酵素の再利用方法
【課題】セルロースの糖化分解において、酵素活性を低下させることなく、また、酵素を再利用することにより酵素の使用量を減少させる方法を提供する。
【解決手段】セルロースの糖化分解において、好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼ活性を示す領域とセルロースに結合可能なモジュールとを含むキメラβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを併用し、セルロースの糖化分解反応終了時にセルロース系基質を添加し、キメラβ−グルコシダーゼ及びセルロソームをセルロース系基質に吸着させて分離する。
【解決手段】セルロースの糖化分解において、好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼ活性を示す領域とセルロースに結合可能なモジュールとを含むキメラβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを併用し、セルロースの糖化分解反応終了時にセルロース系基質を添加し、キメラβ−グルコシダーゼ及びセルロソームをセルロース系基質に吸着させて分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を利用した基質の変換反応において、反応終了後の反応溶液から酵素を回収して再利用するリサイクル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バガス、稲わら、籾殻、キノコ廃床、堆肥、木材チップ等のセルロース系バイオマスが食糧生産を圧迫しないエネルギーや化学工業の原料資源として注目されている。特に、セルロース系バイオマスの燃料エタノールへの変換においては、発酵原料を効率良く糖化する技術が切望されている。
【0003】
しかし、セルロース系バイオマスはでん粉に比べて糖化技術の難易度が高い。これは、セルロース系バイオマスの構成主体であるセルロースが堅固な結晶構造を持つ難分解性の高分子多糖であることによる。
【0004】
セルロース系バイオマスの糖化方法には、物理的糖化、化学的糖化及び酵素糖化の3つの方法がある。
【0005】
物理的糖化処理はボールミルや振動ミル又は蒸煮爆砕や加圧熱水処理など物理的に糖化を施す処理があるが、物理的な処理は多大なエネルギーを必要とするため、化学的糖化や酵素糖化の前処理として併用されることが多い。
化学的糖化処理は、アルカリ、酸を利用するものがあるが、古くより酸糖化がよく用いられている。酸糖化には濃硫酸糖化法と希硫酸二段糖化法とがあるが、何れも硫酸を用いるため、廃棄物処理や環境負荷の低減を必要とし、低コスト化及びエネルギー変換効率に限界があるといわれている。
【0006】
酵素糖化は、酸糖化に比べ、廃液回収や処理の負担が軽く、耐薬設備等の設備コストを低減できること、過分解が起こらずに糖の収率が高い等の利点があるため、澱粉質を多く含むバイオマスの酵素糖化で実用化されている。ところが、セルロース系バイオマスは、前述したように、セルロースが結晶構造を有していること及び結晶性セルロースをヘミセルロースやリグニンが取り囲んだ複雑な構造を有しているため、でん粉系に比べ、酵素糖化がきわめて困難である。したがって、酵素による糖化処理前に、物理的あるいは化学的前処理による結晶構造の破壊等の前処理や大量のヘミセルラーゼやセルラーゼを併用しているのが現状である。
【0007】
ヘミセルラーゼやセルラーゼに関しては好気性糸状菌トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来の糖化酵素が工業的に使用されているため、セルロース系バイオマスの糖化においても、トリコデルマ属菌の研究が活発に行われてきた(特許文献1参照)。
【0008】
近年、ある種の嫌気性微生物が、セルロースを効率よく分解できる酵素複合体セルロソーム(Cellulosome)を生産することが明らかとなった。
【0009】
セルロソームは、骨格となるタンパク質をベースに多数の高分子多糖分解酵素が結合した構造を有し、これらの複数の酵素が共同してセルロースに作用することで、非常に高い高分子多糖の分解活性を示すことが解明されている(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−319040号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Microbiol Mol Biol Rev. 2005 Mar;69(1):124−54
【非特許文献2】Biochem J. 2004 Sep 15;382(Pt 3):769−81.
【非特許文献3】Johnson EA, Sakajoh M, Halliwell G, Media A, Demain AL (1982) Saccharification of complex cellulosic substrates by the cellulase system from Clostridium thermocellum. Appl. Environ. Microbiol 43:1125−1132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
トリコデルマ・リーセイ由来の酵素は、基質の分解速度が遅いため、実用化に際し、大量の酵素を必要とすることが指摘されている。
【0013】
セルロソームは、高分子多糖の最終産物であるセロビオースの蓄積により酵素活性が阻害されるため、反応後期に糖化効率が低下するという問題がある。
【0014】
本発明は、セルロースの糖化分解において、酵素活性を低下させることなく、また、酵素を再利用することにより酵素の使用量を減少させることを目的とする。
本発明は、また、セルロースの糖化分解において繰り返し利用することが可能な酵素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らはセルロソームがセルロース結合モジュールを有することに着目し、鋭意研究を行ったところ、セルロース結合モジュールを融合させたセルロソームを有する酵素をセルロースに結合させることで、酵素を反応系から容易に分離でき、かつ酵素活性を低下させることなく分離した酵素を再利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の酵素の再利用方法は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合した酵素を再利用することを特徴とする。
本発明の酵素は、β−グルコシダーゼ活性を示す領域とセルロースに結合可能なモジュールとを含むβ−グルコシダーゼ及びキメラβ−グルコシダーゼである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により、酵素反応系に存在する酵素が反応系外に排除されることが少なくなるため、効率的に酵素を分離回収することが可能となる。したがって、再利用するたびに新たに酵素を添加する必要がなく、酵素の使用量を減少させることが可能となる。特に、酵素反応系に複数種類の酵素が存在する場合、セルロース系基質に酵素が結合するため、複数種類の酵素を一括して分離することができるので、再利用にあたり、特定の酵素活性だけが失われることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う実施形態1の酵素の再利用方法のフロー図である。
【図2】実施形態2の酵素の再利用方法のフロー図である。
【図3】クロストリジウム・サーモセラムJK−S14からのセルロソームとサーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075からのβ−グルコシダーゼ(CglT)併用によるアビセル分解能への影響を示す図である。
【図4】アビセルに対するセルロソームとCglT併用によるリサイクル糖化法の工程を示す図である。
【図5】セルロソームとCglT併用リサイクル糖化反応によるラウンドごとのアビセル分解率を示す図である。
【図6】セルロース結合モジュール融合キメラβ−グルコシダーゼ(CBM−CglT及びCglT−CBM)とセルロソーム併用によるアビセル分解能への影響を示す図である。
【図7】セルロソームとCBM−CglT併用によるリサイクル糖化反応によるラウンドごとのアビセル分解効率を示す図である。
【図8】リグノセルロース系バイオマスを用いる際のセルロソームとCBM−CglT併用によるリサイクル糖化法の工程を示す図である。
【図9】アンモニア浸漬処理稲わら及び、各ブロッキング処理を行ったアンモニア浸漬処理稲わらに対するリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図10】ブロッキング処理リグノセルロース系バイオマスを用いる際のセルロソームとCBM−CglT併用によるリサイクル糖化法の工程を示す図である。
【図11A】ブロッキング処理を行った稲わらを用いたリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図11B】ブロッキング処理を行った杉パルプを用いたリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図11C】ブロッキング処理を行った使用済みオフィス紙を用いたリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図12】残渣を残したままでのカゼインでブロッキングしたアンモニア浸漬した稲わらを用いた際のセルロース分解率を示す図である。
【図13】市販カビセルラーゼとカビβ−グルコシダーゼを併用した稲わらのリサイクル糖化の効果を示す図である。
【図14】セルロソーム及びβ−グルコシダーゼ(CBM−CglT)にブロッキング剤を添加したリサイクル糖化の結果を示す図である。
【図15】セルロソーム酵素反応系にDTTを含むリサイクル糖化の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を幾つかの実施の形態並びに実施例に基づいて詳細に説明する。
【0020】
[実施形態1]
本実施形態1は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合した酵素を再利用する方法である。
【0021】
詳細には、本実施形態は、図1に示すように、セルロースに結合可能なモジュール(Carbohydorate Binding Module、以下、CBMと略記する。)を有する酵素(以下、CBMを有する酵素という。)と酵素特異的な基質との酵素反応液にセルロース系の基質を添加し、CBMをセルロース系の基質に結合させた後、酵素反応液からCBMを分離し、分離されたCBMに酵素特異的な基質を加える操作を繰り返し行う、酵素の再利用方法である。
【0022】
言い換えるならば、本実施形態のCBMを有する酵素を再利用する方法は、CBMを有する酵素と酵素特異的な基質との酵素反応液にセルロース系の基質を加え、セルロース系の基質にCBMを有する酵素を結合させる第一ステップと、CBMを有する酵素を酵素反応液から分離する第二ステップと、分離したCBMを有する酵素に酵素特異的な基質を加えて反応させる第三ステップとからなり、第一ステップから第三ステップを繰り返すことにより、CBMを有する酵素を再利用するものである。
【0023】
CBMとは、セルロース結合モジュール(Carbohydorate Binding Module)を意味し、非特許文献2に記載されるように、疎水的結合、静電的結合、水素結合、又はカルシウムやマグネシウムなど無機のカチオンを介して生化学的に多糖質、セルロース又はヘミセルロースへ結合できるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指している。したがって、CBMを有する酵素とは、CBMを酵素のアミノ酸配列中に含む酵素である。
【0024】
セルロソームはセルラーゼ複合体であって、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ジョースイ(Clostridium josui)、クロストリジウム・アセトブティリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・セロビオパルム(Clostridium cellobioparum)、クロストリジウム・パピロソルベンス(Clostridium papyrosolvens)、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)、ルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)、アセトビブリオ・セルロリティクス(Acetivibrio cellulolyticus)、バクテロイディス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)に属する菌等が産生することが知られている。上記セルロソーム生産菌の天然由来のグルコシダーゼにおいて、セルロースに結合するCBMのような領域が存在することは知られていない。
【0025】
つまり、CBMを有する酵素とは、CBMのアミノ酸配列を含む様々な酵素活性を有する酵素であって、遺伝子組み換えによりCBMが結合されたキメラ酵素を含むものである。酵素の酵素活性は、特に限定されるものでなく、セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、アミラーゼ活性、グルコシダーゼ活性等、様々な機能を有するものであってよい。
【0026】
CMBのアミノ酸配列の例として、配列表番号1にクロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE BP−627)株CBMのアミノ酸配列を示すが、これに限定されるものではない。例えば、カルボハイドレイト・アクティブエンザイムデータベース(Carbohydrate−Active enZYmes Database:http://www.cazy.org/)から糖質結合モジュールファミリー分類(Carbohydrate−Binding Module family classification)に属するCBMを用いることができる。好ましくは、そのモジュールファミリー分類表の中でもファミリー3に属するCBMが良い。
【0027】
CBMを有するキメラ酵素は、セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、アミラーゼ活性、グルコシダーゼ活性等、様々な機能の少なくとも1つを備える酵素であって、天然由来の酵素の遺伝配列のC末端又はN末端又は中央部分等、いかなる部分にもCBMをコードする遺伝子を融合した遺伝子を含む形質転換体を培養して得ることができる。
【0028】
CBMをコードした遺伝子は、例えば、セルロソームを生産するクロストリジウム属微生物として、先に述べたクロストリジウム・サーモセラムやクロストリジウム・セルロボランスから得ることができる。配列番号2にクロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE BP−627)株CBMのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を示す。CBMのアミノ酸配列同様、CBMのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、配列表番号2の遺伝子酸配列に限定されるものではない。
【0029】
CBMを有する酵素は、酵素反応系に供給されたセルロース系基質に結合する。セルロース系基質は、水不溶性であるため、CBMを有する酵素は、水不溶性物質に固定されることになる。次いで、反応生成物とセルロース系基質に結合した酵素とを分離する。CBMを有する酵素は、水不溶性物質に固定化されるので、固液分離等の簡易な手段で容易に酵素反応系から効率よく回収することができる。そして、分離して得られたセルロース系基質に結合したCBMを有する酵素に新たな酵素特異的な基質を加えることで、CBMを有する酵素を繰り返し再利用することが可能となる。
【0030】
酵素特異的な基質がセルロース系基質と同じである反応系においては、セルロース系基質が糖類に分解されるため、反応が終了する都度、セルロース系基質を酵素反応系に酵素供給して、CBMを有する酵素をセルロース系基質に結合させる。なお、反応系に残渣がある場合には、セルロース系基質を供給する前に残渣を除去しておくことが望ましい。
【0031】
酵素特異的な基質とセルロース系基質とが異なる物質である場合には、酵素反応を効率よく行うために、セルロソーム又はセルラーゼ等のセルロース分解酵素を酵素反応系に存在させてもよい。セルロース分解酵素とCBMを有する酵素とを併用する場合には、反応が終了する都度、セルロース系基質を酵素反応系に供給する必要がある。
【0032】
このようにして、酵素反応系からCBMを有する酵素を分離して再使用することで、新たな酵素を酵素反応系に追加する必要が無くなる。
【0033】
なお、セルロースに結合可能なモジュールを有する様々な活性をもった酵素を複数酵素反応系に存在させてもよい。すなわち、酵素反応系に存在する複数の酵素をセルロース系基質に結合させて、酵素反応液から分離することで、複数の酵素を再利用することが可能となる。
【0034】
[実施形態2]
本実施形態2は、セルロソームとCBMを有するβ−グルコシダーゼとを用いた、両酵素の再利用方法である。実施形態1とは、CBMを有する酵素をセルロソームとCBMを有するβ−グルコシダーゼとを含む2種類の酵素に特定した点で相違する。
【0035】
セルロース系のバイオマスをセルロソームにより糖化する場合、セルロソームは、その最終産物であるセロビオースにより酵素活性が阻害され、セルロース系バイオマスを効率よくセロビオース又はオリゴ糖へ分解することができないことが知られている。
【0036】
本発明者らがセルロース系バイオマスのセルロソームを用いた糖化反応において、セロビオースを酵素反応系から除去するために、β−グルコシダーゼを併存させたところ、最初はセルロース分解効率が改善されていても、繰り返し利用するとセルロース分解効率が低下してしまうことを見出した。この原因は、再利用を繰り返すことにより、好熱嫌気性細菌由来のβ−グルコシダーゼが失われるためと考えられた。
【0037】
そこで、セルロソームとβ−グルコシダーゼとを併用する場合の酵素反応効率の低下を抑制するために、CBMをβ−グルコシダーゼのC末端又はN末端に融合したキメラβ−グルコシダーゼを用いたところ、繰り返し利用によってもセルロース分解効率は低下しないことを見出した。
【0038】
すなわち、本実施形態の方法は、セルロース系の基質とCBMを有するβ−グルコシダーゼとセルロソームとを含有する酵素反応液にセルロース系の基質を加えて、CBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームをセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを反応系から分離して、基質に結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを再利用することを特徴とする。
【0039】
図2に本実施形態の酵素の再利用方法のフローを示す。
すなわち、本実施形態の酵素の再利用方法においては、セルロース系の基質と、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとを含有する酵素反応液にセルロース系の基質を加え、セルロース系の基質にセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを結合させる第一ステップと、セルロース系の基質に結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを分離する第二ステップと、分離したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームにセルロース系の基質を加えて反応させる第三ステップとを含み、第一ステップから第三ステップを繰り返すことで、β−グルコシダーゼ及びセルロソームを再利用するものである。
【0040】
セルロソームは、クロストリジウム属菌が産生するものであり、例えば、クロストリジウム・サーモセラムやクロストリジウム・セルロボランスに属する菌が産生するものを用いることができる。
【0041】
本発明で使用するβ−グルコシダーゼは、一般的に酵素番号3.2.1.21(EC3.2.1.21)に定義されるセロビオースをグルコース2分子へ変換可能な酵素の触媒を有する酵素を意味する。
【0042】
CBMを有するβ−グルコシダーゼとは、CBMを融合したキメラβ−グルコシダーゼである。β−グルコシダーゼはカビ由来の酵素でもよいが、好ましくは好熱性細菌由来の酵素が望ましい。カビ由来のβ−グルコシダーゼを用いた場合、再利用の回数が好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼに比べ減少するからである。
【0043】
β−グルコシダーゼとしては、使用するセルロソームの反応条件に近似し、グルコシダーゼ活性も持っているものであればいかなる生物由来のものを使用してもよい。例えば、クロストリジウム・サーモセラム由来のセルロソームを使用する場合、至適温度が50℃〜80℃、至適pHが、5〜9の範囲で活性を有しているβ−グルコシダーゼと共に反応させることが考えられる。
【0044】
利用可能なβ−グルコシダーゼは、微生物由来のアミノ酸配列を有するものが好ましい。使用するセルロソームの反応条件にも依存するが、クロストリジウム・サーモセラムからのセルロソームを使用する場合は、特に好熱性細菌由来のβ‐グルコシダーゼを用いることが好ましい。具体的な例を上げれば、好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼとしては、Acidothermus、Caldicellulosiruptor、Clostridium、Geobacillus、Thermobifida、Thermoanaerobacter、Thermobispora、Thermodesulfovibrio、Thermomicrobium、Thermomonospora、Thermosipho、Thermotoga、Thermus、Tolumonas、Treponema、Aciduliprofundum、Caldivirga、Desulfurococcus、Picrophilus、Pyrobaculum、Pyrococcus、Staphylothermus、Sulfolobus、Thermococcus、Thermofilum、Thermoplasma、Thermoproteus、Thermosphaera、Thermosphaera属由来のものを用いることができる。この他にもファミリー1、3、9、30、116に属する酵素を生産する菌であれば用いることが可能である。
【0045】
なお、β−グルコシダーゼとしては、上記以外の酵素として、カルボハイドレイト・アクティブエンザイム・データベース(Carbohydrate−Active enZYmes Database:http://www.cazy.org/)に記載の糖質分解酵素ファミリー分類(Glycoside Hydrolase family classification)に記載のある分類ファミリー1、3、9、30、116に属するタンパク質を用いることが可能である。
【0046】
なお、β−グルコシダーゼは、上述した微生物由来のアミノ酸配列に限定されるものではなく、微生物由来のアミノ酸配列と60%程度のホモロジーがあるものを用いることができる。遺伝子組み換えの分野において、同一の機能を有するタンパク質となることが一般的に知られており、配列番号1と60%程度のホモロジーを有するアミノ酸配列は本発明の範囲に含まれるものである。
【0047】
好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼと融合するCBMは、併用するセルロソームのCBMと同じアミノ酸配列のものを用いるのが好ましい。これは、同じアミノ酸配列のCBMとすることで、セルロースとβ−グルコシダーゼのセルロースへの結合挙動が同じになり、両酵素の反応系からの分離が容易になるからである。
【0048】
なお、セルロソーム及びセルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼ以外にも、セルロースに結合可能なモジュールを有し、様々な活性を有する酵素を複数酵素反応系に存在させてもよい。
酵素反応系に存在する複数の酵素をセルロース系基質に結合させて、酵素反応液からセルロース系基質に結合した酵素を分離する。セルロース系基質に結合した酵素の糖化効率は低下することなく繰り返し利用することができるので、複数の酵素を再利用することが可能となる。
【0049】
嫌気性菌由来の酵素であるセルロソームに関し、ジチオトレイトール(DTT)や2−メルカプトエタノールなどの還元剤を反応系に存在させることが知られている(非特許文献3)。本実施形態の方法において、セルロース系の基質にセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを反応するうえにおいて、還元剤を存在させてもよいが、酵素を繰り返し使うと糖化効率が低下することがある。したがって、還元剤は反応系に存在させないほうが好ましい。
【0050】
[実施形態3]
本実施形態3は、セルロース系の基質がリグニンを含むセルロース系バイオマスである点で、実施形態2と異なる。
【0051】
すなわち、本実施形態の方法は、リグニンを含むセルロース系バイオマスと、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとの酵素反応液にリグニンを含むセルロース系バイオマスを加えてCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを、リグニンを含むセルロース系バイオマスに結合させて反応させ、反応系からセルロース系バイオマスに結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを分離して、セルロース系バイオマスに結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを繰り返し利用することを特徴とする。
【0052】
言い換えれば、本実施形態の酵素の再利用方法においては、リグニンを含むセルロース系バイオマスと、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとの酵素反応液にリグニンを含むセルロース系バイオマスを加え、リグニンを含むセルロース系バイオマスにセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを結合及び反応させる第一ステップと、リグニンを含むセルロース系バイオマスに結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを反応系から分離する第二ステップと、分離したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームにリグニンを含むセルロース系バイオマスを加えて反応させる第三ステップと、を含み、第一ステップから第三ステップを繰り返すことで、β−グルコシダーゼ及びセルロソームを再利用するものである。
【0053】
ここで、リグニンを含むセルロース系バイオマスは、事前に前処理としてアンモニア浸漬処理を行っておくことが好ましく、さらに、アンモニア浸漬処理後にタンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤でブロッキング処理を行っておくことが望ましい。ブロッキング処理とは、リグノセルロース系バイオマスの酸不溶な部位をコーティングする処理であり、アンモニア浸漬処理後のセルロース系のバイオマスをブロッキング剤に浸漬すればよい。具体的なブロッキング剤は、タンパク質としてスキムミルク又はカゼイン、界面活性剤は、Tween20又はTween80に代表される非イオン性界面活性剤が好ましい。ブロッキング処理により植物細胞壁が有するリグニン及びリグニン−ヘミセルロース複合体、リグニン−無機物複合体等、セルロース及びヘミセルロース以外の疎水性基等の反応基とタンパク質との非特異的吸着が抑制されると考えられる。
【0054】
本実施形態の方法において、セルロース系の基質にセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを結合させる反応、すなわち第一ステップ及び第三ステップにおいて、還元剤を存在させてもよいが、酵素を繰り返し使うと糖化効率が低下することがある。したがって、還元剤は反応系に存在させないほうが好ましい。
【0055】
また、リグニンを含むセルロース系バイオマスと、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとの酵素反応液にリグニンを含むセルロース系バイオマスを加える前に、酵素反応の残渣を除去しておくことが好ましい。残渣の除去により、再利用回数を増やすことができる。
【0056】
[実施形態4]
本実施形態4は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をタンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤の存在下で、セルロース系の基質と結合及び/又は反応させる、酵素の再利用方法である。
ブロッキング剤は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素とセルロース系の基質との反応系に存在していればよいが、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質と反応させる前にブロッキング剤と接触させておくことが好ましい。接触は、例えば、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素を含む溶液にブロッキング剤を添加すればよい。
【0057】
具体的には、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素を含む溶液にブロッキング剤を添加した後、セルロース系の基質を加え、セルロース系の基質にCBMを有する酵素を結合させる第一ステップと、CBMを有する酵素を酵素反応液から分離する第二ステップと、分離したCBMを有する酵素に酵素特異的な基質を加えて反応させる第三ステップと、からなり、第一ステップから第三ステップを繰り返すことにより、CBMを有する酵素を再利用するものである。
【0058】
セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素を、セルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼとし、セルロース系の基質及びCBMを有する酵素に酵素特異的な基質を、リグニンを含むセルロース系バイオマスとする場合、反応系に還元剤を存在させてもよいが、酵素を繰り返し使うと糖化効率が低下することがあるので、還元剤を反応系に存在させないほうが好ましい。
【0059】
また、この場合、セルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを含む溶液にブロッキング剤を添加してから、リグニンを含むセルロース系の基質を添加し、酵素と基質とを結合及び/又は反応させることが好ましい。
【0060】
さらに、実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
前述したように、セルロソームは、酵素反応の最終産物であるセロビオースによって、酵素反応が阻害されてしまう。セルロソームの糖化能力を発揮させるためには、セロビオースを反応系から除去する必要がある。そこで、セロビオースをグルコースへ分解可能な酵素β−グルコシダーゼをセルロソームと併存させて、微結晶セルロース(シグマセルタイプ20)の分解能を比較した。
【0062】
β−グルコシダーゼとして、以下の2つの酵素を準備した。
(1)市販のアスペルギルス・ニガー由来酵素(シグマ−アルドリッチ社製)。
(2)好熱嫌気性細菌であるサーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075(Thermoanaerobacter brockii)(アメリカンタイプカルチャーコレクション)のβ−グルコシダーゼをもとにした組換えβ−グルコシダーゼ(以下、CglTという)。
【0063】
[CglTの作成]
サーモアナエロバクター・ブロッキからのゲノムDNAは、以下の手順により抽出した。0.5%セロビオースを含むBM7CO−CB液体培地を用いてサーモアナエロバクター・ブロッキを培養後、4℃にて10,000回転で5分間、遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体を溶菌させるために、10%SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)を最終濃度が0.5%になるように添加するとともに、プロテナーゼK(1mg/ml)溶液が5μg/mlになるように加え、37℃で1時間反応させた。さらに10%臭化セチルトリメチルアンモニウム−0.7M塩化ナトリウム溶液を1%濃度になるように加え、65℃で10分間反応させた後、等量のクロロフォルム・イソアミルアルコール溶液を加えよく攪拌し、15,000回転、5分間遠心分離にて水層を得た。
【0064】
この水層にフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール混液を等量加え、攪拌して再度15,000回転、5分間遠心分離にて水層を得た。この水層に対し0.6倍容量のイソプロパノールを加えてゲノムDNAを析出させ、再度遠心分離によりゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを70%エタノールで洗浄、乾燥した。
【0065】
なおBM7CO−CB培地の組成は、リン酸二水素カリウム1.5g/L、 リン酸水素二カリウム2.9g/L、 尿素2.1g/L、 酵母エキス 6.0g/L、 炭酸ナトリウム4g/L、システイン塩酸塩0.05g/L、0.2 mlミネラル溶液(MgCl2・6H2O、 5g、CaCl2・2H2O、 0.75g、 FeSO4・6H2O、 0.0063gを水4mlに溶解)として調製した。また、培地に炭素源としてセロビオースを5g/Lになるように加えた。最終的な培地のpHは7.0前後に調製した。
【0066】
CglTは、上記調製したゲノムDNAを用い、オリゴヌクレオチドプライマーCglTF(配列番号3:5´−CGCGGATCCGGCAAAATTTCCAAGAGAT−3´)及び、CglTR(配列番号4に示す:5´−ATTGCTCAGCATCTTCGATACCATCATC−3´)をデザイン、合成し、PCRにより約1.4キロベース長の二本鎖増幅DNA配列を得た。増幅したCglT遺伝子配列を配列番号5に示す。
【0067】
デザインしたオリゴヌクレオチドプライマーCglTF及びCglTRは、大腸菌発現ベクターに挿入するため、制限酵素サイトBamHI及びBpu1102サイトを付加してある。なお、サーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075のβ−グルコシダーゼCglT遺伝子配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(NBIC)のホームページ(http://www.Ncbi.nlm.nih.gov/)を通じ、遺伝子配列を取得することができる(GenBankアクセッション番号;CAA91220.1)。
【0068】
PCRは、ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)により16srRNA遺伝子の増幅を行った。PCRの条件は98℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間、を30サイクルの条件において増幅を行なった。
【0069】
PCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動で増幅されたバンドを確認後、キアゲンPCR精製キット(キアゲン社製)を用い精製した。精製したPCR産物はBamHI(タカラバイオ社製)及びBpu1102(タカラバイオ社製)を用い、37℃で一晩、制限酵素処理を行った。
【0070】
制限酵素処理済みPCR産物は再度0.8%アガロースゲル電気泳動により制限酵素分解産物と分離し、ゲルから目的のバンドを切り出し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)により精製した。
【0071】
CglT遺伝子を大腸菌において発現させるため、pET19b発現ベクター(メルク社製)も使用した。本ベクターは発現させたい目的のタンパク質のN末端側に6残基のヒスチジンタグが融合されるような設計になっている。pET19b発現ベクターは、同じくBamHI及びBpu1102を用い、37℃で一晩、制限酵素処理を行った。制限酵素処理後、制限酵素切断サイトの脱リン酸を行うため、アルカリフォスファターゼ(タカラバイオ社製)を50℃で1時間処理を行った。フェノール・クロロフォルム抽出を繰り返し、アルカリフォスファターゼを失活させた後、エタノール沈殿処理を行い、制限酵素処理済みpET19b発現ベクターを回収した。
【0072】
CglT発現ベクターを構築するため、上記制限酵素処理済みCglT遺伝子とpET19b発現ベクターはT4ライゲース(タカラバイオ社製)により16℃で一晩、インキュベートを行い、連結させた。その発現ベクターCglT−pET19は大腸菌JM109へ一度形質転換を行い、50μg/mlアンピシリンナトリウムと1.5%寒天を含むLuria−Bertani培地(LB培地)により37℃で一晩培養を行った。
【0073】
LB培地の組成を以下に示す。バクトペプトン1g/L、塩化ナトリウム1g/L、イーストエキストラクト1g/L、最終的な培地のpHは7.0前後に調製された。
【0074】
生育してきたコロニーから目的の発現ベクターCglT−pET19を有するクローンを選択した。選択には大腸菌クローンからプラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて発現ベクターCglT−pET19を抽出したのち上記プライマーによりBigDye(登録商標)Terminator v3.1(アプライドバイオシステムズ社)、PRISM(登録商標) 3100 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)または、PRISM(登録商標)3700 DNA Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)によりDNA配列を読み取った。
【0075】
読み取った遺伝子配列が正確かどうかを確認するため、国立バイオテクノロジー情報センター(NBIC)のホームページを通じ、得られたDNA配列データを用いて、ホモロジー検索を行なって正確性を確かめた。正確な遺伝子配列を有する発現ベクターCglT−pET19はCglTタンパク質を多量発現させるため、再度大腸菌BL21(メルク社製)へ形質転換しタンパク質多量発現大腸菌クローンを得た。
【0076】
CglTを得るため、発現ベクターCglT−pET19を持つ大腸菌BL21をアンピシリンナトリウム含有LB培地で37℃、4時間培養を行った後、イソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(isopropyl−D−thiogalactopyranoside)を1mMの濃度を加えさらに12時間培養を行った。
【0077】
CglT−pET19を持つ大腸菌BL21(DE3)は遠心分離(8,000回転、4℃、10分)により菌体を回収した。回収した菌体は一度−80℃で一晩凍結し、溶菌緩衝液(50 mM リン酸緩衝液、 300 mM 塩化ナトリウム、 10 mM イミダゾール、 pH 8.0)に懸濁したのち、氷中において超音波破砕機により破砕した。得られた溶菌混濁液を遠心分離し、透明な溶菌液と沈殿している未破砕菌体とを分離後、溶菌液のみを回収し0.45μmフィルター濾過を行った。
【0078】
その溶菌液はニッケルアガロースゲルカラム(Ni−NTAアガロースゲル;キアゲン社製)を通して、ヒスタグ融合CglTを得た。さらに溶出を行ったCglTは脱塩カラム(バイオラッド社製)に通して精製した。ヒスタグ融合CglTのタンパク量測定は、必要に応じて蒸留水で希釈後、BCA・タンパク測定キット(サーモサイエンティフィック社製)により測定を行った。タンパク質の検量線はウシ血清アルブミンを使用し作成した。
【0079】
CglTのアミノ酸配列を配列番号6に示す。
【0080】
[セルロソームの製造]
クロストリジウム・サーモセラムJK−S14株(NITE BP−627)を上記したBM7CO−CB培地の炭素源をセロビオースから微結晶セルロース10g/Lへ変更したBM7CO−CL培地を用いて6日間、60℃にて培養を行った。
【0081】
培養後、遠心分離により菌体を除き、その培養液にアモロファスセルロース(リン酸膨潤セルロース)を加え、4℃、一晩にて攪拌しセルロソームをアモロファスセルロースに吸着させた。攪拌後、アモロファスセルロースを回収し5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液で懸濁し、透析チューブ(10kDaカット;スペクトラ社製)に注ぎ、60℃で蒸留水による透析を約6時間行った。なお、透析は1時間おきに新しい蒸留水に交換して行った。
【0082】
この反応により、セルロソームにより分解されたアモロファスセルロースからの反応産物であるセロビオースやセロオリゴ糖は、透析により蒸留水へ拡散し、反応阻害を受けることなく完全に分解することができる。その結果、透析チューブ内にはセルロソームのみを簡易に回収できる。
【0083】
得られた透析液をセルロソーム酵素画分として以降の実験に使用した。セルロソームのタンパク質量は適当な濃度へ蒸留水で希釈後、上記同様にBCA・タンパク測定キットにより測定を行った。
【0084】
β−グルコシダーゼの活性測定は、Wood, WA., Kellog, S.T., 1988. Methods in Enzymology.160, New York: Academic Press.に記載された、p−ニトロフェノールガラクトピラノシドを基質として酵素反応により遊離してくるp−ニトロフェノール量を測定することにより活性(ユニット)を算出した。一分間にμモルp−ニトロフェノールを生成する量を1ユニット(U)の酵素活性と定義した。
【0085】
1%シグマセルタイプ20、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)にセルロソーム0.5mg及びβ−グルコシダーゼを添加した。セルロース分解率は、一定時間おきに、サンプリングを行い、生成してくるセロビオースやグルコースをアミネックスHPX−87Pカラム(バイオラッド社製)による示差屈折検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、Prominence)により測定した。
【0086】
初発糖濃度は、シグマセルタイプ20を0.3gとし、72%硫酸(重量%)を3ml加え、よく攪拌し1時間加水分解を行なった。その後、蒸留水を80ml加え121℃で1時間オートクレーブをかけた後、ガラスフィルターにより濾過し、濾液を得た。この濾液を強アニオンカラムに通したのち、その一部を上記アミネックスHPX−87Pカラム(バイオラッド社製)による示差屈折検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、Prominence)により測定した。測定されたグルコース量は、使用したセルロース重量を参考にグルコース換算での全糖量を算出し100%量とした。
【0087】
セルロソームのみと、セルロソームとβ−グルコシダーゼ共存下における、微結晶セルロース分解率(%:w/w)の結果を図3に示す。図中の黒丸印はセルロソームのみの分解反応、黒三角印はセルロソームと市販アスペルギルス・ニガーのβ−グルコシダーゼ(0.5mg;0.93ユニット)、黒四角印はセルロソームとCglT(0.01mg;0.24U)である。
【0088】
セルロソームのみ、及び市販アスペルギルス・ニガーのβ−グルコシダーゼを併用した場合のセルロース分解能は約40%とほとんど効果が見られず、セロビオースによるセルロソームの阻害が認められた。また、セルロソームと市販アスペルギルス・ニガーのβ−グルコシダーゼの併用はほとんど効果がないことが分かる。一方、セルロソームとCglTの併用はほぼ完全分解できることから、セルロソームにより生成されたセロビオースが効果的にグルコースに分解され、生成物阻害から解除された状態になっていた。
【0089】
したがって、セルロソームとサーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075のβ−グルコシダーゼCglTの併用は、市販アスペルギルス・ニガー酵素のβ−グルコシダーゼとの併用よりも極めて高いセルロース分解率を奏することが明らかとなった。
【実施例2】
【0090】
セルロソームの骨格蛋白質(以下CipAという)はセルロース結合モジュールを保有しているために、セルロソームごとセルロースへ吸着することができる。一方、β−グルコシダーゼは糖質に結合可能なモジュールを有していない。したがって、セルロソームをリサイクルする場合には、β−グルコシダーゼを添加し続ける必要があることが想定される。
【0091】
そこでβ−グルコシダーゼの再利用が可能かどうか確認するため、微結晶セルロース(アビセル)を用い、セルロソームとCglTを用いリサイクル反応を行った。リサイクル反応の手順を図4に示す。
【0092】
すなわち、アビセル(微結晶性セルロース)にセルロソームとβ−グルコシダーゼを作用させ、アビセルを加水分解した後、反応液に再度アビセルを加え、アビセルに吸着した酵素を分離して再利用するものである。
【0093】
基質となる1%アビセル、2mgセルロソームと0.5mgのCglT(5ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。
【0094】
24時間の酵素加水分解反応後、残渣を除き、反応液に再度アビセルのセルロース基質を初発濃度と同量添加し、4℃、6時間、酵素を基質に吸着させる。その後緩衝液を加え、再度、酵素加水分解反応をスタートする。2ラウンド目以降の反応にはセルロソーム及びCglTの酵素類を加えることはせず、初発に添加した酵素で再利用可能かどうか反応を行った。
【0095】
結果を図5に示す。ラウンド1回目においては94%、ラウンド2回目では75%と高いセルロース分解率を保っていたが、ラウンド3回目以降、急激に低下し、最終的にラウンド5回目では6%のセルロース分解率であった。
【0096】
この結果はCglTがリサイクル糖化の糖化サイクルを繰り返すことで反応系外へ流出していることを示しており、高いセルロース分解率を保つのに必要な酵素量が不足していることが理解できる。従って、高いセルロース分解率の維持を目指したリサイクル糖化を行うためには、セルロソームとCglTとの反応中の挙動を一致させる必要があることが分かった。
【実施例3】
【0097】
セルロソームと挙動を一致させるために、セルロソーム構造の有する特徴の一部分をCglTに持たせることにより可能となると考えられた。特に、CipAが有するCBMをCglTに持たせることで、挙動を共にすることが可能であると推測できた。しかし、多くのβ−グルコシダーゼでは触媒ドメインのみのタンパク質構造を持ち、CglTにはセルロース結合領域はない。そこで骨格タンパク質CipAが有するCBMを融合させたCglTを作成した。
【0098】
前述したように、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE BP−627)株CBMのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を配列番号2に示す。
【0099】
CBM融合CglTをデザインするに当たり、N末端側にCBMを融合させたタイプ(以下、CBM−CglTとして示す。)とC末端側にCBMを融合させたタイプ(以下、CglT−CBMとして示す。)とをそれぞれ作成した。
【0100】
CBM−CglTの作成にあたり、CBMの増幅にはオリゴヌクレオチドプライマーCBMF1(配列番号7に示す:5´−CGCGGATCCGGTTGGCAATGCAACACCG−3´)およびCBMFusionN(配列番号8に示す:5´−ACGAAATCTCTTGGAAATTTTGCATTCGGATCATCTGACGGCGG−3´)を用いた。
【0101】
オリゴヌクレオチドプライマーCBMF1にはBamHIの制限酵素サイトを付与するようにデザインし、またCBMFusionNにはCglTのN末端アミノ酸配列が一部含まれるようにデザインした。
【0102】
PCRは実施例1と同じ条件下、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14株(NITE BP−627)のゲノムDNAを鋳型としCBM遺伝子断片を増幅した。
【0103】
CglTの作成にあたっては、プライマーCglTFusion(N)(配列番号9に示す:5´−CCGCCGTCAGATGATCCGAATGCAAAATTTCCAAGAGATTTCGTT−3´)、および実施例1記載のCglTR(配列番号4に示す)を用いた。
【0104】
プライマーCglTFusion(N)は、CBMのC末端側を一部重複した形でプライマーをデザインした。それぞれ増幅したCBM遺伝子(3´側にCglTのN末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)及びCglT遺伝子(5´側にCBMのC末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)を鋳型として用い、オリゴヌクレオチドプライマーCBMF1及びCglTRを用い実施例1と同じ条件においてPCR反応を行った。
【0105】
PCR反応により、CBMとCglTとが融合した約1.9kbのDNA断片を得ることができた。
【0106】
C末端側にCBMを融合させたタイプのCglT−CBMの作成において、CglT遺伝子の増幅には実施例1記載のオリゴヌクレオチドプライマーCglTF(配列番号3に示す)及びCglTR−Fusion(C)(配列番号10に示す:5´−CGGTGTTGCATTGCCAACATCTTCGATACCATCATC−3´)を用いた。
【0107】
オリゴヌクレオチドプライマーCglTR−Fusion(C)には、CBMのN末端側を一部重複した形でオリゴヌクレオチドプライマーをデザインした。
【0108】
C末端側へのCBM遺伝子の増幅においては、オリゴヌクレオチドプライマーCBM3F−Fusion(C)(配列番号11に示す:5´−GATGATGGTATCGAAGATGTTGGCAATGCAACACCG−3´)及びオリゴヌクレオチドプライマーCBM3R、(配列番号12に示す:5´−ATTGCTCAGCATTCGGATCATCTGACGGCGGTAT−3´)を用いた。
【0109】
オリゴヌクレオチドプライマーCBM3F−Fusion(C)には、CglTのC末端側のアミノ酸配列をコードする遺伝子が一部重複した形でデザインした。
【0110】
オリゴヌクレオチドプライマーCBM3Rは、制限酵素Bpu1102の切断サイトを付与するようにデザインした。
【0111】
それぞれ増幅したCglT遺伝子(3´側にCBMのC末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)及びCBM遺伝子(5´側にCglTのN末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)を鋳型として用い、オリゴヌクレオチドプライマーCglTF及びCBM3F−Fusion(C)を用い、実施例1と同じ条件でPCR反応を行った。
【0112】
PCRの結果、CglTとCBMが融合した場合において得られる約2kbのDNA断片を得ることができた。
【0113】
PCRで得られた2つの融合遺伝子をそれぞれBamHIとBpu1102の制限酵素により切断後、精製を行い、pET19bのBamHIとBpu1102制限酵素サイト間へ挿入し、CBM融合CglT発現プラスミドを作成した。2つの発現プラスミドを大腸菌BL21へ導入して形質転換を行い、それぞれ発現株を取得した。
【0114】
N末端側にCBMを融合させたCBM−CglTの遺伝子配列を配列番号13に、C末端側にCBMを融合させたタイプのCglT−CBMの遺伝子配列を配列番号14に示した。
【0115】
CBMを融合したβ−グルコシダーゼの一般的な特徴を確認するため、それぞれの組換えタンパク質を発現し精製した。精製したタンパク質は両者ともN末端側にヒスチジンタグが付与される構造となることから、上記記載の組換えCglTと同様にニッケルアガロースカラムにおいてSDS−PAGEで単一バンドになるまで精製を行った。
【0116】
精製したCBM融合型β−グルコシダーゼのセルロース結合能を測定するため、セルロースを使った結合能を試験した。セルロース結合能は精製タンパク質0.2mgを用い、10mgアビセルを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)と混合し、4℃で一晩放置した。その後、遠心分離により上清と沈殿(すなわち、セルロース)を分離したのち、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で3回洗浄を行った。再度遠心分離により沈殿を回収したのち、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で懸濁し、SDS−PAGEに供した。
【0117】
CglTと比較した場合、CBM−CglT及びCglT−CBMともに沈殿画分に精製タンパク質と同一のバンドが認められたが、CglTは上清及び緩衝液洗浄画分に認められたことから、この融合したCBM遺伝子はセルロース結合能を有しCglT内で機能していることが明らかとなった。
【0118】
また、β−グルコシダーゼ活性が変化しているかを確認するために、実施例1に記載した方法でCglT、CBM−CglT及びCglT−CBMのβ−グルコシダーゼ活性を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
CglTは25U/mgタンパク質と非常に高い活性を示したのに対し、CBM融合型のCglTに関し、CBM‐CglTにおいては4U/mgタンパク質、CglT‐CglTでは2ユニット/mgタンパク質と劇的なβ−グルコシダーゼ活性の低下を招いた。これはCBMを融合したことによる立体構造変化により、酵素触媒部分へ影響したものと考えられた。
【0121】
CBM−CglT又はCglT−CBMをセルロソームと併用した際に、β−グルコシダーゼの活性が低下の影響を確認するため、セルロース分解率を測定した。
【0122】
反応条件は1%アビセルを用い、上記記載の緩衝液と条件を用いて測定を行った。結果を図6に示す。
【0123】
図中、黒三角印がセルロソームのみでの反応、白丸印がセルロソームとCglTを併用した反応、白四角印がセルロソームとCBM−CglTを併用した反応、黒四角印がセルロソームとCglT−CBMを併用した反応である。
【0124】
セルロソームのみでは72時間後に約60%のセルロース分解率しか得られず、セロビオース蓄積による反応阻害が生じていることが分かる。
【0125】
セルロソームとCglTの併用では阻害が解除され、ほぼ100%のセルロース分解率を得ることができる。一方、CBM融合CglTでは、上記に示したβ−グルコシダーゼ活性の低下から考察して、セルロソームのみのセルロース分解率、もしくは若干の効果しか得られないだろうと考えられたが、驚くことにCglTと同様にほぼ100%のセルロース分解率を得ることができた。
このことは、一般的なβ−グルコシダーゼ基質として使用されるp−ニトロフェノールグルコピラノシドではうまく活性を示せないが、セルロース存在下においてはCBMの機能により活性が復帰することが明らかとなった。したがって、CBMをCglTと融合させるデメリットは人工基質を使用した際の活性低下に限定されることになる。
【0126】
なお、N末端側及びC末端側のどちらにCBMを融合したCglTを用いても、セルロソームとの併用においてセルロース分解率に差異は無いことから、以降の実施例においてはCBM−CglTを使用することにした。
【実施例4】
【0127】
実際にCBM−CglTを用いセルロソームと共に挙動を一致させることができるかどうかを確認するために、シグマセルを用いて図4に準じてリサイクル糖化反応を行った。反応条件は実施例2と同じ条件、すなわち、1%シグマセルと2mgセルロソームと0.5mg CBM−CglT(0.8ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図7に示す。
【0128】
セルロソーム及びCBM−CglTを併用することにより、初回から90%以上のセルロース分解率を維持しながら、少なくとも5回繰り返し利用することが可能であることが明らかとなった。この結果はセルロソームのCBMをβ−グルコシダーゼのような補助酵素に融合させることで、反応中の挙動を同じくさせ、補助酵素自身もセルロソームと同じく回収が可能になることを示しており画期的である。
【0129】
リグノセルロース系バイオマスにおいてもセルロソーム及びセルロース結合モジュール融合β−グルコシダーゼを併用するリサイクル糖化法が有効か確認するため、前処理を行った稲わらを用いてリサイクル糖化反応を行った。
【0130】
前処理としてアンモニア浸漬を行った。アンモニア浸漬は乾燥稲わらを10gに10倍量の28%アンモニア水溶液を加え、密閉容器に入れて60℃で7日間放置した。その後、蒸留水により中性になるまでよく洗浄を繰り返し、水を絞ったものをアンモニア浸漬処理稲わらサンプルとした。
【0131】
アンモニア浸漬処理稲わらの全糖成分や量を測定するため、実施例1記載の硫酸加水分解により加水分解液を調製後、高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
アンモニア浸漬処理稲わらを使用したリサイクル糖化法の工程を図8に示す。基本的に図4と同様のサイクルであるが、基質が1%セルロース量を含むアンモニア浸漬処理稲わらである点で異なる。また加水分解後残存する残渣を系外から除く工程を厳密に行った。残渣を系外から除くことにより、再利用回数を増やすことができる。
【0132】
酵素量や反応量は実施例3の条件である2mgセルロソームと0.5mgCBM−CglT(0.8ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図9中の「前処理のみ」と記載したレーンに示した。初回ラウンドでは90%以上のセルロース分解率を示したものの、2ラウンド目以降、急激にセルロース分解率の低下が認められ、3ラウンド目では約12%のセルロース分解率まで低下した。反応溶液中のタンパク質量の測定によれば、反応開始後から急激に反応溶液中のタンパク量が低下していることから、アンモニア浸漬処理稲わらによる酵素の非特異的吸着が生じていることが分かった。
【0133】
非特異的吸着を抑制させるために、非特異的吸着を起こすと考えられるリグノセルロース系バイオマスのリグニンを含む酸不溶な成分部位を何らかの方法でコーティングさせることでリサイクル糖化を持続させることができるか検討を行った。
【0134】
セルロソームとCBM−CglTの併用により反応スタートする前に、一度ブロッキング処理として、各種タンパク質や界面活性剤により浸漬を行ったアンモニア浸漬処理稲わらを用いた。このリサイクル工程図を図10に示す。
【0135】
ブロッキング処理方法は、前処理したバイオマス1gあたり0.2重量%溶液で4℃又は、室温にて6時間〜15時間浸漬処理を行った。また蒸留水に不溶なブロッキング試薬は薄い酸やアルカリ溶液により溶解したものを用いた。この工程を繰り返す際に添加するブロッキング済みアンモニア浸漬処理稲わらのセルロース含量は先のブロッキング処理無の工程と同じである。
【0136】
コーティング剤として、タンパク質ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ・アルドリッチ社製)、ゼラチン(和光純薬社製)、スキムミルク(和光純薬社製)、大豆タンパク質(和光純薬社製)や培地成分であるペプトン(ディフコ社製)、ポリペプトン(ディフコ社製)、アミノ酸であるアルギニン(シグマ・アルドリッチ社製)、各種界面活性剤[Tween 20,80(和光純薬社製)、Triton X(和光純薬社製)、SDS(和光純薬)及び高分子ポリマー[PEG400−PEG20000(和光純薬社製)]を用いた。
【0137】
タンパク質においては、ウシ血清アルブミン(BSA)やスキムミルク、カゼイン、界面活性剤では非イオン性界面活性剤Tween20やTween80、及び高分子ポリエチレングリコール(PEG20000)に高いセルロース分解率を維持したままでのリサイクル回数継続の効果が認められた。特にスキムミルク、カゼイン、Tween80により前処理稲わらをコーティング処理することで90%以上の高いセルロース分解率を3ラウンドまでリサイクル工程を繰り返せることが分かった。
【実施例5】
【0138】
セルロソームとCBM−CglTの併用によるリサイクル糖化法とブロッキング処理を用いた組み合わせによる糖化方法は、稲わら以外のリグノセルロース系バイオマスにおいても効果があるかを試験するため、上記記載のアンモニア浸漬処理稲わらの他に、アルカリ蒸解処理した杉パルプ、使用済みオフィス紙(水洗のみ)を用いてリサイクル糖化試験を行った。
【0139】
アルカリ蒸解処理杉パルプの調製は、杉チップあたり酸化ナトリウム換算で23%となるように水酸化ナトリウムを加え、耐圧容器中で170℃、3時間反応を行った。その後、十分に水洗し、亜塩素酸(対パルプ当たり3.5%)により60℃、30分間で漂白処理を行った。さらに対杉パルプ当たり4%水酸化ナトリウムで60℃、30分間処理を行い中性になるまで水洗を繰り返したものを使用した。
【0140】
オフィス紙は、使用済みオフィス紙(再生紙)をシュレッダーにより裁断後、蒸留水により1時間洗浄したものを使用した。
【0141】
カゼイン及びツイーン80によるブロッキング処理の場合、実施例4記載の方法と同様に各セルロース系バイオマスに対して処理を行いリサイクル糖化反応に使用した。
【0142】
糖化反応における酵素濃度は実施例4と同じく、2mgセルロソームと0.5mg CBM−CglT(0.8ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図11A、図11B、図11Cに示す。
【0143】
図11A〜図11Cの結果から、セルロソームとCBM−CglTとの併用によるリサイクル糖化反応において、前処理のみでは、アンモニア浸漬処理稲わらでは2ラウンド目から、アルカリ蒸解杉パルプ、オフィス紙では3回目から急激なセルロース分解率の低下が見られ、その後のサイクルも低下していることが分かる。一方、カゼインやツイーン80によるブロッキング処理によりアンモニア浸漬処理稲わらでは4回、アルカリ蒸解杉パルプでは5回のサイクルでも70%以上の高いセルロース分解率を保ったままリサイクル糖化できることが明らかとなり、稲わら以外の他のバイオマスにおいても本リサイクル糖化方法は適応可能であることが示された。
【0144】
セルロース系の基質がブロッキング処理を施されたリグニンを含むセルロース系バイオマスである場合、酵素のリサイクル回数を増加させるためには、加水分解後残存する残渣を系外から除くことも大切である。残渣を系外から除かない場合と、除いた場合の再利用回数を比較するため、残渣を残したままでのカゼインでブロッキングしたアンモニア浸漬した稲わらを用いた際のセルロース分解率を図12に示す。
【0145】
残渣を反応系内に残すことにより、リサイクル回数に伴う糖化効率の低下が認められる。この現象は、系内に残ったブロッキング処理したセルロース系バイオマスと酵素複合体の反応が進むことで、ブロックした場所以外の酵素非特異的吸着部分が露出し始め、系内で働いている酵素を奪うために、再利用を継続すると糖化効率が低下してくるものと考えられる。
【実施例6】
【0146】
セルロソームのように酵素複合体になっておらず、個々のフリーの酵素によりリグノセルロースを分解する作用メカニズムを持つカビ酵素においても、本方法で示したリサイクル糖化工程により酵素リサイクル反応が可能であるかどうかを確認するための試験を行った。試験においては、市販カビ酵素を用い前処理稲わらでの前処理のみ稲わらや、ブロッキング処理後のリサイクル糖化能に関して同様に検討を行った。
【0147】
市販酵素としてトリコデルマ・リーゼイ由来セルラーゼ(シグマ・アルドリッチ)、またカビβ−グルコシダーゼとして実施例1記載のアスペルギルス・ニガー由来を使用した。リサイクル糖化の反応として、市販セルラーゼ酵素2mg、β−グルコシダーゼ0.5mg、100mM酢酸緩衝液(pH5.0)、50℃の条件で、図8及び図10に示したようにリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図13に示す。
【0148】
アンモニア浸漬処理稲わらでは、セルロソームとCBM−CglTの併用でのリサイクル糖化による傾向と同様に1ラウンド目のセルロース分解率は90%以上であるが、2ラウンド目以降急激にセルロース分解率の低下が認められ、その基質であるアンモニア浸漬処理稲わらによる酵素の非特異的吸着が起こっていることが示唆された。
【0149】
一方、セルロソームリサイクル糖化において効果のあった、カゼインやツイーン80でブロッキング処理を行った前処理稲わらでは、2ラウンド目からブロッキング処理なしの時と同様にセルロース分解率が急激に低下する現象が認められた。このことはカビ酵素では単に基質への非特異的吸着で酵素回収不能になっているだけでなく、糖化に重要な酵素が、回収されず系外へ消失していることが示唆された。これらの結果は、カビ酵素のような個々の酵素が遊離した状態でそれぞれ働く糖化酵素の場合、本発明で示しているリサイクル糖化法は不適であり、セルロソームのような必要な酵素がセットとなっている酵素複合体を用いることが重要であることが明らかとなった。
【実施例7】
【0150】
ブロッキング処理したセルロース系バイオマスではなく、セルロソームに各種タンパク質、高分子ポリエチレングリコール又は界面活性剤を少量添加しても効果があるかを確認した。
【0151】
セルロソーム酵素画分及びβ−グルコシダーゼ(CBM−CglT)に対し0.2%(容量%)の濃度でカゼイン又はスキムミルクをそれぞれ添加した。このブロッキング剤を含む酵素溶液を用い、ブロッキング処理なしのアンモニア浸漬稲わら及びアルカリ蒸解処理杉パルプを用い、実施例3と同じ条件で酵素リサイクル試験を行った。
【0152】
結果を図14に示す。カゼイン又はスキムミルクを添加した酵素溶液は、添加のない酵素溶液に比べ、再利用回数の増加が認められ、少なくとも3回目まで90%以上の糖化効率を維持することができた。セルロース系バイオマスにブロッキング処理した場合と同じ効果を示すことが明らかとなった。
【実施例8】
【0153】
嫌気性細菌由来の酵素利用の場合、酵素が働く環境も嫌気性であることから、通常のジチオトレイトール(DTT)や2−メルカプトエタノールなどの還元剤を少量添加し酵素反応させることがある。セルロソームも古くから反応溶液に5〜10mM程度のジチオトレイトールを添加して酵素反応を行わせてきた(非特許文献3)。そこで、上記記載のブロッキング剤を含んだ酵素溶液にDTTを10mM加えて上昇効果があるかどうかを確認した。
【0154】
結果を図15に示す。再利用の都度、糖化効率が減少しており、3回目の再利用で糖化効率は最初に比べ50%以上低下している。
【0155】
この現象は、還元作用のある他の2−メルカプトエタノール、システインやアスコルビン酸の添加でも2回目から3回目において糖化効率の低下という現象を示した。したがって、上記酵素再利用においては、DTTなど還元作用の持つ化合物剤を除くことが重要であることが明らかとなった。
【受託番号】
【0156】
NITE BP−627(クロストリジウム・サーモセラムJK−S14株)
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を利用した基質の変換反応において、反応終了後の反応溶液から酵素を回収して再利用するリサイクル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バガス、稲わら、籾殻、キノコ廃床、堆肥、木材チップ等のセルロース系バイオマスが食糧生産を圧迫しないエネルギーや化学工業の原料資源として注目されている。特に、セルロース系バイオマスの燃料エタノールへの変換においては、発酵原料を効率良く糖化する技術が切望されている。
【0003】
しかし、セルロース系バイオマスはでん粉に比べて糖化技術の難易度が高い。これは、セルロース系バイオマスの構成主体であるセルロースが堅固な結晶構造を持つ難分解性の高分子多糖であることによる。
【0004】
セルロース系バイオマスの糖化方法には、物理的糖化、化学的糖化及び酵素糖化の3つの方法がある。
【0005】
物理的糖化処理はボールミルや振動ミル又は蒸煮爆砕や加圧熱水処理など物理的に糖化を施す処理があるが、物理的な処理は多大なエネルギーを必要とするため、化学的糖化や酵素糖化の前処理として併用されることが多い。
化学的糖化処理は、アルカリ、酸を利用するものがあるが、古くより酸糖化がよく用いられている。酸糖化には濃硫酸糖化法と希硫酸二段糖化法とがあるが、何れも硫酸を用いるため、廃棄物処理や環境負荷の低減を必要とし、低コスト化及びエネルギー変換効率に限界があるといわれている。
【0006】
酵素糖化は、酸糖化に比べ、廃液回収や処理の負担が軽く、耐薬設備等の設備コストを低減できること、過分解が起こらずに糖の収率が高い等の利点があるため、澱粉質を多く含むバイオマスの酵素糖化で実用化されている。ところが、セルロース系バイオマスは、前述したように、セルロースが結晶構造を有していること及び結晶性セルロースをヘミセルロースやリグニンが取り囲んだ複雑な構造を有しているため、でん粉系に比べ、酵素糖化がきわめて困難である。したがって、酵素による糖化処理前に、物理的あるいは化学的前処理による結晶構造の破壊等の前処理や大量のヘミセルラーゼやセルラーゼを併用しているのが現状である。
【0007】
ヘミセルラーゼやセルラーゼに関しては好気性糸状菌トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来の糖化酵素が工業的に使用されているため、セルロース系バイオマスの糖化においても、トリコデルマ属菌の研究が活発に行われてきた(特許文献1参照)。
【0008】
近年、ある種の嫌気性微生物が、セルロースを効率よく分解できる酵素複合体セルロソーム(Cellulosome)を生産することが明らかとなった。
【0009】
セルロソームは、骨格となるタンパク質をベースに多数の高分子多糖分解酵素が結合した構造を有し、これらの複数の酵素が共同してセルロースに作用することで、非常に高い高分子多糖の分解活性を示すことが解明されている(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−319040号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Microbiol Mol Biol Rev. 2005 Mar;69(1):124−54
【非特許文献2】Biochem J. 2004 Sep 15;382(Pt 3):769−81.
【非特許文献3】Johnson EA, Sakajoh M, Halliwell G, Media A, Demain AL (1982) Saccharification of complex cellulosic substrates by the cellulase system from Clostridium thermocellum. Appl. Environ. Microbiol 43:1125−1132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
トリコデルマ・リーセイ由来の酵素は、基質の分解速度が遅いため、実用化に際し、大量の酵素を必要とすることが指摘されている。
【0013】
セルロソームは、高分子多糖の最終産物であるセロビオースの蓄積により酵素活性が阻害されるため、反応後期に糖化効率が低下するという問題がある。
【0014】
本発明は、セルロースの糖化分解において、酵素活性を低下させることなく、また、酵素を再利用することにより酵素の使用量を減少させることを目的とする。
本発明は、また、セルロースの糖化分解において繰り返し利用することが可能な酵素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らはセルロソームがセルロース結合モジュールを有することに着目し、鋭意研究を行ったところ、セルロース結合モジュールを融合させたセルロソームを有する酵素をセルロースに結合させることで、酵素を反応系から容易に分離でき、かつ酵素活性を低下させることなく分離した酵素を再利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の酵素の再利用方法は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合した酵素を再利用することを特徴とする。
本発明の酵素は、β−グルコシダーゼ活性を示す領域とセルロースに結合可能なモジュールとを含むβ−グルコシダーゼ及びキメラβ−グルコシダーゼである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により、酵素反応系に存在する酵素が反応系外に排除されることが少なくなるため、効率的に酵素を分離回収することが可能となる。したがって、再利用するたびに新たに酵素を添加する必要がなく、酵素の使用量を減少させることが可能となる。特に、酵素反応系に複数種類の酵素が存在する場合、セルロース系基質に酵素が結合するため、複数種類の酵素を一括して分離することができるので、再利用にあたり、特定の酵素活性だけが失われることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う実施形態1の酵素の再利用方法のフロー図である。
【図2】実施形態2の酵素の再利用方法のフロー図である。
【図3】クロストリジウム・サーモセラムJK−S14からのセルロソームとサーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075からのβ−グルコシダーゼ(CglT)併用によるアビセル分解能への影響を示す図である。
【図4】アビセルに対するセルロソームとCglT併用によるリサイクル糖化法の工程を示す図である。
【図5】セルロソームとCglT併用リサイクル糖化反応によるラウンドごとのアビセル分解率を示す図である。
【図6】セルロース結合モジュール融合キメラβ−グルコシダーゼ(CBM−CglT及びCglT−CBM)とセルロソーム併用によるアビセル分解能への影響を示す図である。
【図7】セルロソームとCBM−CglT併用によるリサイクル糖化反応によるラウンドごとのアビセル分解効率を示す図である。
【図8】リグノセルロース系バイオマスを用いる際のセルロソームとCBM−CglT併用によるリサイクル糖化法の工程を示す図である。
【図9】アンモニア浸漬処理稲わら及び、各ブロッキング処理を行ったアンモニア浸漬処理稲わらに対するリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図10】ブロッキング処理リグノセルロース系バイオマスを用いる際のセルロソームとCBM−CglT併用によるリサイクル糖化法の工程を示す図である。
【図11A】ブロッキング処理を行った稲わらを用いたリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図11B】ブロッキング処理を行った杉パルプを用いたリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図11C】ブロッキング処理を行った使用済みオフィス紙を用いたリサイクル糖化によるセルロース分解率の比較を示す図である。
【図12】残渣を残したままでのカゼインでブロッキングしたアンモニア浸漬した稲わらを用いた際のセルロース分解率を示す図である。
【図13】市販カビセルラーゼとカビβ−グルコシダーゼを併用した稲わらのリサイクル糖化の効果を示す図である。
【図14】セルロソーム及びβ−グルコシダーゼ(CBM−CglT)にブロッキング剤を添加したリサイクル糖化の結果を示す図である。
【図15】セルロソーム酵素反応系にDTTを含むリサイクル糖化の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を幾つかの実施の形態並びに実施例に基づいて詳細に説明する。
【0020】
[実施形態1]
本実施形態1は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合した酵素を再利用する方法である。
【0021】
詳細には、本実施形態は、図1に示すように、セルロースに結合可能なモジュール(Carbohydorate Binding Module、以下、CBMと略記する。)を有する酵素(以下、CBMを有する酵素という。)と酵素特異的な基質との酵素反応液にセルロース系の基質を添加し、CBMをセルロース系の基質に結合させた後、酵素反応液からCBMを分離し、分離されたCBMに酵素特異的な基質を加える操作を繰り返し行う、酵素の再利用方法である。
【0022】
言い換えるならば、本実施形態のCBMを有する酵素を再利用する方法は、CBMを有する酵素と酵素特異的な基質との酵素反応液にセルロース系の基質を加え、セルロース系の基質にCBMを有する酵素を結合させる第一ステップと、CBMを有する酵素を酵素反応液から分離する第二ステップと、分離したCBMを有する酵素に酵素特異的な基質を加えて反応させる第三ステップとからなり、第一ステップから第三ステップを繰り返すことにより、CBMを有する酵素を再利用するものである。
【0023】
CBMとは、セルロース結合モジュール(Carbohydorate Binding Module)を意味し、非特許文献2に記載されるように、疎水的結合、静電的結合、水素結合、又はカルシウムやマグネシウムなど無機のカチオンを介して生化学的に多糖質、セルロース又はヘミセルロースへ結合できるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指している。したがって、CBMを有する酵素とは、CBMを酵素のアミノ酸配列中に含む酵素である。
【0024】
セルロソームはセルラーゼ複合体であって、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ジョースイ(Clostridium josui)、クロストリジウム・アセトブティリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・セロビオパルム(Clostridium cellobioparum)、クロストリジウム・パピロソルベンス(Clostridium papyrosolvens)、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)、ルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)、アセトビブリオ・セルロリティクス(Acetivibrio cellulolyticus)、バクテロイディス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens)、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)に属する菌等が産生することが知られている。上記セルロソーム生産菌の天然由来のグルコシダーゼにおいて、セルロースに結合するCBMのような領域が存在することは知られていない。
【0025】
つまり、CBMを有する酵素とは、CBMのアミノ酸配列を含む様々な酵素活性を有する酵素であって、遺伝子組み換えによりCBMが結合されたキメラ酵素を含むものである。酵素の酵素活性は、特に限定されるものでなく、セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、アミラーゼ活性、グルコシダーゼ活性等、様々な機能を有するものであってよい。
【0026】
CMBのアミノ酸配列の例として、配列表番号1にクロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE BP−627)株CBMのアミノ酸配列を示すが、これに限定されるものではない。例えば、カルボハイドレイト・アクティブエンザイムデータベース(Carbohydrate−Active enZYmes Database:http://www.cazy.org/)から糖質結合モジュールファミリー分類(Carbohydrate−Binding Module family classification)に属するCBMを用いることができる。好ましくは、そのモジュールファミリー分類表の中でもファミリー3に属するCBMが良い。
【0027】
CBMを有するキメラ酵素は、セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、アミラーゼ活性、グルコシダーゼ活性等、様々な機能の少なくとも1つを備える酵素であって、天然由来の酵素の遺伝配列のC末端又はN末端又は中央部分等、いかなる部分にもCBMをコードする遺伝子を融合した遺伝子を含む形質転換体を培養して得ることができる。
【0028】
CBMをコードした遺伝子は、例えば、セルロソームを生産するクロストリジウム属微生物として、先に述べたクロストリジウム・サーモセラムやクロストリジウム・セルロボランスから得ることができる。配列番号2にクロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE BP−627)株CBMのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を示す。CBMのアミノ酸配列同様、CBMのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、配列表番号2の遺伝子酸配列に限定されるものではない。
【0029】
CBMを有する酵素は、酵素反応系に供給されたセルロース系基質に結合する。セルロース系基質は、水不溶性であるため、CBMを有する酵素は、水不溶性物質に固定されることになる。次いで、反応生成物とセルロース系基質に結合した酵素とを分離する。CBMを有する酵素は、水不溶性物質に固定化されるので、固液分離等の簡易な手段で容易に酵素反応系から効率よく回収することができる。そして、分離して得られたセルロース系基質に結合したCBMを有する酵素に新たな酵素特異的な基質を加えることで、CBMを有する酵素を繰り返し再利用することが可能となる。
【0030】
酵素特異的な基質がセルロース系基質と同じである反応系においては、セルロース系基質が糖類に分解されるため、反応が終了する都度、セルロース系基質を酵素反応系に酵素供給して、CBMを有する酵素をセルロース系基質に結合させる。なお、反応系に残渣がある場合には、セルロース系基質を供給する前に残渣を除去しておくことが望ましい。
【0031】
酵素特異的な基質とセルロース系基質とが異なる物質である場合には、酵素反応を効率よく行うために、セルロソーム又はセルラーゼ等のセルロース分解酵素を酵素反応系に存在させてもよい。セルロース分解酵素とCBMを有する酵素とを併用する場合には、反応が終了する都度、セルロース系基質を酵素反応系に供給する必要がある。
【0032】
このようにして、酵素反応系からCBMを有する酵素を分離して再使用することで、新たな酵素を酵素反応系に追加する必要が無くなる。
【0033】
なお、セルロースに結合可能なモジュールを有する様々な活性をもった酵素を複数酵素反応系に存在させてもよい。すなわち、酵素反応系に存在する複数の酵素をセルロース系基質に結合させて、酵素反応液から分離することで、複数の酵素を再利用することが可能となる。
【0034】
[実施形態2]
本実施形態2は、セルロソームとCBMを有するβ−グルコシダーゼとを用いた、両酵素の再利用方法である。実施形態1とは、CBMを有する酵素をセルロソームとCBMを有するβ−グルコシダーゼとを含む2種類の酵素に特定した点で相違する。
【0035】
セルロース系のバイオマスをセルロソームにより糖化する場合、セルロソームは、その最終産物であるセロビオースにより酵素活性が阻害され、セルロース系バイオマスを効率よくセロビオース又はオリゴ糖へ分解することができないことが知られている。
【0036】
本発明者らがセルロース系バイオマスのセルロソームを用いた糖化反応において、セロビオースを酵素反応系から除去するために、β−グルコシダーゼを併存させたところ、最初はセルロース分解効率が改善されていても、繰り返し利用するとセルロース分解効率が低下してしまうことを見出した。この原因は、再利用を繰り返すことにより、好熱嫌気性細菌由来のβ−グルコシダーゼが失われるためと考えられた。
【0037】
そこで、セルロソームとβ−グルコシダーゼとを併用する場合の酵素反応効率の低下を抑制するために、CBMをβ−グルコシダーゼのC末端又はN末端に融合したキメラβ−グルコシダーゼを用いたところ、繰り返し利用によってもセルロース分解効率は低下しないことを見出した。
【0038】
すなわち、本実施形態の方法は、セルロース系の基質とCBMを有するβ−グルコシダーゼとセルロソームとを含有する酵素反応液にセルロース系の基質を加えて、CBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームをセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを反応系から分離して、基質に結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを再利用することを特徴とする。
【0039】
図2に本実施形態の酵素の再利用方法のフローを示す。
すなわち、本実施形態の酵素の再利用方法においては、セルロース系の基質と、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとを含有する酵素反応液にセルロース系の基質を加え、セルロース系の基質にセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを結合させる第一ステップと、セルロース系の基質に結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを分離する第二ステップと、分離したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームにセルロース系の基質を加えて反応させる第三ステップとを含み、第一ステップから第三ステップを繰り返すことで、β−グルコシダーゼ及びセルロソームを再利用するものである。
【0040】
セルロソームは、クロストリジウム属菌が産生するものであり、例えば、クロストリジウム・サーモセラムやクロストリジウム・セルロボランスに属する菌が産生するものを用いることができる。
【0041】
本発明で使用するβ−グルコシダーゼは、一般的に酵素番号3.2.1.21(EC3.2.1.21)に定義されるセロビオースをグルコース2分子へ変換可能な酵素の触媒を有する酵素を意味する。
【0042】
CBMを有するβ−グルコシダーゼとは、CBMを融合したキメラβ−グルコシダーゼである。β−グルコシダーゼはカビ由来の酵素でもよいが、好ましくは好熱性細菌由来の酵素が望ましい。カビ由来のβ−グルコシダーゼを用いた場合、再利用の回数が好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼに比べ減少するからである。
【0043】
β−グルコシダーゼとしては、使用するセルロソームの反応条件に近似し、グルコシダーゼ活性も持っているものであればいかなる生物由来のものを使用してもよい。例えば、クロストリジウム・サーモセラム由来のセルロソームを使用する場合、至適温度が50℃〜80℃、至適pHが、5〜9の範囲で活性を有しているβ−グルコシダーゼと共に反応させることが考えられる。
【0044】
利用可能なβ−グルコシダーゼは、微生物由来のアミノ酸配列を有するものが好ましい。使用するセルロソームの反応条件にも依存するが、クロストリジウム・サーモセラムからのセルロソームを使用する場合は、特に好熱性細菌由来のβ‐グルコシダーゼを用いることが好ましい。具体的な例を上げれば、好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼとしては、Acidothermus、Caldicellulosiruptor、Clostridium、Geobacillus、Thermobifida、Thermoanaerobacter、Thermobispora、Thermodesulfovibrio、Thermomicrobium、Thermomonospora、Thermosipho、Thermotoga、Thermus、Tolumonas、Treponema、Aciduliprofundum、Caldivirga、Desulfurococcus、Picrophilus、Pyrobaculum、Pyrococcus、Staphylothermus、Sulfolobus、Thermococcus、Thermofilum、Thermoplasma、Thermoproteus、Thermosphaera、Thermosphaera属由来のものを用いることができる。この他にもファミリー1、3、9、30、116に属する酵素を生産する菌であれば用いることが可能である。
【0045】
なお、β−グルコシダーゼとしては、上記以外の酵素として、カルボハイドレイト・アクティブエンザイム・データベース(Carbohydrate−Active enZYmes Database:http://www.cazy.org/)に記載の糖質分解酵素ファミリー分類(Glycoside Hydrolase family classification)に記載のある分類ファミリー1、3、9、30、116に属するタンパク質を用いることが可能である。
【0046】
なお、β−グルコシダーゼは、上述した微生物由来のアミノ酸配列に限定されるものではなく、微生物由来のアミノ酸配列と60%程度のホモロジーがあるものを用いることができる。遺伝子組み換えの分野において、同一の機能を有するタンパク質となることが一般的に知られており、配列番号1と60%程度のホモロジーを有するアミノ酸配列は本発明の範囲に含まれるものである。
【0047】
好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼと融合するCBMは、併用するセルロソームのCBMと同じアミノ酸配列のものを用いるのが好ましい。これは、同じアミノ酸配列のCBMとすることで、セルロースとβ−グルコシダーゼのセルロースへの結合挙動が同じになり、両酵素の反応系からの分離が容易になるからである。
【0048】
なお、セルロソーム及びセルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼ以外にも、セルロースに結合可能なモジュールを有し、様々な活性を有する酵素を複数酵素反応系に存在させてもよい。
酵素反応系に存在する複数の酵素をセルロース系基質に結合させて、酵素反応液からセルロース系基質に結合した酵素を分離する。セルロース系基質に結合した酵素の糖化効率は低下することなく繰り返し利用することができるので、複数の酵素を再利用することが可能となる。
【0049】
嫌気性菌由来の酵素であるセルロソームに関し、ジチオトレイトール(DTT)や2−メルカプトエタノールなどの還元剤を反応系に存在させることが知られている(非特許文献3)。本実施形態の方法において、セルロース系の基質にセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを反応するうえにおいて、還元剤を存在させてもよいが、酵素を繰り返し使うと糖化効率が低下することがある。したがって、還元剤は反応系に存在させないほうが好ましい。
【0050】
[実施形態3]
本実施形態3は、セルロース系の基質がリグニンを含むセルロース系バイオマスである点で、実施形態2と異なる。
【0051】
すなわち、本実施形態の方法は、リグニンを含むセルロース系バイオマスと、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとの酵素反応液にリグニンを含むセルロース系バイオマスを加えてCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを、リグニンを含むセルロース系バイオマスに結合させて反応させ、反応系からセルロース系バイオマスに結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを分離して、セルロース系バイオマスに結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを繰り返し利用することを特徴とする。
【0052】
言い換えれば、本実施形態の酵素の再利用方法においては、リグニンを含むセルロース系バイオマスと、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとの酵素反応液にリグニンを含むセルロース系バイオマスを加え、リグニンを含むセルロース系バイオマスにセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを結合及び反応させる第一ステップと、リグニンを含むセルロース系バイオマスに結合したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームを反応系から分離する第二ステップと、分離したCBMを有するβ−グルコシダーゼ及びセルロソームにリグニンを含むセルロース系バイオマスを加えて反応させる第三ステップと、を含み、第一ステップから第三ステップを繰り返すことで、β−グルコシダーゼ及びセルロソームを再利用するものである。
【0053】
ここで、リグニンを含むセルロース系バイオマスは、事前に前処理としてアンモニア浸漬処理を行っておくことが好ましく、さらに、アンモニア浸漬処理後にタンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤でブロッキング処理を行っておくことが望ましい。ブロッキング処理とは、リグノセルロース系バイオマスの酸不溶な部位をコーティングする処理であり、アンモニア浸漬処理後のセルロース系のバイオマスをブロッキング剤に浸漬すればよい。具体的なブロッキング剤は、タンパク質としてスキムミルク又はカゼイン、界面活性剤は、Tween20又はTween80に代表される非イオン性界面活性剤が好ましい。ブロッキング処理により植物細胞壁が有するリグニン及びリグニン−ヘミセルロース複合体、リグニン−無機物複合体等、セルロース及びヘミセルロース以外の疎水性基等の反応基とタンパク質との非特異的吸着が抑制されると考えられる。
【0054】
本実施形態の方法において、セルロース系の基質にセルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを結合させる反応、すなわち第一ステップ及び第三ステップにおいて、還元剤を存在させてもよいが、酵素を繰り返し使うと糖化効率が低下することがある。したがって、還元剤は反応系に存在させないほうが好ましい。
【0055】
また、リグニンを含むセルロース系バイオマスと、CBMを有するβ−グルコシダーゼと、セルロソームとの酵素反応液にリグニンを含むセルロース系バイオマスを加える前に、酵素反応の残渣を除去しておくことが好ましい。残渣の除去により、再利用回数を増やすことができる。
【0056】
[実施形態4]
本実施形態4は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をタンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤の存在下で、セルロース系の基質と結合及び/又は反応させる、酵素の再利用方法である。
ブロッキング剤は、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素とセルロース系の基質との反応系に存在していればよいが、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質と反応させる前にブロッキング剤と接触させておくことが好ましい。接触は、例えば、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素を含む溶液にブロッキング剤を添加すればよい。
【0057】
具体的には、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素を含む溶液にブロッキング剤を添加した後、セルロース系の基質を加え、セルロース系の基質にCBMを有する酵素を結合させる第一ステップと、CBMを有する酵素を酵素反応液から分離する第二ステップと、分離したCBMを有する酵素に酵素特異的な基質を加えて反応させる第三ステップと、からなり、第一ステップから第三ステップを繰り返すことにより、CBMを有する酵素を再利用するものである。
【0058】
セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素を、セルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼとし、セルロース系の基質及びCBMを有する酵素に酵素特異的な基質を、リグニンを含むセルロース系バイオマスとする場合、反応系に還元剤を存在させてもよいが、酵素を繰り返し使うと糖化効率が低下することがあるので、還元剤を反応系に存在させないほうが好ましい。
【0059】
また、この場合、セルロソーム及びCBMを有するβ−グルコシダーゼを含む溶液にブロッキング剤を添加してから、リグニンを含むセルロース系の基質を添加し、酵素と基質とを結合及び/又は反応させることが好ましい。
【0060】
さらに、実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
前述したように、セルロソームは、酵素反応の最終産物であるセロビオースによって、酵素反応が阻害されてしまう。セルロソームの糖化能力を発揮させるためには、セロビオースを反応系から除去する必要がある。そこで、セロビオースをグルコースへ分解可能な酵素β−グルコシダーゼをセルロソームと併存させて、微結晶セルロース(シグマセルタイプ20)の分解能を比較した。
【0062】
β−グルコシダーゼとして、以下の2つの酵素を準備した。
(1)市販のアスペルギルス・ニガー由来酵素(シグマ−アルドリッチ社製)。
(2)好熱嫌気性細菌であるサーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075(Thermoanaerobacter brockii)(アメリカンタイプカルチャーコレクション)のβ−グルコシダーゼをもとにした組換えβ−グルコシダーゼ(以下、CglTという)。
【0063】
[CglTの作成]
サーモアナエロバクター・ブロッキからのゲノムDNAは、以下の手順により抽出した。0.5%セロビオースを含むBM7CO−CB液体培地を用いてサーモアナエロバクター・ブロッキを培養後、4℃にて10,000回転で5分間、遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体を溶菌させるために、10%SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)を最終濃度が0.5%になるように添加するとともに、プロテナーゼK(1mg/ml)溶液が5μg/mlになるように加え、37℃で1時間反応させた。さらに10%臭化セチルトリメチルアンモニウム−0.7M塩化ナトリウム溶液を1%濃度になるように加え、65℃で10分間反応させた後、等量のクロロフォルム・イソアミルアルコール溶液を加えよく攪拌し、15,000回転、5分間遠心分離にて水層を得た。
【0064】
この水層にフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール混液を等量加え、攪拌して再度15,000回転、5分間遠心分離にて水層を得た。この水層に対し0.6倍容量のイソプロパノールを加えてゲノムDNAを析出させ、再度遠心分離によりゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを70%エタノールで洗浄、乾燥した。
【0065】
なおBM7CO−CB培地の組成は、リン酸二水素カリウム1.5g/L、 リン酸水素二カリウム2.9g/L、 尿素2.1g/L、 酵母エキス 6.0g/L、 炭酸ナトリウム4g/L、システイン塩酸塩0.05g/L、0.2 mlミネラル溶液(MgCl2・6H2O、 5g、CaCl2・2H2O、 0.75g、 FeSO4・6H2O、 0.0063gを水4mlに溶解)として調製した。また、培地に炭素源としてセロビオースを5g/Lになるように加えた。最終的な培地のpHは7.0前後に調製した。
【0066】
CglTは、上記調製したゲノムDNAを用い、オリゴヌクレオチドプライマーCglTF(配列番号3:5´−CGCGGATCCGGCAAAATTTCCAAGAGAT−3´)及び、CglTR(配列番号4に示す:5´−ATTGCTCAGCATCTTCGATACCATCATC−3´)をデザイン、合成し、PCRにより約1.4キロベース長の二本鎖増幅DNA配列を得た。増幅したCglT遺伝子配列を配列番号5に示す。
【0067】
デザインしたオリゴヌクレオチドプライマーCglTF及びCglTRは、大腸菌発現ベクターに挿入するため、制限酵素サイトBamHI及びBpu1102サイトを付加してある。なお、サーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075のβ−グルコシダーゼCglT遺伝子配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(NBIC)のホームページ(http://www.Ncbi.nlm.nih.gov/)を通じ、遺伝子配列を取得することができる(GenBankアクセッション番号;CAA91220.1)。
【0068】
PCRは、ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)により16srRNA遺伝子の増幅を行った。PCRの条件は98℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間、を30サイクルの条件において増幅を行なった。
【0069】
PCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動で増幅されたバンドを確認後、キアゲンPCR精製キット(キアゲン社製)を用い精製した。精製したPCR産物はBamHI(タカラバイオ社製)及びBpu1102(タカラバイオ社製)を用い、37℃で一晩、制限酵素処理を行った。
【0070】
制限酵素処理済みPCR産物は再度0.8%アガロースゲル電気泳動により制限酵素分解産物と分離し、ゲルから目的のバンドを切り出し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)により精製した。
【0071】
CglT遺伝子を大腸菌において発現させるため、pET19b発現ベクター(メルク社製)も使用した。本ベクターは発現させたい目的のタンパク質のN末端側に6残基のヒスチジンタグが融合されるような設計になっている。pET19b発現ベクターは、同じくBamHI及びBpu1102を用い、37℃で一晩、制限酵素処理を行った。制限酵素処理後、制限酵素切断サイトの脱リン酸を行うため、アルカリフォスファターゼ(タカラバイオ社製)を50℃で1時間処理を行った。フェノール・クロロフォルム抽出を繰り返し、アルカリフォスファターゼを失活させた後、エタノール沈殿処理を行い、制限酵素処理済みpET19b発現ベクターを回収した。
【0072】
CglT発現ベクターを構築するため、上記制限酵素処理済みCglT遺伝子とpET19b発現ベクターはT4ライゲース(タカラバイオ社製)により16℃で一晩、インキュベートを行い、連結させた。その発現ベクターCglT−pET19は大腸菌JM109へ一度形質転換を行い、50μg/mlアンピシリンナトリウムと1.5%寒天を含むLuria−Bertani培地(LB培地)により37℃で一晩培養を行った。
【0073】
LB培地の組成を以下に示す。バクトペプトン1g/L、塩化ナトリウム1g/L、イーストエキストラクト1g/L、最終的な培地のpHは7.0前後に調製された。
【0074】
生育してきたコロニーから目的の発現ベクターCglT−pET19を有するクローンを選択した。選択には大腸菌クローンからプラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて発現ベクターCglT−pET19を抽出したのち上記プライマーによりBigDye(登録商標)Terminator v3.1(アプライドバイオシステムズ社)、PRISM(登録商標) 3100 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)または、PRISM(登録商標)3700 DNA Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)によりDNA配列を読み取った。
【0075】
読み取った遺伝子配列が正確かどうかを確認するため、国立バイオテクノロジー情報センター(NBIC)のホームページを通じ、得られたDNA配列データを用いて、ホモロジー検索を行なって正確性を確かめた。正確な遺伝子配列を有する発現ベクターCglT−pET19はCglTタンパク質を多量発現させるため、再度大腸菌BL21(メルク社製)へ形質転換しタンパク質多量発現大腸菌クローンを得た。
【0076】
CglTを得るため、発現ベクターCglT−pET19を持つ大腸菌BL21をアンピシリンナトリウム含有LB培地で37℃、4時間培養を行った後、イソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(isopropyl−D−thiogalactopyranoside)を1mMの濃度を加えさらに12時間培養を行った。
【0077】
CglT−pET19を持つ大腸菌BL21(DE3)は遠心分離(8,000回転、4℃、10分)により菌体を回収した。回収した菌体は一度−80℃で一晩凍結し、溶菌緩衝液(50 mM リン酸緩衝液、 300 mM 塩化ナトリウム、 10 mM イミダゾール、 pH 8.0)に懸濁したのち、氷中において超音波破砕機により破砕した。得られた溶菌混濁液を遠心分離し、透明な溶菌液と沈殿している未破砕菌体とを分離後、溶菌液のみを回収し0.45μmフィルター濾過を行った。
【0078】
その溶菌液はニッケルアガロースゲルカラム(Ni−NTAアガロースゲル;キアゲン社製)を通して、ヒスタグ融合CglTを得た。さらに溶出を行ったCglTは脱塩カラム(バイオラッド社製)に通して精製した。ヒスタグ融合CglTのタンパク量測定は、必要に応じて蒸留水で希釈後、BCA・タンパク測定キット(サーモサイエンティフィック社製)により測定を行った。タンパク質の検量線はウシ血清アルブミンを使用し作成した。
【0079】
CglTのアミノ酸配列を配列番号6に示す。
【0080】
[セルロソームの製造]
クロストリジウム・サーモセラムJK−S14株(NITE BP−627)を上記したBM7CO−CB培地の炭素源をセロビオースから微結晶セルロース10g/Lへ変更したBM7CO−CL培地を用いて6日間、60℃にて培養を行った。
【0081】
培養後、遠心分離により菌体を除き、その培養液にアモロファスセルロース(リン酸膨潤セルロース)を加え、4℃、一晩にて攪拌しセルロソームをアモロファスセルロースに吸着させた。攪拌後、アモロファスセルロースを回収し5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液で懸濁し、透析チューブ(10kDaカット;スペクトラ社製)に注ぎ、60℃で蒸留水による透析を約6時間行った。なお、透析は1時間おきに新しい蒸留水に交換して行った。
【0082】
この反応により、セルロソームにより分解されたアモロファスセルロースからの反応産物であるセロビオースやセロオリゴ糖は、透析により蒸留水へ拡散し、反応阻害を受けることなく完全に分解することができる。その結果、透析チューブ内にはセルロソームのみを簡易に回収できる。
【0083】
得られた透析液をセルロソーム酵素画分として以降の実験に使用した。セルロソームのタンパク質量は適当な濃度へ蒸留水で希釈後、上記同様にBCA・タンパク測定キットにより測定を行った。
【0084】
β−グルコシダーゼの活性測定は、Wood, WA., Kellog, S.T., 1988. Methods in Enzymology.160, New York: Academic Press.に記載された、p−ニトロフェノールガラクトピラノシドを基質として酵素反応により遊離してくるp−ニトロフェノール量を測定することにより活性(ユニット)を算出した。一分間にμモルp−ニトロフェノールを生成する量を1ユニット(U)の酵素活性と定義した。
【0085】
1%シグマセルタイプ20、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)にセルロソーム0.5mg及びβ−グルコシダーゼを添加した。セルロース分解率は、一定時間おきに、サンプリングを行い、生成してくるセロビオースやグルコースをアミネックスHPX−87Pカラム(バイオラッド社製)による示差屈折検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、Prominence)により測定した。
【0086】
初発糖濃度は、シグマセルタイプ20を0.3gとし、72%硫酸(重量%)を3ml加え、よく攪拌し1時間加水分解を行なった。その後、蒸留水を80ml加え121℃で1時間オートクレーブをかけた後、ガラスフィルターにより濾過し、濾液を得た。この濾液を強アニオンカラムに通したのち、その一部を上記アミネックスHPX−87Pカラム(バイオラッド社製)による示差屈折検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、Prominence)により測定した。測定されたグルコース量は、使用したセルロース重量を参考にグルコース換算での全糖量を算出し100%量とした。
【0087】
セルロソームのみと、セルロソームとβ−グルコシダーゼ共存下における、微結晶セルロース分解率(%:w/w)の結果を図3に示す。図中の黒丸印はセルロソームのみの分解反応、黒三角印はセルロソームと市販アスペルギルス・ニガーのβ−グルコシダーゼ(0.5mg;0.93ユニット)、黒四角印はセルロソームとCglT(0.01mg;0.24U)である。
【0088】
セルロソームのみ、及び市販アスペルギルス・ニガーのβ−グルコシダーゼを併用した場合のセルロース分解能は約40%とほとんど効果が見られず、セロビオースによるセルロソームの阻害が認められた。また、セルロソームと市販アスペルギルス・ニガーのβ−グルコシダーゼの併用はほとんど効果がないことが分かる。一方、セルロソームとCglTの併用はほぼ完全分解できることから、セルロソームにより生成されたセロビオースが効果的にグルコースに分解され、生成物阻害から解除された状態になっていた。
【0089】
したがって、セルロソームとサーモアナエロバクター・ブロッキATCC33075のβ−グルコシダーゼCglTの併用は、市販アスペルギルス・ニガー酵素のβ−グルコシダーゼとの併用よりも極めて高いセルロース分解率を奏することが明らかとなった。
【実施例2】
【0090】
セルロソームの骨格蛋白質(以下CipAという)はセルロース結合モジュールを保有しているために、セルロソームごとセルロースへ吸着することができる。一方、β−グルコシダーゼは糖質に結合可能なモジュールを有していない。したがって、セルロソームをリサイクルする場合には、β−グルコシダーゼを添加し続ける必要があることが想定される。
【0091】
そこでβ−グルコシダーゼの再利用が可能かどうか確認するため、微結晶セルロース(アビセル)を用い、セルロソームとCglTを用いリサイクル反応を行った。リサイクル反応の手順を図4に示す。
【0092】
すなわち、アビセル(微結晶性セルロース)にセルロソームとβ−グルコシダーゼを作用させ、アビセルを加水分解した後、反応液に再度アビセルを加え、アビセルに吸着した酵素を分離して再利用するものである。
【0093】
基質となる1%アビセル、2mgセルロソームと0.5mgのCglT(5ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。
【0094】
24時間の酵素加水分解反応後、残渣を除き、反応液に再度アビセルのセルロース基質を初発濃度と同量添加し、4℃、6時間、酵素を基質に吸着させる。その後緩衝液を加え、再度、酵素加水分解反応をスタートする。2ラウンド目以降の反応にはセルロソーム及びCglTの酵素類を加えることはせず、初発に添加した酵素で再利用可能かどうか反応を行った。
【0095】
結果を図5に示す。ラウンド1回目においては94%、ラウンド2回目では75%と高いセルロース分解率を保っていたが、ラウンド3回目以降、急激に低下し、最終的にラウンド5回目では6%のセルロース分解率であった。
【0096】
この結果はCglTがリサイクル糖化の糖化サイクルを繰り返すことで反応系外へ流出していることを示しており、高いセルロース分解率を保つのに必要な酵素量が不足していることが理解できる。従って、高いセルロース分解率の維持を目指したリサイクル糖化を行うためには、セルロソームとCglTとの反応中の挙動を一致させる必要があることが分かった。
【実施例3】
【0097】
セルロソームと挙動を一致させるために、セルロソーム構造の有する特徴の一部分をCglTに持たせることにより可能となると考えられた。特に、CipAが有するCBMをCglTに持たせることで、挙動を共にすることが可能であると推測できた。しかし、多くのβ−グルコシダーゼでは触媒ドメインのみのタンパク質構造を持ち、CglTにはセルロース結合領域はない。そこで骨格タンパク質CipAが有するCBMを融合させたCglTを作成した。
【0098】
前述したように、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE BP−627)株CBMのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を配列番号2に示す。
【0099】
CBM融合CglTをデザインするに当たり、N末端側にCBMを融合させたタイプ(以下、CBM−CglTとして示す。)とC末端側にCBMを融合させたタイプ(以下、CglT−CBMとして示す。)とをそれぞれ作成した。
【0100】
CBM−CglTの作成にあたり、CBMの増幅にはオリゴヌクレオチドプライマーCBMF1(配列番号7に示す:5´−CGCGGATCCGGTTGGCAATGCAACACCG−3´)およびCBMFusionN(配列番号8に示す:5´−ACGAAATCTCTTGGAAATTTTGCATTCGGATCATCTGACGGCGG−3´)を用いた。
【0101】
オリゴヌクレオチドプライマーCBMF1にはBamHIの制限酵素サイトを付与するようにデザインし、またCBMFusionNにはCglTのN末端アミノ酸配列が一部含まれるようにデザインした。
【0102】
PCRは実施例1と同じ条件下、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14株(NITE BP−627)のゲノムDNAを鋳型としCBM遺伝子断片を増幅した。
【0103】
CglTの作成にあたっては、プライマーCglTFusion(N)(配列番号9に示す:5´−CCGCCGTCAGATGATCCGAATGCAAAATTTCCAAGAGATTTCGTT−3´)、および実施例1記載のCglTR(配列番号4に示す)を用いた。
【0104】
プライマーCglTFusion(N)は、CBMのC末端側を一部重複した形でプライマーをデザインした。それぞれ増幅したCBM遺伝子(3´側にCglTのN末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)及びCglT遺伝子(5´側にCBMのC末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)を鋳型として用い、オリゴヌクレオチドプライマーCBMF1及びCglTRを用い実施例1と同じ条件においてPCR反応を行った。
【0105】
PCR反応により、CBMとCglTとが融合した約1.9kbのDNA断片を得ることができた。
【0106】
C末端側にCBMを融合させたタイプのCglT−CBMの作成において、CglT遺伝子の増幅には実施例1記載のオリゴヌクレオチドプライマーCglTF(配列番号3に示す)及びCglTR−Fusion(C)(配列番号10に示す:5´−CGGTGTTGCATTGCCAACATCTTCGATACCATCATC−3´)を用いた。
【0107】
オリゴヌクレオチドプライマーCglTR−Fusion(C)には、CBMのN末端側を一部重複した形でオリゴヌクレオチドプライマーをデザインした。
【0108】
C末端側へのCBM遺伝子の増幅においては、オリゴヌクレオチドプライマーCBM3F−Fusion(C)(配列番号11に示す:5´−GATGATGGTATCGAAGATGTTGGCAATGCAACACCG−3´)及びオリゴヌクレオチドプライマーCBM3R、(配列番号12に示す:5´−ATTGCTCAGCATTCGGATCATCTGACGGCGGTAT−3´)を用いた。
【0109】
オリゴヌクレオチドプライマーCBM3F−Fusion(C)には、CglTのC末端側のアミノ酸配列をコードする遺伝子が一部重複した形でデザインした。
【0110】
オリゴヌクレオチドプライマーCBM3Rは、制限酵素Bpu1102の切断サイトを付与するようにデザインした。
【0111】
それぞれ増幅したCglT遺伝子(3´側にCBMのC末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)及びCBM遺伝子(5´側にCglTのN末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を含む。)を鋳型として用い、オリゴヌクレオチドプライマーCglTF及びCBM3F−Fusion(C)を用い、実施例1と同じ条件でPCR反応を行った。
【0112】
PCRの結果、CglTとCBMが融合した場合において得られる約2kbのDNA断片を得ることができた。
【0113】
PCRで得られた2つの融合遺伝子をそれぞれBamHIとBpu1102の制限酵素により切断後、精製を行い、pET19bのBamHIとBpu1102制限酵素サイト間へ挿入し、CBM融合CglT発現プラスミドを作成した。2つの発現プラスミドを大腸菌BL21へ導入して形質転換を行い、それぞれ発現株を取得した。
【0114】
N末端側にCBMを融合させたCBM−CglTの遺伝子配列を配列番号13に、C末端側にCBMを融合させたタイプのCglT−CBMの遺伝子配列を配列番号14に示した。
【0115】
CBMを融合したβ−グルコシダーゼの一般的な特徴を確認するため、それぞれの組換えタンパク質を発現し精製した。精製したタンパク質は両者ともN末端側にヒスチジンタグが付与される構造となることから、上記記載の組換えCglTと同様にニッケルアガロースカラムにおいてSDS−PAGEで単一バンドになるまで精製を行った。
【0116】
精製したCBM融合型β−グルコシダーゼのセルロース結合能を測定するため、セルロースを使った結合能を試験した。セルロース結合能は精製タンパク質0.2mgを用い、10mgアビセルを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)と混合し、4℃で一晩放置した。その後、遠心分離により上清と沈殿(すなわち、セルロース)を分離したのち、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で3回洗浄を行った。再度遠心分離により沈殿を回収したのち、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で懸濁し、SDS−PAGEに供した。
【0117】
CglTと比較した場合、CBM−CglT及びCglT−CBMともに沈殿画分に精製タンパク質と同一のバンドが認められたが、CglTは上清及び緩衝液洗浄画分に認められたことから、この融合したCBM遺伝子はセルロース結合能を有しCglT内で機能していることが明らかとなった。
【0118】
また、β−グルコシダーゼ活性が変化しているかを確認するために、実施例1に記載した方法でCglT、CBM−CglT及びCglT−CBMのβ−グルコシダーゼ活性を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
CglTは25U/mgタンパク質と非常に高い活性を示したのに対し、CBM融合型のCglTに関し、CBM‐CglTにおいては4U/mgタンパク質、CglT‐CglTでは2ユニット/mgタンパク質と劇的なβ−グルコシダーゼ活性の低下を招いた。これはCBMを融合したことによる立体構造変化により、酵素触媒部分へ影響したものと考えられた。
【0121】
CBM−CglT又はCglT−CBMをセルロソームと併用した際に、β−グルコシダーゼの活性が低下の影響を確認するため、セルロース分解率を測定した。
【0122】
反応条件は1%アビセルを用い、上記記載の緩衝液と条件を用いて測定を行った。結果を図6に示す。
【0123】
図中、黒三角印がセルロソームのみでの反応、白丸印がセルロソームとCglTを併用した反応、白四角印がセルロソームとCBM−CglTを併用した反応、黒四角印がセルロソームとCglT−CBMを併用した反応である。
【0124】
セルロソームのみでは72時間後に約60%のセルロース分解率しか得られず、セロビオース蓄積による反応阻害が生じていることが分かる。
【0125】
セルロソームとCglTの併用では阻害が解除され、ほぼ100%のセルロース分解率を得ることができる。一方、CBM融合CglTでは、上記に示したβ−グルコシダーゼ活性の低下から考察して、セルロソームのみのセルロース分解率、もしくは若干の効果しか得られないだろうと考えられたが、驚くことにCglTと同様にほぼ100%のセルロース分解率を得ることができた。
このことは、一般的なβ−グルコシダーゼ基質として使用されるp−ニトロフェノールグルコピラノシドではうまく活性を示せないが、セルロース存在下においてはCBMの機能により活性が復帰することが明らかとなった。したがって、CBMをCglTと融合させるデメリットは人工基質を使用した際の活性低下に限定されることになる。
【0126】
なお、N末端側及びC末端側のどちらにCBMを融合したCglTを用いても、セルロソームとの併用においてセルロース分解率に差異は無いことから、以降の実施例においてはCBM−CglTを使用することにした。
【実施例4】
【0127】
実際にCBM−CglTを用いセルロソームと共に挙動を一致させることができるかどうかを確認するために、シグマセルを用いて図4に準じてリサイクル糖化反応を行った。反応条件は実施例2と同じ条件、すなわち、1%シグマセルと2mgセルロソームと0.5mg CBM−CglT(0.8ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図7に示す。
【0128】
セルロソーム及びCBM−CglTを併用することにより、初回から90%以上のセルロース分解率を維持しながら、少なくとも5回繰り返し利用することが可能であることが明らかとなった。この結果はセルロソームのCBMをβ−グルコシダーゼのような補助酵素に融合させることで、反応中の挙動を同じくさせ、補助酵素自身もセルロソームと同じく回収が可能になることを示しており画期的である。
【0129】
リグノセルロース系バイオマスにおいてもセルロソーム及びセルロース結合モジュール融合β−グルコシダーゼを併用するリサイクル糖化法が有効か確認するため、前処理を行った稲わらを用いてリサイクル糖化反応を行った。
【0130】
前処理としてアンモニア浸漬を行った。アンモニア浸漬は乾燥稲わらを10gに10倍量の28%アンモニア水溶液を加え、密閉容器に入れて60℃で7日間放置した。その後、蒸留水により中性になるまでよく洗浄を繰り返し、水を絞ったものをアンモニア浸漬処理稲わらサンプルとした。
【0131】
アンモニア浸漬処理稲わらの全糖成分や量を測定するため、実施例1記載の硫酸加水分解により加水分解液を調製後、高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
アンモニア浸漬処理稲わらを使用したリサイクル糖化法の工程を図8に示す。基本的に図4と同様のサイクルであるが、基質が1%セルロース量を含むアンモニア浸漬処理稲わらである点で異なる。また加水分解後残存する残渣を系外から除く工程を厳密に行った。残渣を系外から除くことにより、再利用回数を増やすことができる。
【0132】
酵素量や反応量は実施例3の条件である2mgセルロソームと0.5mgCBM−CglT(0.8ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図9中の「前処理のみ」と記載したレーンに示した。初回ラウンドでは90%以上のセルロース分解率を示したものの、2ラウンド目以降、急激にセルロース分解率の低下が認められ、3ラウンド目では約12%のセルロース分解率まで低下した。反応溶液中のタンパク質量の測定によれば、反応開始後から急激に反応溶液中のタンパク量が低下していることから、アンモニア浸漬処理稲わらによる酵素の非特異的吸着が生じていることが分かった。
【0133】
非特異的吸着を抑制させるために、非特異的吸着を起こすと考えられるリグノセルロース系バイオマスのリグニンを含む酸不溶な成分部位を何らかの方法でコーティングさせることでリサイクル糖化を持続させることができるか検討を行った。
【0134】
セルロソームとCBM−CglTの併用により反応スタートする前に、一度ブロッキング処理として、各種タンパク質や界面活性剤により浸漬を行ったアンモニア浸漬処理稲わらを用いた。このリサイクル工程図を図10に示す。
【0135】
ブロッキング処理方法は、前処理したバイオマス1gあたり0.2重量%溶液で4℃又は、室温にて6時間〜15時間浸漬処理を行った。また蒸留水に不溶なブロッキング試薬は薄い酸やアルカリ溶液により溶解したものを用いた。この工程を繰り返す際に添加するブロッキング済みアンモニア浸漬処理稲わらのセルロース含量は先のブロッキング処理無の工程と同じである。
【0136】
コーティング剤として、タンパク質ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ・アルドリッチ社製)、ゼラチン(和光純薬社製)、スキムミルク(和光純薬社製)、大豆タンパク質(和光純薬社製)や培地成分であるペプトン(ディフコ社製)、ポリペプトン(ディフコ社製)、アミノ酸であるアルギニン(シグマ・アルドリッチ社製)、各種界面活性剤[Tween 20,80(和光純薬社製)、Triton X(和光純薬社製)、SDS(和光純薬)及び高分子ポリマー[PEG400−PEG20000(和光純薬社製)]を用いた。
【0137】
タンパク質においては、ウシ血清アルブミン(BSA)やスキムミルク、カゼイン、界面活性剤では非イオン性界面活性剤Tween20やTween80、及び高分子ポリエチレングリコール(PEG20000)に高いセルロース分解率を維持したままでのリサイクル回数継続の効果が認められた。特にスキムミルク、カゼイン、Tween80により前処理稲わらをコーティング処理することで90%以上の高いセルロース分解率を3ラウンドまでリサイクル工程を繰り返せることが分かった。
【実施例5】
【0138】
セルロソームとCBM−CglTの併用によるリサイクル糖化法とブロッキング処理を用いた組み合わせによる糖化方法は、稲わら以外のリグノセルロース系バイオマスにおいても効果があるかを試験するため、上記記載のアンモニア浸漬処理稲わらの他に、アルカリ蒸解処理した杉パルプ、使用済みオフィス紙(水洗のみ)を用いてリサイクル糖化試験を行った。
【0139】
アルカリ蒸解処理杉パルプの調製は、杉チップあたり酸化ナトリウム換算で23%となるように水酸化ナトリウムを加え、耐圧容器中で170℃、3時間反応を行った。その後、十分に水洗し、亜塩素酸(対パルプ当たり3.5%)により60℃、30分間で漂白処理を行った。さらに対杉パルプ当たり4%水酸化ナトリウムで60℃、30分間処理を行い中性になるまで水洗を繰り返したものを使用した。
【0140】
オフィス紙は、使用済みオフィス紙(再生紙)をシュレッダーにより裁断後、蒸留水により1時間洗浄したものを使用した。
【0141】
カゼイン及びツイーン80によるブロッキング処理の場合、実施例4記載の方法と同様に各セルロース系バイオマスに対して処理を行いリサイクル糖化反応に使用した。
【0142】
糖化反応における酵素濃度は実施例4と同じく、2mgセルロソームと0.5mg CBM−CglT(0.8ユニット)を用い、5mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸緩衝液(pH6.0)、60℃にてリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図11A、図11B、図11Cに示す。
【0143】
図11A〜図11Cの結果から、セルロソームとCBM−CglTとの併用によるリサイクル糖化反応において、前処理のみでは、アンモニア浸漬処理稲わらでは2ラウンド目から、アルカリ蒸解杉パルプ、オフィス紙では3回目から急激なセルロース分解率の低下が見られ、その後のサイクルも低下していることが分かる。一方、カゼインやツイーン80によるブロッキング処理によりアンモニア浸漬処理稲わらでは4回、アルカリ蒸解杉パルプでは5回のサイクルでも70%以上の高いセルロース分解率を保ったままリサイクル糖化できることが明らかとなり、稲わら以外の他のバイオマスにおいても本リサイクル糖化方法は適応可能であることが示された。
【0144】
セルロース系の基質がブロッキング処理を施されたリグニンを含むセルロース系バイオマスである場合、酵素のリサイクル回数を増加させるためには、加水分解後残存する残渣を系外から除くことも大切である。残渣を系外から除かない場合と、除いた場合の再利用回数を比較するため、残渣を残したままでのカゼインでブロッキングしたアンモニア浸漬した稲わらを用いた際のセルロース分解率を図12に示す。
【0145】
残渣を反応系内に残すことにより、リサイクル回数に伴う糖化効率の低下が認められる。この現象は、系内に残ったブロッキング処理したセルロース系バイオマスと酵素複合体の反応が進むことで、ブロックした場所以外の酵素非特異的吸着部分が露出し始め、系内で働いている酵素を奪うために、再利用を継続すると糖化効率が低下してくるものと考えられる。
【実施例6】
【0146】
セルロソームのように酵素複合体になっておらず、個々のフリーの酵素によりリグノセルロースを分解する作用メカニズムを持つカビ酵素においても、本方法で示したリサイクル糖化工程により酵素リサイクル反応が可能であるかどうかを確認するための試験を行った。試験においては、市販カビ酵素を用い前処理稲わらでの前処理のみ稲わらや、ブロッキング処理後のリサイクル糖化能に関して同様に検討を行った。
【0147】
市販酵素としてトリコデルマ・リーゼイ由来セルラーゼ(シグマ・アルドリッチ)、またカビβ−グルコシダーゼとして実施例1記載のアスペルギルス・ニガー由来を使用した。リサイクル糖化の反応として、市販セルラーゼ酵素2mg、β−グルコシダーゼ0.5mg、100mM酢酸緩衝液(pH5.0)、50℃の条件で、図8及び図10に示したようにリサイクル糖化反応をスタートした。結果を図13に示す。
【0148】
アンモニア浸漬処理稲わらでは、セルロソームとCBM−CglTの併用でのリサイクル糖化による傾向と同様に1ラウンド目のセルロース分解率は90%以上であるが、2ラウンド目以降急激にセルロース分解率の低下が認められ、その基質であるアンモニア浸漬処理稲わらによる酵素の非特異的吸着が起こっていることが示唆された。
【0149】
一方、セルロソームリサイクル糖化において効果のあった、カゼインやツイーン80でブロッキング処理を行った前処理稲わらでは、2ラウンド目からブロッキング処理なしの時と同様にセルロース分解率が急激に低下する現象が認められた。このことはカビ酵素では単に基質への非特異的吸着で酵素回収不能になっているだけでなく、糖化に重要な酵素が、回収されず系外へ消失していることが示唆された。これらの結果は、カビ酵素のような個々の酵素が遊離した状態でそれぞれ働く糖化酵素の場合、本発明で示しているリサイクル糖化法は不適であり、セルロソームのような必要な酵素がセットとなっている酵素複合体を用いることが重要であることが明らかとなった。
【実施例7】
【0150】
ブロッキング処理したセルロース系バイオマスではなく、セルロソームに各種タンパク質、高分子ポリエチレングリコール又は界面活性剤を少量添加しても効果があるかを確認した。
【0151】
セルロソーム酵素画分及びβ−グルコシダーゼ(CBM−CglT)に対し0.2%(容量%)の濃度でカゼイン又はスキムミルクをそれぞれ添加した。このブロッキング剤を含む酵素溶液を用い、ブロッキング処理なしのアンモニア浸漬稲わら及びアルカリ蒸解処理杉パルプを用い、実施例3と同じ条件で酵素リサイクル試験を行った。
【0152】
結果を図14に示す。カゼイン又はスキムミルクを添加した酵素溶液は、添加のない酵素溶液に比べ、再利用回数の増加が認められ、少なくとも3回目まで90%以上の糖化効率を維持することができた。セルロース系バイオマスにブロッキング処理した場合と同じ効果を示すことが明らかとなった。
【実施例8】
【0153】
嫌気性細菌由来の酵素利用の場合、酵素が働く環境も嫌気性であることから、通常のジチオトレイトール(DTT)や2−メルカプトエタノールなどの還元剤を少量添加し酵素反応させることがある。セルロソームも古くから反応溶液に5〜10mM程度のジチオトレイトールを添加して酵素反応を行わせてきた(非特許文献3)。そこで、上記記載のブロッキング剤を含んだ酵素溶液にDTTを10mM加えて上昇効果があるかどうかを確認した。
【0154】
結果を図15に示す。再利用の都度、糖化効率が減少しており、3回目の再利用で糖化効率は最初に比べ50%以上低下している。
【0155】
この現象は、還元作用のある他の2−メルカプトエタノール、システインやアスコルビン酸の添加でも2回目から3回目において糖化効率の低下という現象を示した。したがって、上記酵素再利用においては、DTTなど還元作用の持つ化合物剤を除くことが重要であることが明らかとなった。
【受託番号】
【0156】
NITE BP−627(クロストリジウム・サーモセラムJK−S14株)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合した酵素を再利用する、酵素の再利用方法。
【請求項2】
前記セルロースに結合可能なモジュールがセルロソーム由来である、請求項1記載の酵素の再利用方法。
【請求項3】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素が、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素である、請求項1記載の酵素の再利用方法。
【請求項4】
前記酵素が、セルロソーム及びセルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼである、請求項1記載の酵素の再利用方法。
【請求項5】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼが、セルロース結合モジュールを含むキメラ酵素である、請求項4記載の酵素の再利用方法。
【請求項6】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼが、好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼとクロストリジウム属の生産するセルロソーム由来のセルロース結合モジュールとのキメラ酵素である、請求項4記載の酵素の再利用方法。
【請求項7】
前記セルロース系の基質は、タンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤で処理されたリグニンを含むセルロース系バイオマスである、請求項1〜6のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項8】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素が、タンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤を含む酵素溶液である、請求項1〜6のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項9】
セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させる前に、酵素反応後の残渣を除去することを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項10】
タンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤の存在下で、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質と反応させる、請求項1〜9のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項11】
還元剤の非存在下、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に反応させる、請求項1〜10のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項12】
好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼ活性を示す領域とクロストリジウム属の生産するセルロソーム由来のセルロースに結合可能なモジュールとを含む、β−グルコシダーゼ。
【請求項1】
セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させ、セルロース系の基質に結合した酵素を再利用する、酵素の再利用方法。
【請求項2】
前記セルロースに結合可能なモジュールがセルロソーム由来である、請求項1記載の酵素の再利用方法。
【請求項3】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素が、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素である、請求項1記載の酵素の再利用方法。
【請求項4】
前記酵素が、セルロソーム及びセルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼである、請求項1記載の酵素の再利用方法。
【請求項5】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼが、セルロース結合モジュールを含むキメラ酵素である、請求項4記載の酵素の再利用方法。
【請求項6】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有するβ−グルコシダーゼが、好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼとクロストリジウム属の生産するセルロソーム由来のセルロース結合モジュールとのキメラ酵素である、請求項4記載の酵素の再利用方法。
【請求項7】
前記セルロース系の基質は、タンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤で処理されたリグニンを含むセルロース系バイオマスである、請求項1〜6のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項8】
前記セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素が、タンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤を含む酵素溶液である、請求項1〜6のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項9】
セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に結合させる前に、酵素反応後の残渣を除去することを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項10】
タンパク質、高分子ポリエチレングリコール及び界面活性剤から選択される1種以上のブロッキング剤の存在下で、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質と反応させる、請求項1〜9のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項11】
還元剤の非存在下、セルロースに結合可能なモジュールを有する酵素をセルロース系の基質に反応させる、請求項1〜10のいずれかに記載の酵素の再利用方法。
【請求項12】
好熱性細菌由来のβ−グルコシダーゼ活性を示す領域とクロストリジウム属の生産するセルロソーム由来のセルロースに結合可能なモジュールとを含む、β−グルコシダーゼ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図9】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図9】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−39999(P2012−39999A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44541(P2011−44541)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、「酵素複合体を活用したリグノセルロース系バイオマスの効率的糖化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501174550)独立行政法人国際農林水産業研究センター (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、「酵素複合体を活用したリグノセルロース系バイオマスの効率的糖化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501174550)独立行政法人国際農林水産業研究センター (22)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]