説明

酢酸ビニル系重合体エマルジョン及びその選定方法

【解決手段】ポリビニルアルコール及び酢酸ビニルを含む不飽和基含有単量体を用いて得られる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、式(1)で示される安定化指数Zが40以下である酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
【効果】本発明は、接着性に代表される酢酸ビニル系重合体エマルジョンが持つ本来の性能を保持するうえ、低温粘度安定性に優れたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温粘度安定性に優れ、特に、紙加工用として好適に使用される酢酸ビニル系重合体エマルジョン及びその選定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酢酸ビニル系重合体エマルジョンは、従来より接着剤や塗料などの用途に幅広く使用されており、その用途によって多種多様な検討がなされている。例えば、耐水性を改良するために完全ケン化ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコールは、以下PVAと記載することがある。)を使用して、酢酸ビニルとアクリル酸を共重合させることが既に知られている。また、紙管に使用された場合に、低温造膜性を得て紙管強度を大きくするために、可塑剤を使用しない手法(特公昭60−031349号公報:特許文献1)が提案されている。しかしながら、いずれの場合も低温での粘度安定性が悪いという問題があった。
【0003】
低温粘度安定性を改良するため、エチレン性PVAとカルボキシル基含有重合性不飽和単量体の(共)重合体及び/又はアマイド変性PVAとを保護コロイドとして重合すること(特開2001−123138号公報:特許文献2)も提案されている。更に、特開2002−285119号公報(特許文献3)では、炭素数2〜4のα−オレフィン単位を1〜10モル%含有する変性PVA、及びケン化度が80〜95モル%の部分ケン化PVAからなる複合保護コロイドを用いて重合している。
【0004】
シード重合も提案されており、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョンをシードにし、PVAを保護コロイドとして酢酸ビニルを乳化重合する方法(特開平11−092734号公報:特許文献4)、2種以上の異なるシード用樹脂エマルジョンの存在下に、PVAを保護コロイドとして、酢酸ビニルを乳化重合する方法(特開2005−097416号公報:特許文献5)などが提案されている。
【0005】
また、酢酸ビニル単量体に対して塩化第二鉄0.08〜1.2質量部の存在下で、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョンをシードとし、PVAを保護コロイドとして酢酸ビニルを乳化重合する方法(特開2002−060405号公報:特許文献6)も提案されている。
しかしながら、いずれの場合も低温での粘度安定性を改善するには不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特公昭60−031349号公報
【特許文献2】特開2001−123138号公報
【特許文献3】特開2002−285119号公報
【特許文献4】特開平11−092734号公報
【特許文献5】特開2005−097416号公報
【特許文献6】特開2002−060405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低温での粘度安定性に優れた酢酸ビニル系重合体エマルジョン及びその選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために、得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンのポリビニルアルコール(PVA)の使用量、PVAの重合度、蒸発残分及び平均粒子径に着目し、本発明をなすに至った。
即ち、低温での粘度安定性が悪い原因は、乳化安定剤として使用したPVAの水酸基が他のPVA中の水酸基と擬似水素結合を行うためと推測し、PVA中の水酸基同士の距離をコントロールして、擬似水素結合の防止を図れば、低温での粘度が安定すると考えた。本発明者らは、このコントロール技術の因子として、得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンのPVAの使用量、PVAの重合度、蒸発残分及び平均粒子径に着目し、鋭意検討を行った結果、得られたエマルジョンの粒子1個あたりのPVAの分子数をコントロールすることにより、低温で良好な粘度安定性を得ることができることを見出した。この場合、下記に示す安定化指数Z(以下、単にZと記載する。)の式において、(A×100/B)はPVAの分子数に起因する因子であり、(C/D)は粒子数に起因する因子である。よって、Zを40以下にコントロールする条件下で酢酸ビニル系重合体エマルジョンの合成を行えば、低温での粘度安定性が良好な酢酸ビニル系重合体エマルジョンが得られることを見出したものである。
【0009】
即ち、本発明は、
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部を用いてなる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
で示されるZが40以下である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを提供する。
【0010】
また、本発明は、
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部を用いてなる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
で示されるZが40以下である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを紙加工用糊剤として選定することを特徴とする紙加工用糊剤に用いる酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、接着性に代表される酢酸ビニル系重合体エマルジョンが持つ本来の性能を保持するうえ、低温粘度安定性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の酢酸ビニル系重合体エマルジョンは、
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部を用いてなる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが不飽和基含有単量体群の総量100質量部に対して5〜35質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
で示されるZが5以上40以下、好ましくは33以下、更に好ましくは20以下となる酢酸ビニル系重合体エマルジョンである。
【0013】
Zが40を超えると、得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンの低温粘度安定性及び初期接着性が悪くなる。
【0014】
PVAの使用量は、不飽和基含有単量体群総量100質量部に対して5〜35質量部が好ましく、10〜30質量部が更に好ましい。5質量部未満の場合も35質量部を超える場合も、接着性のあるエマルジョンが得られない場合がある。
【0015】
PVAの重合度は1000〜3500が好ましく、1500〜2600が更に好ましい。1000未満であると得られるエマルジョンの接着性が低下するといった場合があり、3500を超えると製造安定性が悪くなる場合がある。また、蒸発残分40質量%以下であっても、PVAの重合度が1000未満であると、PVAの分子数が多くなり、低温時の粘度上昇抑制効果を十分に得られなくなる場合がある。
【0016】
蒸発残分は10〜40質量%が好ましく、20〜35質量%が更に好ましい。10質量%未満であると十分な低温造膜性が得られない場合があり、40質量%を超えるとPVAの水酸基どうしの距離を制御することが困難となり、低温時の粘度上昇抑制効果を十分に得られなくなる場合がある。
従来の酢酸ビニル系重合体エマルジョンの蒸発残分は、ほとんどが40%を超えていた。これは、エマルジョン中の水を効率よく蒸発させるために、蒸発残分を高くする必要があったためである。水の蒸発速度が遅いと、乾燥速度が遅くなり、生産性が悪くなると考えていたからである。ところが、この考え方では、エマルジョン粒子1個当たりのPVAをコントロールする、即ち、PVAの水酸基どうしの距離を制御することができなかった。
本発明者らの制御技術によって、初めてPVAの水酸基どうしの距離を制御でき、低温での粘度安定性が良好な酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得ることができるのである。
【0017】
なお、蒸発残分は下記のとおりである。
酢酸ビニル系重合体エマルジョン約1gをアルミ箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ、1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出する。
【0018】
【数1】

R:蒸発残分(%)
W:乾燥前の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
L:アルミ箔皿の質量(g)
T:乾燥後の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
アルミ箔皿の寸法:70φ×12h(mm)
【0019】
平均粒子径は500〜2000nmが好ましく、800〜1600nmが更に好ましい。500nm未満であると接着性のあるエマルジョンが得られない場合があり、2000nmを超えるとエマルジョン粒子が沈降する場合がある。
【0020】
本発明の酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得るためには、乳化重合で合成することが一般的である。重合に用いられるPVAとしては、特に限定されるものではなく、また、使用種類数も特に限定されず、1種又は2種以上が使用される。
【0021】
また、原料の単量体としては、ラジカル重合能を有する不飽和基含有単量体を使用する。
【0022】
ここで、使用する不飽和基含有単量体としては、
イ)酢酸ビニル単量体は60〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体は0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜3質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体は0質量%を含む残部
である。
【0023】
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジブチル等のエチレン性不飽和ポリカルボン酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸類、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和ポリカルボン酸類、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体類、N−メチロールアクリルアミド等のメチロール基含有単量体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール性水酸基含有単量体類、メトキシエチルアクリレート等のアルコキシル基含有単量体類、アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体類、アクリルアミド等のアミド基含有単量体類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有単量体類、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート等の一分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体類等が挙げられる。
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有単量体類、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類が挙げられる。
【0024】
上記乳化重合には、公知のあらゆる乳化重合法を採用することができる。単量体及びその他の重合助剤(例えば、アルキル硫酸エステル塩等の乳化剤、過硫酸アンモニウム等の重合開始剤、メルカプタン類等の連鎖移動剤、炭酸ソーダ等のpH調整剤、各種消泡剤他)を初期に一括添加してもよいし、連続的に添加してもよいし、その一部を重合中に連続又は分割して添加してもよい。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、ノニオン系界面活性剤をPVAと併用することもできる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、又はアセチレンアルコール、アセチレングリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物等の界面活性剤である。
【0026】
上記乳化重合に用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、2,2’−ジアミジノ−2,2’−アゾプロパンジ塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物、酒石酸等が挙げられる。また、公知のレドックス系開始剤、例えば過硫酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウム等も挙げられる。重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、通常は0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%である。
【0027】
上記乳化重合を行う重合温度は、通常は10〜90℃、望ましくは50〜85℃である。重合時間は3〜20時間である。この重合は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気中で行うのが望ましい。
【0028】
また、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョンや酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン等をシードとして、重合を行っても構わない。
【0029】
ここで、上記Zが40以下である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得るには、PVAとして上記重合度Bのものを上記使用量Aで用い、イオン交換水量等を制御して、重合における蒸発残分Cをコントロールしながら得られる。
【0030】
なお、重合終了後に可塑剤、無機もしくは有機充填剤、増粘剤、有機溶剤等を本発明の酢酸ビニル系重合体エマルジョンの性能を損なわない範囲で添加することもできる。
【0031】
紙管の一例として挙げられるスパイラル紙管は、ロール状の紙に接着剤を塗布しながら、マンドレルといわれる金属シャフトにらせん状に紙を何層にも巻きつけて生産する。紙を巻いていくマンドレルのサイズが紙管の内径となり、紙を何層巻くかによって肉厚が決まる。
ロール状の紙へ接着剤を塗布する際、特に低温時(冬季)に糊剤の粘度が上昇すると、コンテナからの紙管生産装置までの供給量が減少したり、また、供給できたとしても高粘度のために紙への塗布量が減少してしまい、紙管強度が極端に弱くなる不具合が生じる場合がある。紙管の生産速度が高速化してきている昨今では、特にこの傾向は顕著である。本発明の酢酸ビニル系重合体エマルジョンは、紙加工用に選択された酢酸ビニルエマルジョンとして糊剤(接着剤)等に用いることにより、上述したような不具合がなく、高速化にも充分対応するものである。
【実施例】
【0032】
以下、製造例と実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0033】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計を取り付けた3Lガラス製容器を用意し、ガラス製容器にイオン交換水173部、ポリビニルアルコールJF−17(日本酢ビポバール社製、ケン化度98.5、重合度1700)を5部入れ、窒素で空気置換を充分行った後、撹拌を開始した。
ガラス製容器の内温を80℃まで上昇させ、酢酸ビニルモノマー100部及び10%過酸化水素水1部と10%酒石酸水溶液1.5部を、それぞれ4時間連続追加した。その後、80℃で1時間反応させ、30℃まで冷却した。重合後、CS−12を12部添加した。
蒸発残分40.0%で、平均粒子径が1030nmの酢酸ビニル系重合体エマルジョンが得られた。
【0034】
[実施例2〜4、6〜9、比較例2〜6]
表1に示したような組成で、実施例1と同様の乳化重合を実施して、各酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得た。ただし、ガラス製容器に初期に入れるイオン交換水は下記のとおりである。
実施例2:267部 比較例2:192部
実施例3:222部 比較例3:133部
実施例4:336部 比較例4:743部
実施例6:204部 比較例5:472部
実施例7:225部 比較例6:986部
実施例8:201部
実施例9:207部
【0035】
[実施例5]
表1に示したような組成で、ガラス製容器にイオン交換水430部、PVAとともにシードとしてスミカフレックス400HQ(住友化学社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、蒸発残分55%)を36.4部入れ、実施例1と同様に乳化重合を実施して、酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得た。
【0036】
[比較例1]
表1に示したような組成で、ガラス製容器にイオン交換水255部、PVAとともにシードとしてスミカフレックス400HQ(住友化学社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、蒸発残分55%)を36.4部入れ、実施例1と同様に乳化重合を実施して、酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得た。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
PVA
JF−17 :日本酢ビポバール社製、ケン化度98.5、重合度1700
JM−17L :日本酢ビポバール社製、ケン化度96.0、重合度1700
JM−26 :日本酢ビポバール社製、ケン化度96.5、重合度2600
JP−05 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度 500
JP−10 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度1000
JP−18 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度1800
JP−33 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度3300
PVA−420:クラレ社製、ケン化度79.5、重合度2000
【0040】
CS−12:チッソ社製
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
H−4644:第一工業製薬社製
エチレングリコールモノフェニルエーテル
スミカフレックス400HQ:シードエマルジョン
住友化学社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン
【0041】
<PVAの重合度>
JIS K6726に準拠。
PVAは一般に下記式で表される。
(CH2CHOH)l(CH2CHOCOCH3m
重合度は、上記式のl+mである。
【0042】
<平均粒子径測定>
レーザー粒径解析装置(大塚電子社製粒子径測定機PAR−III)により下記条件にて測定した。
[測定条件]
測定温度 25±1℃
溶媒 イオン交換水
積算回数 100回
散乱強度 10000±2000cps
【0043】
<蒸発残分測定>
試料約1gをアルミ箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出した。
【数2】

R:蒸発残分(%)
W:乾燥前の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
L:アルミ箔皿の質量(g)
T:乾燥後の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
アルミ箔皿の寸法:70φ×12h(mm)
【0044】
<低温粘度安定性>
5℃の環境下で1週間毎の粘度をBH型粘度計にて測定した。
(No.2 ローター、20rpm)
【0045】
<初期接着性>
クラフト紙にエマルジョンを36g/m2で塗布し、クラフト紙をローラーで圧着して貼り合せ、紙が材料破壊を起こすまでの時間(秒)を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部を用いてなる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)で示される安定化指数Zが40以下である酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
【請求項2】
式(1)のBが1500〜2600である請求項1記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
【請求項3】
紙加工用である請求項1又は2記載の酢酸ビニル重合体エマルジョン。
【請求項4】
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部を用いてなる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)で示される安定化指数Zが40以下である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを紙加工用糊剤として選定することを特徴とする紙加工用糊剤に用いる酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法。
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
【請求項5】
式(1)のBが1500〜2600である請求項4記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法。

【公開番号】特開2010−116540(P2010−116540A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211582(P2009−211582)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】