説明

酸化的ストレス関連疾患の治療または予防方法

酸化的ストレス関連疾患の治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)(式中、R〜RおよびX〜Xは、本明細書に記載の通りである)の化合物の有効量を投与することを包含する方法を開示する。酸化的ストレス関連疾患の例は、神経障害、心血管障害、および創傷である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本特許出願は、米国仮特許出願第60/839,800号(2006年8月23日出願)の利益を主張し、これは参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
世界中で罹患および死亡の第2の主な原因である虚血性脳卒中の危険性は、食事や生活様式の変更、および降圧剤の使用により低減され得る(非特許文献1)。しかしながら、脳卒中の発生率は依然として高く、脳細胞への損傷を減少して脳卒中を患った者の機能転帰を改善することができる治療が必要とされている。
【0003】
脳卒中に起因する神経細胞死に関与する機序としては、代謝障害、酸化的ストレス、グルタミン酸受容体の過活動および細胞内カルシウムの過負荷が挙げられると考えられる(非特許文献2)。スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルおよび一酸化窒素などのいくつかの異なった活性酸素種(reactive oxygen species)(ROS)が、脳卒中後の神経細胞中に発生する(非特許文献3および4)。ROSは、細胞膜、タンパク質および核酸への損傷を増幅するような方法で、それ自身で相互作用し、かつ、触媒金属と共に作用して、結果として細胞損傷および細胞死をもたらす。例えば、過酸化水素は、Fe2+と相互作用してヒドロキシルラジカルを発生させ、一方、スーパーオキシドアニオンラジカルは、一酸化窒素と相互作用して過酸化亜硝酸を発生させる。ヒドロキシルラジカルおよび過酸化亜硝酸は、虚血性脳障害に関与する膜脂質過酸化の自己触媒的過程の非常に強力な誘導因子である(非特許文献5〜8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ingall,T.,J.Insur.Med.,36,143−152(2004)
【非特許文献2】Zheng et al.,Curr.Mol.Med.,3,361−372(2003)
【非特許文献3】Lipton,P.,Physiol.Rev.,79,1431−568(1999)
【非特許文献4】Chan,P.H.,J.Cereb.Blood Flow Metab.,21,2−14(2001)
【非特許文献5】Eliasson et al.,J.Neurosci.,19,5910−5918(1999)
【非特許文献6】Hall,Neurosurg.Clin.N.Am.,8,195−206(1997)
【非特許文献7】Keynes et al.,Curr.Mol.Med.4,179−191(2004)
【非特許文献8】Selim et al.,Ageing Res.Rev.,3,345−353(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ROSに起因する酸化ストレスの治療方法が依然として必要とされている。本発明は、このような方法を提供する。このおよび他の目的および利点、ならびにさらなる発明の特徴は、本明細書で提供される本発明の記載から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨
本発明は、神経障害、心血管障害、または創傷などの酸化的ストレス関連疾患の治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物の有効量を投与することを包含する方法を提供する。式(I)の化合物は、それらの水溶性が尿酸と比較して改善されているので、酸化的ストレス関連疾患の治療において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1Aは、尿酸の構造および式(I)の例示的な化合物を図示する。図1Bは、本発明の実施態様において、シナプトソームアッセイを用いて定量化した尿酸および式(I)の化合物の抗酸化活性を示す。活性酸素種(ROS)のレベルを測定し、値は、Fe2+で処理した対照シナプトソーム中に存在するROSの百分率として表される(平均値およびSEM,n=4例)。対照値と比較して*p<0.05,**p<0.01。
【図2】図2は、本発明の実施態様において、式(I)の化合物が、虚血様症状に対し培養海馬神経を保護することを示す。神経細胞生存を定量し、値は、平均およびSEMである(n=8〜10培地)。ビークル/OGD培養液と比較して*p<0.05。
【図3】図3は、本発明の実施態様において、尿酸および式(I)の化合物が酸化的および興奮毒性損傷に対して培養神経細胞を保護することを示す。培養PC12細胞は、尿酸(図3A)またはmUA3(図3B)で前処理される。培養海馬神経は、尿酸(図3C)またはmUA3(図3D)で前処理される。細胞生存は、定量され、値は、4〜8培養液の平均およびSEMである。0の尿酸またはmUA3濃度と比較して*p<0.05。
【図4】図4は、本発明の実施態様において、式(I)の化合物が局所虚血性脳卒中のマウスモデルでの機能転帰(例、歩行)を改善し、かつ脳損傷を減弱することを示す。図4Aにおいて、神経学的機能は、脳卒中後24、48および72時間で採点される。図4Bにおいて、梗塞量は、脳卒中後72時間で定量される。値は、平均およびSEM(n=8〜12匹のマウス)である。偽病と比較して*p<0.001。ビークルと比較して+p<0.01。
【図5】図5は、本発明の実施態様において、式(I)の化合物が局所虚血性脳卒中のマウスモデルでの機能転帰を改善し、かつ脳損傷を減弱することを示す。図5Aにおいて、神経学的機能は、脳卒中後24、48および72時間で採点される。図5Bにおいて、梗塞量は、脳卒中後72時間で定量される。値は、平均およびSEMである(n=8〜12匹のマウス)。偽病と比較して*p<0.001。ビークルと比較して+p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
活性酸素種(ROS)は、脳卒中、虚血再潅流、関節炎、呼吸困難、心血管疾患(例、心筋梗塞)、発癌(例、皮膚T細胞リンパ腫、急性前骨髄球性白血病、皮膚の扁平上皮細胞癌、および基底細胞癌)、およびパーキンソン病、認知症、ハンチントン病、ホジキン病等の神経系疾患、および創傷の回復遅延のような多くの疾患または状態に関連してきた。本発明は、ROSから細胞を保護し、かつ機能転帰を改善する化合物を提供する。
【0009】
即ち、本発明は、酸化的ストレス関連疾患の治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物の有効量、またはその組成物を投与することを包含する方法を提供し、ここで、式(I)の化合物は:
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれOまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない。]である。
【0012】
酸化的ストレス関連疾患としては、例えば、神経障害、心血管障害、および創傷が挙げられる。心血管障害は、例えば、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、高脂質血症、糖尿病、高血圧症、および虚血性心疾患であり得る。
【0013】
酸化的ストレス関連疾患の治療または予防の範囲内において、本発明は、神経障害の治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物、またはその組成物の有効量を投与することを包含する方法を提供し、ここで、式(I)の化合物は:
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれ、OまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない。]である。神経障害は、例えば、虚血性脳障害、外傷、てんかん、関節炎、呼吸困難、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS、別名、ルー・ゲーリック病)、網膜変性(網膜色素変性症、黄斑変性症、およびアッシャー症候群等)、タウオパシー(アルツハイマー病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、および前頭側頭葉変性症(ピック病)等)、ならびに認知症(アルツハイマー病、多発性梗塞性認知症(MID)、ダウン症候群に関連する認知症、および後天性免疫不全症候群(AIDS)認知症等)であり得る。
【0016】
式(I)の化合物は、哺乳動物にイン・ビボで投与した場合、酸化的および虚血様損傷に対するシナプトソームおよび培養ニューロンの保護に効果的であることが示される濃度で脳に蓄積する。従って、式(I)の化合物は、哺乳動物における虚血性脳障害の治療において特に有用である。本発明の虚血性脳障害は、例えば、(i)例えば、心不全、出産合併症(胎児脳)、および大量出血の場合の脳への血液供給不足、(ii)例えば、大気の酸素供給不足、CO中毒、窒息、または肺不全/閉塞に起因する血液酸素化不足、並びに(iii)例えば、脳卒中または頭部外傷に起因する脳またはその部位の出血に起因する脳への酸素供給不足に起因し得る。
【0017】
本発明は、創傷治癒の増進をそれを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物の有効量、またはその組成物を投与することを包含する方法をさらに提供し、ここで、式(I)の化合物は:
【0018】
【化3】

【0019】
[式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれOまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない。]である。
【0020】
創傷治癒の増進としては、式(I)の化合物の投与の際に、酸化的ストレスを対照と比較して減少することによる創傷治癒過程の促進方法が挙げられるが、これに限定されない。創傷治癒の他の機序もまた意図される。本方法の実施態様において、式(I)の化合物、またはその組成物は、好ましくは創傷に局所的に投与される。創傷としては、切り傷、擦り傷、染み、潰瘍、および火傷が挙げられる。
【0021】
本発明の実施態様のいずれかにおいて、R、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ水素またはC1−6アルキルである(但し、X、X、およびXがすべて酸素である場合、R、R、R、およびRの少なくとも1つは、C1−6アルキルである)。好ましくは、R、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素またはメチルであるが、但し、X、X、およびXがすべて酸素である場合、R、R、R、およびRの少なくとも1つは、メチルである。本発明の他の実施態様において、1つ、2つ、または3つ全てのX、X、およびXは、硫黄である。本発明の方法のいずれかにおいて、好ましくは、R、R、R、およびRは、全て水素であるかまたは全てメチルである。式(I)の化合物の特定の実施態様は、
【0022】
【化4】

【0023】
である。
【0024】
式(I)の種々の基において示す用語「置換された」については、置換され得る基のいずれか一つ(例、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル)が、可能な限り、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシから成る群より独立して選ばれる1ないし10個の置換基(例、1ないし8個、1ないし6個、1ないし4個、1ないし3個の置換基)を一般的に有しうる。
【0025】
用語「アルキル」は、好ましくは1ないし3個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を示す。そのような置換基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル等が挙げられる。
【0026】
本明細書中で用いる用語「アルケニル」は、好ましくは2ないし4個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖のアルケニル置換基を意味する。そのような置換基の例としては、プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、sec−ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル等が挙げられれる。
【0027】
本明細書中で用いる用語「シクロアルキル」は、3ないし10個の炭素原子、好ましくは3ないし8個の炭素原子、好ましくは5ないし8個の炭素原子、より好ましくは5ないし6個の炭素原子を有する環状アルキル置換基を意味する。そのような置換基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられれる。
【0028】
用語「アリール」は、当該分野で一般的に理解されているように、非置換または置換の芳香族炭素環置換基を示し、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル等のような単環および多環芳香族が挙げられる。アリール置換基は、6ないし30個の炭素原子、好ましくは6ないし18個の炭素原子、より好ましくは6ないし14個の炭素原子、およびさらに好ましくは6ないし10個の炭素原子を一般的に含む。用語アリールは、ヒュッケル則によれば、平面的でかつ4n+2のπ電子を包含する環状置換基に当てはまると理解される。
【0029】
用語「アリールアルキル」は、基−R−Ar(式中、Rは、1ないし6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつArは、本明細書に記載のアリール基である)を示す。アリールアルキルの例は、ベンジルである。用語「カルボキシアルキル」は、基−RCOOH(式中、Rは、1ないし6個の炭素原子を有するアルキレン基である)を示す。用語「ヒドロキシアルキル」は、基−ROH(式中、Rは、1ないし6個の炭素原子を有するアルキレン基である)を示す。
【0030】
用語「アルコキシ」は、エーテル酸素に結合した直鎖または分岐鎖のアルキル基を包含する。アルキル基は、本明細書中に記載したものと同様である。そのような置換基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。
【0031】
本明細書で用いる用語「ハロ」は、例えば、フッ素、臭素、塩素、およびヨウ素のような、VIIA族から選ばれる置換基を意味する。好ましくは、ハロは、臭素または塩素である。
【0032】
式(I)の化合物は、任意の適切な方法によって、例えば、尿酸を出発物質として利用することによって、調製することができる。例えば、式(I)の化合物上の1つ以上のカルボニル基は、ローソン試薬の使用によってまたは硫化リンとの加熱によって、チオカルボニルへ変換され得る。式(I)の化合物上の置換基R〜Rは、当該分野で公知の任意の方法によって変更され得る(例、求核置換による)。例えば、式(I)の化合物上の1つ以上の窒素は、アルキルハライドおよび塩基の存在下でアルキル化され得る。適切な反応および反応パラメーターは、当業者に周知である。例えば、Beaman et al.,J.Org.Chem.,27,986−990(1962)およびMaruyama et al.,Nucleosides,Nucleotides,Nucleic Acids,19,1193−1203(2000)を参照のこと(これらは、本明細書中に参考として援用される)。
【0033】
本発明の実施態様に用いられている化合物の利点は、それらが増大した水溶性を有することである。式(I)の化合物の水溶性は、加熱されていない水の中で測定して、一般的に、少なくとも0.2mg/ml(例、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも0.8mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも1.5mg/ml)である。従って、水溶性は、0.2ないし5mg/ml、好ましくは1ないし5mg/ml、代表的には2〜3mg/mlである。水溶性は、例えば、細胞膜に浸透する能力およびバイオアベイラビリティを増加させる。水溶性は、温水中で増大され得る。従って、加熱された水の中での式(I)の化合物の水溶性は、一般的に、少なくとも1mg/ml(例、少なくとも1.5mg/ml、少なくとも1.8mg/ml、少なくとも2mg/ml、少なくとも2.5mg/ml)である。
【0034】
哺乳動物は、神経障害または創傷などの酸化的ストレス関連疾患を有するかまたはそのリスクを有する任意の適切な対象であり得る(例、人類、イヌ科動物、ネコ科動物または類人猿)。好ましくは、式(I)の化合物は、酸化的ストレス関連疾患が哺乳動物において有害な影響を有する前に、または酸化的ストレス関連疾患(例、虚血性脳障害)の有害な影響の判定直後に投与され、必要に応じて継続的に投与される。
【0035】
「有効量」は、個体において有意義な利点(例、酸化的ストレス関連疾患の阻害の少なくとも1つの態様の促進、あるいは、特定の酸化的ストレス関連疾患と関係のある他の関連する病状の、治療、治癒、予防、発病の遅延、または改善)を示すために十分な量を意味する。有効量は、個体において所望される生物学的効果、治療される症状、および/または式(I)の化合物の特定の性質、ならびに個体によって変化してもよい。この点において、式(I)の化合物の任意の適切な用量が、治療される酸化的ストレス関連疾患のタイプに従って、哺乳動物に投与され得る。創傷治癒の増進に関しては、創傷組織(例、皮膚)を治療するために必要となる式(I)の化合物の量は、それ自体定まったものではなく、組成物において用いられる任意の添加成分の量およびタイプ、哺乳動物の皮膚のタイプ、ならびに治療される創傷の、重症度、範囲、および性質に依存する。
【0036】
「有効量」の決定において考慮される種々の一般的な考慮事項は、当業者に公知であり、例えば、Gilman et al.,eds.,Goodman And GilmanのThe Pharmacological Bases of Therapeutics,8th ed.,Pergamon Press,1990、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990(それぞれ参考として本明細書に援用される)に記載される。式(I)の化合物の用量は、望ましくは、哺乳動物の体重1キログラム(kg)当たり約0.1mg(mg/kg)ないし約400mg/kg(例、約0.75mg/kg、約5mg/kg、約30mg/kg、約75mg/kg、約100mg/kg、約200mg/kg、または約300mg/kg)を含む。その他の具体的態様において、式(I)の化合物の用量は、約0.5mg/kgないし約300mg/kg(例、約0.75mg/kg、約5mg/kg、約50mg/kg、約100mg/kg、または約200mg/kg)、約10mg/kgないし約200mg/kg(例、約25mg/kg、約75mg/kg、または約150mg/kg)、または約50mg/kgないし約100mg/kg(例、約60mg/kg、約70mg/kg、または約90mg/kg)を含む。
【0037】
本発明の方法は、少なくとも1つの式(I)の化合物および医薬上許容され得る担体を含む医薬組成物を投与することによっても実施され得る。組成物は、アジュバントおよび他の抗酸化物質のような、他の活性薬剤をさらに含み得る。抗酸化物質は、例えば、ビタミン類(例、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、および他のレチノイド)、グルタチオン、スーパーオキシド・ジスムターゼ模倣薬、窒素酸化物、およびベータカロテンであり得る。
【0038】
任意の適切な医薬上許容され得る担体は、本発明の範囲内で用いられ得、かかる担体は、当該分野で周知である。例えば、担体は、水性または非水性の溶液、緩衝剤および塩を含む液体、滅菌粉末、顆粒、および錠剤、半透過性マトリックス、非経口ビークル、または静脈内ビークルを含む。担体の選択は、、医薬組成物が投与される個々の部位および医薬組成物を投与するために用いられる個々の方法によって、ある程度決定されるであろう。
【0039】
適切な製剤としては、水性および非水性溶液、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、および当該製剤を意図する受容者の血液または他の体液と等張にする溶質を含み得る滅菌等張液、、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および防腐剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。一つの具体的態様において、医薬上許容され得る担体は、緩衝剤および塩を包含する液体である。製剤は、アンプルおよびバイアルのような単位用量または複数回用量を封入した容器中に存在し得、使用直前に、例えば、水のような滅菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存され得る。即時溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0040】
さらなる担体としては、活性薬剤を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスであって、当該マトリックスが成形品(例、フィルム、リポソーム、または微粒子)の形状である徐放性製剤が挙げられる。
【0041】
医薬組成物としては、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤等が挙げられ得る。
【0042】
式(I)の化合物を含む医薬組成物は、局所または全身治療のいずれが所望されるか、および治療される範囲に応じて、任意の適切な投与経路のために製剤され得る。望ましくは、医薬組成物は、静脈内、腹腔内、動脈内、口内、皮下、または筋肉内注射のような非経口投与用に製剤される。注射物質は、液体溶液または懸濁液、注射前の液体中の懸濁液に適した固形として、あるいは乳濁液としてのいずれかで、従来の形式で調製され得る。さらに、非経口投与は、一定の用量が保たれるような持続性放出または徐放性放出のシステムの調製を伴い得る。非経口投与用の製剤としては、滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液、および乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、生理食塩水および緩衝化媒体などのアルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。非経口ビークルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または不揮発性油が挙げられる。静脈内ビークルとしては、流動物および栄養補給物、電解質補給物(例えば、リンゲルデキストロースに基づいたもの)等が挙げられる。防腐剤および他の添加物もまた存在し得る(例えば、抗菌剤、抗酸化物質、キレート剤、および不活性ガス等)。
【0043】
医薬組成物は、経口でも投与され得る。経口組成物は、粉末または顆粒、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、サシェ剤、あるいは錠剤の製剤の状態であり得る。増粘剤、香料、賦形剤、乳化剤、分散剤、または結合剤が望ましくあり得る。
【0044】
直腸投与に適した製剤は、例えば、ココアバターまたはサリチル酸塩を含む適切な基剤を有する坐薬として提供され得る。膣内投与に適した製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、またはスプレー処方物として提供され得る。同様に、活性成分は、コンドーム上のコーティングとして潤滑剤と組み合わされ得る。実際、好ましくは、活性成分は、コンドーム、ペッサリー、子宮頸管キャップ、膣リング、およびスポンジなどの任意の避妊具に塗布されるが、これらに限定されない。
【0045】
適切な担体およびそれらの製剤は、A.R.Gennaro,ed.、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.),Mack Publishing Company,Easton,PA(1995)にさらに記載されている。
【0046】
式(I)の化合物またはその組成物は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸のような無機酸、並びに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸のような有機酸との反応によって形成される医薬上許容され得る酸付加塩として投与される可能性があり得る。
【0047】
式(I)の化合物を含む化合物または医薬組成物は、スポンジ、生体適合性網、機械的リザーバー、または機械的インプラントのような、式(I)の化合物の制御されたまたは持続性の放出を可能にするデバイス中または上で投与され得る。植え込み可能なデバイス(例、高分子組成物から成る機械的リザーバーインプラント(implant)またはデバイス)のような、インプラント(例、米国特許5,443,505参照)、デバイス(例、米国特許4,863,457参照)は、活性薬剤の投与に特に有用である。本発明の方法に係る医薬組成物はまた、例えば、ゲル泡、ヒアルロン酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、ビス−2−ヒドロキシエチル−テレフタラート(BHET)のような、ポリホスホエステル、および/またはポリ乳酸−グリコール酸を含む徐放性製剤(例、米国特許5,378,475参照)の製剤の形態でも投与され得る。もちろん、化合物または医薬組成物の投与は、目的の組織に活性薬剤を効率的に送達する任意の経路によって成し得る。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、もちろん、その範囲を限定するいかなるようにも解釈されるべきではない。
【0049】
実施例1
本実施例は、本発明の実施態様における式(I)の尿酸類縁体の合成を例示する。
市販で入手可能な誘導体は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)より入手する。尿酸のメチル誘導体およびサルファー誘導体の合成に用いる方法は、以前に記載したものと同様であり(Beaman et al.,J.Org.Chem.,27,986−990(1962)and Maruyama et al.,Nucleosides,Nucleotides,Nucleic Acids,19,1193−1203(2000))、構造は、13C核磁気共鳴(NMR)および紫外(UV)スペクトル分析によって確認する。尿酸類縁体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりアッセイし、97%を超える純度であると判明する。冷水中の尿酸および式(I)の化合物の溶解度(mg/ml)を測定し、表1中に記載する。
【0050】
【表1】

【0051】
従って、式(I)の化合物の水溶性は、尿酸のそれより10ないし30倍大きい。
【0052】
実施例2
本実施例は、本発明の実施態様における式(I)の化合物の薬物動態を決定する方法を例示する。
マウスに対照化合物として10mg/kg(5.95mmols)の尿酸およびその類縁体の等モルの用量(sUA4−2,6,8トリチオ尿酸、12.9mg/kg;mUA2−1,7ジメチル尿酸、11.7mg/kg;sUA2−6,8ジチオ尿酸、11.9mg/kg)を静脈内投与する。3ヶ月齢の雄性C57BL/6マウスに化合物を注射し、15、30、60または120分後に安楽死させる(1マウス/時点/化合物)。尿酸類縁体の定量の前に、血液および脳組織を速やかに除去し、ドライアイスで凍結し、−80℃で維持する。血漿および大脳皮質組織を、10倍量の0.5M過塩素酸および1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)中で抽出する。抽出物中の尿酸類縁体のレベルを流速1ml/minおよびUVダイオードアレイ検出での、25cm RP 18カラム、25mM HPO緩衝剤(pH=4.6)を用いるHPLC法によって測定する。
【0053】
mUA2、sUA2またはsUA4を静脈内投与したマウスを、増大する時点(15、30、60および120分)で安楽死させて、血漿および脳組織中の化合物のレベルを測定する。3つの全ての類縁体(mUA2、sUA2またはsUA4)は、試験された全ての時点で脳内に検出される。脳組織内のそれらの濃度(0.5〜1μM)は、早い時点(15〜30分)でおおよそ10%のプラズマ濃度であるが、上昇し続け、一方、血漿濃度は、120分の時点をすぎて次第に減少する。
【0054】
実施例3
本実施例は、本発明の実施態様におけるシナプトソームの調製方法および抗酸化活性を決定するアッセイを例示する。
先に記載されている方法(Begley et al.,Brain Res.Protoc.,3,76−82(1998))を用いて、シナプトソームを2〜3ヶ月齢の成体雄性Sprague−Dawleyラットの大脳皮質から調製し、低温保存する。解凍後、低温保存したシナプトソームをロック緩衝剤で2回洗浄し、1穴当たり250μgのタンパク質濃度で24穴プレートに蒔く。シナプトソームの基質への付着が可能になってから30分後、シナプトソームを式(I)の化合物(1〜10μM)と共に1時間培養し、次いで、新たに調製した50μM Fe2+(FeSO)に4時間曝露する。酸化されたときに蛍光を発するROSのプローブである10μM ジヒドロローダミン123(DHR)(Keller et al.,J.Neurochem.,69,273−284(1997))の存在下でのさらなる30分の培養後、シナプトソームをロック緩衝剤で2回洗浄し、蛍光のレベルを蛍光プレートリーダーを用いて計測する(488nm励起および510放出波長)。試験的処理に付された穴の蛍光の値は、未処理の対照穴に対する平均値の百分率として表される。蛍光プローブであるジヒドロローダミンを用いて測定したシナプトソームにおけるROSのレベルは、尿酸、およびsUA3を除くすべての式(I)の化合物によって著しく減少する(図1B)。sUA2、sUA4、およびmUA2で処理された海馬神経は、対照培地の神経細胞と比較して、酸素およびグルコースの欠乏(OGD)によって引き起こされる死に対し著しくより抵抗性である(図2)。
【0055】
実施例4
本実施例は、本発明の実施態様における細胞培地の調製方法および神経保護作用を測定するアッセイを例示する。
PC12細胞および初期胚ラット海馬神経の培地の調製および保存方法は、先に記載されている(Furukawa et al.,J.Neurosci.,17,8178−8186(1997) and Chan et al.,J.Biol.Chem.,279,28733−28743(2004))。細胞を、B27サプリメントと共にNeurobasal培地を含む、ポリエチレンイミンでコートされたプラスチック96穴培養プレートに蒔く。実験を、10%ウシ胎仔血清(PC12細胞)を有する7〜8日経過の培地(海馬神経)またはダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で行う。海馬神経およびPC12細胞を、それぞれ、実験の7日および3日前に培養する。実験時に、細胞密度は、1穴あたりおよそ100,000(PC12細胞)および50,000(海馬神経)細胞である。実験処理直前に、培地を、ロック緩衝剤で置換する。細胞の生存は、治療の前後に予め印が付けられた顕微鏡視野での生存神経細胞を計数し、次いで生存率を計算することにより定量する。
【0056】
細胞死は、MPPまたはFe2+のいずれかへのPC12細胞の曝露によって引き起こされる。MPPは、ミトコンドリア複合体Iの阻害により神経細胞を殺すパーキンソン病毒素MPTPの神経毒性代謝物であるが(Dauer et al.,Neuron,39,889−909(2003))、一方、Fe2+は、ヒドロキシルラジカルの産生および膜脂質の過酸化を引き起こす(Keller,J et al.,J.Neurosci.,18,687−697(1998) and Keller et al.,J.Neurochem.,69,273−284(1997))。0.1ないし10μMの濃度の尿酸およびmUA3は、MPPおよびFe2+からPC12細胞を保護した(図3Aおよび3B)。尿酸およびmUA3はまた、主に海馬神経を、Fe2+およびグルタミン酸興奮毒性によって引き起こされる死から保護した(図3Cおよび3D)。
【0057】
実施例5
本実施例は、本発明の実施態様における、マウスおよび局所脳虚血−再潅流モデルを例示する。
3ヶ月齢の雄性C57BL/6マウスを、持続的に食餌および水を与えて12時間明所/12時間暗所サイクルに保つ。マウスを中大脳動脈閉塞−再潅流に付する方法は、先に記載されている(Arumugam et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.287,H2555−2560(2004))。マウスを、イソフルオランで麻酔し、正中切開を頸部で行い、左外頸動脈および翼口蓋動脈を分離して、5−0蚕糸で結紮する。内頸動脈(ICA)を、小さなクリップを用いて内頸動脈および翼口蓋動脈の分岐点の末梢部位でふさぎ、総頸動脈は、5−0蚕糸で結紮する。外頸動脈を切断し、凝固剤で先を丸めた(blunted)先端(0.2−0.22mm)を有する6−0ナイロン単繊維を外頸動脈に挿入する。ICAのクリップを除去後、ナイロン糸を軽い抵抗が感じられるまで中大脳動脈中に進入させる。ナイロン糸および総頸動脈帯を閉塞後1時間で取り除いて、再潅流を開始する。偽病群において、それらの動脈は視覚化されているが妨げられていない。マウスに、式(I)の尿酸類縁体またはビークル(ジメチルスルホキシド)のいずれかを、中大脳動脈(MCA)閉塞の発現の30分前または60分後のいずれかに大腿静脈(2分で10μl注入)に注入することによって投与する。別の一式の実験においては、全てのグループからの麻酔された動物(1群あたり4〜6匹のマウス)をレーザードップラー潅流モニターを用いて脳血流(CBF)測定に付す。全ての血流測定を、中大脳動脈により潅流される大脳皮質の領域に位置するプローブを用いて、プラスチックフレームに固定したマウスで実施する。これらの手順は、加齢動物保護および使用委員会に関する国立研究所(National Institute on Aging Animal Care and Use Committee)によって承認されている。
【0058】
mUA3は、中大脳動脈閉塞の発現の60分後、20mg/kgの用量でマウスに静脈投与した場合、ビークル処理の対照マウスと比較して、脳損傷を著しく減少し、かつ機能転帰を改善する(図4Aおよび4B)。梗塞量は、UA3処理のマウスでは、ビークル処理の対照マウスと比較して40〜60%低い。その他のメチル類縁体(mUA2)および2つの硫黄類縁体(sUA2およびsUA4)もまた、虚血発現の1時間後に投与した場合、著しく機能転帰を改善し、かつ脳損傷を減少させる(図5Aおよび5B)。ビークルと式(I)の化合物でMCA閉塞の前、最中または後に処理されたマウスとの間でCBFの著しい相違はなく(データは示さず)、このことは、類縁体の神経保護効果は、脳血管系での作用の結果ではないことを示唆する。
【0059】
実施例6
本実施例は、本発明の実施態様における神経学的欠損および脳損傷の評価を例示する。
局所脳虚血−再潅流損傷の機能的な結果は、5点の神経学的欠損スコア(0,欠損なし、1,右足を伸ばすことができない、2,右への旋回、3,右へ倒れる、および4,自発歩行不可能)を用いて評価し、さらに盲検法的な方法によって評価する。72時間再潅流し、マウスを致死量のイソフルオランで殺す。脳を速やかに取り出し、15分間PBS(4℃)中に置いて、2mmの冠状断面を組織カッターを用いて切り出す。脳切片を37℃で15分、リン酸緩衝剤中の2%2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライドで染色する。染色切片を写真撮影し、デジタル化画像を分析に用いる。それぞれの脳切片における梗塞の境界線の輪郭をとり、その領域をNIH image 6.1ソフトウェアを用いて測定する。脳腫脹を補正するため、梗塞領域を、脳左半球における無損傷の組織の領域を無処置の反対側の半球の領域から減じることにより決定する。梗塞量は、それぞれの脳のすべての切片についての梗塞領域の総和により算出する。
【0060】
実施例7
本実施例は、本発明の実施態様における式(I)の化合物を用いた創傷治癒の評価を例示する。
定義した創傷を、C57BL/6マウスにおいて4 mm Accuderm human punch biopsy kit(Accuderm,Ft Lauderdale,FL)を用いて作製する。具体的には、マウスの背の緩んだ皮膚を寄せ集め、麻酔下で、一回の穿孔をいずれかの側から行うことにより、下層組織に影響を与えることなく、皮膚のみを貫通する2つの創傷を作製した。創傷直後、創傷を、標準生理食塩水(非処理の対照群としての役割のため)または式(I)の化合物のいずれかで局所的に処理する。
【0061】
毎日、創傷をデジタル写真撮影し、創傷領域を写真のコンピューター積分によって決定する。創傷時点(第0日)における創傷領域は、すべての創傷に対して1の相対値に任意に設定する;即ち、その後の創傷領域は、第n日での創傷領域を第0日での創傷領域で割ることにより、相対的創傷領域に変換される。
式(I)の化合物の単回用量の適用(創傷時点、第0日)は、マウスモデルでの完全な創傷閉鎖の時間を加速する。生理食塩水で処理された対照での13日超と比較して、6,8−ジチオ尿酸(sUA2)で処理された創傷は、平均して創傷後8日で閉鎖した。
【0062】
本明細書で引用する、刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、あたかもそれぞれの参考文献が参照として援用されることが個別におよび特別に示され、かつその全体が本明細書に記載されているかのように同程度に本明細書に参考として援用される。
【0063】
本発明の記載中(特に、以下の特許請求の範囲中)の文脈での、用語「一つの(a)」および「一つの(an)」ならびに「当該(the)」および同様の指示語の使用は、本明細書中に別に示さない限り、または文脈中で明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈される。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、別に記さない限り、オープン・エンドな用語(即ち、「含むが、それらに限定されない」ことを意味する) として解釈される。本明細書中での数値の範囲の列挙は、別に本明細書中で示さない限り、単に、範囲内にあるそれぞれの個別の値について個々に言及する簡便な方法としての役を果たすことを意図し、それぞれの個別の値は、あたかもそれが本明細書中で個々に列挙されているかのように、本明細書中に援用される。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中に別に示さない限り、または文脈中で明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書中で提供される任意のおよび全ての実施例、または例示的言語(例、「のような(such as)」)の使用は、別に言及しない限り、本発明をより明解にすることのみを意図し、本発明の範囲についての制限を課さない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に必須であるとして、任意の特許請求されていない要素を示すとして解釈されるべきではない。
【0064】
本発明の好ましい実施態様は、本明細書中に記載され、本発明を実施するために本発明者に知られた最良の態様を含む。それらの好ましい実施態様のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかとなり得る。本発明者は、当業者が必要に応じてそのようなバリエーションを用いると予測し、かつ、本発明者は、本発明が具体的に本明細書に記載したのとは別のやり方で実施されることを意図する。それ故、本発明は、適切な法により許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変更および均等物を含む。さらに、すべての可能なそのバリエーションにおける上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書中に別に示さない限り、または文脈中で明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化的ストレス関連疾患の治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物[ここで、式(I)の化合物は:
【化1】

(式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれOまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない)である]
の有効量を投与することを包含する、方法。
【請求項2】
酸化的ストレス関連疾患が神経障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
神経障害が、虚血性脳障害、外傷、てんかん、関節炎、呼吸困難、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜変性、タウオパシー、および認知症から成る群より選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
神経障害が、虚血性脳障害、外傷、てんかん、関節炎、呼吸困難、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、および認知症から成る群より選ばれる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
認知症が、アルツハイマー病、多発性梗塞性認知症(MID)、ダウン症候群、または後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
神経障害が虚血性脳障害である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
酸化的ストレス関連疾患が創傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
神経障害の治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物[ここで、式(I)の化合物は:
【化2】

(式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれOまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない)である]の有効量を投与することを包含する、方法。
【請求項9】
創傷治癒の増進を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、当該哺乳動物に、式(I)の化合物[ここで、式(I)の化合物は:
【化3】

(式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれOまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない)である]の有効量、またはその組成物を投与することを包含する、方法。
【請求項10】
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれが、水素またはC1−6アルキルである(但し、X、X、およびXが全て酸素である場合、R、R、R、およびRの少なくとも1つは、C1−6アルキルである)、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれが、水素またはメチルである(但し、X、X、およびXが全て酸素である場合、R、R、R、およびRの少なくとも1つは、メチルである)、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ、2つ、または3つ全てのX、X、およびXが硫黄である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
、R、R、およびRが水素である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
、R、R、およびRがメチルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式(I)の化合物が、
【化4】

から成る群より選ばれる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
酸化的ストレス関連疾患の治療または予防のための医薬の製造における、式(I)の化合物[ここで、式(I)の化合物は:
【化5】

(式中、
、X、およびXは、同一または異なっており、それぞれOまたはSであり;かつ
、R、R、およびRは、同一または異なっており、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−10シクロアルキル、C6−30アリール、およびC6−30アリール−C1−6アルキルである(ここで、当該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基は、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アシル、ニトロ、カルボキシ、C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシで任意に置換されている);
但し、式(I)の化合物は、尿酸ではない)である]の使用。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2010−501590(P2010−501590A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525774(P2009−525774)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/076597
【国際公開番号】WO2008/024893
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(304048296)アメリカ合衆国 (18)
【Fターム(参考)】