説明

酸化物中空粒子、その製造方法及び酸化物中空粒子製造装置

【課題】サブマイクロオーダーやナノサイズを有している無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子を、簡単な方法で合成し且つ回収する技術の開発が求められている。
【解決手段】プラズマを用いた低真空容器内で、分オーダーの短時間で直径がサブマイクロオーダーやナノオーダーの無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子を製造する。気相反応のみの反応プロセスによって、中空金属酸化物単結晶粒子の生成が可能であり、また、放電プラズマやガス流を制御することによって均質な粒径分布や空洞径/粒径の比の制御が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物中空粒子(特には、金属酸化物中空粒子)、酸化物中空粒子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空酸化物粒子は、優れた耐スパッタ性、電気絶縁性、熱伝導性、光学特性をもっており、粒子内部の空孔により大きな光拡散効果、隠ぺい性、熱遮蔽効果を必要とする分野への工学的応用が盛んに行われている。
【0003】
中空酸化物粒子は、従来より、ゾルゲル法などで製造することが報告されている。例えば、特許文献1参照。
また、プラズマを用いたMgO粒子作製方法も報告されている(特許文献2)が、容器の
予熱に2000℃以上を要するなど、簡易的な方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-203810
【特許文献2】特表2003-522299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サブマイクロオーダーやナノサイズを有している無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子を、簡単な方法で合成し且つ回収する技術の開発が求められている。特には、簡易的な製法でサブマイクロオーダーやナノオーダーサイズのMgO中空単結晶粒子を提供することが求められてい
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、プラズマを用いた低真空容器内で、分オーダーの短時間で直径がサブマイクロオーダーやナノオーダーのMgO中空単結晶粒子を作製することができる。
本発明では、スパッタリング技術を使用して、サブマイクロオーダーやナノオーダーサイズの無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子を製造する技術が提供される。
【0007】
本発明では、典型的には、次なるものが提供される。
〔1〕平均直径が10nm〜1μmの中空球状の粒子であり、単結晶金属酸化物から構成された粒子であることを特徴とする球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔2〕平均直径が10nm〜500nmの中空球状の粒子であることを特徴とする上記〔1〕に記
載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔3〕平均直径が10nm〜100nmの中空球状の粒子であることを特徴とする上記〔1〕に記
載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔4〕金属酸化物が、Mg, Ca, Sr, Ba, Be, Li, Na, K, Rb, Cs, Al, Ga, In, Ge, Sn, Pb, Sb, Bi, Zn, Cd, Hg, Y, Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, Fe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt, Cu, Ag, Au, ランタノイド、アクチノイド及びミッシュメタルからなる群から選択された金属の酸化物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔5〕金属酸化物が、Mg, Ti, Zn, Al, ランタノイド及びミッシュメタルからなる群から選択された金属の酸化物であることを特徴とする上記〔4〕に記載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔6〕真空容器中に、金属酸化物源である金属の第一電極と放電空間を囲む絶縁板を備え、該絶縁板の外面(放電空間に対して外面側)に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置を使用し、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子であることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔7〕第一電極が、マグネシウム、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選択された金属であり、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子が、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選択された金属酸化物の単結晶球形中空粒子であることを特徴とする上記〔6〕に記載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔8〕酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴンもしくは他の不活性ガスを含む混合気
体を使用し、第一電極のスパッタリング及び飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を同一放電空間で行うことにより球形金属酸化物中空粒子が生成されるものであることを特徴とする上記〔6〕又は〔7〕に記載の球形金属酸化物単結晶中空粒子。
〔9〕平均直径が10nm〜1μmであり、中空球状であり、NaCl型の単結晶である球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子。
〔10〕真空容器中に金属マグネシウム第一電極と放電空間を囲む絶縁板を備え、該絶縁板の外面に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置を使用し、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で生成される球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子であることを特徴とする上記〔9〕に記載の球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子。
【0008】
〔11〕酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴンもしくは他の不活性ガスを含む混合気
体を使用し、第一電極のスパッタリングと飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を同一放電空間で行うことにより球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子が生成されるものであることを特徴とする上記〔9〕又は〔10〕に記載の球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子。
〔12〕真空容器中に、金属酸化物源である金属の第一電極と放電空間を囲む絶縁板、そして、該絶縁板の外面に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置であって、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることができることを特徴とする球形金属酸化物単結晶中空粒子製造装置。
〔13〕第一電極が、マグネシウム、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選択された金属であり、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子が、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選択された金属酸化物の単結晶球形中空粒子であることを特徴とする上記〔12〕に記載の装置。
〔14〕金属マグネシウム第一電極を備えており、且つ、プラズマ中で球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子を生成することができることを特徴とする上記〔12〕又は〔13〕に記載の装置。
〔15〕酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴンもしくは他の不活性ガスを含む混合気
体を使用し、第一電極のスパッタリングと飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を同一放電空間で行うことにより球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする上記〔12〕〜〔14〕のいずれか一に記載の装置。
〔16〕球形金属酸化物中空粒子が、プラズマ中で負に帯電して、長時間プラズマ中に保持され、且つ、成長できることを特徴とする上記〔12〕〜〔15〕のいずれか一に記載の装置。
〔17〕放電空間が絶縁板で囲まれ、それゆえ、壁の負電荷帯電の作用により、負帯電粒子
が静電的に閉じ込められ、かつ成長できること、もしくは、放電空間が金属で囲まれ、それゆえ、壁前面のシースの作用により、負帯電粒子が静電的に閉じ込められ、且つ、成長できることを特徴とする上記〔12〕〜〔16〕のいずれか一に記載の装置。
〔18〕(1)混合ガスの酸素とアルゴンもしくは他の不活性ガスとの比を変えることによっ
て、球形中空粒子の肉厚などの特性を調整できる機能を持つこと、及び/又は、(2)放電
時間またはガス流速により、球形粒子の直径などの特性を調節できる機能を持つことを特徴とする上記〔12〕〜〔17〕のいずれか一に記載の装置。
〔19〕(i)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を、ガス流を利用して下流へ
輸送し、下流領域で粒子を回収するフィルタもしくは回収機器を併せ持つこと、及び/又は、(ii)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を放電反応生成領域絶縁板の壁面に付着せしめ、該付着した粒子を回収できる機構を持つことを特徴とする上記〔12〕〜〔18〕のいずれか一に記載の装置。
〔20〕(a)第一金属電極の消耗による放電間隔の変化を調整できる機能を持つこと、及び
/又は、(b)第一電極に印加する変動電圧として、可変の繰り返し周波数で高周波インパ
ルス電圧を発生できる電源、もしくは、連続発振高周波電圧を発生する電源を持つことを特徴とする上記〔12〕〜〔19〕のいずれか一に記載の装置。
【0009】
〔21〕真空容器中に、金属酸化物源である金属の第一電極と放電空間を囲む絶縁板、そして、該絶縁板の外面に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置を使用し、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする球形金属酸化物単結晶中空粒子の製造方法。
〔22〕第一電極が、Mg, Ca, Sr, Ba, Be, Li, Na, K, Rb, Cs, Al, Ga, In, Ge, Sn, Pb,
Sb, Bi, Zn, Cd, Hg, Y, Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, Fe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt, Cu, Ag, Au, ランタノイド、アクチノイド及びミッシュメタルからなる群から選択された金属であり、且つ、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子が、第一電極を構成する金属の酸化物の単結晶球形中空粒子であることを特徴とする上記〔21〕に記載の製造方法。
〔23〕第一電極が、マグネシウム、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選択された金属であり、且つ、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子が、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選択された金属酸化物の単結晶球形中空粒子であることを特徴とする上記〔21〕又は〔22〕に記載の製造方法。
〔24〕金属マグネシウム第一電極を使用し、且つ、プラズマ中で球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする上記〔21〕〜〔23〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔25〕酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴンもしくは他の不活性ガスを含む混合気
体を使用し、第一電極のスパッタリング及び飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を同一放電空間で行い、球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする上記〔21〕〜〔24〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔26〕球形金属酸化物中空粒子を、プラズマ中で負に帯電せしめて、長時間プラズマ中に保持せしめ、且つ、成長せしめることを特徴とする上記〔21〕〜〔25〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔27〕放電空間を絶縁板で囲んでおり、それゆえ、壁の負電荷帯電の作用により、負帯電粒子を静電的に閉じ込め且つ成長せしめるか、あるいは、放電空間を金属で囲んでおり、それゆえ、壁前面のシースの作用により、負帯電粒子を静電的に閉じ込め且つ成長せしめることを特徴とする上記〔21〕〜〔26〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔28〕混合ガスの酸素とアルゴンもしくは他の不活性ガスとの比を変えることによって、球形中空粒子の肉厚などの特性を調整することを特徴とする上記〔21〕〜〔27〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔29〕放電時間またはガス流速を調整し、球形粒子の直径などの特性を調節することを特徴とする上記〔21〕〜〔28〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔30〕(i)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を、ガス流を利用して下流へ
輸送し、下流領域でフィルタもしくは回収機器で粒子を回収すること、及び/又は、(ii)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を放電反応生成領域絶縁板の壁面に付着せしめ、該付着した粒子を回収することを特徴とする上記〔21〕〜〔29〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔31〕(a)第一金属電極の消耗による放電間隔の変化を調整すること、及び/又は、(b)第一電極に印加する変動電圧として、可変の繰り返し周波数で高周波インパルス電圧、もしくは、連続発振高周波電圧を使用することを特徴とする上記〔21〕〜〔30〕のいずれか一に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、以下の効果が得られる。本発明の方法や装置を使用することにより、気相反応のみの反応プロセスによって、中空金属酸化物単結晶粒子の生成が可能となる。また、放電プラズマやガス流を制御することによって均質な粒径分布や空洞径/粒径の比の制御が可能になる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明で得られる中空微粒子製造に使用できる実験装置の構成図を示す。
【図2】本発明で得られる中空微粒子製造に使用できる具体的実験装置の部分図を示す。
【図3】本発明の生成微粒子のSEM写真((a)(b)ガス流量比依存性、(c)正面図、(d)断面図)を示す。
【図4】本発明の生成微粒子のTEM写真を示す。
【図5】本発明で得られる微粒子のEDSによる元素分析の結果を示す。該球形微粒子をシリコン基板上に堆積後、カーボン皮膜処理してEDS観察した。MgO成分を確認。SiとCも検出される。
【図6】本発明で得られる微粒子の電子線回折像を示す。
【図7】本発明で得られる微粒子の電子線回折像を示す。
【図8】本発明の装置の一つの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の技術を利用すれば、サブマイクロオーダーやナノサイズを有している無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子を、簡単な方法で合成し且つ回収することができる。
本発明の中空粒子は、典型的な場合、平均直径が10nm〜1μmの中空球状の粒子であり、ある場合には、平均直径が10nm〜800nmの中空球状の粒子で、別の場合では、平均直径が10nm〜500nmの中空球状の粒子であり、さらに、平均直径が10nm〜300nmの中空球状の粒子
であってよい。好適な場合では、当該中空粒子は、平均直径が10nm〜800nmの中空球状の
粒子であってもよいし、平均直径が10nm〜700nmの中空球状の粒子であることもでき、さ
らには、該中空粒子は、平均直径が10nm〜600nmの中空球状の粒子であってもよいし、平
均直径が10nm〜400nmの中空球状の粒子であることもできる。よりサイズの小さいものが
望まれる場合は、当該中空粒子は、平均直径が10nm〜350nmの中空球状の粒子であっても
よいし、平均直径が10nm〜250nmの中空球状の粒子であることもでき、さらには、該中空
粒子は、平均直径が10nm〜200nmの中空球状の粒子であってもよいし、平均直径が10nm〜150nmの中空球状の粒子であり、また、平均直径が10nm〜100nmの中空球状の粒子であるこ
ともできる。
当該中空粒子の中心部側の中空部のサイズとしては、典型的な場合、外径の5〜90%で
あってよく、ある場合には、外径の10〜80%であってよく、別の場合では、外径の15〜70%であってよく、さらに、外径の20〜60%であってよい。好適な場合では、当該中空粒子の中空部のサイズとしては、典型的な場合、外径の25〜65%であってよく、ある場合には、外径の30〜60%であってよく、別の場合では、外径の35〜55%であってよく、さらに、外径の35〜50%であってよい。当該中空粒子の中空部のサイズは、上記サイズよりもちいさいものも許容される。
【0013】
本発明において「金属」とは、単独又は他の金属と一緒になり安定的な金属酸化物を形成することのできるものが挙げられ、好適には、金属酸化物単結晶を形成するものである。
当該金属としては、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素、チタン族元素、土酸金属元素、クロム族元素、マンガン族元素、鉄族元素、白金族元素、銅族元素、亜鉛族元素、アルミニウム族元素、炭素族元素、窒素族元素、ランタノイド、アクチノイド、ミッシュメタルなどから選択されたものであってよい。金属としては、一つの元素単独でも、あるいは、二種以上の任意の元素からなるものであってもよい。代表的な場合、該金属としては、Mg, Ca, Sr, Ba, Be, Li, Na, K, Rb, Cs, Al, Ga, In, Ge, Sn, Pb, Sb, Bi, Zn, Cd, Hg, Y, Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, Fe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt, Cu, Ag, Au, ランタノイド(La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy,
Ho, Er, Yb, Luなど)、アクチノイド(Ac, Th, Npなど)、ミッシュメタル(例えば、Ce, La, Ndなどの合金)などから選択されたものが挙げられる。好適な態様では、該金属は、Mg, Ti, Zn, Al, ランタノイド及びミッシュメタルからなる群から選択された金属である。より好ましい態様では、該金属は、マグネシウム、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選択された金属である。より具体的な態様では、該金属は、マグネシウムである。
【0014】
本発明の金属酸化物としては、例えば、MgO, TiO2, ZnO, Al2O3, Fe2O3, Fe3O4, SnO2,
NiO, CoO, Co3O4, Y2O3, ZrO2, In2O3, BeO, ThO2, MnO, Mn3O4, MnO2, CrO2, Cr2O3, PbO, FeO, Nd2O3, La2O3, NiFe2O4, Y3Al5O12, La2BeO5, Cu2O, LaCrO3, Er2O3, MgAl2O4,
MgCr2O4, MgFeO4, MgWO4, ZnCr2O4, LiNbO3, BaTiO3, SrTiO3, Ta2O5, V2O5, Sb2O3, ReO2, RuO2, Rh2O3, Ir2O3, CuO, CeO2, HfO2, BaO などが包含されてよい。代表的な金属
酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどが挙げられる。より具体的な態様では、該金属酸化物は、酸化マグネシウムである。
本発明の金属酸化物中空粒子は、ほぼ球形あるいは真球に近い球形の形状のものであるが、場合によっては、幾分歪みを有しており、楕円に近い形状のものも包含されてもよい。そして、本発明の金属酸化物中空粒子は、金属酸化物単結晶からなることを大きな特徴としている。当該中空粒子の解析や単結晶の確認は、当該分野で知られた手法で行うことができるが、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)や走
査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)、さらには、走査型透過電子顕微
鏡(Scanning Transmission Electron Microscope: STEM)、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope: FE-SEM)などの電子顕微鏡観察、高速反射電子線回折装置(RHEED)などの電子線回折装置、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe MicroAnalyzer: EPMA)、X線回折装置(XRD)、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)などのX線分析装置、フーリエ変換赤外分光装置(FT-IR)などの赤外分析装置などを使用して行うことができる。例えば、TEMでは、中空の球状ナノ粒子が観察でき、その形状並びにサイズを確認することができる。また、電子線回折像からは、スポット像になることで単結晶であること、そしてリングが金属酸化物結晶の回折半径に一致することも観察できる。球形微粒子(ナノ粒子)のEDSで、金属
酸化物の成分を確認できる。
【0015】
当該球形酸化物単結晶中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空粒子は、真空容器中に、金属酸化物源である金属の第一電極と放電空間を囲む絶縁板、そして、該絶縁板の外面(放電空間に対して外側)に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置を使用し、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることにより製造できる。
上記第一電極は、スパッタリングのターゲット材として機能すると考えられるものでよく、上記した金属に該当する元素を含有しているものをしようできる。典型的な場合、該
第一電極は、Mg, Ca, Sr, Ba, Be, Li, Na, K, Rb, Cs, Al, Ga, In, Ge, Sn, Pb, Sb, Bi, Zn, Cd, Hg, Y, Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, Fe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt, Cu, Ag, Au, ランタノイド、アクチノイド、ミッシュメタルなどからなる群から選択された金属を使用できる。こうした場合、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子は、第一電極を構成する金属の酸化物の単結晶球形中空粒子である。より好ましくは、該第一電極は、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウムなどからなる群から選択された金属である。この場合には、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子は、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの金属酸化物の単結晶球形中空粒子である。具体的な場合、金属マグネシウム第一電極を使用し、プラズマ中で球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子を生成せしめる。
【0016】
該真空容器中への気体導入部は、通常、第一電極が配置されている上流側に設けられている。該気体導入部からは、酸素を0.1%以上含む気体を流す。導入気体中の酸素の濃度は、適宜、適切な濃度とすることが可能であり、実験により適切な濃度を決定することができ、特には限定されないが、例えば、0.1%以上であり、ある場合には、0.5〜60%あ
るいは0.5〜40%、別の場合では、1.0〜40%あるいは1.0〜30%、典型的な場合では、2.5〜25%あるいは2.5〜20%を採用できる。より好ましくは、該酸素の濃度は、3.0〜15%あるいは3.5〜10%、さらには4.0〜15%あるいは4.5〜10%であってもよい。ある一つの具
体的な使用気体としては、O2/Ar=1/2であるものが挙げられる。
該酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴン(Ar)もしくは他の不活性ガスを含む混合
気体が挙げられる。該不活性ガスとしては、第一電極の金属に対応して不活性なものであれば使用でき、ヘリウムなどの希ガスが包含されてよく、当該分野で知られたものを選択して使用可能である。該不活性ガスは、混合ガスであってもよい。
【0017】
上記スパッタリング技術を利用した方法では、第一電極のスパッタリングと、飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を、同一放電空間で行い、球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることになる。本発明の技術では、球形金属酸化物中空粒子を、プラズマ中で負に帯電せしめて、長時間プラズマ中に保持せしめ、且つ、成長せしめることができる。本発明で使用するスパッタリング装置においては、放電空間が絶縁板で囲んであって、それゆえ、壁の負電荷帯電の作用により、負帯電粒子を静電的に閉じ込め、成長せしめるか、あるいは、放電空間を金属で囲んであって、それゆえ、壁前面のシースの作用により、負帯電粒子を静電的に閉じ込め、成長せしめることが可能とされている。
本発明の技術では、混合ガスの酸素とアルゴンもしくは他の不活性ガスとの比を変えることによって、球形中空粒子の肉厚などの特性を調整することが可能である。また、球形粒子の直径などの特性を調節するのは、放電時間、及び/又は、ガス流速を調整することによっても、達成できる。
【0018】
本発明の技術では、プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を、ガス流を利用して下流へ輸送し、下流領域でフィルタもしくは回収機器で粒子を回収することができる。ガス流を、第一電極が配置されている上流側で当該真空容器中へ導入して、これを達成できるという特徴をもっている。さらに、プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を放電反応生成領域絶縁板の壁面に付着せしめ、該付着した粒子を回収することも可能である。また、第一金属電極の消耗による放電間隔の変化を調整することもできる。そして、第一電極に印加する変動電圧として、可変の繰り返し周波数で高周波インパルス電圧を使用したり、あるいは、連続発振高周波電圧を使用することができる。
例えば、該インパルス電圧としては、0.5kVで、波形がT=10〜1000μs、インパルス周期τ=10μs (100kHz)などの繰り返し周波数(1/T)が可変んものを使用できる。該インパルス電圧としては、3.0kVとか、あるいは、5.0kVというように、所望とする目的に合わせて選択できる。本発明のスパッタリング技術では、当該分野で知られている圧力条件を採用でき、特にそれに限定されるものではないが、例えば、全圧力10Torr (=1333.224Pa)あるい
はそれ以下など、例えば、1〜50Torr (=133.322〜6666.1Pa)程度の中圧力範囲などを採用できる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら、本発明を具体的に説明するが、これは、単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。本実施態様で示すものは、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
図1は本発明の実験装置構成図で、球形金属酸化物中空粒子製造に適したスパッタリング装置である。本装置は、放電プラズマ中で酸素と金属原子を化学反応させることにより、金属酸化物を生成するものである。その1例として、酸化マグネシウムMgOの中空粒子
を製造する装置につき、図1を使用して説明する。
図1中、(1)は、第一電極のマグネシウム金属電極で、(2)は、電力導入端子で、(3)は
、接地電極、すなわち、第二電極で、(4)は、高周波放電電源で、(5)は、ガス流量調節器(5a:アルゴン用、5b:酸素用)で、(6)は、ガスボンベ(6a:アルゴン、6b:酸素)で、(7)は、微粒子回収部およびフィルタ、もしくは他の回収機器で、(8)は、真空計で、(9)は、ロータリーポンプ(真空ポンプ)で、(10)は、絶縁体もしくは金属真空容器で、通常は、反応室側を絶縁体が囲うようにしてあるもので、(11)は、金属真空容器である。
酸素とアルゴンとの混合気体は、第一電極(1)の上流側からフィルタなどの回収機器(7)の下流側に流される。
【0020】
反応室は、絶縁物もしくは金属の真空容器(10)内であり、ロータリーポンプ(9)で1×10-3Torr (=0.1333224Pa)以下に排気される。ここに、(6)のガスボンベから(5)の流量調整
器によりによりアルゴンと酸素を所定の流量比で、所定の圧力になるよう流入させる。マグネシウム電極(1)と接地電極(3)の間に高周波電力(4)を印加すると反応室内で放電が起
こり、Mg電極(1)からプラズマ中のイオンによるスパッタリングでMg原子が反応室内に飛
散し、そして、反応室内で形成された球状中空MgO単結晶ナノ粒子はガス流に乗って、下
流のフィルタで回収される。フィルタは交換可能である。
本発明の球状中空ナノ粒子形成メイカニズムの一つとしては、次のようなものが考えられる。マグネシウム電極(1)と接地電極(3)の間に高周波電力(4)を印加すると反応室内で
放電が起こり、Mg電極(1)からプラズマ中のイオンによるスパッタリングでMg原子が反応
室内に飛散し、プラズマ中の酸素と反応して初期MgO核が形成される。MgO核は負に帯電し、長時間反応室内に閉じ込められ、互いに凝集、成長を繰り返して成長する。同時に、MgO微粒子にはプラズマ中のイオンが入射して過熱される。ガス圧力、ガス比率、放電電力
など所定の条件の下で、表面から冷え始め、酸素を含む空洞を内部に保持せしめながら結晶化する。反応室内に浮上しながら成長、結晶化するために、3次元等方的な球形となるというものである。
別の球状中空ナノ粒子形成メイカニズムとしては、MgOはイオン結晶なので、表面過剰
酸素マイナスイオンによるMg正イオンの表面層への引き抜きによって、内部に酸素含有気体の空洞を残して成長するといったモデルも考えられる。
【0021】
図2は、本発明の具体的実験装置である。図2では、要部を部分図として示してある。図2の左側に正面断面図、そして右側に側面断面図を示す。図2中、(1)は、第一電極の
マグネシウム金属電極、および高周波印加電極で、(2)は、接地電極、すなわち、第二電
極で、(3)は、混合ガス(アルゴン+酸素)で、(4)は、ガラス基板で、(5)は、セラミッ
クスで真空容器を構成している。
酸素とArの混合ガス(3)を導入して、Mg電極(1)と接地電極(2)の間で高周波放電させる
。ガラス基板(4)に付着したMgO粒子を回収する。(5)は構造を支える筐体である。中空MgO単結晶粒子を得ることが可能であることが示されている。
図3(a)(b)は、酸素とAyの流量比O2/Arを変化させたときの本発明で得られた粒子の生成の変化を示したもの(SEM写真)で、酸素の比率を増加させると生成量が単調に増加して
いる結果が観察されている。図3の(a)(b)では、印加電圧: 3.0kV、10Torr (=1333.224Pa)、放電時間: 3minで、(a)では、O2/Ar=1/20、そして(b)では、O2/Ar=10/10での結果である。
図3(c)(d)はガラス基板上の本発明で得られた生成粒子の正面図と断面図を示す(SEM写真)。これらの粒子は球形であり、基板表面に付着していることが示される。球状微粒子
は、プラズマ空間で生成後、基板に付着したと考えられる。図3の(c)(d)では、O2/Ar=1/20、10Torr (=1333.224Pa)、放電時間: 3minで、(a)では、印加電圧: 3.0kV、そして(b)
では、印加電圧: 5.0kVでの結果である。
【0022】
図4は、本発明で得られた粒子の透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す。中空の球状ナノ粒子が多数観察される。粒子の直径は300 nm以内に分布している。ほとんどの球形粒子の内部に球形の空洞があることが分かる。
図5は、本発明で得られた粒子の構成元素分析(EDS)を示す。基板をシリコン基板と
し、粒子を堆積後、電子顕微鏡観察のためにカーボンコーティングしたものを分析したところ、SiとC以外に、MgとOのみが観測され、球形粒子がMgとOで構成されていることが分
かる。図6と7は、粒子の電子回折像を示す。図6より回折像がスポット状になることと、図7よりMgO結晶格子定数に相当する回折リング半径上にスポットが存在することから
、球形粒子はMgO単結晶であることが分かった。
【0023】
図8は、本発明の装置構成の一例を示す。Mg電極は板状であり、中空Mg単結晶粒子を大量に生産するために有効である。
図8中、(1)は、第一電極のマグネシウム金属電極で、(2)は、電力導入端子で、(3)は
、接地電極、すなわち、第二電極で、(4)は、高周波放電電源で、(5)は、ガス流量調節器(5a:アルゴン用、5b:酸素用)で、(6)は、ガスボンベ(6a:アルゴン、6b:酸素)で、(7)は、微粒子回収部およびフィルタ、もしくは他の回収機器で、(8)は、真空計で、(9)は、ロータリーポンプ(真空ポンプ)で、(10)は、絶縁体真空容器である。
本発明では酸素・アルゴンもしくは他の不活性ガスの放電プラズマを用いて、金属電極のスパッタリングと酸化反応を同一空間で行うことが可能である。この方法によって球形中空金属酸化物単結晶ナノ粒子の生成が達成される。
【0024】
本発明は、平均直径が10nm〜1μmであり、中空球状であり、NaCl型の単結晶である球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子を提供している。より好適には、本発明は、真空容器中に金属マグネシウム第一電極と絶縁板を備え、絶縁板の外面に第二電極を備え、真空容器中への気体導入部を備え、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入し、プラズマ中で生成されることを特徴とする球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子を提供する。
また、本発明は、真空容器中に金属マグネシウム第一電極と絶縁板を備え、絶縁板の外面に第二電極を備え、真空容器中への気体導入部を備え、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入し、プラズマ中で生成することを特徴とする球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子製造装置を提供する。
好ましくは、該単結晶中空粒子製造装置は、第一電極を酸化マグネシウム以外の金属、たとえばチタン、亜鉛、アルミニウムなどの金属に置き換えて、上記したようにして酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの球形金属酸化物中空粒子を生成する製造装置である。かくして、好ましくは、該単結晶中空粒子は、第一電極を酸化マグネシウム以外の金属、たとえばチタン、亜鉛、アルミニウムなどの金属に置き換えて、上記したようにし
て生成される酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの球形金属酸化物中空粒子である。
【0025】
より好適な場合、上記製造装置は、酸素を0.1%以上含む気体としてアルゴン、もしく
は他の不活性ガスを含む混合気体を使用するものであり、上記したようにして、第一電極のスパッタリングと飛散第一電極金属原子と酸素との間の酸化反応を同一放電空間で行うことによりにより球形金属酸化物中空粒子を生成せしめるものである。かくして、該中空粒子は、好適に、酸素を0.1%以上含む気体としてアルゴン、もしくは他の不活性ガスを
含む混合気体を使用して、上記のようにして第一電極のスパッタリングと飛散第一電極金属原子と酸素との間の酸化反応を同一放電空間で行うことによりにより生成されるもので、それは球形金属酸化物中空粒子である。
【0026】
典型的には、上記製造装置は、球形金属酸化物中空粒子が上記のプラズマ中で負に帯電して、長時間プラズマ中に保持され、かつ成長できるものである。上記製造装置は、上記において、放電空間は絶縁板で囲まれているため、壁の負電荷帯電の作用により、負帯電粒子が静電的に閉じ込められ、かつ成長できることを特徴とする装置であってよい。もしくは、上記製造装置は、上記において、放電空間は金属で囲まれているため、壁前面のシースの作用により、負帯電粒子が静電的に閉じ込められ、かつ成長できることを特徴とする装置であってよい。上記製造装置は、上記において、混合ガスの酸素とアルゴンもしくは他の不活性ガスとの比を変えることによって、球形中空粒子の肉厚などの特性を調整できる機能を持つ装置であることが好ましい。具体的には、O2/Arのガス比を制御すれば、
プラズマ中のO/Mg原子数比を制御できることとなり、結果、球殻構造の肉厚を制御できる。例えば、O2/Arのガス比を小さくすると、球殻構造の肉厚を厚くすることにつながり、
一方、O2/Arのガス比を大きくすると、球殻構造の肉厚を薄くすることなる。上記製造装
置は、上記において、放電時間またはガス流速により、球形粒子の直径などの特性を調節できる機能を持つ装置であることが好適である。具体的には、放電パワーを制御すれば、プラズマ密度を調節できることとなり、微粒子の加熱温度やプラズマ中のO/Mg原子数比を制御できることとなり、結果、微粒子の直径を制御できる。例えば、放電パワーを小さい値とすると、微粒子の直径を小さくすることとなり、一方、放電パワーを大きくすると、微粒子の直径が大きくなる。さらに、ガスの圧力、インパルス放電の繰り返し周波数などが制御可能であり、それらを調整することにより、微粒子径や空洞の径などを制御できる。当該機能や制御は、コンピューターなどの情報処理装置に接続された弁(バルブ)やセンサー、さらにはポンプ、配管系などを備えることにより達成されていてよい。該コンピューターは、入出装置、記憶装置並びに処理プログラムなどを備えていてよいことは当然である。また、好適には、上記製造装置は、上記において、プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を、ガス流を利用して下流へ輸送し、下流領域で粒子を回収するフィルタもしくは回収機器を合わせ持つことを特徴とする球形金属酸化物中空粒子装置である。
【0027】
一つの具体的な態様では、上記製造装置は、上記において、プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子として、放電反応生成領域絶縁板の壁面に付着した粒子を回収できる機構を持つことを特徴とする球形金属酸化物中空粒子装置であるものである。上記製造装置は、上記において、第一金属電極の消耗による放電間隔の変化を調整できる機能を持つことを特徴とする球形金属酸化物中空粒子装置であるものである。当該機能及び調整はは、コンピューターなどの情報処理装置に接続された制御装置や回収装置などを備えることにより達成されていてよい。該コンピューターは、入出装置、記憶装置並びに処理プログラムなどを備えていてよいことは当然である。また、上記製造装置は、上記において、第一電極に印加する変動電圧として、可変の繰り返し周波数で高周波インパルス電圧を発生できる電源、もしくは連続発振高周波電圧を発生する電源をもつことを特徴とする装置であることが好適である。
本発明で簡単な手法で製造される酸化物中空粒子(例えば、金属酸化物中空粒子、すなわちサブマイクロオーダーやナノオーダーサイズの無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子)は、優れた耐スパッタ性、電気絶縁性、熱伝導性、光学特性をもっており、粒子内部の空孔により大きな光拡散効果、隠ぺい性、熱遮蔽効果を必要とする分野への工学的応用に有用である。
本発明で製造される微粒子は、金属酸化物単結晶で、しかも中空であり、かつ球形で、ナノ微粒子であり、その優れた、光散乱性、2次電子放出特性、光触媒性、蛍光特性を利
用して、ナノデバイス、医薬剤などへの幅広い応用が可能である。MgOは下剤などの薬理
作用もある。本発明で製造される微粒子は、様々な用途へ利用可能であり、プラズマを用いるドライプロセスであり、1分以内の短時間に多量に製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、簡単に、サブマイクロオーダーやナノオーダーサイズの無機酸化物中空粒子、特には、球形金属酸化物単結晶中空サブマイクロ粒子や球形金属酸化物単結晶中空ナノ粒子を製造することが可能であり、それらが発揮する優れた耐スパッタ性、電気絶縁性、熱伝導性、光学特性を利用することが、簡易にできるようになり、もって、粒子内部の空孔により大きな光拡散効果、隠ぺい性、熱遮蔽効果を利用した、様々な分野への工学的応用が可能となる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器中に、金属酸化物源である金属の第一電極と放電空間を囲む絶縁板、そして、該絶縁板の外面に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置を使用し、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする球形金属酸化物単結晶中空粒子の製造方法。
【請求項2】
酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴンもしくは他の不活性ガスを含む混合気体を使用し、第一電極のスパッタリング及び飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を同一放電空間で行い、球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
球形金属酸化物中空粒子を、プラズマ中で負に帯電せしめて、長時間プラズマ中に保持せしめ、且つ、成長せしめることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
放電空間を絶縁板で囲んでおり、それゆえ、壁の負電荷帯電の作用により、負帯電粒子を静電的に閉じ込め且つ成長せしめるか、あるいは、放電空間を金属で囲んでおり、それゆえ、壁前面のシースの作用により、負帯電粒子を静電的に閉じ込め且つ成長せしめることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項5】
(1)混合ガスの酸素とアルゴンもしくは他の不活性ガスとの比を変えることによって、球形中空粒子の肉厚などの特性を調整すること、及び/又は、(2)放電時間またはガス流速を調整し、球形粒子の直径などの特性を調節することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項6】
(i)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を、ガス流を利用して下流へ輸送し、下流領域でフィルタもしくは回収機器で粒子を回収すること、及び/又は、(ii)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を放電反応生成領域絶縁板の壁面に付着せしめ、該付着した粒子を回収することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項7】
(a)第一金属電極の消耗による放電間隔の変化を調整すること、及び/又は、(b)第一電極に印加する変動電圧として、可変の繰り返し周波数で高周波インパルス電圧、もしくは、連続発振高周波電圧を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項8】
生成球形金属酸化物単結晶中空粒子は、平均直径が10nm〜1μmの中空球状の粒子であり、単結晶金属酸化物から構成された粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項9】
金属酸化物が、Mg, Ca, Sr, Ba, Be, Li, Na, K, Rb, Cs, Al, Ga, In, Ge, Sn, Pb, Sb, Bi, Zn, Cd, Hg, Y, Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo, W, Mn, Re, Fe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt, Cu, Ag, Au, ランタノイド、アクチノイド及びミッシュメタルからなる群から選択された金属の酸化物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項10】
金属酸化物が、Mg, Ti, Zn, Al, ランタノイド及びミッシュメタルからなる群から選択された金属の酸化物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項11】
金属酸化物が、Mg, Ti及びZnからなる群から選択された金属の酸化物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項12】
生成球形金属酸化物単結晶中空粒子は、平均直径が10nm〜1μmであり、中空球状であり、NaCl型の単結晶である球形マグネシウム酸化物単結晶中空粒子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の製造方法。
【請求項13】
真空容器中に、金属酸化物源である金属の第一電極と放電空間を囲む絶縁板、そして、該絶縁板の外面に第二電極を備え、且つ、該真空容器中への気体導入部を備えているスパッタリング装置であって、前記第一電極と前記第二電極間に変動電圧を与え、前記気体導入部より酸素を0.1%以上含む気体を導入して、プラズマ中で球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることができることを特徴とする球形金属酸化物単結晶中空粒子製造装置。
【請求項14】
第一電極が、マグネシウム、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選択された金属であり、プラズマ中で生成される球形金属酸化物単結晶中空粒子が、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選択された金属酸化物の単結晶球形中空粒子であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
酸素を0.1%以上含む気体として、アルゴンもしくは他の不活性ガスを含む混合気体を使用し、第一電極のスパッタリング及び飛散第一電極金属原子と酸素との酸化反応を同一放電空間で行うことにより球形金属酸化物単結晶中空粒子を生成せしめることを特徴とする請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
球形金属酸化物中空粒子が、プラズマ中で負に帯電して、長時間プラズマ中に保持され、且つ、成長できることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一に記載の装置。
【請求項17】
放電空間が絶縁板で囲まれ、それゆえ、壁の負電荷帯電の作用により、負帯電粒子が静電的に閉じ込められ、かつ成長できること、もしくは、放電空間が金属で囲まれ、それゆえ、壁前面のシースの作用により、負帯電粒子が静電的に閉じ込められ、且つ、成長できることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一に記載の装置。
【請求項18】
(1)混合ガスの酸素とアルゴンもしくは他の不活性ガスとの比を変えることによって、球形中空粒子の肉厚などの特性を調整できる機能を持つこと、及び/又は、(2)放電時間またはガス流速により、球形粒子の直径などの特性を調節できる機能を持つことを特徴とする請求項13〜17のいずれか一に記載の装置。
【請求項19】
(i)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を、ガス流を利用して下流へ輸送し、下流領域で粒子を回収するフィルタもしくは回収機器を併せ持つこと、及び/又は、(ii)プラズマ中で生成された球形金属酸化物中空粒子を放電反応生成領域絶縁板の壁面に付着せしめ、該付着した粒子を回収できる機構を持つことを特徴とする請求項13〜18のいずれか一に記載の装置。
【請求項20】
(a)第一金属電極の消耗による放電間隔の変化を調整できる機能を持つこと、及び/又は、(b)第一電極に印加する変動電圧として、可変の繰り返し周波数で高周波インパルス電圧を発生できる電源、もしくは、連続発振高周波電圧を発生する電源を持つことを特徴とする請求項13〜19のいずれか一に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75828(P2013−75828A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4356(P2013−4356)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2008−293788(P2008−293788)の分割
【原出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】