波で差動信号を伝送する場合、アイパターンepが小さくなることは、正確な信号の伝送の妨げとなるので、高周波ほどこの利点は大きくなる。
【0081】
従って、差動信号出力回路87の出力バッファの出力特性(ドライブ能力)を考慮して、DDRにおける差動クロック信号の信号線Lの線路長を定めることができる。一方、データストローブ信号のような双方向の差動信号の伝送においても、位相差の大きい方向(出力の特性差が大きい方向)で信号線Lの線路長を調整することにより、双方向の差動信号の信号線Lの線路長を最適化できる。尚、双方向の差動信号の信号線Lを、片方向ずつに分けることが可能であるならば、片方向ずつに分け、差動信号の信号線Lの線路長を調整すればよい。
【0082】
このようにして、接続部材は(チップ抵抗89、ジャンパ等)、第1信号線L1の迂回部分のいずれかの部分と第2信号線L2を接続するから、信号線Lの全長を可変させることができる。従って、信号線Lの線路長の全長を調整して差動信号の位相差をなくすことができる。即ち、クロスポイントCPが参照電圧と一致して、いわゆるアイパターンepを大きく広げることができる。更に、差動信号が各出力端の特性(任意の電圧に達するまでの時間、即ち、立ち上がり、立ち下がりの勾配)の違いにも対応でき、線路長を可変させ、差動信号のクロスポイントCPを参照電圧と一致させて、アイパターンepを広げることもできる。更に、別途回路や部品を設ける必要もなく、差動信号の位相差を調整するための構成が簡易かつ低コストであり、又、一般に流通する汎用部品を使用した場合にも対応することができ、汎用性が非常に高い。
【0083】
又、第2信号線L2の他端を支点として、回動させるように接続部材の位置決めを行える。又、第2信号線L2の他端と円弧状に形成された第1信号線L1を接続するから、第2信号線L2に開放端Aが形成されず、又、大きなインピーダンスの変化を避けることができる。
【0084】
又、第1信号線L1に終端抵抗RL1を設けるから、第1信号線L1の終端を開放端Aのままとせず、差動信号の不要反射を防ぐことができるので、差動信号の波形の歪みがなくなり、さらに正確に差動信号を伝送することができる。
【0085】
又、接続部材にチップ抵抗89を用いるので、調達が容易であり、安価であるから、配線基板1のコストを低下させることができる。
【0086】
又、画像形成装置に本発明に係る配線基板1を採用すれば、信号の伝送を高速かつ正確に行うことができる配線基板1を採用するから、画像形成装置の処理速度の高速化に寄与することができる。又、例えば、形成する画像の解像度を高めることによる画像データの処理量増大にも対応することができる。
【0087】
更にいえば、本発明は、各配線基板1に差動信号の信号線Lの線路長を等しくし、又、差動信号出力回路87の両極の特性差にも対応して、配線基板1の1枚1枚について、差動信号の位相差を解消することができる。しかし、配線基板1が大量に生産される場合、1枚1枚に対し、チップ抵抗89等の正確な位置決めをすることは現実的でない場合があるので、配線基板1や差動信号の出力回路の特性を試験する基板に本発明を適用するようにしてもよい。この試験用基板で最適な線路長等のデータをオシロスコープ等により測定し、そのデータを反映させた配線基板1(例えば、チップ抵抗89を最初から固定して製造、又は、差動信号の信号線Lの線路長を修正した基板)を製造するようにしてもよい。又、差動信号の位相差を高精度に補正しつつ、生産性を高めるために、信号線Lの位相差をオシロスコープ等により測定し、測定された位相差に対応してチップ抵抗89の固定するための専用の治具を用いてチップ抵抗89を固定するようにしても良い。
【0088】
次に、図6に基づき、本発明の第2の実施形態に係る差動信号の信号線Lの配線について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る差動信号の信号線Lの一例を示す配線図である。
【0089】
尚、図6に示す、第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、差動信号の信号線Lの配線パターンが異なるのみであり、他の部分については同様に適用できるものである。従って、本実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、その他の説明については省略する。
【0090】
ここで、図6では、図3の左方から、差動信号出力回路87により出力された差動信号が伝送される。そして、図3の右方に、差動信号を受け付ける差動信号入力回路88が接続されるものとして説明する。
【0091】
本実施形態では、差動信号出力回路87の出力端に一端が接続される第1信号線L1は、蛇行するミアンダパターン状に一方を+側、他方を−側として一対に形成される。そして、差動信号入力回路88が入力される入力端に一端が接続される第2信号線L2が、一方を+側、他方を−側として一対に形成される。
【0092】
尚、+側の第1信号線L1と第2信号線L2は、直接つながっておらず、第2信号線L2の差動信号入力回路88の入力端に接続されない第2信号線L2の一方の端部は、円状の開放端Aとして形成され、第1信号線L1と第2信号線L2は、チップ抵抗89、ジャンパ等により接続される点は、第1の実施形態と同様である。
【0093】
そして、本実施形態では、+側の第1信号線L1の迂回部分としてのミアンダパターンの曲線部分は、+側の第2信号線L2の他端を中心とした円弧と重複するように形成される。
【0094】
更に、本実施形態では、出力部から入力部への信号線Lの長さを調整するため、−側の第1信号線L1及び第2信号線L2に直接に接続されず、チップ抵抗89等により一端が−側の第1信号線L1に、他端が−側の第2信号線L2に接続される調整信号線L3が設けられ、−側の第1信号線L1のミアンダパターンでの迂回部分は、この調整信号線L3の一端を中心とした円弧と重複するように、配線基板1上に信号線Lが形成される。
【0095】
具体的には、+側の第1信号線L1は、+側の第2信号線L2の開放端Aに対し、迂回して形成され、本実施形態では、一方の第1信号線L1の迂回部分(図6では+側の信号線L)は、ミアンダパターン状に形成されるとともに、+側の第2信号線L2の開放端Aを中心とする円弧状に形成される。そして、−側の第1信号線L1の迂回部分(図6では−側の信号線L)は、ミアンダパターン状に形成されるとともに、−側の第1信号線L1の外側に設けられた調整信号線L3の開放端Cを中心とする円弧状に形成される。
【0096】
そして、チップ抵抗89等により、+側の信号線Lについては、第2信号線L2の開放端Aと、第1信号線L1の円弧状の迂回部分のうちのいずれかの部分と第2信号線L2の開放端Aとを接続する。一方、−側の信号線Lについては、調整信号線L3の一端(円状の開放端C)を中心とした円弧と重複するように形成された第1信号線L1のミアンダパターンと、調整信号線L3を接続し、調整信号線L3の他端を第2信号線L2と接続して差動信号を伝送するための信号線Lが完成する。
【0097】
尚、図6に示すように、本実施形態では、調整信号線L3は2つ設けられる。この調整信号線L3の選択は、調整信号線L3と、第2信号線L2へのチップ抵抗89等の接続により選択できる。図6では、チップ抵抗89等を接続する方向を180度回転させることにより、使用する調整信号線L3を選択できる。
【0098】
又、第1信号線L1の円弧状の迂回部分の半径は、適宜設定することが可能である点、各信号を接続するチップ抵抗89等の位置決めは、差動信号出力回路87から出力される差動信号が同時に差動信号入力回路88に到達する位置でなされる点、一対の第1信号線L1の終端には、終端抵抗RL1が接続される点などは、第1の実施形態と同様である。
【0099】
このようにして、本発明の第2の実施形態によれば、第2信号線L2の他端を支点として、回動させるように接続部材の位置決めを行える。又、第2信号線L2の他端と円弧と重複するように形成された第1信号線L1を接続するから、第2信号線L2に開放端Aが形成されず、大きなインピーダンスの変化を避けることができる。
【0100】
又、位相差を調整するための調整信号線L3が設けられ、この信号線Lを介して、信号線Lの線路長を変えることで、差動信号の位相差の調整も行えるので、位相差が大きい場合や、差動信号の各出力端の特性(立ち上がり、立ち下がりの勾配)の差が大きい場合にも対応することができ、位相差の調整幅を大きくすることができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、差動信号で信号の伝送をする配線基板、及び、この配線基板を備えたプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプリンタの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る制御部と記憶部の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る差動信号の信号線の一例を示す配線図である。
【図4】本発明の実施形態に係る信号線を円弧状に形成する理由を説明するための説明図である。
【図5】差動信号出力回路の+側と−側の出力特性(ドライブ能力)に差がある場合のタイミングチャートであり、(a)は+側の出力波形の一例を示し、(b)は−側の出力波形の一例を示し、(c)は+側と−側の出力波形を重ねた差動信号の波形の一例であり、(d)は、本発明の実施によりクロスポイント位置を修正した波形の一例であり、(e)は、アイパターンの大きさの差を説明するためのクロスポイントの拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る差動信号の信号線の一例を示す配線図である。
【符号の説明】
【0104】
1 配線基板
2 プリンタ(画像形成装置)
8 記憶部
81 画像メモリ
82 RAM
87 差動信号出力回路(出力部)
88 差動信号入力回路(入力部)
89 チップ抵抗(接続部材)
L 信号線
L1 第1信号線
L2 第2信号線
L3 調整信号線
RL1 終端抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を伝送するために一対の信号線が形成された配線基板において、
一対の前記信号線は、それぞれ、差動信号を出力する出力部の出力端に一端が接続される第1信号線と、出力部からの差動信号が入力される入力部の入力端に一端が接続される第2信号線と、前記第1信号線と前記第2信号線を接続する接続部材とで構成され、
前記第1信号線は、前記第2信号線の他端に対し、直接に接続することなく迂回して形成され、
前記接続部材は、前記第1信号線の迂回部分のうちのいずれかの部分と前記第2信号線の他端とを接続することを特徴する配線基板。
【請求項2】
前記第1信号線の迂回部分は、前記第2信号線の他端を中心とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1信号線は、蛇行するミアンダパターン状に形成され、
前記ミアンダパターンの曲線部分は、前記第1信号線の迂回部分として、前記第2信号線の他端を中心とした円弧と重複するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の配線基板。
【請求項4】
前記出力部から前記入力部への信号線の長さを調整するため、前記第1信号線及び前記第2信号線に直接に接続されず、接続部材により一端が前記第1信号線に、他端が前記第2信号線に接続される調整信号線が設けられ、
前記第1信号線の迂回部分は、前記調整信号線の一端を中心とした円弧と重複するように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記接続部材によって前記第1信号線と前記第2信号線を接続した点の近傍を終端として、一対の前記第1信号線の終端抵抗が設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接続部材は、チップ抵抗であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の配線基板を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−306241(P2008−306241A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148835(P2007−148835)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】