説明

酸化チタン分散液の製造方法及び酸化チタン膜

【解決課題】酸化チタン粒子が高分散されており、且つ、酸性又はアルカリ性に起因する光触媒活性の低下が少なく、高い光触媒活性が得られる酸化チタン分散液及びその製造方法並びに酸化チタン膜を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
【化1】


で表されるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸より選ばれる少なくとも一種の酸を混合し、該加水分解物の中和物を得る中和工程と、該中和物に、水又は親水性溶媒と、酸化チタン粉末とを混合し、該酸化チタン粉末を分散させて、酸化チタン分散液を得る分散工程と、を行い得られる酸化チタン分散液であり、該分散工程での該酸化チタン粉末の混合量が、該酸化チタン分散液中の該酸化チタン粉末の含有量が1〜40質量%となる量であり、該加水分解物の中和物が、該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部の前記一般式(1)を加水分解して得られたものであること、を特徴とする酸化チタン分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子を高分散させた酸化チタン分散液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粉末は、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料に広く利用されている。特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられており、光触媒反応の用途開発が盛んに行われている。
【0003】
この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
【0004】
しかしながら、酸化チタンは可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収は起こらない。屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯のスペクトルは殆どが400nm以上であるため、光触媒として十分な特性を発現することはできない。そこで、可視光領域での触媒活性を発現させ、より利用性の高い高活性の光触媒の開発が行なわれている。
【0005】
近年、従前の金属イオンを酸化チタンにドープした光触媒の不十分な触媒活性を改善するものとして、特開2006−1774号公報(特許文献1)には、硫黄含有酸化チタン粉末を用いた分散剤が開示されている。この酸化チタン分散体塗膜形成物によれば、紫外線領域だけではなく可視光領域の光触媒活性が高いことから、太陽光の当たらない蛍光灯等の室内においても十分に光触媒作用を発揮することができるものである。
【0006】
また、通常の酸化チタン分散液として、特開平11−319577号公報(特許文献2)には、有機系界面活性剤や強酸を用いず、非酸性条件下で高分散させ、高い透明性と光触媒活性を有する膜をコーティングできる分散液が開示されている。具体的には、光触媒微粒子を多孔質シリカにより表面被覆することにより得られる複合光触媒微粒子が、アルカリ条件下で分散、安定化した複合光触媒微粒子分散液である。
【0007】
また、特開2007−217268号公報(特許文献3)には、主成分として屈折率が1.50以上の有機酸を分散安定剤として用いた、透明性及び安定性に優れた有機溶媒分散液が開示されている。
また、特開2008−120961号公報(特許文献4)には、 (a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物 R4−n−Si−(OR’) (式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす)及び(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、(c)光触媒活性を有する酸化物半導体と、を含む、高分子組成物が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−1774号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−319577号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−217268号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2008−120961号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者が検討したところ、特許文献2は、ポリシロキサンを用いた表面被覆によって得られる分散のメカニズムであるため、アルカリ側でしか、分散の安定化が困難であり、また、難分解性のシリカが酸化チタン表面を被覆するため、光触媒活性の低下に繋がる虞があった。また、特許文献3では、有機酸を分散安定剤として用いるため、光触媒分散液は酸性となる。従って、腐食しやすい金属への接触は好ましくないという欠点があった。更には、特許文献2及び特許文献3では、分散液の液性は酸性又はアルカリ性が強いであるため、この酸性あるいはアルカリ性に起因する物質が光触媒活性を低下させる虞があった。また、特許文献4では、高分子組成物が中性付近となる領域では、酸化チタンが良好に分散しないという欠点があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、酸化チタン粒子が高分散されており、且つ、酸性又はアルカリ性に起因する光触媒活性の低下が少なく、高い光触媒活性が得られる酸化チタン分散液及びその製造方法並びに酸化チタン膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明(1)は、下記一般式(1):
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Rは、アミノ基を有する炭化水素基を示し、R、R及びRは、炭素数が1〜8の炭化水素基を示し、R、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸より選ばれる少なくとも一種の酸を混合し、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物を得る中和工程と、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物に、水又は親水性溶媒と、酸化チタン粉末とを混合し、該酸化チタン粉末を分散させて、酸化チタン分散液を得る分散工程と、を有する酸化チタン分散液の製造方法であり、
該分散工程での該酸化チタン粉末の混合量が、該酸化チタン分散液中の該酸化チタン粉末の含有量が1〜40質量%となる量であり、
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物が、該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部であること、
を特徴とする酸化チタン分散液の製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(2)は、前記本発明(1)の製造方法で得られた酸化チタン分散液を用いて形成されたことを特徴とする酸化チタン膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化チタン粒子が高分散されており、且つ、酸性又はアルカリ性に起因する光触媒活性の低下が少なく、高い光触媒活性が得られる酸化チタン分散液の製造方法並びに酸化チタン膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の酸化チタン分散液の製造方法は、下記一般式(1):
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Rは、アミノ基を有する炭化水素基を示し、R、R及びRは、炭素数が1〜8の炭化水素基を示し、R、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸より選ばれる少なくとも一種の酸を混合し、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物を得る中和工程と、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物に、水又は親水性溶媒と酸化チタン粉末とを混合し、該酸化チタン粉末を分散させて、酸化チタン分散液を得る分散工程と、を有する酸化チタン分散液の製造方法であり、
該分散工程での該酸化チタン粉末の混合量が、該酸化チタン分散液中の該酸化チタン粉末の含有量が1〜40質量%となる量であり、
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の量が、該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部である酸化チタン分散液の製造方法である。
なお、通常、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物は、含水物又は該中和物が分散している中和物分散液であるため、ここで定義するアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の量は、含水物の乾燥物又は中和物分散液中の乾燥物の質量である。そして、乾燥物の質量は、乾燥前のアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の含水物又は中和物分散液の測定試料を、大気中で、120℃で加熱し、質量変化が0.2質量%/分以下となったときの測定試料の質量である。例えば、乾燥前のアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の含水物又は中和物分散液の質量がX(g)、大気中で、120℃で加熱し、質量変化が0.2質量%/分以下となったときの質量がY(g)であったとすると、乾燥前のアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の含水物又は中和物分散液中の乾燥物の質量割合は、(Y/X)×100(%)になるので、乾燥物の質量割合が(Y/X)×100(%)として、アミノシラン化合物の加水分解物の中和物の含水物又は中和物分散液の使用量を算出する(アミノシラン化合物の加水分解物の中和物の質量=乾燥前のアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の含水物又は中和物分散液の使用量×(Y/X)で算出)。
【0019】
本発明の酸化チタン分散液の製造方法では、先ず、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように、硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸より選ばれる少なくとも一種の酸を混合し、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物を中和して、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物を得る中和工程を行う。
【0020】
前記一般式(1)中、Rは、アミノ基、すなわち、第一級アミノ基、第二級アミノ基又は第三級アミノ基を有する炭化水素基である。そして、Rに係る該アミノ基は、該酸により中和される基である。Rに係る該アミノ基が、第二級アミノ基又は第三級アミノ基の場合、その第二級アミノ基又は第三級アミノ基の窒素原子に結合する基としては、直鎖、分岐鎖又は脂環式のアルキル基、芳香族基などが挙げられる。Rに係る該アミノ基は、1種であっても、2種以上であってもよく、また、1つのR中に、1個の該アミノ基を有していてもよく、2個以上の該アミノ基を有していてもよい。また、Rに係る該アミノ基が、Rに係る該炭化水素基に結合している位置は、特に制限されない。
【0021】
に係る該炭化水素基としては、直鎖、分岐鎖又は脂環式のアルキル基、芳香族基などが挙げられる。また、Rは、酸素原子又はRに係る該アミノ基の窒素原子以外の窒素原子を有している炭化水素基であっても、Rに係る該アミノ基の窒素原子以外には、窒素原子又は酸素原子を有さない炭化水素基であってもよい。Rに係る該炭化水素基が、Rに係る該アミノ基の窒素原子以外の窒素原子又は酸素原子を有している場合、Rに係る該炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、脂環式、芳香族環式等の炭化水素鎖中に、例えば、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合等、あるいは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、水酸基等を有する基である。
【0022】
前記一般式(1)中、R、R及びRは、炭素数が1〜8の炭化水素基であり、例えば、直鎖、分岐鎖又は脂環式のアルキル基、芳香族基等が挙げられる。また、R、R及びRは同一でも異なっていてもよい。
【0023】
、R及びRは、いずれも、RO−、RO−及びRO−とのように、酸素原子を介して、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物のSi原子に結合している。
【0024】
そして、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物のうち、下記一般式(2):
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、R及びRは、水素原子、又は基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有してもよい炭化水素基を示し、R及びRは、同一であっても異なってもよく、Rは、炭素数1〜8の二価の有機基を示し、R、R及びR10は、炭素数が1〜8の炭化水素基を示し、R、R及びR10は同一でも異なっていてもよい。)
で表わされるアミノシラン化合物が、酸化チタンの分散性が良好となる点で好ましい。
【0027】
前記一般式(2)中、R及びRは、水素原子、又は基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有してもよい炭化水素基である。つまり、R及びRの両方が水素原子の場合、前記一般式(2)で表わされるアミノシラン化合物は、第一級のアミノ基を有するアミノシラン化合物であり、R及びRのいずれか一方が水素原子で、他方が基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有してもよい炭化水素基の場合、前記一般式(2)で表わされるアミノシラン化合物は、第二級のアミノ基を有するアミノシラン化合物であり、R及びRの両方が基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有してもよい炭化水素基の場合、前記一般式(2)で表わされるアミノシラン化合物は、第三級のアミノ基を有するアミノシラン化合物である。
【0028】
及びRが、該基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有してもよい炭化水素基の場合、R及びRとしては、酸化チタンの分散性が高くなる点で、炭素数が1〜3の直鎖、分岐鎖又は脂環式のアルキル基が好ましく、そのうち、炭素数が1〜3のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0029】
また、R及びRに係る該基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有する炭化水素基としては、直鎖、分岐鎖、脂環式、芳香族環式等の炭化水素鎖中に、例えば、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合等、あるいは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、水酸基、等を有する基である。これらのうち、R及びRに係る該基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有する炭化水素基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基又は第三級アミノ基を有する炭素数が1〜3の炭化水素基が好ましい。
【0030】
前記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜8の二価の有機基であり、例えば、直鎖、分岐鎖又は脂環式のアルキレン基、アルキル基を有してもよいフェニレン基等である。
【0031】
前記一般式(2)中、R、R及びR10は、炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基である。また、R、R及びR10は、同一であっても異なってもよい。
【0032】
前記一般式(2)で表わされるアミノシラン化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、市販製品としては、信越化学工業株式会社製品KBM−903、KBE−903、KBM−603、KBE−603等が挙げられる。これらのうち、3−アミノプロピルトリメトキシシランが、保存安定性、酸化チタン分散液を用いて得られる酸化チタン膜の硬化性に優れる点で好ましい。
【0033】
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物を得る方法としては、特に制限されず、例えば、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物に、水を添加して、50℃以下で、1〜8時間撹拌する方法が挙げられる。また、市販の前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物である信越化学工業株式会社製品KBP−90が挙げられる。
【0034】
そして、該中和工程では、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように、好ましくはpHが6〜7となるように、該酸を混合し、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物を中和する。前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物に該酸を加えて、pHを上記範囲とすることにより、鉄、アルミニウム等の金属上に塗布する際に、腐食の問題が生じず、且つ、酸化チタン分散液の保存安定性及び分散性が優れる。
【0035】
本発明の酸化チタン分散液の製造方法に係る酸は、酸化チタンの分散性が高くなる点で、硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種以上の酸である。1価のカルボン酸とは、化合物中に1個のカルボキシル基を有する化合物である。例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸、ピバリン酸、トリメチル酢酸、アクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、チグリン酸、4−ペンテン酸、trans−2−ペンテン酸、シクロブタンカルボン酸、安息香酸などが挙げられる。該酸の混合量は、酸の種類によって、適宜選択される。特に、硝酸及び酢酸が光触媒活性に優れる点、酸化チタンの分散性に優れる点で好ましい。
【0036】
次いで、本発明の酸化チタン分散液の製造方法では、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物に、水又は該親水性溶媒と、酸化チタン粉末とを混合し、該酸化チタン粉末を分散させることにより、酸化チタン分散液を得る分散工程を行う。
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の量は、該分散工程で混合する該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部、好ましくは4〜10質量部である。前記範囲にあることにより、酸化チタンの分散性に優れ、且つ、光触媒活性が高い酸化チタン分散液が得られる。
【0037】
本発明の酸化チタン分散液の製造方法に係る該酸化チタン粉末としては、酸化チタン、窒素や硫黄を内部に含む酸化チタン、硫黄をTiサイトにドープした酸化チタン、酸素が欠損した酸化チタン、貴金属を担持した酸化チタン、遷移金属が担持された酸化チタン、遷移金属を内部に含む酸化チタンなどが挙げられる。これらのうち、可視光で高活性を示す点で、硫黄をTiサイトにドープした酸化チタンが好ましい。また、該酸化チタン粉末は、酸化チタンに遷移金属や貴金属が添加又は担持されたものでもよい。遷移金属や貴金属の担持量は、種類によって異なるが、触媒活性が高くなるように設定され、通常、0.1〜5質量%である。
【0038】
該酸化チタン粉末を混合する際の該酸化チタンの混合量は、酸化チタン分散液中の該酸化チタン粉末の含有量が1〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となる量である。該酸化チタンの混合量が、上記範囲未満だと、酸化チタン光触媒膜の活性が低くなり、また、上記範囲を超えると、酸化チタンの分散性が悪くなる。
【0039】
本発明の酸化チタン分散液に係る該親水性有機溶媒は、水と相溶性のある溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、アセトニトリル、アセトン、n−ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらのうち、エタノールが好ましい。
【0040】
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物に、水又は該親水性有機溶媒と、該酸化チタン粉末とを混合した後、混合液を撹拌すること等により、該混合液に該酸化チタン粉末を分散させ、酸化チタン分散液を得る。該分散工程では、該混合液に該酸化チタン粉末を分散させる際、より高い分散性を得るために、該酸化チタン粉末の凝集を緩和することを目的として、該混合液を湿式粉砕処理することもできる。該湿式粉砕処理には、酸化チタン分散液中の酸化チタン粉末の凝集を緩和することができるものであれば、せん断作用や摩砕作用を利用した解砕装置、撹拌式の解砕装置等の公知の湿式解砕装置を使用することができる。具体的には、ジェットミル、ビーズミル、ロールミル、ハンマーミル、振動ミル、流星型ボールミル、サンドミル、三本ロールミル等の解砕装置を使用することができ、これらのうち、ビールミル解砕装置が、効率的に解砕できる点で好ましい。また、該湿式粉砕処理に先立って、酸化チタン分散体をボールミルにより予備解砕処理することより、酸化チタン粉末の凝集をより緩和することができるので、酸化チタン粉末の分散性を高めることができる。
【0041】
本発明の酸化チタン分散液の製造方法の形態例としては、例えば、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物に、水を添加し加水分解することより、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物を含有する加水分解液を得、次いで、得られた加水分解液に該酸を混合して、pHを5〜8にし、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物を含有する中和反応液を得(中和工程)、次いで、得られた中和反応液に、水又は該親水性溶媒を混合し、酸化チタン分散液中の含有量が1〜40質量%となる量の該酸化チタン粉末を混合した後、混合液を撹拌する等により、該混合液中に該酸化チタン粉末を分散させて、酸化チタン分散液を得る(分散工程)方法が挙げられる。アミノシラン化合物の加水分解物の中和物の量は、該分散工程で混合する該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部となる量である。
【0042】
本発明の酸化チタン分散液は、下記一般式(1):
【0043】
【化6】

【0044】
(式中、Rは、アミノ基を有する炭化水素基を示し、R、R及びRは、炭素数が1〜8の炭化水素基を示し、R、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸より選ばれる少なくとも一種の酸を混合し、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物を得る中和工程と、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物に、水又は親水性溶媒と、酸化チタン粉末とを混合し、該酸化チタン粉末を分散させて、酸化チタン分散液を得る分散工程と、を行い得られる酸化チタン分散液であり、
該分散工程での該酸化チタン粉末の混合量が、該酸化チタン分散液中の該酸化チタン粉末の含有量が1〜40質量%となる量であり、
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物の量が、該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部である酸化チタン分散液である。
【0045】
本発明の酸化チタン分散液に係る該中和工程及び該分散工程は、本発明の酸化チタン分散液の製造方法に係る該中和工程及び該分散工程と同様である。
【0046】
本発明の酸化チタン分散液には、本願発明の効果を損なわない範囲で、バインダーとして任意成分を加えてもよい。任意成分としては、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウムのようなアルカリシリケート、シリカ、コロイダルシリカ(シリカゾル)、加水分解性珪素化合物、フッ素樹脂モノマー、フッ素樹脂エマルジョンが挙げられる。該加水分解性珪素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのオルガノシラン、これらのオリゴマーであるポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0047】
本発明の酸化チタン膜は、本発明の酸化チタン分散液を用いて形成される酸化チタン膜である。
【0048】
本発明の酸化チタン膜は、本発明の酸化チタン分散液を基材上に塗布した後、乾燥することにより形成される。
【0049】
本発明の酸化チタン分散液が塗布される基材としては、合成樹脂、鉄、アルミニウム、SUS等の金属材、ガラス等が挙げられる。
【0050】
本発明の酸化チタン分散液は中性であるため、鉄、アルミニウム、SUS等の金属材へも腐食の虞はない。本発明の酸化チタンの塗布方法は、特に制限されず、従来の方法を用いることができ、例えば、刷毛刷り、ローラー刷り、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、スピンコーティングなどがある。
【0051】
塗膜の乾燥処理は、オーブンなどの加熱設備にて行なわれる。該塗膜の乾燥処理の条件は、乾燥処理温度が120℃以下、好ましくは25〜110℃であり、乾燥処理時間が1時間以内、好ましくは5分以内、より好ましくは0.5分〜1分である。該塗膜の乾燥処理の際の乾燥雰囲気は、特に制限されないが、大気雰囲気が経済的である。
【0052】
本発明の酸化チタン分散液を用いて形成される本発明の酸化チタン膜は、透明性に優れ、光触媒活性も高い。
【実施例】
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0054】
[実施例1]
[酸化チタン分散液の調製]
(中和工程)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物液(信越化学工業株式会社、KBP90、3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物の含有量:32.8質量%、溶媒:水)に、酢酸(和光純薬工業株式会社製、含有量:99%)及び水を添加し、pH7に調整すると共に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、アミノシランの加水分解物の中和物を含有する中和反応液Aを得た。なお、3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物の中和物の含有量は、加熱乾燥式水分計 ML−50(株式会社エー・アンド・デイ)により、中和反応液Aの測定試料5gを、大気中で、120℃まで昇温及び加熱し、測定試料の質量変化が0.2質量%/分以下となったときの質量を、中和反応液A中のアミノトリプロピルメトキシシランの加水分解物の中和物の質量として、算出した(なお、以下でも同様である)。
【0055】
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に、溶媒として水を加えた後、Tiサイトを硫黄が置換した酸化チタン粉末(硫黄0.01%含有酸化チタン、可視光応答型光触媒)100質量部を加え、混合した。次いで、0.05μmジルコニアビーズをメディアとしたビーズミルにて、混合液の分散処理を行ない、酸化チタン分散液を作製した。なお、酸化チタン分散液全量で1000重量部となるように調整した。
(評価)
下記評価方法により、得られた酸化チタン分散液のpH、保存安定性、分散性、透明性、酸化チタン膜の活性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
[酸化チタン分散液の評価方法]
1.pHの評価方法
pHメータ(株式会社堀場製作所製 pHメータD−51)を用いて測定した。pHが、5未満か、5〜8か、8を超えるかで評価した。
2.保存安定性の評価方法
作製した酸化チタン分散液を安静にして一ヶ月間保管し、沈降又は分離を起していないか目視で確認した。○は沈降及び分離のいずれも無かった場合、△は若干の沈降又は分離が見られた場合、×は著しく沈降又は分離の傾向が見られた場合である。
3.分散性の評価方法
作製した酸化チタン分散液の粒度分布を、動的散乱法による粒度分布計(大塚電子株式会社製FPRA1000)によって測定した。「5」は50nm以下、「4」は50nm以上55nm未満、「3」は55nm以上100nm未満、「2」は100nm以上250nm未満、「1」は250nm以上を示す。
4.透明性の評価方法
酸化チタン含有量が1wt%となるように、純水で希釈し、超音波ホモジナイザー40Wで1分間分散処理を行ない、吸光度測定用分散液を作製した。吸光度測定機(日本分光株式会社製V−550)を用いて、作製した吸光度測定用分散液の透過度を測定した。
◎は透過度90%以上、○は透過度80%以上90%未満、△は透過度70%以上80%未満、×は透過度70%未満である。
5.活性の評価方法
先ず、実施例及び比較例の酸化チタン分散液を、10×10cmのガラス板に塗布し、塗膜を常温で乾燥させてサンプルピースを作製した。次にこのサンプルピースを1000mlのテドラーバックに封入し、そこにアセトアルデヒドガス濃度100ppm、酸素濃度200ppm、他窒素ガスとなるよう調製した混合ガス1000mlを投入した。混合ガスの入ったテドラーバックを、暗所に12時間放置した後、4000lxの蛍光灯で2時間照射を行い、アセトアルデヒドを分解したことによって発生したCOの発生量を測定した。実施例3のCO発生量を基準特性の100とし、各実施例及び比較例を相対的に比較した。◎は150以上、○は100以上150未満、△は40以上100未満、×は40未満を示す。
【0057】
[実施例2]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 200質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0058】
[実施例3]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 5質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0059】
[実施例4]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
溶媒として水を加えることに代えて、溶媒としてエタノール(和光純薬工業株式会社製、含有量:95%)を加えること以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0060】
[実施例5]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、硝酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Bを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液B 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0061】
[実施例6]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、塩酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Cを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液C 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0062】
[実施例7]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
酸化チタン粉末100質量部に代えて、酸化チタン粉末50質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0063】
[実施例8]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
酸化チタン粉末100質量部に代えて、酸化チタン粉末300質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0064】
[実施例9]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 40質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0065】
[実施例10]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 100質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0066】
[実施例11]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
酸化チタン粉末100質量部に代えて、酸化チタン粉末200質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0067】
[実施例12]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 10質量部とすること及び酸化チタン粉末100質量部に代えて、酸化チタン粉末10質量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0068】
[実施例13]
(中和工程)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物液(信越化学工業(株)KBP90、3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物の含有量:32.8質量%、溶媒:水)に、酢酸(和光純薬工業(株)製、含有量:99%)及び水を添加し、pH5に調整すると共に、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Dを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液D 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0069】
[実施例14]
(中和工程)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物液(信越化学工業(株)KBP90、3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物の含有量:32.8質量%、溶媒:水)に、酢酸(和光純薬工業(株)製、含有量:99%)及び水を添加し、pH8に調整すると共に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン換算の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Eを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液E 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0070】
[実施例15]
(中和工程)
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、KBM603)15質量部に、水30質量部を加えて、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物液を得、次いで、酢酸(和光純薬工業株式会社製、含有量:99%)及び水を添加し、pH7に調整すると共に、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Fを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液F 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0071】
[実施例16]
(中和工程)
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社、KBE603)15質量部に、水30質量部を加えて、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物液を得、次いで、酢酸(和光純薬工業株式会社製、含有量:99%)及び水を添加し、pH7に調整すると共に、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Gを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液G 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0072】
[実施例17]
(中和工程)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、KBM903)15質量部に、水30質量部を加えて、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物液を得、次いで、酢酸(和光純薬工業株式会社製、含有量:99%)及び水を添加し、pH7に調整すると共に、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Hを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液H 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0073】
[実施例18]
(中和工程)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社、KBE903)15質量部に、水30質量部を加えて、3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物液を得、次いで、酢酸(和光純薬工業株式会社製、含有量:99%)及び水を添加し、pH7に調整すると共に、3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Iを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液I 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0074】
[比較例1]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 1質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0075】
[比較例2]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 220質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0076】
[比較例3]
(アミノシランの加水分解)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、KBM903)15質量部に、水30質量部を加えて、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物液aを得た。
(分散)
3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物液aに、溶媒として水を加えた後、Tiサイトを硫黄が置換した酸化チタン粉末(硫黄0.01%含有酸化チタン、可視光応答型光触媒)を加え、混合した。次いで、0.05μmジルコニアビーズをメディアとしたビーズミルにて、混合液の分散処理を行ない、酸化チタン分散液を作製した。なお、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物が50質量部、酸化チタン粉末が100質量部、酸化チタン分散液全量で1000重量部となるように調整した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0077】
[比較例4]
(分散)
溶媒としての水に、実施例1と同量の酢酸を加え、次いで、Tiサイトを硫黄が置換した酸化チタン粉末(硫黄0.01%含有酸化チタン、可視光応答型光触媒)100質量部を加え、混合した。次いで、0.05μmジルコニアビーズをメディアとしたビーズミルにて、混合液の分散処理を行ない、酸化チタン分散液を作製した。なお、酸化チタン分散液全量で1000重量部となるように調整した。
【0078】
[比較例5]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
酸化チタン粉末100質量部に代えて、酸化チタン粉末450質量部とした以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0079】
[比較例6]
(中和工程)
実施例1と同様の方法で行い、中和反応液Aを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液A 5質量部とすること及び酸化チタン粉末100質量部に代えて、酸化チタン粉末5質量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0080】
[比較例7]
(中和工程)
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社、KBM602)15質量部に、水30質量部を加えて、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物液を得、次いで、酢酸(和光純薬工業株式会社製、含有量:99%)及び水を添加し、pH7に調整すると共に、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン加水分解物の中和物の含有量が10質量%となるように調整し、中和反応液Jを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液J 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0081】
[比較例8]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、硼酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Kを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液K 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0082】
[比較例9]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、蓚酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Lを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液L 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0083】
[比較例10]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、マレイン酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Mを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液M 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0084】
[比較例11]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、フタル酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Nを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液N 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0085】
[比較例12]
(中和工程)
酢酸を添加することに代えて、コハク酸を添加すること以外は、実施例1と同様に行い、中和反応液Oを得た。
(分散工程)
中和反応液A 50質量部に代えて、中和反応液O 50質量部とする以外は、実施例1と同様に行い、酸化チタン分散液を作製した。
(評価)
実施例1と同様の方法で行った。
【0086】
[参考例1]
10×10cm角のシャーレに実施例1で使用したTiサイトを硫黄が置換した酸化チタン粉末0.1gを入れ、次いで純水を2g入れ、該粉末を純水に馴染ませ、シャーレ一面に該粉末が行き渡るようにした後に、110℃で1時間乾燥したものサンプルとし、同様に光触媒活性を評価した。その結果、◎であった。
【0087】
【表1】

【0088】
1)1は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン
2は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
3は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン
4は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン
5は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
2)中和反応液中、アミノシラン換算の含有量は10質量%
3)分散工程で混合した酸化チタン粉末100質量部に対するアミノシラン加水分解物の中和物の使用量
4)分散液全量中の酸化チタンの質量割合
【0089】
【表2】

-;未測定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】


(式中、Rは、アミノ基を有する炭化水素基を示し、R、R及びRは、炭素数が1〜8の炭化水素基を示し、R、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアミノシラン化合物の加水分解物に、pHが5〜8となるように硝酸、塩酸及び1価のカルボン酸より選ばれる少なくとも一種の酸を混合し、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物を得る中和工程と、前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物に、水又は親水性溶媒と、酸化チタン粉末とを混合し、該酸化チタン粉末を分散させて、酸化チタン分散液を得る分散工程と、を有する酸化チタン分散液の製造方法であり、
該分散工程での該酸化チタン粉末の混合量が、該酸化チタン分散液中の該酸化チタン粉末の含有量が1〜40質量%となる量であり、
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物の加水分解物の中和物が、該酸化チタン粉末100質量部に対して、0.5〜20質量部であること、
を特徴とする酸化チタン分散液の製造方法。
【請求項2】
前記酸が、酢酸及び硝酸から選ばれる少なくとも一種以上の酸であることを特徴とする請求項1記載の酸化チタン分散液の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表わされるアミノシラン化合物が、下記一般式(2):
【化2】


(式中、R及びRは、水素原子、又は基中に1個以上の酸素原子又は窒素原子を有してもよい炭化水素基を示し、R及びRは、同一であっても異なってもよく、Rは、炭素数1〜8の二価の有機基を示し、R、R及びR10は、炭素数が1〜8の炭化水素基を示し、R、R及びR10は同一でも異なっていてもよい。)
で表わされるアミノシラン化合物であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の酸化チタン分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の製造方法で得られた酸化チタン分散液を用いて形成されたことを特徴とする酸化チタン膜。

【公開番号】特開2010−43159(P2010−43159A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206862(P2008−206862)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】