説明

酸化チタンゾルの製造方法および酸化チタンゾル

【課題】 粒子径が小さく、長期間にわたり分散状態を保つことができ、光触媒活性も低い酸化チタンゾルを提供する。
【解決手段】
チタンアルコキシドと、酸性触媒とを含む加水分解用の溶液を準備する準備工程と、加水分解用の水溶液に、オルガノアルコキシシランおよびシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程とを有する酸化チタンゾルの製造方法を提供する。酸化チタンゾルの形成が開始される反応溶液中に、有機ケイ素化合物を含有させることで、粒子径が小さく、長期間にわたり分散状態を保つことができ、光触媒活性も低い酸化チタンゾルを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾルゲル法による酸化チタンゾルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゾルゲル法によるナノオーダの微小な材料の製造方法は、安価で優れた特性を示すナノオーダのサイズの粒子や機能性薄膜を作成する技術として、広く認知されている。
【0003】
一方、酸化チタンは、その光触媒活性を利用した様々な工業製品が実用化され、研究も盛んに行なわれている。酸化チタンの結晶型は3種あり、高い光触媒活性をもつアナターゼ型と、ブルッカイト型と、低い光触媒活性をもつルチル型とがある。酸化チタンの光触媒活性は、その用途によっては好ましくない場合がある。例えば、有機物を媒体とする塗装膜の場合は、酸化チタンが紫外線により有機物の分解を促進してしまう。このため、膜の耐光性が低下してしまい好ましくない。また、酸化チタンのもつ光触媒活性は、同じ結晶型でも、その製造方法に起因して光活性度に大きな差がでることがある。
【0004】
比較的低い光触媒活性をもつ酸化チタンゾル、またはルチル型酸化チタンゾルのゾルゲル法による製造方法について、特許文献1には、四塩化チタンを出発物質として、ルチル型チタン粒子を得る方法、および粒子の表面に被覆層を設け、さらに光触媒活性を低下させる方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、オルトチタン酸の分散スラリーに塩酸を添加し加熱して、ルチル型チタン粒子を得る方法が開示されている。さらに、粒子の表面に被覆層を設け、さらに光触媒活性を低下させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−26423号公報
【特許文献2】特開平9−202620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
四塩化チタンを出発物質とする製造方法は、四塩化チタンが空気中の水分と反応して発煙するため扱いが難しく、工業的には安全面でかなり注意する必要がある。
【0007】
粒子表面に表面被覆層を設ける方法は、粒子の凝集を抑え、安定な分散状態が得られると共に、酸化チタンゾルの光触媒活性を低下させる効果が得られる。しかしながら、表面被覆層を設ける前の核粒子自体の安定性は充分ではないので、粒子径の小さい粒子ほど凝集しやすいという一般則通り、安定した分散状態の核粒子を得ることが難しく、容易にゾルを製造できる方法とは言い難い。さらに、表面被覆層を設けることで、粒子径は大きくなってしまうため、酸化チタンゾルが白濁したり、薄膜を形成した場合に、薄膜が白濁してしまうことがある。このため、粒子を被覆して小さい粒子径の酸化チタンゾルを得るためには、被覆する前の核となる粒子が、より小さく安定して存在していることが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の酸化チタンゾルの製造方法の一形態は、チタンアルコキシドと、酸性触媒とを含む加水分解用の水溶液を準備する準備工程と、その水溶液に、オルガノアルコキシシランおよびシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程とを有するものである。
【0009】
この製造方法においては、加水分解用の水溶液を準備することにより、チタンアルコキシドの加水分解反応と、縮合反応とが進行し、酸化チタンゾルが形成される。それと共に、その反応中の水溶液中に、有機ケイ素化合物を加えると、粒子径が100nm以下、さらに望ましくは粒子径が50nm以下の微粒子が、安定して一ヶ月以上の長期間にわたり分散した状態で存在する水溶液(酸化チタンゾル溶液)が得られることを、本願の発明者らは見出した。この水溶液中における有機ケイ素化合物の作用効果は、予想されておらず、実験結果からは、酸化チタンゾルの粒子の成長を阻害する反応阻害としての効果、酸化チタンゾルの粒子間の凝集を抑制する安定化剤としての効果などが得られていると考えられている。
【0010】
さらに、この製造方法により得られた酸化チタンゾルは、ルチル型に限らず、アナターゼ型であっても、光触媒活性が低いという効果を備えている。
【0011】
有機ケイ素化合物を加えるタイミングは、加水分解用の水溶液を準備する準備工程の直後であっても良く、24時間攪拌した後に加えても上記の効果が得られる。
【0012】
この製造方法に用いられるチタンアルコキシドは、アルコキシル基ORを有する、一般式Ti(ORで表されるものである。アルコキシル基ORを構成する有機基Rとしては、たとえば、炭素数1〜6のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の低級アルキル基を挙げることができる。
【0013】
チタンアルコキシドの具体例としては、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウム(IV)tert−ブトキシドを挙げることができる。好適な例としては、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシドが挙げられる。
【0014】
この製造方法で用いられるオルガノアルコキシシランは、有機基Rと、アルコキシル基ORとを有し、一般式RSi(OR4−nで表されるものである。ただし、nは0から3までの整数である。有機基Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基、オクタデシル基を挙げることができる。アルコキシル基ORを構成する有機基Rとしては、たとえば、炭素数1〜6のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の低級アルキル基を挙げることができる。
【0015】
オルガノアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランを挙げることができる。これらの中で好適なものとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。
【0016】
本発明に使用されるシランカップリング剤は、有機基R、有機基Rおよび有機基Rを含む、一般式RSi(R4−m−lで表されるものである。m、lは0から3までの整数でありm+lは3以下の整数である。有機基Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、たとえば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基を挙げることができる。有機基Rとしては、たとえば、炭素数1〜6のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の低級アルキル基を挙げることができる。有機基Rは加水分解可能な官能基であり、その具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等を挙げることができる。
【0017】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらの中で好適なものは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドオキシプロピルメチルジメトキシシランである。
【0018】
さらに、本発明の製造方法において、有機ケイ素化合物を加える工程では、水溶液中のチタンアルコキシドのモル数に対して、0.1〜5%のモル数の、少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加えることが望ましい。実験によると、この範囲のモル比の有機ケイ素化合物を加えることにより、光触媒活性のより低いルチル型の酸化チタンゾルを得ることができる。
【0019】
水溶液中の有機ケイ素化合物の含有量がモル数で0.1%より小さい場合は、上述した有機ケイ素化合物の効果がほとんど得られない。すなわち、有機ケイ素化合物を含まない溶液と同様に、凝集が進み、粒子径が大きくなると考えられ、酸化チタンゾル溶液が、白濁したり沈殿したりする。一方、水溶液中の有機ケイ素化合物の含有量がモル数で5%より多い場合は、粒子径としては、50nm以下の微小なものが得られ、また、光活性は弱いが、アナターゼ型のチタンゾルになる。したがって、より安定して光活性の弱いチタンゾルを得るためには、水溶液中の有機ケイ素化合物の含有量がモル数で5%以下であることが望ましい。
【0020】
また、この製造方法において、酸性触媒は、塩酸および/または硝酸を含むものを用いることができる。
【0021】
さらに、準備工程では、酸性触媒の濃度が少なくとも0.3mol/Lとなる加水分解用の水溶液を準備することが望ましい。実験によると、酸性触媒の濃度も、得られる酸化チタンゾルの結晶型がアナターゼ型かルチル型かに影響を与えると考えられる。そして、酸性触媒の濃度が0.3mol/L未満であると、アナターゼ型のチタンゾルが得られ、0.3mol/L以上で、光触媒活性の低いルチル型の結晶構造の酸化チタンゾルが得られた。
【0022】
加水分解用の水溶液中の酸性触媒濃度は、特に上限はなく、濃塩酸(約10mol/L)、濃硝酸(約11mol/L)としても良い。しかしながら、このような濃度の高い酸を酸性触媒とする意味はなさそうであり、安全性等の理由を考慮すると、0.3mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/Lから1mol/L程度の濃度に希釈して用いることで、この製造方法の効果が得られる。
【0023】
有機ケイ素化合物を加える工程では、その後、水溶液を15℃〜30℃の室温で攪拌を続けても良いし、反応を促進するために温度を制御しても良い。また、粒子の熟成を促進するために、静置して温度を制御しても良い。温度を制御する例としては、室温から100℃の間で還流させる方法がある。また、耐圧容器中で100〜250℃の間で温度を制御する水熱合成の方法を用いることができる。有機ケイ素化合物を加える工程の好適な例としては、40〜80℃の水浴中に12〜18時間静置して熟成させる方法や、耐圧容器中で200℃の温度で1時間水熱合成する方法がある。
【0024】
さらに、本発明の製造方法の一形態は、加水分解用の水溶液を準備する準備工程、加水分解用の水溶液に有機ケイ素化合物を加える工程に続いて、水溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程を有するものである。この製造方法においては、加水分解用の水溶液に有機ケイ素化合物を加えて得られた酸化チタンゾル中の微粒子を核粒子とし、酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加して、酸化チタンゾルの粒子表面をさらに安定化させることができる。
【0025】
すなわち、少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程後の水溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加することにより、その時点で存在する微小粒子の表面を被覆でき、酸化チタンゾルの分散状態をより安定させ、さらに、光活性をいっそう低下させることができる。したがって、より長期的に安定した状態を維持でき、産業上の利用価値がさらに酸化チタンゾルを提供できる。更に、加水分解用の水溶液に有機ケイ素化合物を加える工程を採用することにより、粒子径が小さく、安定した分散状態の核粒子を得ることができる。このため、表面被覆層を設けても粒子径は大きくならず、酸化チタンゾルが白濁したり、薄膜を形成した場合に、薄膜が白濁してしまうことを未然に防止できる。
【0026】
溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程で用いられる酸化ケイ素には、前述のオルガノアルコキシシランが含まれる。酸化ケイ素として使用するオルガノアルコキシシランの好適な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0027】
酸化ジルコニウムとしては、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウム−t−ブトキシド、ジルコニウムジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウム2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム−n−プロポキシド、オキシ塩化ジルコニウムを挙げることができる。この工程に用いられる酸化ジルコニウムの好適な例としては、ジルコニウムジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、オキシ塩化ジルコニウムが挙げられる。
【0028】
少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程後の水溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程では、水溶液を室温近傍で攪拌を続けることができる。たとえば、室温から50℃の範囲で水溶液の温度を管理して、2〜6時間攪拌することが好ましい。反応を促進するために温度を制御しても良い。温度を制御する一例は、室温から100℃の間で還流させることである。温度を制御する他の例は、耐圧容器中で、温度を100〜250℃に管理する方法であり、水熱合成の方法として公知である。たとえば、耐圧容器中150℃で12時間反応させることが好ましい。
【0029】
少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程後の水溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程は、繰り返すことも有効である。微粒子に対する被覆処理を繰り返すことになり、表面に積層させることも可能である。この工程を繰り返す場合には、最外層の粒子表面の表面状態が、水または有機溶媒中での分散安定性を高めるために重要である。酸化チタンゾル粒子の最表面の処理としては、前述のオルガノアルコキシシラン、またはシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。すなわち、水溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程を繰り返す場合は、酸化チタンゾル粒子の最表面の処理を、オルガノアルコキシシラン、またはシランカップリング剤で処理し、その後、酸化チタンゾルを必要により溶媒置換を行い、水溶液に酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程を繰り返す。
【0030】
酸化チタンゾル粒子の最表面の処理に適したオルガノアルコキシシランのより好適な例は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランである。また、シランカップリング剤のより好適な例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0031】
酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加して得られた、より安定な酸化チタンゾルも、ゾルゲル法などにより、耐光性の高い薄膜を製造するのに適している。具体的には、そのまま塗布して透明な薄膜を形成することが可能であり、他の有機樹脂、バインダー、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加して、透明な薄膜(機能膜)を形成することが可能である。この製造方法により得られる酸化チタンゾルを含む塗液の塗布方法は、特に制限はなく、スピン法に限らず、ディッピング法、スプレー法など公知の塗布方法を用いることが可能である。
【0032】
この製造方法によって得られる酸化チタンゾルは、粒子径の小さな微小粒子を含み、さらに、それらの微小粒子が長期間にわたり分散状態を保持する。したがって、この製造方法により得られた酸化チタンゾルは安定しており、さらに、光触媒活性は充分に低い。このため、この製造方法により得られた酸化チタンゾルは、ゾルゲル法などにより、耐光性の高い薄膜を製造するのに適している。
【0033】
具体的には、この製造方法により得られた酸化チタンゾルは、微白色透明であり、そのまま塗布して透明な薄膜を形成することが可能である。また、他の有機樹脂やバインダーを添加して、透明な薄膜(機能膜)を形成することも可能である。その他に酸化防止剤、紫外線吸収剤など公知の添加剤を添加した膜あるいは層を形成するためにも適している。この製造方法により得られる酸化チタンゾルを含む塗液の塗布方法に特に制限はなく、スピン法に限らず、ディッピング法、スプレー法など公知の塗布方法を用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施例1)
酸化チタンゾルS1を以下のように調製(製造)した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる塩酸(和光純薬工業(株)製:特級)30.38gを入れ、水を添加して全量300g(1mol/L塩酸)の水溶液を調整した。そこに、チタンアルコキシドである、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製:1級)28.42g(0.1mol)を滴下し、加水分解用の水溶液を得た(準備工程)。その後、この水溶液を20℃で15時間攪拌し、加水分解および縮合反応を進め、酸化チタンの微粒子を含む白色透明な水溶液を得た。このような加水分解および縮合反応を行う場合、水溶液の攪拌温度は15℃〜30℃が好ましく、攪拌時間は12時間〜18時間が好ましい。
【0035】
その水溶液に、準備工程で滴下したチタンテトライソプロポキシドのモル数に対して、オルガノアルコキシシランとして、2%のテトラメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−540)0.30g(2.0mmol)を、滴下した(有機ケイ素化合物を加える工程)。
【0036】
さらに、この水溶液を60℃で6時間静置した後、耐圧容器中で200℃で5時間オートクレーブ処理(加熱処理)をした。この処理は、酸化チタン粒子の結構構造を安定するために有用である。こうして、微白色透明な酸化チタンゾルS1を得た。
【0037】
(実施例2)
酸化チタンゾルS2を以下のように調製(製造)した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる塩酸(和光純薬工業(株)製:特級)9.12gを入れ、水を添加して全量300g(0.3mol/L塩酸)の水溶液を調整した。そこに、チタンアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製:1級)28.42g(0.1mol)を滴下し、加水分解用の水溶液を得た(準備工程)。その後、この水溶液を20℃で2時間攪拌し加水分解および縮合反応を進め、酸化チタンの微粒子を含む、白色透明の水溶液を得た。
【0038】
この水溶液に、準備工程で滴下したチタンテトライソプロポキシドのモル数に対して、オルガノアルコキシシランとして、0.1%のテトラエトキシシラン(和光純薬工業(株)製:特級)21mg(0.1mmol)を、滴下した(有機ケイ素化合物を加える工程)。
【0039】
さらに、この水溶液を20℃で15時間攪拌した後、60℃で6時間攪拌し、微白色透明な酸化チタンゾルS2を得た。
【0040】
(実施例3)
酸化チタンゾルS3を、以下のように調製(製造)した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる硝酸(和光純薬工業(株)製:特級)54.01gを入れ、水を添加して全量300g(2.0mol/L硝酸)の水溶液を調整した。この水溶液に、チタンアルコキシドである、チタニウムテトラ−n−ブトキシド(和光純薬工業(株)製:1級)34.03g(0.1mol)を滴下し、加水分解用の水溶液を得た(準備工程)。その後、この水溶液を20℃で15時間攪拌し、加水分解および縮合反応を進め、白色透明な水溶液を得た。
【0041】
その水溶液に、準備工程において滴下したチタニウムテトラ−n−ブトキシドのモル数に対して、オルガノアルコキシシランとして、5%のテトラメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−540)0.76g(5.0mmol)を滴下した(有機ケイ素化合物を加える工程)。
【0042】
さらに、この水溶液を60℃で6時間静置した後、200℃で5時間オートクレーブ処理をした。こうして、微白色透明な酸化チタンゾルS3を得た。
【0043】
(実施例4)
酸化チタンゾルS4を以下のように調製(製造)した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる塩酸(和光純薬工業(株)製:特級)6.08gを入れ、水を添加して全量300g(0.2mol/L塩酸)の水溶液を調整した。この水溶液に、チタンアルコキシドである、チタニウムテトラ−n−ブトキシド(和光純薬工業(株)製:1級)34.03g(0.1mol)を滴下し、加水分解用の水溶液を得た(準備工程)。その後、この水溶液を20℃で15時間攪拌し、加水分解および縮合反応を進め、酸化チタンの微粒子を含む白色透明な水溶液を得た。
【0044】
この水溶液に、準備工程で滴下したチタニウムテトラ−n−ブトキシドのモル数に対して、シランカップリング剤として、10%のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−2940)2.36g(0.01mol)を滴下した(有機ケイ素化合物を加える工程)。
【0045】
さらに、この水溶液を60℃で6時間攪拌し、微白色透明な酸化チタンゾルS4を得た。
【0046】
(実施例5)
酸化チタンゾルS5を以下のように調製(製造)した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる硝酸(和光純薬工業(株)製:特級)9.00gを入れ、水を添加して全量300g(0.1mol/L硝酸)の水溶液を調整した。この水溶液に、チタンアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製:1級)28.42g(0.1mol)を滴下し、加水分解用の水溶液を得た(準備工程)。さらに、この水溶液を20℃で15時間攪拌し、加水分解および縮合反応を進め、酸化チタンの微粒子を含む白色透明な水溶液を得た。
【0047】
この水溶液に、準備工程で滴下したチタンテトライソプロポキシドのモル数に対して、シランカップリング剤として、2%のβ−グリシドオキシプロピルメチルジメトキシシラン(ジーイー東芝シリコーン(株)製:TSL8355)0.44g(2.0mmol)を滴下した(有機ケイ素化合物を加える工程)。
【0048】
さらに、この水溶液を60℃で6時間攪拌し、微白色透明な酸化チタンゾルS5を得た。
【0049】
(実施例6)
酸化チタンゾルS6を以下のように調製(製造)した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる塩酸(和光純薬工業(株)製:特級)15.19gを入れ、水を添加して全量300g(0.5mol/L塩酸)の水溶液を調整した。その水溶液に、チタンアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製:1級)28.42g(0.1mol)を滴下し、加水分解用の水溶液を得た(準備工程)。その後、その水溶液を20℃で2時間攪拌し、加水分解および縮合反応を進め、酸化チタンの微粒子を含む白色透明な溶液を得た。
【0050】
この水溶液に、準備工程において滴下したチタンテトライソプロポキシドのモル数に対して、オルガノアルコキシシランとして4.0%のテトラエトキシシラン(和光純薬工業(株)製:特級)0.83g(4.0mmol)を滴下した(有機ケイ素化合物を加える工程)。
【0051】
さらに、この水溶液を20℃で15時間攪拌した後、60℃で6時間攪拌し、微白色透明な酸化チタンゾルS6を得た。
【0052】
(実施例7)
実施例7では、実施例1で得られた酸化チタンゾルS1に、酸化ジルコニウムとして、オキシ塩化ジルコニウム・8水和物(和光純薬工業(株)製:特級)3.22g(0.01mol)を加えた。この工程により得られた水溶液を、さらに、20℃で2時間攪拌し、この水溶液を、耐圧容器に入れ、容器を180℃のオイルバス中に15時間静置して、水熱合成を行った。
【0053】
こうして得られた微白色の水溶液に、さらに、シランカップリング剤として、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−530)1.36g(0.01mol)を加えた。その溶液を20℃で6時間攪拌して、微白色透明の酸化チタンゾルS7を得た。
【0054】
(実施例8)
実施例8では、実施例6で得られた酸化チタンゾルS6に、酸化ケイ素として、テトラエトキシシラン(和光純薬工業(株)製:特級)2.08g(0.01mol)を加えた。この工程により得られた水溶液を、さらに、20℃で2時間攪拌し、得られた水溶液を耐圧容器に入れ、容器を180℃のオイルバス中に15時間静置して、水熱合成を行った。
【0055】
こうして得られた微白色の水溶液に、さらに、シランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−2940)2.36g(0.01mol)を加え20℃で6時間攪拌して、微白色透明の酸化チタンゾルS8を得た。
【0056】
(実施例9)
実施例9では、実施例7で得られた酸化チタンゾルS7を、眼鏡レンズ用のハードコート層を形成する塗布液HC1に含有して塗布した。
【0057】
ハードコート層用の塗布液HC1は、次のように調合した。先ず、2−ブトキシエタノール(和光純薬工業(株)製:特級)17.62gに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−2940)8.48gと、0.1mol/L塩酸3.88gとを添加して原料液を得た。この原料液を、20℃で4時間攪拌した後、界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−7001)0.018gを添加した。
【0058】
実施例7で得られた酸化チタンゾルS7をエバポレーターで固形分20%になるまで濃縮した。この濃縮液30gを、原料液に添加し、20℃で2時間攪拌した。こうして眼鏡レンズ用ハードコート層用の塗布液HC1を作成した。
【0059】
このハードコート層用の塗布液HC1を、眼鏡レンズ、セイコースーパーソブリン(セイコーエプソン(株)製)用プラスチックレンズ(基材)に、スピンコート法により塗布した。その後、125℃で3時間乾燥させ、レンズ表面にハードコート層を形成した。無色透明なハードコート層付きのプラスチックレンズを得た。
【0060】
このハードコート層付きのプラスチックレンズを、屋外で2週間放置した。その結果、膜剥がれやクラック等の発生もなく、耐光性および耐候性は、良好であった。したがって、酸化チタンゾルS9を用いた塗布液でコーティングした膜(ハードコート層)は、耐久性および耐候性の良好な薄膜となっている。
【0061】
(比較例1)
比較例1では、酸化チタンゾルSR1を、以下のように調製した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる塩酸(和光純薬工業(株)製:特級)30.38gを入れ、水を添加して全量300g(1mol/L塩酸)の水溶液を調整した。その水溶液に、チタンアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製:1級)28.42g(0.1mol)を滴下し、20℃で15時間攪拌し、白色透明な水溶液を得た。
【0062】
そして、有機ケイ素化合物を添加することなく、さらに、60℃で6時間攪拌し、白色の酸化チタンゾルSR1を得た。
【0063】
(比較例2)
比較例2では、酸化チタンゾルSR2を、以下のように調製した。500mlのナス型フラスコに、酸性触媒となる塩酸(和光純薬工業(株)製:特級)3.04gを入れ、水を添加して全量300g(0.1mol/L塩酸)の水溶液を調整した。そこに、チタンアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製:1級)28.42g(0.1mol)を滴下し、20℃で15時間攪拌し、白色透明な水溶液を得た。
【0064】
そして、有機ケイ素化合物を添加することなく、さらに、60℃で6時間攪拌し、微白濁透明な酸化チタンゾルSR2を得た。
【0065】
(評価)
上記の実施例1〜8で得られた酸化チタンゾルS1〜S8、および比較例1および2で得られた酸化チタンゾルSR1およびSR2について、外観、粒子径、結晶型、放置安定性、および光触媒活性について評価した。それぞれの特性の評価方法は以下の通りである。
【0066】
外観は、目視により液の透明性、および白濁の度合いを観察した。この外観の本実験における評価基準は、「微白色透明」であれば良好であり、「白濁」が見られると不良である。
【0067】
粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(シスメックス(株)製:Nano−ZS)で、酸化チタンゾルを直接測定し、体積基準の粒度分布から、ピーク値の粒径を、その酸化チタンゾルの粒径とした。本実験では、100nm以下を良好とした。
【0068】
結晶型は、酸化チタンゾルの一部をエバポレートし、得られた粉体をレーザーラマン分析装置(KAISER OPTICAL SYSTEMS Inc製:HoloLab SERIES 5000)で測定した。そして、得られたスペクトルから酸化チタンの結晶型(ルチル型、アナターゼ型)を判定した。
【0069】
放置安定性は、得られた酸化チタンゾルを、20℃で一ヶ月放置し、目視で白濁の度合いと、沈殿の有無とを観察した。
【0070】
光触媒活性は以下の手順で測定した。まず、低アルカリの耐熱ガラス基板(Corning7059)の上に、酸化チタンゾルをスピン法にて塗布する。そして、そのガラス基板を450℃で1時間焼成して、ガラス基板上に酸化チタンの薄膜を形成した。さらに、薄膜を形成したガラス基板を10−3mol/Lのメチレンブルー水溶液に20℃で3時間浸漬し、水洗いした後、乾燥させた。そして、酸化チタン薄膜の表面にメチレンブルーを吸着させた。そのガラス基板に、ブラックライトで紫外線を5分間照射した。その時の紫外線照射に伴うメチレンブルーの吸収ピーク波長での吸光度変化を、分光光度計(JASCO製:Ubest−50)で測定した。そして、この吸光度の測定において、吸光度の初期値からの変化量の絶対値(ΔABS)を光触媒活性とした。
【0071】
なお、照射した光の照度は、365nmの紫外線波長において照度1.0mW/cmの光量になるように、ブラックライトとガラス基板の距離を調節した。また、酸化チタンゾルをスピン法で塗布する際に、2%ヒドロキシプロピルセルロース(分子量:15000〜30000)を添加し塗布液の粘度を調整した。そして、塗膜の厚さ、および酸化チタンの含有量が、各サンプルでほぼ同じになるように調節した。
【0072】
(評価結果)
図1に、実施例1〜8および比較例1、2で得られたサンプルS1〜S8およびSR1、SR1の評価結果を、それぞれのサンプルの生成条件と共に纏めて示してある。
【0073】
まず、実施例1で得られた酸化チタンゾルS1は、微白色透明で、粒子径10nm、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この液は20℃で1ヶ月放置しても、白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.005と低い値であった。
【0074】
実施例2で得られた酸化チタンゾルS2は、微白色透明で、粒子径25nm、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この液は20℃で1ヶ月放置しても、白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.010と低い値であった。
【0075】
実施例3で得られた酸化チタンゾルS3は、微白色透明で、粒子径50nm、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この液は20℃で1ヶ月放置しても、白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.006と低い値であった。
【0076】
実施例4で得られた酸化チタンゾルS4は、微白色透明で、粒子径30nm、アナターゼ型の酸化チタンゾルであった。また、この液は20℃で1ヶ月放置しても、白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.025と比較的低い値であった。
【0077】
実施例5で得られた酸化チタンゾルS5は、微白色透明で、粒子径20nm、アナターゼ型の酸化チタンゾルであった。また、この液は20℃で1ヶ月放置しても、白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.030と比較的低い値であった。
【0078】
実施例6で得られた酸化チタンゾルS6は、微白色透明で、粒子径10nm、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この液は20℃で1ヶ月放置しても、白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.008と低い値であった。
【0079】
実施例7で得られた酸化チタンゾルS7は、粒子径が、13nmであり、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この溶液は20℃で1ヶ月放置しても白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.003と低い値であった。酸化チタンゾルS7は、実施例1の酸化チタンゾルS1に対して粒子径が若干大きく、光触媒活性が低くなっている。したがって、実施例7の製造方法により、酸化チタンゾルS1に含まれる微小粒子の表面に被覆層が形成され、光触媒活性がさらに低く抑えられていると考えられる。また、放置安定性もさらに向上していると考えられる。
【0080】
実施例8で得られた酸化チタンゾルS8は、粒子径が12nmであり、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この酸化チタンゾルS8は、20℃で1ヶ月放置しても白濁や沈殿することなく、安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.005と低い値であった。酸化チタンゾルS8は、実施例6の酸化チタンゾルS6に対して粒子径が若干大きく、光触媒活性が低くなっている。したがって、実施例8の製造方法により、酸化チタンゾルS6に含まれる微小粒子の表面に被覆層が形成され、光触媒活性がさらに低く抑えられていると考えられる。また、放置安定性もさらに向上していると考えられる。
【0081】
これらに対して、比較例1で得られたチタンゾルSR1は、白濁した液で、粒子径800nm、ルチル型の酸化チタンゾルであった。また、この酸化チタンゾルSR1は、20℃で数日放置しただけで白色の沈殿が生じ、不安定であった。光触媒活性は、ΔABS0.025と比較的低い値であった。
【0082】
比較例2で得られた酸化チタンゾルSR2は、微白濁透明な液で、粒子径130nm、アナターゼ型の酸化チタンゾルであった。また、この酸化チタンゾルSR2は、20℃で1ヶ月放置しても白濁することなく、安定であったが、若干の沈殿物が見られた。光触媒活性は、ΔABS0.120と高い値であった。
【0083】
以上のように、チタンアルコキシドと、酸性触媒とを含む加水分解用の水溶液を準備する工程(準備工程)と、その水溶液に、オルガノアルコキシシランおよびシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程(有機ケイ素化合物を加える工程)とを有する製造方法により得られた酸化チタンゾル(酸化チタンゾルS1〜S6)は、粒子径が50nm以下と小さく透明であり、光触媒活性もΔABSが0.0.3〜0.003と低く、さらに、1ヶ月放置しても変化が見られない程度の長期安定性がある。したがって、チタンゾルを含むことが望ましく、さらに、透明性と、耐光性および耐候性が要求される、眼鏡レンズのハードコート層に含有するのに適した酸化チタンゾルを提供できる。この酸化チタンゾルの用途は、眼鏡レンズに限られないことは勿論である。
【0084】
さらに、上記に加え、酸化ケイ素または酸化ジルコニウムにより粒子の表面にさらに膜を積層する製造方法により得られた酸化チタンゾル(酸化チタンゾルS7およびS8)は、核粒子の粒子径が十分に小さく、水溶液中に安定して分散しているために、表面を積層した後の粒子径も十分に小さい。そして、さらに、光触媒活性はΔABSが0.005以下と非常に低くなっている。したがって、透明性と、耐光性および耐候性が要求される眼鏡レンズのハードコート膜に含有するのに、さらに適した酸化チタンゾルを提供できる。
【0085】
また、酸化チタンゾルS1〜S3、S6の評価結果より、アナターゼ型よりもさらに、光触媒活性が低いルチル型の酸化チタンゾルを製造するためには、有機ケイ素化合物の添加量が、準備工程におけるチタンアルコキシドのモル数に対して0.1〜5%の範囲が好ましい。また、酸性触媒(塩酸または硝酸)の濃度は、0.3mol/L以上であることが好ましい。
【0086】
本例で製造された耐光性が高く、透明な酸化チタンゾルの利用対象としては、眼鏡レンズのハードコート層に加えて、反射防止膜、各種光学フィルター、プラスチック等の保護膜がある。また、塗料のように有機物を媒体とする膜においても、本例で製造された耐光性が高く、透明な酸化チタンゾルを含有することにより、さらに耐光性の高い塗膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例および比較例に係る酸化チタンゾルの反応条件と評価結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンアルコキシドと、酸性触媒とを含む加水分解用の水溶液を準備する準備工程と、
前記加水分解用の水溶液に、オルガノアルコキシシランおよびシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程とを有する、酸化チタンゾルの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記有機ケイ素化合物を加える工程では、前記加水分解用の水溶液中に含まれる前記チタンアルコキシドのモル数に対して、0.1〜5%のモル数の前記少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える、酸化チタンゾルの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記酸性触媒は、塩酸および/または硝酸を含む、酸化チタンゾルの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記準備工程では、前記酸性触媒の濃度が少なくとも0.3mol/Lとなる前記加水分解用の水溶液を準備する、酸化チタンゾルの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記少なくとも1種類の有機ケイ素化合物を加える工程後の水溶液に、酸化ケイ素および/または酸化ジルコニウムを添加する工程を有する、酸化チタンゾルの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法によって得られる、酸化チタンゾル。

【図1】
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【公開番号】特開2007−39286(P2007−39286A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226254(P2005−226254)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】