説明

酵素含有造粒物の製造方法

【課題】酵素を顆粒状に造粒する際にも酵素の失活を生じさせず、高活性な酵素含有造粒物を製造する方法を提供する。
【解決手段】次に示す(A)、(B)の工程を有する酵素含有造粒物の製造方法であって、(A)及び/又は(B)の工程を、アミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上の存在下にて行う酵素含有造粒物の製造方法。 (A):酵素を含有した溶液を乾燥し、粉末状酵素製剤とする工程 (B):工程(A)で得られた粉末状酵素製剤を乾式造粒する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵素含有造粒物の製造法、特に洗剤用酵素含有造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用の洗浄剤や漂白剤には、その洗浄力をより高めるために各種の酵素が配合されている場合が多い。この酵素は洗剤が使用される洗濯時に水中に溶解して効果を発揮する。従って粉末洗剤が製造されてから使用にいたるまでの期間、粉末洗剤中で酵素はできるだけ失活せずに機能を保持し続けることが必要である。そのためには酵素成分と洗剤成分あるいは外気との接触をできるだけ最小にしなければならない。また安全性の面から、製造時の作業者や使用時の消費者が酵素との接触をできるだけ避ける必要もある。そのために通常、酵素は粉末洗剤に配合する際には造粒物として配合されている。
【0003】
これらの酵素は、水の存在により経時的に失活するため、様々な改善方法が開発されている。例えば、酵素水溶液の安定化のために、ゼラチン、多価アルコール及びエチルアルコールを添加する方法(特許文献1)、アルカリプロテアーゼにアミノ酸を混合し、洗剤基材中あるいはアルカリ溶液中で酵素を安定化させる技術(特許文献2)等がある。また現在では、保存中に失活させず洗浄時に十分な活性を発現させるために、洗剤用酵素粉末を水溶性核物質及び水溶性有機バインダーと共に、攪拌転動造粒機により攪拌しながら加熱後冷却し、乾式造粒し顆粒状とする方法が主流となっている(特許文献3)。更に、得られる製剤の自由流動性の改善、保存時の吸湿防止、酵素の失活防止のためにイオン性活性剤を含有させるという技術もある(特許文献4)。また、酵素を水溶性高分子により化学修飾した後、界面活性剤とホウ酸化合物とを含有させ、水溶液中での酵素の安定性を向上させるという技術もある(特許文献5)。
【特許文献1】特公昭41−152号公報
【特許文献2】特開昭61−108387号公報
【特許文献3】特公平4−82040号公報
【特許文献4】特開平10−204494号公報
【特許文献5】特開2000−17299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、前述の酵素顆粒を製造する従来の技術においては、酵素含有溶液から粉末状酵素製剤を調製する工程までは酵素の失活は抑えられているが(特許文献1、2)、粉末状酵素製剤を用いて造粒を行う工程(特許文献3、4)において、依然として酵素失活が起こり得るという問題を見出した。酵素の失活が生じてしまうと、酵素含有造粒物は洗浄剤としての性能が発揮できず、商品価値が低下することとなる。
従って、本発明の目的は、酵素を顆粒状に造粒する際にも酵素の失活を抑制し、高活性な酵素含有造粒物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らが検討したところ、酵素粉末を顆粒状に造粒する際に、ある程度の高温及び/又は高シェア下に長時間晒されることで酵素の失活が起きることを見出した。また、その失活を防止する成分及び方法について検討した結果、酵素溶液を乾燥して粉末状酵素製剤とする工程、及び/又は得られた粉末状酵素製剤を造粒する工程を、アミノ酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の存在下にて行うことにより、酵素の活性を低下させることなく酵素含有造粒物を製造することができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次に示す(A)、(B)の工程を有する酵素含有造粒物の製造方法であって、(A)及び/又は(B)の工程を、アミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上の存在下にて行う酵素含有造粒物の製造方法を提供するものである。
(A):酵素を含有した溶液を乾燥し、粉末状酵素製剤とする工程
(B):工程(A)で得られた粉末状酵素製剤を乾式造粒する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により、酵素を顆粒状に造粒する際にも酵素の失活を抑制し、高活性な酵素含有造粒物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における酵素は、洗剤へ配合して効果を発揮する酵素であれば特に制限されないが、プロテアーゼ、エステラーゼ、カルボヒドラーゼから選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。プロテアーゼの具体例としては、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、ケラチナーゼ、エラスターゼ、ズブチリシン、パパイン、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等を挙げることができる。エステラーゼの具体例としては、ガストリックリパーゼ、パンクレアチックリパーゼ、植物リパーゼ類、ホスホリパーゼ類、コリンエステラーゼ類、ホスホターゼ類等が挙げられる。カルボヒドラーゼとしては、セルラ−ゼ、マルターゼ、サッカラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、α−及びβ−グリコシダーゼ等が挙げられる。これらの中でも、タンパク分解酵素、即ちプロテアーゼを用いることが、酵素造粒時の酵素失活抑制効果の点から好ましい。酵素含有造粒物中の酵素の含有量は特に制限はないが、洗剤に配合して使用する際の効果から考えて一般には0.01〜30質量%(以下、単に「%」と表記する)が好ましく、より好ましくは1〜30%である。
【0009】
本発明においては、アミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上(全てを包含する場合、以下単に「アミノ酸等」と記載する)の存在下で操作を行うことが必要である。なお、「アミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上の存在下」とは、製造工程中でアミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上を生成させる場合を含む。アミノ酸としては、グリシン、アラニン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられ、その塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられるが、中でもグリシン、グルタミン酸ナトリウム、アラニン、リジンが、コスト、酵素造粒時の酵素失活抑制効果の点から好ましい。また、本発明において、製造工程中でアミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上を生成させるためには、酵素能を有しないタンパク質又はその分解物を使用することができる。この場合、酵素としてプロテアーゼを用いることが、これらの成分がプロテアーゼによって分解されることによりアミノ酸を生成する点から好ましい。酵素能を有しないタンパク質又はその分解物としては、各種動植物由来の蛋白質を利用することができるが、例えば、コラーゲン由来のものや大豆タンパク等を利用することができる。
【0010】
コラーゲンとは動物の骨、軟骨、腱、皮膚、魚鱗等に存在する繊維状の難溶性物質を指すが、これを酸やアルカリで前処理したのち、加熱することで分子構造を壊して可溶化し、ゼラチンとしたものであることが、酵素造粒時の酵素失活抑制効果の点から好ましい。
【0011】
また、更にゼラチンを酵素分解等の方法により分解したコラーゲンペプチドを用いることもできる。
【0012】
大豆タンパクとは、乾燥大豆中に30〜35%程度含まれているタンパク質であり、大豆から大豆油を抽出した後の脱脂大豆を原料として製造される。また、その酵素分解物又は発酵生産物である大豆ペプチドは、アミノ酸の数が平均3〜6個連なったオリゴペプチドとして存在しているため、溶解性の点で優れている。
【0013】
本発明においては、工程(A)として、酵素を含有した溶液を乾燥し、粉末状酵素製剤とする工程が必要である。酵素溶液中のアミノ酸等は、酵素固形分100質量部(以下、単に「部」と表記する)に対して5〜100部であることが、酵素失活抑制効果の点から好ましく、更に10〜70部、特に20〜50部であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、酵素溶液中にイオン性界面活性剤を含有させることが乾燥後の粉末状酵素製剤の物性の点から好ましい。イオン性界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩(AES)、アルキル又はアルケニル硫酸塩(AS)、オレフィンスルフォン酸塩(AOS)、アルカンスルフォン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩又はエステル、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、カルボン酸型高分子界面活性剤などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、カルボキシ又はスルホベタイン型界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、モノ又はジ長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩などが挙げられる。イオン性界面活性剤の含有量は、酵素固形分100部に対して0.01〜0.5部とすることが、乾燥後の粉末状酵素製剤の物性を改善する点、酵素失活抑制効果の点から好ましく、更に0.03〜0.3部、特に0.05〜0.2部とすることが好ましい。
【0015】
本発明においては、酵素溶液中に、粉末状酵素製剤とした際に酵素活性を一定に保つための希釈剤を必要に応じて配合することが出来る。希釈剤としては、例えば硫酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸又はその塩、糖類等が挙げられる。希釈剤の配合量は、工程(B)での操作性、コストの点から酵素固形分100部に対して50〜300部であることが好ましい。
【0016】
更に具体的には、硫酸塩として硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸第1鉄、チオ硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムハロゲン化物等が挙げられ、ハロゲン化物として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カリウム等が挙げられ、炭酸塩として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、リン酸塩としてリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸2水素カリウム、ピロリン酸ナトリウム塩等が挙げられ、ケイ酸塩としてケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられ、ホウ酸又はその塩としてホウ砂、ホウ酸カリウム、ホウ酸等が挙げられ、糖類として全ての単糖、全ての2糖、例えば乳糖、マルトース、及びトレハロース等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0017】
本発明においては、酵素溶液を調製した後、これを乾燥し、粉末状酵素製剤とすることが必要である。乾燥手段としては噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥により粉末状酵素製剤を製造するには、通常の噴霧乾燥機を用いて、上記酵素溶液を乾燥することができる。噴霧乾燥機には、通常ノズル型とディスク型とがあるが、粉末状酵素製剤の粒径をコントロールする必要がある場合に使い分けることができる。小さい粒径(1μm以下)の製剤を製造する場合はノズル型が好ましく、大きい粒径の製剤を製造する場合はディスク型が好ましい。
【0018】
噴霧乾燥機における熱風温度は100〜200℃、更に130〜170℃とすることが好ましく、また、排風温度は50〜100℃、更に60〜100℃とすることが乾燥効率と酵素失活抑制の点から好ましい。
【0019】
本発明において、工程(A)中の乾燥をアミノ酸等の存在下で行う方法としては、予めアミノ酸等を酵素溶液と接触させて溶解しておけば良く、希釈剤の配合前、後又は同時のいずれでも構わない。
【0020】
本発明においては、工程(B)として、工程(A)で得られた粉末状酵素製剤を乾式造粒する工程が必要である。乾式造粒とは、バインダーとして水を使用しない造粒法を意味し、この場合、造粒機中の水分量は0〜10%、更に0〜5%、特に0〜3%とすることが、造粒中の酵素失活抑制の点から好ましい。また、造粒操作の形式としては押し出し造粒、転動造粒、解砕造粒、流動層造粒、噴霧造粒、破砕造粒等が挙げられる。このうち、転動造粒法、特に攪拌転動造粒法によることが造粒収率、更には造粒時の酵素失活抑制の点から好ましい。乾式造粒するに際しては、粉末状酵素製剤の他に添加剤として、核物質、バインダーを用いることが好ましい。また、いずれも水溶性のものであることが酵素含有造粒物の溶解性の点から好ましい。
【0021】
水溶性核物質としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ソーダ、砂糖等を挙げることができる。水溶性核物質は、平均粒子径が200〜1200μm、更に350〜850μm、特に425〜700μmであることが、造粒収率の点から好ましい。更に、粒子径が200μm以下のものが10%以下、更に5%以下、特に3%以下であることが好ましく、また、粒子径1200μm以上のものが5%以下、更に3%以下、特に1%以下であることが同様の点から好ましい。また、水溶性核物質は平均粒子径が350〜850μmの範囲内のものが85%以上、更に425〜700μmの範囲内のものが80%以上であることが同様の点から好ましい。
【0022】
水溶性バインダーとしては、融点或いは軟化点が25〜90℃の水溶性有機バインダーを用いることが、保存中の造粒物のケーキングの抑制、造粒物の溶解性、造粒時の酵素失活抑制の点から好ましい。融点或いは軟化点は、更に30〜80℃、特に35〜70℃であることが同様の点から好ましい。具体的物質としては、(a)ポリエチレングリコール又はその誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール共重合体からなる群より選ばれる水溶性高分子、(b)ポリオキシエチレン・アルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、(c)平均分子量が4000以上のポリカルボン酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。中でもポリエチレングリコールが、酵素含有造粒物の溶解性の点から好ましい。
【0023】
水溶性有機バインダーの使用量は、バインダー毎に性質の相違があるので一概にはいえないが、得られる酵素造粒物の酵素活性をできるだけ高めるためには、できるだけ少量でバインダー効果が発現するものが一般には好ましい。そのため、これらの水溶性有機バインダーは、酵素含有造粒物中に5〜50%含有することが好ましく、更に10〜30%含有することが好ましい。
【0024】
本発明において、工程(B)をアミノ酸等の存在下で行う方法としては、アミノ酸等を粉末状のままで他の原料と同様に配合し乾式造粒を行えば良く、添加順序は特に問わない。
【0025】
本発明においては、工程(A)又は(B)のいずれか一方、又は工程(A)及び(B)の両方をアミノ酸等の存在下で行うことにより、工程(B)の際に酵素の失活を抑制する効果が得られるが、工程(A)をアミノ酸等の存在下で行うことが当該効果の点から好ましい。また、粉末物性を良好(安息角が低い)とし、製造工程における操作を容易とする点からは、工程(A)はアミノ酸等の存在下で行わず、工程(B)のみをアミノ酸等の存在下で行うことが好ましい。また、工程(A)及び工程(B)をアミノ酸存在下で行うことは、工程(B)の操作性の点から好ましい。
【0026】
本発明においては、造粒の際に、更に必要に応じて粉末状の増量剤を添加することができる。増量剤としてはアルカリ金属或いはアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、塩酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の無機塩を用いることが好ましい。中でも硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の水溶性無機アルカリ金属塩が洗浄性能に影響等がない点から好ましい。また他の増量剤としてクエン酸ナトリウム等の水溶性有機酸塩、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ゼオライト、炭酸マグネシウム、活性白土、カオリン、ケイソウ土、ベントナイト、パーライト、酸性白土等が挙げられる。
【0027】
更に、本発明においては、各種のカルシウム塩、マグネシウム塩等の無機塩、或いは界面活性剤、糖、カルボキシメチルセルロース等の有機物を用いることも可能である。また、色素や染料・顔料を配合して、酵素顆粒に着色することもできる。
【0028】
前記の攪拌転動造粒機とは、攪拌羽根を備えた主攪拌軸を内部の中心に有し、更に混合を補助し粗大粒子の発生を抑制するための補助攪拌軸を一般的には主攪拌軸と直角方向に壁面より突出させている。このような構造を有する攪拌転動造粒機としては、主攪拌軸が垂直に設置されているものとしてヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))、ハイスピードミキサー(深江工業(株))、バーチカルグラニュレーター(富士産業(株))等を挙げることができる。主攪拌軸が水平に設置されているものとしてはレディゲミキサー(松坂技研(株))、プローシェアミキサー(太平洋機工(株))等が挙げられ、本発明においてはいずれでもよい。
【0029】
造粒工程により得られた酵素含有造粒物の粒径は、特に制限はされないが、平均粒径として200〜3000μm、更に350〜1000μmの範囲であることが造粒収率、あるいは水への溶解性の点から好ましい。
【0030】
本発明の方法により製造された酵素含有造粒物は、被覆しなくても用いることができるが、被覆をすると更に酵素の保存安定性が向上するので好ましい。酵素含有造粒物の被覆剤としては、特に制限されないが、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デンプン誘導体等の水溶性被膜形成ポリマー;これらのポリマーとタルク、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム等の水溶性又は難溶性無機粒子又はアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩等の保護剤等との組み合わせが挙げられる。被覆剤は酵素含有造粒物100部に対して0.01〜0.7部、更に0.05〜0.6部とすることが酵素の保存安定性向上効果の点から好ましい。
【0031】
被覆方法としては、流動層造粒機、コーティングパン式造粒機、攪拌造粒機等の装置により常法により被覆する方法が挙げられる。
【0032】
本発明の方法により製造された酵素含有造粒物は、洗浄剤組成物の配合成分として有用であり、これを配合した洗浄剤組成物は、衣料用、食器用、住居用等の洗浄剤として使用することができる。
【実施例】
【0033】
実施例1〜9、比較例1及び参考例
〔粉末状酵素製剤の製造(工程(A))〕
Bacillus sp. KSM-9865(FEM-P18566)由来のプロテアーゼ(酵素固形分4.5%)溶液(第4級アンモニウム塩(コータミン60W、花王(株))を酵素固形分100部に対し0.1部含有)に、希釈剤として硫酸ナトリウムを配合し、更に、表1に示すアミノ酸等を配合し又は配合せず、酵素溶液を調製した。得られた酵素溶液を、アトマイザー式噴霧乾燥機にて、アトマイザー回転数12,000r/min、熱風温度165℃、排風温度75℃で噴霧乾燥し、粉末状酵素製剤を得た。得られた粉末状酵素製剤の活性収率を表1に示した。なお、アラニンはβ−アラニン、ゼラチンは「ゼラチンR」(新田ゼラチン(株))、大豆蛋白は「ニューフジプロ−AE」(不二製油(株))を用いた。
【0034】
〔酵素含有造粒物の製造(工程(B))〕
前記方法により製造した粉末状酵素製剤11%、水溶性核物質として塩化ナトリウム55%、水溶性有機バインダーとしてポリエチレングリコール6000(花王(株))5%、硫酸ナトリウム29%を配合し、更に、実施例8及び9については粉末状のアミノ酸を表1に示す量配合した。なお、塩化ナトリウムは平均粒子径610μm、200μm以下の粒子3%、1200μm以上の粒子0%のものを使用した。
次に、ハイスピードミキサーFS−5型(深江工業(株))に前記配合の原料を3.75kg投入し、ジャケットに90℃の温水を流しながら、アジテーター540r/min、チョッパー900r/minで攪拌混合を行い、内容物を88℃まで上昇させた。その後温水を止め、冷却水をジャケットに流し、更に、ミキサー内に空気を吹き込むことで54℃まで冷却した。なお、原料投入から約1時間15分の造粒操作により酵素含有造粒物を得た。得られた酵素含有造粒物の活性収率を表1に示した。
【0035】
〔活性収率の算出法〕
工程(A)における活性収率=(粉末状酵素製剤の蛋白比活性/酵素溶液の蛋白比活性)×100(%)
工程(B)における活性収率=(酵素含有造粒物の蛋白比活性/粉末状酵素製剤の蛋白比活性)×100(%)
【0036】
〔安息角の測定法〕
パウダテスタ(ホソカワミクロン(株))を用いて、定法に従い測定を行った。すなわち、粉末状酵素製剤を標準篩い(目開き710μm)上に乗せ、篩いを振動させることにより粉末状酵素製剤をロート経由で流出させ、測定テーブル上に落下させた。その後、安息角が一定に達したところで粉の流出を止めて安息角を測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示した結果から、アミノ酸等を工程(A)及び/又は(B)に添加して処理を行った場合には、酵素含有造粒物製造工程における酵素の失活が顕著に抑制された。また、アミノ酸等を工程(A)に配合せず、工程(B)のみに配合した場合には、安息角で示される粉末物性が良好であった。更に、アミノ酸等を工程(A)及び(B)に配合した場合には、活性収率が良好であり、工程(B)の操作性が良好であり、粒度が均一な造粒物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す(A)、(B)の工程を有する酵素含有造粒物の製造方法であって、(A)及び/又は(B)の工程を、アミノ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上の存在下にて行う酵素含有造粒物の製造方法。
(A):酵素を含有した溶液を乾燥し、粉末状酵素製剤とする工程
(B):工程(A)で得られた粉末状酵素製剤を乾式造粒する工程
【請求項2】
酵素がプロテアーゼである請求項1記載の酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項3】
乾式造粒が攪拌転動造粒である請求項1又は2記載の酵素含有造粒物の製造方法。

【公開番号】特開2008−161189(P2008−161189A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317174(P2007−317174)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】