説明

重合体、有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置

【課題】一重項励起準位及び三重項励起準位が高く、電荷輸送能及び電気化学的安定性に優れ、積層化が可能であり、通電によって分解などが起こりにくく、均質な膜質を提供し得る重合体と、該重合体を含有する有機電界発光素子材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含み、且つ架橋性基を有することを特徴とする重合体。


(一般式(1)中、Ar11〜Ar13は、各々独立に置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Ar14及びAr15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Ar16及びAr17は、各々独立に直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、R11及びR12は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、rは0〜5の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体に関し、特に、有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層として有用な重合体、該重合体を含有する有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子、並びに、該有機電界発光素子を有する表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(即ち、有機電界発光素子)の開発が行われている。有機電界発光素子における有機薄膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。
湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層及びその形成用の塗布液に様々な機能をもった複数の材料を混合することが容易である等の利点がある。しかし、湿式成膜法は積層化が困難である。このため、真空蒸着法により製造した素子に比べて湿式成膜法で製造した素子は駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていない。特に、湿式成膜法では、有機溶剤及び水系溶剤を使用するなどして二層の積層は可能であるが、三層以上の積層化は困難であった。
【0003】
この様な積層化における課題を解決するために、特許文献1及び2には、下記の様なフルオレン環及び架橋性基を有する重合体(Q−1)及び(Q−2)が提案され、これらの架橋性基が反応した場合に得られる網目状重合体が有機溶剤に不溶となることを利用して積層化を行うことが開示されている。
【0004】
【化1】

【0005】
又、特許文献3〜5には、主鎖中にメチレン基を有する、トリアリールアミン含有重合体を、エレクトロクロミック素子、有機電界発光素子、電子写真感光体に用いることが提案されている。とりわけ特許文献4には、重合体(Q−3)を、有機電界発光素子の正孔輸送材料に用いることが開示されている。
【0006】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008−032843号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008−038747号パンフレット
【特許文献3】国際公開第1999−032926号パンフレット
【特許文献4】特開2001−064642号公報
【特許文献5】特開2003−316043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記重合体(Q−1)及び(Q−2)が架橋により網目状重合体となると、その本来剛直な主鎖構造がまがったりねじれたりして、電荷輸送能及び酸化還元安定性が著しく低下する。さらには、重合体の主鎖構造のπ共役系同士が、凝集、J会合することにより、新たな著しく低い一重項励起準位及び三重項励起準位が生成する。著しく低い一重項励起準位及び三重項励起準位は、それぞれ、一重項励起状態及び三重項励起状態を失活させ、蛍光発光素子及び燐光発光素子の発光効率の低下をもたらす。
このため、特許文献1及び2記載の技術により得られる有機電界発光素子の駆動電圧は高く、発光効率は低く、駆動寿命は短いという課題があった。
さらに、特許文献3〜5には主鎖にメチレン基を有するトリアリールアミン含有重合体が例示されているが、塗布後に不溶とするための架橋性基などの記載はなく、特許文献3〜5に記載の技術では、塗布法による積層化は困難であった。
又、前記重合体(Q−3)等の特許文献4に記載された重合体は、繰り返し単位における主鎖中にアルキレン基(4級炭素)を2つ有し、アルキレン基(4級炭素)とアルキレン基(4級炭素)の間に存在するアリーレン基が正孔輸送に関与しにくい。このため、特許文献4記載の技術により得られる有機電界発光素子の駆動電圧は高いという課題があった。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて研究されたもので、一重項励起準位及び三重項励起準位が高く、電荷輸送能及び電気化学的安定性に優れ、積層化が可能であり、通電によって分解などが起こりにくく、均質な膜質を提供し得る重合体と、該重合体を含有する有機電界発光素子材料及び有機電界発光素子用組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、発光効率が高く、低い電圧で駆動可能で、駆動安定性が高い、有機電界発光素子及びそれを有する表示装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、主鎖にアルキレン基(4級炭素含有等)を有し、且つ架橋性基を有する特定構造の重合体が、湿式成膜法により積層化が可能であり、架橋をさせて有機溶剤に不溶とした後も、一重項励起準位及び三重項励起準位が高く、高い正孔輸送能及び電気化学的安定性を有すること、さらには当該重合体を用いて得られた有機電界発光素子が発光効率が高く、低い電圧で駆動可能であるとともに駆動安定性が高いことを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、下記(1)〜(11)に存する。
(1)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含み、且つ架橋性基を有することを特徴とする重合体。
【0012】
【化3】

【0013】
(一般式(1)中、
Ar11〜Ar13は、各々独立に置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
Ar14及びAr15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
Ar16及びAr17は、各々独立に直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
11及びR12は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
rは0〜5の整数を示す。
11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
尚、架橋性基は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位に含まれていてもよい。)
(2)前記架橋性基が、下記架橋性基群Tの中から選ばれる少なくとも1種の基であることを特徴とする前記(1)に記載の重合体。
<架橋性基群T>
【0014】
【化4】

【0015】
(上記式中、
21〜R23は、各々独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
Ar21は置換基を有していてもよい芳香族基を示す。
1、X2及びX3は、各々独立して水素原子又はハロゲン原子を示す。
24は水素原子又はビニル基を示す。
ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよく、該置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。)
(3)重量平均分子量(Mw)が20,000以上であり、分散度(Mw/Mn;Mnは数平均分子量を表す。)が2.5以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の重合体。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の重合体からなることを特徴とする有機電界発光素子材料。
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
(6)基板上に、陽極、陰極、及びこれら両極間に設けられる1つ以上の有機層を含む有機電界発光素子であって、該有機層の少なくとも一層が、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の重合体を架橋した網目状重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
(7)前記網目状重合体を含有する層が、正孔注入層又は正孔輸送層であることを特徴とする前記(6)に記載の有機電界発光素子。
(8)前記網目状重合体を含有する層が、正孔輸送層であることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の有機電界発光素子。
(9)更に発光層を有し、且つ前記正孔注入層、正孔輸送層、及び該発光層の全てが湿式成膜法にて形成される層であることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の有機電界発光素子。
(10)前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする表示装置。
(11)前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重合体は、湿式成膜法により積層化が可能であり、架橋をさせて有機溶剤に不溶とした後も、一重項励起準位及び三重項励起準位が高く、高い正孔輸送能及び電気化学的安定性を有することから有機電界発光素子用材料として有用であり、当該重合体を用いて得られた有機電界発光素子は、発光効率が高く、低い電圧で駆動可能であるとともに駆動安定性が高く、表示装置及び照明装置用としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下
の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意
に変更して実施できる。
【0019】
[1.重合体の構成]
本発明の重合体は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含み、且つ架橋性基を有することを特徴とする。
【0020】
【化5】

【0021】
(一般式(1)中、
Ar11〜Ar13は、各々独立に置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
Ar14及びAr15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
Ar16及びAr17は、各々独立に直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
11及びR12は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
rは0〜5の整数を示す。
11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
尚、架橋性基は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位に含まれていてもよい。)
【0022】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位にはアルキレン基(好ましくは4級炭素含有アルキレン基)が1つのみ存在する。この様に、主鎖に剛直ではないアルキレン基(好ましくは4級炭素含有アルキレン基)が含まれることにより、重合体を架橋させて有機溶剤に不溶とした後も、高い電荷輸送能及び酸化還元安定性が維持できる。又、主鎖にπ共役系の広がりを抑えるアルキレン基(好ましくは4級炭素含有アルキレン基)が含まれることにより、重合体を架橋させて有機溶剤に不溶とした後も、一重項励起準位及び三重項励起準位が高く維持できる。このため、本発明の重合体を架橋した網目状重合体により層を形成した場合、この層は低い電圧でも電流を流し、かつ、励起子を失活させにくい。
一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体において、アルキレン基(好ましくは4級炭素含有アルキレン基)とアルキレン基(好ましくは4級炭素含有アルキレン基)の間には必ず窒素原子が存在する。このため、Ar11〜Ar17のいずれもが正孔輸送に関与し得る。その結果、低い電圧にて有機電界発光素子を駆動することができると考えられる。
【0023】
一般式(1)において、Ar11〜Ar13は、各々独立に置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Ar14及びAr15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Ar16及びAr17は、各々独立に直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示す。
ここで「芳香族基」とは、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の総称である。
Ar11〜Ar17を構成する置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基、及びこれらの環が2〜4個結合した基等が挙げられる。
Ar11〜Ar17を構成する置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族複素環基としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基、及びこれらの環が2〜4個結合した基等が挙げられる。
また、Ar11〜Ar17には、上記の芳香族炭化水素基と芳香族複素環基が2〜4個結合した基も挙げられる。
中でも、溶解性及び耐熱性の点から、Ar11〜Ar17は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基、及びこれらの環が2〜4個結合した基が好ましい。
更に、Ar11〜Ar17における芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、後述する置換基群Zから選ばれる基等が挙げられる。
尚、Ar11〜Ar17は、置換基を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。2個以上有する場合、1種類を有していてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で有していてもよい。
【0024】
11及びR12は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示す。
11及びR12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキル基等が挙げられる。
11及びR12のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基等が挙げられる。
11及びR12の芳香族基としては、前記Ar14〜Ar15を構成する芳香族基と同じ基等が挙げられる。
11及びR12は、4級炭素を有する点から、上記の基のうち、水素原子以外の基が好ましく、中でも、溶解性の点から、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
尚、R11〜R12が更に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記置換基群Zから選ばれる基等が挙げられる。
【0025】
(置換基群Z)
例えばメチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキル基;
例えばビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えばエチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えばフェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24であるアリールオキシ基;
例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えばジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えばフェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えばアセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2であり、通常24以下、好ましくは12であるアシル基;
例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えばトリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えばメチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基;
例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基;
例えばトリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えばフェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素環基;
例えばチエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
【0026】
これら置換基の中でも、溶解性の点から、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
【0027】
又、上記各置換基が更に置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基等が挙げられる。
【0028】
Ar11〜Ar17の置換基の式量としては、更に置換した置換基を含めて、500以下が好ましく、250以下がより好ましい。置換基の式量が大きすぎると電荷輸送能が低下する可能性がある。
尚、Ar11〜Ar17の式量は、通常65以上、好ましくは75以上であり、通常500以下、好ましくは300以下、より好ましくは200以下である。Ar11〜Ar17の式量が大きすぎると架橋前の溶解性が著しく低下する可能性がある。
【0029】
一般式(1)においてrは−Ar13−N(Ar15)−の繰り返し数を示す。rは、具体的には、0以上であり、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下の整数を示す。rが大きすぎると、架橋反応前の溶解性が低下する可能性がある。又、rを1以上にすることにより電気的耐久性を確保できる。
Ar11〜Ar13、並びにAr16及びAr17は置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族基を2以上結合させた基であっても良い。このような基としては、ビフェニレン基、ターフェニレン基などが挙げられ、架橋反応前の溶解性、電荷輸送能、及び電気的耐久性等の点から、4,4'−ビフェニレン基が好ましい。
【0030】
本発明の重合体は、架橋性基を有することが必須であり、架橋性基を有することで熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。
架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
【0031】
架橋性基としては、不溶化がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに示す基が挙げられる。本発明に係る架橋性基は、これらに限定されない。
【0032】
[架橋性基群T]
【0033】
【化6】

【0034】
(上記式中、R21〜R23は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。Ar21は置換基を有していてもよい芳香族基を示す。
1、X2及びX3は、各々独立して水素原子又はハロゲン原子を示す。
24は水素原子又はビニル基を示す。
ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよく、該置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。)
21〜R23のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキル基等が挙げられる。
Ar21の芳香族基としては、前記Ar11〜Ar17を構成する芳香族基と同じ基等が挙げられる。
尚、R21〜R23、及びAr21が更に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、前記置換基群Zから選ばれる基等が挙げられる。
【0035】
エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環由来の基などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
又、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、ベンゾシクロブテン環由来の基が特に好ましい。
具体的には、下記式(II)で表される基であることが好ましい。
【0036】
【化7】

【0037】
(式(II)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。又、該置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。)
架橋性基は分子内の1価又は2価の芳香族基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH2−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、1価又は2価の芳香族基に結合することが好ましい。これら2価の基を介する架橋性基、すなわち、架橋性基を含む基の具体例は以下の<架橋性基を含む基群T'>に示す通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<架橋性基を含む基群T'>
【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
(上記式中、mは0〜12の整数を示し、nは1〜12の整数を示す。)
【0042】
これらの架橋性基を含む基の具体例としては、次のものが挙げられる。
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
(架橋性基の割合)
本発明の重合体は、1つのポリマー鎖中に有する架橋性基が、好ましくは平均1以上、より好ましくは平均2以上、又、好ましくは平均200以下、より好ましくは平均100以下である。
尚、架橋性基は、前記一般式(1)で表わされる繰り返し単位中、具体的には、Ar11〜Ar17、R11及びR12のいずれかに含まれていてもよく、また前記一般式(1)以外の重合体部分構造に含まれていてもよく、更にいずれに含まれていてもよい。
又、本発明の重合体が有する架橋性基の数は、分子量1000あたりの数で表すことができる。
本発明の重合体が有する架橋性基の数を、分子量1000あたりの数で表した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0以下、また通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。
この上限値を上回ると、クラックによって平坦な膜が得られなかったり、又、架橋密度が大きくなりすぎたりして、架橋層中に未反応の架橋性基が増えて、得られる素子の寿命に影響を及ぼすおそれがある。一方、この下限値を下回ると、架橋層の不溶化が不十分となり、湿式成膜法で多層積層構造が形成できないおそれがある。
ここで、共役ポリマーの分子量1000あたりの架橋性基の数は、共役ポリマーからその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出する。
例えば、後述の合成例1で合成した目的ポリマー1の場合で説明する。
【0046】
【化12】

【0047】
目的ポリマー1において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均1219.2であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり平均0.1076個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.088個と算出される。
【0048】
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。
重量平均分子量がこの上限値を超えると、溶剤に対する溶解性が低下するため、成膜性が損なわれるおそれがある。また重量平均分子量がこの下限値を下回ると、重合体のガラス転移温度、融点及び気化温度が低下するため、耐熱性が低下する場合がある。
又、通常、この重量平均分子量(Mw)はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量が算出される。
又、本発明の重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
さらに、本発明の重合体における分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。
尚、分散度は値が小さい程よいため、下限値は理想的には1である。該重合体の分散度が、上記範囲内であると、精製が容易で、また溶剤に対する溶解性や電荷輸送能が良好である。
【0049】
一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位の例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
架橋性基を有する繰り返し単位の例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
本発明の重合体のガラス転移温度は、通常50℃以上、80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常300℃以下である。
上記範囲内であると、重合体の耐熱性が優れ、得られる素子の駆動寿命が向上する点で好ましい。
また、本発明の重合体のイオン化ポテンシャルは、通常4.5eV以上、好ましくは4.8eV以上、また、通常6.0eV以下、好ましくは5.7eV以下である。
上記範囲内であると、重合体の電荷注入輸送能が優れ、得られる素子の駆動電圧が低下するため好ましい。
【0059】
[2.製造方法]
本発明の重合体の製造方法は特には制限されず、本発明の重合体が得られる限り任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald−Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
【0060】
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald−Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(1a)で表されるジハロゲン化アリール(XはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を示す。)と式(2a)で表される1級アミノアリール又は2級ジアミノアリールとを反応させることにより、本発明の重合体が合成される。
【0061】
【化20】

【0062】
(上記式中、Xはハロゲン原子を示し、Ar11〜Ar15、R11、R12、及びrは前記一般式(1)におけると同義である。但し、qは1である。)
尚、前記の重合方法において、通常、N−アリール結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
Suzuki反応のよる重合方法の場合、例えば、式(1b)で表されるホウ素誘導体(Rは任意の置換基であり、通常、ヒドロキシル基又は環を形成してもよいアルコキシ基を示す。)と式(2b)で表されるジハロゲン化アリールを反応させることにより、本発明の重合体が合成される。
【0063】
【化21】

【0064】
(式中、Rは任意の置換基を示し、X、Ar11〜Ar17、R11、R12、及びrは前記一般式(1)におけると同義である。但し、qは1である。)
【0065】
尚、前記の重合方法において、通常、ホウ素誘導体とジハロゲン化物との反応工程は、例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、必要に応じて、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。さらにホウ素誘導体との反応工程では、例えば、炭酸カリウム、りん酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基、及び、パラジウム錯体等の遷移金属触媒の存在下で行うことができる。
又、カルボニル化合物やジビニル化合物と、アミノ基のp−位が水素原子であるトリアリールアミンとを、トリフルオロメタンスルホン酸や硫酸などの酸触媒下で重合することによっても、本発明の重合体を合成することができる。
【0066】
<有機電界発光素子材料及び有機電界発光素子用組成物>
本発明の重合体は、有機電界発光素子用材料として用いることが好ましい。
又、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体と少なくとも溶剤とを含有する。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、陽極と陰極との間に配置された有機層を有する有機電界発光素子の有機層を湿式成膜法により成膜する際の塗布液として好適に用いられる。
尚、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで含むものであってもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、該有機電界発光素子における正孔注入層又は正孔輸送層を形成するために用いられることが特に好ましい。
尚、ここでは、有機電界発光素子における陽極−発光層間の層が1つの場合には、これを「正孔輸送層」と称し、2つ以上の場合は、陽極に接している層を「正孔注入層」、それ以外の層を総称して「正孔輸送層」と称す。又、陽極−発光層間に設けられた層を総称して「正孔注入・輸送層」と称する場合がある。
有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤は、本発明の重合体を溶解するものが好ましく、通常、本発明の重合体を0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤である。
尚、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下含有する。
【0067】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤の種類は、特に制限されるものではない。本発明の重合体を溶解させるものとして、好ましくは、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族化合物;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等のエステル系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤の濃度は、通常40重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤としては、25℃における蒸気圧が通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下で、通常0.1mmHg以上の溶剤等が挙げられる。このような溶剤を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適なものとすることができ、また、本発明の重合体の性質に適した組成物とすることができる。このような溶剤の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン等の芳香族系溶剤、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
又、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤として、25℃における蒸気圧が通常2mmHg以上、好ましくは3mmHg以上、より好ましくは4mmHg以上であり、好ましくは10mmHg以下である溶剤と、25℃における蒸気圧が通常2mmHg未満、好ましくは1mmHg以下、より好ましくは0.5mmHg以下である溶剤との混合溶剤も挙げられる。このような混合溶剤を使用することにより、湿式成膜法により本発明の重合体、更には後述する電子受容性化合物等の添加剤を含む均質な層を形成することができる。このような混合溶剤の有機電界発光素子用組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
又、上述した溶剤以外の溶剤も用いることができ、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等を用いることも可能である。さらに、本発明の有機電界発光素子用組成物は、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
<有機電界発光素子の構成>
本発明の有機電界発光素子は、基板と、陽極と、1層又は2層以上の有機層と、陰極とをこの順に備える有機電界発光素子であって、該有機層の少なくとも一層が、前記本発明の重合体を架橋した網目状重合体を含む有機電界発光素子である。ここで有機層には、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層が挙げられるが、正孔注入層及び/又は正孔輸送層に、前記本発明の重合体を架橋した網目状重合体を含有するのが好ましい。
【0069】
又、本発明の有機電界発光素子においては、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成されたものであるのが好ましい。
【0070】
以下に、本発明の方法で製造される有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
【0071】
尚、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜される方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。これは、有機電界発光素子に用いられる塗布用組成物特有の液性に合うためである。
【0072】
[基板]
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0073】
[陽極]
陽極は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0074】
陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0075】
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0076】
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
【0077】
[正孔注入層]
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極上に形成される。本発明の有機電界発光素子においては、正孔注入層に前記本発明の重合体を架橋した網目状重合体を用いるのが好ましい。
本発明に係る正孔注入層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0078】
{湿式成膜法による正孔注入層の形成}
湿式成膜により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
【0079】
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。本発明においては、この高分子化合物として本発明の重合体を用いるのが好ましい。また、他の正孔輸送性化合物も用いることができる。
【0080】
他の正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。他の正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
【0081】
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0082】
【化22】

【0083】
(式(I)中、Ar21及びAr22は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。Ar23〜Ar25は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示す。Zbは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を示す。また、Ar21〜Ar25のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0084】
【化23】

【0085】
(上記各式中、Ar26〜Ar36は、各々独立して、置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族複素環基を示す。R15及びR16は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を示す。)
Ar21〜Ar36の1価又は2価の芳香族炭化水素基及び1価又は2価の芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
Ar21〜Ar36の1価又は2価の芳香族炭化水素基及び1価又は2価の芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
15及びR16が任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
【0086】
又、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4−ethylenedioxythiophene(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
【0087】
尚、正孔輸送性化合物は、下記[正孔輸送層]の項に記載の架橋性重合体であってもよい。
【0088】
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
【0089】
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0090】
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4'−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
【0091】
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
【0092】
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0093】
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
【0094】
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0095】
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
塗布工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
塗布工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
【0096】
塗布後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
【0097】
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
【0098】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、通常9.0×10-6Torr(12.0×10-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
【0099】
[正孔輸送層]
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層は、正孔注入層がある場合には正孔注入層の上に、正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
【0100】
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、前記本発明の重合体を架橋した網目状重合体及び前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが好ましい。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0101】
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
【0102】
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ara又はArbが異なっているものであってもよい。
【0103】
【化24】

【0104】
(式(II)中、Ara及びArbは、各々独立して、置換基を有していてもよい、1価又は2価の芳香族炭化水素基又は1価又は2価の芳香族複素環基を示す。)
【0105】
置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい1価又は2価の芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
【0106】
溶解性、耐熱性の点から、Ara及びArbは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基(ビフェニル基)やターフェニレン基(ターフェニレン基))が好ましい。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)及びフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
【0107】
Ara及びArbにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
【0108】
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるAraやArbとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
【0109】
【化25】

【0110】
(式(III−1)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を示す。t及びsは、各々独立に、0〜3の整数を示す。t又はsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRa又はRb同士で環を形成していてもよい。)
【0111】
【化26】

【0112】
(式(III−2)中、Re及びRfは、各々独立に、上記式(III−1)におけるRa、Rb、Rc又はRdと同義である。u及びvは、各々独立に、0〜3の整数を表す。u又はvが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRe及びRfは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRe又はRf同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
【0113】
Xの具体例としては、−O−、−BR−、−NR−、−SiR2−、−PR−、−SR−、−CR2−又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機基を示す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
【0114】
また、ポリアリーレン誘導体としては、前記式(III−1)及び/又は前記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0115】
【化27】

【0116】
(式(III−3)中、Arc〜Arjは、各々独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。w及びxは、各々独立に0又は1を示す。)
【0117】
Arc〜Arjの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
【0118】
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、上記正孔注入層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層の形成の場合と同様である。
【0119】
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
【0120】
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
【0121】
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【0122】
正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
【0123】
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
【0124】
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
【0125】
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
【0126】
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0127】
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0128】
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0129】
[発光層]
正孔注入層の上、又は正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
【0130】
{発光層の材料}
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。さらに、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
【0131】
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
【0132】
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(C96NO)3などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0133】
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0134】
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0135】
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0136】
(正孔輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層における(低分子量の正孔輸送性化合物)として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4"−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
なお、発光層において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0137】
発光層における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0138】
(電子輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6'−(2',2"−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4'−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0139】
発光層における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0140】
{発光層の形成}
本発明に係る湿式成膜法により発光層を形成する場合は、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記正孔注入層形成用組成物で説明した溶剤と同様である。
発光層を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下、である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
【0141】
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより、発光層が形成される。具体的には、上記正孔注入層の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
【0142】
[正孔阻止層]
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
【0143】
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。さらに、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0144】
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0145】
[電子輸送層]
発光層と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率をさらに向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0146】
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0147】
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0148】
[電子注入層]
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率良く発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
さらに、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0149】
[陰極]
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
【0150】
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0151】
[その他の層]
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
【0152】
[電子阻止層]
他の任意の層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層又は正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
【0153】
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。さらに、本発明においては、発光層を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0154】
さらに陰極と発光層又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70,pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44,pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
【0155】
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板上に他の構成要素を陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に設けてもよい。
さらには、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0156】
さらには、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0157】
<表示装置>
本発明の表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。
本発明の表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の表示装置を形成することができる。
【0158】
<照明装置>
本発明の照明装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の照明装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例】
【0159】
(合成例1)ポリマー1の合成
中間体1の合成
【0160】
【化28】

【0161】
窒素雰囲気下、4,4'−(1,3−ジメチルブチリデン)ジフェノール(15g,55.48mmol)、トリエチルアミン(22.46g,221.92mmol)、塩化メチレン(150mL)を入れ、0℃で撹拌した。そこへトリフルオロメタンスルホン酸無水物(37.56g,133.16mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応混合物に水と1N塩酸を入れ塩化メチレンで抽出、有機層を水と1N塩酸の混合液で洗浄後、食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン=3/1)にて精製することで中間体1(19.1g,収率64%)を得た。
【0162】
中間体2の合成
【0163】
【化29】

【0164】
窒素雰囲気下、中間体1(19.1g,35.73mmol)、ビスピナコラートジボラン(21.78g,85.76mmol)、酢酸カリウム(17.89g,182.25mmol)の脱水ジメチルスルホキシド(157mL)懸濁液を60℃に加熱後、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(1.46g,1.79mol)を加えた、温度を80℃に上昇させ、4時間攪拌した。室温まで放冷後、反応混合物に水を入れ、析出した結晶を濾取し、塩化メチレンに溶解させ、硫酸マグネシウムと白土を入れ、攪拌後、濾過し、濾液を濃縮、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン=1/1)にて精製し、ヘキサンで懸洗することで中間体2(7.9g,収率45%)を得た。
【0165】
中間体3の合成
【0166】
【化30】

【0167】
窒素雰囲気下、中間体2(13.2g,26.92mmol)、4−ブロモヨードベンゼン(17.67g,62.47mmol)、トルエン(268mL)、エタノール(134mL)溶液に、室温でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.56g,1.35mmol)、2M三りん酸カリウム水溶液(67mL)を加え、8時間半還流させた。室温まで放冷後、反応混合物をトルエンで抽出、有機層を水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン=8/1)にて精製、濃縮後ヘキサンを少量入れて結晶を析出させることでモノマー3(8.3g,収率56%)を得た。
(目的ポリマー1の合成例)
【0168】
【化31】

【0169】
モノマー1(2.677g、7.6596mmol)、モノマー2(0.0847g、0.4338mmol)、モノマー3(2.219g、4.0467mmol)及びtert−ブトキシナトリウム(2.49g、25.9mmol)、トルエン(30mL)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.084g、0.081mmol)のトルエン3mL溶液に、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.131g、0.647mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー1〜3が消失したことを確認し、4,4'−ジブロモベンゼン(1.212g、3.8846mmol)を添加した。30分間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300mL中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させ、濾取、乾燥した。
【0170】
得られた粗ポリマー1をトルエン80mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.254g、1.62mmol)、tert−ブトキシナトリウム(2.49g、25.9mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.084g、0.081mmol)のトルエン3mL溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.131g、0.647mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.37g、8.09mmol)のトルエン(3mL)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(250mL/50mL)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー1を得た。
【0171】
このエンドキャップした粗ポリマー1をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾取した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマー1を得た(2.95g)。
重量平均分子量(Mw)=82000
数平均分子量(Mn)=48800
分散度(Mw/Mn)=1.68
【0172】
<溶解度試験>
合成例1で合成例された目的ポリマー1について、室温(25℃)でのトルエンに対する溶解度試験を行った。その結果、目的ポリマー1は、室温(25℃)で、トルエンに対して10wt%以上溶解した。
【0173】
(合成例2)ポリマー2の合成
【0174】
【化32】

【0175】
アニリン(0.6575g、0.706mmol)、モノマー2(0.0457g、0.234mmol)、モノマー3(2.000g、3.647mmol)及びtert−ブトキシナトリウム(2.24g、23.3mmol)、トルエン(19mL)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.075g、0.0729mmol)のトルエン5mL溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.118g、0.584mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。アニリン及びモノマー2、3が消失したことを確認し、4,4'−ジブロモベンゼン(1.104g、3.538mmol)を添加した。40分間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300mL中に滴下し、ポリマー2を晶出させた。
【0176】
濾取したポリマー2をトルエン70mLに溶解したのち、エタノール300mLに滴下し、目的ポリマー2を得た(2.62g)。
重量平均分子量(Mw)=47900
数平均分子量(Mn)=26600
分散度(Mw/Mn)=1.80
【0177】
<有機電界発光素子の製造方法>
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm成膜したもの(スパッタ成膜品、シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術により2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
まず、下の構造式(H8)に示す重合体(重量平均分子量:70000,数平均分子量:40000)、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4'−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート及び安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を下記条件で陽極2上にスピンコートにより成膜して、膜厚40nmの正孔注入層3を得た。
【0178】
【化33】

【0179】
<正孔注入層形成用塗布液>
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 H8:2.0重量%
A1:0.4重量%
【0180】
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 1時間
【0181】
引き続き、以下の式(H1)に示す重合体(重量平均分子量:82000,数平均分子量:48800、合成例1にて得られた目的ポリマー1)を含有する正孔輸送層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により重合させることにより膜厚15nmの正孔輸送層4を形成した。
【0182】
【化34】

【0183】
<正孔輸送層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 H1:1.0重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 230℃、1時間、窒素中
【0184】
次に、以下の構造式に示す、化合物(C1)、及び(D1)を含有する発光層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚40nmの発光層5を形成した。
【0185】
【化35】

【0186】
<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 (C1):3.20重量%
(D1):0.32重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1200rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、1時間、減圧下(0.1MPa)
【0187】
得られた発光層5の上に、真空蒸着法により正孔阻止層6として下記構造の化合物HB−1を膜厚10nmとなるように、次いで、電子輸送層7として下記構造の化合物ET−1を膜厚30nmとなるように、それぞれ順次積層した。
【0188】
【化36】

【0189】
その後、真空蒸着法により、電子注入層8としてフッ化リチウム(LiF)を膜厚0.5nmとなるように、陰極9としてアルミニウムを膜厚80nmとなるように、それぞれ陽極2であるITOストライプと直交する形状の2mm幅のストライプ状に積層した。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子からは、ELピーク波長465nmの青色発光が得られることを確認した。本実施例と後述の比較例1で得られた有機電界発光素子の特性を表1に示す。
【0190】
(比較例1)
実施例1において正孔輸送層形成用組成物に重合体(H1)のかわりに比較ポリマー(H7)(合成例2にて得られた目的ポリマー2)を用いた他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0191】
【化37】

【0192】
この素子からは、ELピーク波長465nmの青色発光が得られることを確認した。得られた素子の発光特性を表1に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
表1から明らかな通り、本発明における化合物を用いて作製した有機電界発光素子は低電圧であることが分かる。
【0195】
(実施例2)
発光層5を下記の様に形成した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
以下の構造式に示す、化合物(C2)、化合物(C3)、及び(D2)を含有する発光層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚60nmの発光層5を形成した。
【0196】
【化38】

【0197】
<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 (C2):3.75重量%
(C3):1.25重量%
(D2):0.50重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、10分間
この素子からは、ELピーク波長521nmの緑色発光が得られることを確認した。本実施例と後述の比較例2で得られた有機電界発光素子の特性を表2に示す。
【0198】
(比較例2)
実施例2において正孔輸送層形成用組成物に重合体(H1)のかわりに比較ポリマー(H7)を用いた他は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
この素子からは、ELピーク波長522nmの緑色発光が得られることを確認した。得られた有機電界発光素子の特性を表2に示す。
【0199】
【表2】

【0200】
表2から明らかな通り、本発明における化合物を用いて作製した有機電界発光素子は低電圧、高効率であることが分かる。
【0201】
(実施例3)
発光層5を下記のように形成した他は、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
以下の構造式に示す、化合物(C4)、化合物(C5)、化合物(D2)及び(D3)を含有する発光層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚60nmの発光層5を形成した。
【0202】
【化39】

【0203】
<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 (C4):3.75重量%
(C5):1.25重量%
(D2):0.25重量%
(D3):0.35重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、10分間
この素子からは、ELピーク波長615nmの赤色発光が得られることを確認した。本実施例と後述の比較例3で得られた有機電界発光素子の特性を表3に示す。
【0204】
(比較例3)
実施例3において正孔輸送層形成用組成物に重合体(H1)のかわりに比較ポリマー(H7)を用いた他は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
この素子からは、ELピーク波長615nmの緑色発光が得られることを確認した。得られた有機電界発光素子の特性を表3に示す。
【0205】
【表3】

【0206】
表3から明らかな通り、本発明における化合物を用いて作製した有機電界発光素子は低電圧、高効率であることが分かる。
【0207】
(各種モノマーの合成)
【0208】
【化40】

【0209】
−5℃で、化合物X1(10.0g)を、塩化メチレン(150ml)及びトリエチルアミン(20.8g)に溶解させ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(37.1g)の50ml塩化メチレン溶液をゆっくり滴下した。反応液を2時間攪拌した後、氷水に注ぎ、塩化メチレンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=3:1)で精製することにより、化合物X2(15.7g)を得た。
【0210】
【化41】

【0211】
窒素気流下、化合物X2(15.7g)、ビスピナコラートジボラン(19.4g)、酢酸カリウム18.8gの脱水ジメチルスルホキシド(150ml)懸濁液を60℃に加熱後、40分間撹拌し、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(1.3g)を加え、80℃で12時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応液にトルエン(100ml)および水(120ml)を加え攪拌後、水層をトルエン(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:4)で精製することにより、化合物X3(5.7g)を得た。
【0212】
【化42】

【0213】
窒素気流下、化合物X3(5.7g)、4−ブロモヨードベンゼン(9.0g)のトルエン:エタノール(70ml:35ml)溶液に、りん酸三カリウム(12.7g)の水溶液(2M)を加え、60℃に加熱し、40分間撹拌した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、(0.44g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、反応液にトルエン(200ml)および水(120ml)を加え攪拌後、水層をトルエン(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグフィー(ヘキサン:塩化メチレン=4:1)で精製することにより、化合物X4(2.8g)を得た。
【0214】
【化43】

【0215】
攪拌しながら1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン(20.0g)に室温で濃塩酸(32g)を滴下し、30分後、水100mlを加え、0℃に冷やした亜硝酸ナトリウム(10.88g)水溶液を滴下し、このまま1時間反応した。この反応液を60℃のヨウ化カリウム(37.4g)溶液に加え、析出した粘状物を塩化メチレンに溶解させた後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=10/1)で精製することにより、化合物X5(13.2g)を得た。
【0216】
【化44】

【0217】
フラスコに窒素気流下で、化合物X6(33.62mmol)、化合物X7(38.297mmol)、トルエン60mL、及びエタノール30mLを入れ室温で攪拌した。これに2M炭酸ナトリウム水溶液30mLを入れ、30分間、室温で窒素バブリングを行った。次いでテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.68mmol)を入れ、窒素下で4時間加熱還流した。放冷後、有機層を濃縮し、メタノールで洗って60℃で減圧乾燥することにより、化合物X8(収率77%)を得た。
【0218】
【化45】

【0219】
窒素気流下で、化合物X8(11.97mmol)をエタノールに75℃で溶解した後、水酸化カリウム(0.479mol)水溶液27mlを滴下し、窒素下で7時間80℃反応した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出を行った。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)により精製した。40℃で減圧乾燥することにより、化合物X9(4.9g、収率96%)を得た。
【0220】
【化46】

【0221】
フラスコに窒素気流下で、化合物X10(25.16mmol)、4−ブロモアニリン(22.87mmol)、トルエン60mL、及びエタノール30mLを入れ室温で攪拌した。これに2M炭酸ナトリウム水溶液30mLを入れ、30分間、室温で窒素バブリングを行った。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.686mmol)を入れ、窒素下で5時間加熱還流した。放冷後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)により精製した。60℃で減圧乾燥することにより、化合物X11(4.3g、収率57%)を得た。
【0222】
【化47】

【0223】
化合物X12(7.97g)のエタノール:テトラヒドロフラン(1:1,50mL)溶液に、10wt%パラジウム炭素(1.60g)を加え、50℃にて90分間加熱撹拌した。この懸濁液にヒドラジン一水和物(13mL)をゆっくりと滴下し、60℃で、3時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、セライトろ過をおこない、酢酸エチルを用いて抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製をおこない、化合物X13を得た(2.11g,29%)。
【0224】
【化48】

【0225】
カルバゾール(16.64g、99.5mmol)、p−n−ヘキシルベンゼンブロマイド(20g、82.9mmol)、及びtert-ブトキシナトリウム(15.9g、165.4mmol)、トルエン(450ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.858g、0.8mmol)のトルエン50ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(1.35g、6.6mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。カルバゾールが消失したことを確認し、放冷した。反応液に水を加え、トルエンで抽出し、有機層をさらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=8:1)で精製することにより、化合物X14(17.8g)を得た。
【0226】
【化49】

【0227】
化合物X14(10.3g、31.45mmol)にジメチルホルムアミド(80ml)を加え、氷浴で冷却した。ここにN−ブロモスクシンイミド(56.2g、265.11mmol)のDMF(20ml)溶液を滴下し、攪拌しながら4時間かけて室温まで昇温した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出を行った。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(展開液:THF/アセトニトリル=9/1)により精製した。40℃で減圧乾燥することにより、化合物X15(8.5g、収率66.5%)を得た。
【0228】
【化50】

【0229】
化合物X15(8.4g、20.67mmol)、4−(4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン‐2‐イル)アニリン(5.43g、24.80mmol)、炭酸ナトリウム(10.95g、103.30mmol)、及びトルエン(90ml)、エタノール(45ml)、水(45ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して100℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(240mg、206μmol)を加え、100℃で5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により精製した。続いて再度カラムクロマトグラフィー(展開液:THF/アセトニトリル=1/9)により精製した。40℃で減圧乾燥することにより、化合物X16(6.74g、収率78.1%)を得た。
【0230】
【化51】

【0231】
1−アミノ−4−ブロモナフタレン(13.7g、61.8mmol)、p−n−ヘキシルフェニルボロン酸(14.0g、67.9mmol)、炭酸ナトリウム(32.75g、309。0mmol)、及びトルエン(220ml)、エタノール(110ml)、水(150ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して100℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.0g、865μmol)を加え、100℃で2時間半攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により精製した。続いてこのうちの一部を、再度カラムクロマトグラフィー(展開液:THF/アセトニトリル=2/8)により精製した。40℃で減圧乾燥することにより、化合物X17(6.3g)を得た。
【0232】
【化52】

【0233】
窒素雰囲気下、化合物X18(5.0g,9.12mmol)、ビスピナコラートジボラン(5.56g,21.9mmol)、酢酸カリウム(4.56g,46.5mmol)の脱水ジメチルスルホキシド(100mL)懸濁液を60℃に加熱後、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(0.372g,0.456mmol)を加え、温度を80℃に上昇させ、14時間攪拌した。室温まで放冷後、反応混合物に水を入れ、析出した結晶を濾取し、トルエンに溶解させ、硫酸マグネシウムと白土を入れ、攪拌後、濾過し、濾液を濃縮、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し化合物X19(4.4g,収率75%)を得た。
【0234】
【化53】

【0235】
窒素雰囲気下、化合物X19(3.40g,5.29mmol)、4−ブロモヨードベンゼン(3.89g,13.8mmol)、トルエン(34mL)、エタノール(17mL)溶液に、室温でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.06g,0.265mmol)、2M三りん酸カリウム水溶液(8.5mL)を加え、8時間半還流させた。室温まで放冷後、反応混合物をトルエンで抽出、有機層を水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製、濃縮後ヘキサンを少量入れて結晶を析出させることで化合物X20(1.9g,収率51%)を得た。
【0236】
(合成例3)ポリマー3の合成
【0237】
【化54】

【0238】
モノマー1(1.427g、4.0835mmol)、モノマー2(0.0512g、0.2620mmol)、化合物X4(1.1g、2.1728mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(1.42g、14.78mmol)、トルエン(60ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.046g、0.0435mmol)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.07g、0.35mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。化合物X4(1.06g)を追添加した。1.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させた。
得られた粗ポリマー3をトルエン100mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.14g)、tert-ブトキシナトリウム(0.7g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.046g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.07g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.37g)のトルエン(3ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(300ml/20ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー3を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー3をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー3を得た(0.97g)。
重量平均分子量(Mw)=85900
数平均分子量(Mn)=54025
分散度(Mw/Mn)=1.59
【0239】
(合成例4)ポリマー4の合成
【0240】
【化55】

【0241】
化合物X16(2.6g、6.2116mmol)、モノマー2(0.0906g、0.4638mmol)、モノマー3(1.83g、3.3377mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(2.18g、22.70mmol)、トルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.07g、0.067mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.108g、0.534mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(1.72g)を追添加した。1.0時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー3を晶出させた。
得られた粗ポリマー4をトルエン120mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.21g)、tert-ブトキシナトリウム(2.18g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.07g)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.108g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.13g)のトルエン(5ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(400ml/30ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー4を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー4をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー4を得た(2.75g)。
重量平均分子量(Mw)=75000
数平均分子量(Mn)=46000
分散度(Mw/Mn)=1.63
【0242】
(合成例5)ポリマー5の合成
【0243】
【化56】

【0244】
化合物X17(3.0g、9.8866mmol)、モノマー2(0.1235g、0.6326mmol)、モノマー3(2.884g、5.2596mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(3.44g、35.77mmol)、トルエン(30ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.11g、0.105mmol)のトルエン8ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.17g、0.84mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(2.88g)を追添加した。1.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー5を晶出させた。
得られた粗ポリマー5をトルエン100mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.33g)、tert-ブトキシナトリウム(3.44g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.11g)のトルエン8ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.17g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.78g)のトルエン(5ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(400ml/30ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー5を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー5をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー5を得た(1.35g)。
重量平均分子量(Mw)=51000
数平均分子量(Mn)=33100
分散度(Mw/Mn)=1.54
【0245】
(合成例6)ポリマー6の合成
【0246】
【化57】

【0247】
化合物X13(1.37g、5.1586mmol)、モノマー2(0.061g、0.3124mmol)、モノマー3(1.5g、2.7355mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(1.8g、18.6mmol)、トルエン(15ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.057g、0.055mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.089g、0.438mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(1.38g)を追添加した。1.0時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール250ml中に滴下し、粗ポリマー6を晶出させた。
得られた粗ポリマー6をトルエン70mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.17g)、tert-ブトキシナトリウム(1.8g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.057g)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.089g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.93g)のトルエン(5ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(300ml/20ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー6を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー6をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー6を得た(1.5g)。
重量平均分子量(Mw)=56000
数平均分子量(Mn)=38800
分散度(Mw/Mn)=1.44
【0248】
(合成例7)ポリマー7の合成
【0249】
【化58】

【0250】
化合物X11(2.0g、6.0702mmol)、モノマー2(0.0787g、0.4031mmol)、モノマー3(1.775g、3.2367mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(2.2g、22.0mmol)、トルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.068g、0.065mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.105g、0.52mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(1.669g)を追添加した。1.0時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール250ml中に滴下し、粗ポリマー7を晶出させた。
得られた粗ポリマー7をトルエン100mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.21g)、tert-ブトキシナトリウム(2.2g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.068g)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.105g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.1g)のトルエン(5ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(300ml/20ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー7を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー7をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー7を得た(2.37g)。
重量平均分子量(Mw)=53600
数平均分子量(Mn)=34800
分散度(Mw/Mn)=1.54
【0251】
(合成例8)ポリマー8の合成
【0252】


【化59】

【0253】
化合物X9(2.3g、5.4035mmol)、モノマー2(0.079g、0.407mmol)、モノマー3(1.593g、2.9053mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(1.9g、19.76mmol)、トルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.061g、0.058mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.094g、0.465mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(1.566g)を追添加した。1.0時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール250ml中に滴下し、粗ポリマー8を晶出させた。
得られた粗ポリマー8をトルエン50mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.18g)、tert-ブトキシナトリウム(1.9g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.061g)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.094g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.98g)のトルエン(5ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(300ml/20ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー8を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー8をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー8を得た(0.9g)。
重量平均分子量(Mw)=37000
数平均分子量(Mn)=27600
分散度(Mw/Mn)=1.34
【0254】
(合成例9)ポリマー9の合成
【0255】
【化60】

【0256】
化合物X5(1.9g、3.8924mmol)、モノマー1(2.58g、7.3915mmol)、モノマー2(0.077g、0.3932mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(2.54g、26.47mmol)、トルエン(15ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.082g、0.078mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.126g、0.624mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。化合物X5(1.9g)を追添加した。1.0時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール250ml中に滴下し、粗ポリマー9を晶出させた。
得られた粗ポリマー9をトルエン40mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.25g)、tert-ブトキシナトリウム(2.54g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.082g)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.126g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.3g)のトルエン(5ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(200ml/10ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー9を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー9をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー9を得た(1.93g)。
重量平均分子量(Mw)=26000
数平均分子量(Mn)=17800
分散度(Mw/Mn)=1.46
【0257】
(合成例10)ポリマー10の合成
【0258】
【化61】

【0259】
モノマー1(0.5526g、1.581mmol)、モノマー2(0.0258g、0.1320mmol)、化合物X20(0.6000g、0.856mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(0.5597g、5.824mmol)、トルエン(6ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.0177g、0.0171mmol)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.0277g、0.137mmol)を加え、65℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。化合物X20(0.5436g)を追添加した。1.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー10を晶出させた。
得られた粗ポリマー10をトルエン80mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.53g)、tert-ブトキシナトリウム(0.62g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.0088g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.014g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.144g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(600ml/60ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー10を得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー10を得た(0.685g)。
重量平均分子量(Mw)=57100
数平均分子量(Mn)=36100
分散度(Mw/Mn)=1.58
【0260】
(合成例11)ポリマー11の合成
【0261】
【化62】

【0262】
モノマー1(2.488g、7.149mmol)、モノマー2(0.0285g、0.146mmol)、モノマー3(2.000g、3.647mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(2.383g、24.8mmol)、トルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.0755g、0.0729mmol)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.1180g、0.584mmol)を加え、65℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(1.96g)を追添加した。1.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール/水(500ml/50ml)溶液中に滴下し、粗ポリマー11を晶出させた。
粗ポリマー11をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。
得られた粗ポリマー1をトルエン100mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.229g)、tert-ブトキシナトリウム(2.24g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.0377g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.059g)を加え、65℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.617g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(300ml/30ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー11を得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー11を得た(0.89g)。
重量平均分子量(Mw)=146000
数平均分子量(Mn)=91800
分散度(Mw/Mn)=1.59
【0263】
(合成例12)ポリマー12の合成
【0264】
【化63】

【0265】
モノマー1(5.980g、16.85mmol)、モノマー2(0.2246g、1.15mmol)、モノマー3(4.935g、9.00mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(5.88g、61.2mmol)、トルエン(50ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.112g、0.108mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.175g、0.864mmol)を加え、65℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。モノマー3(4.639g、8.46mmol)を追添加した。2.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール750ml)溶液中に滴下し、粗ポリマー12を晶出させた。
得られた粗ポリマー12をトルエン140mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.565g)、tert-ブトキシナトリウム(2.94g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.056g)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.088g)を加え、65℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(3.042g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール(750ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー12を得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー12を得た(6.53g)。
重量平均分子量(Mw)=76400
数平均分子量(Mn)=52500
分散度(Mw/Mn)=1.45
【0266】
(合成例13)ポリマー13の合成
【0267】
【化64】

【0268】
モノマー1(1.803g、5.159mmol)、モノマー2(0.0608g、0.312mmol)、モノマー3(1.500g、2.735mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(1.788g、18.6mmol)、トルエン(15ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.057g、0.0547mmol)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.088g、0.438mmol)を加え、65℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。ジヨードターフェニル(1.239g)を添加した。1.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール500ml中に滴下し、粗ポリマー13を晶出させた。
得られた粗ポリマー13をトルエン120mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.080g)、tert-ブトキシナトリウム(1.61g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.028g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.045g)を加え、65℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.462g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール500mlに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー13を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー13をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。粗ポリマーをトルエンに溶解し、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー13を得た(1.55g)。
重量平均分子量(Mw)=74000
数平均分子量(Mn)=48600
分散度(Mw/Mn)=1.52
【0269】
(合成例14)ポリマー14の合成
【0270】
【化65】

【0271】
アニリン(0.9533g、10.23mmol)、モノマー2(0.5208g、2.667mmol)、モノマー3(3.538g、6.452mmol)及びtert-ブトキシナトリウム(3.968g、41.29mmol)、トルエン(35ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.134g、0.129mmol)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.209g、1.032mmol)を加え、65℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応した。ジブロモベンゼン(1.46g)を追添加した。2.0時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール500ml中に滴下し、粗ポリマー14を晶出させた。
得られた粗ポリマー14をトルエン100mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.405g)、tert-ブトキシナトリウム(3.968g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.066g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.104g)を加え、65℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、ジフェニルアミン(1.09g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール500mlに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー14を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー14をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。粗ポリマーをトルエンに溶解し、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のポリマー14を得た(1.56g)。
重量平均分子量(Mw)=78500
数平均分子量(Mn)=54100
分散度(Mw/Mn)=1.45
【産業上の利用可能性】
【0272】
本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0273】
1:基板
2:陽極
3:正孔注入層
4:正孔輸送層
5:発光層
6:正孔阻止層
7:電子輸送層
8:電子注入層
9:陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含み、且つ架橋性基を有することを特徴とする重合体。
【化1】

(一般式(1)中、
Ar11〜Ar13は、各々独立に置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
Ar14及びAr15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
Ar16及びAr17は、各々独立に直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
11及びR12は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
rは0〜5の整数を示す。
11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
尚、架橋性基は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位に含まれていてもよい。)
【請求項2】
前記架橋性基が、下記架橋性基群Tの中から選ばれる少なくとも1種の基であることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
<架橋性基群T>
【化2】

(上記式中、
21〜R23は、各々独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
Ar21は置換基を有していてもよい芳香族基を示す。
1、X2及びX3は、各々独立して水素原子又はハロゲン原子を示す。
24は水素原子又はビニル基を示す。
ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよく、該置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項3】
重量平均分子量(Mw)が20,000以上であり、分散度(Mw/Mn;Mnは数平均分子量を表す。)が2.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体からなることを特徴とする有機電界発光素子材料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
【請求項6】
基板上に、陽極、陰極、及びこれら両極間に設けられる1つ以上の有機層を含む有機電界発光素子であって、該有機層の少なくとも一層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体を架橋した網目状重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項7】
前記網目状重合体を含有する層が、正孔注入層又は正孔輸送層であることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記網目状重合体を含有する層が、正孔輸送層であることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
更に発光層を有し、且つ前記正孔注入層、正孔輸送層、及び該発光層の全てが湿式成膜法にて形成される層であることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−184684(P2011−184684A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21430(P2011−21430)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】