説明

酸化ガリウム粉末

【課題】IGZOなどのスパッタリングターゲット用原料として好適となるように、他の粉体との混合性を高めるために、粉砕した際に凝集粒子が壊れやすい、新たな酸化ガリウム粉末を提供する。
【解決手段】レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50(以下、単に「D50」とも称する)と比表面積(SSA)との積(「D50×SSA」とも称する)が15.0×10-6〜30.0×10-63/gの範囲内であることを特徴とする酸化ガリウム粉末を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIn−Ga−Zn複合酸化物(「IGZO」と称する)などのようなスパッタリングターゲット(焼結体)を製造するのに用いることができる酸化ガリウム粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
IGZOは、電子ペーパーや液晶パネル、有機ELを駆動するTFTの半導体層材料として注目を集めている透明酸化物半導体の一種である。この材料から形成される薄膜は、可視光を透過するため、透明の膜をつくることができるばかりか、室温〜150℃といった低温プロセスで膜を形成できるため、プラスチック基板等、高温プロセスに適さない基板材料にも適用可能であるため様々な分野での利用が期待されている。
【0003】
IGZOからなる半導体膜は、スパッタリング法で形成されるのが一般的であり、この際スパッタリングターゲットとして用いられるのがIGZO焼結体である。
IGZO焼結体は、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの原料粉末を混合し、得られた混合粉末を加圧成形し、焼結して製造するのが一般的である。
【0004】
IGZO焼結体及びIGZO薄膜の性能に酸化ガリウム粉末の物性が影響するため、用途に応じて酸化ガリウム粉末を改良することが望まれていた。
【0005】
酸化ガリウムは、ガリウム塩溶液にアルカリを添加して中和することによって水酸化ガリウム(中間体)を沈澱生成させ、これを濾過乾燥した後焼成することによって製造するのが一般的である。
【0006】
酸化ガリウムに関しては、従来、例えば特許文献1において、流動性に優れた酸化ガリウム粉末を製造するべく、ガリウムを陽極として電解することにより得られた水酸化ガリウムを仮焼して酸化ガリウム粉末を得る製法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、塩素などの不純物の少ない酸化ガリウム粉末を製造するべく、溶融ガリウムメタルを入れた温水浴中に塩素ガスを吹き込み、塩化ガリウム水溶液とし、これを中和して得られる水酸化ガリウムを脱水・乾燥し、次いでばい焼、解砕する酸化ガリウム粉末の製造方法が提案されている。
【0008】
特許文献3には、ガリウム塩溶液にシュウ酸を加えて、シュウ酸の存在下で中和することによって水酸化ガリウム(中間体)を沈澱生成させ、これを濾過乾燥した後焼成することによって、比表面積(BET値)が3〜10m2/gであって、0.1〜10μmの範囲に粒子の99%(体積基準)が含まれる酸化ガリウム粉末を得る方法が提案されている。
【0009】
特許文献4には、ガリウム塩溶液を硫酸イオンとアンモニウムイオンの共存下で中和して得られるガリウム化合物(ガリウム酸アンモニウム)を焼成して得られる酸化ガリウムが開示されている。
【0010】
特許文献5には、粒度分布が揃い、粒子形状が等方的である粒子を提供するべく、ガリウム塩の水溶液に硫酸イオンとアンモニウムイオンとを共存させて反応させることで、粒子形状が等方的な多面体形状を有するガリウム化合物(NH4Ga3(SO42(OH)6・H2O)粉末を得る方法が提案されている。
【0011】
特許文献6には、ガリウム濃度、アルカリ濃度、反応終了pHを制御することにより水酸化ガリウムの粒径を任意の粒径に制御し、所定時間以上の熟成によって粒子の顆粒化を促進して粒度分布の揃った水酸化ガリウムを得て、この水酸化ガリウムを濾過、乾燥、焼成することによって目的の酸化ガリウム粉末、すなわち、粒径D50が0.8〜2.4μmで、かつ、粒径比(D90−D10)/D50が1.0未満である酸化ガリウム粉末を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−273318号公報
【特許文献2】特開平10−338522号公報
【特許文献3】特開平11−322335号公報
【特許文献4】特開2002−20122号公報
【特許文献5】特開2002−20122号公報
【特許文献6】特開2004−142969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
スパッタリング法によって安定して均質なIGZO薄膜を製造するには、均質なIGZO焼結体をスパッタリングターゲットとして用いることが必要不可欠である。このような均質なIGZO焼結体を製造するためには、その原料である酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの原料粉末を均一に混合する必要がある。この際、酸化ガリウム粉体の特徴を考えると、粉砕した際に凝集粒子が壊れやすく、壊れた酸化ガリウム粒子が酸化インジウム等の他の粒子間に入り込んで、均一且つ最密に混合できることが望ましいと考えることができる。
【0014】
そこで本発明は、他の粉体、特に酸化インジウム粉末との混合性を高めるために、粉砕した際に凝集粒子が壊れやすいという特徴を有する、新たな酸化ガリウム粉末を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50(以下、単に「D50」とも称する)と比表面積(SSA)との積(「D50×SSA」とも称する)が15.0×10-6〜30.0×10-63/gの範囲内であることを特徴とする酸化ガリウム粉末を提案する。
【0016】
本発明の酸化ガリウム粉末は、D50×SSAが15.0×10-6〜30.0×10-63/gの範囲内であるという物性を有しているから、少なくともこの粉体を構成する主な粒子は、空隙が多くポーラスな粒子である。そのため、酸化インジウム等と混合する際、粒子同士の衝突やボールミルのボール等との衝突など、物理的な衝撃を受けることによって壊れやすく、壊れた酸化ガリウム粒子が酸化インジウム等の他の粒子間に入り込んで、酸化インジウム粉末などの他の粉末と均一且つ最密に混合させることができる。
よって、本発明の酸化ガリウム粉末は、酸化インジウム粉末などと混合して混合粉末(「プレミックス粉体」ともいう)を得る際に、プレミックス粉体における酸化ガリウム粉末の均一且つ最密混合性を高めることができ、より均質で高密度なIGZO焼結体などのスパッタリングターゲットを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態の例(以下、「本実施形態」という)について説明するが、本発明が下記本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(D50×SSA)
本実施形態に係る酸化ガリウム粉末(以下、「本酸化ガリウム粉末」という)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50と、BET一点法で測定されるBET法比表面積(SSA)との積(D50×SSA)が15.0×10-6〜30.0×10-63/gの範囲内にあることが重要である。
D50×SSAの値(m3/g)は、重量当たりの体積を示すため、粒径の影響を排除することができるから、比表面積(SSA)のみで空隙の程度を規定する場合に比べて、空隙の存在割合すなわちポーラスの程度をより正確に規定することができる。
かかる観点から、本酸化ガリウム粉末のD50×SSAは、特に18.0×10-63/g以上、或いは28.0×10-63/g以下であるのがさらに好ましく、その中でも20.0×10-63/g以上、或いは25.0×10-63/g以下であるのがより一層好ましい。
【0019】
D50×比表面積の値が上記範囲に入るように酸化ガリウム粉末を製造するための方法として、焼成する前の前駆体(含水酸化ガリウム)の含水率を高めると共に、このような前駆体を十分に乾燥させた後、急加熱かつ短時間で高温焼成する方法を挙げることができる。
【0020】
(SSA)
本酸化ガリウム粉末の比表面積(SSA)は、7.0〜16.0m/gであるのが好ましく、特に9.0m/g以上、中でも特に10.0m/g以上、或いは、13.0m/g以下であるのがより一層好ましい。SSAがこのような範囲であれば、一次粒子の空隙がより一層十分であり、物理的な衝撃により粒子がより一層破壊され易いため、より一層微粉化させることができる。他方、16.0m/gを超えると、破壊され易過ぎて超微粒子になって製造設備等に付着してしまう可能性がある。
【0021】
(D50)
本酸化ガリウム粉末の粒度分布、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50は、0.50μm〜3.00μmであるのが好ましい。
本酸化ガリウム粉末のD50をこの範囲にすることで、ミクロな分散性、すなわち各粒子の周囲における局所的な分散性を高めることができる。つまりD50が3.00μmより粗粒過ぎると、ミクロな分散性が悪くなり混合性が低下することになり、0.50μmより微粒過ぎても分散性が悪くなってしまう。かかる観点から、本酸化ガリウム粉末のD50は、0.80μm以上であるのがより一層好ましく、中でも1.00μm以上、或いは、2.50μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準累積度数50%の粒子径の意味である。
【0022】
本酸化ガリウム粉末のD50は、中和熟成時のガリウム濃度を制御することで調整することができる。この際、ガリウム濃度が低い方が、粒子径は小さくなり、逆に高い場合、粒子径は大きくなる。焼成温度も多少影響し、高温焼成の方が粒子径は大きくなる傾向はあるが、酸化ガリウム粒子の特徴として、焼成の前後で粒径がほとんど変わらないという特徴がある。すなわち、中和熟成完了時点で、最終の焼成粉の粒子形状・粒子径はほぼ完成するため、中和熟成時の条件を調整するのが効果的である。
【0023】
(製造方法)
次に、本酸化ガリウム粉末の製造方法の一例について説明する。但し、あくまで一例であって、本酸化ガリウム粉末の製造方法が以下に説明する製造方法に限定されるものではない。
【0024】
本酸化ガリウム粉末の好ましい製造方法として、焼成する前の前駆体(含水酸化ガリウム)の含水率を高めると共に、このような前駆体を十分に乾燥させた後、急加熱かつ短時間で高温焼成する方法を挙げることができる。
【0025】
具体的には、先ず、硝酸塩、硫酸塩などのガリウム塩溶液を、アルカリに添加して中和することによって含水酸化ガリウム(中間体)を沈澱生成させる。例えばアンモニア水を加えてpH7〜10に調整することで、水酸化ガリウム(中間体)を沈澱生成させ、所定の温度で所定時間保持することにより水熱熟成すればよい。
この際、中和時のガリウム濃度を70〜300g/L、かつ、pHを7〜10に調整することが重要である。
また、この中和段階では、ガリウム塩やアルカリの液温を50℃以下になるようにガリウム塩やアルカリの液温を調整して粒子成長を抑えることも重要である。
中和にはアンモニア水以外にも、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、尿素などの他のアルカリを用いることもできる。
【0026】
中和が完了したら、均一に撹拌を行い、70〜90℃にて1時間以上の熟成を行って粒子を成長させることが重要である。
この際、熟成温度及び時間は、粒子の形状や形成度合に影響するため、70℃以上で1時間以上、特に4時間以上熟成することが好ましい。
このように水熱合成にて十分に粒子形成されたガリウム含水水酸化物を得ることが重要である。十分に粒子形成された粒子を焼成することで、含有している水分が蒸発し、その部分がポアとなってSSAを高めることができる。
【0027】
このように熟成を行った後、得られたスラリーを洗浄、濾過を行い、十分に乾燥させる、具体的には105℃以上で少なくとも5時間以上乾燥させることが重要である。
水酸化ガリウム(中間体)を洗浄濾過乾燥する手段としては、例えば純水を用いてデカンテーションを繰り返すなどして、例えば硝酸根等を洗浄除去した後、濾過等によって固液分離し、乾燥させて乾燥体(ケーキ)を得るようにすればよい。
【0028】
焼成後の酸化ガリウムは、極めて硬いために、焼成前に粉体を解す(ほぐす)のが好ましい。
焼成前に乾燥体(ケーキ)を解砕する程度は、手で解す程度の軽い解砕では解砕が十分ではなく、焼成時に凝集が起こって目的とする粒度分布、タップ密度、嵩密度に調整することができないため、例えばハンマーミル、ピンミルなどの高速回転型の解砕機や、ボールミルやビーズミルなどのメデイアを使用する解砕機、振動篩、ヘンシェルミキサーなどの機械的手段で解砕することが重要である。
【0029】
その後の焼成は、所定温度まで短時間で昇温し、比較的短時間で焼成を完了することが好ましい。
すなわち、昇温速度は、よりポーラスな酸化ガリウム粒子を作製する観点から、所定の保持温度まで5時間以内に昇温するのが好ましく、特に3時間以内に昇温するのがより好ましい。保持温度までの昇温時間が5時間以内であれば、粒子に含有されている化合物形態の水分が一気に揮発し、空隙を形成させることができる。
焼成温度(保持温度)は、600℃以上の適宜温度で行うのが好ましい。水酸化ガリウムから酸化ガリウムに変化する温度領域は500℃程度であるため、500℃以上であれば通常は十分であるが、ポーラスな酸化ガリウム粒子を作製するには、600℃以上、特に700〜1200℃、中でも800〜1100℃で焼成するのが好ましい。
また、保持温度での保持時間は、1時間〜6時間、特に1時間〜5時間とするのが好ましい。この際、焼成時間については、水酸化ガリウムから酸化ガリウムへ均一に転移させるために1時間以上とするのが好ましい。他方、長すぎても均一焼成の効果は変わらないので不経済であるばかりか、粒子によっては逆に空孔が塞がってしまう場合があるため、長くとも6時間程度とするのが好ましい。
【0030】
(用途)
本酸化ガリウム粉末は、ターゲット材料、特にIGZOなどのように酸化インジウム粉末などと混合する用途に用いることができる。すなわち、本酸化ガリウム粉末と、酸化インジウム粉末及び酸化亜鉛粉末とを混合して混合粉末(「プレミックス粉体」ともいう)を得、このプレミックス粉体を加圧成型した後、焼結してIGZO焼結体を製造することができる。
【0031】
(語句の説明)
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0033】
<BET比表面積(SSA)>
ユアサアイオニクス(株)製のモノソーブ(商品名)を用いて、JIS
R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET 法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法
の(3.5)一点法」に準拠して、BET比表面積(SSA)の測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。
【0034】
<粒度測定>
酸化ガリウム粉末を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて、体積累積基準D50を測定した。
【0035】
<壊れ易さの評価>
酸化ガリウム粉末を少量取り、5mmφのジルコニアビーズと一緒にペイントシェーカーに入れ、20分間破壊した。破壊した後、上記同様に粒度測定し、破壊前後のD50の変化率を算出した。
【0036】
○ :破壊前のD50と破壊後のD50の変化率が30%−70%
××:破壊前のD50と破壊後のD50の変化率が30%より小さい
× :破壊前のD50と破壊後のD50の変化率が70%より大きい
【0037】
(実施例1)
35℃に調整したGa濃度90g/Lの硝酸ガリウム塩水溶液を、35℃に調整したアンモニア水に加えてpH8に調整した。調整後の混合液温度は40℃であった。
液温を40℃に保持しつつ5分間攪拌した後、撹拌を継続したまま90℃まで昇温した。昇温にかかった時間は40分間であった。更に、90℃を保持しつつ撹拌を継続したまま3時間熟成させた。
熟成途中、pHが低下するのでアンモニア水を追加し、pHを8に維持した。
熟成終了後、常温まで自然冷却し、純水によるデカンテーションを繰り返し、アンモニア、硝酸成分を洗浄した。
洗浄した後、濾過により固液分離を行い、更に105℃にて24時間乾燥させ、ガリウム含水水酸化物の乾燥体(塊状)を得た。
このようにして得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(塊状)を、ヘンシェルミキサーを用いて、回転数800rpmにて解砕処理を行い、150meshの篩で僅かに残留した凝集物を除去し、分散したガリウム含水水酸化物の乾燥体(粉状)を得た。
そして、得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(粉状)をセラミック製の焼成容器(焼成匣鉢)に入れ、大気雰囲気にて常温から1.5時間で900℃迄昇温し、保持温度900℃で3時間焼成を行い、酸化ガリウム粉末を得た。
【0038】
(実施例2)
硝酸ガリウム水溶液のGa濃度を150g/Lにした以外は、実施例1と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0039】
(実施例3)
硝酸ガリウム水溶液のGa濃度を230g/Lにした以外は、実施例1と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0040】
(実施例4)
焼成時の温度を700℃、保持時間を1.5時間とした以外は、実施例2と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0041】
(実施例5)
焼成時の温度を1200℃、保持時間を4.5時間とした以外は、実施例3と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0042】
(比較例1)
焼成時の温度を1500℃、保持時間を4.5時間とした以外は、実施例3と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0043】
(比較例2)
硝酸ガリウム水溶液のGa濃度を330g/Lにした以外は、実施例1と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0044】
(比較例3)
焼成時の温度を550℃とした以外は、実施例2と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0045】
(比較例4)
硝酸ガリウム水溶液のGa濃度を45g/Lにした以外は、実施例1と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
(考察)
以上の結果より、実施例1−5の酸化ガリウム粒子は、物理的な衝撃により破壊され易いことが確認された。
実施例1−5と比較例1−4とを対比すると共に、これまで行った試験の結果を参照して考察すると、D50×SSAが15.0×10-6〜30.0×10-63/gの範囲内であるものは、空隙が多くポーラスな粒子からなる粉体であり、酸化インジウム等と混合する際、粒子同士の衝突やボールミルのボール等との衝突など、物理的な衝撃を受けることによって壊れやすく、壊れた酸化ガリウム粒子が酸化インジウム等の他の粒子間に入り込んで、酸化インジウム粉末などの他の粉末と均一且つ最密に混合させることができることが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50と比表面積(SSA)との積が15.0×10-6〜30.0×10-63/gであることを特徴とする酸化ガリウム粉末。
【請求項2】
比表面積(SSA)が7.0〜16.0m/gであることを特徴とする請求項1記載の酸化ガリウム粉末。
【請求項3】
請求項1又は2記載の酸化ガリウム粉末を原料としてなるスパッタリングターゲット。

【公開番号】特開2011−213508(P2011−213508A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81433(P2010−81433)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】