説明

配膳用食品の製造方法

【課題】 大量の調理でも衛生的かつ効率的に行うことができ、特に、鶏卵を材料に用いる料理については、仕上がりが美しくて見栄えが良く食欲をそそるように調理することができる配膳用食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 樹脂製で椀型の包装容器1内に、複数種の食材が混合されてなる混合食材2を真空状態に収容し、冷凍して凍結状態にして、かつ、当該包装容器1の内周の表面にこの混合食材2を凍着せしめ、包装容器1の上面に被着されたシール部材12を脱離するとともに、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、有底の食器3の上面開口部31に被覆せしめ、前記混合食材2の表面が融解することによって、前記包装容器1の内側面との凍着結合が分離して、当該混合食材2を食器3内に自重落下せしめることによって、この食器3に移し換えて、食器3内の混合食材2を再び加熱することによって、可食状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配膳用の食品の製造方法の改良、更に詳しくは、大量の調理でも衛生的かつ効率的に行うことができ、特に、鶏卵を材料に用いる料理については、仕上がりが美しくて見栄えが良く食欲をそそるように調理することができる配膳用食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、病院や老人介護施設などにおいては、毎食大量の食事を配膳しており、更に、個人によって献立を変えることもあるので、職員はその支度に大変な労力を要しており、少しでも負担を軽減するために、下仕込み済みまたは調理済みの食品を冷蔵または冷凍しておき、食事として提供する際に再加熱する方法が採用されている。
【0003】
このような調理方法において、最近普及しつゝあるものに、「クックチル」と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、まず、調理途中あるいは生のままの食材を真空パックに封入して、食材の中心温度が60〜90℃(より好ましくは75〜85℃)になるまで一旦加熱して、食材には完全に火を通さずに殺菌処理のみを施す。
【0004】
その後、当該真空パックを急速に冷却する。この急速冷却は、遅くとも加熱終了後から30分以内に開始し、90分以内に食材の中心温度は0〜5℃になるまで冷却することが好ましい。この冷却後は、その食材を3℃以下で保存(チルド保存)することによって、食材(パック)内の細菌の繁殖を効果的に抑制することができる。
【0005】
そして、食事を提供する際に、この食材の再加熱を行う。具体的には、冷蔵または冷凍状態にした前記食材を冷蔵庫などから外部に取り出した後、できるだけ早い時間内に、再び通常の高温加熱することによって、調理を完了することができるのである。
【0006】
ところで、料理のメニューとして、茶碗蒸しや玉子どうふ、プリンなどがあり、軟らかい食感で食べ易いことから、特に子供や老人の間で人気が高い。これらのメニューは、材料として鶏卵が含まれており、加熱調理することによって鶏卵に含まれるタンパク質が凝固することによって、ゲル状に硬化するものである。
【0007】
これらのメニューは、通常、加工工場などで予め調理を完了したもの(ゲル状に硬化したもの)がプラスチック製容器などに包装されている。したがって、食する際に、このゲル状になった食品(例えば、茶碗蒸し)を食器に移し換えると、軟らかいため不可避的に崩れてしまい、見栄えが悪くなってしまうという問題がある。かと言って、プラスチック製の容器のままで食するには余りにも貧相で情緒に欠ける。また、陶器の茶碗を用いて最初から作る通常の調理方法では手間がかかってしまうという不満があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】登録実用新案第3125700号公報(第4−5頁、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の配膳用の食材を製造する方法に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、大量の調理でも衛生的かつ効率的に行うことができ、特に、鶏卵を材料に用いる料理については、仕上がりが美しくて見栄えが良く食欲をそそるように調理することができる配膳用食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、樹脂製で椀型の包装容器1内に、複数種の食材が混合されてなる混合食材2を真空状態に収容し、冷凍して凍結状態にして、かつ、当該包装容器1の内周の表面にこの混合食材2を凍着せしめ、
包装容器1の上面に被着されたシール部材12を脱離するとともに、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、有底の食器3の上面開口部31に被覆せしめ、
前記混合食材2の表面が融解することによって、前記包装容器1の内側面との凍着結合が分離して、当該混合食材2を食器3内に自重落下せしめることによって、この食器3に移し換えて、
食器3内の混合食材2を再び加熱することによって、可食状態にするという技術的手段を採用した。
【0012】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、包装容器1内に真空状態に収容した混合食材2の中心温度を60〜90℃に加熱せしめて殺菌処理する一方、それから90分以内に当該混合食材2の中心温度を0〜5℃に冷却せしめ、氷点下にして凍結せしめるという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、混合食材2の食材の一部に少なくとも鶏卵が含まれており、食器3に移し換えた後に、加熱することによって、混合食材2を食器3内において鶏卵に含まれるタンパク質成分を凝固せしめて、ゲル状に硬化せしめるという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、包装容器1の天地を反転せしめて、開口部11縁部を食器3の内周面に形成された掛止突起32に載置可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、包装容器1の開口部11縁部にフランジ部11aを突成して、このフランジ部11aを食器3の上面開口部31縁部に載置可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、包装容器1の収容部の表面形状に凹凸装飾13が施されており、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、食器3の上面開口部31に被覆せしめて、装飾蓋を構成するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、樹脂製で椀型の包装容器内に、複数種の食材が混合されてなる混合食材を真空状態に収容し、冷凍して凍結状態にして、かつ、当該包装容器の内周の表面にこの混合食材を凍着せしめ、包装容器の上面に被着されたシール部材を脱離するとともに、当該包装容器の天地を反転せしめて開口部を下向きにして、有底の食器の上面開口部に被覆せしめ、前記混合食材の表面が融解することによって、前記包装容器の内側面との凍着結合が分離して、当該混合食材を食器内に自重落下せしめることによって、この食器に移し換えて、食器内の混合食材を再び加熱することによって、可食状態にすることができる。
【0018】
したがって、本発明の製造方法によれば、大量の調理でも、迅速にセッティングができて非常に効率的であって、かつ、手で食品を触れることがないので、非常に衛生的に行うことができる。
【0019】
また、特に、鶏卵を材料に用いる料理については、仕上がりが美しくて見栄えが良く食欲をそそるように調理することができることから、配膳用食品の製造方法としての利用価値は頗る大きいと云える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の製造方法に用いる包装容器を表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の製造方法の工程を表わす説明断面図である。
【図3】本発明の実施形態の製造方法の工程を表わす説明断面図である。
【図4】本発明の実施形態の製造方法の工程を表わす説明断面図である。
【図5】本発明の実施形態の製造方法の工程の変形例を表わす説明断面図である。
【図6】本発明の実施形態の製造方法の変形例に用いる包装容器を表わす斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の製造方法の変形例を表わす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0022】
本発明の実施形態を図1から図7に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは包装食器であり、この包装食器1は、プラスチック材料(ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートなど)を射出成形して椀型に形成される有底の容器であって、開口部11にシール部材12が被着してある。
【0023】
また、符号2で指示するものは混合食材であり、この混合食材2は、例えば、穀類、いも類、デンプン類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、魚介類、肉類、卵類、乳類、調味料及び香辛料類、調理加工食品類などの食材を単独あるいは複数混合したものである。
【0024】
また、符号3で指示するものは食器であり、この食器3は、陶磁器やセラミックス、ガラス、エンジニアリングプラスチックなどの耐熱性材料で作製された有底の食器である。
【0025】
しかして、本発明における食品の製造方法を以下に説明する。まず、前記包装容器1内に、複数種の食材が混合されてなる混合食材2を調理途中あるいは生のままで収容して真空状態にする。
【0026】
次いで、この混合食材2を冷凍して凍結状態にして、かつ、包装容器1の内周の表面にこの混合食材2を凍着せしめる。この際、氷点下20℃以下にすることによって、十分な凍着度を得ることができ、また、図示しないが、混合食材2が入り込んでアンカー機能を果たすための凹凸部を容器内に設けることもできる。
【0027】
本実施形態では、冷凍工程の前に、包装容器1内に真空状態に収容した混合食材2の中心温度を60〜90℃に加熱せしめて殺菌処理する一方、それから90分以内に当該混合食材2の中心温度を0〜5℃に冷却せしめ、氷点下にして凍結せしめることによって、混合食材2内の細菌の繁殖を抑制することができる。
【0028】
そして、図1に示すように、包装容器1の上面に被着されたシール部材12を脱離するとともに、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、有底の食器3の上面開口部31に被覆せしめる(図2参照)。
【0029】
本実施形態では、包装容器1の天地を反転せしめて、開口部11縁部を食器3の内周面に形成された掛止突起32に載置可能にする。
【0030】
それから、放置等により所定時間が経過して、常温下で前記混合食材2の表面が融解することによって、前記包装容器1の内側面との凍着結合が分離して、図3に示すように、当該混合食材2を食器3内に自重落下せしめることによって、この食器3に移し換える(図4参照)。
【0031】
然る後、食器3内の混合食材2を、蒸し器やレンジ、IH調理器などを用いて、再び加熱(例えば、100℃以上)することによって、完全に火を通して可食状態にすることができる。
【0032】
なお、本発明の製造方法は、混合食材2の食材の一部に少なくとも鶏卵を含むメニューが好適である。具体的には、まず、包装容器1に収容されている段階では、60℃程度まで加熱して殺菌処理を施しておくとともに、タンパク質の凝固までは生じないようにしておく。
【0033】
そして、このような液相状態の鶏卵を含む混合食材2を凍結させたものを、食器3内に自由落下させて移し換えた後に、融解させると、食器3内で再び液相に戻るため、その上面表面が水平な平滑面になる。
【0034】
このような状態で、再び加熱することによって、混合食材2を食器3内において鶏卵に含まれるタンパク質成分を凝固せしめて、ゲル状に硬化せしめることにって、完全に火を通して調理を完了させる。
【0035】
したがって、特に、鶏卵を材料に用いる料理については、食器3内で調理を完了させることができるので、食材の表面が滑らかで、仕上がりが美しくて見栄えが良く、食欲をそそるように調理することができるのである。
【0036】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、図5に示すように、包装容器1の開口部11縁部にフランジ部11aを突成して、このフランジ部11aを食器3の上面開口部31縁部に載置可能にすることもできる。
【0037】
また、図6および図7に示すように、包装容器1の収容部の表面形状に凹凸装飾13(例えば、釜ぶた形状)を施して、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、食器3の上面開口部31に被覆せしめることによって、装飾蓋を構成するものであっても良く、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0038】
1 包装容器
11 開口部
11a フランジ部
12 シール部材
13 凹凸装飾
2 混合食材
3 食器
31 上面開口部
32 掛止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製で椀型の包装容器1内に、複数種の食材が混合されてなる混合食材2を真空状態に収容し、冷凍して凍結状態にして、かつ、当該包装容器1の内周の表面にこの混合食材2を凍着せしめ、
包装容器1の上面に被着されたシール部材12を脱離するとともに、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、有底の食器3の上面開口部31に被覆せしめ、
前記混合食材2の表面が融解することによって、前記包装容器1の内側面との凍着結合が分離して、当該混合食材2を食器3内に自重落下せしめることによって、この食器3に移し換えて、
食器3内の混合食材2を再び加熱することによって、可食状態にすることを特徴とする配膳用食品の製造方法。
【請求項2】
包装容器1内に真空状態に収容した混合食材2の中心温度を60〜90℃に加熱せしめて殺菌処理する一方、それから90分以内に当該混合食材2の中心温度を0〜5℃に冷却せしめ、氷点下にして凍結せしめることを特徴とする請求項1記載の配膳用食品の製造方法。
【請求項3】
混合食材2の食材の一部に少なくとも鶏卵が含まれており、食器3に移し換えた後に、加熱することによって、混合食材2を食器3内において鶏卵に含まれるタンパク質成分を凝固せしめて、ゲル状に硬化せしめることを特徴とする請求項1または2記載の配膳用食品の製造方法。
【請求項4】
包装容器1の天地を反転せしめて、開口部11縁部を食器3の内周面に形成された掛止突起32に載置可能にすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の配膳用食品の製造方法。
【請求項5】
包装容器1の開口部11縁部にフランジ部11aを突成して、このフランジ部11aを食器3の上面開口部31縁部に載置可能にすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の配膳用食品の製造方法。
【請求項6】
包装容器1の収容部の表面形状に凹凸装飾13が施されており、当該包装容器1の天地を反転せしめて開口部11を下向きにして、食器3の上面開口部31に被覆せしめて、装飾蓋を構成することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の配膳用食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−45272(P2011−45272A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195302(P2009−195302)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(394019749)フレッグ食品工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】