説明

重合体組成物の製造方法

【課題】高品質の重合体組成物をより効率的に得ることのできる重合体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】重合体組成物の製造方法において、原料モノマーおよび重合開始剤を第1の完全混合型反応槽(10)の供給口(11a)より供給し、第1の完全混合型反応槽(10)において断熱状態で連続重合に付し、これにより得られる中間組成物を第1の完全混合型反応槽(10)の頂部に位置する抜き出し口(11b)より抜き出す第1の重合工程と、該中間組成物を第2の完全混合型反応槽(20)の供給口(21a)より供給し、第2の完全混合型反応槽(20)において断熱状態で更に連続重合に付し、これにより得られる重合体組成物を第2の完全混合型反応槽(20)の頂部に位置する抜き出し口(21b)より抜き出す第2の重合工程とを実施し、第1の重合工程は125〜170℃にて実施し、第2の重合工程は130〜180℃にて実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物の製造方法に関し、より詳細には、重合体組成物を連続重合により製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸エステル系ポリマーなどの樹脂組成物は、原料モノマーおよび重合開始剤等を連続的に反応槽に供給して重合させる連続重合により製造される。かかる連続重合法としては、溶媒(または分散媒、以下も同様)を用いて連続重合する連続溶液重合法や、溶媒を用いずに連続重合する連続塊状重合法が知られている。
【0003】
一般的に、連続溶液重合法は、溶媒を使用するために生産性が低く、効率的でない。これに対し、連続塊状重合法は、溶媒を使用せずに重合反応が行われることから、重合体組成物を効率的に製造できるという利点がある。しかし、実際には、連続溶液重合法と比べて、連続塊状重合法には、反応混合物の粘度が高いため、反応制御が困難であり、反応系の除熱のために反応槽内面を冷却すると、重合体組成物ひいてはそれより得られる樹脂組成物の品質が低下するなど、種々の問題があった。そこで、完全混合型反応槽を用いて、反応槽内に気相部分のない満液状態とし、外側から熱の出入りのない断熱状態で連続塊状重合を実施する方法が提案されている(特許文献1)。更に、かかる断熱状態を確保するため、反応槽内の温度が反応槽の外壁面の設定温度と同じになるように、原料モノマーの供給量および重合開始剤の供給量を制御することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−126308号公報
【特許文献2】特開2006−104282号公報
【特許文献3】特開平01−172401号公報
【特許文献4】特開平05−331212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、メタクリル酸エステル系ポリマーなどの樹脂組成物の用途が一層拡大し、高品質の重合体組成物(例えば、耐熱性や熱安定性などの物性に優れ、不純物の混入が少ない重合体組成物)をより効率的に製造することに対する要望が高まってきている。しかしながら、従来の重合体組成物の製造方法(特許文献1および2)では、かかる要望に応えるには必ずしも充分でないことが判明した。
【0006】
本発明の目的は、高品質の重合体組成物をより効率的に得ることのできる重合体組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、連続重合を実施するため、少なくとも2つの完全混合型の反応槽を組み合わせて用いることについて検討した。連続溶液重合法では、反応槽を2段とし、前段の反応槽で重合の大部分を行い、後段の反応槽で重合を完結させると共に重合開始剤等を除去する装置(特許文献3)や、前段の反応槽である程度重合させ、後段の反応槽で溶媒を添加して重合する装置(特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの装置を用いた方法では、反応系の除熱を還流冷却(反応槽内の原料モノマーなどを蒸発させて外部へ取り出し、これを冷却凝縮した上で再度反応槽内に戻す)で行っており、これは、反応系の局所的または急激な冷却をもたらし、反応槽の内壁面にゲルを付着および成長させる原因となり、特に、生産性を上げるために溶媒の少ない条件や高い重合率の条件で重合を行うと、反応系内の混合物の粘度が高くなり、反応系の局所的または急激な冷却が起こりやすく、反応槽の内壁面におけるゲルの付着および成長がより顕著となり、得られる重合体組成物にゲル化物が不純物として混入するなどの問題がある。本発明者らは、新規な重合体組成物の製造方法であって、高品質の重合体組成物をより効率的に得ることのできる製造方法を独自に鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] 原料モノマーおよび重合開始剤を第1の完全混合型反応槽の供給口より供給し、第1の完全混合型反応槽において断熱状態で連続重合に付し、これにより得られる中間組成物を第1の完全混合型反応槽の頂部に位置する抜き出し口より抜き出す第1の重合工程と、
該中間組成物を第2の完全混合型反応槽の供給口より供給し、第2の完全混合型反応槽において断熱状態で更に連続重合に付し、これにより得られる重合体組成物を第2の完全混合型反応槽の頂部に位置する抜き出し口より抜き出す第2の重合工程と
を含んで成り、第1の重合工程を125〜170℃にて実施し、第2の重合工程を130〜180℃にて実施することを特徴とする、重合体組成物の製造方法。
[2] 第1の完全混合型反応槽における平均滞留時間に対する第2の完全混合型反応槽における平均滞留時間の比が、9/1〜1/9である、前記[1]に記載の重合体組成物の製造方法。
[3] 第1の重合工程および第2の重合工程における連続重合が連続塊状重合である、前記[1]に記載の重合体組成物の製造方法。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法により得られる重合体組成物から得られる成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な重合体組成物の製造方法であって、高品質の重合体組成物を、具体的には熱安定性に優れた重合体組成物を、より効率的に得ることのできる製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの実施形態における重合体組成物の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重合体組成物の製造方法は、少なくとも2つの完全混合型の反応槽を用いて実施され、各反応槽において連続重合、例えば連続塊状重合および連続溶液重合のいずれかが実施され得る。本発明の重合体組成物の製造方法は、全ての反応槽において連続塊状重合が実施される場合には連続塊状重合を実施する方法として理解され、全ての反応槽において連続溶液重合が実施される場合には連続溶液重合を実施する方法として理解される。しかし、これらに限定されず、本発明の重合体組成物の製造方法は、ある反応槽(例えば、前段の少なくとも1つの反応槽)では連続塊状重合が実施され、ある反応槽(例えば、より後段の少なくとも1つの反応槽)では連続溶液重合が実施されるものであってよい。
【0012】
以下、本発明の1つの実施形態について、図1を参照しながら詳述する。
【0013】
まず、本実施形態の重合体組成物の製造方法を実施するために用いられる装置について説明する。本実施形態の重合体組成物の製造方法は、少なくとも第1の反応槽10および第2の反応槽20を用いて実施される。これら反応槽10および20は、いずれも、完全混合型の反応槽であり、本実施形態においては第1の重合工程および第2の重合工程における連続重合として連続塊状重合を実施するために用いられる。
【0014】
より具体的には、第1の反応槽10は、供給口11aと抜き出し口11bとを有し、好ましくは、反応槽の外壁面の温度を調節するための温度調節手段としてジャケット13と、内容物を撹拌するための撹拌機14とを更に有する。同様に、第2の反応槽20は、供給口21aと抜き出し口21bとを有し、好ましくは、反応槽の外壁面の温度を調節するための温度調節手段として反応槽の外壁面を取り囲むジャケット23と、内容物を撹拌するための撹拌機24とを更に有する。抜き出し口11bおよび21bは、各反応槽の頂部に位置するように設けられる。他方、供給口11aおよび21aは、本実施形態を限定するものではないが、一般的には各反応槽の下方の適切な位置に設けられ得る。これら反応槽10および20は、反応槽内の温度を検知する温度検知手段として温度センサTを各々備え得る。
【0015】
第1の反応槽10および第2の反応槽20の容積は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。第1の反応槽10の容積と、第2の反応槽20の容積とを異ならせることにより、第1の反応槽10と第2の反応槽20とで平均滞留時間を効果的に異ならせることができる。
【0016】
撹拌機14および24は、反応槽内を実質的に完全混合状態とするためのものである。これら撹拌機は、任意の適切な撹拌翼を備えていてよく、例えば、ミグ(MIG)翼、マックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業株式会社製)、パドル翼、ダブルヘリカルリボン翼、フルゾーン翼(登録商標、株式会社神鋼環境ソリューション製)などを備えていてよい。反応槽内での撹拌効果を増大させるためには、反応槽内にバッフルを取り付けることが望ましい。しかし、本実施形態はこれに限定されず、反応槽内を実質的に完全混合状態とし得る限り、撹拌機14および24に代えて任意の適切な構成を有し得る。
【0017】
反応槽10および20は、通常、撹拌効率が高いほど好ましいものの、撹拌操作によって反応槽に余分な熱量を加えないという観点からは、撹拌動力は必要以上に大きくないほうがよい。撹拌動力は特に限定されるものではないが、好ましくは、0.5〜20kW/mであり、より好ましくは、1〜15kW/mである。撹拌動力は、反応系の粘度が高くなるほど(または反応系内の重合体の含有率が高くなるほど)、大きく設定することが好ましい。
【0018】
図示するように、第1の反応槽10の供給口11aは、原料モノマータンク(原料モノマーの供給源)1および重合開始剤タンク(重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)3にそれぞれポンプ5および7を介して、原料供給ライン9を通じて接続されている。本実施形態において、原料モノマーおよび重合開始剤の供給源は、原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3であるが、原料モノマーおよび重合開始剤の供給源の数および原料モノマーおよび重合開始剤の態様(例えば混合物の場合にはその組成)などは、原料モノマーおよび重合開始剤を第1の反応槽10に適切に供給し得る限り、特に限定されない。本実施形態に必須ではないが、第1の反応槽10に別の供給口11cが設けられ、この供給口11cが、例えば図1に点線で示すように、重合開始剤タンク3にポンプ7を介して接続されていてもよい。第1の反応槽10の抜き出し口11bは、第2の反応槽20の供給口21aに接続ライン15を通じて接続される。第2の反応槽20の抜き出し口21bは、抜き出しライン25へと繋がっている。これにより、第1の反応槽10と第2の反応槽20とが直列接続される。第1の反応槽10の抜き出し口11bと第2の反応槽20の供給口21aとの間の接続ライン15上にはポンプが存在しないことが好ましい。
【0019】
本実施形態に必須ではないが、第2の反応槽20は、重合開始剤タンク(新たな重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)17にポンプ19を介して接続されていてよい。本実施形態において、新たな重合開始剤の供給源は、重合開始剤タンク17であるが、新たな重合開始剤の供給源の数および重合開始剤の態様(例えば混合物の場合にはその組成)などは、新たな重合開始剤を第2の反応槽20に適切に供給し得る限り、特に限定されない。重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合、第2の反応槽20の供給口21aが、図1に示すように、重合開始剤タンク17にポンプ19を介して、接続ライン15を通じて接続されていてよく、あるいは、第2の反応槽20に別の供給口21cが設けられ、この供給口21cが、例えば図1に点線で示すように、重合開始剤タンク17にポンプ19を介して接続されていてよい。
【0020】
ポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19は、特に限定されるものではないが、原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3からの流量、ならびに存在する場合には重合開始剤タンク17からの流量を一定量に設定可能なポンプであることが好ましい。具体的には、好ましくは多連式往復動ポンプが挙げられ、より好ましくは2連式無脈動定量ポンプ、3連式無脈動定量ポンプなどの無脈動定量ポンプが挙げられる。これにより、第1の反応槽10への原料モノマーおよび重合開始剤の供給量(または供給流量、以下も同様)を、および場合により第2の反応槽20への重合開始剤(または原料モノマーおよび重合開始剤)の追加の供給量を制御することができる。
【0021】
また、本実施形態に必須ではないが、第1の反応槽10の抜き出し口11bを第2の反応槽20の供給口21aに接続する接続ライン15は、接続ライン15の温度を調節することのできる温度調節手段として、接続ライン15の外壁面を取り囲むジャケット(図示せず)などを備えるのが好ましい。これにより、第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度となるように、接続ライン15の温度(より詳細には、接続ラインの外壁面の温度、ひいては接続ライン内の温度)を調節することができる。本実施形態のように、第1の反応槽10が、第1の反応槽10内の温度を検知する温度検知手段として温度センサTを備える場合、接続ライン15の温度調節手段は、接続ライン15の温度が、この温度センサTによって検知される第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度となるように制御され得る。
【0022】
図1を参照して上述した各部材は適宜、制御装置(図示せず)に接続されて、その動作が制御装置により制御可能であるように全体的に構成されることが好ましい。これにより、ジャケット(温度調節手段)13および23に対して設定される反応槽の外壁面の温度と、温度センサ(温度検知手段)Tによって検知される反応槽内の温度とが、第1の反応槽10および第2の反応槽20のそれぞれについて一致するように、原料モノマーおよび重合開始剤の第1の反応槽10への供給量をポンプ5および7の動作を調整すること、あるいはジャケット13および23に対して設定される反応槽の外壁面の温度を調節することによって制御可能であり、更に、重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合には重合開始剤(または原料モノマーおよび重合開始剤)の第2の反応槽20への追加の供給量をポンプ19の動作を調整することによって制御可能である。また、接続ライン15内の温度が、温度センサ(温度検知手段)Tによって検知される第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度となるように、接続ライン15を覆うジャケット(温度調節手段、図示せず)に対して設定される接続ラインの外壁面の温度を調整することによって制御可能である。接続ライン15内の温度は、接続ライン15内の温度を検知する温度検知手段によって実際に測定することが好ましいが、第1の反応槽10における重合反応条件によっては、供給した重合開始剤が全て消費される等の要因で、抜き出し口11bから抜き出される中間組成物(後述する)の重合反応が接続ライン15内では進行しない、すなわち、接続ライン15内で重合反応熱が発生しない場合があるので、そのような場合には、接続ライン15を覆うジャケットの温度を第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度に設定する、あるいはジャケットの代わりに保温材で接続ライン15を覆うことにより、接続ライン15内の温度を第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度にすることができ、接続ライン15内の温度は接続ライン15を覆うジャケットの温度と実質的に同じ温度と考えても差し支えない。
【0023】
ジャケット13および23は、反応槽10および20のそれぞれについて略全体を覆っており、熱媒供給路(図示せず)から蒸気、熱水、有機熱媒体などの熱媒を導入することにより、反応槽10および20を、適宜加熱または保温する。ジャケット13および23の温度は、供給される熱媒の温度または圧力によって、適宜調節することができる。ジャケット13および23内に導入された熱媒は、熱媒排出路(図示せず)から除去される。また、ジャケット13および23の温度や圧力は、熱媒排出路上に設けられた温度センサ(図示せず)などのセンサによって検知される。温度センサなどのセンサの配置箇所については、特に限定されるものではなく、例えば、熱媒供給路上や、ジャケット13および23内であってもよい。なお、接続ライン15にジャケットを備える場合、接続ライン15のジャケットは、これらジャケット13および23と同様の構成を有するものであってよい。
【0024】
反応槽10および20内での重合反応は、生成する重合体(ポリマー)の品質を一定にするという観点から、反応槽10および20内でそれぞれ重合温度を略一定にして実行することが求められる。それゆえ、上記温度調節手段(ジャケット13および23)は、反応槽10および20のそれぞれの内温を略一定に保つことができるように、予め設定された一定温度に制御される。
上記温度調節手段(ジャケット13および23)の設定温度は、後述する供給流量制御手段に伝えられ、モノマー供給手段(ポンプ5)や開始剤供給手段(ポンプ7および存在する場合にはポンプ19)による供給流量の制御の要否を判断するためのデータとなる。また、上記温度調節手段(ジャケット13および23)の設定温度は、上記熱媒の温度または圧力を制御することにより、調節可能である。
【0025】
供給流量制御手段としては、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備える制御部(図示せず)が挙げられる。
制御部のROMは、ポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19などを制御するプログラムを格納するための装置であって、制御部のRAMは、上記プログラムを実行するために、温度センサTで検知された反応槽10および20内の温度データや、ジャケット13および23の設定温度のデータ、および存在する場合には接続ライン15のジャケットの設定温度のデータを一時的に格納する装置である。
【0026】
制御部のCPUは、上記RAMに格納された、反応槽10および20内の温度データや、ジャケット13および23の設定温度のデータに基づいて、上記ROMに格納されたプログラムを実行して、反応槽10および20内への原料モノマーおよび/または重合開始剤の供給流量を、モノマー供給手段(ポンプ5)および/または開始剤供給手段(ポンプ7および存在する場合にはポンプ19)によって制御させる。また、接続ライン15に温度調節手段としてジャケットを備える場合には、制御部のCPUは、上記RAMに格納された、反応槽10および20内の温度データや、接続ライン15のジャケット(図示せず)の設定温度のデータに基づいて、上記ROMに格納されたプログラム(上記プログラムの一部であっても、上記プログラムと別のプログラムであってもよい)を実行して、接続ライン15のジャケットの設定温度を調節し得る。
【0027】
供給流量制御手段(制御部)による制御の一例を、以下に示す。
温度センサTで検知された反応槽10内の温度が、温度調節手段であるジャケット13の設定温度を超えるときには、上記CPUによって上記ROM内のプログラムを実行することにより、例えば、反応槽10内への重合開始剤の供給流量を減少させるように、ポンプ7を制御する。重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合に、ポンプ19により反応槽20に重合開始剤を供給して重合を実施中、温度センサTで検知された反応槽20内の温度が、温度調節手段であるジャケット23の設定温度を超えるときには、上記CPUによって上記ROM内のプログラムを実行することにより、例えば、反応槽20内への重合開始剤の供給流量を減少させるように、ポンプ19を制御する。かかる制御を実行することにより、反応槽10および/または20内で発生する重合熱を減少させることができ、その結果、反応槽10および/または20内の温度を低下させることができる。
【0028】
一方、反応槽10の温度がジャケット13の設定温度を下回るときには、上記CPUによって上記ROM内のプログラムを実行することにより、例えば、反応槽10内への重合開始剤の供給流量を増加させるように、ポンプ7を制御する。重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合に、ポンプ19により反応槽20に重合開始剤を供給して重合を実施中、反応槽20の温度がジャケット23の設定温度を下回るときには、上記CPUによって上記ROM内のプログラムを実行することにより、例えば、反応槽20内への重合開始剤の供給流量を増加させるように、ポンプ19を制御する。かかる制御を実行することにより、反応槽10および/または20内で発生する重合熱を増加させることができ、その結果、反応槽10および/または20内の温度を上昇させることができる。
【0029】
また、例えば、反応槽10および20での重合反応において、ポンプ7および存在する場合にはポンプ19を制御した結果、反応槽10および20内への総供給流量が著しく減少する場合には、ポンプ7および存在する場合にはポンプ19を制御して重合開始剤の供給流量を減少させることだけでなく、同時に、ポンプ5を制御して原料モノマーの供給流量を増大させることが好ましい。
【0030】
更に、他の制御例として、以下に示す制御が挙げられる。すなわち、温度センサTで検知された反応槽10内の温度が、温度調節手段であるジャケット13の設定温度を超えるときに、ポンプ5を制御して原料モノマーの供給流量を増大させることにより、反応槽10内への重合開始剤の相対的な供給流量を減少させる。このような制御によっても、反応槽10内の温度を低下させることができる。
【0031】
原料モノマーの供給流量と、重合開始剤の供給流量との比は、生成する重合体の種類、使用する重合開始剤の種類などに応じて、適宜設定すればよい。
また、原料モノマーの供給流量や、重合開始剤の供給流量を増大または減少させる程度についても、生成する重合体(ポリマー)の種類、使用する重合開始剤の種類などに応じて、適宜設定されるものである。但し、開始剤供給手段によって反応槽10および20内に供給されるものが、重合開始剤単独ではなく、重合開始剤を含む原料モノマーである場合には、重合開始剤の供給流量は、重合開始剤を含む原料モノマー中での重合開始剤の含有割合を考慮して制御する必要がある。
【0032】
更に、別の制御例として、接続ライン15に温度調節手段としてジャケットを備える場合には、以下に示す制御が挙げられる。すなわち、温度センサTで検知された反応槽10内の温度が、接続ライン15内の温度(便宜的には接続ライン15のジャケットの設定温度)と異なるとき、例えば±5℃の範囲を超えて異なるときに、接続ライン15内の温度(便宜的には接続ライン15のジャケットの設定温度)が、反応槽10の温度と実質的に同じ温度となるように、接続ライン15のジャケットの設定温度を調節する。
【0033】
また、本実施形態に必須ではないが、抜き出しライン25の下流には、予熱器31および脱揮押出機33が配置され得る。予熱器31および脱揮押出機33の間には、圧力調整弁(図示せず)が設けられ得る。脱揮後の押出物は、排出ライン35より排出される。
【0034】
予熱器31には、粘性流体を加熱し得る限り、任意の適切な加熱器を用い得る。脱揮押出機33には、スクリュー式の単軸または多軸の脱揮押出機を用い得る。
【0035】
更に、脱揮押出機33にて分離される揮発性成分(主に未反応の原料モノマーを含んで成る)から分離回収した原料モノマーを貯蔵する回収タンク37が存在してもよい。
【0036】
次に、かかる装置を用いて実施される重合体組成物の製造方法について説明する。本実施形態では、一例として、メタクリル酸エステル系モノマーを連続重合する場合、換言すれば、メタクリル酸エステル系ポリマーを製造する場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
・準備
まず、原料モノマーおよび重合開始剤などを準備する。
【0038】
原料モノマーとして、本実施形態では、メタクリル酸エステル系モノマーを用いる。
メタクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、
・メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)単独、または
・メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)80重量%以上と、これと共重合可能な他のビニル単量体20重量%以下との混合物
が挙げられる。
メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどが挙げられ、なかでも、メタクリル酸メチルであることが好ましい。上記例示のメタクリル酸アルキルは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
共重合可能なビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体や、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体が挙げられる。具体的には、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル類(但し、上記メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)を除く);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートなどのグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなどの不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0039】
重合開始剤として、本実施形態では、例えばラジカル開始剤を用いる。
ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリリルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s−ブチルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
重合開始剤は、生成する重合体(ポリマー)や使用する原料モノマーの種類に応じて選定される。例えば、本発明を特に限定するものではないが、ラジカル重合開始剤は、重合温度での半減期が1分以内であるものが好ましい。重合温度での半減期が1分以内であれば、反応速度が遅くなり過ぎず、連続重合装置での重合反応に適する。
【0041】
重合開始剤(ラジカル開始剤)の供給量は、特に限定されるものではないが、通常、原料モノマー(最終的に反応槽10に供給される原料モノマー)に対して0.001〜1重量%である。重合開始剤タンク3およびポンプ7に加えて、重合開始剤タンク17およびポンプ19が存在する場合には、重合開始剤を、第1の反応槽10と第2の反応槽20とに分けて供給することができる。重合開始剤タンク17から原料モノマーと重合開始剤との混合物をポンプ19により第2の反応槽20に供給する場合、反応槽10および反応槽20に供給される重合開始剤の合計供給量が、最終的に反応槽10に供給される原料モノマーと反応槽20に新たに供給される原料モノマーとの合計量に対して上記範囲となるようにすればよい。
【0042】
上記原料モノマーおよび重合開始剤に加えて任意の適切な他の成分、例えば連鎖移動剤や、離型剤、ブタジエンおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)などのようなゴム状重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤を用いてよい。連鎖移動剤は、生成する重合体の分子量を調整するために用いられる。離型剤は、重合体組成物から得られる樹脂組成物の成形性を向上させるために用いられる。熱安定剤は、生成する重合体の熱分解を抑制するために用いられる。紫外線吸収剤は、生成する重合体の紫外線による劣化を抑制するために用いられる。
【0043】
連鎖移動剤としては、単官能および多官能のいずれの連鎖移動剤であってもよい。具体的には、例えば、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン;エチレンチオグリコールなどの炭素数18以下のメルカプタン類;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類;水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、β−テルピネン、テルピノーレン、1,4−シクロヘキサジエン、硫化水素などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
連鎖移動剤の供給量は、使用する連鎖移動剤の種類などによって相違することから、特に限定されるものではないが、例えば、メルカプタン類を使用する場合には、原料モノマー(最終的に反応槽10に供給される原料モノマー)に対して0.01〜3重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましい。
【0045】
離型剤としては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。なお、離型剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0046】
高級脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸プロピル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチルなどの飽和脂肪酸アルキル;オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸ブチル、リノール酸オクチルなどの不飽和脂肪酸アルキル;ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリドなどの飽和脂肪酸グリセリド;オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノール酸トリグリセリドなどの不飽和脂肪酸グリセリドが挙げられる。これらのなかでも、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリドなどが好ましい。
【0047】
高級脂肪族アルコールとしては、具体的には、例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール;オレイルアルコール、リノリルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。これらのなかでも、ステアリルアルコールが好ましい。
【0048】
高級脂肪酸としては、具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸などの飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0049】
高級脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、リノール酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−オレイルステアロアミドなどのアミド類が挙げられる。これらのなかでも、ステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0050】
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、上述した高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが挙げられる。
【0051】
離型剤の使用量は、得られる重合体組成物に含まれる重合体(ポリマー)100重量部に対して、0.01〜1.0重量部となるように調整することが好ましく、0.01〜0.50重量部となるように調整することがより好ましい。
【0052】
熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、リン系熱安定剤や有機ジスルフィド化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機ジスルフィド化合物が好ましい。なお、熱安定剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0053】
リン系熱安定剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0054】
有機ジスルフィド化合物としては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどが挙げられる。これらのなかでも、ジ-tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
【0055】
熱安定剤の使用量は、得られる重合体組成物に含まれる重合体(ポリマー)に対して、1〜2000重量ppmであることが好ましい。本発明の重合体組成物から成形体を得るために重合体組成物(より詳細には、脱揮後の樹脂組成物)を成形する際、成形効率を高める目的で成形温度を高めに設定することがあり、そのような場合に熱安定剤を配合するとより効果的である。
【0056】
紫外線吸収剤の種類としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤が好ましい。
【0057】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0058】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0059】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0060】
マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、通常、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が用いられ、例えば、2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル等が挙げられる。
【0061】
オキサルアニリド系紫外線吸収剤としては、通常、2−アルコキシ−2’−アルキルオキサルアニリド類が用いられ、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキサルアニリド等が挙げられる。
【0062】
紫外線吸収剤の使用量は、得られる重合体組成物に含まれる重合体(ポリマー)に対して、5〜1000重量ppmであることが好ましい。
【0063】
原料モノマータンク1にて、上述のような原料モノマー(1種または2種以上の混合物)を(場合により連鎖移動剤などの他の成分と共に)適宜調合する。また、重合開始剤タンク3にて、上述のような重合開始剤を、必要に応じて原料モノマーと(場合により連鎖移動剤などの他の成分と共に)適宜調合する。重合開始剤タンク3には、重合開始剤を単独で貯留してもよく、原料モノマーと重合開始剤との混合物(場合により連鎖移動剤などの他の成分を更に含み得る)の形態で貯留してもよい。重合開始剤タンク17を用いる場合、重合開始剤タンク17にて、上述のような重合開始剤を、必要に応じて原料モノマーと(場合により連鎖移動剤などの他の成分と共に)適宜調合する。重合開始剤タンク17には、重合開始剤を単独で貯留してもよく、原料モノマーと重合開始剤との混合物(場合により連鎖移動剤などの他の成分を更に含み得る)の形態で貯留してもよい。但し、重合開始剤タンク17にポンプ19を介して供給口21cが接続される場合には、重合開始剤を単独で貯留すると、重合開始剤が単独で反応槽20に供給されるため反応槽20において局所的に重合反応が進行するおそれがある。これに対し、原料モノマーと重合開始剤との混合物の形態で貯留すると、重合開始剤が原料モノマーの一部と予め混合されているので、かかるおそれが解消され得る。
【0064】
・第1の重合工程
原料モノマーおよび重合開始剤の供給源である原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3から、原料モノマーおよび重合開始剤を第1の反応槽10に供給口11aより供給する。具体的には、原料モノマータンク1から原料モノマーをポンプ5により、および、重合開始剤タンク3から重合開始剤(好ましくは原料モノマーと重合開始剤との混合物、本明細書において単に重合開始剤とも言う)をポンプ7により、原料供給ライン9を通じて一緒にして、第1の反応槽10に供給口11aより供給する。また、重合開始剤タンク3から重合開始剤をポンプ7により、図1に点線で示すように、第1の反応槽10に供給口11cより供給してもよい。
【0065】
第1の反応槽10への重合開始剤の供給において、原料モノマーと重合開始剤との混合物を重合開始剤タンク3に調合して供給する場合、原料モノマータンク1からの原料モノマーの供給流量A(kg/h)と、重合開始剤タンク3からの原料モノマーと重合開始剤との混合物(重合開始剤の含有割合が0.002〜10重量%であるもの。)の供給流量B(kg/h)との比A:Bは、80:20〜98:2の範囲となるように調整することが好ましい。
【0066】
第1の反応槽10へと供給される原料モノマーおよび重合開始剤の温度は、特に限定されるものではないが、反応槽内の熱バランスを崩して、重合温度を変動させる要因となるものであることから、適宜、加熱/冷却器(図示せず)によって反応槽10に供給される前に温度調節することが好ましい。
【0067】
以上のようにして第1の反応槽10に供給された原料モノマーおよび重合開始剤は、第1の反応槽10にて断熱状態(実質的に反応槽の外部からの熱の出入りがない状態)で連続重合に、本実施形態においては連続塊状重合(換言すれば、溶媒なしでの重合)に付される。この第1の重合工程は、重合反応を途中まで進行させるものであればよく、第1の反応槽10の抜き出し口11bより中間組成物が抜き出される。
【0068】
第1の重合工程において、連続重合は、反応槽が反応混合物で満たされて実質的に気相が存在しない状態(以下、「満液状態」と言う)で実施され得る。このことは、連続塊状重合に特に適する。この満液状態により、反応槽の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この満液状態により、反応槽の容積全てを反応空間に有効利用でき、よって、高い生産効率を得ることができる。
【0069】
満液状態は、第1の反応槽10の抜き出し口11bが反応槽頂部に位置しているため、第1の反応槽10への供給および抜き出しを連続的に行うだけで簡便に実現できる。
【0070】
また第1の重合工程において、連続重合は、断熱状態で実施される。このことは、連続塊状重合に特に適する。この断熱状態により、反応槽の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この断熱状態により、重合反応を安定化させることができ、暴走反応を抑制するための自己制御性をもたらすことができる。
【0071】
断熱状態は、第1の反応槽10の内部の温度と、その外壁面との温度をほぼ等しくすることによって実現できる。具体的には、上述の制御装置(図示せず)を用いて、ジャケット(温度調節手段)13に対して設定される第1の反応槽10の外壁面の温度と、温度センサ(温度検知手段)Tによって検知される第1の反応槽10内の温度とが一致するように、原料モノマーおよび重合開始剤の第1の反応槽10への供給量をポンプ5および7の動作を調整することによって実現できる。なお、反応槽の外壁面の温度を、反応槽内の温度に比べて高く設定しすぎると、反応槽内に余分な熱が加わることから、好ましくない。反応槽内と反応槽外壁面との温度差は小さいほど好ましく、具体的には±5℃程度の幅で調整することが好ましい。
【0072】
第1の反応槽10内で発生する重合熱や撹拌熱は、通常、第1の反応槽10から中間組成物を抜き出す際に持ち去られる。中間組成物が持ち去る熱量は、中間組成物の流量、比熱、重合反応の温度によって定まる。
【0073】
第1の重合工程における連続重合の温度は、第1の反応槽10内の温度(温度センサTにて検知される)として理解される。第1の重合工程は、125〜170℃の温度にて、好ましくは125〜160℃の温度にて実施するものとする。但し、反応槽内の温度は、定常状態に至るまでは諸条件に応じて変動し得ることに留意されたい。
【0074】
第1の重合工程における連続重合の圧力は、第1の反応槽10内の圧力として理解される。この圧力は、反応槽内で原料モノマーの気体が発生しないように、反応槽内の温度における原料モノマーの蒸気圧以上の圧力とされ、通常、ゲージ圧で1.0〜2.0MPa程度である。
【0075】
第1の重合工程における連続重合に付される時間は、第1の反応槽10の平均滞留時間として理解される。第1の反応槽10における平均滞留時間は、中間組成物における重合体の生産効率などに応じて設定され得るものであって、特に限定されないが、例えば15分〜6時間である。第1の反応槽10における平均滞留時間は、ポンプ5および7を用いて第1の反応槽10への原料モノマー等の供給量(供給流量)を変更することにより調節できるが、第1の反応槽10の容積に大きく依存するので、後述するように、第1の反応槽10の容積および第2の反応槽20の容積をどのように設計するかが重要である。
【0076】
以上のようにして中間組成物が第1の反応槽10の抜き出し口11bから抜き出される。得られた中間組成物は、生成した重合体および未反応の原料モノマーを含んで成り、更に、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物などを含み得る。
【0077】
中間組成物における重合率は、本実施形態を限定するものではないが、例えば5〜80重量%である。なお、中間組成物における重合率は、概ね、中間組成物中の重合体(ポリマー)含有率に相当する。
【0078】
・第2の重合工程
第2の重合工程は、第1の重合工程の後に直列的に実施されるものである。
上述のようにして得られた中間組成物は、第1の反応槽10の供給口11bから抜き出された後、接続ライン15を通じて第2の反応槽20に供給口21aより供給される。そして、中間組成物は、第2の反応槽20にて断熱状態で更に連続重合に、本実施形態においては連続塊状重合に付される。この第2の重合工程は、重合反応を所望の重合率まで進行させるものであり、第2の反応槽20の抜き出し口21bより重合体組成物(または重合シロップ)が抜き出される。
【0079】
以下、第2の重合工程について第1の重合工程と異なる点を中心に説明し、特に説明のない限り第1の重合工程と同様の説明が当て嵌まるものとする。
【0080】
本実施形態に必須ではないが、場合により、重合開始剤タンク17およびポンプ19を用いてよい。重合開始剤タンク17およびポンプ19を用いる場合、重合開始剤タンク17から新たな重合開始剤(好ましくは原料モノマーと重合開始剤との混合物)をポンプ19により、第2の反応槽20に、接続ライン15を通じて供給口21aより、あるいは別の供給口21cより供給し、これにより、中間組成物に新たな重合開始剤が添加される。重合開始剤タンク17から第2の反応槽20へと供給される重合開始剤の温度は、特に限定されるものではないが、反応槽内の熱バランスを崩して、重合温度を変動させる要因となるものであることから、適宜、加熱/冷却器(図示せず)によって反応槽20に供給される前に温度調節することが好ましい。
【0081】
また、接続ライン15の温度が、第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度となるように、連続重合を行うことが好ましい。接続ライン15の温度が、第1の反応槽10内の温度に対して低くなり過すぎないようにすることによって、接続ライン15内の中間組成物の粘度が上昇するのを防止し、中間組成物を第2の反応槽20へ安定して供給することができる。接続ライン15の温度が、第1の反応槽10内の温度に対して高くなり過ぎないようにすることによって、第2の反応槽内の温度が上昇するのを防止し、得られる樹脂組成物の熱安定性等の品質を維持することができる。接続ライン15の温度を、第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度とするには、接続ライン15に温度調節手段としてジャケットを設け、ジャケットの設定温度を調整することにより行うことができる。また、接続ライン内で重合熱が発生しない場合には、ジャケットの代わりに保温材を設けて接続ライン15を保温することにより、接続ライン15の温度を、第1の反応槽10内の温度と実質的に同じ温度とすることができる。
【0082】
第2の反応槽20への重合開始剤の供給において、原料モノマーと重合開始剤との混合物を重合開始剤タンク3および17に調合して供給する場合、原料モノマータンク1からの原料モノマーの供給流量A(kg/h)と、重合開始剤タンク3からの原料モノマーと重合開始剤との混合物(重合開始剤の含有割合が0.002〜10重量%であるもの。)の供給流量B(kg/h)と、重合開始剤タンク17からの原料モノマーと重合開始剤との混合物(重合開始剤の含有割合が0.002〜10重量%であるもの。)の供給流量B(kg/h)とについて、比A:(B+B)が、80:20〜98:2の範囲となり、かつ比B:Bが、10:90〜90:10の範囲となるように調整することが好ましい。
【0083】
第2の重合工程においても、連続重合は、満液状態で実施され得る。このことは、連続塊状重合に特に適する。この満液状態により、反応槽の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この満液状態により、反応槽の容積全てを反応空間に有効利用でき、よって、高い生産効率を得ることができる。
【0084】
満液状態は、第2の反応槽20の抜き出し口21bが反応槽頂部に位置しているため、第2の反応槽20への供給および抜き出しを連続的に行うだけで簡便に実現できる。
【0085】
また第2の重合工程においても、連続重合は、断熱状態で実施される。このことは、連続塊状重合に特に適する。この断熱状態により、反応槽の内壁面にゲルが付着して成長するといった問題や、このゲルが反応混合物に混入することによって、最終的に得られる重合体組成物の品質が低下するといった問題が発生することを、未然に防止できる。更に、この断熱状態により、重合反応を安定化させることができ、暴走反応を抑制するための自己制御性をもたらすことができる。
【0086】
断熱状態は、第2の反応槽20の内部の温度と、その外壁面との温度をほぼ等しくすることによって実現できる。具体的には、上述の制御装置(図示せず)を用いて、ジャケット(温度調節手段)23に対して設定される第2の反応槽20の外壁面の温度と、温度センサ(温度検知手段)Tによって検知される第2の反応槽20内の温度とが一致するように、原料モノマーおよび重合開始剤の第2の反応槽20への供給量をポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19の動作を調整することによって実現できる。なお、反応槽の外壁面の温度を、反応槽内の温度に比べて高く設定しすぎると、反応槽内に余分な熱が加わることから、好ましくない。反応槽内と反応槽外壁面との温度差は小さいほど好ましく、具体的には±5℃程度の幅で調整することが好ましい。
【0087】
第2の反応槽20内で発生する重合熱や撹拌熱は、通常、第2の反応槽20から重合体組成物を抜き出す際に持ち去られる。重合体組成物が持ち去る熱量は、重合体組成物の流量、比熱、重合反応の温度によって定まる。
【0088】
第2の重合工程における連続重合の温度は、第2の反応槽20内の温度として理解される。第2の重合工程は、130〜180℃の温度にて、好ましくは140〜180℃の温度にて実施するものとする。第2の重合工程においては、断熱状態で連続重合が実施されるので、重合反応により発生する重合熱によって、第2の重合工程における温度は、第1の重合工程における温度より高いものとなる。第2の重合工程の温度が低くなり過ぎないようにすることによって、第2の重合工程における重合率ひいては生産性が著しく低下するのを防止でき、より大きな反応槽およびモノマー回収設備を要することなく、効率的に生産できる。第2の重合工程の温度が高くなり過ぎないようにすることによって、得られる重合体(ポリマー)のシンジオタクティシティーが低下することを防止でき、ひいては最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することを防止できる。また、第2の重合工程の温度が高くなり過ぎないようにすることによって、重合開始剤の分解が起こり易くなることを防止でき、よって、重合効率の低下を補償するためにより多くの重合開始剤を用いる必要が生じないので、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性が低下することを防止できる。
【0089】
第2の重合工程における連続重合の圧力は、第2の反応槽20内の圧力として理解される。この圧力は、通常、ゲージ圧で1.0〜2.0MPa程度であり、第1の重合工程における圧力と同等であってよい。
【0090】
第2の重合工程における連続重合に付される時間は、第2の反応槽20の平均滞留時間として理解される。第2の反応槽20における平均滞留時間は、重合体組成物における重合体の生産効率などに応じて設定され得るものであって、特に限定されないが、例えば15分〜6時間である。第1の反応槽10における平均滞留時間に対する第2の反応槽20における平均滞留時間の比は、9/1〜1/9であることが好ましく、より好ましくは8/2〜2/8である。第2の重合工程における平均滞留時間は、第1の重合工程における平均滞留時間と同等であってよいが、それと異なることが好ましい。第2の反応槽20における平均滞留時間は、ポンプ5および7ならびに存在する場合にはポンプ19を用いて第2の反応槽20への原料モノマー等の供給量(供給流量)を変更することにより調節できるが、第2の反応槽20の容積に大きく依存するので、後述するように、第1の反応槽10の容積および第2の反応槽20の容積をどのように設計するかが重要である。
【0091】
以上のようにして重合体組成物が第2の反応槽20の抜き出し口21bから抜き出される。得られた重合体組成物は、生成した重合体を含んで成り、更に、未反応の原料モノマー、未反応の重合開始剤および重合開始剤分解物などを含み得る。
【0092】
重合体組成物における重合率は、本実施形態を限定するものではないが、例えば30〜90重量%である。なお、重合体組成物における重合率は、概ね、重合体組成物中の重合体(ポリマー)含有率に相当する。この重合率が高いほど、重合体の生産性が高くなるものの、中間組成物〜重合体組成物の粘度が高くなって、大きな撹拌動力が必要となる。また、重合率が低いほど、重合体の生産性が低くなり、未反応の原料モノマーを回収するための負担が大きくなってしまう。よって、適切な重合率を目標または目安として設定することが好ましい。
【0093】
本実施形態によれば、第1の重合工程を125〜170℃にて実施し、かつ、第2の重合工程を130〜180℃にて実施しており、これにより、熱安定性に優れた重合体組成物を生産性良く得ることができる。
【0094】
更に、本実施形態によれば、好ましくは、第1の反応槽10における平均滞留時間に対する第2の反応槽20における平均滞留時間の比を9/1〜1/9としており、これにより、熱安定性に優れた重合体組成物を生産性良く得ることができる。
【0095】
一般的に、重合温度が高いほど、得られる重合体(ポリマー)のシンジオタクティシティーが低くなり、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性が低くなる傾向にある。また、重合開始剤の分解が起こり易くなり、重合効率が低下するため、これを補償するにはより多くの重合開始剤を用いる必要が生じ、その結果、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性が低下する傾向にある。滞留時間を長くすれば、重合開始剤の必要量を減らして熱安定性の低下を抑制することが可能であるが、大きな反応槽が必要となるために効率的でない。よって、耐熱性および熱安定性の高い樹脂組成物を得るには、低温で重合させるほうが好ましい。しかしながら、従来の連続重合装置(特許文献1および2)を用いて、連続重合を低温にて1段のみで実施すると、断熱状態を維持しようとすると重合率が低くなり、生産性が著しく低下するため、高い生産性を確保するには、より大きな反応槽およびモノマー回収設備が必要となり、効率的ではない。
【0096】
これに対して、本実施形態のように、連続重合を2段で実施すると、第1の重合工程と第2の重合工程とで重合反応条件、具体的には温度、時間(平均滞留時間)および重合開始剤の量(原料モノマーに対する重合開始剤の割合)などを個別に設定することができる。
【0097】
例えば、本実施形態では、第1の重合工程にて比較的低温で連続重合させ、その後、第2の重合工程にて比較的高温で更に連続重合させることができる。具体的には、第1の重合工程を125〜170℃にて実施し、かつ、第2の重合工程を130〜180℃にて実施することにより、連続重合を低温にて1段のみで実施する場合よりも、第2の重合工程で重合率を高めて生産性を高めることができ、かつ連続重合を高温にて1段のみで実施する場合よりも、熱安定性および耐熱性の高い樹脂組成物を得ることができる。更に、2段での連続重合において第1の重合工程を125℃未満で実施する場合よりも、所望の重合率を達成するための重合開始剤の合計使用量を少なくすることができるため、熱安定性の高い樹脂組成物を得ることができる。
【0098】
第1の重合工程および第2の重合工程とで重合反応条件をそれぞれどのように設定するかは、生成する重合体、使用する原料モノマーおよび重合開始剤、所望される耐熱性、熱安定性および生産効率などに応じて異なり得る。
【0099】
・脱揮工程
第2の反応槽20の抜き出し口21bから抜き出された重合体組成物(重合シロップ)は、上述のように、生成した重合体のほか、未反応の原料モノマーおよび重合開始剤などを含み得る。かかる重合体組成物は、本実施形態を限定するものではないが、脱揮等に付して原料モノマーを分離回収することが好ましい。
【0100】
具体的には、重合体組成物を抜き出しライン25を通じて、予熱器31に移送する。重合体組成物は、予熱器31にて、未反応の原料モノマーを主とする揮発性成分の揮発に必要な熱量の一部または全部が付与される。重合体組成物は、その後、圧力調整弁(図示せず)を介して脱揮押出機33に移送され、脱揮押出機にて揮発性成分が少なくとも部分的に除去され、残部の押出物はペレット状に成形されて、排出ライン35から排出される。これにより、メタクリル酸エステル系ポリマーを含む樹脂組成物がペレットの形態で製造される。
【0101】
上記重合体組成物の移送方法としては、特公平4−48802号公報に記載の方法が好適である。また、脱揮押出機を用いた方法としては、例えば特開平3−49925号公報、特公昭51−29914号公報、特公昭52−17555号公報、特公平1−53682号公報、特開昭62−89710号公報などに記載の方法が好適である。
【0102】
また、上記の脱揮押出機にて重合体組成物を脱揮押出する際に、またはその後に、必要に応じて、高級アルコール類、高級脂肪酸エステル類等の離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤等を、重合体組成物または押出物に添加して樹脂組成物に含めることができる。
【0103】
脱揮押出機33にて除去された揮発性成分は、未反応の原料モノマーを主成分とし、原料モノマーに元々含まれる不純物、必要に応じて用いられる添加剤、重合過程で生成する揮発性副生成物、ダイマーおよびトリマーなどのオリゴマー、重合開始剤分解物などの不純物などを含んで成る。一般に、不純物の量が増えると、得られる樹脂組成物が着色するので好ましくない。そこで、脱揮押出機33にて除去された揮発性成分(未反応の原料モノマーを主成分とし、上記のような不純物などを含んで成る)をモノマー回収塔(図示せず)に通し、モノマー回収塔にて蒸留や吸着等の手段によって処理し、上記揮発性成分から不純物を除去してよく、これによって、未反応の原料モノマーを高純度で回収することができ、重合用の原料モノマーとして好適に再利用できる。例えば、モノマー回収塔では、連続蒸留によりモノマー回収塔の塔頂からの留出液として未反応の原料モノマーを高純度で回収し、回収タンク37に貯留してから、原料モノマータンク1に移送してリサイクルしてもよいし、回収タンク37に貯留することなく、原料モノマータンク1に移送してリサイクルしてもよい。他方、モノマー回収塔で除去された不純物は、廃棄物として廃棄され得る。
【0104】
なお、回収した原料モノマーは、回収タンク37や原料モノマータンク1にて重合反応が進行しないように、回収タンク37または原料モノマータンク1中にて重合禁止剤を、例えば原料モノマーに対して2〜8重量ppmの割合で存在させることが好ましく、加えて、回収タンク37や原料モノマータンク1の気相部の酸素濃度を2〜8体積%に設定するとより好ましい。また、回収タンク37にて長期間に亘って保存したい場合には、例えば0〜5℃の低温にて貯留することが望ましい。
【0105】
本実施形態においては、第1の反応槽および第2の反応槽のいずれもが連続塊状重合を実施するために用いられる連続塊状重合装置について説明した。しかし、本発明の連続重合装置はこれに限定されず、第1の反応槽および第2の反応槽の一方または双方が、連続溶液重合を実施するために用いられるものであってよい。かかる態様においては、溶液重合のために溶媒が使用されることから、連続重合装置は、図1を参照して上述した連続重合装置と同様の構成に加えて、溶液重合を実施する所定の反応槽へ溶媒を供給するために、溶媒タンクならびにこれに付随する供給ラインおよびポンプ(供給手段)を更に備える。これら溶媒タンクならびにこれに付随する供給ラインおよびポンプ(供給手段)としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているものと同様のものを使用することができる。溶媒は、溶液重合を実施する所定の反応槽へ、原料モノマーおよび/または重合開始剤と混合した上で供給してよく、あるいは、溶液重合を実施する所定の反応槽へ直接供給してよい。上記所定の反応槽において、重合工程は、重合反応に溶媒が使用されること以外は、図1を参照して上述した重合工程と同様に(断熱状態で)実施される。溶媒としては、溶液重合反応の原料モノマーなどに応じて適宜設定されるものであって、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、デカリン、酢酸ブチル、酢酸ペンチルなどが挙げられる。溶液重合を実施する所定の反応槽への原料モノマーの供給流量C(kg/h)と、該所定の反応槽への溶媒の供給流量D(kg/h)との比C:Dは、これに限定されるものではないが、例えば70:30〜95:5であり、好ましくは80:20〜90:10である。
【0106】
以上、本発明の実施形態を通じて、本発明の重合体組成物の製造方法について詳述した。本発明によれば、少なくとも第1の反応槽および第2の反応槽を用いて重合を少なくとも2段で直列的に実施できるので、第1の重合工程と第2の重合工程とで重合反応条件、具体的には温度、時間(平均滞留時間)および重合開始剤(原料モノマーに対する重合開始剤の割合)の量などを個別に設定することができ、第1の重合工程を125〜170℃にて実施し、かつ、第2の重合工程を130〜180℃にて実施することにより、最終的に得られる樹脂組成物に含まれる重合体のシンジオタクティシティーを制御でき、高い耐熱性および熱安定性を有する樹脂組成物を得るのに適した重合体組成物をより効率的に製造することができる。
【0107】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。例えば、3つ以上の反応槽を用いて、重合を3段以上で直列的に実施してもよい。また、本発明の重合体組成物の製造方法は連続的に実施されるが、バッチ式で実施してもよい。
【0108】
本発明の製造方法により得られる重合体組成物は、成形体の材料として好適に利用され得、これによって得られた成形体は、高い耐熱性および熱安定性を有するという利点がある。例えば、本発明の製造方法により得られる重合体組成物(より詳細には、脱揮後の樹脂組成物)を、単独で、または任意の適切な他の成分と共に、射出成形、押出成形等の任意の成形方法で成形して、成形体を得ることができる。本発明の製造方法により得られる重合体組成物は、射出成形により成形体を得る場合に好ましく利用され、シルバーストリークスの発生を抑制し、良好な成形性で成形体を得ることができる。特に、メタクリル酸エステル系ポリマーを含む樹脂組成物は、優れた透明性を有しているため、これを射出成形して得られる成形体は、透明性が高く、かつ、シルバーストリークスの発生が抑制され、良好な成形性を有するため、各種液晶ディスプレイのバックライトユニットの部材などに使用される導光板や、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、バイザーおよびメーターパネル等の車両用部材として好ましく利用される。
【0109】
射出成形は、少なくとも本発明の製造方法により得られる重合体組成物を溶融状態で所定の厚みの型に充填(射出)し、次いで冷却後、成形された成形体を脱型することにより実施できる。具体的には、例えば、本発明の製造方法により得られる重合体組成物(より詳細には、脱揮後の樹脂組成物)を単独で、または任意の適切な他の成分と共に、ホッパーから成形機に投入し、スクリューを回転させながら後退させて、成形機のシリンダー内に樹脂組成物を計量し、シリンダー内で該樹脂組成物を溶融させ、溶融した樹脂組成物を圧力をかけながら型(例えば金型)内に充填し、型が充分に冷めるまで一定時間保圧した後、型を開いて成形体を取り出すことにより、成形体を製造することができる。
【0110】
よって、本発明の別の要旨によれば、本発明の製造方法により得られる重合体組成物から得られる成形体もまた提供される。なお、本発明の成形体を重合体組成物から製造する際の諸条件(例えば射出成形の場合、成形材料の溶融温度、成形材料を型に射出する際の型温度、樹脂組成物を型に充填した後、保圧する際の圧力など)については、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【実施例】
【0111】
以下、本発明の重合体組成物の製造方法の実施例を示すが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
本実施例においては、概略的には、図1を参照しながら上述した実施形態に従って、連続重合を2段で実施して、重合体組成物をペレット(樹脂組成物)の形態で製造した。より詳細には、以下の通りである。
【0113】
メタクリル酸メチル98.606質量部およびアクリル酸メチル0.987質量部を混合し、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.284質量部、および離型剤としてステアリルアルコール0.123質量部を加えて、原料モノマー混合液1を調製した。
メククリル酸メチル99.820質量部および重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.180質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
メタクリル酸メチル99.840質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.160質量部を混合して、重合開始剤混合液2を調製した。
【0114】
本実施例において重合体組成物を製造するために、図1に示す装置を用いた。第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用い、第2の反応槽20として容量6Lの完全混合型反応槽を用いた。上記で調製した原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2を、それぞれ原料モノマータンク1、重合開始剤タンク3および重合開始剤タンク17に入れた。
【0115】
原料モノマー混合液1と重合開始剤混合液1とを、それぞれ原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3から、原料供給ライン9に通して第1の反応槽10へ、その下方に位置する供給口11aより連続的に供給した。
【0116】
原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1の第1の反応槽10への供給は、これらの流量比が19.2:1となり、第1の反応槽10における平均滞留時間が64分となるように実施した。第1の反応槽10内の温度は130℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を130℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。この連続重合は、第1の反応槽10が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0117】
第1の反応槽10内の反応混合物を第1の反応槽10の頂部に位置する抜き出し口11bより、中間組成物として連続的に抜き出した。抜き出した中間組成物を接続ライン15に通して第2の反応槽20へ、その下方に位置する供給口21aより連続的に供給した。接続ライン15には外壁面を取り囲むジャケットが設けられており、このジャケットを用いて、接続ライン15の内部を通る中間組成物が第1の反応槽内の温度と等しい温度(本実施例では130℃)の温度を維持するように調整した。また、重合開始剤混合液2を重合開始剤タンク17から第2の反応槽20へ、別の供給口21cより連続的に供給した。
【0118】
中間組成物および重合開始剤混合液2の第2の反応槽20への供給は、これらの流量比が24.7:1となるように実施した。第2の反応槽20における平均滞留時間は26分であった。第2の反応槽20内の温度は175℃であり、第2の反応槽20の外壁面を取り囲むジャケット23の温度を175℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。この連続重合は、第2の反応槽20が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0119】
第2の反応槽20内の反応混合物を第2の反応槽20の頂部に位置する抜き出し口21bより、重合体組成物として連続的に抜き出した。これにより得られた重合体組成物を抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、240℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去し、脱揮後の樹脂組成物を溶融状態で押出して、水冷後、裁断してペレットとして排出ライン35から排出させた。これにより、樹脂組成物がペレットの形態で製造された。
【0120】
原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、得られたペレットについて、下記の通り、熱安定性(重量%)および耐熱性(℃)を評価し、還元粘度(cm/g)を測定した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0121】
<熱安定性>
TG−DTA装置[セイコーインスツル株式会社製の「TG/DTA6300」]を用いて、窒素流量200ml/分、昇温速度2℃/分で、上記で得られたペレットを50℃から500℃まで昇温しながら、その重量変化を測定した。
50℃の時点におけるペレットの重量を基準として重量減少量を求め、500℃の時点での重量減少量の割合を100重量%とし、260〜300℃の間での重量減少量の割合(重量%)を計算した。
260〜300℃の間での重量減少量の割合(重量%)は熱安定性を示しており、この値が小さいほど、不飽和末端を起点とする熱分解が起こりにくいこと、すなわち、熱安定性がより優れていることを示す。
<耐熱性>
DSC装置[セイコーインスツル株式会社製の「DSC6200」]を用いて、JIS K7121に基づく示差走査熱量分析法により、窒素流量100ml/分において、上記で得られたペレットを、昇温速度20℃/分で150℃まで昇温し、5分間保持した後、降温速度20℃/分で−50℃まで降温し、1分間保持した。ついで、昇温速度10℃/分で、−50℃から215℃まで昇温して、中間点ガラス転移温度(Tmg)を求めた。この値が大きいほど、耐熱性が高いことを示す。
<還元粘度>
ISO 1628−6に準拠して、上記で得られたペレット0.5gをクロロホルムに溶解させて50cm溶液とし、25℃でキャノンフェンスケ粘度計を用いて測定した。
【0122】
(実施例2)
本実施例においては、以下の点を除いて、実施例1と同様にして重合体組成物をペレットの形態で製造した。
メタクリル酸メチル99.790質量部および重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.210質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
メタクリル酸メチル99.860質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.140質量部を混合して、重合開始剤混合液2を調製した。
第1の反応槽10内の温度は140℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を140℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。また、接続ライン15に設けられたジャケットを用いて、接続ライン15の内部を通る中間組成物が140℃の温度を維持するように調整した。
【0123】
実施例1と同様に、原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、実施例1と同様に、得られたペレットについて、熱安定性(重量%)および耐熱性(℃)を評価し、還元粘度(cm/g)を測定した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0124】
(実施例3)
本実施例においては、以下の点を除いて、実施例1と同様にして重合体組成物をペレットの形態で製造した。
メタクリル酸メチル99.807質量部および重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.193質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
メタクリル酸メチル99.920質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.080質量部を混合して、重合開始剤混合液2を調製した。
第1の反応槽10内の温度は150℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を150℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。また、接続ライン15に設けられたジャケットを用いて、接続ライン15の内部を通る中間組成物が150℃の温度を維持するように調整した。
【0125】
実施例1と同様に、原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、実施例1と同様に、得られたペレットについて、熱安定性(重量%)および耐熱性(℃)を評価し、還元粘度(cm/g)を測定した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0126】
(比較例1)
本比較例においては、概略的には、実施例1とは異なって、重合開始剤混合液2を用いずに、連続重合を1段で実施して、重合体組成物をペレットの形態で製造した。より詳細には、以下の通りである。
【0127】
実施例1と同様に、メタクリル酸メチル98.606質量部およびアクリル酸メチル0.987質量部を混合し、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.284質量部、および離型剤としてステアリルアルコール0.123質量部を加えて、原料モノマー混合液1を調製した。
実施例1とは異なり、メタクリル酸メチル99.779質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.221質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
【0128】
本比較例において重合体組成物を製造するために、図1に示す装置を、第2の反応槽20および重合開始剤タンク17(およびこれらに関連する部材)を除くことにより、改変して用いた。第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用いた。上記で調製した原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1を、それぞれ原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3に入れた。
【0129】
原料モノマー混合液1と重合開始剤混合液1とを、それぞれ原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3から、原料供給ライン9に通して第1の反応槽10へ、その下方に位置する供給口11aより連続的に供給した。
【0130】
原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1の第1の反応槽10への供給は、これらの流量比が16.2:1となり、第1の反応槽10における平均滞留時間が64分となるように実施した。第1の反応槽10内の温度は175℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を175℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。この連続重合は、第1の反応槽10が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0131】
第1の反応槽10内の反応混合物を第1の反応槽10の頂部に位置する抜き出し口11bより、重合体組成物として連続的に抜き出した。これにより得られた重合体組成物を(第2の反応槽20に供給せずに)抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、240℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去し、脱揮後の重合体組成物を溶融状態で押出して、水冷後、裁断してペレットとして排出ライン35から排出させた。これにより、重合体組成物がペレットの形態で製造された。
【0132】
原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、実施例1と同様に、得られたペレットについて、熱安定性(重量%)および耐熱性(℃)を評価し、還元粘度(cm/g)を測定した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0133】
(比較例2)
本比較例においては、以下の点を除いて、実施例1と同様にして重合体組成物をペレットの形態で製造した。
メタクリル酸メチル99.799質量部および重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.201質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
メタクリル酸メチル99.780質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.220質量部を混合して、重合開始剤混合液2を調製した。
第1の反応槽10内の温度は120℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を120℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。また、接続ライン15に設けられたジャケットを用いて、接続ライン15の内部を通る中間組成物が120℃の温度を維持するように調整した。
【0134】
実施例1と同様に、原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、実施例1と同様に、得られたペレットについて、熱安定性(重量%)および耐熱性(℃)を評価し、還元粘度(cm/g)を測定した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0135】
【表1】

【0136】
表1から理解されるように、実施例1〜3では、比較例1に対し、重合率を同等に維持し、かつ重合体の分子量の指標となる還元粘度を同等に維持しつつ、比較例1よりも熱安定性および耐熱性に優れた重合体組成物(樹脂組成物)が得られた。また、実施例1〜3では、比較例2と重合率、還元粘度および耐熱性は同程度であるが、比較例2よりも熱安定性に優れた重合体組成物(樹脂組成物)が得られた。
【0137】
(実施例4)
本実施例においては、概略的には、図1を参照しながら上述した実施形態に従って、連続重合を2段で実施して、重合体組成物をペレット(樹脂組成物)の形態で製造した。また、その成形性を評価するために、得られた樹脂組成物を成形して成形体を製造した。より詳細には、以下の通りである。
【0138】
メタクリル酸メチル93.0835質量部およびアクリル酸メチル6.375質量部およびエチレングリコールジメタクリレート0.076質量部を混合し、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.322質量部、離型剤としてステアリン酸モノグリセリド0.121質量部およびステアリン酸メチル0.013質量部、熱安定剤としてジ−tert−ドデシルジスルフィド0.0005質量部、および紫外線吸収剤として2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル0.009質量部を加えて、原料モノマー混合液1を調製した。
メククリル酸メチル99.752質量部および重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.248質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
メタクリル酸メチル90.280質量部およびアクリル酸メチル9.6質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.120質量部を混合して、重合開始剤混合液2を調製した。
【0139】
本実施例において重合体組成物を製造するために、図1に示す装置を用いた。第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用い、第2の反応槽20として容量6Lの完全混合型反応槽を用いた。上記で調製した原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2を、それぞれ原料モノマータンク1、重合開始剤タンク3および重合開始剤タンク17に入れた。
【0140】
原料モノマー混合液1と重合開始剤混合液1とを、それぞれ原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3から、原料供給ライン9に通して第1の反応槽10へ、その下方に位置する供給口11aより連続的に供給した。
【0141】
原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1の第1の反応槽10への供給は、これらの流量比が16.7:1となり、第1の反応槽10における平均滞留時間が46分となるように実施した。第1の反応槽10内の温度は140℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を140℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。この連続重合は、第1の反応槽10が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0142】
第1の反応槽10内の反応混合物を第1の反応槽10の頂部に位置する抜き出し口11bより、中間組成物として連続的に抜き出した。抜き出した中間組成物を接続ライン15に通して第2の反応槽20へ、その下方に位置する供給口21aより連続的に供給した。接続ライン15には外壁面を取り囲むジャケットが設けられており、このジャケットを用いて、接続ライン15の内部を通る中間組成物が第1の反応槽内の温度と等しい温度(本実施例では140℃)の温度を維持するように調整した。また、重合開始剤混合液2を重合開始剤タンク17から第2の反応槽20へ、別の供給口21cより連続的に供給した。
【0143】
中間組成物および重合開始剤混合液2の第2の反応槽20への供給は、これらの流量比が18.3:1となるように実施した。第2の反応槽20における平均滞留時間は19分であった。第2の反応槽20内の温度は175℃であり、第2の反応槽20の外壁面を取り囲むジャケット23の温度を175℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。この連続重合は、第2の反応槽20が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0144】
第2の反応槽20内の反応混合物を第2の反応槽20の頂部に位置する抜き出し口21bより、重合体組成物として連続的に抜き出した。これにより得られた重合体組成物を抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、240℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去し、脱揮後の樹脂組成物を溶融状態で押出して、水冷後、裁断してペレットとして排出ライン35から排出させた。これにより、樹脂組成物がペレットの形態で製造された。
【0145】
原料モノマー混合液1、重合開始剤混合液1および重合開始剤混合液2の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、得られたペレットについて、下記の通り、MFR(メルトマスフローレート)および成形性を評価した。これらの結果を表2にまとめて示す。
【0146】
<MFR>
JIS−K7210に準拠して、得られたペレットについて、230℃、37.3N荷重で測定した。
<成形性>
得られたペレットを、所定のシリンダー温度に設定した成形機に、ホッパーから連続的に供給し、この成形機内のシリンダーを通して射出成形を繰り返し実施し、これにより、成形体を次々製造した。成形条件は以下の通りである。シリンダー温度が安定した後、連続10ショット(サイクル)の射出成形で得られた連続10個の成形体をサンプルとして採取し、これら10個のサンプルのうち、シルバーストリークスの発生が認められたサンプルを数えて、シルバーストリークス発生率を求めた。具体的には、成形体を目視により観察し、成形体に銀状痕が認められた場合に、シルバーストリークスが発生しているものと判定した。シルバーストリークス発生率を、3つの異なるシリンダー温度について同様にして調べた。
金 型: 23cm×30.5cmの矩形(平面図)、厚さ0.8mm
ファンゲート 1点(矩形平面の長手方向一辺に位置する)
ゲート巾 304mm
成形機: 電動射出成形機(株式会社日本製鋼所製「J450ELIII−890H」)
シリンダー温度: ノズルヘッド温度(成形温度)にて300℃、305℃、310℃
ホッパー側温度: 220℃
成形条件: 射出圧力 179MPa
射出速度 160mm/秒
金型温度 80℃
射出時間 0.4秒
背圧 15MPa
スクリュー回転数 45rpm
保圧 45MPa
保圧時間 11秒
成形サイクル: 100秒(その内、冷却時間70秒)
シリンダー内滞留時間: 12分
【0147】
(比較例3)
本比較例においては、概略的には、実施例4とは異なって、重合開始剤混合液2を用いずに、連続重合を1段で実施して、重合体組成物をペレットの形態で製造した。更に、その成形性を評価するために、得られた樹脂組成物を実施例4と同様に成形して成形体を製造した。より詳細には、以下の通りである。
【0148】
メタクリル酸メチル95.0955質量部およびアクリル酸メチル4.387質量部およびエチレングリコールジメタクリレート0.076質量部を混合し、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.298質量部、離型剤としてステアリン酸モノグリセリド0.121質量部およびステアリン酸メチル0.013質量部、熱安定剤としてジ−tert−ドデシルジスルフィド0.0005質量部、および紫外線吸収剤として2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル0.009質量部を加えて、原料モノマー混合液1を調製した。
メタクリル酸メチル99.767質量部および重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.233質量部を混合して、重合開始剤混合液1を調製した。
【0149】
本比較例において重合体組成物を製造するために、図1に示す装置を、第2の反応槽20および重合開始剤タンク17(およびこれらに関連する部材)を除くことにより、改変して用いた。第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用いた。上記で調製した原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1を、それぞれ原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3に入れた。
【0150】
原料モノマー混合液1と重合開始剤混合液1とを、それぞれ原料モノマータンク1および重合開始剤タンク3から、原料供給ライン9に通して第1の反応槽10へ、その下方に位置する供給口11aより連続的に供給した。
【0151】
原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1の第1の反応槽10への供給は、これらの流量比が16.7:1となり、第1の反応槽10における平均滞留時間が46分となるように実施した。第1の反応槽10内の温度は175℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を175℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。この連続重合は、第1の反応槽10が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0152】
第1の反応槽10内の反応混合物を第1の反応槽10の頂部に位置する抜き出し口11bより、重合体組成物として連続的に抜き出した。これにより得られた重合体組成物を(第2の反応槽20に供給せずに)抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、240℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去し、脱揮後の重合体組成物を溶融状態で押出して、水冷後、裁断してペレットとして排出ライン35から排出させた。これにより、重合体組成物がペレットの形態で製造された。
【0153】
原料モノマー混合液1および重合開始剤混合液1の単位時間当たりの供給重量と、ペレットの単位時間当たりの生産(排出)重量とから重合率(重量%)を求めた。また、実施例4と同様に、得られたペレットについて、MFR(メルトマスフローレート)および成形性を評価した。これらの結果を表2にまとめて示す。
【0154】
【表2】

【0155】
表2から理解されるように、実施例4では、比較例3に対し、重合率を同等に維持し、かつMFR(これは、成形条件を決める指標となり得る)を同等に維持しつつ、比較例3よりも、より高い成型温度(300℃より高い、例えば305℃以上の成型温度)においても成形性に優れた(成形体におけるシルバーストリークス発生率の低い)重合体組成物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、メタクリル酸エステル系ポリマーを含む樹脂組成物を得るのに適した重合体組成物を製造するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 原料モノマータンク(原料モノマーの供給源)
3 重合開始剤タンク(重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)
5 ポンプ
7 ポンプ
9 原料供給ライン
10 第1の反応槽
11a 供給口
11b 抜き出し口
11c 別の供給口
13 ジャケット(温度調節手段)
14 撹拌機
15 接続ライン
17 重合開始剤タンク(新たな重合開始剤および場合により原料モノマーの供給源)
19 ポンプ
20 第2の反応槽
21a 供給口
21b 抜き出し口
21c 別の供給口
23 ジャケット(温度調節手段)
24 撹拌機
25 抜き出しライン
31 予熱器
33 脱揮押出機
35 排出ライン
37 回収タンク
T 温度センサ(温度検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料モノマーおよび重合開始剤を第1の完全混合型反応槽の供給口より供給し、第1の完全混合型反応槽において断熱状態で連続重合に付し、これにより得られる中間組成物を第1の完全混合型反応槽の頂部に位置する抜き出し口より抜き出す第1の重合工程と、
該中間組成物を第2の完全混合型反応槽の供給口より供給し、第2の完全混合型反応槽において断熱状態で更に連続重合に付し、これにより得られる重合体組成物を第2の完全混合型反応槽の頂部に位置する抜き出し口より抜き出す第2の重合工程と
を含んで成り、第1の重合工程を125〜170℃にて実施し、第2の重合工程を130〜180℃にて実施することを特徴とする、重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
第1の完全混合型反応槽における平均滞留時間に対する第2の完全混合型反応槽における平均滞留時間の比が、9/1〜1/9である、請求項1に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項3】
第1の重合工程および第2の重合工程における連続重合が連続塊状重合である、請求項1に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られる重合体組成物から得られる成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207203(P2012−207203A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25984(P2012−25984)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】