説明

重合体の製造方法、レジスト用重合体、レジスト組成物、および基板の製造方法

【課題】共重合体における構成単位の組成比のばらつきが小さく、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる、重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】2種以上の単量体α〜αを重合して、構成単位α’〜α’からなる重合体(P)を製造する方法であって、予め反応器内に、単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を仕込む工程と、反応器内に単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を滴下する工程を有する重合体の製造方法。第2の組成は、重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率の目標値を表わす設計組成と同じであり、前記第1の組成は、該設計組成と、重合に用いられる各単量体の反応性を加味して予め求められた組成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体の製造方法、該製造方法により得られるレジスト用重合体、該レジスト用重合体を用いたレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶素子等の製造工程において形成されるレジストパターンは、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。具体的には、従来のg線(波長:438nm)、i線(波長:365nm)に代表される紫外線から、より短波長のDUV(Deep Ultra Violet)へと照射光が短波長化してきている。
【0003】
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術およびEUV(波長:13.5nm)リソグラフィー技術が研究されている。さらに、これらの液浸リソグラフィー技術も研究されている。また、これらとは異なるタイプのリソグラフィー技術として、電子線リソグラフィー技術についても精力的に研究されている。
【0004】
該短波長の照射光または電子線を用いてレジストパターンを形成する際に用いられる高解像度のレジスト組成物として、光酸発生剤を含有する「化学増幅型レジスト組成物」が提唱され、現在、該化学増幅型レジスト組成物の改良および開発が進められている。
例えば、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。該アクリル系重合体としては、例えば、エステル部にアダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとエステル部にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が提案されている(特許文献1、2等)。
【0005】
ところで、(メタ)アクリル酸エステルの重合体はラジカル重合法で重合されるのが一般的である。一般に、モノマーが2種以上ある多元系重合体では、各モノマー間の共重合反応性比が異なるため、重合初期と重合後期で生成する重合体の共重合組成比が異なり、得られる重合体は組成分布を持つようになる。このような組成分布を有する重合体はレジスト性能を低下させやすいため、組成分布を制御する検討がなされてきた。
【0006】
例えば、特許文献3には、高い基板密着性を有するレジストを得るために、重合反応中の任意の時点における各共重合成分の共重合割合の標準偏差が8以下であるようにして、組成分布の狭い重合体を製造する旨が記載されている。また、そのために溶液ラジカル重合法または乳化ラジカル重合法において、重合初期では反応溶液中における反応性の低いモノマーの割合を高くしておき、重合の進行にしたがって、反応性の高いモノマーを追加添加する方法が記載されている。
また特許文献4には、高い解像度を有するレジストを得るために、相対的に重合速度が速い単量体と遅い単量体の供給比率を前工程と後工程で変化させ、共重合組成分布の狭い重合体を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−319595号公報
【特許文献2】特開平10−274852号公報
【特許文献3】特開昭57−120931号公報
【特許文献4】特開2001−201856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの製造方法では、共重合組成分布の制御が充分でない場合がある。共重合体における構成単位の組成比にばらつきがあると、溶剤への溶解性が低くなりやすく、レジスト組成物を調製する際に、溶媒に溶解させるのに長時間を要したり、不溶分が発生することで製造工程数が増加したりする等、レジスト組成物の調製に支障を来たす場合がある。また、得られるレジスト組成物の感度が不十分となりやすい。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、共重合体における構成単位の組成比のばらつきが小さく、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる、重合体の製造方法、該製造方法により得られるレジスト用重合体、該レジスト用重合体を用いたレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の重合体の製造方法は、2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。)からなる重合体(P)を製造する方法であって、予め反応器内に、前記単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を仕込む工程と、該反応器内に前記単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を滴下する工程を有し、前記第2の組成は、重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率の目標値を表わす設計組成と同じであり、前記第1の組成は、該設計組成と、重合に用いられる各単量体の反応性を加味して予め求められた組成である。
【0011】
前記重合体(P)における設計組成(単位:モル%)が、α’:α’:…:α’であるとき、第1の組成(単位:モル%)をα:α:…:αで表わし、下記(1)〜(3)の方法で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fとすることが好ましい。
(1)まず単量体組成が設計組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物と溶剤を含有する滴下溶液を、溶剤のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…のときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、…にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(2)前記P:P:…:Pが、設計組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(3)該「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
【0012】
前記(1)で用いた滴下溶液に最初に含まれていた単量体の合計量に対する、上記経過時間tにおいて、反応器内に存在する単量体の合計量の割合W(単位:質量%)を求め、前記第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体の合計量との質量比(第1の溶液:第2の溶液)をW:(100−W)とすることが好ましい。
【0013】
本発明は、本発明の重合体の製造方法により得られるレジスト用重合体を提供する。
本発明は、本発明のレジスト用重合体、および活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するレジスト組成物を提供する。
本発明は、本発明のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の重合体の製造方法によれば、共重合体における構成単位の組成比のばらつきが小さく、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる、重合体が得られる。
【0015】
本発明のレジスト用重合体は、共重合体における構成単位の組成比のばらつきが小さく、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる、重合体が得られる。
本発明のレジスト組成物は、化学増幅型であり解像度に優れるとともに、重合体の溶解性が良好であるため組成物中の不溶分が少なく、また感度に優れる。
本発明の基板の製造方法によれば、欠陥が少なく、解像度に優れたパターンが形成された基板を生産性よく安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例におけるファクターの算出工程に係るグラフである。
【図2】本発明の方法で重合体を製造する実施例に係るグラフである。
【図3】本発明の実施例におけるファクターの算出工程に係るグラフである。
【図4】本発明の方法で重合体を製造する実施例に係るグラフである。
【図5】本発明の実施例におけるファクターの算出工程に係るグラフである。
【図6】本発明の方法で重合体を製造する実施例に係るグラフである。
【図7】比較例に係るグラフである。
【図8】比較例に係るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
【0018】
本発明は、2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’は単量体αから導かれる構成単位を表し、iは2以上n以下の整数を表わし、nは2以上の整数を表す。)からなる重合体(P)を製造する方法である。
【0019】
<重合体(P)>
本発明の重合体(P)は構成単位α’〜α’からなる。nの上限は、本発明による効果が得られやすい点で6以下が好ましい。特に重合体(P)がレジスト用重合体である場合には、5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
例えば、n=3である場合は、重合体(P)は構成単位α’、α’、α’からなる三元系重合体P(α’/α’/α’)であり、n=4の場合は、重合体(P)は構成単位α’、α’、α’、α’からなる四元系重合体P(α’/α’/α’/α’)である。
【0020】
重合体(P)の構成単位は、特に限定されないが、該重合体(P)がレジスト用重合体である場合には、酸脱離性基を有する構成単位を有することが好ましく、この他に、必要に応じてラクトン骨格を有する構成単位、親水性基を有する構成単位等の公知の構成単位を有していてもよい。
【0021】
<構成単位・単量体>
単量体としては、得ようとする重合体(P)の各構成単位α’〜α’にそれぞれ対応する単量体が用いられる。単量体はビニル基を有する化合物が好ましく、ラジカル重合しやすいものが好ましい。特に(メタ)アクリル酸エステルは波長250nm以下の露光光に対する透明性が高い。
以下、重合体(P)がレジスト用重合体である場合に、好適に用いられる構成単位およびそれに対応する単量体について説明する。
【0022】
[酸脱離性基を有する構成単位・単量体]
レジスト用重合体は、酸脱離性基を有することが好ましい。「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。
酸脱離性基を有する構成単位を有する重合体は、レジスト用組成物として用いた場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の割合は、感度および解像度の点から、重合体を構成する全構成単位のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0023】
酸脱離性基を有する構成単位としては、公知の酸脱離性基を有する単量体に由来する構成単位が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体としては、例えば、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
【0024】
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0025】
波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
[ラクトン骨格を有する構成単位・単量体]
波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用される場合には、レジスト用重合体は、さらに、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましい。
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
ラクトン骨格を有する構成単位の割合は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0027】
ラクトン骨格を有する構成単位としては、ラクトン骨格を有する単量体に由来する構成単位が挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0028】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[親水性基を有する構成単位]
レジスト用重合体は、さらに、親水性基を有する構成単位を有していてもよい。「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
親水性基を有する構成単位の割合は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0030】
親水性基を有する構成単位としては、親水性基を有する単量体に由来する構成単位が挙げられる。
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。
【0031】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
<重合方法>
本発明における重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が挙げられる。これらのうち、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する工程を容易に行える点、重合体の分子量を比較的低くできる点から、溶液重合法が好ましい。
本発明では、単量体および重合開始剤の反応器への供給を滴下で行う滴下重合法を用いる。
【0033】
本発明では、予め反応器内に、単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を仕込んでおき、反応器内を所定の重合温度まで加熱した後、反応器内に単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を滴下する。第1の溶液および第2の溶液は溶媒を含有することが好ましい。
重合開始剤は第2の溶液に含有させてもよく、第2の溶液とは別に反応器内に滴下してもよい。
滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、単量体消費に合わせて多段階に変化させてもよい。滴下は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
重合温度は、50〜150℃が好ましい。
【0034】
溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(例えばジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。例えば、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
【0036】
滴下する第2の溶液における単量体の含有比率(第2の組成)は、重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率の目標値(設計組成)と同じである。
例えば、重合体(P)が、単量体x、y、zを共重合させて得られる3元系の重合体であって、設計組成(モル%、以下同様)がx’:y’:z’であるとき、第2の組成(モル%、以下同様。)x:y:zはx’:y’:z’と同じにする。
【0037】
予め反応器に仕込む第1の溶液における単量体の含有比率(第1の組成)は、設計組成と、重合に用いられる各単量体の反応性を加味して予め求められた組成にする。
このとき重合体(P)における設計組成(単位:モル%)が、α’:α’:…:α’であるとき、第1の組成(単位:モル%)をα:α:…:αで表わし、下記(1)〜(3)の方法で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fとすることが好ましい。
(1)まず単量体組成が設計組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物100質量部と溶剤を含有する滴下溶液を、溶剤のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…のときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、…にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(2)前記P:P:…:Pが、設計組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(3)該「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
【0038】
より具体的に説明すると、例えば、重合体(P)が、単量体x、y、zを共重合させて得られる3元系の重合体であって、設計組成がx’:y’:z’であるとき、第1の組成(モル%、以下同様。)x:y:zは、下記の方法で求められるファクターFx、Fy、Fzを用いて、x=x’/Fx、y=y’/Fy、z=z’/Fzにより算出される値とする。
【0039】
[ファクターFx、Fy、Fzの求め方]
以下、重合体(P)が3元系の重合体である場合を例に挙げて説明するが、2元系または4元系以上でも同様にしてファクターを求めることができる。
(1)まず、単量体組成が設計組成x’:y’:z’と同じである単量体混合物と溶剤を含有する滴下溶液を、反応器内に一定の滴下速度vで滴下する。反応器内には、予め溶剤のみを入れておく。
滴下開始からの経過時間がt、t、t…のときに、それぞれ反応器内に残存している単量体x、y、zの組成(モル%)Mx:My:Mzと、tからtまでの間、tからtまでの間…にそれぞれ生成した重合体における構成単位の比率(モル%)Px:Py:Pzを求める。
(2)Px:Py:Pzが、設計組成x’:y’:z’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(3)その「tからtm+1までの間」におけるPx:Py:Pzの値と、経過時間tにおけるMx:My:Mzの値とから、下記式により、ファクターFx、Fy、Fzを求める。
Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mz。
ファクターFx、Fy、Fzは、各単量体の相対的な反応性を反映する値であり、重合に用いられる単量体の組み合わせまたは設計組成が変わると変化する。
【0040】
[第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の求め方]
第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量は特に限定されず、後述の実施例に示されるように、第1の溶液中に第2の溶液を滴下させることにより、設計組成とほぼ同じ所望の重合体が生成される。したがって、例えば第2の溶液を全部滴下させる前に重合反応を中止しても、所望の重合体が得られる。
第1の溶液に含有させる単量体の量は、例えば、第1の溶液中で重合体を生成させて得られる重合体溶液における所望の固形分濃度等に応じて設定することができる。例えば、第1の溶液に含まれる単量体の合計量、および第2の溶液に含まれる単量体の合計量の総和を100質量%とするとき、第1の溶液に含まれる単量体の合計量は60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がより好ましい。下限値は特に限定されず、0質量%超の範囲で上記第1の組成を満たすように設定することが好ましい。
第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体の合計量の総和は、得ようとする重合体(P)の量に応じて設定すればよい。
【0041】
また、特に、上記ファクターを求める工程を用いた下記(4)の方法で、第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体の比を決めることが好ましい。
(4)最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物100質量%のうち、上記経過時間tにおいて、反応器内に存在する単量体の合計質量が占める割合(W質量%)を求める。
第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体の合計量との質量比(第1の溶液:第2の溶液)は、W:(100−W)とするのが好ましい。
【0042】
重合体(P)を製造するときの滴下速度は、上記ファクターを求める工程における滴下速度vと同じであることが好ましい。該滴下速度vは特に限定されず、通常の滴下重合法で用いられる滴下速度と同程度とすることができる。
【0043】
後述の実施例に示されるように、かかる特定の単量体組成(第1の組成)に調製された第1の溶液を予め反応器内に仕込んでおけば、該反応器内に設計組成と同じ単量体組成(第2の組成)に調製された第2の溶液を滴下して反応させたときに、滴下開始直後から、設計組成とほぼ同じ重合体が生成される。
滴下される単量体組成(第2の組成)と、滴下直後に生成される重合体における構成単位の組成(設計組成)が同じであるため、反応器内に残存する単量体組成は常に一定(第1の組成)となる。したがって、かかる反応器内に第2の溶液の滴下を継続して行うと、設計組成通りの重合体(P)が生成し続ける定常状態が得られる。
かかる定常状態が得られるような第1の組成が存在することは、本発明より前には知られておらず、本発明者等によって初めて得られた知見である。
【0044】
こうして生成される重合体は、構成単位の組成が設計組成とほぼ同じでばらつきが少ない。したがって、溶剤への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いた際には高い感度が得られる。
また本発明の重合体の製造方法は再現性が良く、高品質の重合体を安定して製造できる。
本発明の製造方法により得られる重合体は、特に重合体の組成に高い精度が要求されるレジスト用重合体として好適である。
なお、本発明の重合体はレジスト用途以外の用途にも適用可能であり、重合体における構成単位の組成のばらつきが少ないため、溶解性の向上が得られるほか、各種性能の向上が期待できる。
【0045】
<レジスト組成物>
本発明のレジスト組成物は、本発明のレジスト用重合体を溶媒に溶解して調製される。溶媒としては、重合体の製造に用いた溶媒と同様のものが挙げられる。
本発明のレジスト組成物が化学増幅型レジスト組成物である場合は、さらに活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤という。)を含有させる。
【0046】
(光酸発生剤)
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物において公知の光酸発生剤の中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
レジスト組成物における光酸発生剤の含有量は、重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0047】
(含窒素化合物)
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。すなわち、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなる。また半導体素子の量産ライン等では、レジスト膜に光を照射し、次いでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることがあるが、そのような放置(経時)によるレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0048】
含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
レジスト組成物における含窒素化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0049】
(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
【0050】
有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
レジスト組成物における酸化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0051】
(添加剤)
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これら添加剤の量は、特に限定されず、適宜決めればよい。
【0052】
<パターンが形成された基板の製造方法>
本発明の、パターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の基板の被加工面上に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、該レジスト組成物が塗布された基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
【0053】
ついで、レジスト膜に対して、フォトマスクを介して露光を行い潜像を形成する。露光光としては、250nm以下の波長の光が好ましい。例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV光が好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0054】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものが挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして基板上にレジストパターンが形成される。
【0055】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0056】
本発明の製造方法により得られるレジスト用重合体は、構成単位の組成のばらつきが少ないため溶媒への溶解性に優れる。したがって、レジスト組成物を調製する際の溶媒への溶解を容易にかつ良好に行うことができる。
本発明のレジスト組成物は、これを構成するレジスト用重合体における構成単位の組成のばらつきが少ないため、高い感度のレジスト膜を形成できる。またレジスト用重合体の溶解性が良好で、レジスト組成物中の不溶分が少ないため、パターン形成において、該不溶分に起因する欠陥が生じにくい。
したがって本発明の基板の製造方法によれば、本発明のレジスト組成物を用いることによって、基板上に欠陥の少ない高精度の微細なレジストパターンを安定して形成できる。また、高感度および高解像度のレジスト組成物の使用が要求される、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーまたは電子線リソグラフィー、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を使用するリソグラフィーによる、パターン形成にも好適に用いることができる。
なお、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーに用いられるレジスト組成物を製造する場合には、重合体が該露光光の波長において透明であるように、単量体を適宜選択して用いることが好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
【0058】
(重量平均分子量の測定)
重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0059】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0060】
(単量体の定量)
重合溶液中に残存する単量体量は次の方法で求めた。
反応器内の重合反応溶液を0.5g採取し、これをアセトニトリルで希釈し、メスフラスコを用いて全量を50mLとした。この希釈液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、東ソー社製、高速液体クロマトグラフHPLC−8020(製品名)を用いて、該希釈液中の未反応単量体量を、単量体ごとに求めた。
【0061】
この測定において、分離カラムはジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS−2(商品名)を1本使用し、移動相は水/アセトニトリルのグラジエント系、流量0.8mL/min、検出器は東ソー社製、紫外・可視吸光光度計UV−8020(商品名)、検出波長220nm、測定温度40℃、注入量4μLで測定した。なお、分離カラムであるInertsil ODS−2(商品名)は、シリカゲル粒径5μm、カラム内径4.6mm×カラム長さ450mmのものを使用した。また、移動相のグラジエント条件は、A液を水、B液をアセトニトリルとし、下記の通りとした。また、未反応単量体量を定量するために、濃度の異なる3種類の各単量体溶液を標準液として用いた。
【0062】
測定時間0〜3分:A液/B液=90体積%/10体積%。
測定時間3〜24分:A液/B液=90体積%/10体積%から、50体積%/50体積%まで。
測定時間24〜36.5分:A液/B液=50体積%/50体積%から、0体積%/100体積%まで。
測定時間36.5〜44分:A液/B液=0体積%/100体積%。
【0063】
(重合体の溶解性の評価)
重合体の20部とPGMEAの80部とを混合し、25℃に保ちながら撹拌を行い、目視で完全溶解を判断し、完全溶解するまでの時間を計測した。
【0064】
(レジスト組成物の感度の評価)
レジスト組成物を6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間のプリベーク(PAB)を行い、厚さ300nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えながら10mm×10mmの面積の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−806)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像した。各露光量のレジスト膜それぞれについて、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0065】
得られたレジスト膜厚の経時変化のデータを基に、露光量(単位:mJ/cm)の対数と、初期膜厚に対する30秒間現像した時点での残存膜厚の割合率(単位:%、以下残膜率という。)との関係をプロットして、露光量−残膜率曲線作成した。この曲線に基づいて、残膜率0%とするための必要露光量(Eth)の値を求めた。すなわち、露光量−残膜率曲線が、残膜率0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)をEthとして求めた。このEthの値は感度を表し、この値が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0066】
<実施例1>
[ファクターFx、Fy、Fzの算出]
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを67.8部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は205.725g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。
下記式(m−1)の単量体m−1を28.56部、
下記式(m−2)の単量体m−2を32.93部、
下記式(m−3)の単量体m−3を19.82部、
乳酸エチルを122.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名))を2.415部。
滴下溶液における各単量体の仕込み割合(第2の組成、単位:モル%)を表1に示す。本例で製造する重合体の設計組成は、m−1:m−2:m−3=40:40:20(モル%)である。
【0067】
【化1】

【0068】
【表1】

【0069】
上記滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後に、フラスコ内の重合反応溶液を0.5gサンプリングし、単量体m−1〜m−3の定量をそれぞれ行った。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
表2の反応器内残存単量体質量を、単量体分子量を用いて、それぞれモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
また、4時間一定速度で反応器に供給された単量体の質量から、表2で得られた反応器内に残存している単量体の質量を引くことで、供給された単量体のうち重合体へ転化したものの質量を計算した。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表4の結果に基づいて、各サンプリング間隔で生成した重合体の質量(差分データ)を計算した。ここで得られる生成(転化)重合体質量は、滴下からの経過時間(反応時間)がtからtまでの間、tからtまでの間…にそれぞれ生成した重合体の重量に該当する。結果を表5に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
得られた各サンプリング間隔で生成した重合体の重量(差分データ)をそれぞれモル分率に換算して重合体組成比(モル%)とした。この重合体組成比は、重合体における構成単位の組成比を表し、Px:Py:Pzに該当する。結果を表6に示す。
図1は、表6の結果をグラフに表わしたものである。なお、図1の横軸は、反応時間帯の終了側の反応時間を示している。すなわち、図1において、横軸の反応時間が3時間のときのデータは、表6において反応時間帯が2〜3時間におけるデータに該当する(以下、同様)。
【0078】
【表6】

【0079】
表6および図1の結果より、Px:Py:Pz(重合体組成比)が、設計組成である40:40:20に最も近い時間帯「tからtm+1までの間」は、2〜3時間の反応時間帯である。
したがって、反応時間帯が2〜3時間におけるPx:Py:Pzの値(表6)と、経過時間が2時間におけるMx:My:Mzの値(表3)とから、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzにより、ファクターFx、Fy、Fzを求めた。
その結果、Fx=1.27、Fy=0.76、Fz=1.22であった。
なお下記表7は、参考までに他の反応時間帯についても、それぞれファクターを求めた結果である。
【0080】
【表7】

【0081】
設計組成(x’:y’:z’)の40:40:20と、上記で得たファクターFx、Fy、Fzの値を用いて、第1の組成x:y:zを求めた。
=40/1.27=31.3モル%。
=40/0.76=52.4モル%。
=20/1.22=16.3モル%。
【0082】
[第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計81.31部)を100質量%とすると、経過時間2時間において反応器内に存在する単量体の合計質量(表2より14.13部)が占める割合(W)は17.4%となる。
これより、第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体合計量との質量比(第1の溶液:第2の溶液)は、17.4:82.6となる。
【0083】
[重合体の製造]
上記で得た、第1の組成(x:y:z)と、第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の値(質量比)を用いて重合体を製造した。
ファクターFx、Fy、Fzの算出を行った工程において、単量体m−1〜m−3を第1の組成(x:y:z)で、滴下開始前にフラスコ内に仕込んだほかは、該ファクターの算出工程と同様の手順で行った。
滴下開始前のフラスコ内(第1の溶液)に存在する単量体の合計量と、滴下溶液(第2の溶液)含まれる単量体合計量の質量比(第1の溶液:第2の溶液)は、17.4:82.6とした。
【0084】
すなわち、窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを67.8部、単量体m−1を3.87部、単量体m−2を7.46部、単量体m−3を2.80部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は191.605g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。
単量体m−1を23.60部(40モル%)、
単量体m−2を27.21部(40モル%)、
単量体m−3を16.38部(20モル%)、
乳酸エチルを122.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))を2.415部。
各単量体の仕込み割合を表8に示す。本例で製造する重合体の設計組成は、m−1:m−2:m−3=40:40:20(モル%)である。
【0085】
【表8】

【0086】
上記ファクターの算出工程と同様の手順で、各サンプリング間隔で生成した重合体における重合体組成比(モル%)を求めた。結果を表9に示す。
図2は、表9の結果をグラフに表わしたものである。
【0087】
【表9】

【0088】
図1と図2の結果を比べると、滴下前に、フラスコ内に溶媒のみを入れた場合(図1)は滴下開始直後に生成された重合体の組成比は設計組成から大きく外れており、また経過時間(反応時間)によって重合体組成が大きくばらついている。
これに対して、滴下前に、フラスコ内の溶媒に単量体を所定の組成で所定量添加した場合(図2)は、滴下直後から、構成単位の組成が設計組成とほぼ同じである重合体が得られ、組成比のばらつきが改善されて、全体としての組成比が設計組成により近い重合体が得られた。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の組成比は、設計組成との差が小さい。
【0089】
[重合体の精製]
反応時間7時間が経過した後に、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(重合体P1)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、重合体湿粉(160g)を得た。この重合体湿粉のうち10gを減圧下40℃で約40時間乾燥した。得られた重合体P1について、Mw、Mw/Mnを求め、上記の方法で溶解性評価を行った。結果を表23に示す。
【0090】
[レジスト組成物の製造]
上記重合体湿粉の残りを、PGMEAの88000gへ投入し、完全に溶解させた後、孔径0.04μmのナイロン製フィルター(日本ポール社製、P−NYLON N66FILTER0.04M(商品名))へ通液して濾過した。
得られた濾液を減圧下で加熱してメタノールおよび水を留去し、さらにPGMEAを留去し、重合体の濃度が25質量%の重合体P1溶液を得た。留去の際、最高到達真空度は0.7kPa、最高溶液温度は65℃、留去時間は8時間であった。
【0091】
得られた重合体P1溶液の400部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートの2部と、溶媒であるPGMEAとを、重合体濃度が12.5質量%になるように混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物を得た。得られたレジスト組成物について上記の方法で感度を評価した。結果を表23に示す。
【0092】
<実施例2>
[ファクターFx、Fy、Fzの算出]
実施例1において、単量体および溶媒を変更したほかは、実施例1と同様にしてファクターFx、Fy、Fzの算出を行った。滴下溶液の組成は下記の通りである。フラスコ内には、滴下前にPGMEA70.6部を入れた。
下記式(m−4)の単量体m−4を26.83部、
下記式(m−5)の単量体m−5を40.25部、
下記式(m−6)の単量体m−6を17.63部、
PGMEAを127.1部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記V601(商品名))を8.802部。本例で製造する重合体の設計組成、および滴下溶液における単量体組成(第2の組成)は、m−4:m−5:m−6=40:40:20(モル%)である。
【0093】
【化2】

【0094】
表10は、滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後の、フラスコ内に存在している単量体m−4〜m−6の残存量(単位:部)であり、表11は、これをモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した結果である。
また、実施例1と同様にして供給された単量体のうち重合体へ転化したものの質量を計算し、これに基づいて滴下からの経過時間(反応時間)がtからtまでの間、tからtまでの間…にそれぞれ生成した重合体における重合体組成比Px:Py:Pzを算出した。結果を表12および図3に示す。
【0095】
【表10】

【0096】
【表11】

【0097】
【表12】

【0098】
表12および図3の結果より、Px:Py:Pz(重合体組成比)が、設計組成である40:40:20に最も近い時間帯として、1〜2時間の反応時間帯を採用した。
反応時間帯が1〜2時間におけるPx:Py:Pzの値(表12)と、経過時間が1時間におけるMx:My:Mzの値(表11)とから、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzにより、ファクターFx、Fy、Fzを求めた。
その結果、Fx=0.80、Fy=1.10、Fz=1.42であった。
【0099】
設計組成(x’:y’:z’)の40:40:20と、上記のファクターFx、Fy、Fzの値を用いて、第1の組成x:y:zを求めた。
=40/0.80=49.8モル%。
=40/1.10=36.2モル%。
=20/1.42=14.0モル%。
【0100】
[第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計84.71部)を100質量%とすると、経過時間1時間において反応器内に存在する単量体の合計質量(表10より6.40部)が占める割合(W)は7.6%となる。
これより、第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体合計量との質量比(第1の溶液:第2の溶液)は、7.6:92.4とする。
【0101】
[重合体の製造]
上記で得た、第1の組成(x:y:z)と、第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の値(質量比)を用い、実施例1と同様にして重合体を製造した。
フラスコ内には、滴下前にPGMEAを70.6部と下記組成の単量体混合物(合計6.4部)を入れた。
単量体m−4を2.60部(49.8モル%)、
単量体m−5を2.84部(36.2モル%)、
単量体m−6を0.96部(14.0モル%)。
滴下溶液の組成は下記の通りである。
単量体m−4を24.80部(40モル%)、
単量体m−5を37.21部(40モル%)、
単量体m−6を16.30部(20モル%)、
PGMEAを122.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記V601(商品名))を8.802部。
【0102】
ファクターの算出工程と同様の手順で、各サンプリング間隔で生成した重合体における重合体組成比(モル%)を求めた。結果を表13に示す。
図4は、表13の結果をグラフに表わしたものである。
【0103】
【表13】

【0104】
図3と図4の結果を比べると、図3は滴下開始直後に生成された重合体の組成比が設計組成から大きく外れているのに対して、図4では、滴下直後から、構成単位の組成が設計組成とほぼ同じである重合体が得られ、組成比のばらつきが改善されて、全体としての組成比が設計組成により近い重合体が得られた。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の組成比は、設計組成との差が小さい。
【0105】
[重合体の精製]
実施例1の重合体の精製工程において使用した、メタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)と(メタノール/水=90/10容量比)を、それぞれメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)と(メタノール/水=95/5容量比)に変更したほかは、実施例1と同様にして、反応時間7時間が経過したフラスコ内の重合反応溶液から、重合体P2を得た。重合体P2のMw、Mw/Mn、溶解性評価の結果を表23に示す。
[レジスト組成物の製造]
実施例1と同様にして、重合体P2を含有するレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表23に示す。
【0106】
<実施例3>
[ファクターFx、Fy、Fzの算出]
実施例1において、単量体および溶媒を変更したほかは、実施例1と同様にしてファクターFx、Fy、Fzの算出を行った。滴下溶液の組成は下記の通りである。フラスコ内には、滴下前にPGMEA70.3部を入れた。
下記式(m−1)の単量体m−1を34.00部、
下記式(m−7)の単量体m−7を31.44部、
下記式(m−3)の単量体m−3を18.88部、
PGMEAを126.5部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記V601(商品名))を9.108部。本例で製造する重合体の設計組成、および滴下溶液における単量体組成(第2の組成)は、m−1:m−7:m−3=50:30:20(モル%)である。
【0107】
【化3】

【0108】
表14は、滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後の、フラスコ内に存在している単量体m−1、7,3の残存量(単位:部)であり、表15は、これをモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した結果である。
また、実施例1と同様にして供給された単量体のうち重合体へ転化したものの質量を計算し、これに基づいて滴下からの経過時間(反応時間)がtからtまでの間、tからtまでの間…にそれぞれ生成した重合体における重合体組成比Px:Py:Pzを算出した。結果を表16および図5に示す。
【0109】
【表14】

【0110】
【表15】

【0111】
【表16】

【0112】
表16および図5の結果より、Px:Py:Pz(重合体組成比)が、設計組成である50:30:20に最も近い時間帯として、1〜2時間の反応時間帯を採用した。
反応時間帯が1〜2時間におけるPx:Py:Pzの値(表16)と、経過時間が1時間におけるMx:My:Mzの値(表15)とから、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzにより、ファクターFx、Fy、Fzを求めた。
その結果、Fx=1.17、Fy=0.78、Fz=1.08であった。
【0113】
設計組成(x’:y’:z’)の50:30:20と、上記のファクターFx、Fy、Fzの値を用いて、第1の組成x:y:zを求めた。
=50/1.17=42.9モル%。
=30/0.78=38.6モル%。
=20/1.08=18.6モル%。
【0114】
[第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計84.32部)を100質量%とすると、経過時間1時間において反応器内に存在する単量体の合計質量(表14より7.83部)が占める割合(W)は9.3%となる。
これより、第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体合計量との質量比(第1の溶液:第2の溶液)は、9.3:90.7とする。
【0115】
[重合体の製造]
上記で得た、第1の組成(x:y:z)と、第1の溶液および第2の溶液における単量体の含有量の値(質量比)を用い、実施例1と同様にして重合体を製造した。
フラスコ内には、滴下前にPGMEAを70.3部と下記組成の単量体混合物(合計7.83部)を入れた。
単量体m−1を2.62部(42.9モル%)、
単量体m−7を3.63部(38.6モル%)、
単量体m−3を1.58部(18.6モル%)。
滴下溶液の組成は下記の通りである。
単量体m−1を30.84部(50モル%)、
単量体m−7を28.52部(30モル%)、
単量体m−3を17.13部(20モル%)、
PGMEAを126.5部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記V601(商品名))を9.108部。
【0116】
ファクターの算出工程と同様の手順で、各サンプリング間隔で生成した重合体における重合体組成比(モル%)を求めた。結果を表17に示す。
図6は、表17の結果をグラフに表わしたものである。
【0117】
【表17】

【0118】
図5と図6の結果を比べると、図5は滴下開始直後に生成された重合体の組成比が設計組成から大きく外れているのに対して、図6では、滴下直後から、構成単位の組成が設計組成とほぼ同じである重合体が得られ、組成比のばらつきが改善されて、全体としての組成比が設計組成により近い重合体が得られた。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の組成比は、設計組成との差が小さい。
【0119】
[重合体の精製]
実施例2と同様にして、反応時間7時間が経過したフラスコ内の重合反応溶液から、重合体P3を得た。重合体P3のMw、Mw/Mn、溶解性評価の結果を表23に示す。
[レジスト組成物の製造]
実施例1と同様にして、重合体P3を含有するレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表23に示す。
【0120】
<比較例1>
実施例1のファクターFx、Fy、Fzの算出工程において、反応時間7時間で得られたフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例1の重合体の精製工程と同様にして比較重合体1を得た。得られた比較重合体1について、実施例1と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体1を用い、実施例1と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表23に示す。
【0121】
<比較例2>
実施例2のファクターFx、Fy、Fzの算出工程において、反応時間7時間で得られたフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例2の重合体の精製工程と同様にして比較重合体2を得た。得られた比較重合体2について、実施例2と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体2を用い、実施例2と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表23に示す。
【0122】
<比較例3>
実施例3のファクターFx、Fy、Fzの算出工程において、反応時間7時間で得られたフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例3の重合体の精製工程と同様にして比較重合体3を得た。得られた比較重合体3について、実施例3と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体3を用い、実施例3と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表23に示す。
【0123】
<比較例4>
以下の比較例4〜6では、上記ファクターの値を用いることなく、設計組成通りの単量体混合物のうち、一部を反応器に仕込み、残りを滴下溶液として重合体を製造した。したがって、滴下溶液における単量体混合物の組成は設計組成とは異なる。反応器に仕込む単量体混合物において、比較的反応速度が遅い単量体の含有比率は設計組成より多めとし、比較的反応速度が速い単量体の含有比率は設計組成より少なめとした。
【0124】
本例では、単量体として、実施例1と同じ単量体m−1、m−2、m−3を用いた。
まず、窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを105.2部、単量体m−1を1.56部、単量体m−2を18.03部、単量体m−3を1.09部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は173.625g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。
単量体m−1を29.72部(49.4モル%)、
単量体m−2を18.03部(26.0モル%)、
単量体m−3を20.63部(24.7モル%)、
乳酸エチルを102.6部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))を2.645部。
各単量体の仕込み割合を表18に示す。本例で製造する重合体の設計組成は、m−1:m−2:m−3=40:40:20(モル%)である。また、反応器内に仕込んだ単量体と滴下溶液に含有させた単量体の合計における、単量体の比率もm−1:m−2:m−3=40:40:20(モル%)である。
【0125】
【表18】

【0126】
実施例1のファクターの算出工程と同様の手順で、各サンプリング間隔で生成した重合体における重合体組成比(モル%)を求めた。結果を表19に示す。
図7は、表19の結果をグラフに表わしたものである。
【0127】
【表19】

【0128】
本例の図7と前記実施例1の図2の結果を比べると、本例では滴下開始直後から生成された重合体の組成比が設計組成から大きく外れており、また経過時間(反応時間)によって生成される重合体の組成が大きくばらついている。
【0129】
本例において、反応時間7時間が経過した後に得られたフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例1の重合体の精製工程と同様にして比較重合体4を得た。得られた比較重合体4について、実施例1と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体4を用い、実施例1と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表23に示す。
【0130】
<比較例5>
本例では、単量体として、実施例2と同じ単量体m−4、m−5、m−6を用いた。
比較例4において、フラスコに仕込む溶媒および単量体を、PGMEAの95.1部、単量体m−4の13.42部、単量体m−5の2.01部、単量体m−6の0.88部に変更した。また滴下溶液の組成を以下に変更した。それ以外は比較例4と同様にして滴下を行った。
単量体m−4を13.42部(26.0モル%)、
単量体m−5を38.24部(49.4モル%)、
単量体m−6を16.75部(24.7モル%)、
PGMEAを102.6部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))を8.802部。
各単量体の仕込み割合を表20に示す。本例で製造する重合体の設計組成は、m−4:m−5:m−6=40:40:20(モル%)である。また、反応器内に仕込んだ単量体と滴下溶液に含有させた単量体の合計における、単量体の比率もm−4:m−5:m−6=40:40:20(モル%)である。
【0131】
【表20】

【0132】
本例では滴下開始後5分経過した時点でフラスコ内の溶液が白濁し、重合体が析出した。すなわち、均一な重合反応場を維持出来なかった。また析出した重合体が撹拌機に付着し、重合反応を継続できなかった。
撹拌機に付着した重合体についての溶解性評価のみを行った。結果を表23に示す。
【0133】
<比較例6>
本例では、単量体として、実施例3と同じ単量体m−1、m−7、m−3を用いた。
比較例4において、フラスコに仕込む溶媒および単量体を、PGMEAの111.9部、単量体m−1の1.56部、単量体m−7の18.08部、単量体m−3の1.09部に変更した。また滴下溶液の組成を以下に変更した。それ以外は比較例4と同様にして滴下を行った。
単量体m−1を37.54部(58.5モル%)、
単量体m−7を18.08部(18.3モル%)、
単量体m−3を20.63部(23.2モル%)、
PGMEAを114.4部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))を10.474部。
各単量体の仕込み割合を表21に示す。本例で製造する重合体の設計組成は、m−1:m−7:m−3=50:30:20(モル%)である。また、反応器内に仕込んだ単量体と滴下溶液に含有させた単量体の合計における、単量体の比率もm−1:m−7:m−3=50:30:20(モル%)である。
【0134】
【表21】

【0135】
比較例4と同様にして、各サンプリング間隔で生成した重合体における重合体組成比(モル%)を求めた。結果を表22に示す。
図8は、表22の結果をグラフに表わしたものである。
【0136】
【表22】

【0137】
本例の図8と前記実施例3の図6の結果を比べると、本例では滴下開始直後から生成された重合体の組成比が設計組成から大きく外れており、また経過時間(反応時間)によって生成される重合体の組成が大きくばらついている。
【0138】
本例において、反応時間7時間が経過した後に得られたフラスコ内の重合反応溶液を用い、比較例4と同様にして比較重合体6およびこれを用いたレジスト組成物を得、Mw、Mw/Mnを求め、溶解性評価、感度評価を行った。結果を表23に示す。
【0139】
【表23】

【0140】
表23の結果より、実施例1、2、3で得た重合体は、比較例1、2、3で得た重合体とそれぞれ比べて、溶解性が顕著に向上し、レジスト組成物としたときの感度が向上した。
また比較例4〜6では、単量体の反応性を加味して、反応器内に予め単量体混合物を仕込んだものの、上記ファクターは使用しておらず、また滴下溶液における単量体混合物の組成は設計組成と同じではない。かかる比較例4、5、6で得られた重合体は、実施例1、2、3で得た重合体とそれぞれ比べて、溶解性が格段に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。)からなる重合体(P)を製造する方法であって、
予め反応器内に、前記単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を仕込む工程と、該反応器内に前記単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を滴下する工程を有し、
前記第2の組成は、重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率の目標値を表わす設計組成と同じであり、
前記第1の組成は、該設計組成と、重合に用いられる各単量体の反応性を加味して予め求められた組成である、重合体の製造方法。
【請求項2】
前記重合体(P)における設計組成(単位:モル%)が、α’:α’:…:α’であるとき、第1の組成(単位:モル%)をα:α:…:αで表わし、下記(1)〜(3)の方法で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fである、請求項1記載の重合体の製造方法。
(1)まず単量体組成が設計組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物と溶剤を含有する滴下溶液を、溶剤のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…のときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、…にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(2)前記P:P:…:Pが、設計組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(3)該「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
【請求項3】
前記(1)で用いた滴下溶液に最初に含まれていた単量体の合計量に対する、上記経過時間tにおいて、反応器内に存在する単量体の合計量の割合W(単位:質量%)を求め、前記第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体の合計量との質量比(第1の溶液:第2の溶液)をW:(100−W)とする、請求項2記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られるレジスト用重合体。
【請求項5】
請求項4に記載のレジスト用重合体、および活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するレジスト組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254810(P2010−254810A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106618(P2009−106618)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】