説明

酸素燃焼におけるCO2回収の方法及び装置

酸素の供給源と、酸素を用いて炭素質燃料を燃焼させ、それにより主な成分としてCO、水、及び過剰酸素を含む燃焼ガスを作るための燃焼チャンバとを有する、炭素質燃料を燃焼させる発電所から出る燃焼ガスからCOを回収する方法及び装置。燃焼ガスの少なくとも一部分が約6MPa(60バール)を超える圧力まで圧縮され、COの第1の部分を凝縮して、液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れを作ることによりCOの第1の部分を回収するために、圧縮された燃焼ガスが1次CO分離ユニット内で冷却され、液体CO流れが発電所から排出され、COの第2の部分を吸着物質に吸着させることによりCOの第2の部分を回収するために、高圧排気ガス流れが2次CO分離ユニットへ送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素燃焼におけるCO回収の方法及びシステムに関するものである。より詳細には、本発明は、CO冷却負荷(CO cooling duty)及び圧縮力を最適化する、2段階方式のCO回収工程に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発電所の燃焼ガスは、通常、(体積で)約4%〜14%の二酸化炭素(CO)を含んでいる。このCOは、温室効果を高めて地球を温暖化させる重要要因の代表的なものであると一般に考えられている。したがって、安全な貯蔵場所へ容易に輸送できるか、又は別の用途へ利用できる、加圧されたCOの濃縮流を生じさせるために、燃焼ガスからCOを回収する効率的な手法が必要であることは明らかである。COは主に以下の4つの技術によってガス流れから回収される。吸収(COが液体溶媒に選択的に吸収される)、膜(COが半透性プラスチック膜又は半透性セラミック膜によって分離される)、吸着(COが特別に設計された固体粒子の表面に吸着されることによって分離される)、および低温/高圧処理(COを凝縮することによって分離を実現する)。
【0003】
現在、燃焼ガスからCOを回収する実証済みの最良の手法は、燃焼ガスをアミン溶液で洗浄してCOをアミン溶液に吸収させる手法である。この技術は、小規模の燃焼ガスからのCO回収システムに対しての処理としては商用形態にまで及んでいる。しかし、この技術を適用することは、発電所の全体の効率を大幅に低下させる。別の問題点は、不純物による溶液の汚染を最小にするには、例えば硫黄酸化物及び窒素酸化物を燃焼ガスから取り除くための効果的な措置が必要となることである。
【0004】
酸素燃焼システムは、一次燃料の燃焼の際に、空気の代わりに、通常は空気分離ユニット(air separation unit(ASU))で生成される酸素を使用する。この酸素は、燃焼温度を適切な水準に維持するために、しばしば、再循環させられた燃焼ガスなどの不活性ガスと混合される。酸素燃焼過程では、主要な成分としてCO、水、及びOを含む燃焼ガスが生成され、COの濃度は、通常、体積で約70%を超える。したがって、酸素燃焼過程の燃焼ガスからのCO回収は、低温での分離(refrigerated separation)を利用して比較的容易に実現できる。通常、酸素燃焼過程の燃焼ガスを圧縮して冷却することにより、燃焼ガスから水蒸気が取り除かれる。COを分離して貯蔵場所へ送る前に、燃焼ガスから大気汚染物質及び凝縮されていないガス(窒素など)を取り除くために、燃焼ガスの別の処理が必要となる場合がある。
【0005】
米国特許第6,898,936号明細書(特許文献1)は、燃焼ガスの再循環を用いた酸素燃焼過程を開示している。ここでは、燃焼ガスからCOを凝縮するために、燃焼ガスの一部分が、複数のステップで圧縮されて約34.5MPa(345バール)の非常に高い圧力まで圧縮され、COの臨界温度である31.05℃を下回るまで冷却される。その結果生じる、Oを豊富に含むガス流れは、膨張させられて約13.8MPa(138バール)まで戻り、空気分離ユニットへ送られる。
【0006】
米国特許第6,574,962号明細書(特許文献2)は、燃焼ガスの再循環を用いた酸素燃焼過程を開示している。ここでは、燃焼ガスからCOを凝縮するために、燃焼ガスの一部分が、約−51℃〜約−12℃の範囲の非常に低い温度まで複数のステップで冷却されて約0.58MPa(5.8バール)を上回るように圧縮される。その結果生じる、Oを豊富に含むガス流れは、空気分離ユニットからのOを豊富に含むガス流れと混合され、燃焼ガスとして燃焼炉へ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,898,936号明細書
【特許文献2】米国特許第6,574,962号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術の解決策は、COを回収するために非常に高い圧力又は非常に低い温度のどちらかを利用することから複雑となる。したがって、炭素質燃料の酸素燃焼による燃焼ガスからCOを回収するためのより単純且つより経済的な処理がやはり必要である。
【0009】
本発明の目的は、酸素燃焼におけるCO回収の効率的な方法を提供することである。
本発明の別の目的は、酸素燃焼におけるCO回収の効率的なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一観点によると、本発明は、酸素の供給源と、酸素を用いて炭素質燃料を燃焼させ、それにより主な成分としてCO、水、及び過剰酸素を含む燃焼ガスを生成するための燃焼チャンバとを有する炭素質燃料を燃焼させる発電所から出る燃焼ガスからCOを回収する方法を提供する。この方法は、(a)燃焼ガスの少なくとも第1の部分を第1の燃焼ガス・チャネルに送るステップと、(b)約6MPa(60バール)を超える圧力まで圧縮された燃焼ガス流れを作るために燃焼ガスの第1の部分を圧縮するステップと、(c)COの第1の部分を凝縮させて、第1の液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCO(excess CO)を含む高圧排気(ベント、vent)ガス流れを作ることによりCOの第1の部分を回収するために、圧縮された燃焼ガス流れを1次CO分離ユニット内で冷却するステップと、(d)発電所から第1の液体CO流れを排出するステップと、(e)COの第2の部分を吸着物質に吸着させることによりCOの第2の部分を回収するために、高圧排気ガス流れを2次CO分離ユニットへ送るステップとを含む。
【0011】
別の観点によると、本発明は、酸素の供給源と、酸素を用いて炭素質燃料を燃焼させ、それにより主な成分としてCO、水、及び過剰酸素を含む燃焼ガスを生成するための燃焼チャンバとを有する炭素質燃料を燃焼させる発電所から出る燃焼ガスからCOを回収する装置を提供する。この装置は、COを回収する手段へ向かうように燃焼ガスの少なくとも第1の部分を導くための第1の燃焼ガス・チャネルと、約6MPa(60バール)を超える圧力まで圧縮された燃焼ガス流れを作るように燃焼ガスの第1の部分を圧縮するための、第1の燃焼ガス・チャネル内に配置された最終圧縮機と、COの第1の部分を凝縮して、第1の液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れを作ることにより1次CO分離ユニット内でCOの第1の部分を回収するために、圧縮された燃焼ガス流れを冷却する、第1の燃焼ガス・チャネルに連結された最終冷却手段と、発電所から第1の液体CO流れを排出する手段と、COの第2の部分を吸着物質に吸着させることによりCOの第2の部分を回収するために、吸着物質を含む2次CO分離ユニットへ高圧排気ガス流れを送る通路とを有する。
【0012】
炭素質燃料が発電所の燃焼チャンバ内で燃焼する際、生成される燃焼ガスは当初、循環流動層(circulating fluidized bed(CFB))ボイラの場合には一般的には約800℃などの高温となる。酸素燃焼を利用する場合、燃焼温度を適切な水準に維持するために、通常、酸素に加えて、再循環させられた燃焼ガスなどの不活性ガスが燃焼炉に注入される。燃焼チャンバは、通常、周囲圧に近い圧力で作動され、それにより、燃焼炉から出る燃焼ガスの圧力も0.1MPa(1バール)に近いものとなる。しかし、約1MPa(10バール)などの高い圧力で燃焼チャンバを作動させることも可能であり、その結果、燃焼ガスの圧力もそれに応じて初めから高い圧力となる。
【0013】
燃焼ガス・チャネルの上流部分は、通常、過熱器、再熱器及び燃料節約装置などの、燃焼ガスの温度を約250℃などの低温まで減少させるような、蒸気生産に関連する様々な熱交換器を有する。燃料節約装置領域の下流にある燃焼ガスの第1の部分はCO回収手段へ向かうように案内され、また、燃焼ガスの第2の部分は燃焼炉に直接戻るように再循環させることができる。本発明は、燃焼ガスの第1の部分からCOを回収する方法及び装置に関するものである。
【0014】
通常、燃焼ガスは、例えば使用される燃料に応じて、更には燃焼ガスの再循環に応じて、典型的には約10%〜約40%の比較的多量の水を含む。乾燥ステップの目的は燃焼ガスの第1の部分から水を効率的に取り除くことであるが、その結果、そうしない場合に高圧で比較的低温である下流ステージに凍結した水(すなわち、氷又は氷粒子)が存在することによって発生するおそれのある不都合が回避される。処理された燃焼ガス流れに元々存在していた水のうちの好適には約95%を超える、更に好適には約99%を超える水が除去される。
【0015】
通常、燃焼ガスの乾燥は、燃焼ガスを適切な温度まで冷却して水を凝縮させることによって実施される。好適には乾燥は2つのステップで行われ、第1の冷却ステップは燃焼ガスの当初の圧力で、すなわち通常はほぼ周囲温度で行われることが有利であり、第2の冷却ステップは例えば約1.6MPa(16バール)などの高い圧力で行われる。次いで、最終的な乾燥が、加圧された燃焼ガスを例えば約32℃などの適切な温度まで冷却することによって実施できる。場合によっては、単一の圧力のみで乾燥ステップを実施することが有利である可能性がある。更に、場合によっては、3つ以上の圧力水準で燃焼ガスを乾燥させることが有利である可能性もある。乾燥ステップは化学的な水分除去(chemical de−moisture)で完了できると有利である。燃焼ガスに水分がないことにより、このシステムの下流ステージにおいて、又は、このシステムから液体COを輸送するためのパイプラインでは酸素は生成されない。
【0016】
酸素燃焼の利点は、燃焼炉に導入される燃焼ガスがNを含んでいないことである。したがって、燃焼炉内の事実上すべての窒素は燃料から出ることになり、燃焼ガス内のNレベル及びNOレベルは比較的低くなる。しかし、燃焼ガスは、従来通りの量のSO、塵埃粒子及び他の汚染物質を含んでいる可能性がある。これらの不純物は従来の手段によって燃焼ガスから除去されてよく、又は、これらの不純物の少なくとも一部分は凝縮水によって燃焼ガスから除去されてもよい。1次CO分離ユニットに入る燃焼ガスに残留しているSO(及びSO)は、その分離ユニット内においてCOと共に凝縮される。
【0017】
その時点で主にCO並びに多少のOを含んでいる乾燥した燃焼ガス流れを約6MPa(60バール)を超える高い圧力まで圧縮することにより、燃焼ガス内のCOの第1の部分を比較的高温、一般には通常の室温に近い温度で凝縮して回収できる。燃焼ガスをこのように高圧に圧縮することにより、COを凝縮するために大量の燃焼ガスを冷凍温度(refrigerated temperature)まで冷却する際のコストをなくすことができる。燃焼ガスは、好適には少なくとも10℃、更に好適には少なくとも15℃の温度まで冷却される。
【0018】
一方で、過度の圧縮に付随するコストをなくすために、燃焼ガスの最終圧力は、最終的な冷却により到達できる温度においてCOの所望部分の凝縮に必要な圧力に限定されるべきである。したがって、最終圧力は、好適には約10MPa(100バール)よりも低く、更に好適には約8MPa(80バール)よりも低くなる。この最終圧力は、米国特許第6,898,936号明細書に記述されている圧力よりも大幅に低い。
【0019】
燃焼ガスの最終的な冷却は、通常は水である冷却剤を用いた熱交換器を使用することによって実施されることが好ましい。発電所の敷地では、河川水などの適切な冷却剤を容易に入手できる可能性がある。或いは、冷却剤は再循環水であってもよく、有利には、この再循環水は、冷却塔を通って再循環されることによって再冷却されてよい。回収されたCOの第1の部分は、重量で、燃焼ガス流れのCOのうちの好適には少なくとも約60%、更に好適には少なくとも約80%を含む。それにより、第1のCO回収ステップで、第1の液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れが作られる。
【0020】
本発明の好適な具体例によると、1次CO分離ユニットは、第1の液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れを作るための精留塔を有する。凝縮器と、頂部の流れのための還流ラインと、底部の液体流れのための再沸器とを有利に有する、適切な数のステージを備える精留塔を使用することにより、例えば、酸素源からのO流れに予想される不純物が存在していても、或いは燃焼システムに漏れがあっても、高純度の液体CO流れを作ることができる。
【0021】
燃焼ガスからできるだけ多量のCOを回収しようとする際の、非常に高圧まで圧縮すること及び/又は非常に低温まで冷却することに関連する問題点は、本発明によれば、排気ガス流れからの過剰のCOの一部分を吸着物質に吸着させることにより2次CO分離ユニット内でCOの第2の部分を回収することにより回避される。過剰のCOのうちの重量で好適には少なくとも約60%、更に好適には少なくとも約90%が2次CO分離ユニット内で吸着される。
【0022】
本発明の好適な具体例によると、2次CO分離ユニットは温度スイング吸着(temperature swing adsorption(TSA))に基づいている。すなわち、吸着されたCOは、後のステージにおいて、吸着物質を加熱することにより加熱物質から放出される。放出されたCOは、熱交換器内で再冷却によって凝縮されることが有利である。PSA(pressure swing adsorption(圧力スイング吸着))の代わりにTSAを使用することにより、COの圧力は維持され、有利には、凝縮されたCOすなわち第2の液体CO流れが、1次CO分離ユニットからの第1の液体CO流れと混合できる。次に、有利には、混合された液体CO流れは、液体COを貯蔵場所又は別の用途へ移動させるために、通常は約10MPa(100バール)〜約16MPa(160バール)の範囲の適切な圧力にポンプで加圧される。
【0023】
本発明の好適な具体例によると、本方法は、電力及び膨張した排気ガス流れを発生させるためのタービンを介して高圧排気ガス流れの少なくとも一部分を膨張させる別のステップを含む。このタービンを使用することにより、発電所の全体の効率を向上させることができる。通常、多量の酸素を含んでいるこの排気ガス流れは、有利には、空気分離ユニットへのインプットガスに適した圧力となるように膨張され、膨張された排気ガス流れの少なくとも一部分は、有利な酸素リッチのインプットガスとして空気分離ユニットへ送られる。
【0024】
上記の簡単な説明、並びに、本発明の別の目的、特徴及び利点は、一般には好適であるがそれでも例示にすぎない本発明の実施例の以下の詳細な説明を添付図面と共に参照することにより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適な実施例による、COを回収するための装置を有する発電所の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の例示の実施例を含む発電所を概略的に表している。例えば、図1は、空気分離ユニット14から燃焼室12へ送られる酸素を用いて炭素質燃料を燃焼させるための燃焼室12を有する発電所10を示している。この燃焼過程により、例えば約75%などの多量のCOを含み更にその他の主成分として水及び過剰酸素を含む燃焼ガス流れが作られる。燃焼室12は、CFBボイラ、PCボイラ、又は他のいくつかの適切なタイプの燃焼室であってよい。燃焼室12はほぼ周囲温度で作動でき、或いは別法として、燃焼室12は、例えば約1MPa(10バール)などの高い圧力で作動されるタイプであってもよい。
【0027】
空気分離ユニット14は、入ってくる空気の流れ16を、酸素を主に含む第1の流れ18、並びに、もう1つの流れである窒素リッチの流れ20に転換する。本発明によると、酸素リッチの流れ18の少なくとも一部分は燃焼室12へ送られ、窒素リッチの流れ20は大気中へ出される又は別の用途へ送られる。
【0028】
燃焼室12の燃焼炉内で燃焼する炭素質燃料により作られる燃焼ガスは、燃焼ガス・チャネル22へ送られる。燃焼ガス・チャネルは、過熱器、再熱器及び燃料節約装置などの蒸気を作るための、並びに、排出物質、特に塵埃粒子及びSOを回収するための従来の装置24、26を有してよい。しかし、これらの装置は本発明にとって重要ではないことから、これらの詳細は本明細書では説明しない。
【0029】
燃焼ガスの一部分は、再循環チャネル22’’を介して再循環でき、燃焼炉の温度を所望の水準に維持するために再循環供給路22’’’を通って燃焼室12の燃焼炉まで戻される。以後、燃焼ガスの第1の部分と呼ぶことにする燃焼ガスの残りの部分は、第1の燃焼ガス・チャネルと称されるチャネル22’を介してCO回収手段に向かうように案内される。これらの燃焼ガス流れ部分の分岐点は、図1のように集塵装置26の下流に配置されてよく、或いは、燃焼ガス・チャネル22内の別の適切な位置に配置されてもよい。同じように第2の燃焼ガス・チャネルと称される再循環チャネル22’’及び/又は第1の燃焼ガス・チャネル22’は、例えば、ダンパ、調節弁又は他のフロー・レストリクタなどの燃焼ガスの流量を調節するための手段を有することができると有利であるが、これらは図1には示されていない。
【0030】
燃焼ガスは、通常、約10%〜約40%の比較的多量の水を含むことができる。有利には、この水はCOの回収の前に燃焼ガスから効率的に取り除かれ、その結果、そうしない場合に下流ステージにおいて凍結した水(すなわち、氷又は氷粒子)が存在することによって発生するおそれのある不都合が回避される。第2の燃焼ガス流れに元々存在していた水のうちの約95%を超える水が除去されることが好ましく、99%を超える水が除去されることが更に好ましい。
【0031】
本発明によると、第1の燃焼ガス・チャネル22’は、約6MPa(60バール)を超える圧力において乾燥されて圧縮された燃焼ガス流れを作るために、燃焼ガスの第1の部分を圧縮するための圧縮機システム28及び水を取り除くための水分離器30を有する。図1では、圧縮機システム28は2つの圧縮機28a、28bを有するが、実際には、必要とされる最終圧力を達成するために通常およそ3〜4台の圧縮機が直列に連結される。通常、燃焼ガス流れに対して中間冷却を行うために、図1の熱交換器30bなどの中間熱交換器が、圧縮機の各対の間に設けられる。
【0032】
通常、燃焼ガスの乾燥は、燃焼ガスを適切な温度まで冷却して水を凝縮することによって実施される。好適には乾燥は少なくとも2つのステップで行われ、第1の熱交換器30aが、有利には、燃焼ガスの初期の圧力のところすなわち通常はほぼ周囲温度のところで第1の燃焼ガス・チャネル内に配置され、第2の熱交換器30bが例えば約1.6MPa(16バール)の高い圧力のところに配置される。その結果、加圧された燃焼ガスを例えば約32℃などの適切な温度まで冷却することによって効率的な乾燥を行うことができる。乾燥ステップは、化学的な水分除去で完了できると有利である。燃焼ガスに水分がないことにより、このシステムの下流ステージにおいて、又はこのシステムから液体COを輸送するためのパイプラインにおいて、酸素は生成されない。
【0033】
乾燥されて圧縮された燃焼ガス流れは、第1の液体CO流れ36、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れ38を作るための1次CO分離ユニット34へ送られる。主にCO並びに多少のOを含んでいる乾燥した燃焼ガス流れが6MPa(60バール)を超える圧力まで圧縮されることにより、燃焼ガス内のCOの第1の部分を比較的高温、好適には通常の室温に近い温度で凝縮して回収できる。したがって、燃焼ガスは、好適には少なくとも約10℃の温度まで冷却され、更に好適には少なくとも約15℃まで冷却される。この最終温度は、例えば米国特許第6,574,962号明細書に記述されている温度よりも大幅に高い。
【0034】
燃焼ガスの冷却は、冷却水又は他の適切な冷却剤を用いた熱交換器32を使用して実施される。この冷却水は、海水又は河川水などの外部からの任意の適切な水であってよく、或いは、冷却塔を通って再循環されることによって有利には再冷却され得る回収水であってもよい。回収されたCOの第1の部分は、燃焼ガスの第1の部分のCOのうちの重量で好適には少なくとも約60%、更に好適には少なくとも約80%を含む。次に、第1のCO回収ステップにより、第1の液体CO流れ36、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れ38が作られる。
【0035】
1次CO分離ユニット34は、有利には、液体CO流れ36及び高圧排気ガス流れ38を作るための精留塔40を有することができる。凝縮器42と、上部の流れのための還流ライン44と、液体の底部流れのための再沸器46とを有利には有する、適切な数のステージを備える精留塔40を使用することにより、COが少ない排気ガス流れ38及び高純度の液体CO流れ36を作ることができる。精留塔34は、例えば、10個のステージを備え還流比が0.25である充てん塔であってよい。
【0036】
燃焼ガスからできるだけ多量のCOを回収するために、本発明によると、1次CO分離ユニット34からの排気ガス流れ38は、2次CO分離ユニット48へ送られる。2次CO分離ユニット48は、有利には、排気ガス流れ38から過剰のCOを吸着するための、吸着物質のベッド50を有する。吸着物質ベッド50は、活性炭、ゼオライト又は他の適切な物質を含んでよい。従来技術で知られているような、非常に高圧まで圧縮すること及び/又は非常に低温まで冷却することに関連する問題点は、最終的なCO回収を吸収ベッド50で実施することによって回避される。過剰のCOのうちの重量で好適には少なくとも約60%、更に好適には少なくとも約90%が2次CO分離ユニット内で吸着される。それにより、全体のCO除去量が有利には99%を超える。
【0037】
本発明の好適な実施例によると、2次CO分離ユニット48は、温度スイング吸着(temperature swing adsorption(TSA))に基づいている。すなわち、吸着された物質は、後のステージにおいて、ベッドの温度を増大させることによりベッドから放出される。有利には、TSAユニット48は、選択的に使用され得る少なくとも2つの吸着ベッド50を有する。また、段階的な吸着ベッド50を継続的に使用することも可能であり、その結果、熱交換器52を用いてベッドを加熱することにより、ベッド材料の他の部分がより多くCOを吸着する一方で、ベッド材料の一部分からCOを放出することが可能となる。
【0038】
放出されたCO54は、熱交換器56内で再冷却されることによって凝縮されることが有利である。凝縮されたCO、すなわち第2の液体CO流れは、1次CO分離ユニット34で作られた第1の液体CO流れ36と混合されることが有利である。有利には、混合された液体CO流れは、次に、COを貯蔵場所又は別の用途へ移送するために、通常は約10MPa(100バール)〜約16MPa(160バール)の範囲の適切な圧力までポンプ58により加圧される。
【0039】
本発明の好適な実施例によると、本方法は、発電機62を用いて電力を発生させるための並びに膨張した排気ガス流れ64を形成するためのタービン60を介してTSAユニット48からの排気ガス流れの少なくとも一部分を膨張させる別のステップを含むことが有利である。通常、排気ガス流れ64は少なくとも約50%〜約70%のOを含み、残りは主にCO及びNである。それにより、空気分離ユニット14に送り込むための有利なインプットガスが生成される。その結果、膨張した排気ガス流れの少なくとも一部分が、追加のインプットガスとして空気分離ユニット14へ送られることが有利である。
【0040】
本明細書では、本発明を、例として現在最も好適と考えられる実施例と併せて説明してきたが、本発明は、開示した実施例のみに限定されず、本発明の特徴の種々の組合せ又は修正形態、並びに、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれる他の複数の用途を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素の供給源と、酸素を用いて炭素質燃料を燃焼させ、それにより主な成分としてCO、水及び過剰酸素を含む燃焼ガスを生成するための燃焼チャンバとを有する、炭素質燃料を燃焼させる発電所から出る燃焼ガスからCOを回収する方法において、該方法が、
(a)前記燃焼ガスの少なくとも第1の部分を第1の燃焼ガス・チャネルに送るステップと、
(b)約6MPa(60バール)を超える圧力まで圧縮された燃焼ガス流れを作るために前記燃焼ガスの第1の部分を圧縮するステップと、
(c)COの第1の部分を凝縮させて、第1の液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れを作ることにより、前記COの第1の部分を回収するために、前記圧縮された燃焼ガス流れを1次CO分離ユニット内で冷却するステップと、
(d)前記発電所から前記第1の液体CO流れを排出するステップと、
(e)COの第2の部分を吸着物質に吸着させることにより前記COの第2の部分を回収するために、前記高圧排気ガス流れを2次CO分離ユニットへ送るステップと
を含む、COを回収する方法。
【請求項2】
ステップ(c)の前に、前記燃焼ガスの第1の部分から水を取り除く別のステップを更に含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項3】
前記水を取り除くステップが、前記燃焼ガスの第1の部分を、前記燃焼ガス流れの第1の部分の水のうちの重量%で約99%を超える水を凝縮するのに十分な圧力及び温度まで圧縮及び/又は冷却することによって実施される、請求項2に記載されたCOを回収する方法。
【請求項4】
前記COの第1の部分が、前記圧縮された燃焼ガス流れのCOのうちの重量%で少なくとも60%を含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項5】
前記COの第1の部分が、前記圧縮された燃焼ガス流れのCOのうちの重量%で少なくとも約80%を含む、請求項4に記載されたCOを回収する方法。
【請求項6】
前記COの第2の部分が、前記過剰のCOのうちの重量%で少なくとも約60%を含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項7】
前記COの第2の部分が、前記過剰のCOのうちの重量%で少なくとも約90%を含む、請求項6に記載されたCOを回収する方法。
【請求項8】
ステップ(e)において吸着されたCOを熱によって前記吸着物質から放出させ、第2の液体CO流れを作るために前記放出されたCOを再冷却して、前記第2の液体CO流れの少なくとも一部分を前記第1の液体CO流れと混合させるステップ(f)を更に含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項9】
前記第1の液体CO流れを貯蔵場所又は別の用途へ移動させるために、前記第1の液体CO流れを約10MPa(100バール)〜約16MPa(160バール)の圧力にポンプで加圧するステップ(g)を更に含む、請求項8に記載されたCOを回収する方法。
【請求項10】
ステップ(c)において、前記圧縮された燃焼ガス流れを、少なくとも10℃の温度まで冷却する、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項11】
ステップ(c)において、前記圧縮された燃焼ガス流れを少なくとも16℃の温度まで冷却する、請求項10に記載されたCOを回収する方法。
【請求項12】
前記冷却ステップを、冷却塔で再冷却される再循環冷却剤を使用して実施する、請求項10に記載されたCOを回収する方法。
【請求項13】
前記冷却ステップを、冷却塔で再冷却される再循環冷却剤を使用して実施する、請求項11に記載されたCOを回収する方法。
【請求項14】
前記1次CO分離ユニットが精留塔を有する、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項15】
前記第1の液体CO流れを貯蔵場所又は別の用途へ移動させるために、前記第1の液体CO流れを約10MPa(100バール)〜約16MPa(160バール)の圧力にポンプで加圧するステップ(f)を更に含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項16】
電力及び膨張した排気ガス流れを発生させるためのタービンを介して前記排気ガス流れの少なくとも一部分を膨張させるステップ(f)を更に含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項17】
前記酸素の供給源が空気分離ユニットであり、前記膨張した排気ガス流れの少なくとも一部分を前記空気分離ユニットへ送るステップ(g)を更に含む、請求項16に記載されたCOを回収する方法。
【請求項18】
前記燃焼ガスの第2の部分を第2の燃焼ガス・チャネルを通して前記燃焼チャンバに再循環させるステップ(f)を更に含む、請求項1に記載されたCOを回収する方法。
【請求項19】
酸素の供給源と、酸素を用いて炭素質燃料を燃焼させ、それにより主な成分としてCO、水、及び過剰酸素を含む燃焼ガスを生成するための燃焼チャンバとを有する、炭素質燃料を燃焼させる発電所から出る燃焼ガスからCOを回収する装置において、該装置が、
COを回収する手段へ向かうように前記燃焼ガスの少なくとも第1の部分を導くための第1の燃焼ガス・チャネルと、
約6MPa(60バール)を超える圧力まで圧縮された燃焼ガス流れを作るように前記燃焼ガスの前記第1の部分を圧縮するための、前記第1の燃焼ガス・チャネル内に配置された最終圧縮機と、
前記COの第1の部分を凝縮させて、第1の液体CO流れ、並びに、酸素及び過剰のCOを含む高圧排気ガス流れを作ることにより、1次CO分離ユニット内で前記COの第1の部分を回収するために、圧縮された燃焼ガス流れを冷却する、前記第1の燃焼ガス・チャネルに連結された最終冷却手段と、
前記発電所から前記第1の液体CO流れを排出する手段と、
COの第2の部分を吸着物質に吸着させることにより前記COの第2の部分を回収するために、前記吸着物質を含む2次CO分離ユニットへ前記高圧排気ガス流れを送る通路と
を有する、COを回収する装置。
【請求項20】
前記燃焼ガスの第1の部分から水を取り除くための、前記第1の燃焼ガス・チャネル内に配置される乾燥手段を更に含む、請求項19に記載されたCOを回収する装置。
【請求項21】
前記乾燥手段が、
(i)第1次圧縮機システム及び
(ii)前記燃焼ガスの第1の部分の水のうちの重量%で約99%を超える水を凝縮するのに十分な圧力及び温度まで前記燃焼ガス流れの第1の部分を圧縮及び/又は冷却するための第1次冷却手段
のうちの少なくとも1つを有する、請求項20に記載されたCOを回収する装置。
【請求項22】
前記最終冷却手段が熱交換器を有する、請求項19に記載されたCOを回収する装置。
【請求項23】
前記最終冷却手段が、前記熱交換器及び冷却塔を通して冷却剤を再循環させるための手段を有する、請求項22に記載されたCOを回収する装置。
【請求項24】
前記1次CO分離ユニットが精留塔を有する、請求項19に記載されたCOを回収する装置。
【請求項25】
前記2次CO分離ユニットが、吸着されたCOを前記吸着物質から放出するために前記吸着物質を加熱する手段と、第2の液体CO流れを作り出すために前記放出されたCOを再冷却する手段と、前記第2の液体CO流れの少なくとも一部分を前記第1の液体CO流れと混合させる手段とを有する、請求項19に記載されたCOを回収する装置。
【請求項26】
前記第1の液体CO流れを貯蔵場所又は別の用途へ移動させるために、前記第1の液体CO流れを約10MPa(100バール)〜約16MPa(160バール)の圧力にポンプで加圧する手段を更に有する、請求項19に記載されたCOを回収する装置。
【請求項27】
電力及び膨張した排気ガス流れを発生させるために前記排気ガス流れの少なくとも一部分を膨張させるためのタービンを更に有する、請求項19に記載されたCOを回収する装置。
【請求項28】
前記酸素の供給源が空気分離ユニットであり、前記膨張した排気ガス流れの少なくとも一部分を前記空気分離ユニットへ送る手段を更に有する、請求項27に記載されたCOを回収する装置。
【請求項29】
前記燃焼ガスの第2の部分を前記燃焼チャンバまで再循環させるための第2の燃焼ガス・チャネルを更に有する、請求項19に記載されたCOを回収する装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−507773(P2010−507773A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534018(P2009−534018)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054298
【国際公開番号】WO2008/050289
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(390040349)フォスター・ホイーラー・エナージイ・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】FOSTER WHEELER ENERGY CORPORTION
【Fターム(参考)】