酸素濃度可変空間における火災検出システム
【課題】酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間において、火災を早期かつ確実に検出すること等ができる、酸素濃度可変空間における火災検出システムを提供することを課題とする。
【解決手段】酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な対象空間1における火災を検出するための火災検出システムであって、対象空間1における第1の検出位置において火災を検出可能な煙センサ2と、対象空間1における第1の検出位置よりも下方である第2の検出位置において火災を検出可能なCOセンサ3a〜3dとを備える。そして、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを、煙センサ2とCOセンサ3a〜3dとの両方又はいずれか一方に切り替える。
【解決手段】酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な対象空間1における火災を検出するための火災検出システムであって、対象空間1における第1の検出位置において火災を検出可能な煙センサ2と、対象空間1における第1の検出位置よりも下方である第2の検出位置において火災を検出可能なCOセンサ3a〜3dとを備える。そして、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを、煙センサ2とCOセンサ3a〜3dとの両方又はいずれか一方に切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象空間における火災を検出するための火災検出システムであって、特に、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象空間における各種の物理量を検出し、この検出された物理量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断してその旨を報知等する火災感知器が提案されている。例えば、発光手段と受光手段とを備え、発光手段にて発光された光の煙による散乱光を受光手段にて受光し、この受光量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断して発報出力を行う煙センサがある(例えば、特許文献1参照)。あるいは、一酸化炭素(CO)検出素子を備え、このCO検出素子にて検出されたCOの量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断して発報出力を行うCOセンサがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また従来から、人間の出入りが少ない空間を低酸素濃度化することによって、この空間における火災を未然に防ぐことができる防火システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。このような従来の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、例えば、対象空間に対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、対象空間に外気を供給する外気供給装置とを備えて構成されていた。そして、人間の不在時には、不活性ガス供給装置を用いて対象空間に不活性ガスを充満させることによって、この対象空間を不燃焼雰囲気にし、人間の在室時には、外気供給装置を用いて対象空間に外気を供給することによって、この対象空間を人間が生存できる酸素濃度にしていた。このようなシステムによれば、不燃焼雰囲気にしている時には、対象空間での火災発生を防止でき、人間が生存できる酸素濃度にしている時には、対象空間に人間が入っても健康上の支障を生じることがないという利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−171686号公報
【特許文献2】特開2001−216580号公報
【特許文献3】特開2003−102858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本願発明者は、火災発生を示す各種の物理状態(例えば、対象空間における煙やCOの拡散状態)は、対象空間の酸素(O2)の濃度が通常酸素濃度である場合と低酸素濃度である場合とでは、異なる性質(挙動)を示すことを見出した。しかしながら、上記従来の火災センサの設置位置や火災発報条件は、対象空間が通常酸素濃度であるものと想定して決定されているので、対象空間が低酸素濃度である場合には早期に火災感知を行うことができない等、様々な不具合が生じる可能性があった。
【0006】
例えば、従来の煙センサやCOセンサは、対象空間の天井やその近傍位置に配置されていた。これは、対象空間が通常酸素濃度である場合には、火災が発生すると高温の熱気流が立ち上がり、この熱気流に伴って煙やCOが天井近傍に比較的早期に上昇するので、これら煙やCOを早期に検出するためには天井近傍に煙センサやCOセンサを設置することが合理的であるためである。これに対して、本願発明者は、対象空間が低酸素濃度である場合には、火災源があっても不完全燃焼状態になって出火に至らないため、煙やCOが熱気流によって上昇せずに対象空間の全体にゆっくりと漂うことを見出だした。従って、煙センサやCOセンサを従来のように対象空間の天井近傍に配置しても、火災を早期に発見できない可能性があった。
【0007】
また、従来は、対象空間に煙センサやCOセンサのいずれか一方のみを配置しており、あるいは、これら両方のセンサを配置する場合であってもそれぞれを相互に独立して配置していた。これは、対象空間が通常酸素濃度である場合には、火災の発生に伴って煙やCOの量が共に上昇し、これらのいずれかを検出することで火災発生を感知できるからである。これに対して、本願発明者は、対象空間が低酸素濃度である場合には、火災源があっても不完全燃焼状態になるため、煙の量がなかなか増加しない一方で、COの量が急激に増加することを見出した。従って、煙センサのみを配置しても、火災を早期に発見できない可能性があった。
【0008】
これらのことから、対象空間が低酸素濃度である場合においては、従来とは異なる火災検出システムが必要となるが、特に、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間においては、通常酸素濃度に好適な火災検出システムのみや、低酸素濃度に好適な火災検出システムのみを設けたのでは不十分であり、いずれの酸素濃度においても好適な性能を発揮し得る火災検出システムを構築することが必要になる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間において、火災を早期かつ確実に検出すること等ができる、酸素濃度可変空間における火災検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、前記酸素濃度可変空間における第1の検出位置と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の検出位置よりも下方である第2の検出位置と、の少なくとも2位置において火災を検出可能なセンサを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記センサは、前記第1の検出位置に設置された第1のセンサと、前記第2の検出位置に設置された第2のセンサとから構成され、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとの両方又はいずれか一方に切り替えることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項2に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記第1のセンサは、煙センサであり、前記第2のセンサは、COセンサであることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記センサを、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置とに移動させる移動手段と、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、前記センサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとのいずれか一方に前記移動手段を介して移動させることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の検出位置において前記センサによる火災を検出可能とし、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の検出位置において前記センサによる火災を検出可能としたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1から5のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記第1の検出位置は、前記酸素濃度可変空間における天井近傍の位置であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、前記酸素濃度可変空間における所定の第1の物理量と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の物理量とは異なる第2の物理量と、の少なくとも2種類の物理量を検出することによって火災を検出可能なセンサを備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項7に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能とし、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能としたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項7又は8に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記第1の物理量は、煙であり、前記第2の物理量は、COであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、酸素濃度可変空間における第1の検出位置と第2の検出位置との少なくとも2位置において火災を検出できるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な形態で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを第1の検出位置に配置された第1のセンサと第2の検出位置に配置された第2のセンサとの両方又はいずれか一方に自動的に切り替えるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、2つの位置のそれぞれにセンサを配置しておくことで、1つのセンサを2位置に移動させるための機構や制御が不要になることから、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0021】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、煙センサを上方に設け、COセンサを煙センサよりも下方に設けているので、通常酸素濃度環境下で天井近傍に上昇する煙を煙センサで検出し、低酸素濃度環境下で酸素濃度可変空間の全体に漂うCOをCOセンサで検出することで、いかなる酸度濃度環境下においても早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、火災感知に使用するセンサを自動的に移動させてその位置を変更することができるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、1つのセンサを2つの位置に移動させることから、2位置のそれぞれにセンサを配置しておく必要がなく、センサ個数を減らすことで、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0023】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、酸素濃度可変空間の酸素濃度が、所定の酸素濃度以上である場合には、第1の検出位置において火災を検出可能とし、所定の酸素濃度未満である場合には、第2の検出位置において火災を検出可能としたので、酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災感知に使用するセンサを自動的に切り替えることができるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、所定の酸素濃度以上である場合には、酸素濃度可変空間における天井近傍の位置で火災を検出するので、熱気流によって天井近傍に上昇する煙やCOを早期に検知することができる。
【0025】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、2つの物理量を検出することによって火災を検出するので、いかなる環境下においても早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0026】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、所定の酸素濃度以上である場合には、第1の物理量によって火災を検出可能とし、所定の酸素濃度未満である場合には、第2の物理量によって火災を検出可能としたので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に物理量に基づいて火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、煙センサとCOセンサを設けているので、通常酸素濃度環境下では従来と同様に煙センサで火災を検出し、低酸素濃度環境下では急激に濃度が上昇するCOをCOセンサで検出することで、いかなる酸度濃度環境下においても早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本発明の基本的概念を説明した後、〔II〕本発明の各実施の形態について説明し、〔III〕最後に、本発明の実施の形態に対する変形例について説明する。
【0029】
〔I〕本発明の基本的概念
まず、本発明の基本的概念について説明する。本発明は、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間において発生した火災を検出するための火災検出システムに関するものである。
【0030】
ここで、対象空間は、基本的に任意であるが、例えば、データセンター、美術館、博物館、文化財保管施設、貴重品倉庫等、火災発生時の消火によるダメージを避けたいとの要求が強い場所や、超高層タワーの電気室等、通常の防火設備を設けることが困難な場所、あるいは、低酸素濃度を保持することで劣化を防止したい貴重品等を保管するような施設が該当する。
【0031】
また、低酸素濃度とは、基本的には、一般大気の酸素濃度(約21%、以下、「通常酸素濃度」と称する)よりも低い全ての酸素濃度を含む概念であり、特に、煙やCOの挙動が通常酸素濃度とは異なり得る濃度(火災により出火に至り得る濃度)である。以下の実施の形態では、約17%以下の酸素濃度を「低酸素濃度」として説明するが、この具体的閾値は任意に変更することができる。
【0032】
このように酸素濃度を調整するため、本発明では、対象空間に、各種の気体を導入する。具体的には、酸素濃度を低下させる場合には、不活性ガス又は不活性ガスを高濃度で含んだガスを導入する。ここで、不活性ガスの種類は任意であるが、以下では、窒素ガスを用いた例を説明するものとし、窒素ガス、又は。窒素ガスを通常よりも高濃度で含んだガスを、「窒素富化ガス」と称する。また、酸素濃度を上昇させる場合には、外気、酸素、酸素を通常よりも高濃度で含んだガス、又は、対象空間における酸素濃度よりも高い酸素濃度のガスを導入する。以下では、酸素又は酸素を高濃度で含んだガスを、「酸素富化ガス」と称する。
【0033】
ここで、本発明の特徴の一つは、火災を検出するセンサを、対象空間における2以上の位置に配置している点にある。ここで、2以上の位置に配置する形態としては、2位置のそれぞれに固定的にセンサを配置する形態(後述する実施の形態1に示す形態)と、一つのセンサを2位置に移動させる形態(後述する実施の形態2に示す形態)とを挙げることができる。そして、対象空間が通常酸素濃度の場合と低酸素濃度の場合とで火災検出に用いるセンサの位置を切り替えることで、各酸素濃度環境下に適した位置で火災検出を行う。
【0034】
また、本発明の他の特徴は、火災を検出するセンサとして、煙センサとCOセンサの2種類のセンサを設けた点にある。そして、対象空間が通常酸素濃度の場合と低酸素濃度の場合とで火災検出に用いるセンサの種類を切り替えることで、各酸素濃度環境下に適した種類のセンサで火災検出を行う(後述する実施の形態3に示す形態)。
【0035】
〔II〕本発明の実施の形態
以下、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムの各実施の形態について説明する。これら各実施の形態においては、火災検出システム等の全体構成について説明した後、この火災検出システムによって行われる火災検出処理について説明する。
【0036】
〔実施の形態1〕
最初に、本発明に係る実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、火災を検出するセンサを、対象空間における2位置のそれぞれに固定的にセンサを配置するものである。
【0037】
(火災検出システムの構成)
図1は、本実施の形態1に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図1において、対象空間1は特許請求の範囲における酸素濃度可変空間に対応するもので、上下左右を壁面にて囲繞された閉鎖空間として構成されている。この対象空間1には、図示のように、煙センサ2、COセンサ3a〜3d(必要に応じてCOセンサ3と総称する)、及び、O2センサ4が配置されており、対象空間1の近傍には、酸素濃度調整ユニット5、酸素濃度制御盤6、及び、火災監視盤7が配置されている。そして、これら各部は、図示点線で示すように相互に電気的に接続されている。
【0038】
このうち、煙センサ2は、対象空間1における煙の発生量に基づいて火災を検出するもので、特許請求の範囲における煙センサに対応する。この煙センサ2による検出原理は任意であるが、例えば、発光手段と受光手段とを備え、発光手段にて発光された光の煙による散乱光を受光手段にて受光し、この受光量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断して発報信号を出力する。
【0039】
ここで、煙センサ2は、通常酸素濃度環境下において煙を早期に感知するために好適な位置、具体的には、対象空間1の天井1aに設置されている。図2には、通常酸素濃度下における対象空間1の温度分布、図3には、低酸素濃度下における対象空間1の温度分布を示す(横軸は火源となるヒータをONしてからの経過時間、縦軸は初期値からの温度変化を示す)。この図2に示すように、通常酸素濃度下においては発火に至るために温度が急激に上昇するが、図3に示すように、低酸素濃度下においては発火に至らないために温度上昇が小さいことが分かる。すなわち、対象空間1が通常酸素濃度である場合には、火災が発生すると高温の熱気流が立ち上がり、この熱気流に伴って煙が天井1aの近傍に早期に上昇するので、この煙を早期に検出し得るように、天井1aに煙センサ2が配置されている。なお、以下では、煙センサ2の設置位置を「第1の検出位置」と称し、対象空間1の床面から煙センサ2の設置位置(天井1aの下面の位置)に至る高さを「第1の検出高さ(符号H1)」と称する。
【0040】
また、COセンサ3は、対象空間1におけるCOの発生量に基づいて火災を検出するもので、特許請求の範囲におけるCOセンサに対応する。このCOセンサ3は、CO検出素子を備え、このCO検出素子にて検出されたCOの量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断する。ここで、COセンサ3は、低酸素濃度環境下においてCOを早期に感知するための好適な位置、具体的には、煙センサ2の設置位置よりも低い位置に設置されている。すなわち、対象空間1が低酸素濃度である場合には、図3に示したように、火災源があっても不完全燃焼状態になって出火せず、煙やCOが熱気流によって上昇せずに対象空間1の全体にゆっくりと漂うので、このCOを早期に検出し得るように、天井1aよりも低い位置にCOセンサ3が配置されている。以下では、COセンサ3の設置位置を「第2の検出位置」と称し、対象空間1の床面からCOセンサ3の設置位置(天井1aより下方位置)に至る高さを「第2の検出高さ(符号H2)」と称する。
【0041】
ここで、第2の検出位置は、COが人によって吸引された場合に当該人に与える悪影響を考慮して決定することが好ましい。すなわち、人がCOを一定量以上吸引するとその生命に危険が生じ得るため、人の頭が位置する高さにおいてCOを検出し、この検出量が人体に悪影響を与える所定量に達した場合には、火災発生の有無に関わらず、警報等を発することが好ましい。このため、本実施の形態1においては、COセンサ3の第2の検出高さH2を、人の居住域に一致する高さ、例えば、1〜2m程度としている。また、このようにCOセンサ3を人の居住域に一致する高さに容易かつ確実に設置するため、COセンサ3aは、従来と同様に壁面設置型として構成されており、対象空間1の壁面において、第2の検出高さH2の位置に配置されている。また、COセンサ3bはカード型として構成され、COセンサ3cは携帯電話一体型として構成されており、人によって携帯されている。
【0042】
また、第2の検出位置は、CO源になり得る物の位置を考慮して決定することが好ましい。すなわち、低酸素濃度環境下においては火源があっても熱気流が生じずに天井1aに上り難く、COが対象空間1の全体に漂う。このため、COを天井1aの近傍で検出することは難しく、さらに、天井1aより下方の位置であっても、CO源から離れる程検出が難しくなることが考えられる。従って、CO源になり得る物(例えば、可燃物)の近傍にCOセンサ3を配置することが好ましい。このため、COセンサ3dは、移動可能な卓上型として構成されており、対象空間1に配置された机の上に配置されている。
【0043】
これらカード型のCOセンサ3b、携帯電話一体型のCOセンサ3c、及び、卓上型のCOセンサ3dは、公知の一般的なCOセンサの構成に加え、図示しない無線送信部を備えて構成されている。そして、火災発生を感知した場合には、その旨を示す発報信号を無線送信部を介して火災監視盤7に無線送信する。なお、このような無線送信部は、公知の無線式火災感知器に用いられている構成を利用することができるので、その具体的な説明は省略する。
【0044】
また、O2センサ4は、対象空間1の酸素濃度を測定するための酸素濃度測定手段である。このO2センサ4の設置位置は任意であるが、本実施の形態1においては、対象空間1の壁面に設置されている。
【0045】
次に、酸素濃度調整ユニット5は、対象空間1の酸素濃度を、通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整する酸素濃度調整手段である。この酸素濃度調整ユニット5は、例えば、酸素濃度を調整するための各種装置を、1つの筐体の内部に収容してユニット構成されている。具体的には、この筐体に、外気を圧送するためのコンプレッサ、このコンプレッサにて圧送された外気から酸素と窒素とを分離して窒素富化ガスと酸素富化ガスとを生成する酸素分離フィルタ、この酸素分離フィルタによって生成された酸素富化ガスを貯留するための酸素富化タンク、この酸素分離フィルタによって生成された窒素富化ガスを貯留するための窒素富化タンク等を備えて構成されている。
【0046】
また、酸素濃度制御盤6は、酸素濃度調整ユニット5を制御する酸素濃度制御手段である。この酸素濃度制御盤6は、O2センサ4によって測定された酸素濃度を参照しつつ、酸素濃度調整ユニット5を制御して対象空間1に酸素富化ガス又は窒素富化ガスを供給させることにより、この対象空間1の酸素濃度を所望の酸素濃度に調整する。
【0047】
また、火災監視盤7は、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを煙センサ2とCOセンサ3とのいずれか一方に切り替えることにより、火災の検出位置を変更するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図4は、火災監視盤7の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図4に示すように火災監視盤7は、アンテナ7a、スピーカ7b、メモリ7c、外部入出力端子7d、及び、制御部7eを備えて構成されている。
【0048】
このうち、アンテナ7aは、カード型のCOセンサ3b、携帯電話一体型のCOセンサ3c、及び、卓上型のCOセンサ3dからの無線出力を受信する受信手段である。また、スピーカ7bは、火災発生時にブザー音を鳴動させる音声出力手段である。また、メモリ7cは、当該火災監視盤7の処理に必要な各種の情報を記憶する記憶手段であり、特に、通常酸素濃度と低酸素濃度との境界を示す閾値を記憶する。また、外部入出力端子7dは、当該火災監視盤7に対する入力及び当該火災監視盤7からの出力を行うための端子群であり、この外部入出力端子7dにおいて当該火災監視盤7は、上述した煙センサ2、COセンサ3、及び、酸素濃度制御盤6の他、図示しない連動先の外部機器に電気的に接続されている。また、制御部7eは、当該火災監視盤7の各部を制御する制御手段であり、例えば、メモリ7cに記憶された制御プログラムをロードして実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成されている。
【0049】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。図5は、この火災検出処理のフローチャートである。この図5に示すように、火災監視盤7の制御部7eは、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるか(17%以上であるか否か)を監視する(ステップSA−1)。
【0050】
そして、通常酸素濃度である場合(ステップSA−1、Yes)、制御部7eは、第1の検出高さH1に配置されたセンサ(つまり、本実施の形態1では煙センサ2)から、発報出力が行われたか否かを監視する(ステップSA−2)。そして、発報出力が行われた場合(ステップSA−2、Yes)、制御部7eは、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSA−3)。このように、通常酸素濃度時には、天井1aの近傍の煙センサ2を用いて火災感知を行うことができるので、熱気流によって天井1aの近傍に上昇する煙を感知することで早期の火災感知を行うことができる。
【0051】
一方、ステップSA−1において、対象空間1の酸素濃度が低酸素濃度であると判断された場合(ステップSA−1、No)、制御部7eは、第2の検出高さH2に配置されたセンサ(つまり、本実施の形態1ではCOセンサ3)から、発報出力が行われたか否かを監視する(ステップSA−4)。そして、発報出力が行われた場合(ステップSA−4、Yes)、制御部7eは、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSA−3)。このように、低酸素濃度時には、天井1aの近傍より下方のCOセンサ3を用いて火災感知を行うことができるので、天井1aの近傍に上昇せずに対象空間1の全体に漂うCOを感知することで早期の火災感知を行うことができる。
【0052】
(実施の形態1の変形例)
次に、本発明に係る実施の形態1の変形例について説明する。この変形例に係る火災検出システムは、第1の検出位置に熱センサ(熱感知器)、第2の検出位置に煙センサ及びCOセンサを配置した点において、第1の検出位置に煙センサ、第2の検出位置にCOセンサを配置した実施の形態1と異なる。ただし、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
(火災検出システムの構成)
図6は、この変形例に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図6において、第1の検出位置H1には熱センサ8、第2の検出位置H2には煙センサ2及びCOセンサ3b〜3dが配置されている。
【0054】
このうち、熱センサ8は、対象空間1の温度に基づいて火災を検出するもので、特許請求の範囲におけるセンサに対応する。この熱センサ8による検出原理は任意であるが、例えば、サーミスタ等の温度検出素子を備え、この温度検出素子の出力が所定の閾値を超えた場合には、火災が発生したものと判断して発報信号を出力する。
【0055】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。ただし、この火災検出処理は、図5に示した実施の形態1の火災検出処理と同様に行うことができるため、概要のみを説明する。すなわち、火災監視盤7は、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるかを監視し、通常酸素濃度である場合には、第1の検出高さH1に配置された熱センサ8からの発報出力の有無、低酸素濃度時には、第2の検出高さH2に配置された煙センサ2及びCOセンサ3b〜3dからの発報出力の有無を監視して、発報出力が行われた場合には、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる。この変形例によれば、特に、通常酸素濃度である場合には熱センサ8にて火災を検知することで、火災センサとして現在最も普及している熱センサをそのまま利用でき、既設の建屋においても酸素濃度可変空間の火災検出システムを容易かつ安価に構築できる。なお、第2の検出高さH2に配置するセンサとしては、煙センサ2又はCOセンサ3b〜3dのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0056】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、対象空間1の酸素濃度に応じて、火災感知に使用するセンサの種類と位置を自動的に変更することができるので、酸素濃度に応じて変化する対象空間1の物理現象に好適な形態で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、2つの位置のそれぞれにセンサを配置しておくことで、後述する実施の形態2のように1つのセンサを2位置に移動させるための機構や制御が不要になることから、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。また、COセンサ3を人の居住域に配置しているので、COを吸引することによって人に悪影響が出ることを防止でき、火災以外の安全性にも配慮した火災検出システムを構築できる。さらに、第1の検出高さH1に熱センサ8を配置した場合には、火災センサとして現在最も普及している熱センサをそのまま利用でき、既設の建屋においても酸素濃度可変空間の火災検出システムを容易かつ安価に構築できる。
【0057】
〔実施の形態2〕
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る火災検出システムは、1つのセンサを2つの位置に移動させるものである点において、2つのセンサを固定的に配置した実施の形態1と異なる。ただし、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
(火災検出システムの構成)
図7は、本実施の形態2に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図7において、対象空間1には、煙センサ2、O2センサ4、昇降装置10、プロジェクタスクリーン11、酸素濃度調整ユニット5、酸素濃度制御盤6、及び、火災監視盤12を備えて構成されており、これら各部が図示点線で示すように電気的に接続されている。
【0059】
このうち、昇降装置10は、煙センサ2を第1の検出高さH1と第2の検出高さH2との2位置に移動させるもので、特許請求の範囲における移動手段に対応する。この昇降装置10の具体的構成は任意であるが、例えば、鉛直方向に沿った向きで壁面に固定された空圧式のアクチュエータとして構成されており、このアクチュエータを動作させることによって、煙センサ2を移動可能である。
【0060】
また、プロジェクタスクリーン11は、図示しないプロジェクター装置から投影された画像を表示するための投影用のロールスクリーンである。図8には、このプロジェクタスクリーン11の斜視図を示す。この図8に示すように、プロジェクタスクリーン11は、画像の被投影面を構成するスクリーン11aと、このスクリーン11aを巻き取り又は巻き出しするための巻き取り機構11bとを備えて構成されている。ここで、スクリーン11aの下端部には煙センサ2が固定されており、このスクリーン11aを巻き取り機構11bによって巻き取り又は巻き出しすることにより、スクリーン11aに伴って煙センサ2が昇降される。
【0061】
すなわち、プロジェクタスクリーン11は、通常の投影用のロールスクリーンとしての機能の他、煙センサ2を第1の検出高さH1と第2の検出高さH2との2位置に移動させる手段としても利用されており、特許請求の範囲における移動手段に対応する。なお、プロジェクタスクリーン11の具体的構成は、従来の自動巻き取り式のプロジェクタスクリーンと同様に構成することができるので、その詳細な説明を省略する。
【0062】
また、火災監視盤12は、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを煙センサ2とCOセンサ3とのいずれか一方に切り替えることにより、火災の検出位置を変更するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図9は、火災監視盤12の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図9に示すように火災監視盤12は、スピーカ12a、メモリ12b、外部入出力端子12c、及び、制御部12dを備えて構成されており、これら各部は、制御部12bの制御内容を除いて、実施の形態1のスピーカ7b、メモリ7c、外部入出力端子7d、及び、制御部7eとそれぞれ略同様に構成されている。
【0063】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。図10は、この火災検出処理のフローチャートである。この図10に示すように、火災監視盤12の制御部12dは、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるか(17%以上であるか否か)を監視する(ステップSB−1)。そして、通常酸素濃度である場合(ステップSB−1、Yes)、制御部12dは、煙センサ2が上方位置、すなわち、第1の検出高さH1に配置されているか否かを判断し(ステップSB−2)、配置されていない場合には(ステップSB−2、No)、昇降装置10に制御信号を送ってアクチュエータを駆動させると共に、巻き取り機構11bに制御信号を送ってスクリーン11aを巻き取らせることで、煙センサ2を第1の検出高さH1になるまで移動させる(ステップSB−2〜ステップSB−3)。
【0064】
そして、制御部12dは、この煙センサ2から発報出力が行われたか否かを監視し(ステップSB−4)、発報出力が行われた場合には(ステップSB−4、Yes)、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSB−5)。このように、通常酸素濃度時には、煙センサ2を天井1aの近傍に移動させて火災感知を行うことができるので、熱気流によって天井1aの近傍に上昇する煙を感知して早期の火災感知を行うことができる。
【0065】
一方、ステップSB−1において、対象空間1の酸素濃度が低酸素濃度であると判断された場合(ステップSB−1、No)、制御部12dは、煙センサ2が下方位置、すなわち、第2の検出高さH2に配置されているか否かを判断し(ステップSB−6)、配置されていない場合には(ステップSB−6、No)、昇降装置10に制御信号を送ってアクチュエータを駆動させると共に、巻き取り機構11bに制御信号を送ってスクリーン11aを巻き出させることで、煙センサ2を第2の検出高さH2になるまで移動させる(ステップSB−6〜ステップSB−7)。
【0066】
そして、制御部12dは、この煙センサ2から発報出力が行われたか否かを監視し(ステップSB−4)、発報出力が行われた場合には(ステップSB−4、Yes)、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSB−5)。このように、低酸素濃度時には、煙センサ2を天井1aの近傍より下方に移動させて火災感知を行うことができるので、天井1aの近傍に上昇せずに対象空間1の全体に漂う煙を感知することで早期の火災感知を行うことができる。
【0067】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、対象空間1の酸素濃度に応じて、火災感知に使用するセンサを自動的に移動させてその位置を変更することができるので、酸素濃度に応じて変化する対象空間1の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、1つのセンサを2つの位置に移動させることから、実施の形態1のように2位置のそれぞれにセンサを配置しておく必要がなく、センサ個数を減らすことで、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0068】
〔実施の形態3〕
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。本実施の形態3に係る火災検出システムは、略同一高さに配置した複数種類のセンサを、対象空間1の酸素濃度に応じて切り替えるものである点において、高さが異なる複数の位置に配置したセンサを、対象空間1の酸素濃度に応じて切り替える実施の形態1と異なる。ただし、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
(火災検出システムの構成)
図11は、本実施の形態3に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図11において、対象空間1には、煙センサ2、COセンサ3a、O2センサ4、酸素濃度調整ユニット5、酸素濃度制御盤6、及び、火災監視盤20を備えて構成されており、これら各部が図示点線で示すように電気的に接続されている。
【0070】
このうち、煙センサ2及びCOセンサ3aは、略同一の高さの位置、具体的には、天井1aの下面に設定されている。なお、本実施の形態3におけるCOセンサ3aは、検出したCOの濃度に応じた電圧の信号を出力する。本実施の形態3において、煙は特許請求の範囲における第1の物理量に対応し、COは特許請求の範囲における第2の物理量に対応する。
【0071】
また、火災監視盤20は、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを煙センサ2とCOセンサ3とのいずれか一方に切り替えることにより、火災の検出位置を変更するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図12は、火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図12に示すように火災監視盤20は、スピーカ20a、メモリ20b、外部入出力端子20c、及び、制御部20dを備えて構成されており、これら各部は、制御部20dの制御内容を除いて、実施の形態1のスピーカ7b、メモリ7c、外部入出力端子7d、及び、制御部7eとそれぞれ略同様に構成されている。
【0072】
ここで制御部20dは、通常酸素濃度環境下では、火災検出に用いるセンサを煙センサ2、低酸素濃度環境下では、火災検出に用いるセンサをCOセンサ3に切り替える。図13には、通常酸素濃度下におけるCOの濃度変化、図14には、低酸素濃度下におけるCOガスの濃度変化を示す(横軸は火源となるヒータをONしてからの経過時間、縦軸はCOガスの濃度を示す)。この図13に示すように、通常酸素濃度下においてはCOの濃度は緩やかに上昇するが、図14に示すように、低酸素濃度下においてはCOの濃度が急激に上昇することが分かる。このため、本実施の形態3においては、通常酸素濃度下においては従来と同様に煙センサ2にて火災を感知し、低酸素濃度下においてCOセンサ3にて火災を感知する。
【0073】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。図15は、この火災検出処理のフローチャートである。この図15に示すように、火災監視盤20の制御部20dは、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるか(17%以上であるか否か)を監視する(ステップSC−1)。そして、通常酸素濃度である場合(ステップSC−1、Yes)、制御部20dは、煙センサ2から発報出力が行われたか否かを監視し(ステップSC−2)、発報出力が行われた場合には、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSC−3)。このように、通常酸素濃度時には、煙センサ2の出力に基づいて火災感知を行うことができるので、通常酸素濃度環境下で火災初期に増加する煙を感知して早期の火災感知を行うことができる。
【0074】
一方、ステップSC−1において、対象空間1の酸素濃度が低酸素濃度であると判断された場合(ステップSC−1、No)、制御部20dは、COセンサ3aから出力に基づいて、対象空間1のCO濃度が、火災発生を示す所定のCO濃度(例えば、150ppm。以下、火災CO濃度)以上であるか否かを監視し(ステップSC−4)、火災CO濃度以上である場合には(ステップSC−4、Yes)、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSC−3)。また、ステップSC−4において、火災CO濃度以上でないと判断された場合(ステップSC−4、No)、制御部20dは、火災CO濃度より低い濃度であるが人体に危険を生じさせ得る所定のCO濃度(例えば、50ppm。以下、危険CO濃度)以上であるか否かを監視し(ステップSC−5)、危険CO濃度以上である場合には警報音を鳴らして危険を報知する(ステップSC−6)。このように、低酸素濃度時には、COセンサ3の出力に基づいて火災感知を行うことができるので、低酸素濃度環境下で火災初期に増加するCOを感知して早期の火災感知を行うことができる。
【0075】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、対象空間1の酸素濃度に応じて、火災感知に使用するセンサの種類を自動的に切り替えることができるので、酸素濃度に応じて火災初期に増加する物理量に基づいて火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、2つの位置のそれぞれにセンサを配置しておくことで、上述した実施の形態2のように1つのセンサを2位置に移動させるための機構や制御が不要になることから、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0076】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び方法は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0077】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、上記に記載されていない課題を解決したり、上記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、対象空間1における火災を完全に検出できない場合であっても、従来の火災検出システムより若干でも迅速に火災を検出できている限りにおいて、本願の課題は達成されている。
【0078】
(各実施の形態の関係)
各実施の形態に示した種々の特徴は、相互に混在させることもできる。例えば、実施の形態2では、煙センサのみを用いているが、実施の形態1や実施の形態3と同様に、さらにCOセンサを用いてもよい。あるいは、実施の形態1において煙センサのみを第1の検出高さと第2の検出高さに設け、対象空間1の酸素濃度に基づいて切り替えてもよい。また、実施の形態1のように固定的に設置した煙センサ又はCOセンサと、実施の形態2のように移動可能に配置した煙センサとを用いることもできる。
【0079】
(火災センサの種類、個数、連動形態について)
火災を検出するためのセンサの種類、個数、又は、連動形態は、上述したものに限定されない。例えば、実施の形態1においては、通常酸素濃度時には煙センサ、低酸素濃度時にはCOセンサを用いているが、低酸素濃度時には煙センサとCOセンサの両方を用いることとし、いずれか一方から発報出力が出された場合には火災と判断し、あるいは、両方の発報出力のANDをとって火災判断を行ってもよい。また、火災センサの具体的形式も任意であり、例えば、居住域の高さである第2の検出高さに人や物が存在しない場合には、分離型のセンサを用いて広範な領域をカバーするようにしてもよい。また、火災センサの個数も任意であり、同一種類のセンサを複数配置してもよい。また、COセンサを携帯式とする場合にも種々の形態を取ることができ、例えば、パソコン、固定電話、構内PHS端末等の内部に組み込んでもよい。また、実施の形態1〜3においては、検出された煙やCOが所定量以上であるか否かに基づいて火災有無を判別しているが、単位時間あたりの検出量(検出量の傾き)が所定量以上になった場合に火災が発生したと判断してもよい。また、一つのセンサに煙とCO、あるいは、熱とCOの両方の検出機能を備えた複合型のセンサを用いてもよい。
【0080】
(検出位置について)
また、第1の検出位置や第2の検出位置に加え、他の検出位置を設定してここにセンサを配置してもよい。例えば、酸素濃度を3つ以上のレベルに区分し、各レベルに応じた異なる位置に配置されたセンサを用いて火災を検出してもよい。
【0081】
(火災センサの切り替え形態について)
火災センサの切り替えは、O2センサ4からの出力に基づいて行っているが、対象空間1の酸素濃度を酸素濃度制御盤6から受け取り、これに基づいて行ってもよい。また、必ずしも自動に限られず、ユーザが手動で切り替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムは、酸素濃度可変空間における火災検出のために利用され、特に、火災を如何なる酸素濃度でも早期かつ確実に検出することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図2】通常酸素濃度下における対象空間の温度分布を示す図である。
【図3】低酸素濃度下における対象空間の温度分布を示す図である。
【図4】火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図5】実施の形態1に係る火災検出処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態1の変形例に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図8】プロジェクタスクリーンの斜視図である。
【図9】火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図10】実施の形態2に係る火災検出処理のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態3に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図12】火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図13】通常酸素濃度下におけるCOの濃度変化を示す図である。
【図14】低酸素濃度下におけるCOの濃度変化を示す図である。
【図15】実施の形態3に係る火災検出処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 対象空間
1a 天井
2 煙センサ
3、3a〜3d COセンサ
4 O2センサ
5 酸素濃度調整ユニット
6 酸素濃度制御盤
7、12、20 火災監視盤
7a アンテナ
7b、12a、20a スピーカ
7c、12b、20b メモリ
7d、12c、20c 外部入出力端子
7e、12d、20d 制御部
8 熱センサ
10 昇降装置
11 プロジェクタスクリーン
11a スクリーン
11b 巻き取り機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象空間における火災を検出するための火災検出システムであって、特に、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象空間における各種の物理量を検出し、この検出された物理量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断してその旨を報知等する火災感知器が提案されている。例えば、発光手段と受光手段とを備え、発光手段にて発光された光の煙による散乱光を受光手段にて受光し、この受光量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断して発報出力を行う煙センサがある(例えば、特許文献1参照)。あるいは、一酸化炭素(CO)検出素子を備え、このCO検出素子にて検出されたCOの量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断して発報出力を行うCOセンサがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また従来から、人間の出入りが少ない空間を低酸素濃度化することによって、この空間における火災を未然に防ぐことができる防火システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。このような従来の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、例えば、対象空間に対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、対象空間に外気を供給する外気供給装置とを備えて構成されていた。そして、人間の不在時には、不活性ガス供給装置を用いて対象空間に不活性ガスを充満させることによって、この対象空間を不燃焼雰囲気にし、人間の在室時には、外気供給装置を用いて対象空間に外気を供給することによって、この対象空間を人間が生存できる酸素濃度にしていた。このようなシステムによれば、不燃焼雰囲気にしている時には、対象空間での火災発生を防止でき、人間が生存できる酸素濃度にしている時には、対象空間に人間が入っても健康上の支障を生じることがないという利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−171686号公報
【特許文献2】特開2001−216580号公報
【特許文献3】特開2003−102858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本願発明者は、火災発生を示す各種の物理状態(例えば、対象空間における煙やCOの拡散状態)は、対象空間の酸素(O2)の濃度が通常酸素濃度である場合と低酸素濃度である場合とでは、異なる性質(挙動)を示すことを見出した。しかしながら、上記従来の火災センサの設置位置や火災発報条件は、対象空間が通常酸素濃度であるものと想定して決定されているので、対象空間が低酸素濃度である場合には早期に火災感知を行うことができない等、様々な不具合が生じる可能性があった。
【0006】
例えば、従来の煙センサやCOセンサは、対象空間の天井やその近傍位置に配置されていた。これは、対象空間が通常酸素濃度である場合には、火災が発生すると高温の熱気流が立ち上がり、この熱気流に伴って煙やCOが天井近傍に比較的早期に上昇するので、これら煙やCOを早期に検出するためには天井近傍に煙センサやCOセンサを設置することが合理的であるためである。これに対して、本願発明者は、対象空間が低酸素濃度である場合には、火災源があっても不完全燃焼状態になって出火に至らないため、煙やCOが熱気流によって上昇せずに対象空間の全体にゆっくりと漂うことを見出だした。従って、煙センサやCOセンサを従来のように対象空間の天井近傍に配置しても、火災を早期に発見できない可能性があった。
【0007】
また、従来は、対象空間に煙センサやCOセンサのいずれか一方のみを配置しており、あるいは、これら両方のセンサを配置する場合であってもそれぞれを相互に独立して配置していた。これは、対象空間が通常酸素濃度である場合には、火災の発生に伴って煙やCOの量が共に上昇し、これらのいずれかを検出することで火災発生を感知できるからである。これに対して、本願発明者は、対象空間が低酸素濃度である場合には、火災源があっても不完全燃焼状態になるため、煙の量がなかなか増加しない一方で、COの量が急激に増加することを見出した。従って、煙センサのみを配置しても、火災を早期に発見できない可能性があった。
【0008】
これらのことから、対象空間が低酸素濃度である場合においては、従来とは異なる火災検出システムが必要となるが、特に、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間においては、通常酸素濃度に好適な火災検出システムのみや、低酸素濃度に好適な火災検出システムのみを設けたのでは不十分であり、いずれの酸素濃度においても好適な性能を発揮し得る火災検出システムを構築することが必要になる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間において、火災を早期かつ確実に検出すること等ができる、酸素濃度可変空間における火災検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、前記酸素濃度可変空間における第1の検出位置と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の検出位置よりも下方である第2の検出位置と、の少なくとも2位置において火災を検出可能なセンサを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記センサは、前記第1の検出位置に設置された第1のセンサと、前記第2の検出位置に設置された第2のセンサとから構成され、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとの両方又はいずれか一方に切り替えることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項2に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記第1のセンサは、煙センサであり、前記第2のセンサは、COセンサであることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記センサを、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置とに移動させる移動手段と、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、前記センサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとのいずれか一方に前記移動手段を介して移動させることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の検出位置において前記センサによる火災を検出可能とし、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の検出位置において前記センサによる火災を検出可能としたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項1から5のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記第1の検出位置は、前記酸素濃度可変空間における天井近傍の位置であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、前記酸素濃度可変空間における所定の第1の物理量と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の物理量とは異なる第2の物理量と、の少なくとも2種類の物理量を検出することによって火災を検出可能なセンサを備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項7に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能とし、前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能としたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムは、請求項7又は8に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システムにおいて、前記第1の物理量は、煙であり、前記第2の物理量は、COであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、酸素濃度可変空間における第1の検出位置と第2の検出位置との少なくとも2位置において火災を検出できるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な形態で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを第1の検出位置に配置された第1のセンサと第2の検出位置に配置された第2のセンサとの両方又はいずれか一方に自動的に切り替えるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、2つの位置のそれぞれにセンサを配置しておくことで、1つのセンサを2位置に移動させるための機構や制御が不要になることから、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0021】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、煙センサを上方に設け、COセンサを煙センサよりも下方に設けているので、通常酸素濃度環境下で天井近傍に上昇する煙を煙センサで検出し、低酸素濃度環境下で酸素濃度可変空間の全体に漂うCOをCOセンサで検出することで、いかなる酸度濃度環境下においても早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、火災感知に使用するセンサを自動的に移動させてその位置を変更することができるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、1つのセンサを2つの位置に移動させることから、2位置のそれぞれにセンサを配置しておく必要がなく、センサ個数を減らすことで、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0023】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、酸素濃度可変空間の酸素濃度が、所定の酸素濃度以上である場合には、第1の検出位置において火災を検出可能とし、所定の酸素濃度未満である場合には、第2の検出位置において火災を検出可能としたので、酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災感知に使用するセンサを自動的に切り替えることができるので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、所定の酸素濃度以上である場合には、酸素濃度可変空間における天井近傍の位置で火災を検出するので、熱気流によって天井近傍に上昇する煙やCOを早期に検知することができる。
【0025】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、2つの物理量を検出することによって火災を検出するので、いかなる環境下においても早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0026】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、所定の酸素濃度以上である場合には、第1の物理量によって火災を検出可能とし、所定の酸素濃度未満である場合には、第2の物理量によって火災を検出可能としたので、酸素濃度に応じて変化する酸素濃度可変空間の物理現象に物理量に基づいて火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムによれば、煙センサとCOセンサを設けているので、通常酸素濃度環境下では従来と同様に煙センサで火災を検出し、低酸素濃度環境下では急激に濃度が上昇するCOをCOセンサで検出することで、いかなる酸度濃度環境下においても早期かつ確実な火災感知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本発明の基本的概念を説明した後、〔II〕本発明の各実施の形態について説明し、〔III〕最後に、本発明の実施の形態に対する変形例について説明する。
【0029】
〔I〕本発明の基本的概念
まず、本発明の基本的概念について説明する。本発明は、酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間において発生した火災を検出するための火災検出システムに関するものである。
【0030】
ここで、対象空間は、基本的に任意であるが、例えば、データセンター、美術館、博物館、文化財保管施設、貴重品倉庫等、火災発生時の消火によるダメージを避けたいとの要求が強い場所や、超高層タワーの電気室等、通常の防火設備を設けることが困難な場所、あるいは、低酸素濃度を保持することで劣化を防止したい貴重品等を保管するような施設が該当する。
【0031】
また、低酸素濃度とは、基本的には、一般大気の酸素濃度(約21%、以下、「通常酸素濃度」と称する)よりも低い全ての酸素濃度を含む概念であり、特に、煙やCOの挙動が通常酸素濃度とは異なり得る濃度(火災により出火に至り得る濃度)である。以下の実施の形態では、約17%以下の酸素濃度を「低酸素濃度」として説明するが、この具体的閾値は任意に変更することができる。
【0032】
このように酸素濃度を調整するため、本発明では、対象空間に、各種の気体を導入する。具体的には、酸素濃度を低下させる場合には、不活性ガス又は不活性ガスを高濃度で含んだガスを導入する。ここで、不活性ガスの種類は任意であるが、以下では、窒素ガスを用いた例を説明するものとし、窒素ガス、又は。窒素ガスを通常よりも高濃度で含んだガスを、「窒素富化ガス」と称する。また、酸素濃度を上昇させる場合には、外気、酸素、酸素を通常よりも高濃度で含んだガス、又は、対象空間における酸素濃度よりも高い酸素濃度のガスを導入する。以下では、酸素又は酸素を高濃度で含んだガスを、「酸素富化ガス」と称する。
【0033】
ここで、本発明の特徴の一つは、火災を検出するセンサを、対象空間における2以上の位置に配置している点にある。ここで、2以上の位置に配置する形態としては、2位置のそれぞれに固定的にセンサを配置する形態(後述する実施の形態1に示す形態)と、一つのセンサを2位置に移動させる形態(後述する実施の形態2に示す形態)とを挙げることができる。そして、対象空間が通常酸素濃度の場合と低酸素濃度の場合とで火災検出に用いるセンサの位置を切り替えることで、各酸素濃度環境下に適した位置で火災検出を行う。
【0034】
また、本発明の他の特徴は、火災を検出するセンサとして、煙センサとCOセンサの2種類のセンサを設けた点にある。そして、対象空間が通常酸素濃度の場合と低酸素濃度の場合とで火災検出に用いるセンサの種類を切り替えることで、各酸素濃度環境下に適した種類のセンサで火災検出を行う(後述する実施の形態3に示す形態)。
【0035】
〔II〕本発明の実施の形態
以下、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムの各実施の形態について説明する。これら各実施の形態においては、火災検出システム等の全体構成について説明した後、この火災検出システムによって行われる火災検出処理について説明する。
【0036】
〔実施の形態1〕
最初に、本発明に係る実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、火災を検出するセンサを、対象空間における2位置のそれぞれに固定的にセンサを配置するものである。
【0037】
(火災検出システムの構成)
図1は、本実施の形態1に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図1において、対象空間1は特許請求の範囲における酸素濃度可変空間に対応するもので、上下左右を壁面にて囲繞された閉鎖空間として構成されている。この対象空間1には、図示のように、煙センサ2、COセンサ3a〜3d(必要に応じてCOセンサ3と総称する)、及び、O2センサ4が配置されており、対象空間1の近傍には、酸素濃度調整ユニット5、酸素濃度制御盤6、及び、火災監視盤7が配置されている。そして、これら各部は、図示点線で示すように相互に電気的に接続されている。
【0038】
このうち、煙センサ2は、対象空間1における煙の発生量に基づいて火災を検出するもので、特許請求の範囲における煙センサに対応する。この煙センサ2による検出原理は任意であるが、例えば、発光手段と受光手段とを備え、発光手段にて発光された光の煙による散乱光を受光手段にて受光し、この受光量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断して発報信号を出力する。
【0039】
ここで、煙センサ2は、通常酸素濃度環境下において煙を早期に感知するために好適な位置、具体的には、対象空間1の天井1aに設置されている。図2には、通常酸素濃度下における対象空間1の温度分布、図3には、低酸素濃度下における対象空間1の温度分布を示す(横軸は火源となるヒータをONしてからの経過時間、縦軸は初期値からの温度変化を示す)。この図2に示すように、通常酸素濃度下においては発火に至るために温度が急激に上昇するが、図3に示すように、低酸素濃度下においては発火に至らないために温度上昇が小さいことが分かる。すなわち、対象空間1が通常酸素濃度である場合には、火災が発生すると高温の熱気流が立ち上がり、この熱気流に伴って煙が天井1aの近傍に早期に上昇するので、この煙を早期に検出し得るように、天井1aに煙センサ2が配置されている。なお、以下では、煙センサ2の設置位置を「第1の検出位置」と称し、対象空間1の床面から煙センサ2の設置位置(天井1aの下面の位置)に至る高さを「第1の検出高さ(符号H1)」と称する。
【0040】
また、COセンサ3は、対象空間1におけるCOの発生量に基づいて火災を検出するもので、特許請求の範囲におけるCOセンサに対応する。このCOセンサ3は、CO検出素子を備え、このCO検出素子にて検出されたCOの量が所定の閾値を超えた場合には火災が発生したものと判断する。ここで、COセンサ3は、低酸素濃度環境下においてCOを早期に感知するための好適な位置、具体的には、煙センサ2の設置位置よりも低い位置に設置されている。すなわち、対象空間1が低酸素濃度である場合には、図3に示したように、火災源があっても不完全燃焼状態になって出火せず、煙やCOが熱気流によって上昇せずに対象空間1の全体にゆっくりと漂うので、このCOを早期に検出し得るように、天井1aよりも低い位置にCOセンサ3が配置されている。以下では、COセンサ3の設置位置を「第2の検出位置」と称し、対象空間1の床面からCOセンサ3の設置位置(天井1aより下方位置)に至る高さを「第2の検出高さ(符号H2)」と称する。
【0041】
ここで、第2の検出位置は、COが人によって吸引された場合に当該人に与える悪影響を考慮して決定することが好ましい。すなわち、人がCOを一定量以上吸引するとその生命に危険が生じ得るため、人の頭が位置する高さにおいてCOを検出し、この検出量が人体に悪影響を与える所定量に達した場合には、火災発生の有無に関わらず、警報等を発することが好ましい。このため、本実施の形態1においては、COセンサ3の第2の検出高さH2を、人の居住域に一致する高さ、例えば、1〜2m程度としている。また、このようにCOセンサ3を人の居住域に一致する高さに容易かつ確実に設置するため、COセンサ3aは、従来と同様に壁面設置型として構成されており、対象空間1の壁面において、第2の検出高さH2の位置に配置されている。また、COセンサ3bはカード型として構成され、COセンサ3cは携帯電話一体型として構成されており、人によって携帯されている。
【0042】
また、第2の検出位置は、CO源になり得る物の位置を考慮して決定することが好ましい。すなわち、低酸素濃度環境下においては火源があっても熱気流が生じずに天井1aに上り難く、COが対象空間1の全体に漂う。このため、COを天井1aの近傍で検出することは難しく、さらに、天井1aより下方の位置であっても、CO源から離れる程検出が難しくなることが考えられる。従って、CO源になり得る物(例えば、可燃物)の近傍にCOセンサ3を配置することが好ましい。このため、COセンサ3dは、移動可能な卓上型として構成されており、対象空間1に配置された机の上に配置されている。
【0043】
これらカード型のCOセンサ3b、携帯電話一体型のCOセンサ3c、及び、卓上型のCOセンサ3dは、公知の一般的なCOセンサの構成に加え、図示しない無線送信部を備えて構成されている。そして、火災発生を感知した場合には、その旨を示す発報信号を無線送信部を介して火災監視盤7に無線送信する。なお、このような無線送信部は、公知の無線式火災感知器に用いられている構成を利用することができるので、その具体的な説明は省略する。
【0044】
また、O2センサ4は、対象空間1の酸素濃度を測定するための酸素濃度測定手段である。このO2センサ4の設置位置は任意であるが、本実施の形態1においては、対象空間1の壁面に設置されている。
【0045】
次に、酸素濃度調整ユニット5は、対象空間1の酸素濃度を、通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整する酸素濃度調整手段である。この酸素濃度調整ユニット5は、例えば、酸素濃度を調整するための各種装置を、1つの筐体の内部に収容してユニット構成されている。具体的には、この筐体に、外気を圧送するためのコンプレッサ、このコンプレッサにて圧送された外気から酸素と窒素とを分離して窒素富化ガスと酸素富化ガスとを生成する酸素分離フィルタ、この酸素分離フィルタによって生成された酸素富化ガスを貯留するための酸素富化タンク、この酸素分離フィルタによって生成された窒素富化ガスを貯留するための窒素富化タンク等を備えて構成されている。
【0046】
また、酸素濃度制御盤6は、酸素濃度調整ユニット5を制御する酸素濃度制御手段である。この酸素濃度制御盤6は、O2センサ4によって測定された酸素濃度を参照しつつ、酸素濃度調整ユニット5を制御して対象空間1に酸素富化ガス又は窒素富化ガスを供給させることにより、この対象空間1の酸素濃度を所望の酸素濃度に調整する。
【0047】
また、火災監視盤7は、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを煙センサ2とCOセンサ3とのいずれか一方に切り替えることにより、火災の検出位置を変更するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図4は、火災監視盤7の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図4に示すように火災監視盤7は、アンテナ7a、スピーカ7b、メモリ7c、外部入出力端子7d、及び、制御部7eを備えて構成されている。
【0048】
このうち、アンテナ7aは、カード型のCOセンサ3b、携帯電話一体型のCOセンサ3c、及び、卓上型のCOセンサ3dからの無線出力を受信する受信手段である。また、スピーカ7bは、火災発生時にブザー音を鳴動させる音声出力手段である。また、メモリ7cは、当該火災監視盤7の処理に必要な各種の情報を記憶する記憶手段であり、特に、通常酸素濃度と低酸素濃度との境界を示す閾値を記憶する。また、外部入出力端子7dは、当該火災監視盤7に対する入力及び当該火災監視盤7からの出力を行うための端子群であり、この外部入出力端子7dにおいて当該火災監視盤7は、上述した煙センサ2、COセンサ3、及び、酸素濃度制御盤6の他、図示しない連動先の外部機器に電気的に接続されている。また、制御部7eは、当該火災監視盤7の各部を制御する制御手段であり、例えば、メモリ7cに記憶された制御プログラムをロードして実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成されている。
【0049】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。図5は、この火災検出処理のフローチャートである。この図5に示すように、火災監視盤7の制御部7eは、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるか(17%以上であるか否か)を監視する(ステップSA−1)。
【0050】
そして、通常酸素濃度である場合(ステップSA−1、Yes)、制御部7eは、第1の検出高さH1に配置されたセンサ(つまり、本実施の形態1では煙センサ2)から、発報出力が行われたか否かを監視する(ステップSA−2)。そして、発報出力が行われた場合(ステップSA−2、Yes)、制御部7eは、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSA−3)。このように、通常酸素濃度時には、天井1aの近傍の煙センサ2を用いて火災感知を行うことができるので、熱気流によって天井1aの近傍に上昇する煙を感知することで早期の火災感知を行うことができる。
【0051】
一方、ステップSA−1において、対象空間1の酸素濃度が低酸素濃度であると判断された場合(ステップSA−1、No)、制御部7eは、第2の検出高さH2に配置されたセンサ(つまり、本実施の形態1ではCOセンサ3)から、発報出力が行われたか否かを監視する(ステップSA−4)。そして、発報出力が行われた場合(ステップSA−4、Yes)、制御部7eは、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSA−3)。このように、低酸素濃度時には、天井1aの近傍より下方のCOセンサ3を用いて火災感知を行うことができるので、天井1aの近傍に上昇せずに対象空間1の全体に漂うCOを感知することで早期の火災感知を行うことができる。
【0052】
(実施の形態1の変形例)
次に、本発明に係る実施の形態1の変形例について説明する。この変形例に係る火災検出システムは、第1の検出位置に熱センサ(熱感知器)、第2の検出位置に煙センサ及びCOセンサを配置した点において、第1の検出位置に煙センサ、第2の検出位置にCOセンサを配置した実施の形態1と異なる。ただし、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
(火災検出システムの構成)
図6は、この変形例に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図6において、第1の検出位置H1には熱センサ8、第2の検出位置H2には煙センサ2及びCOセンサ3b〜3dが配置されている。
【0054】
このうち、熱センサ8は、対象空間1の温度に基づいて火災を検出するもので、特許請求の範囲におけるセンサに対応する。この熱センサ8による検出原理は任意であるが、例えば、サーミスタ等の温度検出素子を備え、この温度検出素子の出力が所定の閾値を超えた場合には、火災が発生したものと判断して発報信号を出力する。
【0055】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。ただし、この火災検出処理は、図5に示した実施の形態1の火災検出処理と同様に行うことができるため、概要のみを説明する。すなわち、火災監視盤7は、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるかを監視し、通常酸素濃度である場合には、第1の検出高さH1に配置された熱センサ8からの発報出力の有無、低酸素濃度時には、第2の検出高さH2に配置された煙センサ2及びCOセンサ3b〜3dからの発報出力の有無を監視して、発報出力が行われた場合には、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる。この変形例によれば、特に、通常酸素濃度である場合には熱センサ8にて火災を検知することで、火災センサとして現在最も普及している熱センサをそのまま利用でき、既設の建屋においても酸素濃度可変空間の火災検出システムを容易かつ安価に構築できる。なお、第2の検出高さH2に配置するセンサとしては、煙センサ2又はCOセンサ3b〜3dのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0056】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、対象空間1の酸素濃度に応じて、火災感知に使用するセンサの種類と位置を自動的に変更することができるので、酸素濃度に応じて変化する対象空間1の物理現象に好適な形態で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、2つの位置のそれぞれにセンサを配置しておくことで、後述する実施の形態2のように1つのセンサを2位置に移動させるための機構や制御が不要になることから、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。また、COセンサ3を人の居住域に配置しているので、COを吸引することによって人に悪影響が出ることを防止でき、火災以外の安全性にも配慮した火災検出システムを構築できる。さらに、第1の検出高さH1に熱センサ8を配置した場合には、火災センサとして現在最も普及している熱センサをそのまま利用でき、既設の建屋においても酸素濃度可変空間の火災検出システムを容易かつ安価に構築できる。
【0057】
〔実施の形態2〕
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る火災検出システムは、1つのセンサを2つの位置に移動させるものである点において、2つのセンサを固定的に配置した実施の形態1と異なる。ただし、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
(火災検出システムの構成)
図7は、本実施の形態2に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図7において、対象空間1には、煙センサ2、O2センサ4、昇降装置10、プロジェクタスクリーン11、酸素濃度調整ユニット5、酸素濃度制御盤6、及び、火災監視盤12を備えて構成されており、これら各部が図示点線で示すように電気的に接続されている。
【0059】
このうち、昇降装置10は、煙センサ2を第1の検出高さH1と第2の検出高さH2との2位置に移動させるもので、特許請求の範囲における移動手段に対応する。この昇降装置10の具体的構成は任意であるが、例えば、鉛直方向に沿った向きで壁面に固定された空圧式のアクチュエータとして構成されており、このアクチュエータを動作させることによって、煙センサ2を移動可能である。
【0060】
また、プロジェクタスクリーン11は、図示しないプロジェクター装置から投影された画像を表示するための投影用のロールスクリーンである。図8には、このプロジェクタスクリーン11の斜視図を示す。この図8に示すように、プロジェクタスクリーン11は、画像の被投影面を構成するスクリーン11aと、このスクリーン11aを巻き取り又は巻き出しするための巻き取り機構11bとを備えて構成されている。ここで、スクリーン11aの下端部には煙センサ2が固定されており、このスクリーン11aを巻き取り機構11bによって巻き取り又は巻き出しすることにより、スクリーン11aに伴って煙センサ2が昇降される。
【0061】
すなわち、プロジェクタスクリーン11は、通常の投影用のロールスクリーンとしての機能の他、煙センサ2を第1の検出高さH1と第2の検出高さH2との2位置に移動させる手段としても利用されており、特許請求の範囲における移動手段に対応する。なお、プロジェクタスクリーン11の具体的構成は、従来の自動巻き取り式のプロジェクタスクリーンと同様に構成することができるので、その詳細な説明を省略する。
【0062】
また、火災監視盤12は、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを煙センサ2とCOセンサ3とのいずれか一方に切り替えることにより、火災の検出位置を変更するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図9は、火災監視盤12の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図9に示すように火災監視盤12は、スピーカ12a、メモリ12b、外部入出力端子12c、及び、制御部12dを備えて構成されており、これら各部は、制御部12bの制御内容を除いて、実施の形態1のスピーカ7b、メモリ7c、外部入出力端子7d、及び、制御部7eとそれぞれ略同様に構成されている。
【0063】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。図10は、この火災検出処理のフローチャートである。この図10に示すように、火災監視盤12の制御部12dは、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるか(17%以上であるか否か)を監視する(ステップSB−1)。そして、通常酸素濃度である場合(ステップSB−1、Yes)、制御部12dは、煙センサ2が上方位置、すなわち、第1の検出高さH1に配置されているか否かを判断し(ステップSB−2)、配置されていない場合には(ステップSB−2、No)、昇降装置10に制御信号を送ってアクチュエータを駆動させると共に、巻き取り機構11bに制御信号を送ってスクリーン11aを巻き取らせることで、煙センサ2を第1の検出高さH1になるまで移動させる(ステップSB−2〜ステップSB−3)。
【0064】
そして、制御部12dは、この煙センサ2から発報出力が行われたか否かを監視し(ステップSB−4)、発報出力が行われた場合には(ステップSB−4、Yes)、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSB−5)。このように、通常酸素濃度時には、煙センサ2を天井1aの近傍に移動させて火災感知を行うことができるので、熱気流によって天井1aの近傍に上昇する煙を感知して早期の火災感知を行うことができる。
【0065】
一方、ステップSB−1において、対象空間1の酸素濃度が低酸素濃度であると判断された場合(ステップSB−1、No)、制御部12dは、煙センサ2が下方位置、すなわち、第2の検出高さH2に配置されているか否かを判断し(ステップSB−6)、配置されていない場合には(ステップSB−6、No)、昇降装置10に制御信号を送ってアクチュエータを駆動させると共に、巻き取り機構11bに制御信号を送ってスクリーン11aを巻き出させることで、煙センサ2を第2の検出高さH2になるまで移動させる(ステップSB−6〜ステップSB−7)。
【0066】
そして、制御部12dは、この煙センサ2から発報出力が行われたか否かを監視し(ステップSB−4)、発報出力が行われた場合には(ステップSB−4、Yes)、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSB−5)。このように、低酸素濃度時には、煙センサ2を天井1aの近傍より下方に移動させて火災感知を行うことができるので、天井1aの近傍に上昇せずに対象空間1の全体に漂う煙を感知することで早期の火災感知を行うことができる。
【0067】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、対象空間1の酸素濃度に応じて、火災感知に使用するセンサを自動的に移動させてその位置を変更することができるので、酸素濃度に応じて変化する対象空間1の物理現象に好適な位置で火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、1つのセンサを2つの位置に移動させることから、実施の形態1のように2位置のそれぞれにセンサを配置しておく必要がなく、センサ個数を減らすことで、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0068】
〔実施の形態3〕
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。本実施の形態3に係る火災検出システムは、略同一高さに配置した複数種類のセンサを、対象空間1の酸素濃度に応じて切り替えるものである点において、高さが異なる複数の位置に配置したセンサを、対象空間1の酸素濃度に応じて切り替える実施の形態1と異なる。ただし、実施の形態1と略同様の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したのと同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
(火災検出システムの構成)
図11は、本実施の形態3に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。この図11において、対象空間1には、煙センサ2、COセンサ3a、O2センサ4、酸素濃度調整ユニット5、酸素濃度制御盤6、及び、火災監視盤20を備えて構成されており、これら各部が図示点線で示すように電気的に接続されている。
【0070】
このうち、煙センサ2及びCOセンサ3aは、略同一の高さの位置、具体的には、天井1aの下面に設定されている。なお、本実施の形態3におけるCOセンサ3aは、検出したCOの濃度に応じた電圧の信号を出力する。本実施の形態3において、煙は特許請求の範囲における第1の物理量に対応し、COは特許請求の範囲における第2の物理量に対応する。
【0071】
また、火災監視盤20は、対象空間1の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを煙センサ2とCOセンサ3とのいずれか一方に切り替えることにより、火災の検出位置を変更するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応する。図12は、火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この図12に示すように火災監視盤20は、スピーカ20a、メモリ20b、外部入出力端子20c、及び、制御部20dを備えて構成されており、これら各部は、制御部20dの制御内容を除いて、実施の形態1のスピーカ7b、メモリ7c、外部入出力端子7d、及び、制御部7eとそれぞれ略同様に構成されている。
【0072】
ここで制御部20dは、通常酸素濃度環境下では、火災検出に用いるセンサを煙センサ2、低酸素濃度環境下では、火災検出に用いるセンサをCOセンサ3に切り替える。図13には、通常酸素濃度下におけるCOの濃度変化、図14には、低酸素濃度下におけるCOガスの濃度変化を示す(横軸は火源となるヒータをONしてからの経過時間、縦軸はCOガスの濃度を示す)。この図13に示すように、通常酸素濃度下においてはCOの濃度は緩やかに上昇するが、図14に示すように、低酸素濃度下においてはCOの濃度が急激に上昇することが分かる。このため、本実施の形態3においては、通常酸素濃度下においては従来と同様に煙センサ2にて火災を感知し、低酸素濃度下においてCOセンサ3にて火災を感知する。
【0073】
(火災検出処理)
次に、上記のように構成された火災検出システムにおける火災検出処理について説明する。図15は、この火災検出処理のフローチャートである。この図15に示すように、火災監視盤20の制御部20dは、O2センサ4からの出力に基づいて、対象空間1の酸素濃度が通常酸素濃度であるか又は低酸素濃度であるか(17%以上であるか否か)を監視する(ステップSC−1)。そして、通常酸素濃度である場合(ステップSC−1、Yes)、制御部20dは、煙センサ2から発報出力が行われたか否かを監視し(ステップSC−2)、発報出力が行われた場合には、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSC−3)。このように、通常酸素濃度時には、煙センサ2の出力に基づいて火災感知を行うことができるので、通常酸素濃度環境下で火災初期に増加する煙を感知して早期の火災感知を行うことができる。
【0074】
一方、ステップSC−1において、対象空間1の酸素濃度が低酸素濃度であると判断された場合(ステップSC−1、No)、制御部20dは、COセンサ3aから出力に基づいて、対象空間1のCO濃度が、火災発生を示す所定のCO濃度(例えば、150ppm。以下、火災CO濃度)以上であるか否かを監視し(ステップSC−4)、火災CO濃度以上である場合には(ステップSC−4、Yes)、警報音を鳴らして火災を報知すると共に、所定の外部機器に対して連動の発報出力を行うことで連動動作を行わせる(ステップSC−3)。また、ステップSC−4において、火災CO濃度以上でないと判断された場合(ステップSC−4、No)、制御部20dは、火災CO濃度より低い濃度であるが人体に危険を生じさせ得る所定のCO濃度(例えば、50ppm。以下、危険CO濃度)以上であるか否かを監視し(ステップSC−5)、危険CO濃度以上である場合には警報音を鳴らして危険を報知する(ステップSC−6)。このように、低酸素濃度時には、COセンサ3の出力に基づいて火災感知を行うことができるので、低酸素濃度環境下で火災初期に増加するCOを感知して早期の火災感知を行うことができる。
【0075】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、対象空間1の酸素濃度に応じて、火災感知に使用するセンサの種類を自動的に切り替えることができるので、酸素濃度に応じて火災初期に増加する物理量に基づいて火災感知を行うことができ、早期かつ確実な火災感知を行うことができる。また、2つの位置のそれぞれにセンサを配置しておくことで、上述した実施の形態2のように1つのセンサを2位置に移動させるための機構や制御が不要になることから、火災監視システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0076】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び方法は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0077】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、上記に記載されていない課題を解決したり、上記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、対象空間1における火災を完全に検出できない場合であっても、従来の火災検出システムより若干でも迅速に火災を検出できている限りにおいて、本願の課題は達成されている。
【0078】
(各実施の形態の関係)
各実施の形態に示した種々の特徴は、相互に混在させることもできる。例えば、実施の形態2では、煙センサのみを用いているが、実施の形態1や実施の形態3と同様に、さらにCOセンサを用いてもよい。あるいは、実施の形態1において煙センサのみを第1の検出高さと第2の検出高さに設け、対象空間1の酸素濃度に基づいて切り替えてもよい。また、実施の形態1のように固定的に設置した煙センサ又はCOセンサと、実施の形態2のように移動可能に配置した煙センサとを用いることもできる。
【0079】
(火災センサの種類、個数、連動形態について)
火災を検出するためのセンサの種類、個数、又は、連動形態は、上述したものに限定されない。例えば、実施の形態1においては、通常酸素濃度時には煙センサ、低酸素濃度時にはCOセンサを用いているが、低酸素濃度時には煙センサとCOセンサの両方を用いることとし、いずれか一方から発報出力が出された場合には火災と判断し、あるいは、両方の発報出力のANDをとって火災判断を行ってもよい。また、火災センサの具体的形式も任意であり、例えば、居住域の高さである第2の検出高さに人や物が存在しない場合には、分離型のセンサを用いて広範な領域をカバーするようにしてもよい。また、火災センサの個数も任意であり、同一種類のセンサを複数配置してもよい。また、COセンサを携帯式とする場合にも種々の形態を取ることができ、例えば、パソコン、固定電話、構内PHS端末等の内部に組み込んでもよい。また、実施の形態1〜3においては、検出された煙やCOが所定量以上であるか否かに基づいて火災有無を判別しているが、単位時間あたりの検出量(検出量の傾き)が所定量以上になった場合に火災が発生したと判断してもよい。また、一つのセンサに煙とCO、あるいは、熱とCOの両方の検出機能を備えた複合型のセンサを用いてもよい。
【0080】
(検出位置について)
また、第1の検出位置や第2の検出位置に加え、他の検出位置を設定してここにセンサを配置してもよい。例えば、酸素濃度を3つ以上のレベルに区分し、各レベルに応じた異なる位置に配置されたセンサを用いて火災を検出してもよい。
【0081】
(火災センサの切り替え形態について)
火災センサの切り替えは、O2センサ4からの出力に基づいて行っているが、対象空間1の酸素濃度を酸素濃度制御盤6から受け取り、これに基づいて行ってもよい。また、必ずしも自動に限られず、ユーザが手動で切り替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係る酸素濃度可変空間における火災検出システムは、酸素濃度可変空間における火災検出のために利用され、特に、火災を如何なる酸素濃度でも早期かつ確実に検出することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図2】通常酸素濃度下における対象空間の温度分布を示す図である。
【図3】低酸素濃度下における対象空間の温度分布を示す図である。
【図4】火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図5】実施の形態1に係る火災検出処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態1の変形例に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図8】プロジェクタスクリーンの斜視図である。
【図9】火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図10】実施の形態2に係る火災検出処理のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態3に係る火災検出システムの全体構成を示す図である。
【図12】火災監視盤の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図13】通常酸素濃度下におけるCOの濃度変化を示す図である。
【図14】低酸素濃度下におけるCOの濃度変化を示す図である。
【図15】実施の形態3に係る火災検出処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 対象空間
1a 天井
2 煙センサ
3、3a〜3d COセンサ
4 O2センサ
5 酸素濃度調整ユニット
6 酸素濃度制御盤
7、12、20 火災監視盤
7a アンテナ
7b、12a、20a スピーカ
7c、12b、20b メモリ
7d、12c、20c 外部入出力端子
7e、12d、20d 制御部
8 熱センサ
10 昇降装置
11 プロジェクタスクリーン
11a スクリーン
11b 巻き取り機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、
前記酸素濃度可変空間における第1の検出位置と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の検出位置よりも下方である第2の検出位置と、の少なくとも2位置において火災を検出可能なセンサ、
を備えることを特徴とする酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項2】
前記センサは、
前記第1の検出位置に設置された第1のセンサと、
前記第2の検出位置に設置された第2のセンサとから構成され、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとの両方又はいずれか一方に切り替えることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項3】
前記第1のセンサは、煙センサであり、
前記第2のセンサは、COセンサであること、
を特徴とする請求項2に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項4】
前記センサを、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置とに移動させる移動手段と、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、前記センサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとのいずれか一方に前記移動手段を介して移動させることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項5】
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の検出位置において前記センサによる火災を検出可能とし、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の検出位置において前記センサによる火災を検出可能としたこと、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項6】
前記第1の検出位置は、前記酸素濃度可変空間における天井近傍の位置であること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項7】
酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、
前記酸素濃度可変空間における所定の第1の物理量と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の物理量とは異なる第2の物理量と、の少なくとも2種類の物理量を検出することによって火災を検出可能なセンサ、
を備えることを特徴とする酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項8】
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能とし、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能としたこと、
を特徴とする請求項7に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項9】
前記第1の物理量は、煙であり、
前記第2の物理量は、COであること、
を特徴とする請求項7又は8に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項1】
酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、
前記酸素濃度可変空間における第1の検出位置と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の検出位置よりも下方である第2の検出位置と、の少なくとも2位置において火災を検出可能なセンサ、
を備えることを特徴とする酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項2】
前記センサは、
前記第1の検出位置に設置された第1のセンサと、
前記第2の検出位置に設置された第2のセンサとから構成され、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、火災の検出に用いるセンサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとの両方又はいずれか一方に切り替えることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項3】
前記第1のセンサは、煙センサであり、
前記第2のセンサは、COセンサであること、
を特徴とする請求項2に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項4】
前記センサを、前記第1の検出位置と前記第2の検出位置とに移動させる移動手段と、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度に基づいて、前記センサを前記第1のセンサと前記第2のセンサとのいずれか一方に前記移動手段を介して移動させることにより、前記センサにおける火災の検出位置を変更する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項5】
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の検出位置において前記センサによる火災を検出可能とし、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の検出位置において前記センサによる火災を検出可能としたこと、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項6】
前記第1の検出位置は、前記酸素濃度可変空間における天井近傍の位置であること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項7】
酸素濃度を通常酸素濃度から低酸素濃度にかけて調整可能な酸素濃度可変空間における火災を検出するための火災検出システムであって、
前記酸素濃度可変空間における所定の第1の物理量と、前記酸素濃度可変空間における前記第1の物理量とは異なる第2の物理量と、の少なくとも2種類の物理量を検出することによって火災を検出可能なセンサ、
を備えることを特徴とする酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項8】
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が所定の酸素濃度以上である場合には、前記第1の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能とし、
前記酸素濃度可変空間の酸素濃度が前記所定の酸素濃度未満である場合には、前記第2の物理量を検出することによって前記センサによる火災を検出可能としたこと、
を特徴とする請求項7に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【請求項9】
前記第1の物理量は、煙であり、
前記第2の物理量は、COであること、
を特徴とする請求項7又は8に記載の酸素濃度可変空間における火災検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−236086(P2006−236086A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51095(P2005−51095)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
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