重ね合わせ部品の加熱方法および加熱装置
【課題】第1および第2部品の位置ずれを回避しつつ、製造コストの低減および生産性の向上を実現することができる重ね合わせ部品の加熱方法を提供する。
【解決手段】作業ステージ上に第1板状素材41は設置される。第1板状素材41では複数個の部品29が連結部材に連結される。続いて作業ステージ上には第2板状素材51が設置される。第2板状素材51では複数個の部品31が連結部材に連結される。個々の第2部品31は対応する第1部品29に重ね合わせられる。各板状素材41、51は1部品として取り扱われる。生産性は著しく向上する。第2部品31にヒートブロックの加熱面は押し付けられる。各連結部材の熱膨張は阻止される。部品29、31相互間で規定の間隔は確実に維持される。
【解決手段】作業ステージ上に第1板状素材41は設置される。第1板状素材41では複数個の部品29が連結部材に連結される。続いて作業ステージ上には第2板状素材51が設置される。第2板状素材51では複数個の部品31が連結部材に連結される。個々の第2部品31は対応する第1部品29に重ね合わせられる。各板状素材41、51は1部品として取り扱われる。生産性は著しく向上する。第2部品31にヒートブロックの加熱面は押し付けられる。各連結部材の熱膨張は阻止される。部品29、31相互間で規定の間隔は確実に維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ステージ上で第1部品上に第2部品を重ね合わせ、少なくとも第2部品に接触するヒートブロックで第1および第2部品を加熱する重ね合わせ部品の加熱方法に関し、特に、こういった加熱方法に利用される加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1対の剪断型の圧電素子を用いたピエゾマイクロアクチュエータは広く知られる。この種のピエゾマイクロアクチュエータでは、平板状の圧電素子は1対の電極板の間に挟まれる。電極板は圧電素子の表裏に接着される。一方の電極板には例えば固定側の微小部品が接着される。他方の電極板には可動側の微小部品が接着される。これらの接着には例えば熱硬化性接着剤が用いられる。電極板から圧電素子に所定の電圧が印加されると、圧電素子の剪断に基づき電極板の間すなわち微小部品同士の間で相対的な回転運動は生み出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピエゾマイクロアクチュエータはしばしば高精度の変位制御機構として利用される。こうした場合には、例えば微小部品と電極板との接着にあたって両者の間で相対的な位置ずれは回避されなければならない。電極板と微小部品との間に高精度の位置決めが実現された後に熱硬化性接着剤は加熱されなければならない。高精度の位置決めの実現にあたって高価な画像認識技術や位置決めロボットが用いられる。しかも、微小部品と電極板とは1組ずつで取り扱われる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、第1および第2部品の位置ずれを回避しつつ、製造コストの低減および生産性の向上を実現することができる重ね合わせ部品の加熱方法を提供することを目的とする。また、本発明は、こういった加熱方法の実現に大いに貢献する加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、第1連結部材に連結される複数個の第1部品を作業ステージ上に設置する工程と、第2連結部材に連結される複数個の第2部品を第1部品上に重ね合わせる工程と、第1および第2連結部材の熱膨張を阻止しつつ第2部品から加熱する工程とを備えることを特徴とする重ね合わせ部品の加熱方法が提供される。
【0006】
こういった加熱方法によれば、複数個の第1部品や複数個の第2部品は1塊の素材として取り扱われることができる。したがって、第1部品や第2部品の個数に応じて重ね合わせや加熱の手間は軽減される。生産性は著しく向上する。しかも、加熱にあたって第1連結部材や第2連結部材の熱膨張は阻止される。第1部品相互間や第2部品相互間で規定の間隔は確実に維持される。こうして第1部品と第2部品との間で位置ずれは防止されることができる。
【0007】
第1および第2部品の間には熱硬化性接着剤が挟み込まれることができる。こうして熱硬化性接着剤が加熱されると、第1および第2部品は相互に接着されることができる。こうして第1および第2部品の位置関係は固定される。温度上昇にも拘わらず、当初の位置合わせに基づき第1および第2部品の位置関係は決定されることができる。
【0008】
特に、こういった加熱方法では個々の第2部品ごとに加熱が実施されることが望まれる。こうして第2部品のみに熱が伝達されれば、連結部材の熱膨張は確実に阻止されることができる。たとえ第2部品同士の間に連結部材が存在しても、連結部材の熱膨張は確実に阻止されることができる。
【0009】
第2発明によれば、対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に個別に規定されて、個々に対象物に接触する複数の加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0010】
この加熱装置では、ヒートブロックの表面から隆起する突片で対象物に熱は伝達される。例えば連結部材に連結される1列の部品は同時に熱に曝されることができる。しかも、加熱面ごとに対象物に接触することができることから、個々の部品ごとに熱は伝達されることができる。
【0011】
こういった加熱装置では、加熱面同士の間で突片にスリットが形成されてもよい。こういったスリットによれば、たとえ1列の部品同士の間で連結部材の熱膨張が発生しても、連結部材はスリット内で十分に湾曲することができる。こうした湾曲で、部品同士の間隔を広げることなく連結部材の熱膨張は逃されることができる。部品同士の間で十分に断熱が確立されない場合でも、スリットの働きで部品相互間の位置ずれは確実に回避されることができる。
【0012】
ヒートブロックの表面と突片の頂上面との高低差は2.0mm以上に設定されることが望まれる。こうしたヒートブロックによれば、たとえヒートブロックの表面が対象物に向き合わせられても、ヒートブロックと対象物との間には膜厚2.0mm以上の空気層は確保される。加熱面の周囲でヒートブロックから対象物への熱の伝達は大いに抑制される。こうして連結部材の温度上昇は確実に回避されることができる。
【0013】
第3発明によれば、対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に規定されて、対象物に接触する加熱面と、突片の隣でヒートブロックの表面に形成されて、突片の長手方向中央から突片の長手方向外側に向かって広がる窪みとを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0014】
こういったヒートブロックによれば、突片の長手方向外側に比べて突片の長手方向中央で厚い空気層は確立されることができる。その結果、突片の長手方向外側付近では、突片の長手方向中央付近に比べて、ヒートブロックの表面は作業ステージに接近する。突片の長手方向外側では、突片の長手方向中央付近に比べて、加熱面の周囲から熱が逃げにくい。したがって、たとえ突片に平行に延びる1本の発熱体が採用されても、突片の長手方向に均一な温度は確保されることができる。加熱面全体を通じて温度のばらつきは極力回避されることができる。その一方で、突片の長手方向にわたって均一厚みの空気層が形成されると突片の長手方向外側で突片から熱が逃げやすく、長手方向中央付近と長手方向外側との間に温度差が生じてしまう。
【0015】
第4発明によれば、表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に規定される吸熱面とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0016】
こういった加熱装置では、対象物(特に部品)は受け面に受け止められることができる。例えば部品同士を連結する連結部材は受け面の周囲で吸熱面に受け止められることができる。連結部材の熱は吸熱面から作業ステージに逃されることができる。こうして連結部材の温度上昇は極力回避されることができる。連結部材の熱膨張は確実に抑制される。吸熱面は例えば高熱伝導率の素材から構成されればよい。
【0017】
第5発明によれば、表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に形成されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる断熱層とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0018】
こういった加熱装置では、対象物(特に部品)は断熱層の表面に受け止められることができる。対象物は断熱層と加熱面との間に挟み込まれる。加熱面から対象物に熱が伝達されると、対象物では温度上昇は実現される。このとき、断熱層の働きで対象物からの熱の放射は抑制されることができる。対象物は効率的に加熱されることができる。
【0019】
第6発明によれば、表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に刻まれる溝とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0020】
こういった加熱装置では、対象物(特に部品)は、溝に囲まれる受け面に受け止められることができる。加熱面から対象物に熱が伝達されると、対象物では温度上昇は実現される。このとき、溝の働きで受け面の周囲には空気層が形成される。受け面と周囲とは熱的に断絶される。したがって、受け面から熱は逃げにくい。こうして対象物からの熱の放射は抑制されることができる。対象物は効率的に加熱されることができる。
【0021】
第7発明によれば、所定の基準面に設置される土台と、土台に着脱自在に搭載され、表面で対象物を受け止めるパレットと、パレットの表面に向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、パレット上の対象物に接触する加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0022】
こういった加熱装置では、パレットは簡単に交換されることができる。対象物ごとにパレットは用意されることができる。対象物は、確実に広い面積で対象物に接触することができる。パレットは確実に加熱面の押し付け力を受け止めることができる。対象物はパレットの表面とブロックの加熱面との間に確実に挟み込まれる。しかも、対象物はパレットごと持ち運ばれることができる。生産性の向上が期待される。
【0023】
以上のような加熱方法や加熱装置は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)に組み込まれるマイクロアクチュエータの製造にあたって利用されることができる。その他、前述の加熱方法や加熱装置は任意の部材や部品の重ね合わせや接着にあたって利用されることができる。しかも、第1連結部材に連結される第1部品は必ずしも同一形状である必要はなく、第2連結部材に連結される第2部品も必ずしも同一形状である必要はない。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、第1および第2部品の位置ずれを回避しつつ、製造コストの低減および生産性の向上を実現することができる重ね合わせ部品の加熱方法は提供されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0026】
図1は磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は、例えば平たい直方体の内部空間を区画する箱形の筐体本体12を備える。収容空間には、記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク13が収容される。磁気ディスク13はスピンドルモータ14の駆動軸に装着される。スピンドルモータ14は、例えば7200rpmや10000rpmといった高速度で磁気ディスク13を回転させることができる。筐体本体12には、筐体本体12との間で収容空間を密閉する蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。
【0027】
収容空間にはヘッドアセンブリ15がさらに収容される。このヘッドアセンブリ15は、垂直方向に延びる支軸16に回転自在に連結される。ヘッドアセンブリ15は、支軸16から水平方向に延びる複数のアクチュエータアーム17と、各アクチュエータアーム17の先端に取り付けられてアクチュエータアーム17の先端から前方に延びる弾性サスペンション18とを備える。アクチュエータアーム17には所定の剛性が与えられる。アクチュエータアーム17は、例えばステンレス鋼板から打ち抜き加工に基づき成型されてもよく、アルミニウム材料から押し出し加工に基づき成型されてもよい。アクチュエータアーム17は磁気ディスク13の表面および裏面ごとに設置される。アクチュエータアーム17は支軸16回りに揺動することができる。こういったアクチュエータアーム17の揺動は例えばボイスコイルモータ(VCM)といった駆動源19の働きで実現されればよい。
【0028】
アクチュエータアーム17および弾性サスペンション18の間にはマイクロアクチュエータ21が挟み込まれる。このマイクロアクチュエータ21は、所定の駆動電圧に基づきアクチュエータアーム17および弾性サスペンション18の間で相対変位を引き起こすことができる。こういった相対変位は、後述されるように、例えばアクチュエータアーム17の先端で揺動軸回りに実現される揺動に代表される。こういった揺動の揺動軸は支軸16に平行に設定されればよい。
【0029】
弾性サスペンション18の先端では、いわゆるジンバルばね(図示されず)の働きで浮上ヘッドスライダ22が片持ち支持される。浮上ヘッドスライダ22には、磁気ディスク13の表面に向かって弾性サスペンション18から押し付け力が作用する。磁気ディスク13の回転に基づき磁気ディスク13の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には浮力が作用する。弾性サスペンション18の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク13の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0030】
浮上ヘッドスライダ22上にはいわゆる磁気ヘッドすなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。この電磁変換素子は、例えば、スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク13から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果素子(GMR)やトンネル接合磁気抵抗効果素子(TMR)といった読み出し素子(図示されず)と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク13に情報を書き込む薄膜磁気ヘッドといった書き込み素子(図示されず)とで構成されればよい。
【0031】
こうしたヘッドアセンブリ15では、支軸16回りでアクチュエータアーム17が揺動すると、弾性サスペンション18は磁気ディスク13の半径方向に移動することができる。同時に、アクチュエータアーム17の先端で揺動軸回りに弾性サスペンション18が揺動すると、弾性サスペンション18の先端で浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク13の半径方向に移動することができる。これらアクチュエータアーム17および弾性サスペンション18の協調動作に基づき浮上ヘッドスライダ22上の磁気ヘッドは目標の記録トラックに対して正確に位置決めされることができる。浮上ヘッドスライダ22上の磁気ヘッドは、周知のようにアクチュエータアーム17で実現される粗動に加えて、アクチュエータアーム17上で実現される弾性サスペンション18の微動の働きで目標の記録トラックを追従し続けることができる。
【0032】
図1から明らかなように、ヘッドアセンブリ15には、アクチュエータアーム17ごとに、アクチュエータアーム17の先端からアクチュエータアーム17の付け根に向かって延びる個別中継フレキシブルプリント配線基板(FPC)24と、ヘッドアセンブリ15上で複数の個別中継FPC24を受け止め、ヘッドアセンブリ15から制御回路基板25に向かって延びる共通中継フレキシブルプリント配線基板(FPC)26とが結合される。制御回路基板25上には、例えば読み出し素子の読み出し動作や書き込み素子の書き込み動作を制御するヘッドIC(集積回路)27が実装される。こうしたヘッドIC27の働きで、磁気情報の読み出し時に、読み出し素子に向けてセンス電流は供給されたり、供給されたセンス電流に基づき読み出される情報信号は処理されたりすることができる。同様に、ヘッドIC27は、磁気情報の書き込み時に書き込み素子に向けて書き込み電流を供給する。制御回路基板25にはコネクタ28が接続される。
【0033】
コネクタ28は筐体本体12の底板に固定される。コネクタ28は、底板の裏側に取り付けられるプリント配線基板(図示されず)に連結される。このプリント配線基板上には例えばアクチュエータ駆動ICが実装される。アクチュエータ駆動ICは、所定のデジタル制御信号に基づきアナログ制御信号すなわちマイクロアクチュエータ21向けの駆動電圧を生み出す。アクチュエータ駆動ICとコネクタ28とは、例えばプリント配線基板に形成される導体の配線パターンで相互に電気的に接続される。
【0034】
図2に示されるように、マイクロアクチュエータ21は、アクチュエータアーム17の先端に固定される第1固定板29を備える。この第1固定板29は、アクチュエータアーム17の表面に重ね合わせられて固定される第1平板体29aと、第1平板体29aからアクチュエータアーム17の前方に延びる第2平板体29bとを備える。第2平板体29bは第1平板体29aとは段違いに配置される。第2平板体29bの表面には第1電極板31が貼り付けられる。この貼り付けにあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。
【0035】
第1電極板31は、例えばステンレス鋼製の薄板基材と、この薄板基材の表面に被覆される絶縁被膜とから構成される。絶縁被膜の表面には、1対の剪断型圧電素子32、32を受け止める導電パッド33が形成される。各圧電素子32は導電パッド33に接着されればよい。こういった接着にあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。各圧電素子32および導電パッド33の間では、接着剤の介在にも拘わらず、圧電素子32や導電パッド33の表面粗さに基づき電気的接続が確立される。
【0036】
第1電極板31には、第1電極板31に直交する姿勢で立ち上がる1対の電圧端子34、35が一体に形成される。電圧端子34、35はアクチュエータアーム17の側面に沿って広がる。こういった電圧端子34、35は第1電極板31の素材から折り曲げ形成されればよい。一方の電圧端子34は導電パッド33に接続される。こういった接続にあたって、絶縁被膜の表面に形成される導電パターンは利用される。他方の電圧端子35は接続端子36に接続される。この接続にあたっては、絶縁被膜の表面で導電パッド33を迂回しつつ第1電極板31を横切る導電パターンが利用される。電圧端子34や導電パッド33と、電圧端子35や接続端子36とは相互に電気的に隔絶される。各電圧端子34、35には個別中継FPC24上の配線パターン(図示されず)が接続される。電圧端子34、35には前述のアクチュエータ駆動ICから駆動電圧が供給される。
【0037】
圧電素子32、32の表面には第2電極板37が貼り付けられる。この貼り付けにあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。第2電極板37は、例えばステンレス鋼製の薄板基材と、この薄板基材の表面に被覆される絶縁被膜とから構成される。絶縁被膜の表面には、圧電素子32、32に受け止められる導電パッド(図示されず)が形成される。各圧電素子32は導電パッドに接着されればよい。こういった接着にあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。各圧電素子32および導電パッドの間では、接着剤の介在にも拘わらず、圧電素子32や導電パッドの表面粗さに基づき電気的接続が確立される。
【0038】
第2電極板37には、第2電極板37上の導電パッドに接続される接続端子38が形成される。この接続端子38は第1電極板31の接続端子36に電気的に接続される。したがって、電圧端子34、35に駆動電圧が供給されると、第1および第2電極板31、37の導電パッドから圧電素子32、32に電圧が印加される。こうして電圧が印加されると、2つの圧電素子32、32は互い違いの方向に剪断力を発揮する。
【0039】
第2電極板37の表面には第2固定板39が貼り付けられる。こういった貼り付けにあたって例えば熱硬化性接着剤が用いられる。第2固定板39の表面には、弾性サスペンション18の根本(基端)が重ね合わせられて固定される。前述のように各圧電素子32に剪断変形が引き起こされると、弾性サスペンション18はアクチュエータアーム17に対して揺動軸40回りで揺動することができる。
【0040】
次にマイクロアクチュエータ21の製造方法を簡単に説明する。まず、例えば図3に示されるように、複数個(例えば9個)の第1固定板29を含む第1板状素材41が用意される。この第1板状素材41は四角い連結部材すなわちフレーム板42を備える。フレーム板42の1長尺板42aには各第1固定板29が個別に取り付けられる。各第1固定板29は仮留め片43で長尺板42aに連結される。フレーム板42、仮留め片43および第1固定板29は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。ここで、金属板すなわち第1板状素材41の厚みは例えば100μm程度に設定される。
【0041】
フレーム板42には、1直線44上に配置される位置決め用貫通孔45が形成される。個々の第1固定板29は、位置決め用貫通孔45で規定される直線44に対して規定の位置に位置決めされる。ここでは、例えば個々の第1固定板29の姿勢(向き)を決定する基準線46は直線44に直交すればよく、各基準線46と直線44との交点47は所定の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第1固定板29でも、基準線46と第1固定板29の外形との間には共通の位置関係が確立される。こうした基準線46に基づき各第1固定板29の第2平板体29bでは接着予定域48が規定される。すなわち、全ての第1固定板29では接着予定域48と基準線46との間に共通の位置関係が確立される。
【0042】
同様に、図4に示されるように、複数個(例えば9個)の第1電極板31を含む第2板状素材51が用意される。第1電極板31の枚数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。この第2板状素材51は長尺の連結部材すなわち連結板52を備える。この連結板52には各第1電極板31が個別に取り付けられる。各第1電極板31は仮留め片53で連結板52に連結される。同時に、仮留め片53は、隣接する第1電極板31同士を連結する。連結板52、仮留め片53および第1電極板31は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属薄板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。金属薄板の表面には、前述の絶縁被膜や導電パッド33、接続端子36、導電パターンが予め形成される。成型にあたって前述の電圧端子34、35は同時に折り曲げ形成されてもよい。ここで、第2板状素材51の厚みは例えば25μm程度に設定される。
【0043】
連結板52には、前述と同様に、1直線54上に配置される位置決め用貫通孔55が形成される。個々の第1電極板31は、位置決め用貫通孔55で規定される直線54に対して規定の位置に位置決めされる。第1電極板31の配置は、前述のように第1板状素材41で確立される接着予定域48の配置を反映する。ここでは、例えば個々の第1電極板31の姿勢(向き)を決定する基準線56は直線54に直交すればよく、各基準線56と直線54との交点57は前述の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第1電極板31でも、基準線56と第1電極板31の外形との間には共通の位置関係が確立される。
【0044】
第1板状素材41には第2板状素材51が重ね合わせられる。図5に示されるように、第1板状素材41の直線44と第2板状素材51の直線54との間には所定の間隔S1で平行関係が確立される。こういった位置合わせにあたって例えば各板状素材41、51の位置決め用貫通孔45、55は利用される。前述のように、第1固定板29同士の間隔sと第1電極板31同士の間隔sとは等しく設定されることから、第1板状素材41の1基準線46上に第2板状素材51の1基準線56が重ね合わせられると、全ての基準線46と基準線56とは完全に位置合わせされる。こうして個々の第1固定板29の接着予定域48には対応する第1電極板31が重ね合わせられる。こうした重ね合わせに先立って第1固定板29の表面には熱硬化性接着剤が塗布される。熱硬化性接着剤は例えばエポキシ樹脂を含めばよい。重ね合わせの完了後、第1固定板29および第1電極板31は加熱される。接着剤の硬化に伴い、第1固定板29および第1電極板31の位置関係は固定される。
【0045】
その後、第1電極板31から連結板52は切り離される。連結板52とともに仮留め片53は第1電極板31から切り離される。続いて、例えば図6に示されるように、各第1電極板31上には所定の位置決めに基づき1対の圧電素子32、32が接着される。接着にあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。接着剤の硬化に伴い、圧電素子32、32および第1電極板31すなわち第1固定板29の位置関係は固定される。こうして第1積層素材58は作成される。
【0046】
次に、例えば図7に示されるように、複数個(例えば9個)の第2固定板39を含む第3板状素材61が用意される。第2固定板39の枚数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。この第3板状素材61は長尺の連結部材すなわち連結板62を備える。この連結板62には各第2固定板39が個別に取り付けられる。各第2固定板39は仮留め片63で連結板62に連結される。連結板62、仮留め片63および第2固定板39は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。ここでは、金属板すなわち第3板状素材61の厚みは例えば100μm程度に設定される。
【0047】
連結板62には、前述と同様に、1直線64上に配置される位置決め用貫通孔65が形成される。個々の第2固定板39は、位置決め用貫通孔65で規定される直線64に対して規定の位置に位置決めされる。第2固定板39の配置は第1固定板29の配置を反映する。ここでは、例えば個々の第2固定板39の姿勢(向き)を決定する基準線66は直線64に直交すればよく、各基準線66と直線64との交点67は前述の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第2固定板39でも、基準線66と第2固定板39の外形との間に共通の位置関係は確立される。こうした基準線66に基づき各第2固定板39では接着予定域68が規定される。すなわち、全ての第2固定板39では接着予定域68と基準線66との間に共通の位置関係が確立される。
【0048】
さらに、図8に示されるように、複数個(例えば9個)の第2電極板37を含む第4板状素材71が用意される。第2電極板37の枚数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。この第4板状素材71は長尺の連結部材すなわち連結板72を備える。この連結板72には各第2電極板37が個別に取り付けられる。各第2電極板37は仮留め片73で連結板72に連結される。同時に、仮留め片73は、隣接する第2電極板37同士を連結する。連結板72、仮留め片73および第2電極板37は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属薄板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。金属薄板の表面には、前述の絶縁被膜や導電パッド、接続端子38が予め形成される。ここで、第4板状素材71の厚みは例えば25μm程度に設定される。
【0049】
連結板72には、前述と同様に、1直線74上に配置される位置決め用貫通孔75が形成される。個々の第2電極板37は、位置決め用貫通孔75で規定される直線74に対して規定の位置に位置決めされる。第2電極板37の配置は、前述のように第3板状素材61で確立される接着予定域68の配置を反映する。ここでは、例えば個々の第2電極板37の姿勢(向き)を決定する基準線76は直線74に直交すればよく、各基準線76と直線74との交点77は前述の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第2電極板37でも、基準線76と第2電極板37の外形との間には共通の位置関係が確立される。
【0050】
第3板状素材61には第4板状素材71が重ね合わせられる。この重ね合わせにあたって第4板状素材71は裏返される。図9に示されるように、第3板状素材61の直線64と第4板状素材71の直線74との間には所定の間隔S2で平行関係が確立される。こういった位置合わせにあたって例えば各板状素材61、71の位置決め用貫通孔65、75は利用される。前述のように、第2固定板39同士の間隔sと第2電極板37同士の間隔sとは等しく設定されることから、第3板状素材61の1基準線66上に第4板状素材71の1基準線76が重ね合わせられると、全ての基準線66と基準線76とは完全に位置合わせされる。こうして個々の第2固定板39の接着予定域68には対応する第2電極板37が重ね合わせられる。こうした重ね合わせに先立って第2固定板39の表面には熱硬化性接着剤が塗布される。熱硬化性接着剤は例えばエポキシ樹脂を含めばよい。重ね合わせの完了後、第2固定板39および第2電極板37は加熱される。接着剤の硬化に伴い、第2固定板39および第2電極板37の位置関係は固定される。その後、例えば図10に示されるように、第2電極板37から連結板72は切り離される。連結板72とともに仮留め片73は第2電極板37から切り離される。こうして第2積層素材78は作成される。
【0051】
続いて第2積層素材78は第1積層素材58に重ね合わせられる。図11に示されるように、第1板状素材41の直線44と第3板状素材61の直線64との間には所定の間隔S3で平行関係が確立される。こういった位置合わせにあたって例えば各板状素材41、61の位置決め用貫通孔45、65は利用される。前述のように、第1固定板29同士の間隔sと第2固定板39同士の間隔sとは等しく設定されることから、第1積層素材58中の1基準線46、56上に第2積層素材78中の1基準線66、76が重ね合わせられると、全ての基準線46、56と基準線66、76とは完全に位置合わせされる。こうして個々の第2電極板37は対応する第1電極板31上に受け止められる。各第2電極板37は第1電極板31との間に1対の圧電素子32、32を挟み込む。こうした挟み込みに先立って圧電素子32、32の表面には熱硬化性接着剤が塗布される。熱硬化性接着剤は例えばエポキシ樹脂を含めばよい。挟み込みの完了後、第1および第2積層素材58、78は加熱される。接着剤の硬化に伴い、圧電素子32、32および第2電極板37の位置関係は固定される。
【0052】
その後、第2固定板39から連結板62は切り離される。連結板62とともに仮留め片63は第2固定板39から切り離される。その後、第1固定板29、第1電極板31、圧電素子32、第2電極板37および第2固定板39は再び加熱炉に入れられる。この加熱で熱硬化性接着剤は完全に硬化する。続いて、第1固定板29からフレーム板42は切り離される。フレーム板42とともに仮留め片43は第1固定板29から切り離される。こうして個々のマイクロアクチュエータ21は作成される。
【0053】
こういった製造方法によれば、重ね合わせや加熱にあたって各板状素材41、51、61、71は1部品として取り扱われることができる。したがって、各板状素材41、51、61、71に含まれる固定板29、39や電極板31、37の枚数に応じて重ね合わせや加熱の手間は軽減される。生産性は著しく向上する。加えて、板状素材41、51、61、71同士の位置決めや積層素材58、78同士の位置決めにあたって単純な位置決め用貫通孔45、55、65、75が用いられる。高価な画像認識技術や位置決めロボットが導入されなくても、比較的に簡単に高い精度で関連する部品29、31、37、39同士の位置合わせは実現される。したがって、製造コストは著しく低減されることができる。
【0054】
図12は、板状素材41、51、61、71同士や積層素材58、78同士の接着にあたって利用される加熱装置81を示す。この加熱装置81は、対象物を受け止める作業ステージ82を備える。作業ステージ82の上面にはヒートブロック83が向き合わせられる。ヒートブロック83には加圧シリンダ84が接続される。加圧シリンダ84はヒートブロック83の上下動を生み出す。こうした上下動に基づきヒートブロック83は作業ステージ82に向かって接近したり作業ステージ82から遠ざかったりすることができる。しかも、加圧シリンダ84は作業ステージ82に対してヒートブロック83を押し付けることができる。
【0055】
作業ステージ82は、例えば所定の基準面(例えば床面)に設置される土台85を備える。この土台85には、表面で対象物を受け止めるパレット86が着脱自在に搭載される。パレット86は例えばステンレス鋼といった金属材料から成型されればよい。パレット86の構造の詳細は後述される。
【0056】
ヒートブロック83は、加圧シリンダ84に連結される熱源ブロック87を備える。熱源ブロック87は例えばセラミックヒータで構成されればよい。熱源ブロック87の下向き面にはヘッド88が着脱自在に連結される。ヘッド88には、後述されるように、パレット86上の対象物に接触する加熱面が形成される。熱源ブロック87で生成される熱は熱源ブロック87からヘッド88に伝達される。こうして加熱されるヘッド88が加熱面で対象物に接触する結果、対象物は加熱される。
【0057】
以上の加熱装置81では、後述されるように、接着される対象物ごとに固有のパレット86およびヘッド88が用意される。前述のマイクロアクチュエータ21の製造では、第1積層素材58の作成時に第1板状素材41および第2板状素材51の接着にあたって固有のパレット86およびヘッド88が加熱装置81に装着される。同様に、第2積層素材78の作成時に第3板状素材51および第4板状素材61の接着にあたって固有のパレット86およびヘッド88が加熱装置81に装着される。さらに同様に、第1積層素材58および第2積層素材78の接着にあたって固有のパレット86およびヘッド88が加熱装置81に装着される。これら3種類のパレット86やヘッド88が1台の加熱装置81で利用される場合には、パレット86やヘッド88は接着のたびに交換されればよい。その他、各パレット86およびヘッド88の組み合わせごとに1台の加熱装置81が用意されてもよい。こうして3台の加熱装置81が用意されれば、ヘッド88の交換の手間は省略されるとともに作業時間は短縮されることができる。同時に、ヘッド88の交換に基づくヘッド88の熱損失は極力回避されることができる。
【0058】
図13は、第1積層素材58の作成にあたって加熱装置81に装着される第1パレット86aを示す。この第1パレット86aには平坦な第1基準面91すなわち吸熱面が規定される。第1基準面91には、第1直線92に沿って第1位置決めピン93が配列される。第1位置決めピン93は第1基準面91の垂直方向に立ち上がる。第1積層素材58の作成にあたって第1板状素材41のフレーム板42は第1基準面91に受け止められる。第1位置決めピン93が第1板状素材41の位置決め用貫通孔45に受け入れられると、第1板状素材41の直線44は第1直線92上に位置合わせされる。
【0059】
同様に、第1パレット86aには平坦な第2基準面94すなわち吸熱面が規定される。この第2基準面94は第1基準面91に段違いに配置される。第2基準面94には、第1直線92に平行な第2直線95に沿って第2位置決めピン96が配列される。第2位置決めピン96は第2基準面94の垂直方向に立ち上がる。第1直線92と第2直線95との間隔は、前述のように第1板状素材41に対して第2板状素材54が重ね合わせられる際に第1板状素材41の直線44と第2板状素材51の直線54との間で確立される間隔S1に設定される。第1積層素材58の作成にあたって第2板状素材51の連結板52は第2基準面94に受け止められる。第2位置決めピン96が第2板状素材51の位置決め用貫通孔55に受け入れられると、第2板状素材51の直線54は第2直線95上に位置合わせされる。
【0060】
第1基準面91には、第1直線92と第2直線95との間で窪み97が形成される。この窪み97の中には複数個の台座98が配置される。台座98の個数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。台座98の頂上面には平坦な受け面99が規定される。全ての受け面99は1平面内で配置される。受け面99の配置は、第1位置決めピン93および第1板状素材41の位置決め用貫通孔45に基づき第1板状素材41が位置合わせされる際に確立される第2平板体29bの配置に基づき決定される。こうして窪み97および台座98の働きで少なくとも各受け面99と第1および第2基準面91、94との間には断熱溝101が形成される。断熱溝101の深さは例えば第2基準面94から1.0mm〜2.0mm程度であればよい。
【0061】
図14に示されるように、第1板状素材41の位置決め用貫通孔45と第1位置決めピン93との位置合わせに基づき第1パレット86a上に第1板状素材41が搭載されると、第1板状素材41のフレーム板42は第1パレット86aの第1基準面91に受け止められる。フレーム板42の裏面は全面で第1基準面91すなわち吸熱面に接触する。このとき、各第1固定板29の第2平板体29bは対応する受け面99に受け止められる。受け面99は全面で第2平板体29bの裏面に接触する。
【0062】
続いて、第2板状素材51の位置決め用貫通孔55と第2位置決めピン95との位置合わせに基づき第1パレット86a上に第2板状素材51が搭載されると、第2板状素材51の連結板52は第2基準面94に受け止められる。連結板52の裏面は全面で第2基準面94すなわち吸熱面に接触する。このとき、第2板状素材51に含まれる各第1電極板31は台座98上で第1固定板29の表面に受け止められる。各第1電極板31は対応する第1固定板29の接着予定域48に全面で接触する。こうして第1板状素材41に第2板状素材51は重ね合わせられる。
【0063】
図15から明らかなように、各受け面99は、少なくとも第1固定板29の輪郭よりも小さく形成される。すなわち、第1固定板29の第2平板体29bが受け面99に受け止められる際に、第2平板体29bは受け面99の周囲から満遍なくはみ出る。受け面99の大きさは、ヘッド88の加熱面が受け面99に対して押し付けられる際に加熱面および受け面99の間に挟まれる第2平板体29bで十分に温度が上昇する程度に設定されればよい。ここでは、受け面99の輪郭と第2平板体29bの輪郭との間隔は例えば100μm〜200μm程度に設定される。
【0064】
図16は、第1積層素材58の作成にあたって加熱装置81に装着される第1ヘッド88aを示す。この第1ヘッド88aには、作業ステージ82すなわち第1パレット86aに向き合わせられる平坦な下向き面すなわち基準面102が規定される。基準面102には、1直線103に沿って延びる1筋の突片104が形成される。この突片104は作業ステージ82に向かって基準面102から隆起する。突片104の頂上面には複数の加熱面105が規定される。全ての加熱面105は1平面内に配置される。加熱面105の配置は第1パレット86aの受け面99の配置を反映する。加熱面105と基準面102との高低差は例えば2.0mmに設定される。
【0065】
隣接する加熱面105同士の間にはスリット106が形成される。スリット106の深さは例えば加熱面105と基準面102との高低差よりも小さく設定される。ここでは、スリット106の深さは加熱面105から200μm程度に設定される。
【0066】
基準面102には、突片104の隣で突片104に沿って窪み107が形成される。この窪み107は、突片104の長手方向中央から突片104の長手方向外側に向かって広がる。窪み107の深さは突片104の長手方向中央で最も深く設定される。しかも、窪み107の深さは突片104の長手方向外側に向かうにつれて徐々に減少する。ここでは、突片104の長手方向中央で窪み107の深さは4.0mmに設定される。窪み107と基準面102との境界付近では窪み107の深さは3.0mmに設定される。すなわち、窪み107の深さは段階的に変化する。こういった第1ヘッド88aが加熱装置81の熱源ブロック87に固定されると、図16から明らかなように、熱源ブロック87内の発熱体108は直線103すなわち突片104に平行に配置される。
【0067】
いま、前述の第1パレット86aおよび第1ヘッド88aが加熱装置81に装着される場面を想定する。第1パレット86a上には、前述のように、第1および第2板状素材41、51が順番に搭載される。この搭載にあたって、第1板状素材41に含まれる第1固定板29の第2平板体29bと、第2板状素材51に含まれる第1電極板31との間には熱硬化性接着剤が挟み込まれる。第1ヘッド88aの固定後、熱源ブロック87内の発熱体108には電力が供給される。発熱体108は熱源ブロック87を熱する。続いて、熱源ブロック87の熱は第1ヘッド88aに伝達される。第1ヘッド88aは例えば摂氏200度に加熱される。
【0068】
その後、加圧シリンダ84の働きで第1ヘッド88aは第1パレット86aに対して押し付けられる。第1ヘッド88aの各加熱面105は、例えば図17に示されるように、第1パレット86aの受け面99との間に第1固定板29の第2平板体29bおよび第1電極板31を挟み込む。加熱面105の熱は第1固定板29の第2平板体29bおよび第1電極板31に伝達される。第2平板体29bおよび第1電極板31の温度上昇に基づき熱硬化性接着剤は硬化する。こうして第1固定板29上に第1電極板31は接着される。
【0069】
このとき、図17から明らかなように、第1電極板31の表面には第1ヘッド88aの加熱面105が接触するものの、第1板状素材41のフレーム板42や第2板状素材51の連結板52には第1ヘッド88aは接触しない。加熱面105の周囲では、第1ヘッド88aとフレーム板42や連結板52との間に膜厚2.0mm以上の空気層が形成される。第1ヘッド88aからフレーム板42や連結板52への熱の伝達は大いに抑制される。しかも、フレーム板42や連結板52の熱は第1パレット86aの第1および第2基準面91、94に逃される。フレーム板42や連結板52の温度上昇は極力回避される。フレーム板42や連結板52の熱膨張は確実に抑制される。こうして、第1板状素材41中の第1固定板29同士の間隔sや、第2板状素材51中の第1電極板31同士の間隔sは一定に維持される。第1固定板29と、第1固定体29に貼り合わせられる第1電極板31との位置ずれは防止されることができる。本発明者の検証によれば、2.0mm以上の空気層でフレーム板42や連結板52の熱膨張は十分に規制されることが確認された。その一方で、フレーム板42や連結板52が同時に加熱されると、摂氏120度程度のヘッドの温度を境に第1固定板29と第1電極板31との位置ずれが著しく増大することが確認された。
【0070】
加えて、第1パレット86aでは、断熱溝101の働きで受け面99と基準面91、94すなわち吸熱面との間に空気層は形成される。受け面99と基準面91、94とは熱的に断絶される。したがって、受け面99から基準面91、94に向かって熱は伝達されにくい。第1固定板29や第1電極板31は効率的に加熱されることができる。こういった熱の逃げの防止にあたって、例えば図18に示されるように、第1パレット86aには、受け面99や台座98を形成する断熱層109が埋め込まれてもよい。この種の断熱層109は例えばAl2 O3 −TiCといったアルミナセラミックから構成されればよい。アルミナセラミックのように硬度が高ければ、台座98および受け面99の摩耗は極力回避されることができる。
【0071】
しかも、例えば図19に示されるように、前述の第1ヘッド88aによれば、第1電極板31同士の間で仮留め片53の熱膨張が発生しても、仮留め片53はスリット106内で十分に湾曲することができる。こうした湾曲で、第1電極板31同士の間隔を広げることなく仮留め片53の熱膨張は逃されることができる。すなわち、第1電極板31同士の間で十分に断熱が確立されない場合でも、スリット106の働きで第1電極板31の位置ずれは確実に回避されることができる。
【0072】
さらに、前述の第1ヘッド88aでは、図20に示されるように、突片104を挟み込む空気層の厚みは突片104の長手方向中央に向かうにつれて増大する。その結果、突片104の長手方向外側付近では、突片104の長手方向中央付近に比べて、第1ヘッド88aの表面は第1パレット86aに接近する。突片104の長手方向外側では、突片104の長手方向中央付近に比べて、加熱面105の周囲から熱が逃げにくい。突片104に平行に延びる1本の発熱体108の採用にも拘わらず、個々の加熱面105ごとに均一な温度は確保されることができる。全ての加熱面105を通じて温度のばらつきは極力回避されることができる。その一方で、突片104の長手方向に一律に基準面102が広がると、突片104の長手方向外側で突片104から熱が逃げやすく、長手方向中央付近の加熱面105と長手方向外側の加熱面105との間に温度差が生じてしまう。
【0073】
前述のような加熱装置81では、図21から明らかなように、各加熱面105は少なくとも第1電極板31の輪郭よりも小さく形成される。すなわち、第1電極板31に加熱面105が押し付けられる際に、第1電極板31は加熱面105の周囲から満遍なくはみ出る。加熱面105の大きさは、加熱面105および受け面99の間に挟まれる第2平板体29bで十分に温度が上昇する程度に設定されればよい。ここでは、加熱面105の輪郭と第1電極板31の輪郭との間隔は例えば100μm〜200μm程度に設定される。
【0074】
こうして小さめの受け面99や小さめの加熱面105が用いられると、図22に示されるように、第1固定板29や第1電極板31の周囲から溢れ出る接着剤111は第1パレット86aや第1ヘッド88aに接触することはない。毛細管現象の働きで接着剤111が第1パレット86aや第1ヘッド88aに向かって吸い上げられることはない。したがって、第1パレット86aや第1ヘッド88aは清浄に保たれ続けることができる。その一方で、第1固定板29よりも大きめの受け面や、第1電極板31よりも大きめの加熱面が用いられると、毛細管現象に基づき余分な接着剤が受け面や加熱面に付着しやすい。
【0075】
なお、第2積層素材78の作成や、第1および第2積層素材58、78同士の接着にあたっては、前述と同様に、パレット86やヘッド88が用意されればよい。パレット86では、各板状素材41、61、71のフレーム板42や連結板62、72を受け止める吸熱面や、各板状素材41、61、71に含まれる第1固定板29、第2固定板39および第2電極板37を受け止める受け面が規定されればよい。一方で、ヘッド88では、ヘッド88の表面から隆起する突片や、個々の第2電極板37や第2固定板39に接触する複数の加熱面が形成されればよい。いずれの場合でも、各板状素材41、61、71に含まれる第1固定板29、第2電極板37および第2固定板39同士の間では一定の間隔sは維持され続けることができる。
【0076】
(付記1) 第1連結部材に連結される複数個の第1部品を作業ステージ上に設置する工程と、第2連結部材に連結される複数個の第2部品を第1部品上に重ね合わせる工程と、第1および第2連結部材の熱膨張を阻止しつつ第2部品から加熱する工程とを備えることを特徴とする重ね合わせ部品の加熱方法。
【0077】
(付記2) 付記1に記載の加熱方法において、前記第1および第2部品の間には熱硬化性接着剤が挟み込まれることを特徴とする加熱方法。
【0078】
(付記3) 付記1または2に記載の加熱方法において、個々の前記第2部品ごとに加熱することを特徴とする加熱方法。
【0079】
(付記4) 対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に個別に規定されて、個々に対象物に接触する複数の加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0080】
(付記5) 付記4に記載の加熱装置において、前記突片には前記加熱面同士の間でスリットが形成されることを特徴とする加熱装置。
【0081】
(付記6) 付記4に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックの表面と前記突片の頂上面との高低差は2.0mm以上に設定されることを特徴とする加熱装置。
【0082】
(付記7) 対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に規定されて、対象物に接触する加熱面と、突片の隣でヒートブロックの表面に形成されて、突片の長手方向中央から突片の長手方向外側に向かって広がる窪みとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0083】
(付記8) 表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に規定される吸熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0084】
(付記9) 付記8に記載の加熱装置において、前記作業ステージは、所定の基準面に設置される土台と、この土台に着脱自在に搭載されて、表面で前記受け面および吸熱面を規定するパレットとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0085】
(付記10) 付記8または9に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0086】
(付記11) 表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に形成されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる断熱層とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0087】
(付記12) 付記11に記載の加熱装置において、前記作業ステージは、所定の基準面に設置される土台と、この土台に着脱自在に搭載されて、前記対象物を受け止めるパレットとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0088】
(付記13) 付記11または12に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0089】
(付記14) 表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に刻まれる溝とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0090】
(付記15) 付記14に記載の加熱装置において、前記作業ステージは、所定の基準面に設置される土台と、この土台に着脱自在に搭載され、前記受け面および溝を提供するパレットとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0091】
(付記16) 付記14または15に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0092】
(付記17) 所定の基準面に設置される土台と、土台に着脱自在に搭載され、表面で対象物を受け止めるパレットと、パレットの表面に向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、パレット上の対象物に接触する加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0093】
(付記18) 付記17に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記パレットに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0094】
(付記19) 付記17または18に記載の加熱装置において、前記パレットの表面には、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲に配置される吸熱面とが規定されることを特徴とする加熱装置。
【0095】
(付記20) 付記19に記載の加熱装置において、前記受け面は、前記パレットの表面に埋め込まれる断熱材の表面で規定されることを特徴とする加熱装置。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】マイクロアクチュエータの構造を概略的に示す拡大分解斜視図である。
【図3】マイクロアクチュエータの第1固定板を含む第1板状素材を概略的に示す平面図である。
【図4】マイクロアクチュエータの第1電極板を含む第2板状素材を概略的に示す平面図である。
【図5】第1板状素材に重ね合わせられた第2板状素材を示す平面図である。
【図6】第1積層素材の第1電極板上に重ね合わせられた圧電素子を示す平面図である。
【図7】マイクロアクチュエータの第2固定板を含む第3板状素材を概略的に示す平面図である。
【図8】マイクロアクチュエータの第2電極板を含む第4板状素材を概略的に示す平面図である。
【図9】第3板状素材に重ね合わせられた第4板状素材を示す平面図である。
【図10】第2積層素材を示す平面図である。
【図11】第1積層素材に重ね合わせられた第2積層素材を示す平面図である。
【図12】本発明に係る加熱装置の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】第1パレットの構造を概略的に示す平面図である。
【図14】図13の14−14線に沿った拡大部分断面図である。
【図15】第1パレットの受け面と、受け面に受け止められる第1固定板との位置関係を示す概念図である。
【図16】第1ヘッドの構造を概略的に示す斜視図である。
【図17】図14に対応し、第1パレットおよび第1ヘッドの間に挟み込まれる第1固定板および第1電極板の様子を概略的に示す断面図である。
【図18】図14に対応し、一変形例に係る第1パレットの構造を概略的に示す断面図である。
【図19】図13の19−19線に沿った拡大部分断面図に対応し、第1パレットおよび第1ヘッドの間に挟み込まれる第1固定板および第1電極板の様子を概略的に示す断面図である。
【図20】図16の20−20線に沿った拡大部分断面図に対応し、第1ヘッドの基準面および窪みと第1パレットとの間隔を示す断面図である。
【図21】第1ヘッドの加熱面と、加熱面を受け止める第1電極板との位置関係を示す概念図である。
【図22】図19に対応し、第1固定板および第1電極板の間に挟まれる熱硬化性接着剤の様子を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
29 部品としての第1固定板、31 部品としての第1電極板、37部品としての第2電極板、39 部品としての第2固定板、42 連結部材としてのフレーム板、43 連結部材としての仮留め片、52 連結部材としての連結板、53 連結部材としての仮留め片、62 連結部材としての連結板、63 連結部材としての仮留め片、72 連結部材としての連結板、73 連結部材としての仮留め片、81 加熱装置、82 作業ステージ、83 ヒートブロック、85 土台、86 パレット、86a パレット、88 ヒートブロックを構成するヘッド、88a ヒートブロックを構成するヘッド、91 吸熱面としての第1基準面、94 吸熱面としての第2基準面、99 受け面、101 断熱溝、102 基準面すなわちヒートブロックの表面、104 突片、105 加熱面、106 スリット、107 窪み、109 断熱層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ステージ上で第1部品上に第2部品を重ね合わせ、少なくとも第2部品に接触するヒートブロックで第1および第2部品を加熱する重ね合わせ部品の加熱方法に関し、特に、こういった加熱方法に利用される加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1対の剪断型の圧電素子を用いたピエゾマイクロアクチュエータは広く知られる。この種のピエゾマイクロアクチュエータでは、平板状の圧電素子は1対の電極板の間に挟まれる。電極板は圧電素子の表裏に接着される。一方の電極板には例えば固定側の微小部品が接着される。他方の電極板には可動側の微小部品が接着される。これらの接着には例えば熱硬化性接着剤が用いられる。電極板から圧電素子に所定の電圧が印加されると、圧電素子の剪断に基づき電極板の間すなわち微小部品同士の間で相対的な回転運動は生み出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピエゾマイクロアクチュエータはしばしば高精度の変位制御機構として利用される。こうした場合には、例えば微小部品と電極板との接着にあたって両者の間で相対的な位置ずれは回避されなければならない。電極板と微小部品との間に高精度の位置決めが実現された後に熱硬化性接着剤は加熱されなければならない。高精度の位置決めの実現にあたって高価な画像認識技術や位置決めロボットが用いられる。しかも、微小部品と電極板とは1組ずつで取り扱われる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、第1および第2部品の位置ずれを回避しつつ、製造コストの低減および生産性の向上を実現することができる重ね合わせ部品の加熱方法を提供することを目的とする。また、本発明は、こういった加熱方法の実現に大いに貢献する加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、第1連結部材に連結される複数個の第1部品を作業ステージ上に設置する工程と、第2連結部材に連結される複数個の第2部品を第1部品上に重ね合わせる工程と、第1および第2連結部材の熱膨張を阻止しつつ第2部品から加熱する工程とを備えることを特徴とする重ね合わせ部品の加熱方法が提供される。
【0006】
こういった加熱方法によれば、複数個の第1部品や複数個の第2部品は1塊の素材として取り扱われることができる。したがって、第1部品や第2部品の個数に応じて重ね合わせや加熱の手間は軽減される。生産性は著しく向上する。しかも、加熱にあたって第1連結部材や第2連結部材の熱膨張は阻止される。第1部品相互間や第2部品相互間で規定の間隔は確実に維持される。こうして第1部品と第2部品との間で位置ずれは防止されることができる。
【0007】
第1および第2部品の間には熱硬化性接着剤が挟み込まれることができる。こうして熱硬化性接着剤が加熱されると、第1および第2部品は相互に接着されることができる。こうして第1および第2部品の位置関係は固定される。温度上昇にも拘わらず、当初の位置合わせに基づき第1および第2部品の位置関係は決定されることができる。
【0008】
特に、こういった加熱方法では個々の第2部品ごとに加熱が実施されることが望まれる。こうして第2部品のみに熱が伝達されれば、連結部材の熱膨張は確実に阻止されることができる。たとえ第2部品同士の間に連結部材が存在しても、連結部材の熱膨張は確実に阻止されることができる。
【0009】
第2発明によれば、対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に個別に規定されて、個々に対象物に接触する複数の加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0010】
この加熱装置では、ヒートブロックの表面から隆起する突片で対象物に熱は伝達される。例えば連結部材に連結される1列の部品は同時に熱に曝されることができる。しかも、加熱面ごとに対象物に接触することができることから、個々の部品ごとに熱は伝達されることができる。
【0011】
こういった加熱装置では、加熱面同士の間で突片にスリットが形成されてもよい。こういったスリットによれば、たとえ1列の部品同士の間で連結部材の熱膨張が発生しても、連結部材はスリット内で十分に湾曲することができる。こうした湾曲で、部品同士の間隔を広げることなく連結部材の熱膨張は逃されることができる。部品同士の間で十分に断熱が確立されない場合でも、スリットの働きで部品相互間の位置ずれは確実に回避されることができる。
【0012】
ヒートブロックの表面と突片の頂上面との高低差は2.0mm以上に設定されることが望まれる。こうしたヒートブロックによれば、たとえヒートブロックの表面が対象物に向き合わせられても、ヒートブロックと対象物との間には膜厚2.0mm以上の空気層は確保される。加熱面の周囲でヒートブロックから対象物への熱の伝達は大いに抑制される。こうして連結部材の温度上昇は確実に回避されることができる。
【0013】
第3発明によれば、対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に規定されて、対象物に接触する加熱面と、突片の隣でヒートブロックの表面に形成されて、突片の長手方向中央から突片の長手方向外側に向かって広がる窪みとを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0014】
こういったヒートブロックによれば、突片の長手方向外側に比べて突片の長手方向中央で厚い空気層は確立されることができる。その結果、突片の長手方向外側付近では、突片の長手方向中央付近に比べて、ヒートブロックの表面は作業ステージに接近する。突片の長手方向外側では、突片の長手方向中央付近に比べて、加熱面の周囲から熱が逃げにくい。したがって、たとえ突片に平行に延びる1本の発熱体が採用されても、突片の長手方向に均一な温度は確保されることができる。加熱面全体を通じて温度のばらつきは極力回避されることができる。その一方で、突片の長手方向にわたって均一厚みの空気層が形成されると突片の長手方向外側で突片から熱が逃げやすく、長手方向中央付近と長手方向外側との間に温度差が生じてしまう。
【0015】
第4発明によれば、表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に規定される吸熱面とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0016】
こういった加熱装置では、対象物(特に部品)は受け面に受け止められることができる。例えば部品同士を連結する連結部材は受け面の周囲で吸熱面に受け止められることができる。連結部材の熱は吸熱面から作業ステージに逃されることができる。こうして連結部材の温度上昇は極力回避されることができる。連結部材の熱膨張は確実に抑制される。吸熱面は例えば高熱伝導率の素材から構成されればよい。
【0017】
第5発明によれば、表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に形成されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる断熱層とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0018】
こういった加熱装置では、対象物(特に部品)は断熱層の表面に受け止められることができる。対象物は断熱層と加熱面との間に挟み込まれる。加熱面から対象物に熱が伝達されると、対象物では温度上昇は実現される。このとき、断熱層の働きで対象物からの熱の放射は抑制されることができる。対象物は効率的に加熱されることができる。
【0019】
第6発明によれば、表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に刻まれる溝とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0020】
こういった加熱装置では、対象物(特に部品)は、溝に囲まれる受け面に受け止められることができる。加熱面から対象物に熱が伝達されると、対象物では温度上昇は実現される。このとき、溝の働きで受け面の周囲には空気層が形成される。受け面と周囲とは熱的に断絶される。したがって、受け面から熱は逃げにくい。こうして対象物からの熱の放射は抑制されることができる。対象物は効率的に加熱されることができる。
【0021】
第7発明によれば、所定の基準面に設置される土台と、土台に着脱自在に搭載され、表面で対象物を受け止めるパレットと、パレットの表面に向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、パレット上の対象物に接触する加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0022】
こういった加熱装置では、パレットは簡単に交換されることができる。対象物ごとにパレットは用意されることができる。対象物は、確実に広い面積で対象物に接触することができる。パレットは確実に加熱面の押し付け力を受け止めることができる。対象物はパレットの表面とブロックの加熱面との間に確実に挟み込まれる。しかも、対象物はパレットごと持ち運ばれることができる。生産性の向上が期待される。
【0023】
以上のような加熱方法や加熱装置は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)に組み込まれるマイクロアクチュエータの製造にあたって利用されることができる。その他、前述の加熱方法や加熱装置は任意の部材や部品の重ね合わせや接着にあたって利用されることができる。しかも、第1連結部材に連結される第1部品は必ずしも同一形状である必要はなく、第2連結部材に連結される第2部品も必ずしも同一形状である必要はない。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、第1および第2部品の位置ずれを回避しつつ、製造コストの低減および生産性の向上を実現することができる重ね合わせ部品の加熱方法は提供されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0026】
図1は磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は、例えば平たい直方体の内部空間を区画する箱形の筐体本体12を備える。収容空間には、記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク13が収容される。磁気ディスク13はスピンドルモータ14の駆動軸に装着される。スピンドルモータ14は、例えば7200rpmや10000rpmといった高速度で磁気ディスク13を回転させることができる。筐体本体12には、筐体本体12との間で収容空間を密閉する蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。
【0027】
収容空間にはヘッドアセンブリ15がさらに収容される。このヘッドアセンブリ15は、垂直方向に延びる支軸16に回転自在に連結される。ヘッドアセンブリ15は、支軸16から水平方向に延びる複数のアクチュエータアーム17と、各アクチュエータアーム17の先端に取り付けられてアクチュエータアーム17の先端から前方に延びる弾性サスペンション18とを備える。アクチュエータアーム17には所定の剛性が与えられる。アクチュエータアーム17は、例えばステンレス鋼板から打ち抜き加工に基づき成型されてもよく、アルミニウム材料から押し出し加工に基づき成型されてもよい。アクチュエータアーム17は磁気ディスク13の表面および裏面ごとに設置される。アクチュエータアーム17は支軸16回りに揺動することができる。こういったアクチュエータアーム17の揺動は例えばボイスコイルモータ(VCM)といった駆動源19の働きで実現されればよい。
【0028】
アクチュエータアーム17および弾性サスペンション18の間にはマイクロアクチュエータ21が挟み込まれる。このマイクロアクチュエータ21は、所定の駆動電圧に基づきアクチュエータアーム17および弾性サスペンション18の間で相対変位を引き起こすことができる。こういった相対変位は、後述されるように、例えばアクチュエータアーム17の先端で揺動軸回りに実現される揺動に代表される。こういった揺動の揺動軸は支軸16に平行に設定されればよい。
【0029】
弾性サスペンション18の先端では、いわゆるジンバルばね(図示されず)の働きで浮上ヘッドスライダ22が片持ち支持される。浮上ヘッドスライダ22には、磁気ディスク13の表面に向かって弾性サスペンション18から押し付け力が作用する。磁気ディスク13の回転に基づき磁気ディスク13の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には浮力が作用する。弾性サスペンション18の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク13の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0030】
浮上ヘッドスライダ22上にはいわゆる磁気ヘッドすなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。この電磁変換素子は、例えば、スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク13から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果素子(GMR)やトンネル接合磁気抵抗効果素子(TMR)といった読み出し素子(図示されず)と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク13に情報を書き込む薄膜磁気ヘッドといった書き込み素子(図示されず)とで構成されればよい。
【0031】
こうしたヘッドアセンブリ15では、支軸16回りでアクチュエータアーム17が揺動すると、弾性サスペンション18は磁気ディスク13の半径方向に移動することができる。同時に、アクチュエータアーム17の先端で揺動軸回りに弾性サスペンション18が揺動すると、弾性サスペンション18の先端で浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク13の半径方向に移動することができる。これらアクチュエータアーム17および弾性サスペンション18の協調動作に基づき浮上ヘッドスライダ22上の磁気ヘッドは目標の記録トラックに対して正確に位置決めされることができる。浮上ヘッドスライダ22上の磁気ヘッドは、周知のようにアクチュエータアーム17で実現される粗動に加えて、アクチュエータアーム17上で実現される弾性サスペンション18の微動の働きで目標の記録トラックを追従し続けることができる。
【0032】
図1から明らかなように、ヘッドアセンブリ15には、アクチュエータアーム17ごとに、アクチュエータアーム17の先端からアクチュエータアーム17の付け根に向かって延びる個別中継フレキシブルプリント配線基板(FPC)24と、ヘッドアセンブリ15上で複数の個別中継FPC24を受け止め、ヘッドアセンブリ15から制御回路基板25に向かって延びる共通中継フレキシブルプリント配線基板(FPC)26とが結合される。制御回路基板25上には、例えば読み出し素子の読み出し動作や書き込み素子の書き込み動作を制御するヘッドIC(集積回路)27が実装される。こうしたヘッドIC27の働きで、磁気情報の読み出し時に、読み出し素子に向けてセンス電流は供給されたり、供給されたセンス電流に基づき読み出される情報信号は処理されたりすることができる。同様に、ヘッドIC27は、磁気情報の書き込み時に書き込み素子に向けて書き込み電流を供給する。制御回路基板25にはコネクタ28が接続される。
【0033】
コネクタ28は筐体本体12の底板に固定される。コネクタ28は、底板の裏側に取り付けられるプリント配線基板(図示されず)に連結される。このプリント配線基板上には例えばアクチュエータ駆動ICが実装される。アクチュエータ駆動ICは、所定のデジタル制御信号に基づきアナログ制御信号すなわちマイクロアクチュエータ21向けの駆動電圧を生み出す。アクチュエータ駆動ICとコネクタ28とは、例えばプリント配線基板に形成される導体の配線パターンで相互に電気的に接続される。
【0034】
図2に示されるように、マイクロアクチュエータ21は、アクチュエータアーム17の先端に固定される第1固定板29を備える。この第1固定板29は、アクチュエータアーム17の表面に重ね合わせられて固定される第1平板体29aと、第1平板体29aからアクチュエータアーム17の前方に延びる第2平板体29bとを備える。第2平板体29bは第1平板体29aとは段違いに配置される。第2平板体29bの表面には第1電極板31が貼り付けられる。この貼り付けにあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。
【0035】
第1電極板31は、例えばステンレス鋼製の薄板基材と、この薄板基材の表面に被覆される絶縁被膜とから構成される。絶縁被膜の表面には、1対の剪断型圧電素子32、32を受け止める導電パッド33が形成される。各圧電素子32は導電パッド33に接着されればよい。こういった接着にあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。各圧電素子32および導電パッド33の間では、接着剤の介在にも拘わらず、圧電素子32や導電パッド33の表面粗さに基づき電気的接続が確立される。
【0036】
第1電極板31には、第1電極板31に直交する姿勢で立ち上がる1対の電圧端子34、35が一体に形成される。電圧端子34、35はアクチュエータアーム17の側面に沿って広がる。こういった電圧端子34、35は第1電極板31の素材から折り曲げ形成されればよい。一方の電圧端子34は導電パッド33に接続される。こういった接続にあたって、絶縁被膜の表面に形成される導電パターンは利用される。他方の電圧端子35は接続端子36に接続される。この接続にあたっては、絶縁被膜の表面で導電パッド33を迂回しつつ第1電極板31を横切る導電パターンが利用される。電圧端子34や導電パッド33と、電圧端子35や接続端子36とは相互に電気的に隔絶される。各電圧端子34、35には個別中継FPC24上の配線パターン(図示されず)が接続される。電圧端子34、35には前述のアクチュエータ駆動ICから駆動電圧が供給される。
【0037】
圧電素子32、32の表面には第2電極板37が貼り付けられる。この貼り付けにあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。第2電極板37は、例えばステンレス鋼製の薄板基材と、この薄板基材の表面に被覆される絶縁被膜とから構成される。絶縁被膜の表面には、圧電素子32、32に受け止められる導電パッド(図示されず)が形成される。各圧電素子32は導電パッドに接着されればよい。こういった接着にあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。各圧電素子32および導電パッドの間では、接着剤の介在にも拘わらず、圧電素子32や導電パッドの表面粗さに基づき電気的接続が確立される。
【0038】
第2電極板37には、第2電極板37上の導電パッドに接続される接続端子38が形成される。この接続端子38は第1電極板31の接続端子36に電気的に接続される。したがって、電圧端子34、35に駆動電圧が供給されると、第1および第2電極板31、37の導電パッドから圧電素子32、32に電圧が印加される。こうして電圧が印加されると、2つの圧電素子32、32は互い違いの方向に剪断力を発揮する。
【0039】
第2電極板37の表面には第2固定板39が貼り付けられる。こういった貼り付けにあたって例えば熱硬化性接着剤が用いられる。第2固定板39の表面には、弾性サスペンション18の根本(基端)が重ね合わせられて固定される。前述のように各圧電素子32に剪断変形が引き起こされると、弾性サスペンション18はアクチュエータアーム17に対して揺動軸40回りで揺動することができる。
【0040】
次にマイクロアクチュエータ21の製造方法を簡単に説明する。まず、例えば図3に示されるように、複数個(例えば9個)の第1固定板29を含む第1板状素材41が用意される。この第1板状素材41は四角い連結部材すなわちフレーム板42を備える。フレーム板42の1長尺板42aには各第1固定板29が個別に取り付けられる。各第1固定板29は仮留め片43で長尺板42aに連結される。フレーム板42、仮留め片43および第1固定板29は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。ここで、金属板すなわち第1板状素材41の厚みは例えば100μm程度に設定される。
【0041】
フレーム板42には、1直線44上に配置される位置決め用貫通孔45が形成される。個々の第1固定板29は、位置決め用貫通孔45で規定される直線44に対して規定の位置に位置決めされる。ここでは、例えば個々の第1固定板29の姿勢(向き)を決定する基準線46は直線44に直交すればよく、各基準線46と直線44との交点47は所定の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第1固定板29でも、基準線46と第1固定板29の外形との間には共通の位置関係が確立される。こうした基準線46に基づき各第1固定板29の第2平板体29bでは接着予定域48が規定される。すなわち、全ての第1固定板29では接着予定域48と基準線46との間に共通の位置関係が確立される。
【0042】
同様に、図4に示されるように、複数個(例えば9個)の第1電極板31を含む第2板状素材51が用意される。第1電極板31の枚数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。この第2板状素材51は長尺の連結部材すなわち連結板52を備える。この連結板52には各第1電極板31が個別に取り付けられる。各第1電極板31は仮留め片53で連結板52に連結される。同時に、仮留め片53は、隣接する第1電極板31同士を連結する。連結板52、仮留め片53および第1電極板31は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属薄板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。金属薄板の表面には、前述の絶縁被膜や導電パッド33、接続端子36、導電パターンが予め形成される。成型にあたって前述の電圧端子34、35は同時に折り曲げ形成されてもよい。ここで、第2板状素材51の厚みは例えば25μm程度に設定される。
【0043】
連結板52には、前述と同様に、1直線54上に配置される位置決め用貫通孔55が形成される。個々の第1電極板31は、位置決め用貫通孔55で規定される直線54に対して規定の位置に位置決めされる。第1電極板31の配置は、前述のように第1板状素材41で確立される接着予定域48の配置を反映する。ここでは、例えば個々の第1電極板31の姿勢(向き)を決定する基準線56は直線54に直交すればよく、各基準線56と直線54との交点57は前述の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第1電極板31でも、基準線56と第1電極板31の外形との間には共通の位置関係が確立される。
【0044】
第1板状素材41には第2板状素材51が重ね合わせられる。図5に示されるように、第1板状素材41の直線44と第2板状素材51の直線54との間には所定の間隔S1で平行関係が確立される。こういった位置合わせにあたって例えば各板状素材41、51の位置決め用貫通孔45、55は利用される。前述のように、第1固定板29同士の間隔sと第1電極板31同士の間隔sとは等しく設定されることから、第1板状素材41の1基準線46上に第2板状素材51の1基準線56が重ね合わせられると、全ての基準線46と基準線56とは完全に位置合わせされる。こうして個々の第1固定板29の接着予定域48には対応する第1電極板31が重ね合わせられる。こうした重ね合わせに先立って第1固定板29の表面には熱硬化性接着剤が塗布される。熱硬化性接着剤は例えばエポキシ樹脂を含めばよい。重ね合わせの完了後、第1固定板29および第1電極板31は加熱される。接着剤の硬化に伴い、第1固定板29および第1電極板31の位置関係は固定される。
【0045】
その後、第1電極板31から連結板52は切り離される。連結板52とともに仮留め片53は第1電極板31から切り離される。続いて、例えば図6に示されるように、各第1電極板31上には所定の位置決めに基づき1対の圧電素子32、32が接着される。接着にあたって例えば熱硬化性接着剤は用いられる。接着剤の硬化に伴い、圧電素子32、32および第1電極板31すなわち第1固定板29の位置関係は固定される。こうして第1積層素材58は作成される。
【0046】
次に、例えば図7に示されるように、複数個(例えば9個)の第2固定板39を含む第3板状素材61が用意される。第2固定板39の枚数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。この第3板状素材61は長尺の連結部材すなわち連結板62を備える。この連結板62には各第2固定板39が個別に取り付けられる。各第2固定板39は仮留め片63で連結板62に連結される。連結板62、仮留め片63および第2固定板39は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。ここでは、金属板すなわち第3板状素材61の厚みは例えば100μm程度に設定される。
【0047】
連結板62には、前述と同様に、1直線64上に配置される位置決め用貫通孔65が形成される。個々の第2固定板39は、位置決め用貫通孔65で規定される直線64に対して規定の位置に位置決めされる。第2固定板39の配置は第1固定板29の配置を反映する。ここでは、例えば個々の第2固定板39の姿勢(向き)を決定する基準線66は直線64に直交すればよく、各基準線66と直線64との交点67は前述の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第2固定板39でも、基準線66と第2固定板39の外形との間に共通の位置関係は確立される。こうした基準線66に基づき各第2固定板39では接着予定域68が規定される。すなわち、全ての第2固定板39では接着予定域68と基準線66との間に共通の位置関係が確立される。
【0048】
さらに、図8に示されるように、複数個(例えば9個)の第2電極板37を含む第4板状素材71が用意される。第2電極板37の枚数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。この第4板状素材71は長尺の連結部材すなわち連結板72を備える。この連結板72には各第2電極板37が個別に取り付けられる。各第2電極板37は仮留め片73で連結板72に連結される。同時に、仮留め片73は、隣接する第2電極板37同士を連結する。連結板72、仮留め片73および第2電極板37は例えば打ち抜き加工に基づき1枚の金属薄板(例えばステンレス鋼板)から成型されればよい。金属薄板の表面には、前述の絶縁被膜や導電パッド、接続端子38が予め形成される。ここで、第4板状素材71の厚みは例えば25μm程度に設定される。
【0049】
連結板72には、前述と同様に、1直線74上に配置される位置決め用貫通孔75が形成される。個々の第2電極板37は、位置決め用貫通孔75で規定される直線74に対して規定の位置に位置決めされる。第2電極板37の配置は、前述のように第3板状素材61で確立される接着予定域68の配置を反映する。ここでは、例えば個々の第2電極板37の姿勢(向き)を決定する基準線76は直線74に直交すればよく、各基準線76と直線74との交点77は前述の間隔sで等間隔に配置されればよい。いずれの第2電極板37でも、基準線76と第2電極板37の外形との間には共通の位置関係が確立される。
【0050】
第3板状素材61には第4板状素材71が重ね合わせられる。この重ね合わせにあたって第4板状素材71は裏返される。図9に示されるように、第3板状素材61の直線64と第4板状素材71の直線74との間には所定の間隔S2で平行関係が確立される。こういった位置合わせにあたって例えば各板状素材61、71の位置決め用貫通孔65、75は利用される。前述のように、第2固定板39同士の間隔sと第2電極板37同士の間隔sとは等しく設定されることから、第3板状素材61の1基準線66上に第4板状素材71の1基準線76が重ね合わせられると、全ての基準線66と基準線76とは完全に位置合わせされる。こうして個々の第2固定板39の接着予定域68には対応する第2電極板37が重ね合わせられる。こうした重ね合わせに先立って第2固定板39の表面には熱硬化性接着剤が塗布される。熱硬化性接着剤は例えばエポキシ樹脂を含めばよい。重ね合わせの完了後、第2固定板39および第2電極板37は加熱される。接着剤の硬化に伴い、第2固定板39および第2電極板37の位置関係は固定される。その後、例えば図10に示されるように、第2電極板37から連結板72は切り離される。連結板72とともに仮留め片73は第2電極板37から切り離される。こうして第2積層素材78は作成される。
【0051】
続いて第2積層素材78は第1積層素材58に重ね合わせられる。図11に示されるように、第1板状素材41の直線44と第3板状素材61の直線64との間には所定の間隔S3で平行関係が確立される。こういった位置合わせにあたって例えば各板状素材41、61の位置決め用貫通孔45、65は利用される。前述のように、第1固定板29同士の間隔sと第2固定板39同士の間隔sとは等しく設定されることから、第1積層素材58中の1基準線46、56上に第2積層素材78中の1基準線66、76が重ね合わせられると、全ての基準線46、56と基準線66、76とは完全に位置合わせされる。こうして個々の第2電極板37は対応する第1電極板31上に受け止められる。各第2電極板37は第1電極板31との間に1対の圧電素子32、32を挟み込む。こうした挟み込みに先立って圧電素子32、32の表面には熱硬化性接着剤が塗布される。熱硬化性接着剤は例えばエポキシ樹脂を含めばよい。挟み込みの完了後、第1および第2積層素材58、78は加熱される。接着剤の硬化に伴い、圧電素子32、32および第2電極板37の位置関係は固定される。
【0052】
その後、第2固定板39から連結板62は切り離される。連結板62とともに仮留め片63は第2固定板39から切り離される。その後、第1固定板29、第1電極板31、圧電素子32、第2電極板37および第2固定板39は再び加熱炉に入れられる。この加熱で熱硬化性接着剤は完全に硬化する。続いて、第1固定板29からフレーム板42は切り離される。フレーム板42とともに仮留め片43は第1固定板29から切り離される。こうして個々のマイクロアクチュエータ21は作成される。
【0053】
こういった製造方法によれば、重ね合わせや加熱にあたって各板状素材41、51、61、71は1部品として取り扱われることができる。したがって、各板状素材41、51、61、71に含まれる固定板29、39や電極板31、37の枚数に応じて重ね合わせや加熱の手間は軽減される。生産性は著しく向上する。加えて、板状素材41、51、61、71同士の位置決めや積層素材58、78同士の位置決めにあたって単純な位置決め用貫通孔45、55、65、75が用いられる。高価な画像認識技術や位置決めロボットが導入されなくても、比較的に簡単に高い精度で関連する部品29、31、37、39同士の位置合わせは実現される。したがって、製造コストは著しく低減されることができる。
【0054】
図12は、板状素材41、51、61、71同士や積層素材58、78同士の接着にあたって利用される加熱装置81を示す。この加熱装置81は、対象物を受け止める作業ステージ82を備える。作業ステージ82の上面にはヒートブロック83が向き合わせられる。ヒートブロック83には加圧シリンダ84が接続される。加圧シリンダ84はヒートブロック83の上下動を生み出す。こうした上下動に基づきヒートブロック83は作業ステージ82に向かって接近したり作業ステージ82から遠ざかったりすることができる。しかも、加圧シリンダ84は作業ステージ82に対してヒートブロック83を押し付けることができる。
【0055】
作業ステージ82は、例えば所定の基準面(例えば床面)に設置される土台85を備える。この土台85には、表面で対象物を受け止めるパレット86が着脱自在に搭載される。パレット86は例えばステンレス鋼といった金属材料から成型されればよい。パレット86の構造の詳細は後述される。
【0056】
ヒートブロック83は、加圧シリンダ84に連結される熱源ブロック87を備える。熱源ブロック87は例えばセラミックヒータで構成されればよい。熱源ブロック87の下向き面にはヘッド88が着脱自在に連結される。ヘッド88には、後述されるように、パレット86上の対象物に接触する加熱面が形成される。熱源ブロック87で生成される熱は熱源ブロック87からヘッド88に伝達される。こうして加熱されるヘッド88が加熱面で対象物に接触する結果、対象物は加熱される。
【0057】
以上の加熱装置81では、後述されるように、接着される対象物ごとに固有のパレット86およびヘッド88が用意される。前述のマイクロアクチュエータ21の製造では、第1積層素材58の作成時に第1板状素材41および第2板状素材51の接着にあたって固有のパレット86およびヘッド88が加熱装置81に装着される。同様に、第2積層素材78の作成時に第3板状素材51および第4板状素材61の接着にあたって固有のパレット86およびヘッド88が加熱装置81に装着される。さらに同様に、第1積層素材58および第2積層素材78の接着にあたって固有のパレット86およびヘッド88が加熱装置81に装着される。これら3種類のパレット86やヘッド88が1台の加熱装置81で利用される場合には、パレット86やヘッド88は接着のたびに交換されればよい。その他、各パレット86およびヘッド88の組み合わせごとに1台の加熱装置81が用意されてもよい。こうして3台の加熱装置81が用意されれば、ヘッド88の交換の手間は省略されるとともに作業時間は短縮されることができる。同時に、ヘッド88の交換に基づくヘッド88の熱損失は極力回避されることができる。
【0058】
図13は、第1積層素材58の作成にあたって加熱装置81に装着される第1パレット86aを示す。この第1パレット86aには平坦な第1基準面91すなわち吸熱面が規定される。第1基準面91には、第1直線92に沿って第1位置決めピン93が配列される。第1位置決めピン93は第1基準面91の垂直方向に立ち上がる。第1積層素材58の作成にあたって第1板状素材41のフレーム板42は第1基準面91に受け止められる。第1位置決めピン93が第1板状素材41の位置決め用貫通孔45に受け入れられると、第1板状素材41の直線44は第1直線92上に位置合わせされる。
【0059】
同様に、第1パレット86aには平坦な第2基準面94すなわち吸熱面が規定される。この第2基準面94は第1基準面91に段違いに配置される。第2基準面94には、第1直線92に平行な第2直線95に沿って第2位置決めピン96が配列される。第2位置決めピン96は第2基準面94の垂直方向に立ち上がる。第1直線92と第2直線95との間隔は、前述のように第1板状素材41に対して第2板状素材54が重ね合わせられる際に第1板状素材41の直線44と第2板状素材51の直線54との間で確立される間隔S1に設定される。第1積層素材58の作成にあたって第2板状素材51の連結板52は第2基準面94に受け止められる。第2位置決めピン96が第2板状素材51の位置決め用貫通孔55に受け入れられると、第2板状素材51の直線54は第2直線95上に位置合わせされる。
【0060】
第1基準面91には、第1直線92と第2直線95との間で窪み97が形成される。この窪み97の中には複数個の台座98が配置される。台座98の個数は第1板状素材41に含まれる第1固定板29と同数であればよい。台座98の頂上面には平坦な受け面99が規定される。全ての受け面99は1平面内で配置される。受け面99の配置は、第1位置決めピン93および第1板状素材41の位置決め用貫通孔45に基づき第1板状素材41が位置合わせされる際に確立される第2平板体29bの配置に基づき決定される。こうして窪み97および台座98の働きで少なくとも各受け面99と第1および第2基準面91、94との間には断熱溝101が形成される。断熱溝101の深さは例えば第2基準面94から1.0mm〜2.0mm程度であればよい。
【0061】
図14に示されるように、第1板状素材41の位置決め用貫通孔45と第1位置決めピン93との位置合わせに基づき第1パレット86a上に第1板状素材41が搭載されると、第1板状素材41のフレーム板42は第1パレット86aの第1基準面91に受け止められる。フレーム板42の裏面は全面で第1基準面91すなわち吸熱面に接触する。このとき、各第1固定板29の第2平板体29bは対応する受け面99に受け止められる。受け面99は全面で第2平板体29bの裏面に接触する。
【0062】
続いて、第2板状素材51の位置決め用貫通孔55と第2位置決めピン95との位置合わせに基づき第1パレット86a上に第2板状素材51が搭載されると、第2板状素材51の連結板52は第2基準面94に受け止められる。連結板52の裏面は全面で第2基準面94すなわち吸熱面に接触する。このとき、第2板状素材51に含まれる各第1電極板31は台座98上で第1固定板29の表面に受け止められる。各第1電極板31は対応する第1固定板29の接着予定域48に全面で接触する。こうして第1板状素材41に第2板状素材51は重ね合わせられる。
【0063】
図15から明らかなように、各受け面99は、少なくとも第1固定板29の輪郭よりも小さく形成される。すなわち、第1固定板29の第2平板体29bが受け面99に受け止められる際に、第2平板体29bは受け面99の周囲から満遍なくはみ出る。受け面99の大きさは、ヘッド88の加熱面が受け面99に対して押し付けられる際に加熱面および受け面99の間に挟まれる第2平板体29bで十分に温度が上昇する程度に設定されればよい。ここでは、受け面99の輪郭と第2平板体29bの輪郭との間隔は例えば100μm〜200μm程度に設定される。
【0064】
図16は、第1積層素材58の作成にあたって加熱装置81に装着される第1ヘッド88aを示す。この第1ヘッド88aには、作業ステージ82すなわち第1パレット86aに向き合わせられる平坦な下向き面すなわち基準面102が規定される。基準面102には、1直線103に沿って延びる1筋の突片104が形成される。この突片104は作業ステージ82に向かって基準面102から隆起する。突片104の頂上面には複数の加熱面105が規定される。全ての加熱面105は1平面内に配置される。加熱面105の配置は第1パレット86aの受け面99の配置を反映する。加熱面105と基準面102との高低差は例えば2.0mmに設定される。
【0065】
隣接する加熱面105同士の間にはスリット106が形成される。スリット106の深さは例えば加熱面105と基準面102との高低差よりも小さく設定される。ここでは、スリット106の深さは加熱面105から200μm程度に設定される。
【0066】
基準面102には、突片104の隣で突片104に沿って窪み107が形成される。この窪み107は、突片104の長手方向中央から突片104の長手方向外側に向かって広がる。窪み107の深さは突片104の長手方向中央で最も深く設定される。しかも、窪み107の深さは突片104の長手方向外側に向かうにつれて徐々に減少する。ここでは、突片104の長手方向中央で窪み107の深さは4.0mmに設定される。窪み107と基準面102との境界付近では窪み107の深さは3.0mmに設定される。すなわち、窪み107の深さは段階的に変化する。こういった第1ヘッド88aが加熱装置81の熱源ブロック87に固定されると、図16から明らかなように、熱源ブロック87内の発熱体108は直線103すなわち突片104に平行に配置される。
【0067】
いま、前述の第1パレット86aおよび第1ヘッド88aが加熱装置81に装着される場面を想定する。第1パレット86a上には、前述のように、第1および第2板状素材41、51が順番に搭載される。この搭載にあたって、第1板状素材41に含まれる第1固定板29の第2平板体29bと、第2板状素材51に含まれる第1電極板31との間には熱硬化性接着剤が挟み込まれる。第1ヘッド88aの固定後、熱源ブロック87内の発熱体108には電力が供給される。発熱体108は熱源ブロック87を熱する。続いて、熱源ブロック87の熱は第1ヘッド88aに伝達される。第1ヘッド88aは例えば摂氏200度に加熱される。
【0068】
その後、加圧シリンダ84の働きで第1ヘッド88aは第1パレット86aに対して押し付けられる。第1ヘッド88aの各加熱面105は、例えば図17に示されるように、第1パレット86aの受け面99との間に第1固定板29の第2平板体29bおよび第1電極板31を挟み込む。加熱面105の熱は第1固定板29の第2平板体29bおよび第1電極板31に伝達される。第2平板体29bおよび第1電極板31の温度上昇に基づき熱硬化性接着剤は硬化する。こうして第1固定板29上に第1電極板31は接着される。
【0069】
このとき、図17から明らかなように、第1電極板31の表面には第1ヘッド88aの加熱面105が接触するものの、第1板状素材41のフレーム板42や第2板状素材51の連結板52には第1ヘッド88aは接触しない。加熱面105の周囲では、第1ヘッド88aとフレーム板42や連結板52との間に膜厚2.0mm以上の空気層が形成される。第1ヘッド88aからフレーム板42や連結板52への熱の伝達は大いに抑制される。しかも、フレーム板42や連結板52の熱は第1パレット86aの第1および第2基準面91、94に逃される。フレーム板42や連結板52の温度上昇は極力回避される。フレーム板42や連結板52の熱膨張は確実に抑制される。こうして、第1板状素材41中の第1固定板29同士の間隔sや、第2板状素材51中の第1電極板31同士の間隔sは一定に維持される。第1固定板29と、第1固定体29に貼り合わせられる第1電極板31との位置ずれは防止されることができる。本発明者の検証によれば、2.0mm以上の空気層でフレーム板42や連結板52の熱膨張は十分に規制されることが確認された。その一方で、フレーム板42や連結板52が同時に加熱されると、摂氏120度程度のヘッドの温度を境に第1固定板29と第1電極板31との位置ずれが著しく増大することが確認された。
【0070】
加えて、第1パレット86aでは、断熱溝101の働きで受け面99と基準面91、94すなわち吸熱面との間に空気層は形成される。受け面99と基準面91、94とは熱的に断絶される。したがって、受け面99から基準面91、94に向かって熱は伝達されにくい。第1固定板29や第1電極板31は効率的に加熱されることができる。こういった熱の逃げの防止にあたって、例えば図18に示されるように、第1パレット86aには、受け面99や台座98を形成する断熱層109が埋め込まれてもよい。この種の断熱層109は例えばAl2 O3 −TiCといったアルミナセラミックから構成されればよい。アルミナセラミックのように硬度が高ければ、台座98および受け面99の摩耗は極力回避されることができる。
【0071】
しかも、例えば図19に示されるように、前述の第1ヘッド88aによれば、第1電極板31同士の間で仮留め片53の熱膨張が発生しても、仮留め片53はスリット106内で十分に湾曲することができる。こうした湾曲で、第1電極板31同士の間隔を広げることなく仮留め片53の熱膨張は逃されることができる。すなわち、第1電極板31同士の間で十分に断熱が確立されない場合でも、スリット106の働きで第1電極板31の位置ずれは確実に回避されることができる。
【0072】
さらに、前述の第1ヘッド88aでは、図20に示されるように、突片104を挟み込む空気層の厚みは突片104の長手方向中央に向かうにつれて増大する。その結果、突片104の長手方向外側付近では、突片104の長手方向中央付近に比べて、第1ヘッド88aの表面は第1パレット86aに接近する。突片104の長手方向外側では、突片104の長手方向中央付近に比べて、加熱面105の周囲から熱が逃げにくい。突片104に平行に延びる1本の発熱体108の採用にも拘わらず、個々の加熱面105ごとに均一な温度は確保されることができる。全ての加熱面105を通じて温度のばらつきは極力回避されることができる。その一方で、突片104の長手方向に一律に基準面102が広がると、突片104の長手方向外側で突片104から熱が逃げやすく、長手方向中央付近の加熱面105と長手方向外側の加熱面105との間に温度差が生じてしまう。
【0073】
前述のような加熱装置81では、図21から明らかなように、各加熱面105は少なくとも第1電極板31の輪郭よりも小さく形成される。すなわち、第1電極板31に加熱面105が押し付けられる際に、第1電極板31は加熱面105の周囲から満遍なくはみ出る。加熱面105の大きさは、加熱面105および受け面99の間に挟まれる第2平板体29bで十分に温度が上昇する程度に設定されればよい。ここでは、加熱面105の輪郭と第1電極板31の輪郭との間隔は例えば100μm〜200μm程度に設定される。
【0074】
こうして小さめの受け面99や小さめの加熱面105が用いられると、図22に示されるように、第1固定板29や第1電極板31の周囲から溢れ出る接着剤111は第1パレット86aや第1ヘッド88aに接触することはない。毛細管現象の働きで接着剤111が第1パレット86aや第1ヘッド88aに向かって吸い上げられることはない。したがって、第1パレット86aや第1ヘッド88aは清浄に保たれ続けることができる。その一方で、第1固定板29よりも大きめの受け面や、第1電極板31よりも大きめの加熱面が用いられると、毛細管現象に基づき余分な接着剤が受け面や加熱面に付着しやすい。
【0075】
なお、第2積層素材78の作成や、第1および第2積層素材58、78同士の接着にあたっては、前述と同様に、パレット86やヘッド88が用意されればよい。パレット86では、各板状素材41、61、71のフレーム板42や連結板62、72を受け止める吸熱面や、各板状素材41、61、71に含まれる第1固定板29、第2固定板39および第2電極板37を受け止める受け面が規定されればよい。一方で、ヘッド88では、ヘッド88の表面から隆起する突片や、個々の第2電極板37や第2固定板39に接触する複数の加熱面が形成されればよい。いずれの場合でも、各板状素材41、61、71に含まれる第1固定板29、第2電極板37および第2固定板39同士の間では一定の間隔sは維持され続けることができる。
【0076】
(付記1) 第1連結部材に連結される複数個の第1部品を作業ステージ上に設置する工程と、第2連結部材に連結される複数個の第2部品を第1部品上に重ね合わせる工程と、第1および第2連結部材の熱膨張を阻止しつつ第2部品から加熱する工程とを備えることを特徴とする重ね合わせ部品の加熱方法。
【0077】
(付記2) 付記1に記載の加熱方法において、前記第1および第2部品の間には熱硬化性接着剤が挟み込まれることを特徴とする加熱方法。
【0078】
(付記3) 付記1または2に記載の加熱方法において、個々の前記第2部品ごとに加熱することを特徴とする加熱方法。
【0079】
(付記4) 対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に個別に規定されて、個々に対象物に接触する複数の加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0080】
(付記5) 付記4に記載の加熱装置において、前記突片には前記加熱面同士の間でスリットが形成されることを特徴とする加熱装置。
【0081】
(付記6) 付記4に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックの表面と前記突片の頂上面との高低差は2.0mm以上に設定されることを特徴とする加熱装置。
【0082】
(付記7) 対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に規定されて、対象物に接触する加熱面と、突片の隣でヒートブロックの表面に形成されて、突片の長手方向中央から突片の長手方向外側に向かって広がる窪みとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0083】
(付記8) 表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に規定される吸熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0084】
(付記9) 付記8に記載の加熱装置において、前記作業ステージは、所定の基準面に設置される土台と、この土台に着脱自在に搭載されて、表面で前記受け面および吸熱面を規定するパレットとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0085】
(付記10) 付記8または9に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0086】
(付記11) 表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に形成されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる断熱層とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0087】
(付記12) 付記11に記載の加熱装置において、前記作業ステージは、所定の基準面に設置される土台と、この土台に着脱自在に搭載されて、前記対象物を受け止めるパレットとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0088】
(付記13) 付記11または12に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0089】
(付記14) 表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に刻まれる溝とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0090】
(付記15) 付記14に記載の加熱装置において、前記作業ステージは、所定の基準面に設置される土台と、この土台に着脱自在に搭載され、前記受け面および溝を提供するパレットとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0091】
(付記16) 付記14または15に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0092】
(付記17) 所定の基準面に設置される土台と、土台に着脱自在に搭載され、表面で対象物を受け止めるパレットと、パレットの表面に向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、パレット上の対象物に接触する加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0093】
(付記18) 付記17に記載の加熱装置において、前記ヒートブロックには、前記パレットに向かってヒートブロックの表面から隆起し、頂上面で前記加熱面を規定する少なくとも1筋の突片が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0094】
(付記19) 付記17または18に記載の加熱装置において、前記パレットの表面には、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲に配置される吸熱面とが規定されることを特徴とする加熱装置。
【0095】
(付記20) 付記19に記載の加熱装置において、前記受け面は、前記パレットの表面に埋め込まれる断熱材の表面で規定されることを特徴とする加熱装置。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】マイクロアクチュエータの構造を概略的に示す拡大分解斜視図である。
【図3】マイクロアクチュエータの第1固定板を含む第1板状素材を概略的に示す平面図である。
【図4】マイクロアクチュエータの第1電極板を含む第2板状素材を概略的に示す平面図である。
【図5】第1板状素材に重ね合わせられた第2板状素材を示す平面図である。
【図6】第1積層素材の第1電極板上に重ね合わせられた圧電素子を示す平面図である。
【図7】マイクロアクチュエータの第2固定板を含む第3板状素材を概略的に示す平面図である。
【図8】マイクロアクチュエータの第2電極板を含む第4板状素材を概略的に示す平面図である。
【図9】第3板状素材に重ね合わせられた第4板状素材を示す平面図である。
【図10】第2積層素材を示す平面図である。
【図11】第1積層素材に重ね合わせられた第2積層素材を示す平面図である。
【図12】本発明に係る加熱装置の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】第1パレットの構造を概略的に示す平面図である。
【図14】図13の14−14線に沿った拡大部分断面図である。
【図15】第1パレットの受け面と、受け面に受け止められる第1固定板との位置関係を示す概念図である。
【図16】第1ヘッドの構造を概略的に示す斜視図である。
【図17】図14に対応し、第1パレットおよび第1ヘッドの間に挟み込まれる第1固定板および第1電極板の様子を概略的に示す断面図である。
【図18】図14に対応し、一変形例に係る第1パレットの構造を概略的に示す断面図である。
【図19】図13の19−19線に沿った拡大部分断面図に対応し、第1パレットおよび第1ヘッドの間に挟み込まれる第1固定板および第1電極板の様子を概略的に示す断面図である。
【図20】図16の20−20線に沿った拡大部分断面図に対応し、第1ヘッドの基準面および窪みと第1パレットとの間隔を示す断面図である。
【図21】第1ヘッドの加熱面と、加熱面を受け止める第1電極板との位置関係を示す概念図である。
【図22】図19に対応し、第1固定板および第1電極板の間に挟まれる熱硬化性接着剤の様子を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
29 部品としての第1固定板、31 部品としての第1電極板、37部品としての第2電極板、39 部品としての第2固定板、42 連結部材としてのフレーム板、43 連結部材としての仮留め片、52 連結部材としての連結板、53 連結部材としての仮留め片、62 連結部材としての連結板、63 連結部材としての仮留め片、72 連結部材としての連結板、73 連結部材としての仮留め片、81 加熱装置、82 作業ステージ、83 ヒートブロック、85 土台、86 パレット、86a パレット、88 ヒートブロックを構成するヘッド、88a ヒートブロックを構成するヘッド、91 吸熱面としての第1基準面、94 吸熱面としての第2基準面、99 受け面、101 断熱溝、102 基準面すなわちヒートブロックの表面、104 突片、105 加熱面、106 スリット、107 窪み、109 断熱層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連結部材に連結される複数個の第1部品を作業ステージ上に設置する工程と、第2連結部材に連結される複数個の第2部品を第1部品上に重ね合わせる工程と、第1および第2連結部材の熱膨張を阻止しつつ第2部品から加熱する工程とを備えることを特徴とする重ね合わせ部品の加熱方法。
【請求項2】
対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に個別に規定されて、個々に対象物に接触する複数の加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に規定される吸熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に形成されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる断熱層とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に刻まれる溝とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項1】
第1連結部材に連結される複数個の第1部品を作業ステージ上に設置する工程と、第2連結部材に連結される複数個の第2部品を第1部品上に重ね合わせる工程と、第1および第2連結部材の熱膨張を阻止しつつ第2部品から加熱する工程とを備えることを特徴とする重ね合わせ部品の加熱方法。
【請求項2】
対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、作業ステージに向かってヒートブロックの表面から隆起する少なくとも1筋の突片と、突片の頂上面に個別に規定されて、個々に対象物に接触する複数の加熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に規定される吸熱面とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に形成されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる断熱層とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
表面で対象物を受け止める作業ステージと、作業ステージに向き合わせられるヒートブロックと、ヒートブロックに規定されて、作業ステージ上の対象物に接触する加熱面と、作業ステージの表面に規定されて、ヒートブロックの加熱面に向き合わせられる受け面と、受け面の周囲で作業ステージの表面に刻まれる溝とを備えることを特徴とする加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−87957(P2007−87957A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258891(P2006−258891)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【分割の表示】特願2002−74638(P2002−74638)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【分割の表示】特願2002−74638(P2002−74638)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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