説明

酸化亜鉛薄膜

【課題】良好な結晶性を有する膜を高い成膜速度で大面積に成膜することができる酸化亜鉛薄膜の成膜方法およびこの方法により成膜した酸化亜鉛薄膜を提供する。
【解決手段】成膜室中に陽極として配置されたハース51に装填された酸化亜鉛を主成分とする蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームPBを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、蒸着材料と対向して配置された基板Wの表面に蒸着物質を付着させて薄膜を得る。このとき、ハース51の周囲に配した磁場制御部材によりハース51に近接した上方の磁界を制御し、また、ハース51が真空容器10に対して+30〜+60Vの電位となるように電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛薄膜およびその成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子の透明電極として、ITO膜、SnO膜、ZnO膜等が用いられている。
【0003】
このうち、ITO膜は、比抵抗が2〜3×10−4Ω・cm以下程度と小さいため、液晶表示装置等に広く使用されている。
【0004】
しかしながら、ITO膜は、化学的安定性が他の材料と比べて低い。このため、ITO膜は、水素プラズマ中で還元されて黒化現象を招くため、例えば、太陽電池製造プロセス等のように、ZnO成膜の後工程にCVDによりアモルファスSiを成膜するプロセスを用いる場合、ITO膜を電極として用いることができない。また、ITO膜の原料のひとつのInは高価でかつ量的にも希少である。
【0005】
これに対して、SnO膜は、比抵抗が10−3Ω・cm程度と大きいため、高い導電性を求められる膜には適さない。
【0006】
一方、ZnO膜は、通常スパッタリング法で作製されるが、この場合、比抵抗が5〜6×10−4Ω・cm程度でありSnO膜よりも小さく、また、ITO膜に比べて化学的に安定であるため、上記したアモルファスSi膜を用いた太陽電池の電極として採用されている。また、ZnO膜の原料であるZnは安価であり、かつ資源量としても豊富である。
【0007】
ZnO膜は、従来、上記のスパッタリング法のほかにも、ゾルゲル法、スプレー法、MOCVD法、RFスパッタリング法等の種々の方法で成膜されている。
【0008】
これらの成膜方法のうち、スパッタリング法やゾルゲル法は、生産性が高いという利点がある。
【0009】
このようなZnO膜は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−287998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記したスパッタリング法やゾルゲル法等の成膜方法により得られるZnO膜は、バンドギャップ中に深い準位が存在する等必ずしも良好な結晶性を得ることができない。
【0012】
一方、MBEやパルス・レーザ・デポジション等の方法を用いることにより結晶性の良好なZnO膜が得られることが報告されている。しかしながら、これらの方法は、成膜速度が極めて遅く、また、成膜面積も小さなものに限られるため、実用的ではない。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、良好な結晶性を有するZnO(酸化亜鉛)膜を高い成膜速度で大面積に成膜することができる酸化亜鉛薄膜の成膜方法およびこの方法により成膜した酸化亜鉛薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、ガラス基板上に成膜され、バンドギャップ中に300meV以上の深い準位を持たず、77Kで測定したフォトルミネッセンススペクトルにおいてバンド端発光のピークのみを示すことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、ガラス基板上に直接成膜され、バンドギャップ中に300meV以上の深い準位を持たず、フォトルミネッセンススペクトルにおいてバンド端発光のピークのみを示すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜の成膜方法によれば、イオンプレーティグ法による酸化亜鉛薄膜の成膜方法であって、成膜室中に陽極として配置されたハースに酸化亜鉛を主成分とする蒸着材料を配置し、ハースの周囲に配した磁場制御部材により該ハースに近接した上方の磁界を制御し、蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質をイオン化させて、蒸着材料と対向して配置された基板の表面に蒸着物質を付着させて薄膜を得るため、良好な結晶性を有する酸化亜鉛薄膜を高い成膜速度で大面積にわたって均質に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態例に係る酸化亜鉛薄膜の形成方法に用いるイオンプレーティング装置の概略断面図である。
【図2】実施例1の酸化亜鉛膜のPLスペクトルを示す図であり、(a)は77Kの温度で、(b)は常温でそれぞれ測定した結果である。
【図3】第2の実施例の酸化亜鉛膜のPLスペクトルを常温で測定した結果を示す図である。
【図4】第2の実施例の酸化亜鉛膜のPLスペクトルを77Kで測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜およびその成膜方法の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0019】
まず、本実施の形態例に係る酸化亜鉛薄膜の成膜方法(以下、単に成膜方法という。)を実施するのに好適な成膜装置について図1を参照して説明する。
【0020】
成膜装置は、成膜室である真空容器10と、真空容器10中にプラズマビームPBを供給するプラズマ源であるプラズマガン30と、真空容器10内の底部に配置されてプラズマビームPBが入射する陽極部材50とを備える。
【0021】
真空容器10は、アースされている。
【0022】
プラズマガン30は、特開平9−194232号公報等に開示した圧力勾配型のプラズマガンであり、その本体部分は、真空容器10の側壁に設けられた筒状部12に装着されている。この本体部分は、陰極31によって一端が閉塞されたガラス管32からなる。ガラス管32内には、モリブデンで形成された円筒33が陰極31に固定されてガラス管32と同心に配置されており、円筒33内には6ホウ化ランタン(LaB)で形成された円盤34とタンタルで形成されたパイプ35とが内蔵されている。ガラス管32の陰極31とは反対側の端部と真空容器10に設けた筒状部12の端部との間には、第1および第2の中間電極41、42が同軸で直列に配列されている。第1の中間電極41内には、プラズマビームPBを収束するための環状永久磁石44が内蔵され、一方、第2の中間電極42内にも、プラズマビームPBを収束するための電磁石コイル45が内蔵されている。また、筒状部12の周囲には、陰極31で発生して第1および第2の中間電極41、42まで引き出されたプラズマビームPBを真空容器10内に導くステアリングコイル47が設けられている。
【0023】
プラズマガン30の動作は、図示しないガン駆動装置によって制御される。これにより、陰極31への給電をオン・オフしあるいは供給電流等を調整することができ、さらに、第1および第2の中間電極41、42、電磁石コイル45およびステアリングコイル47への給電を調整することができる。この結果、真空容器10内に供給されるプラズマビームPBの強度や分布状態を制御することができる。
【0024】
なお、プラズマガン30の最も内心側に配置されるパイプ35は、プラズマビームPBのもととなる、アルゴン(Ar)等の不活性ガスからなるキャリアガスをプラズマガン30ひいては真空容器10内に導入するためのものであり、流量計93及び流量調節弁94を介して不活性ガス源90に接続されている。
【0025】
真空容器10内の底部に配置される陽極部材50は、プラズマビームPBを下方に導く主陽極であるハース51と、ハース51の周囲に配置された環状の補助陽極〈磁場制御部材〉52とからなる。
【0026】
ハース51は、導電性材料で形成され、図示しない絶縁物を介して、接地された真空容器10に支持されている。ハース51は、陽極電源装置80によって適当な正電位に制御されており、プラズマガン30から出射したプラズマビームPBは、これらハース51および補助陽極52にガイドされて、下方に配置したハース51に到達する。
【0027】
ハース51は、蒸着材料配置部であり、プラズマビームPBが入射する中央部に貫通孔THを有し、貫通孔THに蒸着材料である柱状若しくは棒状の材料ロッド53が装填される。材料ロッド53は、ZnOまたはZnOにAl等の金属を添加して所定の形状に成形したタブレットである。材料ロッド53は、プラズマビームPBの電流によって加熱されて昇華し、蒸着物質の蒸気を発生する。真空容器10の下部に設けた材料供給装置58は、材料ロッド53をつぎつぎにハース51の貫通孔THに装填するとともに、装填した材料ロッド53を徐々に上昇させる構造を有しており、材料ロッド53の上端が蒸発して消耗しても、この上端をハース51の貫通孔THから常に一定量だけ突出させることができる。
【0028】
補助陽極52は、ハース51と同心にハース51の周囲に配置された環状の容器により構成されている。この環状の容器内には、フェライト等で形成された環状の永久磁石55と、永久磁石55と同心に積層されたコイル56とが収容されている。これら永久磁石55およびコイル56は、磁場制御部材であり、ハース51の直上方にカスプ状磁場を形成する。これにより、ハース51に入射するプラズマビームPBの向きを修正することができる。
【0029】
補助陽極52のコイル56は、電磁石を構成し、陽極電源装置80から給電されて、永久磁石55により発生する中心側の磁界と同じ向きになるような付加的な磁界を形成する。つまり、コイル56に供給する電流を変化させることで、ハース51に入射するプラズマビームPBの向きの微調整が可能になる。
【0030】
補助陽極52の容器も、ハース51と同様に導電性材料で形成される。補助陽極52は、図示しない絶縁物を介してハース51に取り付けられている。陽極電源装置80から補助陽極52に印加する電圧を変化させることにより、ハース51の上方の電界を補助的に制御できる。すなわち、補助陽極52の電位をハース51と同じにすると、プラズマビームPBが補助陽極52にも引き寄せられてハース51へのプラズマビームPBの供給が減少する。一方、補助陽極52の電位を真空容器10と同じ程度に下げると、プラズマビームPBがハース51に引き寄せられて材料ロッド53が加熱される。
【0031】
真空容器10の上部空間部のハース51と対向する位置に、保持部材60に保持されて基板Wが配置される。
【0032】
酸素ガス供給装置71および窒素ガス供給装置72は、それぞれ、真空容器10に適当なタイミングで適当な量の酸素(O)ガスおよび窒素(N)ガスを雰囲気ガスとして供給(導入)するためのガス供給手段である。酸素ガスを収容する酸素ガス源71aおよび窒素ガスを収容する窒素ガス源72aからの供給ラインは、それぞれ流量調節弁71b、72bおよび流量計71c、72cを介して真空容器10に接続されている。
【0033】
ハース用ガス供給装置73は、アルゴン等の不活性ガスをハース51に適当なタイミングで適当な量供給するためのものである。不活性ガス源90から分岐された不活性ガスは、ハース用ガス供給装置73の流量調節弁73bおよび流量計73cを介してハース51に設けた図示しないガス導入ポートに導かれ、材料ロッド53の周囲に吐出される。
【0034】
排気装置76は、排気ポンプ76bにより、真空ゲート76aを介して真空容器10内のガスを適宜排気する。
【0035】
真空圧測定器77は、真空容器10内の酸素ガス、窒素ガス等の分圧を計測することができ、この計測結果は、雰囲気制御装置78によって監視されている。
【0036】
雰囲気制御装置78は、酸素ガス供給装置71、窒素ガス供給装置72およびハース用ガス供給装置73等を介して、酸素ガス、窒素ガスおよびアルゴンガスの真空容器10内への供給量をそれぞれ調整することができる。また、雰囲気制御装置78は、真空圧測定器77の計測結果に基づいて、酸素ガス供給装置71、窒素ガス供給装置72、ハース用ガス供給装置73および排気装置76等の動作を制御して、真空容器10内の酸素ガス、窒素ガスおよびアルゴンガスの分圧を目標値に制御することができる。
【0037】
以上のように構成した上記成膜装置は、イオンプレーティング装置であり、以下のように作用する。
【0038】
まず、真空容器(成膜室)10の下部に配置されたハース51の貫通孔THに材料ロッド53を装着する。材料ロッド53を構成する蒸着材料は、ZnOを主成分とする。なお、蒸着材料は、Al、Ga、In、B等の3族元素やN等の5族の元素あるいはこれらの元素の酸化物をさらに含むと、膜の比抵抗をより小さくすることができる。また、1族元素、4族元素、7族元素あるいはこれらの元素の酸化物を含んでもよい。一方、ハース51の上方の対向する位置に、例えば,ガラス製の基板Wを配置する。
【0039】
つぎに、基板WにZnOを付着形成(成膜)させるに際して、予め真空容器10に酸素ガスを導入する。
【0040】
そして、アース電位にある真空容器10を挟んで、負電圧をプラズマガン30の陰極31に、正電圧をハース51に印加して放電を生じさせ、これにより、プラズマビームPBを生成する。放電が安定した状態でのハース51の電圧は、真空容器10(真空容器10の壁)を基準として好ましくは+30〜+60Vの範囲内とする。このハース51の電圧は、磁場、真空容器10の圧力、放電電流等の条件を変更することで調整することができる。
【0041】
プラズマビームPBは、ステアリングコイル47と補助陽極52内の永久磁石55等とによって決定される磁界に案内されてハース51に到達する。この際、材料ロッド53の周囲にアルゴンガスが供給されるので、容易にプラズマビームPBがハース51に引き寄せられる。
【0042】
プラズマに曝された材料ロッド53は、徐々に加熱される。材料ロッド53が十分に加熱されると、材料ロッド53が昇華し、ZnO等の蒸着物質が蒸発(出射)する。蒸着物質は、ハース51直上の高密度のプラズマビームPB中でイオン化される。プラズマビームPB内におけるハース直上での電位はハース51の電位と略同程度であるため、正にイオン化された蒸着物質(蒸着材料の元素)は、ハース51の電位と略等しい電位、すなわち、ポテンシャルエネルギを持つ。
【0043】
真空容器10の圧力を適切に選ぶと、イオン化した蒸着物質は、移動中にAr等の粒子と衝突する機会が少ないためにエネルギを失うことなく、ポテンシャルエネルギから置換された運動エネルギを持って基板Wに到達し、付着(入射)する。なお、例えば、真空容器10の圧力が高すぎると、イオン化した蒸着物質は、Ar等の粒子と衝突して運動エネルギを失い熱化する。すなわち、イオン化した蒸着物質の運動エネルギは、平均的な温度の熱エネルギに相当するレベルまで低下する。
【0044】
基板W上に堆積したZnO等は、酸素ガスと反応して、基板W上にZnO薄膜が形成される。
【0045】
上記のように、ハース51の電位を+30〜+60Vの範囲で調整し、また、真空容器10の圧力を適切に選んで、イオン化された蒸着物質の運動エネルギをZnOの結晶成長に最適な範囲内とすることで、良好な結晶性を有するZnO薄膜を得ることができる。なお、この場合、イオン化された蒸着物質の運動エネルギが低すぎると、基板Wに到達した蒸着物質の粒子の表面マイグレーションが不足し、一方これとは逆に、イオン化された蒸着物質の運動エネルギが高すぎると、既に形成された結晶成長後の膜の構造を壊しながら膜成長が進むことになるため、いずれも良好な結晶性を有するZnO薄膜を得ることができない。
【0046】
また、このとき、酸素ガスの雰囲気圧を調整することにより、ZnO薄膜中の酸素欠陥の量を制御することができる。また、1族、3族、4族、5族、7族の元素、乃至1族、3族、4族、5族、7族の元素を含む酸化物を蒸着材料に添加するか、あるいはガスの形態で供給することにより、ZnO薄膜中の添加元素を制御することができる。
【0047】
本実施の形態例に係るZnO薄膜の成膜方法により得られるZnO薄膜は、結晶欠陥が少なく、結晶性が良好である。また、本実施の形態例に係るZnO薄膜の成膜方法によれば、良好な結晶性を有するZnO薄膜を高い成膜速度で大面積にわたって均一に形成することができる。
【実施例】
【0048】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明の成膜方法であるイオンプレーティング方法を用い、ZnO膜を調製した。
【0049】
基板として、厚み0.7mmの無アルカリガラス基板を用いた。無アルカリガラス基板は、200℃の温度に保持した。材料ロッドを構成する蒸着材料は、ZnOを用いた。成膜条件は、放電電圧が80V、ハース電位が+40V、放電電流120Aでアーク放電を行った。成膜圧力0.1Pa、雰囲気ガス条件としてアルゴン:酸素=30sccm:10sccmとした。これにより、膜厚が200nmの酸化亜鉛薄膜を得た。
【0050】
図2に、得られたZnO膜についてフォトルミネセンス(以下、PLという。)測定を行って得られたPLスペクトルを示す。併せて、比較のために、スパッタリング法により成膜したZnO膜のPLスペクトルを示す。
【0051】
なお、PL測定は、He−Cdレーザの325nm線を用い、77K(図2(a))および室温(RT:図2(b)の2条件で行った。図2中、(A)がイオンプレーティング法により成膜したZnO膜であり、(B)がスパッタリング法により成膜したZnO膜である。縦軸はPL強度を示し、横軸は光子エネルギを示す。PLスペクトルの形状が略同一になるように、(B)のスパッタリング法のPLスペクトル波形の縦軸の幅を、図2(a)については10倍に、図2(b)については25倍に、それぞれ拡大して示す。
【0052】
スパッタリング法により成膜したZnO膜は、3.3eVのバンドギャップ中、2.2eVの欠陥準位によると考えられる発光帯(図2中Aピーク)と、バンド端発光(図2中NBE)の0.1eV低エネルギー側のPLピーク(図2中Bピーク)の強度が大きい。これに対して、イオンプレーティング法により成膜したZnO膜は、2.2eVの欠陥準位によると考えられる発光帯(図2中Aピーク)およびバンド端発光の0.1eV低エネルギー側のPLピーク(図2中Bピーク)が消失し、バンド端発光が支配的であり、ZnO薄膜が、結晶欠陥の少ない、高い結晶性を有する高品質の膜であることがわかる。
(実施例2)
つぎに、本発明の成膜方法であるイオンプレーティング方法を用い、上記の実施例の製造条件のうち、ハース電位のみを変えてZnO膜を調製した。
【0053】
図3に室温で行ったPL測定の結果を示し、図4に77Kで行ったPL測定の結果を示す。なお、図3および図4中、各PLスペクトルに付した電圧の数値はハース電位である。また、各PLスペクトルは、それぞれに付した倍率で縦軸を拡大して、波形が各PLスペクトルで略同じ大きさになるように調整している。
【0054】
図3で室温において測定したPLスペクトルをみると、ハース電位28.3Vで作製したZnO膜は、2.2eV付近の欠陥準位が存在し、また、バンド端発光のピークも小さい。これに対して、ハース電位を上げるにつれて、2.2eV付近の欠陥準位が消失し、バンド端発光のピークが大きくなる。ハース電位が30V以上になると、少なくとも300meV以上の深い準位を有しない、言い換えると、バンド端発光のみを有する、結晶欠陥の少ない、良好な結晶性を有するZnO膜が得られることがわかる。
【0055】
図4の77Kにおいて測定したPLスペクトルについても、図3と同様の傾向が見られる。
【符号の説明】
【0056】
10 真空容器
30 プラズマガン
50 陽極部材
51 ハース
53 材料ロッド
60 保持部材
71 酸素ガス供給装置
73 窒素ガス供給装置
78 雰囲気制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に成膜され、バンドギャップ中に300meV以上の深い準位を持たず、77Kで測定したフォトルミネッセンススペクトルにおいてバンド端発光のピークのみを示すことを特徴とする酸化亜鉛薄膜。
【請求項2】
ガラス基板上に直接成膜され、バンドギャップ中に300meV以上の深い準位を持たず、フォトルミネッセンススペクトルにおいてバンド端発光のピークのみを示すことを特徴とする酸化亜鉛薄膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−197333(P2009−197333A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112895(P2009−112895)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願2002−233563(P2002−233563)の分割
【原出願日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年3月27日 社団法人応用物理学会発行の「2002年(平成14年)春季 第49回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第2分冊」に発表
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】