説明

酸化防止剤含有拭取り材及び吸収性製品

皮膚の健康上の利点を与えることができる植物性抽出物である酸化防止剤を含有する拭取り材及び吸収性物品が開示される。AST酸化防止剤状態試験によって求められた、3分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有する、グレープシード、グリーンティー、ホワイトティー、カナディアンウィロウハーブ、エキナセア又はユッカ抽出物から選択された酸化防止剤が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の健康上の利点を与えることができる湿潤拭取り材及び吸収性製品のようなパーソナルケア製品に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の酸化を減少させ、皮膚の健康を改善するために皮膚の表面で又は付近で酸化防止剤として作用することができる植物性抽出物のような酸化防止剤を含有する湿潤拭取り材に関する。ここで説明され、湿潤拭取り材溶液に組み入れるのに適した化合物は、AST酸化防止状態試験による酸化防止能力が3分間で少なくとも約25%である植物性抽出物を含む。湿潤拭取り材溶液に組み入れられたときに、ここで説明される酸化防止剤は、含有される界面活性剤の皮膚に対する酸化作用を減少させることにより、溶液の全体的なマイルドさを改善する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、太陽放射線、環境汚染物質、化合物に対する露出により、並びに糞便のような生物学的放出物との接触により、容易に損傷することがよく知られている。こうした露出によって皮膚が受けるある種の損傷は、皮膚の表面上の酸化の直接的結果である、すなわち、酸素、窒素、及び炭素中心ラジカルといったフリーラジカル(不対電子をもつ原子又は分子)と皮膚との相互作用の直接的結果である。酸素分子から生じた反応性酸素種は、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、及びヒドロキシルラジカル、並びに種々の酸化反応により皮膚と相互作用して皮膚を著しく損傷させることがある、これらのフリーラジカルによって生じた反応生成物を含む。
ほとんど全ての細胞構成物質は、フリーラジカルの標的になる可能性がある。表皮の酸化の主な標的は、たんぱく質及び脂質である。皮膚表面の全脂質のおよそ25%は不飽和である。ポリ不飽和脂質は、水素を抽出する傾向があるビスアリル水素の存在により、酸化されやすい。この脂質過酸化は、膜の崩壊を招くか、又は最終的に変異原性又は感作物質である化合物を生じさせる。
【0003】
皮膚の老化及び乾燥は、コラーゲンが硬化し、隣接するコラーゲン繊維とかみ合ったときに起こる。この相互作用は、コラーゲンが水を保持して膨らむのを防止し、コラーゲンは、実際には潰れ始めて、他のコラーゲン繊維と結合し、皮膚表面の下に魚網構造を形成する。ヒト組織は、紫外線を含む外部傷害によって攻撃され、多量のフリーラジカルの生成が起こり、組織構造の著しい変質を招く場合が多い。全体的な最終的影響は、コラーゲン繊維の無秩序な架橋であり、皮膚の表面上の皺及び皮膚の乾燥として現れる。さらに、上記のような反応性酸素種は、コラーゲンのほかに他の分子(表皮中の不飽和脂質である場合が多い)と反応して、皮膚において多量の有害なフリーラジカル反応を生じさせることがある。
【0004】
環境要因及び身体排出物と共に、他の因子も、フリーラジカルの生成及び皮膚の酸化に寄与する。例えば、一般に用いられる消費者製品の幾つかの構成成分は、皮膚の酸化、その結果として損傷を招く。成人及び乳児の両方の皮膚から身体排出物を清掃するのに一般的に用いられる湿潤拭取り材の液体組成物は、典型的には、皮膚の清掃を促進するために少なくとも1つの界面活性剤を含有する。しかしながら、界面活性剤は、マイルドタイプのものでさえも、皮膚中の及び皮膚上の酸化その他の生化学的反応を誘発して、発赤、浮腫、及び炎症を招くことがある。界面活性剤は、典型的には、湿潤拭取り材に用いられる液体組成物に要求される成分であるので、こうした前炎症性事象の誘発は、ある人、特に「敏感肌」に分類される人においてはほとんど確実である。
上記のことに基づき、環境要因、種々の身体排出物との接触、及び市販の製品からの酸化によって皮膚が損傷される可能性を低減することができる湿潤拭取り材のような製品に対する必要性がある。皮膚に対してマイルドでありながら有効な酸化防止性を与える酸化防止剤を含有する商業上経済的な吸収性製品及び湿潤拭取り材が有益であり、結果として、酸化により生じる皮膚の損傷の減少を通じて、皮膚の健康の改善をもたらすことができる。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、酸化により生じる皮膚の損傷を低減させることによって皮膚の健康を改善する製品及び方法に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の表面にもたらされる酸化による皮膚の損傷の大きさを低減させることによって通常の使用中に接触する皮膚の健康を改善することができる薬剤を含有する湿潤拭取り材及び吸収性物品のような製品に関する。
本発明の一実施形態においては、湿潤拭取り材溶液のマイルドネスは、液体湿潤拭取り材溶液又は組成物に直接に酸化防止剤を導入することによって、著しく改善することができる。酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって求められた酸化防止能力が、3分間で少なくとも約25%であるものとすることができる。或いは、酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって求められた酸化防止能力が、30分間で少なくとも約20%であるものとすることができる。植物性抽出物のような酸化防止剤を湿潤拭取り材溶液に導入することにより、溶液が皮膚に酸化性損傷を与える可能性が少なくなるので、溶液のマイルドネスが改善される。好ましい実施形態においては、湿潤拭取り材溶液に導入された酸化防止剤は、少なくとも約30分間にわたって活性がある、すなわち、酸化防止剤は、3分間で少なくとも約25%、30分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有する。
【0006】
したがって、手短に述べると、本発明は、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるために繊維性拭取り材基体と酸化防止剤とを含む、皮膚の健康を改善する拭取り材に向けられている。酸化防止剤は、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有する。
本発明はさらに、皮膚の表面上の酸化を低減させるために繊維性拭取り材基体と酸化防止剤とを含む、皮膚の健康を改善する拭取り材に向けられている。酸化防止剤は、30分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有する。
本発明はさらに、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるために繊維性拭取り材基体と酸化防止剤とを含む、皮膚の健康を改善する拭取り材に向けられている。酸化防止剤は、3分間で少なくとも約75%の酸化防止能力、及び30分間で少なくとも約75%の酸化防止能力を有する。
本発明はさらに、酸化により生じる皮膚の損傷を制御して皮膚の健康を改善するための方法に向けられている。この方法は、繊維性拭取り材基体を皮膚表面と接触させることを含む。繊維性拭取り材基体は、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有する酸化防止剤を含有する。
本発明の他の目的及び特徴は、一部は明白であり、一部は以下に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明によれば、特定の植物性抽出物のような酸化防止剤を、湿潤拭取り材及び吸収性物品のような普通のパーソナルケア製品に用いて、酸化により生じる皮膚の損傷量を低減させることによって、皮膚の健康を維持し、改善することができる。湿潤拭取り材溶液の酸化能力を低減させることにより、皮膚の損傷量が低減される。ここで説明される幾つかの酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって測定された、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有し、ここで説明される他の薬剤は、AST酸化防止剤状態試験によって測定された、30分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有し、さらに他のものは、両方の特徴を有する。これらの酸化防止能力の1つ又は両方を有する酸化防止剤を湿潤拭取り材溶液に導入することにより、溶液中に存在する界面活性剤によって起こるか又は他の外部要因によって起こる酸化の量を著しく低減させることができる。
【0008】
本発明のパーソナルケア製品は、製品の酸化能力を減少させることによって通常の使用中にパーソナルケア製品に接触する皮膚の健康を改善することができる植物性抽出物のような少なくとも1つの酸化防止剤を含有する。多くのパーソナルケア製品は、ここで説明された本発明に係る酸化防止剤と共に用いて、使用者の皮膚の健康を改善することができる。例えば、ここで説明された1つ又はそれ以上の酸化防止剤を、湿潤拭取り材、手指用拭取り材、顔用拭取り材、化粧用拭取り材、家庭用拭取り材、工業用拭取り材、乾燥拭取り材等といった拭取り材と組み合わせて用いて、皮膚の表面上の酸化量を減少させることによって皮膚の健康を改善することができる。当業者には理解されるように、酸化防止剤は、拭取り材基体上にじかに存在することができ、又は拭取り材と共に用いられる液体組成物中に存在してもよい。
【0009】
拭取り材の基体に適した材料は、当業者には周知であり、典型的には織布又は不織布とすることができる繊維性シート材料から形成される。例えば、皮膚の健康を改善するためにここで説明される添加剤を組み入れている拭取り材は、メルトブロー、コフォーム、空気堆積、ボンデッド−カーデッドウェブ材料、水圧交絡材料及びこれらの組み合わせを含む不織繊維性シート材料を含むことができる。こうした材料は、合成又は天然繊維或いはこれらの組み合わせからなるものとすることができる。典型的には、拭取り材は、約25から約120グラム毎平方メートル、望ましくは約40から約90グラム毎平方メートルの坪量を定める。
特定の実施形態においては、ここで説明される添加剤を組み入れている拭取り材は、約60から約80グラム毎平方メートル、望ましくは約75グラム毎平方メートルの坪量を有するポリマーマイクロファイバ及びセルロース繊維のコフォームベースシートを含む。こうしたコフォームベースシートは、通常は、引用により組み入れられる米国特許第4,100,324号に記載されたようにして製造される。典型的には、こうしたコフォームベースシートは、例えばポリプロピレンマイクロファイバのような熱可塑性ポリマーメルトブローマイクロファイバと、例えば木材パルプ繊維のようなセルロース繊維とのガス形成マトリックスを含む。
【0010】
コフォームベースシートにおけるポリマーマイクロファイバ及びセルロース繊維の相対的割合は、湿潤拭取り材の所望の特徴に応じて、幅広い範囲にわたって変えることができる。例えば、コフォームベースシートは、コフォームベースシートの乾燥重量に基づき、約20から約100重量パーセント、望ましくは約20から約60重量パーセント、より望ましくは約30から約40重量パーセントのポリマーマイクロファイバを含むことができる。
或いは、ここで説明される添加剤を組み入れている拭取り材は、引用により組み入れられる米国特許第6,028,018号に記載されるような多数の材料層を含む複合材を備えることができる。例えば、拭取り材は、前述のように2つのコフォーム層の間にエラストマーフィルム又はメルトブロー層を含む3層複合材を備えることができる。こうした構成においては、コフォーム層は、約15から約30グラム毎平方メートルの坪量を定めることができ、エラストマー層は、ポリエチレンメタロセンフィルムのようなフィルム材料を含むことができる。
【0011】
前述のように、皮膚の健康を改善するために、ここで説明された添加剤と組み合わせて用いるのに適した1つの形式の拭取り材は、液体溶液又は組成物を含有する湿潤拭取り材を含む。液体は、湿潤拭取り材ベースシートに吸収させることができるどんな溶液とすることもでき、所望の拭取り特性を与えるどんな適切な成分を含むこともできる。例えば、成分は、当業者には周知の水、皮膚軟化薬、界面活性剤、香料、防腐剤、キレート剤、pH緩衝剤、又はこれらの組み合わせを含むことができる。さらに、液体はまた、ローション、薬、及び/又は抗菌剤を含有することができる。
各湿潤拭取り材に含ませられる液体の量は、湿潤拭取り材を与えるのに用いられる材料の形式、用いられる液体の形式、湿潤拭取り材を収容するのに用いられる容器の形式、及び湿潤拭取り材の所望の最終用途に応じて変えることができる。一般に、各湿潤拭取り材は、改善された拭取りのために、拭取り材の乾燥重量に基づき、約150から約600重量パーセント、望ましくは約250から約450重量パーセントの液体を含有することができる。特定の態様においては、湿潤拭取り材に含ませられる液体の量は、湿潤拭取り材の乾燥重量に基づき、約300から約400重量パーセント、望ましくは約330重量パーセントである。液体の量が上記で特定された範囲より少ない場合には、湿潤拭取り材は、乾燥しすぎて、適切に機能しないことがある。液体の量が上記で特定された範囲より多い場合には、湿潤拭取り材は、飽和されすぎて、びしょびしょになり、液体が容器の底に溜まることがある。
【0012】
湿潤拭取り材の各々は、通常は長方形の形状であり、どんな適切な折畳まれていない幅及び長さを有することもできる。例えば、湿潤拭取り材は、約2.0から約80.0センチメートル、望ましくは約10.0から約25.0センチメートルの折畳まれていない長さと、約2.0から約80.0センチメートル、望ましくは約10.0から約25.0センチメートルの折畳まれていない幅を有することができる。典型的には、個々の湿潤拭取り材の各々は、折畳み構成で配置され、次々に上に積み重ねられて、湿潤拭取り材のスタックを与える。こうした折畳み構成は、当業者には周知であり、C字折り、Z字折り、四つ折り構成等を含む。折畳まれた湿潤拭取り材のスタックをプラスチックタブのような容器の内部に配置して、最終的に消費者に売るための湿潤拭取り材のパッケージを与えることができる。或いは、湿潤拭取り材は、各拭取り材の間に穿孔を有する材料の連続ストリップを含むことができ、分与するためにスタックとして配置するか又はロールに巻くことができる。
【0013】
別の実施形態においては、皮膚の健康を改善するためにここで説明される1つ又はそれ以上の添加剤を含むパーソナルケア製品は、おむつ、トレーニングパンツ、成人失禁用衣類、婦人用ナプキン、ペーパータオル、タンポン、陰唇間パッド、化粧紙、創傷管理製品、及びトイレットペーパを含むことができる。こうした吸収性製品を製造する材料及び方法は、当業者には周知である。それらの意図された手法で用いられたときには、酸化防止剤を含有する吸収性パーソナルケア製品は、皮膚に接触して、該薬剤が、酸化により生じる皮膚の損傷の量を低減させ、それにより皮膚の健康を改善することができる。
【0014】
本発明の一実施形態においては、特定の植物性抽出物のような酸化防止剤をパーソナルケア製品中に又は製品上に導入して、酸化により生じる皮膚の損傷の量を低減させることにより、パーソナルケア製品に接触する皮膚の健康を改善する。好ましい実施形態においては、酸化防止剤は、湿潤拭取り材の液体組成物中に導入されて、液体組成物のマイルドネスを改善し、どんな皮膚の酸化をも打ち消す。ここで用いられる「マイルドネス」という用語は、湿潤拭取り材組成物のような組成物によって皮膚にもたらされる損傷、及び/又は拭取りを通じて皮膚表面上に生じる損傷の量のことをいい、すなわち、より「マイルドな」組成物は、皮膚に与える損傷又は刺激が少ない。
前述のように、界面活性剤は、湿潤拭取り材溶液においては一般的な成分であり、酸化により生じる細胞反応をアップレギュレイト(upregulate)する。湿潤拭取り材溶液に酸化防止剤を導入することにより、酸化防止剤は、界面活性剤の酸化能力を低下させ、酸化により生じる皮膚の損傷レベルを低下させ、それにより溶液のマイルドネスを増加させることができる。
【0015】
好ましくは、パーソナルケア製品中に又は製品上に導入される酸化防止剤、又は酸化防止剤との組み合わせは、3分間で少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約75%の酸化防止能力を有する。さらに、幾つかの実施形態においては、パーソナルケア製品中に又は製品上に導入される酸化防止剤、又は酸化防止剤との組み合わせは、30分間で少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約75%の酸化防止能力を有する。当業者であれば、酸化防止能力のパーセンテージが高ければ、酸化防止剤が溶液の酸化能力をより有効に打ち消すことを認識するであろう。したがって、典型的には、パーソナルケア製品には、より高い酸化防止能力をもつ化合物を用いることが好ましい。
【0016】
3分間及び30分間の両方における期待される酸化防止剤の酸化防止能力は、当業者には公知の多くの分析手法によって求められる。期待される酸化防止剤の酸化防止能力を求めるのに好ましい分析手法は、後述するAST酸化防止剤状態試験である。この試験方法は、本発明に係る、3分間及び30分間の両方における酸化防止剤の酸化防止能力を求めるのに用いることができる。当業者であれば認識するように、ここに記載されるパーソナルケア製品に用いられる化合物の酸化防止能力を評価するために、本発明に従って他の酸化防止剤スクリーニング試験を用いることもできる。
【0017】
AST酸化防止剤状態試験
例えば、液体又は固体植物性抽出物その他の化合物といった可能性のある酸化防止剤を、それらの酸化防止能力について分析する。可能性のある酸化防止剤の酸化防止能力を求めるためのAST酸化防止剤状態試験は、以下のようにして完了される。
ステップ1: 3分間及び30分間での薬剤の酸化防止能力を測定するために、Randox Laboratories,Ltd.(英国)からのTotal Antioxidant Status Kitを入手する。
ステップ2: 可能性のある酸化防止剤を、液体形態であれば、脱イオン水で1%(v/v)溶液に希釈する。薬剤が固体形態であれば、脱イオン水で1%(w/v)溶液に希釈する。
ステップ3: Antioxidant Status Kitから、色原体2のバイアルに10ミリリットルのpH7.4リン酸緩衝生理食塩水を加えることによって、使用のための色原体試薬を調製した。
ステップ4: NUNC IMMUNOクリア96ウェルプレート(イリノイ州シカゴ所在のVWR Scientific Products)のような透明なウェルプレートの空のウェルに、上のステップ2で調製した5マイクロリットルの1%試験溶液を入れ、酸化防止能力について分析する。5マイクロリットルの1%試験溶液の代わりに5マイクロリットルの脱イオン水を入れた対照ウェルも用意する。
ステップ5: 5マイクロリットルの1%試験溶液か又は5マイクロリットルの脱イオン水の入っている透明なウェルプレートの各ウェルに、上のステップ3で調製された250マイクロリットルの色原体試薬を加える。
【0018】
ステップ6: 各ウェルの光学濃度測定を、SPECTRAmax PLUS384 Microplate Reader(カリフォルニア州サニーベール所在のMolecular Devices)のような適切なマイクロプレート・リーダを用いて、プレートのブランキングなしで600ナノメートルで行う。
ステップ7: Total Antioxidant Status Kitに与えられた基体を、1ミリリットルの基体を1.5ミリリットルのpH7.4リン酸緩衝液で希釈することによって、使用のために調製する。
ステップ8: 1%試験溶液(又は水)+色原体試薬についての光学濃度読み取りを行った後に、ステップ7で調製した50マイクロリットルの基体を各サンプルウェルに加える。
ステップ9: 3分後に(又は30分間の酸化防止能力が試験される場合には30分後に)、プレートのブランクなしで600ナノメートルにおいてウェルプレートのサンプルウェルを読み取る。
【0019】
ステップ10: 測定された光学濃度の読取値を以下のように用いて、酸化防止剤の酸化防止能力を(パーセントで)計算する。
%酸化防止能力=[(Δ水の光学密度−Δサンプルの光学密度)/Δ水の光学密度]×100
式中、
Δ水の光学密度=光学密度(色原体+基体+水)−光学密度(色原体+水)
Δサンプルの光学密度=光学密度サンプル(色原体+基体+試薬)−光学密度サンプル(色原体+試薬)
【0020】
ここで説明されるパーソナルケア製品と組み合わせて用いられる酸化防止剤は、3分間及び30分間の両方において高い酸化防止能力を有することが好ましい。こうした酸化防止能力の組み合わせは、酸化防止剤が使用直後に強い酸化防止性をもち、強い酸化防止性が持続して、少なくとも約30分間にわたってその酸化防止活性を維持することができることを意味する。30分間という時間はまた、反応速度がゆっくりで、3分間では弱い酸化防止性を呈するが、長時間にわたってフリーラジカルのスカンベンジングを与えることができる酸化防止剤を検出するのに重要である。これは、典型的には、酸化防止剤が、長時間にわたって使用者に皮膚の健康上の利益を与えることができるという点で望ましい。
酸化防止剤は、典型的には、酸化性物質と反応して、より安定な(危険性の低い)最終生成物を生成する。ビタミンC及びビタミンEのような慣習的な皮膚用酸化防止剤は、ラジカルと反応して、それら自体がフリーラジカル(アスコルビン酸フリーラジカル及びトコフェロールフリーラジカル)を生成することになる。1つ又はそれ以上の植物性抽出物からの酸化防止剤は、それらが、不安定な最終生成物の生成の機会を減らす酸化防止化合物の混合物を含有するので、優れた皮膚の利益を与える。
【0021】
ここで説明されるパーソナルケア製品と組み合わせて用いるのに適した酸化防止剤は、前述のように3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有する酸化防止剤を含む。特に、以下の酸化防止剤、すなわち、アップルグリーンティー、アーキンスペシャル、アルニカスペシャル、アボカドGW、ブラックカラントB、ブラックカラントグリーンティー、ブルーベリーフルーツ、セイヨウバラ抽出物、カメリアシネンシス、カナディアンウィロウハーブ、人参根、カミラオレイフェラ抽出物、コモンタイム、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、フェンネルフルーツ、ギンコバイローバ、グリシンマックス(大豆種子)、ヒドラスチス、グレープフルーツ、グレープシード抽出物及びそれらの構成成分(すなわちプロアントシアニジン)、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、エピガロカテキン没食子酸塩、エピカテキン没食子酸塩を含むグリーンティーのカテキン成分、グリーンティー抽出物、グリーンティーHS、ライムブラッサム、オレンジグリーンティー、フィテックセルアルニカ、ローズマリープラント、シーパセリ、シークレットD’オレンジ、セントジョーンズワートW/S、ストロベリーフルーツ、トマト根、トルコオレガノ、小麦種子、ホワイトミスルトー、ホワイトティー50%、ノコギリソウ、ユッカ70、ユッカ抽出粉末(50%)、及びこれらの組み合わせは、3分間で少なくとも約25%の酸化防止活性を有し、本発明に従って用いるのに適していることが見出されている。
【0022】
皮膚の表面上の酸化を減少させるためにここで説明されるパーソナルケア製品と組み合わせて用いるのに適した酸化防止剤は、前述のように30分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有する酸化防止剤を含む。特に、以下の酸化防止剤、すなわち、アップルグリーンティー、カナディアンウィロウハーブ、カミラオレイフェラ抽出物、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、ギンコバイローバ、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、ナブウィロウバーク抽出物、オレンジグリーンティー、ホワイトティー50%、ユッカ70及びこれらの組み合わせは、3分間で少なくとも約25%の酸化防止活性を有し、本発明に従って用いるのに適していることが見出されている。
【0023】
例えば、乾燥拭取り材基体又はおむつのような吸収性製品に存在するときには、酸化により生じる皮膚の損傷を低減させる酸化防止剤は、(処理された基体又は製品の重量の)約0.01%から(処理された基体又は製品の重量の)約50%、好ましくは(処理された基体の重量の)約0.01%から(処理された基体の重量の)約10%の量で存在する。湿潤拭取り材の液体組成物の一部として存在するときには、酸化防止剤は、(液体組成物の総重量の)約0.01%から(液体組成物の総重量の)約50%、より好ましくは(液体組成物の総重量の)約0.01%から(液体組成物の総重量の)約10%の量で存在する。
【0024】
本発明の別の実施形態においては、ここで説明されるパーソナルケア製品は、3分間及び30分間の両方において高い酸化防止能力を有する単一の酸化防止剤を含有することができる。この実施形態においては、酸化防止剤は、酸化により生じる皮膚の損傷、及びそれにより生じる長期間にわたる損傷を低減するのに非常に有効である。傷害からの酸化性損傷の大部分は数秒間のうちに発生するので、可能性のある酸化防止剤は、ASTにおいて実質的に30分間もたない3分間のものでも大いに価値がある。長時間にわたって高い酸化防止能力を有する酸化防止剤は、皮膚の表面から身体排出物を取り除くのに典型的に用いられる湿潤拭取り材組成物に特に有用である。この種の製品は、通常は、例えば乳児の皮膚の同一領域に毎日何度も用いられる。組成物中に含まれた界面活性剤が皮膚に繰り返し接触することにより、皮膚の発赤、刺激につながる皮膚の損傷が生じることがある。少なくとも約30分間にわたって高い酸化防止能力を有する酸化防止剤を導入することにより、皮膚の損傷を最小にすることができ、結果として、皮膚の健康が改善される。
【0025】
この実施形態においては、酸化防止剤は、所望の利益を与えるために、3分間で少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約75%の酸化防止能力と、30分間で少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約75%の酸化防止能力を有する。これらの要件によれば、以下の酸化防止剤、すなわち、アップルグリーンティー、カナディアンウィロウハーブ、カミラオレイフェラ抽出物、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、ギンコバイローバ、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、オレンジグリーンティー、ホワイトティー50%、及びこれらの組み合わせが適切であることが分かっている。
【0026】
乾燥拭取り材基体又は吸収性製品に存在するときには、酸化により生じる皮膚の損傷を低減させるために少なくとも約30分間にわたって高い酸化防止能力を有する酸化防止剤は、(処理された基体又は製品の重量の)約0.01%から(処理された基体又は製品の重量の)約50%、好ましくは(処理された基体の重量の)約0.01%から(処理された基体の重量の)約10%の量で存在する。湿潤拭取り材の液体組成物の一部として存在するときには、酸化防止剤は、(液体組成物の総重量の)約0.01%から(液体組成物の総重量の)約50%、より好ましくは(液体組成物の総重量の)約0.01%から(液体組成物の総重量の)約10%の量で存在する。
【0027】
拭取り材基体と組み合わせて用いるのに適した、ここで説明された植物のような酸化防止剤を含有する液体組成物は、溶液、懸濁液又はエマルジョンとすることができる。多くの酸化防止剤は、実質的に水溶性であり、又は当業者には公知の技術を用いて水に容易に溶けるようにして、酸化防止剤を含有する溶液を与えることができる。実質的に水溶性ではない又は容易に溶けるようにされた、ここで説明される幾つかの酸化防止剤は、当業者には公知の技術を用いて懸濁させ、又は乳化することができる。適切なエマルジョンは、約7より大きいHLBを有する適切な乳化剤を用いて調製された水中油型エマルジョンを含むか、又は約7より小さいHLBを有する適切な乳化剤を用いて調製された油中水型エマルジョンとすることができる。加工中及び/又は製品陳列中の時期尚早な酸化から水溶性及び/又は親水性酸化防止剤を十分に保護するために、通常は、油中水型エマルジョンが特に有用である。水相の周りの乳化層は、酸素が水相に入るのを防止することができる。
【0028】
或いは又はそれに加えて、酸化防止剤は、加工及び製品貯蔵中の時期尚早な酸化を防止するために、封入することができる。持続的な放出、トリガされた放出、標的化された放出又はこれらの放出機構の組み合わせを含む、当該技術分野では公知の多くの封入技術を用いることができる。当該技術分野では公知の、本発明に従って用いるのに適した他の放出機構は、摩擦/圧力放出、pHに関連した放出、水による放出、水の蒸発による放出等を含む。封入された酸化防止剤は、湿潤及び乾燥拭取り材製品の両方から送達される。ここで説明される酸化防止剤と組み合わせて用いるのに適した適切なマイクロ封入材料は、Salvona,LLC(ニュージャージー州デートン所在)から入手可能なものを含む。
さらに、ここで説明された酸化防止剤を送達し、かつ湿潤及び乾燥拭取り材製品の両方における時期尚早な酸化から酸化防止剤を保護するために、リポソーム及び/又はナノソームを用いることができる。ここで用いられるリポソーム及びナノソームという用語は、中心となる酸化防止材料を保護し、送達するために、脂質二重層膜からなる壁を有する閉鎖された小胞を含むように意図されている。
【0029】
湿潤又は乾燥拭取り材製品から酸化防止剤を送達し、これらの成分を時期尚早な酸化から保護するための別の方法は、Advance Polymer Systems(カリフォルニア州レッドウッドシティ所在)から入手可能なもののような、ミクロスフェア、マイクロスポンジ、及びポリトラップといったポリマー閉じ込めシステムを用いることを含む。酸化防止剤は、ポリマーマトリックスの間隙スペースの中に捕捉し又は吸収させて、それにより酸化防止剤が劣化し及び/又は時期尚早に酸化することから保護することができる。
乾燥拭取り材基体から酸化防止剤を送達するのに特に有用なのは、使用の際に消費者によって皮膚に移される半固体又は固体組成物である。これらの組成物は、本質的に疎水性又は親水性のものとすることができる。疎水性組成物は、室温では本質的に半固体又は固体であり、約35℃より高い融点を有し、約5から約95重量パーセントの皮膚軟化薬と、アルファオレフィンポリマー、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、脂肪アルコール、ワックス、もしくは35℃又はそれより高い融点をもつ固体エステルといった約5から約95重量パーセントの凝固剤と、シリカ、エチレン酢酸ビニルコポリマー、又は有機クレイといった約1から約50重量パーセントの粘度増加剤、及び約0.1から約15重量パーセントの酸化防止剤を含む。
【0030】
親水性組成物は、室温では半固体又は固体であり、約35℃より高い融点を有し、水、プロピレングリコール、ブチレングリコール、低分子量(約720より低い)ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールグリセリン、シリコングリコール、メチルプロパンジオール、又はペンチレングリコールといった約30から約90重量パーセントの親水性溶媒/皮膚軟化薬と、約10から約50重量パーセントの高分子量(約750より高い)ポリエチレングリコールと、鎖中に約14から約30の炭素を有する約5から約40重量パーセントの脂肪アルコールと、随意的にはクレイ、グリセリルポリアクリレート、又はグリセリルポリメタクリレートといった約1から約15重量パーセントの粘度増加剤と、約0.1から約15重量パーセントの酸化防止剤とを含む。
【0031】
乾燥拭取り材組成物はまた、約35℃より高い融点をもつ容易に乳化可能な固体組成物とすることができ、前述の約5から約95重量パーセントの疎水性又は親水性皮膚軟化薬と、前述の約5から約95重量パーセントの適切な凝固剤と、約5から約25重量パーセントの適切な乳化剤と、約1から約15重量パーセントの酸化防止剤とを含む。適切な乳化剤は、陰イオン性、陽イオン性、両性、両性イオン性、又は非イオン性及びこれらの組み合わせとすることができる。
消費者への魅力を増強するために、上述の組成物に付加的な成分を追加することができる。適切な付加的な成分は、例えば、抗座瘡剤、消泡剤、抗菌剤、抗真菌剤、防腐剤、加工及び貯蔵中の先行的酸化による酸化を防止して、ここで説明される酸化防止剤の酸化防止性を保つ酸化防止剤、収斂剤、着色剤、脱臭剤、フィルムフォーマ、芳香剤、保湿剤、皮膚保護薬、日焼け止め剤、及び溶媒を含む。
【0032】
特定の理論に縛られるものではないが、酸化により生じる皮膚の損傷量を低減させるためのここで説明される酸化防止剤は、2つの方法のうち1つにより又は両方の組み合わせによりこれを達成するように見える。最初に、ここで説明されるパーソナルケア製品に入れられた酸化防止剤は、皮膚の表面の中に又は表面上に存在するときに、実際には、皮膚の損傷につながる事象を直接的に又は間接的に起こしうる反応性の高い酸素種の生成量を減らすことができる。例えば、湿潤拭取り材組成物においては、酸化防止剤は、皮膚の炎症を招きうる湿潤拭取り材組成物中に存在する界面活性剤又は他の成分によって起こる酸化により生じる経路を減少させることができる。
或いは又はそれに加えて、ここで説明される酸化防止剤は、実際には、皮膚の表面上で生成される反応性の高い酸化性種と反応する基体として働くことによって、皮膚の表面上の酸化量を減少させることができる、すなわち、酸化防止剤は、酸化性種と反応して皮膚分子との直接的相互作用を最小にする反応性基体を与えることができる。この皮膚との反応の最小化は、酸化による損傷を少なくし、皮膚の健康を改善することができる。
本発明は、単に説明することを目的とした、本発明の範囲又は本発明を実施する方法を制限するものとみなされない以下の実施例によって説明される。
【実施例1】
【0033】
この実施例においては、AST酸化防止剤状態試験によって求められる、3分間及び30分間における酸化防止能力を求めるために、植物性抽出物その他の化合物を試験した。
試験される化合物の各々、化合物を購入した会社、その会社の所在地、各化合物のロット番号及びカタログ番号(入手可能な場合)、並びに3分間及び30分間における全酸化防止能力を、表1に記載する。

















【0034】
表1





【0035】
AST酸化防止剤状態試験
以下のように上記の化合物(試験化合物)の各々を試験して、3分間及び30分間におけるその酸化防止能力を求めた。
ステップ1: 3分間及び30分間における表1の試験薬剤の酸化防止能力を測定するために、Randox Laboratories,Ltd.(英国)からのTotal Antioxidant Status Kitを入手した。
ステップ2: 試験薬剤を、液体形態であれば、脱イオン水で1%(v/v)溶液に希釈した。試験薬剤が固体形態であれば、脱イオン水で1%(w/v)溶液に希釈した。
ステップ3: Antioxidant Status Kitから、色原体2のバイアルに10ミリリットルのpH7.4リン酸緩衝生理食塩水を加えることによって、使用のための色原体試薬を調製した。
ステップ4: 透明なウェルプレート(NUNC IMMUNOクリア96ウェルプレート、イリノイ州シカゴ所在のVWR Scientific Products)の空のウェルに、ステップ2で調製した5マイクロリットルの1%試験溶液を入れた。5マイクロリットルの1%試験薬剤の代わりに5マイクロリットルの脱イオン水を入れた対照ウェルも用意した。等しい数の対照ウェルと共に、各試験薬剤を3回(n=3)試験した。
ステップ5: 5マイクロリットルの試験薬剤(又は水)の入っている透明なウェルプレートの各ウェルに、上のステップ3で調製された250マイクロリットルの色原体試薬を加えた。
【0036】
ステップ6: 各ウェルの光学濃度測定を、SPECTRAmax PLUS384 Microplate Reader(カリフォルニア州サニーベール所在のMolecular Devices)を用いて、プレートのブランキングなしで600ナノメートルで行った。
ステップ7: Total Antioxidant Status Kitに与えられた基体を、1ミリリットルの基体を1.5ミリリットルのpH7.4リン酸緩衝液で希釈することによって、使用のために調製した。
ステップ8: 1%試験薬剤(又は水)+色原体試薬についての光学濃度読み取りを行った後に、ステップ7で調製した50マイクロリットルの基体を各サンプルウェルに加える。
ステップ9: 3分後に(又は30分間の酸化防止能力が試験される場合には30分後に)、プレートのブランクなしで600ナノメートルにおいてウェルプレートのサンプルウェルを読み取る。
【0037】
ステップ10: 各試験化合物の酸化防止能力を以下のようにして計算した。
%酸化防止能力=[(Δ水の光学密度−Δサンプルの光学密度)/Δ水の光学密度]×100
式中、
Δ水の光学密度=光学密度(色原体+基体+水)−光学密度(色原体+水)
Δサンプルの光学密度=光学密度サンプル(色原体+基体+試薬)−光学密度サンプル(色原体+試薬)
結果として得られる3分間及び30分間における試験化合物の酸化防止能力を、以下の表1に記載する。
【実施例2】
【0038】
この実施例においては、実施例1において求められた、3分間及び30分間において高い酸化防止能力を呈する2つの植物性抽出物を、市販の湿潤拭取り材溶液のマイルドネスを改善するそれらの能力について評価した。特に、組織の下にある培地(インターロイキン−1アルファ(ここではIL−1アルファ))中の炎症メディエータレベルの計測によって求められる、植物性抽出物の、EPIDERM皮膚培養物の皮膚刺激レベルを低下させる能力を研究した。
ヒト表皮に似ている漸進的に分化したケラチノサイトの多数の層を有する、空気との境界となる角化したヒト皮膚培養物であるEPIDERM皮膚培養物(EPIDERM EPI−200、MatTek社、マサチューセッツ州アシュランド所在)を、インビトロ皮膚刺激モデルとして用いた。
表された湿潤拭取り材溶液中に0.5%(w/v)グリーンティー抽出物(ニュージャージー州Totowa、Dragoco)が含ませられたサンプルを作成することによって、第1試験サンプルを調製した。表された湿潤拭取り材溶液中に0.5%(w/v)グレープシード抽出物(ニュージャージー州Totowa、Dragoco)が含ませられたサンプルを作成することによって、第2試験サンプルを調製した。EPIDERM皮膚培養物(培養物インサートの直径は0.9センチメートルであった)がウェルに入れられ、各ウェルには1ミリリットルの培地(EPI−100 Asy/Assay培地、MatTek社、マサチューセッツ州アッシュランド)が入っている、6つのウェルプレートにおいて実験を行った。EPIDERM皮膚培養物を、37℃の5%二酸化炭素インキュベータ中で60分間インキュベートした。インキュベートした後に、EPIDERM皮膚培養物の下にある培地を吸引して取り除き、1ミリリットルの新鮮な予め暖めた培地と交換した。培養物の表面に培地が発見された場合には、Gilson Pipetman(登録商標)を用いて注意深く除去した。次いで、試験サンプル(又は脱イオン水の対照)の15マイクロリットルのアリコートを、EPIDERM皮膚培養物の表面に適用し、皮膚培養物を5%二酸化炭素インキュベータ中で8時間にわたって37℃でインキュベートした。
【0039】
皮膚培養物の下にある培地中の刺激メディエータIL−1アルファの量を計測することによって、グリーンティー抽出物又はグレープシード抽出物を含む及び含まない溶液によって生じる皮膚の刺激を求めた。R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス所在)から入手可能なInterleukin−1 alpha Quantikine Kitを用いて、インターロイキン−1アルファを定量することができる。インターロイキン−1アルファ計測値を、処理剤の各々についてLog10に変換し、各処理剤についての平均を計算した。IL−1アルファの平均減少率を、以下のように計算した。
【0040】
IL−1アルファの平均減少%=100×[(湿潤拭取り材溶液)結果−(試験サンプル)結果/(湿潤拭取り材溶液)結果−(水)結果]
ここで、
(試験サンプル)結果=表された湿潤拭取り材溶液及び試験植物による処理からのIL−1アルファの計測された量
(湿潤拭取り材溶液)結果=表された湿潤拭取り材溶液による処理からのIL−1アルファの計測された量
(水)結果=脱イオン水による処理からのIL−1aの計測された量
【0041】
IL−アルファの平均減少率が高ければ、試験サンプルは、表された湿潤拭取り材溶液の皮膚の刺激を減少させ、溶液のマイルドネスを改善するのにより効果的となる。IL−1アルファの平均減少結果を分析して、域外値の結果を特定した。EPIDERM皮膚培養物は、培養物の差異に起因する変化性、処理剤の適用方法の変化その他の要因により、可変的なものとなる。統計分析技術を適用して、結果が他のデータセットから異常に逸脱したときを特定した。刺激値を、それらをガウスにするために最初にLog10に変換した。変換後に、高い又は低い域外値について値を解析した。域外値を特定するのに用いられる統計分析は、引用によりここに組み入れられる、「Statistical Methods in Research and Production」、Owen L.Davies他、Longman Group Limited出版、第4改訂版、1984年、p460に記載されている。IL−1アルファの減少を計測し、その結果を表2に示す。
【0042】
表2

【0043】
データは、表された湿潤拭取り材溶液中のグリーンティー抽出物又はグレープシード抽出物を含有することにより、平均IL−1アルファ皮膚刺激スコアが低下し、湿潤拭取り材溶液のマイルドネスが増加する。
上記に照らせば、本発明の幾つかの目的が達成されることが分かる。本発明の範囲から逸脱することなく、上記の製品及び方法に種々の変更を加えることができるので、上記の詳細な説明に含まれている全ての事象は、例示的なものであって制限する意味で解釈されないことを意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の健康を改善する拭取り材であって、
繊維性拭取り材基体と、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有することを特徴とする拭取り材。
【請求項2】
前記酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって求められた、酸化防止能力が3分間で少なくとも約25%であることを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、アップルグリーンティー、アーキンスペシャル、アルニカスペシャル、アボカドGW、ブラックカラントB、ブラックカラントグリーンティー、セイヨウバラ抽出物、カナディアンウィロウハーブ、カミラオレイフェラ抽出物、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、ヒドラスチス、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、グリーンティーHS、ライムブラッサム、オレンジグリーンティー、フィテックセルアルニカ、シーパセリ、シークレットD’オレンジ、セントジョーンズワートW/S、ホワイトミスルトー、ホワイトティー50%、ノコギリソウ、ユッカ70、ユッカ抽出粉末(50%)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、アップルグリーンティー、カナディアンウィロウハーブ、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、ライムブラッサム、オレンジグリーンティー、ホワイトティー50%、ユッカ70、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項5】
前記酸化防止剤が、3分間で少なくとも約50%の酸化防止能力を有することを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、3分間で少なくとも約75%の酸化防止能力を有することを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項7】
前記拭取り材は乾燥拭取り材であり、前記酸化防止剤は、(処理された基体の重量の)約0.01%から(処理された基体の重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項8】
前記拭取り材は湿潤拭取り材であり、液体組成物をさらに含み、前記酸化防止剤は、(前記液体組成物の総重量の)約0.01%から(前記液体組成物の総重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項9】
皮膚の健康を改善する拭取り材であって、
繊維性拭取り材基体と、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、30分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有することを特徴とする拭取り材。
【請求項10】
酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって求められた酸化防止能力が30分間で少なくとも約20%であることを特徴とする請求項9に記載の拭取り材。
【請求項11】
前記酸化防止剤が、アップルグリーンティー、カナディアンウィロウハーブ、カミラオレイフェラ抽出物、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、ギンコバイローバ、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、ナブウィロウバーク、オレンジグリーンティー、ホワイトティー50%、ユッカ70、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の拭取り材。
【請求項12】
前記酸化防止剤が、グレープシード抽出物、グリーンティー抽出物、ホワイトティー50%、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の拭取り材。
【請求項13】
前記酸化防止剤が、30分間で少なくとも約50%の酸化防止能力を有することを特徴とする請求項9に記載の拭取り材。
【請求項14】
前記酸化防止剤が、30分間で少なくとも約75%の酸化防止能力を有することを特徴とする請求項9に記載の拭取り材。
【請求項15】
前記拭取り材は乾燥拭取り材であり、前記酸化防止剤は、(処理された基体の重量の)約0.01%から(処理された基体の重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項9に記載の拭取り材。
【請求項16】
前記拭取り材は湿潤拭取り材であり、液体組成物をさらに含み、前記酸化防止剤は、(前記液体組成物の総重量の)約0.01%から(前記液体組成物の総重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の拭取り材。
【請求項17】
皮膚の健康を改善する拭取り材であって、
繊維性拭取り材基体と、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、3分間で少なくとも約75%の酸化防止能力、30分間で少なくとも約75%の酸化防止能力を有することを特徴とする拭取り材。
【請求項18】
前記酸化防止剤が、グレープシード抽出物、カナディアンウィロウハーブ、グリーンティー抽出物、ホワイトティー50%、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の拭取り材。
【請求項19】
前記拭取り材は乾燥拭取り材であり、前記酸化防止剤は、(処理された基体の重量の)約0.01%から(処理された基体の重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項17に記載の拭取り材。
【請求項20】
前記拭取り材は湿潤拭取り材であり、液体組成物をさらに含み、前記酸化防止剤は、(前記液体組成物の総重量の)約0.01%から(前記液体組成物の総重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項17に記載の拭取り材。
【請求項21】
皮膚の健康を改善する製品であって、
吸収性基体と、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有することを特徴とする製品。
【請求項22】
前記酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって求められた酸化防止能力が3分間で少なくとも約25%であることを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項23】
前記酸化防止剤が、アップルグリーンティー、アルニカスペシャル、アボカドGW、ブラックカラントB、ブラックカラントグリーンティー、セイヨウバラ抽出物、カナディアンウィロウハーブ、カミラオレイフェラ抽出物、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、ヒドラスチス、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、グリーンティーHS、ライムブラッサム、オレンジグリーンティー、シーパセリ、セントジョーンズワートW/S、ホワイトミスルトー、ホワイトティー50%、ノコギリソウ、ユッカ70、ユッカ抽出粉末(50%)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項24】
前記酸化防止剤が、アップルグリーンティー、カナディアンウィロウハーブ、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、ライムブラッサム、オレンジグリーンティー、ホワイトティー50%、ユッカ70、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項25】
前記酸化防止剤は、(処理された製品の重量の)約0.01%から(処理された製品の重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項26】
前記製品は、おむつ、トレーニングパンツ、成人失禁用衣類、婦人用ナプキン、ペーパータオル、タンポン、陰唇間パッド、化粧紙、創傷管理製品、及びトイレットペーパからなる群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項27】
皮膚の健康を改善する製品であって、
吸収性基体と、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、30分間で少なくとも約20%の酸化防止能力を有することを特徴とする製品。
【請求項28】
前記酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤は、AST酸化防止剤状態試験によって求められた酸化防止能力が30分間で少なくとも約20%であることを特徴とする請求項27に記載の製品。
【請求項29】
前記酸化防止剤が、アップルグリーンティー、カナディアンウィロウハーブ、カミラオレイフェラ抽出物、クランベリーグリーンティー、エキナセア乾燥水性抽出物、ギンコバイローバ、グレープシード抽出物、グレープフルーツグリーンティー、グリーンティー、グリーンティー抽出物、ナブウィロウバーク、オレンジグリーンティー、ホワイトティー50%、ユッカ70、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の製品。
【請求項30】
前記酸化防止剤が、グレープシード抽出物、グリーンティー抽出物、ホワイトティー50%、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の製品。
【請求項31】
前記酸化防止剤は、(処理された製品の重量の)約0.01%から(処理された製品の重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項27に記載の製品。
【請求項32】
前記製品は、おむつ、トレーニングパンツ、成人失禁用衣類、婦人用ナプキン、ペーパータオル、タンポン、陰唇間パッド、化粧紙、創傷管理製品、及びトイレットペーパからなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の製品。
【請求項33】
皮膚の健康を改善する製品であって、
吸収性基体と、酸化によって生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、3分間で少なくとも約75%の酸化防止能力、30分間で少なくとも約75%の酸化防止能力を有することを特徴とする製品。
【請求項34】
酸化により生じる皮膚の損傷を制御して皮膚の健康を改善する方法であって、繊維性拭取り材基体を皮膚表面に接触させることを含み、前記繊維性拭取り材基体は、酸化により生じる皮膚の損傷を低減させるために酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有することを特徴とする方法。
【請求項35】
前記拭取り材は湿潤拭取り材であり、液体組成物をさらに含み、前記酸化防止剤は、(前記液体組成物の総重量の)約0.01%から(前記液体組成物の総重量の)約50%の量で存在することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
皮膚の健康を改善する湿潤拭取り材であって、
繊維性拭取り材基体、液体組成物、及び、酸化により生じる皮膚の損傷を低減させるための酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は、3分間で少なくとも約25%の酸化防止能力を有し、(液体組成物の総重量の)約0.01%から(液体組成物の総重量の)約50%の量で存在し、前記液体組成物は、溶液、懸濁液、及びエマルジョンからなる群から選択されることを特徴とする湿潤拭取り材。
【請求項37】
前記液体組成物が、水中油型エマルジョン、及び油中水型エマルジョンからなる群から選択されるエマルジョンであることを特徴とする請求項36に記載の湿潤拭取り材。
【請求項38】
前記酸化防止剤がカプセル封入されたことを特徴とする請求項36に記載の湿潤拭取り材。

【公表番号】特表2006−515573(P2006−515573A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553415(P2004−553415)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/025640
【国際公開番号】WO2004/045575
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】