説明

醤油由来の界面活性剤

【課題】有用な資源である醤油粕の脱塩廃液を有効に利用し、安全性が高く性能良好な界面活性剤を提供する。
【解決手段】本発明は、醤油由来であるアミノ酸及びペプチドを含有する混合物をアシル化して得られる下記の一般式(1)で表される界面活性剤である。
【化1】


(式中、R1COは、脂肪酸残基を表わし、R2は、アミノ酸側鎖を表わし、Mは、水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わし、nは、1〜100の数を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油由来のアミノ酸・ペプチドの混合物をアシル化して得られる界面活性剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油は大豆と小麦を原料とし、塩水と麹菌を加えて醗酵させ、熟成したもろみを圧搾することによって得られ、醤油100重量部に対して、圧搾残渣である醤油粕が約10重量部発生する。醤油粕は、蛋白質・アミノ酸・炭水化物を豊富に含むが、塩分を5〜7%含むため用途が限られ、大部分が産業廃棄物として処理されている。醤油粕中の塩分を低減すれば、飼料・肥料として利用が可能であるため、水等の溶剤で醤油粕中の塩分を溶出させる検討が行われている。この場合、塩分の他にアミノ酸等を含む廃液が多量に発生するが、その利用については、特許文献1〜3では、抽出溶媒として再利用、特許文献4では、醤油仕込み用の塩水として利用、特許文献5では、電気透析により脱塩して、液体肥料として利用することが提案されている。しかしながら、抽出溶媒として再利用する場合には濃厚廃液の処理に問題があり、醤油仕込み用の塩水として利用する場合には醤油風味の劣化の問題がある。また、醤油粕の脱塩廃液には揮発性塩基性物質、アルカリ土類金属等が含まれ、洗浄性能の劣る副生成物生成、臭気の原因、難水溶性カルボン酸塩となることが多いため、醤油粕由来の脱塩廃液から界面活性剤を製造することは考えられていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−295320号公報
【特許文献2】特開2001−69942号公報
【特許文献3】特開2003−169629号公報
【特許文献4】特開昭63−219350号公報
【特許文献5】実登3010650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明が解決しようとする課題は、有用な資源である醤油粕の脱塩廃液を有効に利用し、安全性が高く性能良好な界面活性剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、醤油粕の脱塩廃液中のアミノ酸・ペプチドのアシル化物が界面活性剤として有用であることを見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、醤油由来であるアミノ酸及びペプチドを含有する混合物をアシル化して得られる下記の一般式(1)で表される界面活性剤である。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1COは、脂肪酸残基を表わし、R2は、アミノ酸側鎖を表わし、Mは、水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わし、nは、1〜100の数を表わす。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は、醤油粕の脱塩廃液を有効に利用し、安全性が高く性能良好な界面活性剤を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一般式(1)で表される化合物はアミノ酸及びペプチドの誘導体であり、この誘導体に使用できるアミノ酸やペプチドを構成するアミノ酸は、下記の一般式(2)で表される。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R2はアミノ酸側鎖を表す。)
一般式(2)で表されるアミノ酸は、Rの種類により様々な種類のアミノ酸になるが、こうしたアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン等が挙げられる。また、ペプチドは上記のアミノ酸がアミド結合によって縮合した分子であり、その縮合数は2〜100の数である。
【0012】
本発明の界面活性剤は上記の醤油由来であるアミノ酸及びペプチドを含有する混合物を原料として使用する。醤油由来のアミノ酸及びペプチドを原料として使用する理由は、タンパク質を化学的に分解する等の方法で得た他のアミノ酸とペプチドの混合物を原料としたときより、界面活性剤の性能が良好なためである。こうした醤油由来のアミノ酸及びペプチドは、醤油又は醤油粕の脱塩廃液由来のアミノ酸及びペプチドを原料とすればよいが、廃物利用の観点から、醤油粕の脱塩廃液を利用することがより好ましい。
【0013】
醤油粕の脱塩廃液とは、水を用いて醤油粕中の食塩、アミノ酸、ペプチド等を抽出した液、及びその濃縮物をいう。水抽出を行う場合は、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒で行ってもよい。このような水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、ターシャリブタノール、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0014】
醤油粕からの食塩、アミノ酸、ペプチド等を抽出する方法は特に限定されない。水又は水を含有した水溶性有機溶媒を用いて抽出を行う場合、醤油粕はそのまま用いてもよく、加熱、粉砕、成形等の前処理を行ってから用いてもよい。抽出を行う温度は特に限定されず、醤油粕中のアミノ酸及びペプチドが変質しない温度で行えばよく、例えば、常温〜150℃の範囲内で行うことができる。
【0015】
醤油粕の脱塩廃液には、通常、アンモニアや低級アミン等の揮発性塩基性物質、カリウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属が含まれる。揮発性塩基性物質がアシル化剤と反応すると、洗浄性能の劣る副生成物を生成する原因となったり、臭気成分となったりする場合があり、また、アルカリ土類金属がアシル化剤と反応すると難水溶解性のカルボン酸塩が生成してしまう。
【0016】
そのため、本発明の界面活性剤の製造方法では、これらの揮発性塩基性物質やアルカリ土類金属をアシル化前に除去することが好ましい。除去する方法は公知の方法であればいずれも使用することができるが、醤油粕の脱塩廃液は通常pH4〜5の弱酸性であるので、前処理としてアルカリ剤を添加してpH10〜13程度のアルカリ性にした後、減圧・
脱気及び濾過することにより除去することが好ましい。すなわち、アルカリ条件下では、揮発性の塩基性物質は脱気により除去が容易になり、アルカリ土類金属は不溶性の沈殿を生成するからである。
【0017】
脱気する場合の減圧度は通常100hPa以下、好ましくは50hPa以下、より好ましくは20hPa以下である。減圧除去する際の温度は特に限定されないが、常温〜100℃が好ましく、40〜80℃が更に好ましい。アルカリ土類金属を除去する場合は、pH10〜13程度にした後、生成した浮遊物を濾過すればよい。
【0018】
アルカリ剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム等を使用することができるが、取り扱いが容易で安価なことから、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0019】
こうして得られたアミノ酸及びペプチドの混合物には、他のアミノ酸及び/又はペプチドを加えてもよいが、アミノ酸及びペプチドの混合物の組成が、アミノ酸が50〜90質量%、ペプチドが10〜50質量%の範囲になるように混合することが好ましい。この組成比をはずれると、得られる界面活性剤の性能が悪くなる場合がある。
【0020】
醤油粕の脱塩廃液は、そのままアシル化に用いてもよいが、あまり希薄な液の場合は反応効率が悪くなることから、濃縮してからアシル化に用いることが好ましい。なお、あまりに濃厚な場合には一部の成分が分離・析出することから、水分50〜70%程度まで濃縮してからアシル化することが好ましい。濃縮の方法としては、減圧・脱水、限外濾過等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)におけるR1COは、脂肪酸残基を表わす。使用するアシル化剤によりR1COが決定される。アシル化剤としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸メチルエステル、カルボン酸エチルエステル等を使用することができるが、反応性が高いことから、カルボン酸又はカルボン酸ハライドを使用することが好ましく、カルボン酸ハライドを使用することが更に好ましい。また、カルボン酸ハライドとしては、入手が容易なことからカルボン酸クロリドが好ましい。
【0022】
カルボン酸又はそのハライドとしては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸又はこれらのクロリド等が挙げられる。カルボン酸又はそのハライドの炭素数は、8〜22であることが好ましく、9〜20が更に好ましく、10〜18が最も好ましい。カルボン酸又はそのハライドは、同一の炭素数の物でもよいが、2種以上の混合でもよい。2種以上の混合の場合は、その平均の炭素数が上記範囲内であればよい。また、天然油脂から得られる脂肪酸又はこれらをハライド化した脂肪酸ハライドを使用してもよい。天然油脂としては例えば、アマニ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、綿実油、ヤシ油等の植物性油脂;牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。
【0023】
アシル化剤の使用量は、アミノ酸、ペプチド等に対し、モル比で0.8〜1.5当量が好ましく、0.9〜1.3当量が更に好ましく、0.95〜1.2当量が最も好ましい。なお、アミノ酸、ペプチド等の含有モル量は、モルホール法等の滴定法、ニンヒドリン法等の比色法、高速液体クロマト等の機器分析法等で測定することができる。
【0024】
アシル化反応の温度は特に限定されないが、あまりに低温で行うと反応速度が遅いため効率的ではなく、あまりに高温で行うと原料の脂肪酸ハライドの分解を引き起こすので、0〜100℃で行うことが好ましく、15〜70℃で行うことがより好ましく、20〜50℃で行うことが最も好ましい。アシル化反応を行う時間は特に限定されないが、好ましくは10分〜12時間、より好ましくは20分〜8時間、更に好ましくは30分〜6時間程度である。又、アシル化反応にカルボン酸クロリドを使用する場合は、反応促進のためにアルカリ剤によって反応系内のpHをアルカリ性に調整して反応系に添加することが好ましく、pH11〜12に調整して反応系に添加することがより好ましい。
【0025】
このようなアルカリ剤としては、前処理で挙げたアルカリ剤に加えて、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等を挙げることができ、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
【0026】
アシル化反応は水溶媒のみで行ってもよいが、反応を速めるためには、有機溶媒を併用することが好ましい。アシル化反応の有機溶媒としては、醤油粕の抽出で挙げた水溶性有機溶媒に加え、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等が挙げられる。中でも、2−プロパノール、2−ブタノール、ターシャリブタノール、プロピレングリコールが好ましい。有機溶媒の量は特に限定されないが、あまりに少ない場合及びあまりに多い場合には、反応速度が上がらないことから、有機溶媒の量は、水100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、10〜80質量部が更に好ましく、15〜60質量部が最も好ましい。
【0027】
反応終了後、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸を添加して、pHを酸性にすることにより、アシル化物を分離して、水洗し、未反応のアミノ酸やペプチド、糖類、食塩等を除去することが好ましい。pHがあまりに高い場合は分離が不十分となり、pHがあまりに低い場合にはアシル化物の分解が起こる場合があることから、pH1〜5が好ましく、pH1.5〜4が更に好ましい。アシル化物が分離しにくい場合には、エチルエーテル、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等の水不溶性の有機溶媒を添加してもよい。水洗水の添加量は、醤油粕の脱塩廃液の仕込み量100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部が更に好ましい。
【0028】
水洗後、アシル化物は、溶媒等を除去するため必要に応じて、減圧・脱気してもよい。減圧・脱気する際の温度は特に限定されないが、通常10〜120℃程度である。また、減圧度は通常100hPa以下、好ましくは50hPa以下、より好ましくは20hPa以下である。また、減圧・脱気により、食塩等が析出する場合があることから、濾過等により除去することができる。
【0029】
こうして得られたアシル化物は、一般式(1)においてMが水素原子であるが、アルカリ、アミン等で処理し、塩にすることができる。この場合は使用したアルカリ又はアミンによりMが決定される。アルカリとしては前述のものが挙げられ、アミンとしては例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。
【0030】
なお、得られた界面活性剤は、醤油粕の脱塩廃液由来の臭気及び着色があることから、本発明の製造方法における任意の工程で、公知の方法により脱臭及び脱色を行うことが好ましく、醤油粕等から抽出した酸性の脱塩廃液を脱臭及び脱色することがより好ましい。脱臭及び脱色方法としては、例えば、過酸化水素等による酸化;活性炭、吸着剤、イオン交換樹脂等による吸着;限外濾過等による分離;有機溶剤、超臨界ガス等による抽出;水蒸気蒸留等によるトッピング等が挙げられる。これらの中でも、イオン交換樹脂による吸着が好ましく、フェノール・ホルムアルデヒド系樹脂による吸着がより好ましく、フェノール・ホルムアルデヒド系樹脂である、ホクエツHSあるいはホクエツKS(いずれも味の素ファインテクノ社製)による吸着が更に好ましい。
【0031】
本発明の界面活性剤は、従来のアシル化アミノ酸やアシル化ペプチドと同様、水溶性及び耐硬水性に優れ、人体に対する刺激性が少ないが、更に起泡性や泡切れ、保存安定性に優れているという特徴があるので、いわゆるトイレタリー用途に使用することが好ましい。トイレタリー用途としては洗浄剤や化粧品等が挙げられる。洗浄剤としては例えば、ヘアーシャンプー、ヘアーリンス、ヘアーコンディショナー、ヘアートリートメント、ボディシャンプー、洗顔料、台所用洗剤、食器用洗浄剤、衣服用洗剤等が挙げられる。化粧品としては例えば、パーマネントウェーブ剤、ヘアークリーム、ヘアーフォーム、ヘアーブリーチ、ヘアーローション、ヘアーリキッド、ヘアートニック、化粧水、シェービングクリーム、アフターシェービングローション、プレシェービングローション、フェイスローション、モイスチャークリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、口紅等が挙げられる。
【0032】
本発明の界面活性剤を洗浄剤や化粧品等として使用する場合は、他の成分と併用することができる。他の成分としては例えば、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、α−オレフィンスルホネート、アシル化イセチオネート、その他のアシル化アミノ酸又はアシル化ポリペプチド、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボキシレート等のアニオン性界面活性剤;ステアリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ポリジメチルジアリルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤;アルキルカルボベタイン、アミドプロピルカルボベタイン、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;アルキルアミンオキサイド等の半極性界面活性剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、エタノール、パラトルエンスルホン酸等のハイドロトロープ剤;エチレンジアミン4酢酸塩(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、N−ヒドロキシエチルイミノジ酢酸又はこれらの塩等のアミノカルボン酸類、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸又はこれらの塩等のオキシカルボン酸類等の金属イオン封鎖剤;硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム(芒硝)、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリビルダー;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤;モノエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム−オレフィン共重合体等の分散剤;防腐剤、増粘剤、酵素、抗菌剤、保湿剤、香料、色素等と併用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、特に記載が無い限り部又は%は質量基準である。
<醤油粕脱塩廃液>
食塩を6.4%含有する醤油粕10kgに、25℃の水50kgを加え、30分間撹拌後、遠心分離で固形物を分離し、醤油粕脱塩廃液45kgを得た。
分析値(強熱残分試験法) 強熱残分3.43% 食塩1.58% 窒素0.16%
【0034】
(本発明品1)
醤油粕脱塩廃液10kgにpH12になるまで48%水酸化ナトリウムを添加したところ、液が薄く濁り、アンモニア臭が発生した。液の薄い濁りは、濾紙を用いて吸引濾過することにより除去された。濾液にはアンモニア臭があったが、液温70℃のエバポレーターを用い、減圧度30hPaで10分脱気することにより除去された。引き続きエバポレーターで、水分が約70%になるまで濃縮した。分析結果を下記に記す。
分析値 水分69.5% 窒素0.16%
アミノ酸及びペプチド:0.66mmol/g(モルホール法による)
アミノ酸/ペプチド=69/31(GPC分析による)
(GPCカラム:Shodex.Ashahipak−310、溶剤:水/アセトニトリル=1/1)
温度計、攪拌装置を備えたガラス製フラスコに、濃縮した脱塩廃液500g及び2−プロパノール100gを仕込み、水酸化ナトリウムでpH10に調整しつつラウリン酸クロリド75.9g(346.5mmol)を50℃で滴下した。滴下終了後40〜50℃で1時間熟成した。その後、pH2になるまで塩酸を加えたところ2層に分離したので、下層(水層)を除去し、上層(油層)を水100gで2回水洗した。100℃、10hPaの条件で1時間減圧・脱気を行った後、水酸化ナトリウム水溶液でpH7になるまで中和し、固形分30%の本発明品1(ナトリウム塩)を得た。
【0035】
(本発明品2)
アシル化物の中和を水酸化カリウム水溶液で行ったほかは、実施例1と同様の操作を行い、固形分30%の本発明品2(カリウム塩)を得た。
【0036】
(本発明品3)
アシル化物の中和をトリエタノールアミン水溶液で行ったほかは、実施例1と同様の操作を行い、固形分30%の本発明品3(トリエタノールアミン塩)を得た。
【0037】
(本発明品4)
ラウリン酸クロリドの代わりに、ヤシ脂肪酸クロリドを用いたほかは、実施例1と同様の操作を行い、固形分30%の本発明品4(ナトリウム塩)を得た。
【0038】
(比較品1)
大豆タン白質200gと20%塩酸200gとをガラス製容器に仕込み8時間還流させた。冷却後に、水200gを添加し、pH12になるまで48%水酸化ナトリウムを添加した後、濾過し、大豆タン白質の加水分解液を得た。以下、実施例1と同様の操作を行い固形分30%の比較品1(ナトリウム塩)を得た。分析結果を下記に記す。
アミノ酸/ペプチド=71/29(GPC分析による)
【0039】
(比較品2)
ヤシ油脂肪酸グルタミン酸アミドナトリウム塩
【0040】
(評価1:純度)実施例で得られた界面活性剤の純度を、GPC(カラム:Shodex.Ashahipak−310、溶剤:水/アセトニトリル=1/1)にて分析した。
純度=100×A/(A+S)
A:アシル化(アミノ酸・ペプチド)のピーク面積
S:脂肪酸塩のピーク面積
【0041】
【表1】

【0042】
(評価2:起泡性)
本発明の界面活性剤の泡立ちをロスマイルス法により測定した。測定条件は、固形分の濃度として0.25%、水温25℃で5分後の泡の高さを測定した。又、水は蒸留水及び人工硬水(炭酸カルシウム濃度200ppm)を用いた。尚、単位はmmである。
【0043】
【表2】

【0044】
(評価3:配合安定性)
下記の配合の混合溶液を、0℃又は25℃で72時間保存後の外観を目視にて観察した。
本発明品又は比較品 15%(固形分換算)
ラウリン酸ジエタノールアミド 5
ラウリルジメチルアミンオキシド 3
ラウリルグルコシド 2
プロピレングリコール 5
イオン交換水 70
【0045】
(評価4:毛髪洗浄試験)
評価3で作成した配合品を用いて、毛髪洗浄時の泡立ち、すすぎ時の泡切れ、洗髪後のくし通りについて女性モニター10人に評価してもらい、それぞれの結果は下記の基準で評価した。
○:8〜10人が良好と評価した。
△:3〜7人が良好と評価した。
×:0〜2人が良好と評価した。
【0046】
【表3】

【0047】
上記結果により、本願発明は、醤油粕の脱塩廃液を有効に利用し、安全性が高く性能良好な界面活性剤であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油由来であるアミノ酸及びペプチドを含有する混合物をアシル化して得られる下記の一般式(1)で表される界面活性剤。
【化1】

(式中、R1COは、脂肪酸残基を表わし、R2は、アミノ酸側鎖を表わし、Mは、水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わし、nは、1〜100の数を表わす。)
【請求項2】
前記醤油由来のアミノ酸及びペプチドを含有する混合物において、アミノ酸が50〜90質量%、ペプチドが10〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
前記醤油由来のアミノ酸及びペプチドの混合物が、醤油粕から抽出されたアミノ酸及びペプチドの混合物である請求項1又は2に記載の界面活性剤。
【請求項4】
前記醤油粕から抽出されたアミノ酸及びペプチドの混合物をアシル化することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の界面活性剤の製造方法。
【請求項5】
前記醤油粕から抽出されたアミノ酸及びペプチドの混合物をアルカリ剤でpH10〜13にした後に、減圧・脱気及び/又は濾過することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−285620(P2008−285620A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134062(P2007−134062)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】