説明

酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法

【課題】活性および選択性が向上した酢酸アルケニル製造用触媒を提供する。
【解決手段】担体にパラジウムを含む化合物、第11族元素を含む化合物およびアルカリ土類金属元素を含む化合物を担持し、アルカリ溶液を含浸させるかまたは担体にパラジウムを含む化合物および第11族元素を含む化合物を担持し、アルカリ土類金属元素を含む化合物のアルカリ溶液を含浸させ、還元処理、酸との接触および酢酸塩の担持を行うことからなる、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸ビニル、酢酸アリルなどの酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法およびその触媒を用いた酢酸アルケニルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸ビニルは、酢酸ビニル樹脂やポリビニルアルコールの原料として、またエチレン、スチレン、アクリレート、メタクリレート等との共重合用モノマーとして、塗料、接着剤、繊維処理剤等の広い分野に用いられている重要な工業材料である。
【0003】
酢酸ビニルの製造触媒として、Pd/Au/KOAc/SiO(Ac:−COCH)が広く用いられている。また、Pd、Au以外の金属成分を添加した触媒も知られている。例えば、特開2005−296858号公報には、Pd/Au/Zn/KOAc/SiOが開示されており、それによるとZnを添加することで、液相還元法でも気相還元法に匹敵するほどの貴金属表面積が得られると報告されている。
【0004】
第三成分としては、特にアルカリ土類金属元素が多く用いられている。例えば、特表2001−521817号公報には、BaClを添加した触媒が開示されている。さらに、特開平6−47281号公報には、アルカリ処理剤としてBa(OH)を用い、さらに酢酸塩としてBa(OAc)を導入した触媒が開示されている。
【0005】
しかし、PdやAu以外の第三金属元素を触媒に導入すると、反応初期には触媒性能の向上が見られるが、経時の活性低下が著しいなどの問題を伴う場合がある。一例として、アルカリ土類金属が存在している触媒では、原料ガスの線速度が小さい条件で反応を行うと、炭素分の蓄積が確認され、触媒の寿命の観点から必ずしも好ましくはない欠点を有しており、その解決が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−296858号公報
【特許文献2】特表2001−521817号公報
【特許文献3】特開平6−047281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、活性および選択性が向上した酢酸アルケニル製造用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、Pd/Au/アルカリ土類金属/KOAc/SiO触媒の前駆体を酸と接触させることで、余剰のアルカリ土類金属を触媒から除去し、高活性、高選択率で、かつ経時の活性低下が小さい酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法を見出した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]に関する。
【0009】
[1] 以下の工程からなることを特徴とする、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
1−a.担体にパラジウムを含む化合物、第11族元素を含む化合物およびアルカリ土類金属元素を含む化合物を担持する工程
2−a.担体にアルカリ溶液を接触含浸させる工程
3.担体に還元処理を行う工程
4.担体に酸を接触させる工程
5.担体に酢酸塩を担持する工程
【0010】
[2] 以下の工程からなることを特徴とする、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
1−b.担体にパラジウムを含む化合物および第11族元素を含む化合物を担持する工程
2−b.担体にアルカリ土類金属元素を含む化合物のアルカリ溶液を接触含浸させる工程
3.担体に還元処理を行う工程
4.担体に酸を接触させる工程
5.担体に酢酸塩を担持する工程
【0011】
[3] (a)パラジウムおよび/またはパラジウムを含む化合物、(b)第11族元素および/または第11族元素を含む化合物および(c)アルカリ土類金属元素および/またはアルカリ土類金属元素を含む化合物が担持された担体に酸を接触させる工程および担体に酢酸塩を担持する工程を含むことを特徴とする、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【0012】
[4] (b)第11族元素が金または銅である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【0013】
[5] (c)アルカリ土類金属元素がバリウムおよびカルシウムから選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【0014】
[6] 担体に接触させる酸が有機酸である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【0015】
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法で製造された触媒を用いることを特徴とする、低級オレフィン、酸素および酢酸を原料とする酢酸アルケニルの製造方法。
【0016】
[8] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法で製造された触媒を用いることを特徴とする、エチレン、酸素および酢酸を原料とする酢酸ビニルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酢酸アルケニル製造用触媒の活性および選択性が向上し、触媒活性の経時的な低下もなく、効率的に酢酸アルケニルを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0019】
[触媒の製造工程]
本発明の酢酸アルケニル製造用触媒は少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなり、以下に示す工程からなる方法によって製造することができる。
<触媒製造方法a>
工程1−a:担体にパラジウムを含む化合物、第11族元素を含む化合物およびアルカリ土類金属元素を含む化合物を担持する工程
工程2−a:担体にアルカリ溶液を含浸させる工程
工程3:担体に還元処理を行う工程
工程4:担体に酸を接触させる工程
工程5:担体に酢酸塩を担持する工程
<触媒製造方法b>
工程1−b:担体にパラジウムを含む化合物および第11族元素を含む化合物を担持する工程
工程2−b:担体にアルカリ土類金属元素を含む化合物のアルカリ溶液を含浸させる工程
工程3:担体に還元処理を行う工程
工程4:担体に酸を接触させる工程
工程5:担体に酢酸塩を担持する工程
【0020】
各工程は原則として上記の順序で行うことが好ましいが、酢酸塩を担持する工程5は最後でなくともよい。工程1−aや工程1−bのパラジウムを含む化合物、第11族元素を含む化合物およびアルカリ土類金属元素を含む化合物の担体への担持は、それぞれ個別に行ってもよく、各成分を含む1つの溶液として用いて同時に担持操作を行ってもよい。工程3の還元処理は、パラジウムを含む化合物(例えば、塩化パラジウム)や第11族元素を含む化合物を金属パラジウム、第11族元素金属とするためであるので、工程3は工程2−a、工程2−bよりも後でなくてはならない。工程4は、工程2−a、工程2−bの直後であってもよい。また、本発明の触媒の性能を向上させる目的で他の工程が含まれていてもよい。
【0021】
以下、触媒の各成分および各工程を詳細に説明する。
<(a)パラジウム>
本発明において、(a)パラジウムは、いずれの価数を持つものであってもよいが、好ましくは金属パラジウムである。ここで言う「金属パラジウム」とは、0価の価数を持つものである。金属パラジウムは、通常、2価および/または4価のパラジウムイオンを、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて還元することにより得ることができる。この場合、全てのパラジウムが金属状態になくてもよい。
【0022】
パラジウムの原料すなわちパラジウムを含む化合物には特に制限はない。金属パラジウムを用いることはもちろん、金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩の例としては、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、塩化パラジウム酸カリウム、塩化パラジウム酸バリウム、酢酸パラジウムなどがあるがこれに限定されるものではない。特に好適には塩化パラジウム酸ナトリウムが用いられる。
【0023】
(a)パラジウムと(e)担体との質量比は、好ましくは(a):(e)=1:10〜1000であり、より好ましくは1:30〜500である。この比は、例えば、パラジウム塩を担持する場合、この塩中のパラジウム元素の質量と担体の質量との比で計算する。
【0024】
<(b)第11族元素>
本発明において、(b)第11族元素とは、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による周期律表の第11族元素を意味する。具体的には金、銀、銅であり、好ましくは金である。
【0025】
(b)第11族元素は、当該元素を含む化合物(第11族元素前駆物質)の形で担体に担持されるが、最終的には「金属金」であることが好ましい。ここで言う「金属金」とは0価の価数を持つものである。金属金は、通常、第11族元素前駆物質由来の1価および/または3価の金イオンを、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて還元することにより得ることができる。この場合、全ての金が金属状態になくてもよい。
【0026】
金や銀の原料すなわち第11族元素を含む化合物には特に制限はない。金属金を用いることはもちろん、金属金に転化可能な金前駆体を用いることも可能である。金前駆体としては、塩化金酸や塩化金酸ナトリウム、塩化金酸カリウムなどが挙げられるが、好適には塩化金酸が用いられる。
【0027】
<(c)アルカリ土類金属元素>
本発明に用いる(c)アルカリ土類金属元素としては、Mg,Ca,Ba,Srなどが挙げられる。特に好適にはBa、Caである。
【0028】
アルカリ土類金属元素は、当該元素を含む化合物を供給源とするが、これらの化合物には特に制限はない。アルカリ土類金属元素の塩化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などをそれぞれ調製条件によって選択することができるが、望ましくは触媒調製時に担体上に残存する化合物に変化可能なものが望ましい。特にアルカリ溶液と接触した際に水酸化物に転化可能なものが望ましい。特に好適には、BaCl、(CHCOO)Ba、Ba(NO、Ba(OH)、CaCl、(CHCOO)Ca、Mg(NO、MgCl、(CHCOO)Mgが挙げられる。
(c)アルカリ土類金属元素を添加することによって、理由は明らかではないが、得られる触媒中における金属の分散状態が向上する傾向にある。これらの効果を発揮させるためには工程1−a、1−b、2−a、2−bのいずれかの段階で(c)アルカリ土類金属元素を導入することが望ましい。
【0029】
<(d)酢酸塩>
本発明に用いる(d)酢酸塩は、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であるのが好ましい。より好ましくはアルカリ金属酢酸塩である。具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウムなどの酢酸塩が挙げられる。なかでも酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましく、酢酸カリウムが特に好ましい。
【0030】
<(e)担体>
本発明に用いる担体には特に制限はなく、一般に触媒用の担体として用いられている多孔質物質であればよい。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイトまたはチタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。担体としてシリカを主成分とするものを用いる場合には、担体のシリカ含量は、担体の重量に対して通常少なくとも50質量%、好適には少なくとも90質量%である。
【0031】
担体は、B.E.T.法で測定した比表面積が少なくとも0.01m/g、特に10〜1000m/gの範囲、とりわけ100〜500m/gの範囲であることが好ましい。また、吸水率は0.05〜3g/g、特に0.1〜2g/gであることが好ましい。
【0032】
ここで、担体の吸水率は、以下の測定方法で測定した数値をいう。
1.担体約5gを天秤で計量(W1g)し、100ccのビーカーに入れる。
2.担体を完全に覆うように純水約15mlをビーカーに加える。
3.30分間放置する。
4.担体から上澄みの純水を除く。
5.担体の表面に付着した水を、表面の光沢がなくなるまで紙タオルで軽く押して、除去する。
6.担体の重さを測定する(W2g)。
7.以下の式から担体の吸水率を算出する。
吸水率(g/g−担体)=(W2−W1)/W1
したがって、担体の吸水量(g)は担体の吸水率(g/g)×使用した担体の重量(g)により計算される。
【0033】
担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
用いられる担体の粒子径には特に制限はない。好ましくは、1〜10mmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは3〜8mmである。管状反応器に触媒を充填して気相反応を行う場合、粒子径が1mmより小さいと、ガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また、粒子径が10mmより大きいと、管状反応器内へ充填される担持触媒の数が減少し、結果としてトータルの触媒表面積が小さくなり、担体の表面に偏在している触媒成分(Pd、Auなど)が少なくなるため好ましくない。担体の細孔構造は、その細孔直径が1〜1000nmにあることが好ましく、2〜800nmの間がより好ましい。
【0035】
<アルカリ溶液>
本発明において、アルカリ溶液としては、いかなるアルカリ性の溶液でも用いることができる。例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の重炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のケイ酸塩等のアルカリ性化合物の溶液が挙げられる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウムおよびカリウムが好ましく、アルカリ土類金属としてはバリウムおよびストロンチウムが好ましい。なかでも、好ましいアルカリ性化合物としては、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムが挙げられる。
【0036】
アルカリ性化合物は、適切には、(a)パラジウムと(b)第11族元素の合計に対して過剰に使用する。たとえば、アルカリ性化合物は、(a)パラジウム1モル当たり1〜3モル、好ましくは1.2〜2.5モルの量を使用する。また、第11族元素を含む化合物(以下においては、第11族元素前駆物質ということがある)1モル当たり、好ましくは2〜10モル、より好ましくは3〜8モルを使用する。
【0037】
この場合の溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどが挙げられる。好ましくは水である。
【0038】
次に、各工程について説明する。
<工程1−a→工程2−a>
本工程では、(e)担体にパラジウムを含む化合物、第11族元素を含む化合物およびアルカリ土類金属元素を含む化合物を担持した後に、アルカリ溶液と接触させることにより原料金属塩を水不溶性物質に変換し、金属成分がシェル型に担持された触媒前駆体A)−aを形成することができる。アルカリ溶液との接触条件には制限はないが、接触時間は0.5〜100時間、好適には3〜50時間が望ましい。0.5時間以下では性能が十分ではないことがある。また、100時間以上接触させることで、(e)担体がダメージを受ける可能性があり、好ましくない。
接触温度には特に制限はないが、10〜80℃、好適には20〜60℃が望ましい。10℃以下では変換反応が不十分になる可能性がある。80℃以上ではパラジウムや金の凝集が進む恐れがある。
【0039】
<工程1−b→工程2−b>
本工程では、(e)担体にパラジウムを含む化合物および第11族元素を含む化合物を担持した後にアルカリ土類金属元素を含む化合物を添加したアルカリ溶液と接触させて触媒前駆体A)−bを製造する。この場合、アルカリ溶液としてアルカリ土類金属元素を含むアルカリ性化合物の溶液を用いることもできる。具体的には、アルカリ溶液として水酸化バリウムの溶液などを用いる場合が挙げられる。
【0040】
原料金属塩を水不溶性物質に変換し、金属成分がシェル型に担持された触媒前駆体A)−bを形成する方法は、触媒前駆体A)−aを形成する場合と同じであり、条件も工程1−a、1−bのそれに準拠して選択することができる。
得られた触媒前駆体A)−aあるいは触媒前駆体A)−bは担体の外側に(a)パラジウムおよび(b)第11族元素の大部分が担持されている。その厚みは用いる担体やアルカリ溶液、原料金属塩水溶液の種類によって変化する。
【0041】
<工程3:還元処理>
触媒前駆体A)−aあるいは触媒前駆体A)-bは工程4の前に還元処理を行うことが望ましい。還元方法としては液相還元および気相還元のどちらを用いることもできる。
【0042】
液相還元は、アルコールや炭化水素類を用いた非水系、水系のいずれで行なわれてもよい。還元剤としては、カルボン酸およびその塩、アルデヒド、過酸化水素、糖類、多価フェノール、ジボラン、アミン、ヒドラジンなどが用いられる。カルボン酸およびその塩としてはシュウ酸、シュウ酸カリウム、ギ酸、ギ酸カリウム、クエン酸アンモニウムが例示され、糖類としてはグルコースが挙げられる。好ましい還元剤としては、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ハイドロキノン、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸カリウムなどが挙げられ、最も好ましい還元剤はヒドラジンである。
【0043】
気相還元に用いる還元剤は、水素、一酸化炭素、アルコール、アルデヒドや、エチレン、プロペン、イソブテンなどのオレフィンから選択される。好ましくは水素である。気相還元では希釈剤として、不活性ガスを加えてもよい。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素がある。
【0044】
触媒前駆体A)−aまたは触媒前駆体A)−bあるいはそれらを還元したものは、必要に応じて水による洗浄に付される。洗浄は、流通で行ってもあるいはバッチで行ってもよい。洗浄温度は、好ましくは5〜200℃の範囲、より好ましくは15〜80℃の範囲である。時間は特に制限はない。残存する好ましくない不純物の除去という目的に対して十分な条件を選択することが望ましい。この場合の好ましくない不純物とは、例えば、ナトリウムや塩素が挙げられる。
【0045】
<工程4:酸処理>
次に、本発明方法の工程4について説明する。
工程4は、触媒前駆体A)−aあるいは触媒前駆体A)−bと酸とを接触(「酸処理」という)させる工程である。酸と接触させることで、好ましくない不純物を除去し、特に過剰の(c)アルカリ土類金属元素をある程度除去することで触媒性能が向上する。酸処理は、これらの物質を除去する目的を達成できる条件であればどのような条件で行ってもよい。(c)アルカリ土類金属元素は金属の分散状態を向上させる働きがあるが、触媒中に大量に存在する状態では、好ましくない副反応を引き起こす可能性があるため、余剰分を除去することが必要である。
【0046】
酸処理としては、担体を酸溶液に浸漬する方法が挙げられる。その後、水洗等によって酸溶液を洗い流し、乾燥することが望ましい。
【0047】
酸処理に使用される酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸などの無機酸や、酢酸、シュウ酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。これらの酸は、前述の目的を勘案して適宜に選択することができ、これらの酸の塩であってもかまわない。
【0048】
<工程5:酢酸塩の担持>
本発明において、(d)酢酸塩は、工程4の後に得られた触媒前駆体に(d)酢酸塩の必要量を含む担体吸水量の0.9〜1倍の溶液を含浸させ、乾燥することにより担持される。担持は還元前に行っても還元後に行ってもよいが、好適には還元後である。但し、酸処理工程の前に行うと酢酸塩も除去される場合があるので、酸処理工程の後に行うことが望ましい。
【0049】
<触媒成分組成>
酸処理前の触媒前駆体中の(a)、(b)および(c)の質量比は、好ましくは(a):(b):(c)=1:0.001〜10:0.001〜100であり、より好ましくは(a):(b):(c)=1:0.1〜2:0.001〜30である。
【0050】
酸処理後の(a)、(b)、(c)および(d)の質量比は、好ましくは(a):(b):(c):(d)=1:0.001〜10:0.00001〜0.2:0.1〜100であり、より好ましくは(a):(b):(c):(d)=1:0.1〜2:0.00001〜0.2:0.5〜20である。
【0051】
(a)パラジウムと(e)担体との質量比は、好ましくは(a)パラジウム:(e)担体=1:10〜1000であり、より好ましくは(a)パラジウム:(e)担体=1:30〜500である。なお、(a)、(b)、(c)成分については当該元素を含む化合物中の当該元素自体の質量(金属自体の場合はその金属の質量)、(d)成分については酢酸塩の質量での組成比である。各触媒成分の組成は、所望の触媒組成になるように各触媒成分原料化合物の量により調整することができる。触媒成分の原料化合物を溶かした溶液中の触媒成分の原料化合物の濃度は、担体へ担持すべき原料化合物の量と溶液量とから計算することができる。実操作上は、まず担体へ担持すべき原料化合物の所定量(g数)をはかり取り、それを適切な量の溶媒に溶かせばよい。
【0052】
本発明の方法により得られる触媒は、担体の表面部分に(a)パラジウムおよび(b)第11族元素の大部分が担持されたシェル構造(エッグシェル構造ともいう)をなしている。シェル部分の厚みは用いる担体やアルカリ溶液、原料金属塩水溶液の種類によって変化する。直径5mmの球体シリカを担体として使用した場合、シェル部分は0.05〜2mmの厚みを有することが望ましい。さらに好適には0.1〜1mmの厚みを有する。0.05mm以下では反応の間に担体表面部分のはがれなどによって活性低下が起こることがあるため望ましくない。2mmより厚い場合には、シェル型担持のメリットが得られにくいことがある。
本発明の方法で調製した触媒においては、(c)アルカリ土類金属および(d)酢酸塩はシェル型に担持されていても、触媒全体に均一に存在していてもよい。
【0053】
<触媒調製法の具体例>
本発明の触媒製造方法aの例を以下に示す。触媒製造方法bについても同様である。
【0054】
工程1−a:(a)パラジウム、(b)第11族元素および(c)アルカリ土類金属元素の原料金属塩を(e)担体吸水量相当まで純水でメスアップした溶液を、(e)担体に含浸させる。
【0055】
工程2−a:吸水量の2倍量のアルカリ溶液を(e)担体に接触含浸させ、触媒前駆体を形成する。
【0056】
工程3:工程2−aの溶液に還元剤を投入し、還元後の触媒前駆体を純水で洗浄し、乾燥する。
【0057】
工程4:触媒前駆体(担体)を酸の溶液に浸漬し、水などで洗浄後、乾燥する。
【0058】
工程5:担体を(d)酢酸塩溶液に浸漬し、(d)酢酸塩を所定量担持し、乾燥する。
【0059】
[酢酸アルケニルの製造]
以下、本発明の方法で製造された酢酸アルケニル製造用触媒を用いた、酢酸アルケニルの製造法について説明する。
【0060】
本発明における酢酸アルケニルの製造のための反応は、酢酸、低級オレフィンおよび酸素を反応原料とし、気相で行うことが好ましい。気相反応は、従来公知のいかなる形態で行ってもよいが、好ましくは固定床流通反応であることが望ましい。例えば、低級オレフィンがエチレンの場合には、反応式は次式のとおりである。
【0061】
+CHCOOH+1/2O→CH=CHOCOCH+H
原料の酢酸、低級オレフィンおよび酸素の比率は、モル比として酢酸:低級オレフィン:酸素=1:0.08〜16:0.01〜4であるのが好ましく、低級オレフィンがエチレンの場合は酢酸:エチレン:酸素=1:0.2〜9:0.07〜2であるのが好適である。また、低級オレフィンがプロピレンの場合は、酢酸:プロピレン: 酸素=1:1〜12:0.5〜2であるのが好ましい。
【0062】
反応原料ガスは、低級オレフィンと酢酸と酸素とを含み、さらに必要に応じて窒素、二酸化炭素または希ガスなどを希釈剤として含んでいてもよい。低級オレフィンと酢酸と酸素とを反応原料とすると、反応原料と希釈剤との比率は、モル比として反応原料:希釈剤=1:0.05〜9であるのが好ましく、より好ましくは反応原料:希釈剤=1:0.1〜3である。
【0063】
固定床流通反応で反応を行う場合、反応原料ガスは、標準状態において、空間速度10〜15000hr−1、特に300〜8000hr−1で反応器に通すのが好ましい。空間速度が10hr−1より小さい場合、反応熱の除去が困難となる可能性がある。また、空間速度が15000hr−1より大きい場合、コンプレッサー等の設備が大きくなりすぎて、実用的でなくなることがある。
【0064】
反応原料ガス中には水を0.5〜20mol%添加することが好ましい。さらに好適には、水を1〜18mol%添加する。系内に水が存在することによって、理由は明かではないが、触媒からの(d)酢酸塩の流出が減少する。一方、水を20mol%より多く添加しても、上記効果は向上しないばかりか、酢酸アルケニルの加水分解が進む恐れがあるため、大量の水が存在するのは好ましくない。
【0065】
反応器の材質については特に制限はないが、好ましくは耐食性を有する材料で構成された反応器である。
【0066】
反応温度は、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは120〜250℃である。反応温度が100℃より低い場合、反応速度が遅くなりすぎる可能性があり、好ましくない。反応温度が300℃よりも高い場合、反応熱の除熱が困難となる可能性があり、好ましくない。
【0067】
反応圧力は、好ましくは0〜3MPaG(ゲージ圧)であり、より好ましくは0.1〜1.5MPaGである。反応圧力が0MPaGより小さい場合、反応速度が低下する恐れがあり、好ましくない。反応圧力が3MPaGより大きい場合、反応管等の設備が高価になり、実用的でない。
【0068】
反応原料のエチレン、プロピレン等の低級オレフィンには特に制限はない。一般には高純度のものを用いることが好ましいが、メタン、エタン、プロパン等の低級飽和炭化水素が混入していても差し支えない。
【0069】
また、酸素にも特に制限はない。窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形でも供給できるが、反応ガスを循環させる場合には、一般には高濃度の酸素、好適には99%以上の純度の酸素を用いる方が有利である。
【0070】
酢酸アルケニルとして酢酸ビニルを製造する場合、エチレンと酸素と酢酸とを反応させて、酢酸ビニルを製造する際の反応温度に特に制限はない。好ましくは、100〜300℃であり、さらに好ましくは、120℃〜250℃である。また、反応圧力は設備の点から0.0〜3.0MPaGであることが実用上有利であるが、特に制限はない。より好ましくは0.1〜1.5MPaGの範囲である。
【0071】
反応混合ガスは、標準状態において、空間速度10〜15000hr-1、特に300〜8000hr-1で反応器に通すのが好ましい。
【0072】
反応形式としては、特に制限はなく、公知の方法、例えば、固定床、流動床などの形式を採ることができる。好ましくは、耐蝕性を有する反応管に前述の触媒を充填した固定床を採用することが、実用上有利である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例によって何らの限定もされるものではない。
【0074】
実施例1 触媒Aの調製
シリカ球体担体(球体直径5mm、比表面積160m/g、吸水率0.75g/g、上海海源化工科技有限公司のHSV−I)を用い、触媒Aを以下の手順で調製した。
【0075】
工程1−a:担体23g(吸水量19.7g)に、56質量%NaPdCl水溶液1.5g、BaCl・2HO1.95gおよび17質量%HAuCl水溶液1.5gを含む担体吸水量相当の水溶液を含浸した。
【0076】
工程2−a:工程1−aで得られた担体をNaSiO・9HO2.5gを含む、吸水量の2倍量の水溶液に浸漬し、20時間静置した。
【0077】
工程3:工程2−aの水溶液に52質量%ヒドラジン水和物水溶液3.3mlを加え、静かに混合し、室温で4時間静置させた。このパラジウム/金/担体組成物を水洗し、水中に塩化物イオンが無くなるまで洗浄を継続した。洗浄したパラジウム/金/バリウム化合物/担体組成物を、約110℃で4時間乾燥した。
【0078】
工程4:工程3で得られたパラジウム/金/バリウム化合物/担体組成物を1.7質量%酢酸水溶液60mlに浸漬し、一晩静置した。次いで、一晩水洗し、110℃で4時間乾燥した。
【0079】
工程5:工程4で得られたパラジウム/金/バリウム化合物/担体組成物を、2gの酢酸カリウムの担体吸水量相当水溶液に含浸し、110℃で4時間乾燥した。
【0080】
比較例1 触媒Bの調製
工程4を行わなかった以外は実施例1の操作を繰り返して、触媒Bを調製した。
【0081】
比較例2 触媒Cの調製
工程1−aにおいてBaCl・2HOを添加しなかった以外は実施例1の操作を繰り返して、触媒Cを調製した。
【0082】
実施例2 触媒Dの調製
シリカ球体担体(球体直径5mm、比表面積160m/g、吸水率0.75g/g、上海海源化工科技有限公司のHSV−I)を用いて、触媒を以下の手順で調製した。
工程1−b:担体23g(吸水量19.7g)に、56質量%NaPdCl水溶液1.5gおよび17質量%HAuCl水溶液1.5gを含む、担体吸水量相当の水溶液を含浸させた。
【0083】
工程2−b:工程1−bで得られた担体をBa(OH)1.1gを含む、吸水量の2倍量の水溶液に浸漬し、20時間静置した。この場合、Ba(OH)水溶液自体がアルカリ土類金属元素の供給源とアルカリ溶液を兼ねている。
【0084】
工程3:工程2−bの水溶液に52質量%ヒドラジン水和物水溶液3.3mlを加えて静かに混合し、室温で4時間静置させた。このパラジウム/金/担体組成物を水洗水に塩化物イオンが無くなるまで洗浄を継続した。洗浄したパラジウム/金/バリウム化合物/担体組成物を、約110℃で4時間乾燥した。
【0085】
工程4:工程3で得られたパラジウム/金/バリウム化合物担体組成物を1質量%酢酸水溶液60mlに浸漬し、1時間静置した。次いで、一晩水洗し、110℃で4時間乾燥した。
【0086】
工程5:工程4で得られたパラジウム/金/バリウム化合物/担体組成物を、2gの酢酸カリウムの担体吸水量相当の水溶液で含浸させ、110℃で4時間乾燥した。
【0087】
実施例3、4、比較例3、4
触媒A、B、CおよびDをそれぞれ用いて、エチレン、酢酸、酸素および水を原料として酢酸ビニルを製造した。触媒の評価手段、反応方法等を以下に示す。また、触媒の初期活性(酢酸ビニル基準)を表1に示す。
【0088】
酸による洗浄処理を行わなかった触媒Bでは、アルカリ土類金属であるバリウムが過剰に残留し、触媒の初期活性が触媒Aより劣っている。また、触媒Cの結果から、アルカリ土類金属の存在により初期活性が大きくなることがわかる。
【0089】
[触媒の評価]
金属担持量の測定
担持触媒サンプル3gを粉砕し、内径3cmのディスク状にプレスする。このディスクの金属(Ba)量をフィリップス社製蛍光X線分析装置PW2404を用いて測定した。
【0090】
金属表面積の測定
大倉理研株式会社製R6015を用いて、COパルス吸着法により測定した。
【0091】
触媒活性評価試験A
触媒3ccをガラスビーズ75ccで希釈して反応管(SUS316L製、内径22mm、長さ480mm)に充填する。反応温度150℃、反応圧力0.6MPaG、ガス組成C/O/HO/HOAc/N=47.3/6.1/5.6/26.3/14.7(mol%)のガスを流量20nL/hで流通させ、反応を行った。
【0092】
反応器出口ガスの分析を、以下の方法を用いて行った。
【0093】
1.酸素
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属する1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラ−(MGS−4:計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−14(B)
カラム:MS−5A IS 60/80mesh(3mmΦ×3m)
キャリアーガス:ヘリウム(流量20ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が110℃、カラム温度は70℃で一定
検出器:TCD(He圧70kPaG、Current100m(A)
【0094】
2.酢酸
内部標準法を用い、反応液10mlに対して、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液とし、そのうちの0.2μlを注入して以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−14B
カラム:パックドカラムThermon3000(長さ3m、内径0.3mm)
キャリアーガス:窒素(流量20ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が180℃、カラム温度は分析開始から6分間は50℃に保持、その後10℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、150℃に10分間保持
検出器:FID(H圧40kPaG、空気圧100kPaG)
【0095】
3.酢酸ビニル
内部標準法を用い、反応液6gに対して、内部標準として酢酸n−プロピルを1g添加したものを分析液とし、そのうちの0.3μlを注入して以下の条件で分析した。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−9A
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
キャリアーガス:窒素(流量30ml/min.)
温度条件:検出器温度、気化室温度が200℃、カラム温度は分析開始から2分間は45℃に保持、その後4℃/minの昇温速度で130℃まで昇温し、130℃に15分間保持し、その後25℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃に10分間保持
検出器:FID(H圧60kPaG、空気圧100kPaG)
【0096】
【表1】

【0097】
実施例5、比較例5
触媒A(実施例5)および触媒B(比較例5)を用い、エチレン、酢酸、酸素および水を原料として酢酸ビニルを製造し、長時間での触媒寿命を測定した。触媒の評価手段、反応方法は、下記の触媒活性評価試験Bを採用した以外は実施例2と同様にして行った。触媒Bの初期活性を1とした場合の触媒活性の比と反応時間との測定結果を図1に示す。
【0098】
触媒Aの方が触媒活性の低下の度合いも小さいことがわかる。
【0099】
触媒活性評価試験B
触媒5ccを酢酸カリウム40g/Lが担持されたシリカ担体20ccで希釈して反応管に充填する。反応温度150℃、反応圧力0.6MPaG、ガス組成C/O/HO/HOAc/N=60/4/1.3/17/17.7(mol%)のガスを流量45nL/hで流通させ、反応を行った。
【0100】
反応器出口ガスの分析等は、触媒活性評価試験Aと同様の方法を用いて行った。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、酢酸アルケニルの製造に有利に用いることのできる触媒の製造を可能にするので、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例および比較例における長時間連続反応時の触媒Aおよび触媒Bの活性の変化を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなることを特徴とする、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
1−a.担体にパラジウムを含む化合物、第11族元素を含む化合物およびアルカリ土類金属元素を含む化合物を担持する工程
2−a.担体にアルカリ溶液を接触含浸させる工程
3.担体に還元処理を行う工程
4.担体に酸を接触させる工程
5.担体に酢酸塩を担持する工程
【請求項2】
以下の工程からなることを特徴とする、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
1−b.担体にパラジウムを含む化合物および第11族元素を含む化合物を担持する工程
2−b.担体にアルカリ土類金属元素を含む化合物のアルカリ溶液を接触含浸させる工程
3.担体に還元処理を行う工程
4.担体に酸を接触させる工程
5.担体に酢酸塩を担持する工程
【請求項3】
(a)パラジウムおよび/またはパラジウムを含む化合物、(b)第11族元素および/または第11族元素を含む化合物および(c)アルカリ土類金属元素および/またはアルカリ土類金属元素を含む化合物が担持された担体に酸を接触させる工程および担体に酢酸塩を担持する工程を含むことを特徴とする、少なくとも(a)パラジウム、(b)第11族元素、(c)アルカリ土類金属元素、(d)酢酸塩および(e)担体からなる酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【請求項4】
(b)第11族元素が金または銅である、請求項1〜3のいずれかに記載の酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
(c)アルカリ土類金属元素がバリウムおよびカルシウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【請求項6】
担体に接触させる酸が有機酸である、請求項1〜5のいずれかに記載の酢酸アルケニル製造用触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造された触媒を用いることを特徴とする、低級オレフィン、酸素および酢酸を原料とする酢酸アルケニルの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造された触媒を用いることを特徴とする、エチレン、酸素および酢酸を原料とする酢酸ビニルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−86951(P2008−86951A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272772(P2006−272772)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】