説明

酸化防止剤組成物

【課題】簡便な方法で、飲食物への風味への影響をおよぼさず、カロチノイド色素の退色防止効果の高い酸化防止剤を提供すること。
【解決手段】ぶどう果汁を有効成分として含有してなる酸化防止剤、白ぶどう果汁を有効成分とする酸化防止剤、ぶどう果実から果皮および種子を除いた果肉部分から得られた果汁を有効成分とする酸化防止剤、ぶどう果汁を合成吸着剤と接触させ、吸着部を除去した非吸着部を有効成分とする酸化防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止剤に関する。さらに詳しくは、ぶどう果汁を有効成分として含有してなる酸化防止剤、ぶどう果汁を有効成分として含有させることによるカロチノイド色素の退色防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロチノイド色素は、赤色、橙色、黄色に着色するための人体に安全な天然色素として有用で、例えば飲食品、化粧品、保健・医薬品などの分野で利用され、特に飲食品の着色に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、カロチノイド色素は、酸素、熱など対して不安定で、経時的に色調の変化ならびに退色などを伴い、商品価値を著しく低下させるという欠点があった。
【0004】
これらの欠点を解決する目的で、カロチノイド色素、またはカロチノイド色素を添加した飲食品などの退色防止に関しては幾つかの提案がなされている。例えば、ルチン、ケルセチン等を添加することからなるパプリカ色素の退色防止方法(特許文献1)、モリンを添加することからなるパプリカ色素の退色防止方法(特許文献2)、カフェー酸、フェルラ酸、クロロゲン酸などを添加することによるパプリカ色素の退色防止方法(特許文献3)、ローズマリー、セージなどのヘキサン、エタノール、水などの溶媒抽出物を添加することからなるパプリカ色素の退色防止方法(特許文献4)、茶類の溶媒抽出物を添加することからなるカロチノイド系色素の退色防止方法(特許文献5)、γ−オリザノールを添加することからなるカロチノイド系色素を含有する食品の退色防止方法(特許文献6)、フラバノールとコウジ酸を作用させることによるアスタキサンチン含有物の色安定化方法(特許文献7)、イソクロロゲン酸又はその塩を添加することからなるカロチノイド系色素などの退色防止方法(特許文献8)、アスコルビン酸とプロアントシアニジンを併用することによるカロチノイド色素で着色されたアミノ酸含有飲料の退色防止方法(特許文献9)などの多数の提案がなされている。しかしながら、上記の方法は、退色防止効果および取り扱いやすさ、飲食物への風味への影響などの点において、十分満足のいくものとはいいがたい。
【0005】
一方、ぶどう、特にぶどうの果実にはさまざまな機能性があることが知られており、それらの機能性は酸化防止効果の高いポリフェノール物質によることが知られている。ぶどうのポリフェノール物質としては果皮に含まれている色素成分であるアントシアニン類、種子に含まれているカテキン類およびプロアントシアニジン類、主に種子に含まれているスチルベン系ポリフェノール物質であるレスベラトロール類などが知られている(非特許文献1)。
しかしながら、ぶどうの果汁のみの部分については、カロチノイド色素の退色防止作用などの酸化防止作用があるという知見は見あたらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−112561号公報
【特許文献2】特開昭54−52740号公報
【特許文献3】特開昭57−117566号公報
【特許文献4】特開昭57−102955号公報
【特許文献5】特開昭62−126953号公報
【特許文献6】特開平4−166061号公報
【特許文献7】特開平8−332052号公報
【特許文献8】特開2000−342219号公報
【特許文献9】WO2005/104873号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】果汁協会報(488),18−30,(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、簡便な方法で、飲食物への風味への影響をおよぼさず、カロチノイド色素の退色防止効果の高い酸化防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等はカロチノイド系色素の退色防止方法について鋭意研究を行ってきたところ、驚くべきことに、カロチノイド色素により着色した飲料に、白ぶどう果汁を少量添加するだけでカロチノイド色素の退色が抑えられることを見出した。そして、この退色防止効果は白ぶどうのみならず、果皮や種子を除いてから搾汁したぶどうであれば、白、赤、黒のいずれのぶどうの果汁部分にも同様に見出されることが判明した。さらに、この退色防止効果は、ぶどう果汁の合成吸着剤処理によっては吸着されず、非吸着部分に含まれ、むしろ非吸着部分の方が元の果汁よりも効果が高いことを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
かくして本発明は、ぶどう果汁を有効成分として含有してなる酸化防止剤を提供するものである。また、本発明は、ぶどう果汁が白ぶどう果汁であることを特徴とする前記の酸化防止剤を提供するものである。さらに、本発明は、ぶどう果汁が、ぶどう果実から果皮および種子を除いた果肉部分から得られた果汁であることを特徴とする前記の酸化防止剤を提供するものである。さらにまた、本発明は、ぶどう果汁が、ぶどう果汁を合成吸着剤と接触させ、吸着部を除去した非吸着部であることを特徴とする、前記の酸化防止剤を提供するものである。また、さらに、本発明は前記のいずれかの酸化防止剤を有効成分とする、カロチノイド色素の退色防止剤を提供するものである。さらにまた、本発明は前記のいずれかに記載の酸化防止剤を添加することを特徴とする、カロチノイド色素の退色防止方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の酸化防止剤であるぶどう果汁の添加量と、リコペン退色防止効果の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用することのできるぶどう果汁の原料となるぶどうはいずれの品種であっても使用することができ、例えば、白ぶどう(例えば、マスカット、ネオマスカット、マスカット・オブ・アレキサンドリア、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、ピッテロビアンコなど)、赤ぶどう(例えば、デラウエア、ロザリオロッソ、甲斐路、甲州、紅金沢、紅やまびこなど)、黒ぶどう(例えば、巨峰、ピオーネ、ベリーA、スチューベン、キャンベルなど)などのそれぞれの品種を例示することができるが、ぶどうの果汁であればこれらの品種にかかわらず使用することができる。
【0013】
本発明で使用することのできるぶどう果汁は、市場で入手できる通常のぶどう果汁またはその濃縮物を使用することができる。これらの果汁は、通常、果実を丸ごと、すなわち果皮と種子を含めて搾汁したものであるが、このような搾汁方法は一般的に行われている方法であり、入手も容易である。この場合、果皮に含まれている色素成分であるアントシアニン類、種子に含まれているカテキン類およびプロアントシアニジン類、主に種子に含まれているレスベラトロール類などの既知の抗酸化成分も果汁中に含まれるが、本発明の効果を妨げるものではない。しかしながら、これらの既知の抗酸化成分は着色や苦渋味の原因となるため、なるべく低減されるか、あまり含まれていないことが好ましい。なお、市販のぶどう果汁には酸化防止剤として亜硫酸ナトリウムが含まれているものも存在するが、亜硫酸ナトリウムは添加されていないものが好ましい。
【0014】
本発明で使用するぶどう果汁としては、前述の通り白ぶどう、赤ぶどう、黒ぶどうのいずれでも使用することができるが、プロアントシアニジンの渋味やカテキンの苦渋味による最終製品への味への影響、アントシアニン類やプロアントシアニジン類による最終製品の不必要な着色の影響を避けるためには特に白ぶどう果汁を用いることが好ましい。
【0015】
また、果汁を搾汁する際に、果皮と種子を除いてから搾汁することにより果皮に含まれている色素成分であるアントシアニン類、種子に含まれているカテキン類やプロアントシアニジン類、主に種子に含まれているレスベラトロール類などの抗酸化性はあるが着色や苦渋味の原因となる成分の果汁への混入を避けることができる。
【0016】
また、ぶどう果汁を合成吸着剤と接触させ、吸着部を除去し非吸着部を得ることにより果皮に含まれている色素成分であるアントシアニン類、種子に含まれているカテキン類、種子に含まれているプロアントシアニジン類、主に種子に含まれているレスベラトロール類などを除去した果汁を得ることができる。使用することのできる合成吸着剤としては、例えば、スチレン・ジビニルベンゼン系多孔性樹脂吸着剤や、メタクリル酸エステル系合成樹脂吸着剤を挙げることができ、このような合成吸着剤は市場で容易に入手することができる。前者の例としては、例えば、ダイヤイオンHP10、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP30、ダイヤイオンHP40、ダイヤイオンSP206、ダイヤイオンSP207(以上、三菱化学社製);アンバーライトXAD−2、アンバーライトXAD−4(以上、Rohm & Haas社製);日立ゲル#3010、日立ゲル#3011、日立ゲル#3019(以上、日立化成社製)などを挙げることができる。また、後者の例としては、例えば、ダイヤイオンHP1MG、ダイヤイオンHP2MG(以上、三菱化学社製)、アンバーライトXAD−7、アンバーライトXAD−8(以上、Rohm & Haas社製)などを挙げることができる。
【0017】
このような合成吸着剤との接触処理は、バッチ式、カラムによる連続処理等のいかなる態様も採用することができるが、一般的には該合成吸着剤を充填したカラムによる連続処理が採用される。
【0018】
上記接触処理の条件は、ぶどう果汁の種類、濃度などに応じて適宜に選択することができるが、例えば、カラムによる連続処理の条件としては、合成樹吸着剤1容量に対して1〜50容量のぶどう果汁(ストレート果汁換算)を、液温10℃〜30℃、SV=1〜5程度の流速で通液する如き条件を例示することができる。本発明における酸化防止剤として特に有効な画分は、上記の如く合成吸着剤と接触させた後の非吸着部である。
【0019】
ぶどう果汁の上記の如くの画分にカロチノイド色素の退色防止作用、酸化防止作用があるという知見はこれまでになく、この現象が、アントシアニン類、プロアントシアニジン類、カテキン類、レスベラトロール類などの既知の抗酸化成分以外の未知の抗酸化成分の存在によるものであるか、あるいは、果汁中の成分による複合作用であるかは明かではない。しかしながら、このようなカロチノイド色素の退色防止作用、酸化防止作用は他の果汁では見られず、ぶどう果汁に特有のものである。
【0020】
上述のようにして得られた、ぶどう果汁は、このまま酸化防止剤として各種の用途に供試しうるが、通常は濃縮して使用される。濃縮は通常の方法で行われるが、例えば、約20℃〜約90℃程度の温度で大気圧ないし減圧条件下に水を留去することにより、Bx40°〜80°の濃縮果汁とすることができる。また、さらに、上述のようにして得られた本発明のぶどう果汁濃縮物は、このままの形で、粉末化した形態で広い分野において使用可能である。粉末化は通常、乳糖、デキストリン、アラビアガムなどの賦形剤を添加し、真空乾燥、噴霧乾燥などの乾燥手段を用いて行うことができる。また、濃縮または粉末化する際、所望により、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸、ビタミンC、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ルチン、ケルセチン、モリン、茶カテキン類、タンニン類、ローズマリー抽出物、セージ抽出物などの他の酸化防止剤を添加し、酸化防止剤製剤とすることもできる。
【0021】
このようにして得られたぶどう果汁濃縮物あるいはぶどう果汁粉末は、香料の劣化防止、特にシトラールの光や熱による劣化防止、色素の退色防止などの酸化防止剤として使用することができるが、特に、カロチノイド色素の退色防止、さらには、乳化し水溶性としたカロチノイド製剤を酸性飲料に添加した場合の退色防止において特に効果が大きい。本発明の酸化防止剤により退色防止効果があるカロチノイド色素はカロチノイド色素であれば特に限定はされないが、α−カロテン、β−カロテン、δ−カロテン、リコペン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、クロチン、ビキシン、β−アポカロテナール、アナトー色素、パプリカ色素、トマト色素、エビ色素、カニ色素、マリーゴールド色素、サフラン色素、ヘマトコッカス藻色素などを例示できる。
【0022】
本発明の酸化防止剤は、最終製品に直接添加しても良いが、色素製剤あるいは香料製剤中に含有させることで、色素製剤の色素の退色防止や香料製剤の香気劣化をも合わせて防止することができる。
【0023】
本発明の酸化防止剤を色素製剤あるいは香料製剤に添加する場合における添加量は、ぶどう果汁をストレート換算(Bx11°:日本農林規格)とした場合、色素製剤あるいは香料製剤中に1質量%〜500質量%、好ましくは5質量%〜500質量%、より好ましくは20質量%〜500質量%とすることができる(なお、含有量が100%を越えるのは、濃縮果汁が使用できるためである)。添加量が1質量%未満の場合、色素の退色防止効果や香料の劣化防止効果が十分には得られない。また、製剤中500質量%を越えて添加することは濃度の関係上困難である。
【0024】
また、カロチノイド色素あるいは香料を含有する最終製品に直接添加する場合における添加量は、ぶどう果汁をストレート換算とした場合、最終製品中に0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜15質量%、より好ましくは1質量%〜10質量%とすることができる。添加量が0.1質量%未満の場合、色素の退色防止効果や香料の劣化防止効果が十分には得られない。また、製剤中に20質量%を越えて添加した場合、最終製品にぶどう果汁由来の味が出てしまい好ましくない。
【0025】
本発明の酸化防止剤を添加することのできる最終製品としては、清涼飲料、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料、発酵乳飲料などの飲料類が好ましいが、その他、例えば、ドロップ、キャンディー、チョコレート、アイスクリーム、シャーベット、ゼリー、飴、畜肉加工食品、焼き肉のたれ、漬物などのごとき飲食品、嗜好品類;餌飼料類;例えば、錠剤、液状経口薬、湿布薬などのごとき保健・医薬品類;例えば、石鹸、洗剤、シャンプーのごとき香粧品類などを例示することができ、これらの分野においてカロチノイド色素の退色防止、香料の劣化防止などの酸化防止剤として有用である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0026】
参考例1 リコペン色素製剤の調整
水相部としてグリセリン800gにデカグリセリンモノオレエート(HLB12)100gおよび精製水30gを加え、80℃〜90℃で15分間加熱殺菌後50℃に冷却した。別に、ソルビタンモノオレエート(HLB4.3)20gにリコペン結晶(長谷川香料社製)50gを懸濁して油相部とし、これを先に調整した水相部に加え、TK−デスパーサー(プライミクス(株)社製)を用いて5000rpm、5分間混合した。引き続き、ウルトラアペックスミル(寿工業社製)を用いて下記の条件において微細化処理を45回繰り返しリコペン結晶を粉砕分散した液状の色素製剤を得た(参考品1、リコペン含量5質量%)。得られた色素製剤に含まれるリコペンの平均粒径は202nm、粒径分布はシャープであり、色調は赤色、分散状態は良好であった。
<粉砕条件>
ミル :ウルトラアペックスミル
周速 :10m/s
ビーズ充填率 :85%
ジルコニアビーズ粒径:φ0.2mm
<分析条件>
平均粒径 :動的光散乱粒度分布計ELS−800(大塚電子)
粒径の分布状態 :光学顕微鏡観察
色調 :目視
分散状態 :光学顕微鏡観察
【0027】
参考例2
市販品であるグレープ透明濃縮果汁Bx56°(東京フードテクノ社製マスカット果汁、1/5濃縮果汁、亜硫酸ナトリウム無添加)を本発明品1とした。
【0028】
実施例1 ぶどう果汁を退色防止剤として添加した飲料の調整
異性化糖Bx75°225g、クエン酸:0.9g、クエン酸ナトリウム:0.7g(水にて1000mlとしたときにブリックス17゜(屈折糖度計による値)、pH3.9の飲料基材となる)に参考品1を0.02gおよび本発明品1を5.9g(ストレート果汁換算で飲料中3%)添加し、水にて全量を1000mlとした後、95℃、30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、350mlの耐熱性ペットボトルに満量充填後、25℃まで冷却し飲料試料を得た(本発明品2)。
【0029】
比較例1
実施例1において、本発明品1を添加しない以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(比較品1)。
【0030】
比較例2
実施例1において、本発明品1に替え、ビタミンC0.2gを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(比較品2)。
【0031】
実施例2 ぶどう果汁のリコペン退色防止効果の確認
本発明品1および比較品1〜比較品2のそれぞれの飲料を空気と接触した条件とするため、クリーンベンチ内で開封し、飲料のうち1/3量を抜き取り除去し、容器内の上部1/3を空気に置換した後、再度密封し、光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)72時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
L値は明度を表し100が白色、0が黒色を表す。a値は+の値が大きいと赤色が強く、b値は+の値が大きいと黄色が強いことを表す。また、ΔEは2つの色の間の差を表すもので、L、a、bのそれぞれの値の差の二乗を加算した合計値の平方根で算出する。ΔEが3未満程度では肉眼的にほとんど差が認められず、ΔEが5〜10程度ではやや差が認められる程度であり、ΔEが20程度では明かな差が認められる。
【0034】
表1に示したとおり、酸化防止剤を全く添加していない比較品1は虐待前後のΔEが40であり退色が激しく、虐待後のL値が86.5となってしまいほぼ透明な状態となってしまったが、本発明のぶどう果汁を添加した本発明品2の虐待による色調変化はΔEが4.2であり僅かに退色を認める程度で、良好な色調を維持しており、ぶどう果汁(マスカット果汁)に退色防止効果があることが確認された。また、酸化防止剤として飲料には極めて一般的に使用されているビタミンCを添加した比較品2は色素の退色は抑えられたが、b値の低下(−0.9)に対しa値が相対的に大きく低下し(−3.6)、色調がやや褐色となり飲料の外観に変化が生じてしまった。
【0035】
比較例3
実施例1において、本発明品1(5.9g)に替えて、バレンシア透明果汁Bx66°(東京フードテクノ社製バレンシアオレンジ果汁、1/5濃縮果汁)を5.0g(ストレート果汁換算で飲料中3%)使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(比較品3)。
【0036】
比較例4
実施例1において、グレープ透明果汁Bx56°(5.9g)に替え、レモン透明果汁Bx45.3°(東京フードテクノ社製レモン果汁、1/5濃縮果汁)を5.3g(ストレート果汁換算で飲料中3%)使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(比較品4)。
【0037】
実施例3 ぶどう果汁と他の果汁のリコペン退色防止効果の比較
本発明品2、比較品1、比較品2、比較品3および比較品4を、実施例2と同様の方法で光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)72時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示したとおり、実施例1と同様、酸化防止剤を全く添加していない比較品1は退色が激しく、ほぼ透明な状態となってしまったが、ぶどう果汁を添加した本発明品2の虐待による色調変化は僅かで、良好な色調を維持しており、ぶどう果汁(マスカット果汁)に退色防止効果があることが確認された。また、酸化防止剤として飲料には極めて一般的に使用されているビタミンCを添加した比較品2は色素の退色は抑えられたが、グレープ果汁と比べやや効果が少なかった。それに対し、バレンシアオレンジ果汁(比較品3)やレモン果汁(比較品4)には全く退色防止効果は見られなかった。
【0040】
実施例4
市販の黒ぶどう果実(キャンベル)を水洗後、果皮と種子を取り除き、圧搾し、85℃、10分間殺菌し、25℃冷却した後、珪藻土濾過を行い、Bxを11°に調整し、ほぼ無色で透明な黒ぶどう果汁を得た。実施例1において本発明品1(5.9g)に替えてこの黒ぶどう果汁30gを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(本発明品3)。
【0041】
実施例5
市販の黒ぶどう果実(ピオーネ)を水洗後、果皮と種子を取り除き、圧搾し、85℃、10分間殺菌し、25℃冷却した後、珪藻土濾過を行い、Bxを11°に調整し、ほぼ無色で透明な黒ぶどう果汁を得た。実施例1において本発明品1(5.9g)に替えてこの黒ぶどう果汁30gを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(本発明品4)。
【0042】
実施例6
市販の白ブドウ果実(ロザリオビアンコ)を水洗後、果皮と種子を取り除き、圧搾し、85℃、10分間殺菌し、25℃冷却した後、珪藻土濾過を行い、Bxを11°に調整し、ほぼ無色で透明な白ぶどう果汁を得た。実施例1において本発明品1(5.9g)に替えてこの白ぶどう果汁30gを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(本発明品5)。
【0043】
実施例7
市販の白ブドウ果実(ナイアガラ)を水洗後、果皮と種子を取り除き、圧搾し、85℃、10分間殺菌し、25℃冷却した後、珪藻土濾過を行い、Bxを11°に調整し、ほぼ無色で透明な白ぶどう果汁を得た。実施例1において本発明品1(5.9g)に替えてこの白ぶどう果汁30gを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(本発明品6)。
【0044】
実施例8
市販の赤ブドウ果実(甲斐路)を水洗後、果皮と種子を取り除き、圧搾し、85℃、10分間殺菌し、25℃冷却した後、珪藻土濾過を行い、Bxを11°に調整し、ほぼ無色で透明な白ぶどう果汁を得た。実施例1において本発明品1(5.9g)に替えてこの赤ぶどう果汁30gを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(本発明品7)。
【0045】
実施例9 各種ぶどう果汁のリコペン退色防止効果の比較
本発明品2〜7を実施例2と同様の方法で光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)72時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示したとおり、市販の各種ぶどうの果皮と種子を除いた果汁を添加したリコペン着色飲料の虐待前後のΔEは、いずれも3〜7程度(やや退色が認められる程度)であり、いずれの果汁にも本発明品1と同様のリコペンの退色防止効果が確認された。
【0048】
実施例10 ぶどう果汁の分画
本発明品1(2000g)に水2000gを加え、SP−207(三菱化学社製のスチレンジビニルベンゼン系合成吸着剤)2000mlを充填したカラムに室温下でSV=2にて通液し、カラム中の果汁を水4000mlにより押し出し通過液を得、ロータリーエバポレータにて減圧下に濃縮し、Bx55°の濃縮物2000gを得た(本発明品8)。
次いでSP−207に吸着した成分を、10(W/W)%エタノール水溶液4000g、30(W/W)%エタノール水溶液4000g、95(W/W)%エタノール水溶液4000gを順次、SV=2で通液し、それぞれの脱着液を得た。得られた脱着液はロータリーエバポレータにて減圧下に濃縮し(溶媒を完全に除去しないよう流動性のある状態で終了させる。不溶解物がある場合は95%エタノールまたは水を加えて溶解する。)、比較品5(10%エタノール脱着部44.0g)、比較品6(30%エタノール脱着部45.2g)、比較品7(95%エタノール脱着部69.6g)を得た。
【0049】
実施例11 ぶどう果汁の各画分のリコペン退色防止効果の比較
実施例1における試料調製において、本発明品1(5.9g)に替えて、本発明品1を11.8g、本発明品8を11.8g、比較品5を0.26g、比較品6を0.27gまたは比較品7を0.41gのいずれかを使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い飲料試料を得た(それぞれの添加量は、グレープ果汁Bx56°からの収率換算で、ストレート果汁換算で6%となるようにした。それぞれ、本発明品9、本発明品10、比較品8、比較品9および比較品10とする)。それぞれの飲料を、実施例2と同様の方法で、光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)72時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示したとおり、本発明の合成吸着剤非吸着部に強いリコペン退色防止効果が認められ、吸着部分から脱着した画分は10%エタノール脱着部、30%エタノール脱着部、95%エタノール脱着部のいずれにもそれほど認められなかった。
【0052】
実施例12 各種抗酸化剤との比較
実施例1において、グレープ透明果汁Bx56°(5.9g)に替えて、各種抗酸化剤を、抗酸化機能性物質として飲料中に50ppmとなるように添加する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い表5に示す各抗酸化剤添加飲料試料を得た。それぞれの飲料を、実施例2と同様の方法で、光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)72時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表5に示す。
【0053】
【表5】

【0054】
表5に示したとおり、本発明のぶどう果汁が最も優れた退色防止効果を有していた。また、虐待後のΔEが白ぶどう果汁に近いものとしてレスベラトロール、松樹皮アントシアニジンに効果が認められるが、表5に示すとおりb値が上がっており、いずれも褐変していることが認められた。したがって、表5における比較では、白ぶどう果汁がリコペンの退色防止剤として最も優れているという結果であった。
【0055】
上記結果および実施例11の結果を合わせて考えると、本発明品のリコペンの退色防止効果が、アントシアニジン類、プロアントシアニジン類、カテキン類、リスベラトロール類などのポリフェノール性物質以外の作用によるものである可能性が高いことが示唆された。
【0056】
実施例13 ぶどう果汁の濃度とリコペン退色防止効果の確認
実施例1におけるぶどう果汁の添加量と退色防止効果の関係を調べた。実施例1において、本発明品1の添加量を5.9gに替えて、11.8gまたは17.7gとする以外は、実施例1と全く同様の操作を行い表6に示す飲料試料を得た。それぞれの飲料を実施例2と同様の方法で、光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)130時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表6に示す。また、表6を図示化したものを図1に示す。
【0057】
【表6】

【0058】
表6および図1に示したとおり、虐待時間を130時間に延長したところ、本発明品1の退色は、実施例2、実施例3、実施例9、実施例11および実施例12(虐待時間72時間)で示した結果よりも進んだ。しかしながら、ぶどう果汁添加量を増やした本発明品11および本発明品12では退色が抑えられており、ぶどう果汁の添加量の増加に伴い退色防止効果も大きくなるが、ストレート換算で6%添加程度でほぼ頭打ちとなり、飲料中への配合量としては6%で十分なカロチノイド色素の退色防止効果があることが認められた。
【0059】
参考例3 β−カロチン色素製剤の調整
水相部としてグリセリン800gにデカグリセリンモノオレエート(HLB12)100gおよび精製水30gを加え、80℃〜90℃で15分間加熱殺菌後50℃に冷却した。別に、β−カロチン20g(クラレ社製)をMCT(ODO 日清オイリオグループ社製)80gに添加し、窒素気流下、内温105℃〜115℃で20分間攪拌し均一溶液とし、油相部とした。これを先に調整した水相部に加え、予備分散させた後、高圧ホモジナイザーを用いて15MPaで乳化し、黄橙色の水溶性カロチン製剤を調製した(参考品2)。
【0060】
参考例4
パプリカオレオレジン(長谷川香料社製)100gにMCT(ODO 日清オイリオグループ社製)100gを添加混合後、デカグリセリンモノオレエート(HLB12)100gおよびグリセリン700gの混合液に添加し、90℃〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却した。TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、平均粒径が1μm以下になるまで乳化して、食品着色用パプリカ色素製剤を得た(参考品3)。
【0061】
参考例5
マリーゴールドオレオレジン(長谷川香料社製)100gにMCT(ODO 日清オイリオグループ社製)100gを添加混合後、デカグリセリンモノオレエート(HLB12)100gおよびグリセリン700gの混合液に添加し、90℃〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却した。TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、平均粒径が1μm以下になるまで乳化して、食品着色用マリーゴールド色素製剤を得た(参考品4)。
【0062】
参考例6
市販のアスタキサンチン含有オイル(アスタキサンチン含有量5%)80gにMCT(ODO 日清オイリオグループ社製)100gおよびSAIB100gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却し乳化用オイル部とした。水相部としてグリセリン560gにデカグリセリンモノオレエート(HLB12)60gおよび精製水100gを加え、90℃〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却した。TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径1μm以下の乳化物(参考品5:アスタキサンチン含量0.4%)を得た。
【0063】
実施例14 各種カロチノイド色素への添加効果の確認
実施例1において、参考品1(0.2g)に替えて下記表7に示す色素製剤を使用する以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、各種色素製剤含有飲料試料を得た。それぞれの飲料を、実施例2と同様の方法で光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)120時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
表7に示したとおり、本発明の白ぶどう果汁の添加により、いずれのカロチノイド色素にて着色した飲料も退色が防止された。なお、β−カロチン、パプリカオレオレジン、マリーゴールド色素は、酸化防止剤無添加でも、比較的安定性が良いため、あまり大きな効果は見られないが、安定性の悪いリコペンとアスタキサンチンにおいては退色防止に特に大きな効果が見られた。
【0066】
実施例15 シトラール含有飲料の調整
下記表8に示す飲料基材処方に、本発明品1および実施例10で得たグレープ透明濃縮果汁Bx56°(東京フードテクノ(株)社製マスカット果汁)の合成吸着剤分画した各画分(本発明品8、比較品5、比較品6および比較品7)を下記表9に示す量添加し、95℃、30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、200ml透明ガラス容器に満量充填後、打栓し、25℃まで冷却して飲料試料を得た。
【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
実施例16 シトラールの安定化への効果
本発明品17〜18および比較品24〜27を、光安定性試験として、10℃にて光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)7日間時間虐待試験を行った。また、熱安定性試験として暗所、35℃にて2日間および4日間、50℃にて7日間保存した。保存後の各飲料は、シトラール含量を測定した。また、加熱虐待品についてはシトラールの劣化により生成する異臭物質であるとされるp−メチルアセトフェノン含量についても測定した。
【0070】
シトラールおよびp−メチルアセトフェノン含量は下記に示す条件にてHPLCを用いて測定した。
(分析条件)
装置 :WATERS HPLC System
カラム :TSKgel ODS−100S、3.0×150mm(TOSOH)
移動相 :A液(水:リン酸=995:5)、
B液(水:アセトニトリル:リン酸=95:900:5)
30%B in A→100%B(20分、リニアグラジエント)
流速 :0.7ml/分
検出 :Waters 2996 Photodiode Array
Detector
シトラール(240nm)
p−メチルアセトフェノン(257nm)
注入量 :20μl
光虐待後のシトラールの分析結果を表10に、熱虐待後のシトラールおよびp−メチルアセトフェノンの分析結果を表11に示す。
【0071】
【表10】

【0072】
表10に示したとおり、ぶどう果汁を添加した飲料(本発明品17)、ぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部を添加した飲料(本発明品18)、ぶどう果汁の合成吸着剤吸着10%エタノール脱着部を添加した飲料(比較品25)およびぶどう果汁の合成吸着剤吸着30%エタノール脱着部を添加した飲料(比較品26)はいずれも、無添加品と比べ光虐待後のシトラールの残存率がやや高かった。これらの中では特に合成吸着剤非吸着部がシトラールの残存率が高かった。また、これらの飲料はいずれも、ぶどう果汁に由来する異味は感じられなかった。一方、ぶどう果汁の合成吸着剤吸着95%エタノール脱着部を添加した飲料(比較品27)はシトラール残存率が低下すると共に、やや苦味が生じてしまった。
この結果より、ぶどう果汁およびぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部にはカロチノイド色素の退色防止効果だけではなく、シトラールの光劣化を防止する効果もあることが確認された。
【0073】
【表11】

【0074】
表11に示したとおり、ぶどう果汁を添加した飲料(本発明品17)およびぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部を添加した飲料(本発明品18)は無添加品と比べ熱虐待後のシトラールの残存率が高かった。一方、ぶどう果汁の合成吸着剤吸着10%エタノール脱着部を添加した飲料(比較品25)およびぶどう果汁の合成吸着剤吸着30%エタノール脱着部を添加した飲料(比較品26)およびぶどう果汁の合成吸着剤吸着95%エタノール脱着部を添加した飲料(比較品27)は無添加とほぼ同程度のシトラール残存率であった。この結果より、本発明のぶどう果汁およびぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部にはシトラールの熱劣化を防止する効果もあることが確認された。
【0075】
一方、p−メチルアセトフェノンの生成量については、ぶどう果汁を添加した飲料(本発明品17)も、ぶどう果汁を合成吸着剤により処理したいずれの画分を添加した飲料(本発明品18、比較品25〜28)も、無添加品と比べ生成量が少なかった。これらのうちでは、ぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部を添加した飲料(本発明品18)のp−メチルアセトフェノンの生成量がやや多かったが、無添加品(比較品24)と比べ、約半分程度と、少なくなっており、本発明のぶどう果汁およびぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部にはシトラールの熱分解によるp−メチルアセトフェノン生成を防止する効果もあることが確認された。
【0076】
実施例17 ぶどう果汁を配合した色素製剤の調整
参考品1(リコペン5%含有)3.3gおよび本発明品1(グレープ透明濃縮果汁Bx56°(東京フードテクノ社製マスカット果汁、1/5濃縮果汁、亜硫酸ナトリウム無添加))96.7gを混合し、95℃、30秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却、充填し、色素製剤を得た(本発明品19:リコペン含量0.165%、ぶどう果汁含量482.5%)。
【0077】
実施例18 ぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部を配合した色素製剤の調整
参考品1(リコペン5%含有)3.3gおよび本発明品8(グレープ透明濃縮果汁Bx56°の合成吸着剤非吸着部)96.7gを混合し、95℃、30秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却、充填し、色素製剤を得た(本発明品20:リコペン含量0.165%、ぶどう果汁含量482.5%)。
【0078】
比較例5 液糖にて希釈した色素製剤の調整
参考品1(リコペン5%含有)3.3gおよび砂糖混合果糖ぶどう糖液糖(Bx75°)96.7gを混合し、95℃、30秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却、充填し、色素製剤を得た(比較品28:リコペン含量0.165%)。
【0079】
実施例19 飲料の調整および退色防止効果の確認
異性化糖Bx75°225g、クエン酸:0.9g、クエン酸ナトリウム:0.7g(水にて1000mlとしたときにブリックス17゜(屈折糖度計による値)、pH3.9の飲料基材となる)に本発明品19、本発明品20または比較品28を各0.6g添加後、水にて全量を1000mlとした後、95℃、30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、350mlの耐熱性ペットボトルに満量充填後、25℃まで冷却し飲料試料を得た。それぞれの飲料を、クリーンベンチ内で開封し、飲料のうち1/3量を抜き取り、容器内の上部1/3を空気に置換した後、再度密封し、光安定性試験機(LST−2000:東京理化機器械社製)を用いて蛍光灯照射(15,000Lx−55℃)72時間虐待試験を行った。虐待試験前後の試料は色差計(SD−5000:日本電色工業社製)にて透過光(幅×奥行き×高さ:40mm×20mm×50mmの石英セル)を用いて色差測定を行った。結果を表12に示す。
【0080】
【表12】

【0081】
表12に示したとおり、ぶどう果汁を配合したリコペン色素製剤(本発明品19)を添加した飲料およびぶどう果汁の合成吸着剤非吸着部を配合したリコペン色素製剤(本発明品20)を添加した飲料は、ぶどう成分無添加のリコペン色素製剤(比較品28)を添加した飲料と比べ、格段に退色が抑えられ、光に対する安定性が極めて高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぶどう果汁を有効成分として含有してなる酸化防止剤。
【請求項2】
ぶどう果汁が白ぶどう果汁であることを特徴とする請求項1に記載の酸化防止剤。
【請求項3】
ぶどう果汁が、ぶどう果実から果皮および種子を除いた果肉部分から得られた果汁であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化防止剤。
【請求項4】
ぶどう果汁が、ぶどう果汁を合成吸着剤と接触させ、吸着部を除去した非吸着部であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の記載の酸化防止剤。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の酸化防止剤を有効成分とする、カロチノイド色素の退色防止剤。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の酸化防止剤を添加することを特徴とする、カロチノイド色素の退色防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−195925(P2010−195925A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42049(P2009−42049)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】