説明

配線基板及びその製造方法

【課題】セミアディティブ法により平滑な絶縁樹脂層の上に微細な配線層を密着性よく形成できる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】第1絶縁樹脂層40の上に、第1カップリング剤層18に第1銅・錫合金層16及び銅層12が順に配置された積層体を得る工程と、銅層12の上にシード層52を形成する工程と、開口部32aが設けられためっきレジスト32をシード層52の上に形成する工程と、電解めっきによりめっきレジスト32の開口部32aに金属めっき層54を形成する工程と、めっきレジスト32を除去する工程と、金属めっき層54をマスクにしてシード層52から第1銅・錫合金層16までエッチングすることにより、第1カップリング剤層18の上に第1配線層50を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体チップなどの電子部品が実装される配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップなどの電子部品が実装される配線基板がある。そのような配線基板の一例では、コア基板の片面又は両面にセミアディティブ法によってビルドアップ配線が形成される。
【0003】
近年では、半導体チップなどの電子部品の高性能化に伴って、配線基板の配線層のさらなる狭ピッチ化が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−252459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後述する予備的事項の欄で説明するように、セミアディティブ法を使用して多層配線を形成する場合、ビアホール内をデスミア処理する際に、絶縁樹脂層の表面が同時にエッチングされて粗化される。これにより、アンカー効果によって絶縁樹脂層の上に配線層を密着性よく形成することができる。
【0006】
近年では、半導体チップの小型化、高性能化に伴って、配線基板の配線層のさらなる微細化が要求されている。
【0007】
絶縁樹脂層の表面に凹凸が生じていると、特に配線層が狭ピッチ化されてくると、シード層をエッチングする際に残渣が発生しやすくなり、配線層の間で電気ショートが発生しやすくなる。さらに、絶縁樹脂層の凹凸上に形成される配線層は、高周波信号の伝送損失が生じやすい問題がある。
【0008】
このように、絶縁樹脂層の表面を粗化して配線層の密着性を確保する方法では、特に線幅が10μm以下の配線層の信頼性よく形成することは困難であり、平滑な樹脂層の上に密着性よく微細な配線層を形成する技術が要求される。
【0009】
セミアディティブ法により絶縁樹脂層の上に微細な配線層を信頼性よく形成できる配線基板の製造方法及び配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の開示の一観点によれば、第1絶縁樹脂層の上に、第1カップリング剤層に第1銅・錫合金層及び銅層が順に配置された積層体を得る工程と、前記銅層の上にシード層を形成する工程と、開口部が設けられためっきレジストを前記シード層の上に形成する工程と、前記シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、前記めっきレジストの開口部に金属めっき層を形成する工程と、前記めっきレジストを除去する工程と、前記金属めっき層をマスクにして前記シード層、前記銅層及び前記第1銅・錫合金層をエッチングすることにより、前記第1カップリング剤層の上に第1配線層を形成する工程とを有する配線基板の製造方法が提供される。
【0011】
また、その開示の他の観点によれば、第1絶縁樹脂層と、前記第1絶縁樹脂層の上に形成された第1カップリング剤層と、前記第1カップリング剤層の上に形成された第1銅・錫合金層と、前記第1銅・錫合金層の上に形成された銅層と、前記銅層の上に形成されたシード層と、前記シード層の上に金属めっき層とを含む第1配線層とを有する配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以下の開示によれば、配線層の最下の銅・錫合金層がカップリング剤層によって表面が平滑な絶縁樹脂層の上に強固に接着される。表面が平滑な絶縁樹脂層を使用できるので、セミアディティブ法においてシード層などをエッチングする際に残渣が発生しずらくなり、微細な配線層を歩留りよく形成することができる。
【0013】
しかも、配線層の凹凸が低減されるので、高周波信号の伝送損失の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)〜(c)は予備的事項を説明するための断面図(その1)である。
【図2】図2(a)〜(c)は予備的事項を説明するための断面図(その2)である。
【図3】図3(a)〜(e)は第1実施形態で使用される金属層転写体の製造方法を示す断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図5】図5(a)及び(b)は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図6】図6(a)及び(b)は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図7】図7(a)〜(c)は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図8】図8は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図及び平面図(その5)である。
【図9】図9(a)及び(b)は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その6)である。
【図10】図10(a)及び(b)は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その7)である。
【図11】図11は第1実施形態の配線基板を示す断面図である。
【図12】図12は図11の配線基板に半導体チップが実装された様子を示す断面図である。
【図13】図13(a)〜(d)はピール強度を測定するための実施例サンプルの製造方法を示す断面図である。
【図14】図14は実施例サンプル(図13(d))と比較例サンプルの金属層のピール強度を示すものである。
【図15】図15(a)及び(b)は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図16】図16は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図17】図17は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図18】図18は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図19】図19は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その5)である。
【図20】図20は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その6)である。
【図21】図21は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その7)である。
【図22】図22は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図(その8)である。
【図23】図23は第2実施形態の配線基板を示す断面図である。
【図24】図24は図23の配線基板に半導体チップが実装された様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の説明の前に、基礎となる予備的事項について説明する。図1及び図2は予備的事項を説明するための断面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、まず、コア基板100の上に銅からなる第1配線層200を形成した後に、コア基板100の上に第1配線層200を被覆する絶縁樹脂層300を形成する。
【0018】
続いて、図1(b)に示すように、絶縁樹脂層300をレーザで加工することにより、第1配線層200の接続部に到達するビアホールVHを形成する。
【0019】
さらに、図1(c)に示すように、ビアホールVH内を過マンガン酸法などによってデスミア処理を行う。これにより、ビアホールVH内に残留する樹脂スミアなどが除去されてビアホールVH内がクリーニングされる。デスミア処理によって絶縁樹脂層300の表面が同時にエッチングされて粗化面Aとなる。絶縁樹脂層300の粗化面Aの表面粗さ(Ra)は300nm以上になる。
【0020】
続いて、図2(a)に示すように、無電解めっきにより、絶縁樹脂層300の上及びビアホールVHの内面に銅からなるシード層420を形成する。次いで、図2(b)に示すように、第2配線層が配置される部分に開口部320aが設けられためっきレジスト320をシード層420の上に形成する。
【0021】
さらに、シード層420をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、めっきレジスト320の開口部320aに銅からなる金属めっき層440を形成する。
【0022】
次いで、図2(c)に示すように、めっきレジスト320を除去した後に、金属めっき層440をマスクにしてシード層420をエッチングする。これにより、シード層420及び金属めっき層440から形成される第2配線層400が絶縁樹脂層300の上に得られる。第2配線層400はビアホールVH(ビア導体)を介して第1配線層200の接続部に電気的に接続される。
【0023】
このとき、図2(c)の部分拡大図に示すように、絶縁樹脂層300の表面が粗化面Aとなって比較的大きな凹凸が生じていることから、シード層420をエッチングする際に粗化面Aにエッチング残渣Rが発生しやすく、配線間の電気ショートを招きやすい。
【0024】
また、シード層420のエッチング残渣Rを完全に除去するためにオーバーエッチング量を増やすと、特に線幅が10μm以下の微細パターンの場合はサイドエッチングによってパターン飛びが生じてパターンが消失することもある。
【0025】
さらには、第2配線層400は絶縁樹脂層300の粗化面A(凹凸)上に形成されるので、凹凸の影響によって高周波信号の伝送損失が生じやすくなり、高性能な半導体チップを実装するために配線基板として対応することが困難になる。
【0026】
以下に説明する実施形態では前述した不具合を解消することができる。
【0027】
(第1実施形態)
図3は第1実施形態の金属層転写基材の製造方法を示す断面図、図4〜図10は第1実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図、図11は第1実施形態の配線基板を示す断面図である。
【0028】
最初に、第1実施形態の配線基板の製造方法で使用される金属層転写基材の製造方法について説明する。
【0029】
図3(a)に示すように、まず、支持体10を用意する。支持体10としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、LCP樹脂(液晶ポリマー)フィルム、ガラス基板、SUS(ステンレス)基板などが使用される。PETフィルムを使用する場合は、その厚みが10〜200μmである。
【0030】
支持体10の材料として、有機、無機、及び金属のいずれの材料を使用してもよい。
【0031】
支持体10は薄膜の金属層を支持する仮基板として使用され、後に、金属層から剥離されて除去される。このため、支持体10の表面にはシリコーンなどからなる離型剤が塗布されている。支持体10をフッ素樹脂フィルムから形成する場合は、離型剤を省略することも可能である。
【0032】
次いで、図3(b)に示すように、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、又はCVD法などにより、支持体10の上に銅(Cu)層12を形成する。銅層12の厚みは、10〜5000nm、好適には100〜1000nmmに設定される。
【0033】
続いて、図3(c)に示すように、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、化学めっき法、又は電解めっき法などにより、銅層12の上に錫(Sn)層14を形成する。錫層14の厚みは、1〜1000nm、好適には10〜100nmに設定される。
【0034】
さらに、図3(d)に示すように、図3(c)の構造体を100〜150℃程度の温度で加熱処理することにより、銅層12から錫層14に銅を拡散させて、錫層14を合金化して第1銅・錫合金層16とする。
【0035】
なお、スパッタ法などで支持体10が載置されるステージが100℃程度に加熱される場合は、錫層14を成膜することで第1銅・錫合金層16を得ることができる。
【0036】
なお、形成された錫層14の全量が合金化されるように錫層14の厚みを調整することが望ましい。
【0037】
あるいは、銅・錫合金からなるコンポジットターゲットを使用するスパッタ法などによって銅層12の上に第1銅・錫合金層16を直接形成してもよい。
【0038】
錫層14を形成した後に第1銅・錫合金層16を得る場合は、錫層14の全体が第1銅・錫合金層16になっていてもよいし、錫層14の主要部が第1銅・錫合金層16になって、表面側の一部に合金化されていない錫層14が残った状態になっていてもよい。
【0039】
また、表面側の合金化されていない錫層14を第1銅・錫合金層16に対してウェットエッチングによって選択的に除去してもよい。これにより、支持体10の上に極薄の第1銅・錫合金層16を均一に形成することができる。
【0040】
または、後述する第1カップリング剤層を形成する際の加熱処理で錫層14を第1銅・錫合金層16にすることも可能である。
【0041】
なお、錫層14又は第1銅・錫合金層16を成膜する際に、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)などの金属が含まれていてもよい。例えば、化学めっきで錫層14を形成する場合は、ウィスカー(針状の金属結晶)の発生を防止するために、銀(Ag)を添加することがある。
【0042】
このようにして、支持体10の上に、剥離できる状態で銅層12及び第1銅・錫合金層16が順に形成された構造体を用意する。
【0043】
次いで、図3(e)に示すように、第1銅・錫合金層16の上に第1カップリング剤層18を形成する。第1カップリング剤層18は、一つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を有しており、代表的なものとしてシランカップリング剤がある。
【0044】
シランカップリング剤において、樹脂などの有機材料と化学結合する官能基としては、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシネアート基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、又はスルフィド基を含むものが好ましい。シランカップリング剤と化学結合する樹脂の種類に応じて最適な官能基が選択される。
【0045】
また、シランカップリング剤において、金属などの無機材料と化学結合する官能基として、シラノール基、メトキシ基、又はエトキシ基を含むものが好ましい。シランカップリング剤と化学結合する金属の種類に応じて最適な官能基が選択される。
【0046】
なお、第1カップリング剤層18として、シランカップリング剤の他に、チタンカップリング剤を使用してもよい。
【0047】
上記した銅層12及び第1銅・錫合金層16が形成された支持体10をシランカップリング剤の希釈溶液に浸漬させて接触させた後に、乾燥させることで脱水縮合により第1銅・錫合金層16の表面に第1カップリング剤層18を形成することができる。
【0048】
シランカップリング剤の希釈溶液の濃度は、0.1〜10%、好適には0.5〜5%に設定される。また、シランカップリング剤の乾燥は、温度:80〜150℃の雰囲気で処理時間:1〜60分の条件で行われる。
【0049】
支持体10をシランカップリング剤の希釈溶液に浸漬させる方法以外に、支持体10上の第1銅・錫合金層16の上にシランカップリング剤をスプレー塗布によって形成してもよいし、蒸着させてもよい。
【0050】
第1カップリング剤層18の無機材料結合用の一方の官能基(シラノール基など)が第1銅・錫合金層16と化学結合することにより、第1カップリング剤層18が第1銅・錫合金層16と強固に接着する。
【0051】
以上により、第1実施形態の金属層転写基材1が得られる。金属層転写基材1では、支持体10の上に剥離できる状態で銅層12、第1銅・錫合金層16及び第1カップリング剤層18が順に積層された転写層Tが形成されている。
【0052】
第1実施形態の金属層転写基材1では、支持体10の上に、厚みが均一な第1銅・錫合金層16の上に第1カップリング剤層18が接着された構造を含む転写層Tを信頼性よく形成することができる。
【0053】
次に、第1実施形態の金属層転写基材1の転写層T(銅層12、第1銅・錫合金層16及び第1カップリング剤層18)を配線基板の絶縁樹脂層の上に転写する方法について説明する。
【0054】
図4(a)に示すように、まず、両面側に下層配線層30がそれぞれ形成されたコア基板20を用意する。コア基板20には厚み方向に貫通するスルーホールTHが設けられており、スルーホールTH内に貫通電極22が充填されている。両面側の下層配線層30は貫通電極22を介して相互接続されている。上面側の下層配線層30にはその接続パッドPが示されている。
【0055】
あるいは、コア基板20の両面側の下層配線層30がスルーホールTHの内壁に形成されたスルーホールめっき層によって相互接続され、スルーホールTH内の孔に樹脂が充填されていてもよい。
【0056】
コア基板20はガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料やシリコンなどから形成される、コア基板20としてシリコン基板を使用する場合は、コア基板20の両面側及びスルーホールTHの内面にシリコン酸化層などの絶縁層が形成される。
【0057】
コア基板20の両面側に下層配線層30に接続されるビルドアップ配線がそれぞれ形成されるが、本実施形態ではコア基板20の上面側のみにビルドアップ配線を形成する。
【0058】
次いで、図4(b)に示すように、コア基板20の上に半硬化状態(B−ステージ)の樹脂フィルムを真空ラミネータによって積層することにより、下層配線層30の上にそれを被覆する第1絶縁樹脂層40を形成する。
【0059】
第1絶縁樹脂層40としては、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が使用される。この時点では、第1絶縁樹脂層40は硬化しておらず半硬化状態(B−ステージ)となっている。
【0060】
その後に、図4(c)に示すように、前述した金属層転写基材1(図3(e))を上下反転させ、真空ラミネータによって金属層転写基材1の第1カップリング剤層18の面を第1絶縁樹脂層40の上に積層する。
【0061】
次いで、図5(a)に示すように、加熱処理することにより、半硬化状態の第1絶縁樹脂層40を完全に硬化させる。第1絶縁樹脂層40がエポキシ樹脂からなる場合は、150〜190℃の温度で加熱処理が行われる。これにより、金属層転写基材1の第1カップリング剤層18が第1絶縁樹脂層40に接着する。第1カップリング剤層18の有機材料結合用の他方の官能基(アミノ基など)が第1絶縁樹脂層40と化学結合することにより、第1カップリング剤層18が第1絶縁樹脂層40と強固に接着する。
【0062】
これにより、第1絶縁樹脂層40に第1カップリング剤層18を介して第1銅・錫合金層16が強固に接着する。
【0063】
次いで、図5(b)に示すように、支持体10を銅層12との界面から剥離することにより、銅層12の上面を露出させる。このとき、支持体10と銅層12との間に離型剤が形成されているので、支持体10を容易に引き剥がして除去することができる。これにより、金属層転写基材1の転写層Tが第1絶縁樹脂層40の上に転写・形成される。
【0064】
このようにして、下層配線層30を被覆する第1絶縁樹脂層40の上に、第1カップリング剤層18に第1銅・錫合金層16及び銅層12が順に配置された積層体を得る。
【0065】
第1絶縁樹脂層40はデスミア処理の前に銅層12などで被覆されて保護されるので、第1絶縁樹脂層40の上面は平滑な状態で保たれる。平滑な第1絶縁樹脂層40の表面粗さ(Ra)は10乃至200nmである。
【0066】
第1銅・錫合金層16は第1カップリング剤層18(シランカップリング剤)によって第1絶縁樹脂層40(エポキシ樹脂など)に信頼性よく接着される特性を有する。本実施形態の金属層転写部材1の転写層Tを転写する方法を使用することにより、第1絶縁樹脂層40と第1銅・錫合金層16とを第1カップリング剤層18を介して信頼性よく接着させることができる。
【0067】
特に問題がなければ、第1絶縁樹脂層40の上に第1カップリング剤層18を直接形成し、その上に第1銅・錫合金層16及び銅層12をスパッタ法などで形成してもよい。
【0068】
続いて、図6(a)に示すように、銅層12、第1銅・錫合金層16、第1カップリング剤層18及び第1絶縁樹脂層40を厚み方向にレーザで加工することにより、下層配線層30の接続パッドPに到達する第1ビアホールVH1を形成する。レーザ加工は、炭酸ガスレーザ又はUV−YAGレーザによって行われる。
【0069】
さらに、図6(b)に示すように、第1ビアホールVH1内を過マンガン酸法などのウェットプロセスによってデスミア処理を行う。これにより、第1ビアホールVH1内に残留する樹脂スミアなどが除去されて第1ビアホールVH1内がクリーニングされる。
【0070】
またこのとき、銅層12に付着した離型剤も同時に除去される。
【0071】
このとき、過マンガン酸法などによるデスミア処理では銅層12はほとんどエッチングされず、第1絶縁樹脂層40が銅層12で保護されるので、デスミア処理によって第1絶縁樹脂層40の表面が粗化されることはない。従って、第1絶縁樹脂層40の表面は平滑な状態で維持される(表面粗さ(Ra):10乃至200nm)。
【0072】
なお、第1ビアホールVH1の側壁はデスミア処理で粗化されるので、後述するシード層が第1ビアホールVH1内で密着性よく形成される。
【0073】
デスミア処理として過マンガン酸法などのウェットプロセスを例示したが、CF4/O2系などのフッ素原子を含むガスのプラズマ(ドライプロセス)によってデスミア処理を行なってもよい。ドライプロセスによるデスミア処理においても、銅層12はほとんどエッチングされず、第1絶縁樹脂層40は銅層12で保護されるので、第1絶縁樹脂層40の表面が粗化されることはない。
【0074】
次いで、図7(a)に示すように、銅層12の上及び第1ビアホールVH1の内面に銅からなるシード層52を無電解めっきにより形成する。シード層52の厚みは例えば0.5μm程度であり、第1ビアホールVH1の内面を確実に被覆する厚みに設定される。無電解めっきの代わりに、スパッタ法によってシード層52を形成してもよい。
【0075】
このとき、前述したように第1銅・錫合金層16及び銅層12は既に第1カップリング剤層18を介して密着性のよい状態で第1絶縁樹脂層40の上に形成されていることから、シード層52は銅層12など介して第1絶縁樹脂層40に密着性よく形成される。
【0076】
シード層52(Cu)は平滑な第1絶縁樹脂層40の上に直接形成すると十分な密着性が得られないが、銅層12のような金属層の上には密着性よく形成されるからである。
【0077】
次いで、図7(b)に示すように、第1ビアホールVH1を含む部分(第1配線層が配置される部分)に開口部32aが設けられためっきレジスト32をフォトリソグラフィによってシード層52の上に形成する。めっきレジスト32の形成方法としては、ドライフィルムレジストを貼付してもよいし、あるいは液状レジストを塗布して形成してもよい。
【0078】
さらに、図7(c)に示すように、シード層52をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、第1ビアホールVH1内及びめっきレジスト32の開口部32aに銅からなる金属めっき層54を形成する。このとき、シード層52の下の銅層12及び第1銅・錫合金層16もめっき給電経路の一部として利用される。
【0079】
金属めっき層54の厚みは所望の配線抵抗が得られるように任意に設定できるが、例えば第1配線層の線幅が10μmの場合は10μ〜20m程度の厚みに設定される。第1ビアホールVH1内では、その内面に形成されたシード層52から内側に向かって金属めっきが施されて第1ビアホールVH1にビア導体が充填される。
【0080】
続いて、図8に示すように、めっきレジスト32を除去した後に、金属めっき層54をマスクにしてシード層52(Cu)及びその下の銅層12と第1銅・錫合金層16とをウェットエッチングして除去する。このとき、ウェットエッチングのエッチャントとして、濃度が10〜20%の硝酸水溶液が使用され、硝酸水溶液によってシード層52(Cu)から第1銅・錫合金層16まで連続してエッチングされる。
【0081】
これにより、第1銅・錫合金層16、銅層12、シード層52及び金属めっき層54から形成される第1配線層50が第1絶縁樹脂層40(第1カップリング剤層18)の上に得られる。第1配線層50は第1ビアホールVH1(ビア導体)を介して下層配線層30の接続パッドPに電気的に接続されて形成される。
【0082】
本実施形態では、第1絶縁樹脂層40の表面は平滑であるため、セミアディティブ法でシード層52、銅層12及び第1銅・錫合金層16をエッチングする際に残渣が発生しにくくなる。
【0083】
これにより、ライン:スペースが10:10μm〜2:2μmの狭ピッチの第1配線層50を歩留りよく形成することができる。またこのとき、オーバーエッチング量を過度に行う必要もなくなるので、微細パターンであっても第1配線層50がパターン飛びすることもない。
【0084】
また、第1絶縁樹脂層40の表面が平滑であっても、第1カップリング剤層18を使用することにより第1配線層50の最下の第1銅・錫合金層16を第1絶縁樹脂層40に強固に接着することができる。
【0085】
このようにして、第1絶縁樹脂層40の平滑な上面に密着性よく微細な第1配線層50を形成することができる。従って、第1配線層50の凹凸も低減されるので、高周波信号の伝送損失の発生を回避することができる。
【0086】
図8の部分拡大平面図(1)に示すように、第1配線層50が第1ビアホールVH1に配置されたパッド部50aとそれに繋がって外側に延びる延在配線部50bとを有する場合は、第1銅・錫合金層16及び銅層12は第1ビアホールVH1を除くパッド部50a(第1ビアホールVH1の外側周辺部)及び延在配線部50bの領域にそれらの最下層として配置される(斜線部)。
【0087】
あるいは、図8の部分拡大平面図(2)に示すように、第1配線層50が第1ビアホールVH1に島状のパッド部50aとして配置される場合は、第1銅・錫合金層16及び銅層12は第1ビアホールVH1を除くパッド部50aの領域にその最下層としてリング状に配置される(斜線部)。
【0088】
図8の部分拡大平面図(1)及び(2)では、第1ビアホールVH1及び第1配線層50のみが模式的に描かれている。
【0089】
なお、本実施形態では、第1配線層50が第1ビアホールVH1を介して下層配線層30に接続されているが、第1ビアホールVH1が形成されていない絶縁樹脂層40の上に第1配線層50を前述した方法で形成してもよい。つまり、第1配線層50はビアホールに接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。
【0090】
次いで、図9(a)に示すように、無電解めっきにより、第1配線層50の露出面(上面及び側面)に錫層を選択的に形成した後に、加熱処理することにより第1配線層50から錫層に銅を拡散させて第2銅・錫合金層56を得る。第1配線層50は上面及び側面に第2銅・錫合金層56をさらに含んで形成される。
【0091】
第1ビアホールVH1に接続されていない第1配線層50はその外面全体(上下面及び両側面)が第1、第2銅・錫合金層16,56で被覆された状態となる。
【0092】
さらに、図9(b)に示すように、前述した第1カップリング剤層18の形成方法と同様な方法により、第1配線層50及び第1カップリング剤層18の上に第2カップリング剤層18aを形成する。
【0093】
その後に、図10(a)に示すように、第1配線層50を被覆する第2カップリング剤層18aの上に、第1絶縁樹脂層40の形成方法と同様な方法により、第2絶縁樹脂層42を形成する。
【0094】
第2絶縁樹脂層42は、第2カップリング剤層18aによって第1配線層50の第2銅・錫合金層56に密着性よく形成される。
【0095】
これにより、第1配線層50の下側では、第1銅・錫合金層16が第1カップリング剤層18によって第1絶縁樹脂層40に強固に接着される。また、第1配線層50の上側及び側方では、第2銅・錫合金層56が第2カップリング剤層18aによって第2絶縁樹脂層42に強固に接着される。
【0096】
続いて、図10(b)に示すように、前述した図4(c)から図8までの工程を遂行することにより、第2絶縁樹脂層42に形成された第2ビアホールVH2(ビア導体)を介して第1配線層50に接続される第2配線層60を第2絶縁樹脂層42の上に形成する。詳細は図示されていないが、第2配線層60は第1配線層50と同一構造から形成され、第2絶縁樹脂層42と密着性よく形成される。
【0097】
なお、第2配線層60の設計ルールがゆるく前述した形成方法を使用する必要がない場合は、一般的なセミアディティブ法(予備的事項で説明した方法)により形成してもよい。
【0098】
次いで、図11に示すように、コア基板20の上面側に、第2配線層60の接続部に開口部44aが設けられたソルダレジスト44を形成した後に、第2配線層60の接続部にNi/Auめっき層などからなるコンタクト層Cを形成する。
【0099】
また同様に、コア基板20の下面側に、下層配線層30の接続部に開口部44aが設けられたソルダレジスト44を形成した後に、下層配線層30の接続部にNi/Auめっき層などからなるコンタクト層Cを形成する。
【0100】
以上により第1実施形態の配線基板2が得られる。
【0101】
図12には、図11の配線基板2に半導体チップが実装された様子が示されている。図12の例では、上面側の第2配線層60のコンタクト層Cにはんだなどのバンプ電極72によって半導体チップ70(LSIチップ)がフリップチップ接続される。
【0102】
さらに、半導体チップ70の下側の隙間にアンダーフィル樹脂74が充填される。そして、下面側の下層配線層30のコンタクト層Cにはんだボールを搭載するなどして外部接続端子76が設けられる。
【0103】
第1実施形態の配線基板2では、図11に示すように、コア基板20に貫通電極22が設けられており、貫通電極22を介して相互接続された下層配線層30が両面側にそれぞれ形成されている。
【0104】
コア基板20の上面側に下層配線層30を被覆する第1絶縁樹脂層40が形成されている。第1絶縁樹脂層40には、下層配線層30の接続パッドPに到達する第1ビアホールVH1が形成されている。
【0105】
第1ビアホールVH1を除く領域の第1絶縁樹脂層40の上に第1カップリング剤層18が形成されている。第1カップリング剤層18の上には第1ビアホールVH1(ビア導体)を介して下層配線層30の接続パッドPに接続される第1配線層50が形成されている。
【0106】
第1配線層50は、第1ビアホールVH1の外周から外側の第1カップリング剤層18の上に形成された第1銅・錫合金層16と、第1銅・錫合金層16の上に形成された銅層12とを備えている。
【0107】
さらに、第1配線層50は、第1ビアホールVH1の内面から銅層12の上に延在するシード層52と、シード層52の上に第1ビアホールVH1に充填された状態で形成された金属めっき層54とを備えている。
【0108】
さらに、第1配線層50は、第1銅・錫合金層16、銅層12、シード層52及び金属めっき層54の側面と金属めっき層54の上面とを被覆する第2銅・錫合金層56を備えている。
【0109】
このように、第1配線層50は、第1銅・錫合金層16、銅層12、シード層52、及び金属めっき層54と、それらの露出面を被覆する第2銅・錫合金層56とから形成される。
【0110】
第1配線層50は、その最下の第1銅・錫合金層16が第1カップリング剤層18によって平滑な第1絶縁樹脂層40の上に密着性よく形成されている。
【0111】
さらに、第1配線層50の上面及び側面が第2カップリング剤層18aで被覆されており、第1配線層50の上に第2カップリング剤層18aを介して第2絶縁樹脂層42が形成されている。これにより、第2絶縁樹脂層42は第2カップリング剤層18aによって第1配線層50の第2銅・錫合金層56に強固に接着している。
【0112】
このようにして、第1配線層50は上下側及び側方において第1、第1絶縁樹脂層40,42との十分な密着性が得られる。
【0113】
第2絶縁樹脂層42及び第2カップリング剤層18aには、第1配線層50に到達する第2ビアホールVH2が形成されている。そして、第2ビアホールVH2(ビア導体)を介して第1配線層50に接続される第2配線層60が第2絶縁樹脂層42の上に形成されている。第2配線層60は第1配線層50と同一構造で形成されてもよいし、一般的なセミアディティブ法から形成されてもよい。
【0114】
また、コア基板20の両面側には、下層配線層30及び第2配線層60の各接続部に開口部44aが設けられたソルダレジスト44がそれぞれ形成されており、各接続部にコンタクト層Cがそれぞれ形成されている。
【0115】
第1実施形態の配線基板2では、微細パターンが要求される第1配線層50がその最下層として第1銅・錫合金層16を備え、第1銅・錫合金層16が第1カップリング剤層18によって平滑な第1絶縁樹脂層40に強固に接着している。
【0116】
本実施形態では、第1銅・錫合金層16を第1カップリング剤層18によって第1絶縁樹脂層40上に密着性よく形成できるので、第1絶縁樹脂層40の表面をデスミア処理で粗化する必要がない。
【0117】
つまり、第1カップリング剤層18及び第1銅・錫合金層16を使用することにより、平滑な第1絶縁樹脂層40の上に第1配線層50を密着性よく形成することができる。さらに、平滑な第1絶縁樹脂層40の上に第1配線層50を形成できるので、セミアディティブ法でのシード層52などのエッチング時に残渣が発生しにくくなり、微細な第1配線層50を歩留りよく形成することができる。
【0118】
しかも、平滑な第1絶縁樹脂層40の上に第1配線層50が形成されて第1配線層50の凹凸が低減されるので、高周波信号の伝送損失が発生することが回避される。
【0119】
本願発明者は、本実施形態の配線基板2の効果を確認するために、絶縁樹脂層の上にカップリング剤層を介して銅・錫合金層を含む金属層を形成し、その金属層のピール強度を調査した。また、金属層を除去して絶縁樹脂層の表面粗さを調査した。
【0120】
本実施形態に対応する実施例サンプルとして、図13(a)に示すように、まず、PETフィルム11の上にスパッタ法により厚みが500nmの銅層12aを形成し、銅層12aの上にスパッタ法により厚みが100nmの錫層14aを形成した。
【0121】
さらに、図13(b)に示すように、PETフィルムを3−アミノプロピルトリメトキシシランの1vol%水溶液(室温)に1分間、浸漬させ、温度:120℃の雰囲気で30分間乾燥させてシランカップリング剤層19を形成した。シランカップリング剤層19を形成するときの加熱処理により、錫層14aに銅層12aから銅が拡散して、銅・錫合金層16aが得られる。
【0122】
このようにして、PETフィルム11の上に銅層12a、銅・錫合金層16a及びシランカップリング剤層19が順に形成された金属層転写基材1aを作成した。
【0123】
そして、図13(c)に示すように、ガラスエポキシ基板20aの上に厚み:40μmのエポキシ樹脂フィルムを真空ラミネータで積層して半硬化の絶縁樹脂層40aを形成した。
【0124】
さらに、上記した金属層転写基材1aのシランカップリング剤層19の面を絶縁樹脂層40aに積層し、加熱処理して半硬化の絶縁樹脂層40aを硬化させた。その後に、PETフィルム11を引き剥がして除去した。
【0125】
続いて、図13(d)に示すように、露出した銅層12aを過マンガン酸法でデスミア処理した後、脱脂処理、酸洗浄を行い、電解めっきによって厚みが35μmの銅めっき層55を形成した。その後に、温度:180℃の雰囲気で60分間、加熱処理を行った。
【0126】
このようして、前述した第1配線層50に相当する金属層を絶縁樹脂層40aの全面に形成して、実施例サンプルとした。
【0127】
また、図13(a)〜(d)において錫層14aを省略して銅層12aのみとし、さらにシランカップリング剤層19を使用しない構造を比較例サンプル1とした。
【0128】
また、図13(a)〜(d)においてシランカップリング剤層19を使用しない構造を比較例サンプル2とした。
【0129】
また、図13(c)において、絶縁樹脂層40aを過マンガン酸法でデスミア処理し、無電解めっきによって銅層(シード層)を形成した後に、電解めっきで銅めっき層55を形成した構造を比較例サンプル3とした。
【0130】
そして、ピール強度測定には静的材料試験機(EZ-Graph(島津製作所製))を用い、垂直引き上げ速度が50nm/minの条件でピール強度を測定した。
【0131】
実施例サンプル、比較例サンプル1〜3において、初期時、HAST(不飽和加圧蒸気試験)後、リフロー試験後についてそれぞれのサンプルについてピール強度を測定した。HASTの条件は、温度:130℃、湿度:85%RH、処理時間:100hであり、リフロー試験の条件は、温度:260℃、処理回数:3回である。
【0132】
また、絶縁樹脂層40aと各金属層との界面の粗さを評価するために、各金属層を除去し、各サンプルの絶縁樹脂層40aの表面粗さを測定した。表面粗さの測定は、走査型プローブ顕微鏡:Nanopics 1000(SII社製)を使用した。測定モードはDFM(ダイナミック・フォース・モード)を使用し、測定エリアは20μmとした。
【0133】
図14に示すように、実施例サンプルでは、初期時のピール強度が0.99kgf/cmであり、HAST後、リフロー試験後においてもピール強度の変化はほとんどみられなかった。
【0134】
これに対して、比較例サンプル1(銅層のみ+カップリング剤層なし)では、初期時のピール強度が0.70kgf/cmであるが、HAST後で0.49kgf/cmに低下し、リフロー試験後に0.24kgf/cmにさらに低下しており、密着の信頼性が十分ではないことが確認された。
【0135】
また、比較例サンプル2(銅・錫合金層+カップリング剤層なし)においても、初期時のピール強度が0.75kgf/cmであるが、HAST後、及びリフロー試験後にピール強度が低下しており、密着の信頼性が十分ではないことが確認された。
【0136】
さらに、比較例サンプル3(デスミア処理+無電解めっきによる銅層)では、初期時のピール強度が0.83kgf/cmであるが、HAST後、及びリフロー試験後にピール強度の低下がみられた。
【0137】
以上のように、カップリング剤層を介して銅・錫合金層を絶縁樹脂層に接着させることにより、十分なピール強度が得られ、ストレスをかけてもピール強度がほとんど低下しないことが分かった。
【0138】
また、絶縁樹脂層40aの表面粗さについては、実施例サンプル、比較例サンプル1、2では、Ra(平均粗さ)が15〜22nmの範囲内であり、Rz(最大高さ)が100〜130nmの範囲内であった。実施例サンプル、比較例サンプル1、2では、デスミア処理を行っていないため表面が平滑であることが確認された。
【0139】
一方、デスミア処理を行った比較例サンプル3では、Ra(平均粗さ)が215nmであり、Rz(最大高さ)が1430nmであり、実施例サンプルの10倍以上の表面粗さであることが確認された。
【0140】
このように、従来技術であるデスミア処理によって絶縁樹脂層の表面を粗化して密着させる方法と比較すると、本実施形態では、絶縁樹脂層の表面粗さが1/10であるにも係らずピール強度は2割程度向上しており、密着の信頼性も高いことが分かった。
【0141】
従って、平滑な表面の絶縁樹脂層の上にセミアディティブ法により微細な配線層を密着性よく形成することができる。
【0142】
(第2実施形態)
図15〜図22は第2実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図、図23は第2実施形態の配線基板を示す断面図である。
【0143】
第2実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0144】
第2実施形態の配線基板の製造方法では、図15(a)に示すように、まず、前述した第1実施形態の図10(a)と同一の構造体を用意する。
【0145】
次いで、図15(b)に示すように、第1実施形態の図4(c)〜図5(b)の工程と同様な方法により、第2絶縁樹脂層42の上に第3カップリング剤層18b、第3銅・錫合金層66及び銅層12が順に配置された積層体を形成する。
【0146】
さらに、図16に示すように、銅層12、第3銅・錫合金層66、第3カップリング剤層18b、第2絶縁樹脂層42、第2カップリング剤層18a、及び第2銅・錫合金層56をレーザで加工することにより、第1配線層50の金属めっき層54に到達する第2ビアホールVH2を形成する。
【0147】
このように、第2実施形態では、第2ビアホールVH2を形成する際に、第1配線層50の第2銅・錫合金層56を除去して金属めっき層54を露出させる。
【0148】
その後に、第1実施形態と同様に、過マンガン酸法などのウェットプロセスにより、第2ビアホールVH2内をデスミア処理してクリーニングする。
【0149】
なお、第2ビアホールVH2を形成する際に、銅層12、第3銅・錫合金層66、第3カップリング剤層18b及び第2絶縁樹脂層42のみをレーザ加工で除去し、第2カップリング剤層18a、及び第2銅・錫合金層56をデスミア処理によって除去してもよい。
【0150】
次いで、図17に示すように、第1実施形態の図7(a)〜図8で説明したセミアディティブ法による配線形成の工程を遂行する。これにより、第3銅・錫合金層66、銅層12、シード層52及び金属めっき層54から形成される第2配線層80が第2絶縁樹脂層42の上に第3カップリング剤層18bを介して得られる。
【0151】
このとき、第2ビアホールVH2内では、第1配線層50の第2銅・錫合金層56が除去されており、第1配線層50の金属めっき層54と第2配線層80のシード層52とが接触して電気的に接続される。第1配線層50の金属めっき層54と第2配線層80のシード層52とは、好適には銅から形成される。
【0152】
これにより、第1配線層50と第2配線層80とは、電気抵抗が比較的高い第2銅・錫合金層56を介することなく、銅と銅との接合によって電気的に接続される。従って、第2ビアホールVH2内において、第1配線層50と第2配線層80との間のコンタクト抵抗が低減され、両者が信頼性よく電気的に接続される。
【0153】
次いで、図18に示すように、第1実施形態の図9(b)の工程と同様に、第2配線層80の露出面に、錫層を選択的に形成した後に、加熱処理することにより、第2配線層80から銅を拡散させて第4銅・錫合金層86を得る。これにより、第2配線層80は第4銅・錫合金層86を含んで形成される。
【0154】
続いて、図19に示すように、第2配線層80及び第3カップリング剤層18bの上に第4カップリング剤層18cを形成する。
【0155】
さらに、図20に示すように、第2配線層80の接続部に対応する部分に開口部46aが設けられたソルダレジスト46を第4カップリング剤層18cの上に形成する。開口部46aが設けられたソルダレジスト46は、感光性樹脂をフォトリソグラフィに基づいて露光、現像することにより形成される。ソルダレジスト46は保護絶縁層の一例である。
【0156】
ソルダレジスト46は、第4カップリング剤層18cによって第2配線層80の第4銅・錫合金層86に強固に接着されて形成される。
【0157】
次いで、図21に示すように、アルカリ系のエッチング液により、ソルダレジスト46の開口部46a内の第4カップリング剤層18cをエッチングして除去する。あるいは、ソルダレジスト46の開口部46a内の第4カップリング剤層18cをプラズマエッチングによってエッチングして除去してもよい。
【0158】
続いて、図22に示すように、ソルダレジスト46の開口部46aに露出した第4銅・錫合金層86を酸性のエッチング液によりエッチングして除去する。第4銅・錫合金層86のエッチング液としては、一般的な錫の剥離液を使用することができる。
【0159】
これにより、ソルダレジスト46の開口部46aに第2配線層80の金属めっき層54が接続部として露出する。
【0160】
さらに、図23に示すように、ソルダレジスト46の開口部46aの第2配線層80の金属めっき層54に下から順にNi/Auめっき層を形成するなどしてコンタクト層Cを得る。
【0161】
このように、第2実施形態では、第2配線層80の接続部において電気抵抗が比較的高い第4銅・錫合金層86が除去され、第2配線層80の銅からなる金属めっき層54にコンタクト層Cが直接接続される。
【0162】
また同様に、コア基板20の下面側に、下層配線層30の接続部に開口部46aが設けられたソルダレジスト46を形成した後に、下層配線層30の接続部にNi/Auめっき層などからなるコンタクト層Cを形成する。
【0163】
以上により第2実施形態の配線基板2aが得られる。
【0164】
図24には、図23の配線基板2aに半導体チップが実装された様子が示されている。図24の例では、上面側の第2配線層80のコンタクト層Cにはんだなどのバンプ電極72によって半導体チップ70(LSIチップ)がフリップチップ接続される。
【0165】
さらに、半導体チップ72の下側の隙間にアンダーフィル樹脂74が充填される。また、下面側の下層配線層30のコンタクト層Cにはんだボールを搭載するなどして外部接続端子76が設けられる。
【0166】
上記したように、半導体チップ70が接続される最外層の第2配線層80の接続部には電気抵抗が比較的高い第4銅・錫合金層86が存在せず、第2配線層80の銅からなる金属めっき層54にコンタクト層Cが直接接続された構造となる。
【0167】
このため、半導体チップ70と配線基板2aの第2配線層80との間のコンタクト抵抗が低減され、両者の電気接続の信頼性を向上させることができる。
【0168】
以上のように、第2実施形態では、第1実施形態と同様な効果を奏すると共に、ビアホール内及び最外層の配線層の接続部において、コンタクト抵抗の低減が図られ、電気接続の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0169】
1…金属層転写基材、2…配線基板、10…支持体、12…銅層、14…錫層、16…第1銅・錫合金層、18…第1カップリング剤層、18a…第2カップリング剤層、18b…第3カップリング剤層、18c…第4カップリング剤層、20…コア基板、22…貫通電極、30…下層配線層、32…めっきレジスト、32a,44a,46a…開口部、40…第1絶縁樹脂層、42…第2絶縁樹脂層、44,46…ソルダレジスト、50…第1配線層、50a…パッド部、50b…延在配線部、52…シード層、54…金属めっき層、56…第2銅・錫合金層、60,80…第2配線層、66…第3銅・錫合金層、70…半導体チップ、72…バンプ電極、74…アンダーフィル樹脂、76…外部接続端子、86…第4銅・錫合金層、C…コンタクト層、P…接続パッド、T…転写層、VH1…第1ビアホール、VH2…第2ビアホール、TH…スルーホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁樹脂層の上に、第1カップリング剤層に第1銅・錫合金層及び銅層が順に配置された積層体を得る工程と、
前記銅層の上にシード層を形成する工程と、
開口部が設けられためっきレジストを前記シード層の上に形成する工程と、
前記シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、前記めっきレジストの開口部に金属めっき層を形成する工程と、
前記めっきレジストを除去する工程と、
前記金属めっき層をマスクにして前記シード層、前記銅層及び前記第1銅・錫合金層をエッチングすることにより、前記第1カップリング剤層の上に第1配線層を形成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1配線層を形成する工程の後に、
前記第1配線層の露出面に第2銅・錫合金層を形成する工程と、
前記第1配線層の前記第2銅・錫合金層を被覆する第2カップリング剤層を形成する工程と、
前記第2カップリング剤層の上に第2絶縁樹脂層を形成する工程とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2絶縁樹脂層を形成する工程の後に、
前記第2絶縁樹脂層、前記第2カップリング剤層、及び第2銅・錫合金層を加工することにより、前記第1配線層に到達するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを介して前記第1配線層に接続される第2配線層を前記第2絶縁樹脂層の上に形成する工程とをさらに有することを特徴とする請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2配線層を形成する工程の後に、
前記第2配線層の露出面に第3銅・錫合金層を形成する工程と、
前記第2配線層の前記第3銅・錫合金層を被覆する第3カップリング剤層を形成する工程と、
前記第3カップリング剤層の上に、前記第2配線層の接続部に対応する部分に開口部が設けられた保護絶縁層を形成する工程と、
前記保護絶縁層の開口部内の前記第3カップリング剤層及び前記第3銅・錫合金層を除去する工程とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記積層体を得る工程は、
支持体の上に、剥離できる状態で前記銅層及び前記第1銅・錫合金層が順に形成された構造体を用意し、前記第1銅・錫合金層の上に前記第1カップリング剤層を形成することにより金属層転写基材を得る工程と、
前記金属層転写基材の前記第1カップリング剤層の面を前記第1絶縁樹脂層の上に積層する工程と、
前記金属層転写基材から前記支持体を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記金属層転写基材を得る工程は、
前記支持体の上に前記銅層を形成する工程と、
前記銅層の上に錫層を形成し、加熱処理することにより前記銅層から前記錫層に銅を拡散させて前記第1銅・錫合金層を得る工程とを含むことを特徴とする請求項5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記積層体を得る工程において、下層配線層の上に前記第1絶縁樹脂層が形成されており、
前記積層体を得る工程の後に、
前記銅層から前記第1絶縁樹脂層まで厚み方向に加工することにより、前記下層配線層に到達するビアホールを形成する工程をさらに有し、
前記シード層を形成する工程において、前記シード層は前記ビアホール内から前記銅層の上に形成され、
前記めっきレジストを形成する工程において、前記めっきレジストの開口部は前記ビアホールを含む部分に形成され、
前記金属めっき層を形成する工程において、前記金属めっき層は前記ビアホール及び前記めっきレジストの開口部に形成され、
前記第1配線層を形成する工程において、前記第1配線層は前記ビアホールを介して前記下層配線層に接続されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1カップリング剤層はシランカップリング剤からなり、官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシネアート基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、又はスルフィド基を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
第1絶縁樹脂層と、
前記第1絶縁樹脂層の上に形成された第1カップリング剤層と、
前記第1カップリング剤層の上に形成された第1銅・錫合金層と、前記第1銅・錫合金層の上に形成された銅層と、前記銅層の上に形成されたシード層と、前記シード層の上に形成された金属めっき層とを含む第1配線層とを有することを特徴とする配線基板。
【請求項10】
前記第1配線層の上面及び側面に形成された第2銅・錫合金層と、
前記第1配線層の前記第2上側銅・錫合金層を被覆する第2カップリング剤層と、
前記第2カップリング剤層の上に形成された第2絶縁樹脂層とをさらに有することを特徴とする請求項9に記載の配線基板。
【請求項11】
前記第1絶縁樹脂層の下に形成された下層配線層と、
前記第1絶縁樹脂層に形成され、前記下層配線層に到達するビアホールとをさらに有し、
前記第1カップリング剤層は前記ビアホールを除く前記第1絶縁樹脂層の上に形成され、
前記シード層は、前記ビアホールの内面から前記銅層の上に延在し、
前記第1配線層は前記ビアホールを介して前記下層配線層に接続されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の配線基板。
【請求項12】
前記第2絶縁樹脂層、前記第2カップリング剤層、及び第2銅・錫合金層に形成され、前記第1配線層に到達するビアホールと、
前記第2絶縁樹脂層の上に形成され、前記ビアホールを介して前記第1配線層に接続される第2配線層とをさらに有することを特徴とする請求項10に記載の配線基板
【請求項13】
前記第2配線層の上面及び側面に形成された第3銅・錫合金層と、
前記第2配線層の前記第3銅・錫合金層を被覆する第3カップリング剤層と、
前記第3カップリング剤層の上に形成され、前記第2配線層の接続部に対応する部分に開口部が設けられた保護絶縁層とを有し、
前記保護絶縁層の開口部内の前記第3カップリング剤層及び前記第3銅・錫合金層が除去されていることを特徴とする請求項12に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−216773(P2012−216773A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15679(P2012−15679)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】