説明

配線装置、スイッチ、プラグおよびコンセント

【課題】直流電力の供給から供給停止に切り替わるときにアークの発生を防止するとともに回路素子を保護する。
【解決手段】電力供給線路Lp1〜Lp4に挿入された配線装置1において、切替スイッチ3がオン状態からオフ状態に切り替えると、制御部4の第1のスイッチ41が閉状態から開状態に切り替わり、第2のスイッチ42が開状態から閉状態に切り替わる。その後、コンデンサ44が徐々に放電され、コンデンサ44の両端電圧Vcが徐々に低くなっていく。制御用IC45は、コンデンサ44の両端電圧つまり入力電圧が徐々に低くなるにつれて、制御信号Sigのパルス密度を徐々に低くしていく。パワーMOSFET2では、制御信号Sigのパルス密度が徐々に低くなるにつれて、ドレイン−ソース間電圧が徐々に高くなっていき、電力供給線路Lp1〜Lp4に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源から負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替える配線装置、並びにそれを用いたスイッチ、プラグおよびコンセントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光ダイオード(LED)を光源とする照明器具やパーソナルコンピュータなど直流電力の供給を受けて動作する負荷機器が種々提供されている。この種の負荷機器のうち、商用電源などからの交流電力を供給する一般的な交流コンセントに接続して使用される機器は、交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータを備える(内蔵あるいは外付けのACアダプタに備える)ことにより、交流コンセントからの電力供給で動作可能な構成を採用している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、各負荷機器が備えるAC/DCコンバータでは、コストなどの点から変換効率を十分に高めることができない。また、商用電源などの交流電源と太陽電池や二次電池などの直流電源とを組み合わせた場合、負荷機器が直流電力によって動作するまでに交流電力と直流電力の変換が複数回繰り返されることになり、変換効率はさらに低下する。
【0004】
そこで、近年では、交流電力ではなく直流電力を負荷機器に供給する直流電力供給システムが提案されている。この直流電力供給システムは、例えば住宅などの分電盤内に配設された直流電源装置としてのAC/DCコンバータによって商用電源などからの交流電力を直流電力に変換し、各部屋に設置された直流コンセントに対して電力供給線路を介して直流電力を配電する。この直流電力供給システムに対して直流コンセントを介して負荷機器が接続されると、負荷機器は交流電力ではなく直流電力が供給されることになるため、負荷機器にはAC/DCコンバータが不要になる。これにより、交流電力と直流電力の変換回数を減らすことができ、分電盤内に配設されるAC/DCコンバータとして高効率のAC/DCコンバータを用いることができるので、従来のシステムに比べて変換効率を高めることができる。
【0005】
上記のような直流電力供給システムには、直流電源装置から負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替えるためのスイッチが直流電力の供給路に挿入されている。ユーザは、スイッチのオンオフを切り替えることによって、上記直流電力の供給と供給停止とを切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−59156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、直流電力の供給路に挿入された従来のスイッチでは、直流電源装置から負荷機器への直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、電力供給線路に流れている直流電流iが急激に変動する。このため、電力供給線路の線路長が長い場合、電力供給線路には、自己のインダクタンスLによって高い電圧L(di/dt)が発生する。つまり、電力供給線路には、電圧L(di/dt)と直流電流iに起因する電磁エネルギーが蓄えられている。
【0008】
したがって、従来のスイッチには、上記電圧(電磁エネルギー)によってアークが発生するという問題があった。直流電流においては交流電流と異なりゼロクロス点がないため、従来のスイッチでは、交流電力の供給路に挿入されたスイッチに比べて、一旦発生したアークが消弧しにくくなっている。特に電源電圧が高い場合や負荷機器の負荷インピーダンスが小さい場合、直流電力が供給されているときの直流電流iが大きく、直流電力の供給から供給停止に切り替わったときに電流変化分di/dtも大きくなるため、上記問題が顕著に現れる。
【0009】
上記問題を解決する従来の方法として、半導体スイッチを用いたスイッチがある。上記半導体スイッチを用いたスイッチでは、機械的な接点開閉がないため、上記電圧(電磁エネルギー)によってアークが発生するのを防止することができる。
【0010】
しかしながら、半導体スイッチを用いた従来のスイッチにおいても、直流電力の供給から供給停止に切り替えるときに、高い電圧L(di/dt)が発生し、半導体スイッチに印加される。このため、半導体スイッチを用いた従来のスイッチには、半導体スイッチが動作不良を起こしてしまうという問題があった。半導体スイッチの動作不良によって、従来のスイッチに設けられている他の回路素子にも影響を与えてしまう。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みて為され、本発明の目的は、直流電力の供給から供給停止に切り替わるときにアークの発生を防止するとともに回路素子を保護することができる配線装置、スイッチ、プラグおよびコンセントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る配線装置の発明は、直流電力が供給されると動作する負荷機器へ直流電源から直流電力を供給するための電力供給線路に挿入され当該直流電源から当該負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替える配線装置であって、前記負荷機器と直列に接続され制御信号に応じて両端電圧が変化する半導体スイッチと、前記直流電力の供給と供給停止とを切り替えるための切替スイッチと、前記切替スイッチでの切替に応じて前記半導体スイッチへの前記制御信号の出力を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記切替スイッチで直流電力の供給から供給停止に切り替えられると、前記制御信号のパルス密度を徐々に低くすることによって、前記電力供給線路に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る配線装置の発明は、請求項1の発明において、前記制御信号は、一定のパルス間隔でパルスが形成されるパルス信号であり、前記制御部は、前記切替スイッチで直流電力の供給から供給停止に切り替えられると、前記制御信号のオン期間を徐々に短くして、前記制御信号のパルス密度を徐々に低くすることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る配線装置の発明は、請求項1の発明において、前記制御信号は、一定のパルス幅でパルスが形成されるパルス信号であり、前記制御部は、前記切替スイッチが直流電力の供給から供給停止に切り替えられると、前記制御信号のオフ期間を徐々に長くして、前記制御信号のパルス密度を徐々に低くすることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係るスイッチの発明は、請求項1〜3のいずれか1項の配線装置を備え、前記切替スイッチは、前記直流電力の供給と供給停止とを切り替える切替操作を行うための操作部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項5に係るプラグの発明は、請求項1〜3のいずれか1項の配線装置と、前記負荷機器と電気的に接続するための第1の接続端子部と、前記直流電源と電気的に接続しているコンセントと着脱自在に接続する第2の接続端子部とを備え、前記切替スイッチは、前記コンセントとの接触状態に応じて前記直流電力の供給と供給停止とを切り替えることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係るコンセントの発明は、請求項1〜3のいずれか1項の配線装置と、前記直流電源と電気的に接続するための第1の接続端子部と、前記負荷機器と電気的に接続しているプラグと着脱自在に接続する第2の接続端子部とを備え、前記切替スイッチは、前記プラグとの接触状態に応じて前記直流電力の供給と供給停止とを切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、直流電源から負荷機器への直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、制御信号のパルス密度を徐々に低くして、電力供給線路に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることによって、電力供給線路のインダクタンスによる電圧の発生を低減して、半導体スイッチの両端電圧が急激に変動するのを防止することができるので、半導体スイッチの動作不良を低減することができ、配線装置の回路素子を保護することができる。また、請求項1の発明によれば、半導体スイッチを用いることによって、直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、アークの発生を防止することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、パルスのオン期間を変化させることによって、制御信号のパルス密度を容易に変更することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、パルスのオフ期間を変化させることによって、制御信号のパルス密度を容易に変更することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、配線装置が設けられたスイッチを直流電源から負荷機器への直流電力の供給路に挿入することによって、従来の直流電力供給システムを援用することができるとともに、直流電力の供給と供給停止との切替操作をユーザが操作部を用いて手動で簡単に行うことができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、配線装置がプラグに備えられ、切替スイッチがコンセントとの接触状態に応じて直流電力の供給と供給停止とを切り替えることによって、コンセントへのプラグの着脱という既存の電力供給システムでも行われている操作のみで、直流電源から負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替えることができる。また、請求項5の発明によれば、配線装置がプラグに備えられることによって、プラグおよびコンセントとは別個に配線装置を用意する必要がない。さらに、請求項5の発明であっても、配線装置において、直流電源から負荷機器への直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、制御信号のパルス密度を徐々に低くして、電力供給線路に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることによって、電力供給線路のインダクタンスによる電圧の発生を低減して、半導体スイッチの両端電圧が急激に変動するのを防止することができるので、半導体スイッチの動作不良を低減することができ、配線装置の回路素子を保護することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、配線装置がコンセントに備えられ、切替スイッチがプラグとの接触状態に応じて直流電力の供給と供給停止とを切り替えることによって、コンセントへのプラグの着脱という既存の電力供給システムでも行われている操作のみで、直流電源から負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替えることができる。また、請求項6の発明によれば、配線装置がコンセントに備えられることによって、プラグおよびコンセントとは別個に配線装置を用意する必要がない。さらに、請求項6の発明であっても、配線装置において、直流電源から負荷機器への直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、制御信号のパルス密度を徐々に低くして、電力供給線路に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることによって、電力供給線路のインダクタンスによる電圧の発生を低減して、半導体スイッチの両端電圧が急激に変動するのを防止することができるので、半導体スイッチの動作不良を低減することができ、配線装置の回路素子を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係る配線装置の回路図である。
【図2】同上に係る配線装置における制御信号のタイムチャートである。
【図3】実施形態2に係る配線装置における制御信号のタイムチャートである。
【図4】実施形態3に係る配線装置の回路図である。
【図5】実施形態4に係る配線装置の回路図である。
【図6】実施形態5に係る配線装置のスナバ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
実施形態1に係る配線装置は、直流電源から負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替える装置である。図1に示すように、本実施形態に係る配線装置1は、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給路である電力供給線路Lp1〜Lp4に挿入されている。配線装置1は、負荷機器Aと直列に接続されているn型のパワーMOSFET2と、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給と供給停止とを切り替えるための操作が行われる切替スイッチ3と、切替スイッチ3での切替に応じてパワーMOSFET2を制御する制御部4とを備えている。この配線装置1はスイッチ5に設けられ、上記スイッチ5は直流電源DCと負荷機器Aとの間に設けられている。つまり、配線装置1は、スイッチ5の一部を構成する内部装置である。負荷機器Aは、直流電力が供給されると動作する。
【0026】
パワーMOSFET2は、ゲート−ソース間電圧Vgsとなる制御信号Sigに応じてドレイン−ソース間電圧(両端電圧)Vdsが変化する。本実施形態の制御信号Sigは、図2(a)に示すように、一定のパルス間隔Tでパルスが形成されるパルス信号である。パワーMOSFET2は、制御信号Sigのパルス幅(オンデューティ)が小さいほどドレイン−ソース間電圧Vdsが高くなる。パワーMOSFET2は、本発明の半導体スイッチに相当する。
【0027】
図1に示す切替スイッチ3はスライドスイッチである。この切替スイッチ3には、直流電力の供給(オン状態)と供給停止(オフ状態)とを切り替える切替操作をユーザが行うための操作部31が設けられている。切替スイッチ3は、ユーザの操作によって操作部31が一端側(例えば図1の左側)に移動するとオン状態になり、ユーザの操作によって操作部31が他端側(例えば図1の右側)に移動するとオフ状態になる。
【0028】
続いて、制御部4について説明する。制御部4は、第1のスイッチ41と、第2のスイッチ42と、抵抗器43と、コンデンサ44と、制御用IC45と、IC用電源46とを備えている。
【0029】
第1のスイッチ41と第2のスイッチ42とは直列に接続され、負荷機器Aとは並列に接続されている。切替スイッチ3がオン状態である場合、第1のスイッチ41は閉状態になり、第2のスイッチ42は開状態になる。一方、切替スイッチ3がオフ状態である場合、第1のスイッチ41は開状態になり、第2のスイッチ42は閉状態になる。第1のスイッチ41と第2のスイッチ42との接続点には、抵抗器43の一端が接続されている。
【0030】
コンデンサ44は、一端が抵抗器43の他端および制御用IC45の入力側に接続され、他端がパワーMOSFET2のソースS側に接続されている。第1のスイッチ41が閉状態であり、第2のスイッチ42が開状態である場合、コンデンサ44には、第1のスイッチ41および抵抗器43を介して直流電流が流れる。これにより、コンデンサ44は充電されていき、コンデンサ44の両端電圧Vcは高くなっていく。一方、第1のスイッチ41が開状態であり、第2のスイッチ42が閉状態である場合、コンデンサ44は、抵抗器43および第2のスイッチ42を介して放電する。これにより、コンデンサ44の両端電圧Vcは低くなっていく。
【0031】
制御用IC45は、パルス信号である制御信号Sigのパルス幅を入力電圧に応じて変化させながら、制御信号SigをパワーMOSFET2に出力する。制御用IC45の入力電圧は、コンデンサ44の両端電圧Vcである。IC用電源46は、制御用IC45の駆動電源である。
【0032】
制御用IC45は、切替スイッチ3でオン状態からオフ状態に切り替えられてコンデンサ44の両端電圧Vcが高くなっていくと、図2(a)に示すように、期間T1(時間t12−時間t11)において制御信号Sigのオン期間を徐々に長くしていき、制御信号Sigのパルス密度を徐々に高くしていく。制御信号Sigのパルス電圧がゲートGに印加されたパワーMOSFET2では、期間T2(時間t22−時間t21)において、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に低くなっていく。これにより、制御用IC45は、電力供給線路Lp1〜Lp4に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることができる。期間T2は期間T1に依存し、期間T1は抵抗器43の抵抗値やコンデンサ44の容量によって予め設定されている。期間T1が経過すると、制御用IC45は、制御信号Sigのオンデューティを100%とする。
【0033】
一方、切替スイッチ3でオン状態からオフ状態に切り替えられてコンデンサ44の両端電圧Vcが低くなっていくと、制御用IC45は、図2(b)に示すように、期間T3(時間t32−時間t31)において制御信号Sigのオン期間を徐々に短くしていき、制御信号Sigのパルス密度を徐々に低くしていく。制御信号Sigのパルス電圧がゲートGに印加されたパワーMOSFET2では、期間T4(時間t42−時間t41)において、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に高くなっていく。これにより、制御用IC45は、電力供給線路Lp1〜Lp4に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることができる。期間T4は期間T3に依存し、期間T3は抵抗器43の抵抗値やコンデンサ44の容量によって予め設定されている。期間T3が経過すると、制御用IC45は、パワーMOSFET2への制御信号Sigの出力を停止する。
【0034】
図1に示すスイッチ5は、上述のように配線装置1を備えているとともに、それぞれ電力供給線路Lp1,Lp2が接続される第1の接続端子部51a,51bと、それぞれ電力供給線路Lp3,Lp4が接続される第2の接続端子部52a,52bとをさらに備えている。第1の接続端子部51aは、電力供給線路Lp1を介して負荷機器Aの正極側と電気的に接続されている。第1の接続端子部51bは、電力供給線路Lp2を介して負荷機器Aの負極側と電気的に接続されている。
【0035】
次に、本実施形態に係る配線装置1の動作について説明する。まず、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給停止から供給へ切り替わる場合の動作について図1,2(a)を用いて説明する。ユーザによって切替スイッチ3がオフ状態からオン状態に切り替える操作が行われると、制御部4の第1のスイッチ41が開状態から閉状態に切り替わり、第2のスイッチ42が閉状態から開状態に切り替わる。その後、コンデンサ44が徐々に充電され、コンデンサ44の両端電圧Vcが徐々に高くなっていく。つまり、制御用IC45の入力電圧が徐々に高くなっていく。制御用IC45は、入力電圧が高くなるにつれて、制御信号Sigのオン期間を長くしていく。制御信号Sigはゲート電圧としてパワーMOSFET2に出力される。パワーMOSFET2では、制御信号Sigのオン期間が徐々に長くなるにつれて、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に低くなっていく。ドレインDとソースSとの間に流れる電流は徐々に大きくなっていく。その後、コンデンサ44が飽和すると、制御用IC45は、すべてがオン期間である制御信号SigをパワーMOSFET2に出力する。
【0036】
続いて、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給から供給停止へ切り替わる場合の動作について図1,2(b)を用いて説明する。ユーザによって切替スイッチ3がオン状態からオフ状態に切り替える操作が行われると、第1のスイッチ41が閉状態から開状態に切り替わり、第2のスイッチ42が開状態から閉状態に切り替わる。その後、コンデンサ44が徐々に放電され、コンデンサ44の両端電圧Vcが徐々に低くなっていく。つまり、制御用IC45の入力電圧が徐々に低くなっていく。制御用IC45は、入力電圧が低くなるにつれて、制御信号Sigのオン期間を短くしていく。制御信号Sigはゲート電圧としてパワーMOSFET2に出力される。パワーMOSFET2では、制御信号Sigのオン期間が徐々に短くなるにつれて、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に高くなっていく。ドレインDとソースSとの間に流れる電流は徐々に小さくなっていく。その後、コンデンサ44が完全に放電すると、制御用IC45は、制御信号Sigの出力を停止する。
【0037】
以上、本実施形態によれば、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、制御信号Sigのパルス密度を徐々に低くして、電力供給線路Lp1〜Lp4に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させることによって、電力供給線路Lp1〜Lp4のインダクタンスLによる電圧L(di/dt)の発生を低減して、パワーMOSFET2のドレイン−ソース間電圧Vdsが急激に変動するのを防止することができるので、パワーMOSFET2の動作不良を低減することができ、配線装置1の回路素子(特にパワーMOSFET2)を保護することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、パワーMOSFET2を用いることによって、直流電力の供給から供給停止に切り替わるときに、アークの発生を防止することができる。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、パルスのオン期間を変化させることによって、制御信号Sigのパルス密度を容易に変更することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、配線装置1が設けられたスイッチ5を直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給路に挿入することによって、従来の直流電力供給システムを援用することができるとともに、直流電力の供給と供給停止との切替操作をユーザが操作部31を用いて手動で簡単に行うことができる。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2に係る配線装置1は、パルスのオン期間(パルス幅)を制御するのではなく、図3に示すようにパルスのオフ期間を制御する点で、実施形態1に係る配線装置1と相違する。本実施形態の制御信号Sigは、一定のパルス幅Wでパルスが形成されるパルス信号である。
【0042】
本実施形態の制御用IC45は、切替スイッチ3でオフ状態からオン状態に切り替えられると、図3(a)に示すように、期間T5(時間t52−時間t51)において制御信号Sigのオフ期間を徐々に短くしていき、制御信号Sigのパルス密度を徐々に高くしていく。制御信号Sigのパルス電圧がゲートGに印加されたパワーMOSFET2では、期間T6(時間t62−時間t61)において、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に高くなっていく。
【0043】
一方、切替スイッチ3でオン状態からオフ状態に切り替えられると、制御用IC45は、図3(b)に示すように、期間T7(時間t72−時間t71)において制御信号Sigのオフ期間を徐々に長くしていき、制御信号Sigのパルス密度を徐々に低くしていく。制御信号Sigのパルス電圧がゲートGに印加されたパワーMOSFET2では、期間T8(時間t82−時間t81)において、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に高くなっていく。
【0044】
次に、本実施形態に係る配線装置1の動作について説明する。まず、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給停止から供給へ切り替わる場合の動作について図1,3(a)を用いて説明する。ユーザによって切替スイッチ3がオフ状態からオン状態に切り替える操作が行われると、制御部4の第1のスイッチ41が開状態から閉状態に切り替わり、第2のスイッチ42が閉状態から開状態に切り替わる。その後、コンデンサ44が徐々に充電され、コンデンサ44の両端電圧Vcが徐々に高くなっていく。つまり、制御用IC45の入力電圧が徐々に高くなっていく。制御用IC45は、入力電圧が高くなるにつれて、制御信号Sigのオフ期間を短くしていく。制御信号Sigはゲート電圧としてパワーMOSFET2に出力される。パワーMOSFET2では、制御信号Sigのオフ期間が徐々に短くなるにつれて、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に低くなっていく。ドレインDとソースSとの間に流れる電流は徐々に大きくなっていく。その後、コンデンサ44が飽和すると、制御用IC45は、オフ期間のない制御信号SigをパワーMOSFET2に出力する。
【0045】
続いて、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給から供給停止へ切り替わる場合の動作について図1,3(b)を用いて説明する。ユーザによって切替スイッチ3がオン状態からオフ状態に切り替える操作が行われると、第1のスイッチ41が閉状態から開状態に切り替わり、第2のスイッチ42が開状態から閉状態に切り替わる。その後、コンデンサ44が徐々に放電され、コンデンサ44の両端電圧Vcが徐々に低くなっていく。つまり、制御用IC45の入力電圧が徐々に低くなっていく。制御用IC45は、入力電圧が低くなるにつれて、制御信号Sigのオフ期間を広げていく。制御信号Sigはゲート電圧としてパワーMOSFET2に出力される。パワーMOSFET2では、制御信号Sigのオフ期間が徐々に広くなるにつれて、ドレイン−ソース間電圧Vdsが徐々に高くなっていく。ドレインDとソースSとの間に流れる電流は徐々に小さくなっていく。その後、コンデンサ44が完全に放電すると、制御用IC45は、制御信号Sigの出力を停止する。
【0046】
以上、本実施形態によれば、パルスのオフ時間を変化させることによって、制御信号Sigのパルス密度を容易に変更することができる。
【0047】
(実施形態3)
実施形態3では、図4に示すように、配線装置1を備えているプラグ6について説明する。つまり、本実施形態の配線装置1は、プラグ6の一部を構成する内部装置である。なお、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
プラグ6は、それぞれ電力供給線路Lp1,Lp2が接続される第1の接続端子部61a,61bと、コンセント7と着脱自在に接続される第2の接続端子部62a,62bとを備えている。第1の接続端子部61aは、電力供給線路Lp1を介して負荷機器Aの正極側と電気的に接続されている。第1の接続端子部61bは、電力供給線路Lp2を介して負荷機器Aの負極側と電気的に接続されている。
【0049】
コンセント7は、それぞれ電力供給線路Lp3,Lp4が接続される第1の接続端子部71a,71bと、プラグ6の第2の接続端子部62a,62bと着脱自在に接続される第2の接続端子部72a,72bとを備えている。第1の接続端子部71aは、電力供給線路Lp3を介して直流電源DCの正極側と電気的に接続されている。第1の接続端子部71bは、電力供給線路Lp4を介して直流電源DCの負極側と電気的に接続されている。一方、第2の接続端子部72aには、第2の接続端子部62aが差し込まれる。第2の接続端子部72bには、第2の接続端子部62bが差し込まれる。
【0050】
本実施形態の配線装置1は、実施形態1の切替スイッチ3(図1参照)に代えて、図4に示すような切替スイッチ3aを備えている。切替スイッチ3aは、プラグ6がコンセント7に差し込まれたときに、押圧部32がコンセント7で押されることによって、オフ状態からオン状態に切り替える。一方、プラグ6がコンセント7から引き抜かれると、押圧部32が元の位置に戻り、切替スイッチ3aは、オン状態からオフ状態に切り替える。つまり、切替スイッチ3aは、コンセント7との接触状態に応じてオン状態とオフ状態とを切り替えることができる。切替スイッチ3aがオン状態である場合、第1のスイッチ41は閉状態になり、第2のスイッチ42は開状態になる。一方、切替スイッチ3aがオフ状態である場合、第1のスイッチ41は開状態になり、第2のスイッチ42は閉状態になる。なお、本実施形態に係る配線装置1の動作は、上記以外において、実施形態1に係る配線装置1と同様である。
【0051】
以上、本実施形態によれば、配線装置1がプラグ6に備えられ、切替スイッチ3aがコンセント7との接触状態に応じて直流電力の供給と供給停止とを切り替えることによって、コンセント7へのプラグ6の着脱(抜き差し)という既存の電力供給システムでも行われている操作のみで、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給と供給停止とを切り替えることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、配線装置1がプラグ6に備えられることによって、プラグ6およびコンセント7とは別個に配線装置1を用意する必要がない。
【0053】
(実施形態4)
実施形態4では、図5に示すように、配線装置1がプラグ6ではなく、コンセント7に備えられている場合について説明する。つまり、本実施形態の配線装置1は、コンセント7の一部を構成する内部装置である。なお、本実施形態に係るプラグ6およびコンセント7は、コンセント7が配線装置1を備えている点以外において、実施形態3に係るプラグ6およびコンセント7(図4参照)と同様である。
【0054】
本実施形態の配線装置1の切替スイッチ3aは、プラグ6がコンセント7に差し込まれたときに、押圧部32がプラグ6で押されることによって、オフ状態からオン状態に切り替える。一方、プラグ6がコンセント7から引き抜かれると、押圧部32が元の位置に戻り、オン状態からオフ状態に切り替える。つまり、切替スイッチ3aは、プラグ6との接触状態に応じてオン状態とオフ状態とを切り替えることができる。切替スイッチ3aがオン状態である場合、第1のスイッチ41は閉状態になり、第2のスイッチ42は開状態になる。一方、切替スイッチ3aがオフ状態である場合、第1のスイッチ41は開状態になり、第2のスイッチ42は閉状態になる。なお、本実施形態に係る配線装置1の動作は、上記以外において、実施形態3に係る配線装置1と同様である。
【0055】
以上、本実施形態によれば、配線装置1がコンセント7に備えられ、切替スイッチ3aがプラグ6との接触状態に応じて直流電力の供給と供給停止とを切り替えることによって、コンセント7へのプラグ6の着脱(抜き差し)という既存の電力供給システムでも行われている操作のみで、直流電源DCから負荷機器Aへの直流電力の供給と供給停止とを切り替えることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、配線装置1がコンセント7に備えられることによって、プラグ6およびコンセント7とは別個に配線装置1を用意する必要がない。
【0057】
(実施形態5)
実施形態5では、実施形態1の配線装置1(図1参照)に図6(a)に示すようなサージアブソーバ8が追加された構成について説明する。
【0058】
サージアブソーバ8は、抵抗器81とコンデンサ82とが直列接続されたスナバ回路である。図6(a)の接点A,Bが配線装置1の接点A,B(図1参照)に接続される。つまり、サージアブソーバ8は、パワーMOSFET2に並列接続される。
【0059】
以上、本実施形態のようにパワーMOSFET2と並列にサージアブソーバ8が接続されると、パワーMOSFET2の動作不良をより低減することができ、配線装置1の回路素子の保護をより高めることができる。
【0060】
なお、本実施形態の変形例として、サージアブソーバ8に代えて、図6(b)に示すサージアブソーバ8aがパワーMOSFET2に並列接続されてもよい。サージアブソーバ8aは、コンデンサ83と、コンデンサ83に直列接続されているダイオード84と、コンデンサ83に並列接続されている抵抗器85と、コンデンサ83の電荷を放電するための放電用のスイッチ86とからなる。本変形例のようにサージアブソーバ8aがパワーMOSFET2に並列接続された構成であっても、本実施形態と同様に、パワーMOSFET2の動作不良をより低減することができ、配線装置1の回路素子の保護をより高めることができる。
【0061】
また、本実施形態の他の変形例として、サージアブソーバ8に代えて、図6(c)に示すサージアブソーバ8bがパワーMOSFET2に並列接続されてもよい。サージアブソーバ8bは、バリスタ87からなる。本変形例のようにサージアブソーバ8bがパワーMOSFET2に並列接続された構成であっても、本実施形態と同様に、パワーMOSFET2の動作不良をより低減することができ、配線装置1の回路素子の保護をより高めることができる。
【0062】
また、図6(a)〜(c)に示すサージアブソーバ8,8a,8bが実施形態3,4の配線装置1(図4,5参照)に追加された構成であってもよい。図6(a)〜(c)の接点A,Bが配線装置1の接点A,B(図4,5参照)に接続される。上記構成であっても、本実施形態と同様に、パワーMOSFET2の動作不良をより低減することができ、配線装置1の回路素子の保護をより高めることができる。
【0063】
なお、実施形態1〜5では、半導体スイッチとしてn型のパワーMOSFETが用いられているが、上記実施形態の変形例として、p型のパワーMOSFETや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)、トライアックなどが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 配線装置
2 パワーMOSFET(半導体スイッチ)
3,3a 切替スイッチ
31 操作部
32 押圧部
4 制御部
41 第1のスイッチ
42 第2のスイッチ
44 コンデンサ
45 制御用IC
5 スイッチ
51a,51b 第1の接続端子部
52a,52b 第2の接続端子部
6 プラグ
61a,61b 第1の接続端子部
62a,62b 第2の接続端子部
7 コンセント
71a,71b 第1の接続端子部
72a,72b 第2の接続端子部
A 負荷機器
DC 直流電源
Lp1〜Lp4 電力供給線路
Sig 制御信号
T パルス間隔
W パルス幅
Vds ドレイン−ソース間電圧(両端電圧)
Vgs ゲート−ソース間電圧
Vc 両端電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力が供給されると動作する負荷機器へ直流電源から直流電力を供給するための電力供給線路に挿入され当該直流電源から当該負荷機器への直流電力の供給と供給停止とを切り替える配線装置であって、
前記負荷機器と直列に接続され制御信号に応じて両端電圧が変化する半導体スイッチと、
前記直流電力の供給と供給停止とを切り替えるための切替スイッチと、
前記切替スイッチでの切替に応じて前記半導体スイッチへの前記制御信号の出力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記切替スイッチで直流電力の供給から供給停止に切り替えられると、前記制御信号のパルス密度を徐々に低くすることによって、前記電力供給線路に蓄えられた電磁エネルギーを徐々に放出させる
ことを特徴とする配線装置。
【請求項2】
前記制御信号は、一定のパルス間隔でパルスが形成されるパルス信号であり、
前記制御部は、前記切替スイッチで直流電力の供給から供給停止に切り替えられると、前記制御信号のオン期間を徐々に短くして、前記制御信号のパルス密度を徐々に低くする
ことを特徴とする請求項1記載の配線装置。
【請求項3】
前記制御信号は、一定のパルス幅でパルスが形成されるパルス信号であり、
前記制御部は、前記切替スイッチが直流電力の供給から供給停止に切り替えられると、前記制御信号のオフ期間を徐々に長くして、前記制御信号のパルス密度を徐々に低くする
ことを特徴とする請求項1記載の配線装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線装置を備え、
前記切替スイッチは、前記直流電力の供給と供給停止とを切り替える切替操作を行うための操作部を有する
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線装置と、
前記負荷機器と電気的に接続するための第1の接続端子部と、
前記直流電源と電気的に接続しているコンセントと着脱自在に接続する第2の接続端子部とを備え、
前記切替スイッチは、前記コンセントとの接触状態に応じて前記直流電力の供給と供給停止とを切り替える
ことを特徴とするプラグ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線装置と、
前記直流電源と電気的に接続するための第1の接続端子部と、
前記負荷機器と電気的に接続しているプラグと着脱自在に接続する第2の接続端子部とを備え、
前記切替スイッチは、前記プラグとの接触状態に応じて前記直流電力の供給と供給停止とを切り替える
ことを特徴とするコンセント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−34687(P2011−34687A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176932(P2009−176932)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】